JP3792175B2 - 有芯青果物の内部品質検査方法及び装置 - Google Patents

有芯青果物の内部品質検査方法及び装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有芯青果物の内部品質を非破壊で判別する方法及びそのための装置に関し、特に、有芯青果物の透過光を用いた判別技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、有芯青果物の内部品質は、有芯青果物の形や色合い等の外見で経験的に判別したり、抜き取り試料を切断して目視により判別されたりしていた。しかし、内部品質は外見から判別困難な場合が多く、また、抜き取り検査された有芯青果物は商品価値がなくなる上、残りの有芯青果物の内部品質は抜き取り検査結果から推定するしかなかった。
【0003】
そこで、近年、分光学的手法を用いて有芯青果物の内部品質を判別する技術が提案されている。例えば、果実は、一般に糖度が高いほど商品価値が高い。そこで、例えば、特開平4−104041号公報には、特定波長領域の透過光の強度から有芯青果物の糖度等の内部品質を検査する方法が記載されている。
【0004】
また、リンゴの完熟品はいわゆる蜜入り状態となり、特有の香気と味覚とを発し、高級品として好まれている。そこで、例えば、「果樹試報 C15 P14−47 農林水産省 1988」には、単一波長の光透過によるリンゴ果実の蜜症状の非破壊測定の方法が記載されている。
このように、有芯青果物の透過光を測定することにより、リンゴ等の有芯青果物の糖度や蜜入り状態を非破壊で判別することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記した透過光を利用する判別方法においては、リンゴのような有芯青果物に含まれている芯が照射された光を遮って部分的に陰ができ、正確に有芯青果物の内部品質を判別できない場合があるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記の事情にかんがみてなされたものであり、青果物の内部品質、特に、光を照射したときに陰となる部分ができやすい有芯青果物において、内部品質を容易に判別することができる技術の提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的の達成を図るため、本発明の請求項1に係る有芯青果物の内部品質検査方法によれば、内部品質の判別対象である有芯青果物に対して複数の方向から光を照射し、各透過光ごとに、前記透過光の可視光領域から近赤外領域においてピークを形成する複数の波長帯のうち、前記可視光領域における所定の波長帯の透過光強度、前記可視光領域における所定の波長帯の透過光強度と前記近赤外線領域における所定の波長帯の透過光強度との比率である比強度、及び前記透過光強度と前記比強度との組み合わせの中のいずれかに基づいて、複数の褐変の程度の中から前記有芯青果物の褐変の程度がいずれであるかを判別する方法としてある。
【0008】
このように、本発明によれば、複数の方向から光を照射することで、一方向からの光の照射では芯によって陰となる部分にも、異なる方向から光を照射することで当該部分に光を透過させることができ、有芯青果物の内部品質の判別をより正確に行うことが可能になる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記光の照射角度を前記有芯青果物に対して相対的に変化させることで、有芯青果物に対して複数の方向から光を照射する方法としてある。
この方法では、例えば、光源を有芯青果物の周りで回転させて、有芯青果物に対する配置位置を変化させるようにしてもよいし、光源を固定したままで有芯青果物を回転させるようにするとよい。
また、請求項3に記載するように、前記有芯青果物に単一の前記光源から光を照射し、前記有芯青果物を所定角度回転させることで前記光の照射方向を変化させるようにしてもよい。
【0010】
請求項4に記載の発明は、複数の前記光源を、前記有芯青果物の周囲の異なる位置に配置し、この複数の光源から順次前記有芯青果物に向けて光を照射する方法としてある。
このように、複数の光源による光の照射を順次切り換えることで、有芯青果物に対する光の照射方向を変化させることができる。
【0011】
請求項5に記載の発明は、光の照射方向を90度変化させる方法としてある。このように、光の照射方向を有芯青果物に対して90度変化させることで、陰となる部分を最小又はほぼ完全に無くして、有芯青果物の判別対象部位のほぼ全体にわたって光を満遍なく透過させることができ、より正確な判別を行うことができる。
【0012】
請求項6に記載の発明は、可視光領域の検出すべき波長帯として、前記可視光領域のピーク波長帯として、550nm±30nm、630nm±30nm、700nm±30nmの群の中から少なくとも一つの波長帯を選択するとともに、前記近赤外領域のピーク波長帯として、780nm〜830nmを選択する方法としてある。
【0013】
有芯青果物であるリンゴの透過分光スペクトルは、可視光領域では、700nm付近、600nm〜650nm付近及び550nm付近に、山となるピーク波長帯を有し、特に、700nm付近の強度が高いことが分かってきた。また、近赤外領域では、780nm〜830nm付近に、山となるピークを形成することが分かってきた。このため、これら波長の透過光強度を計測すれば、内部品質の判別がより容易となる。
【0014】
本発明の目的は、請求項7及び請求項8に記載の装置によっても達成できる。
請求項7に記載の発明は、内部品質の判別対象である有芯青果物に対して光源から光を照射し、有芯青果物を透過した光の可視光領域から近赤外線領域においてピークを形成する複数の波長帯のうち、前記可視光領域における所定の波長帯の透過光強度、前記可視光領域における所定の波長帯の透過光強度と前記近赤外領域における所定の波長帯の透過光強度との比率である比強度、及び前記透過光強度と前記比強度との組み合わせの中のいずれかに基づいて、前記有芯青果物の褐変の程度を判別する内部品質検査装置であって、前記光源から前記有芯青果物に照射される光の方向を変化させる光照射方向変換手段と、各方向からの光の照射ごとに、前記有芯青果物を透過した光に基づく前記透過光強度及び/又は前記比強度を求め、前記透過光強度、前記比強度及び前記透過光強度と前記比強度との組み合わせの中のいずれかに基づいて、全ての照射方向について前記有芯青果物の褐変の程度を総合的に判別する判別部とを有する構成としてある。
【0015】
この構成によれば、光照射方向変換手段によって有芯青果物に対する光の照射方向が切り換えられる。
そして各照射方向ごとに透過光強度及び/又は比強度が求められる。判別部は、各照射角度ごとに求められた透過光強度,比強度又はこれらの組み合わせを総合して、内部品質を判別する。
なお、光の照射方向は、請求項7に記載するように90度とするとよい。
このようにすると、芯によって陰となる部分を最小又はほぼ完全に無くして、有芯青果物の判別対象部位のほぼ全体にわたって光を満遍なく透過させることができるようになる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明の有芯青果物の内部品質検査方法及び内部品質検査装置の実施の形態について併せて説明する。
なお、以下の説明では、有芯青果物としてリンゴを例に挙げ、複数の透過光強度から比強度を求め、この比強度に基づいて内部品質の判別を行うことを前提に説明するが、本発明は、リンゴに限らず他の有芯青果物にも適用が可能であるし、一つ又は複数の光透過強度に基づいて行う内部品質の判別、一つ又は複数の比強度に基づいて行う内部品質の判別、もしくはこれらを組み合わせて行う内部品質の判別にも適用が可能である。
【0017】
まず、図1を参照しながら、本発明の内部品質検査装置の一例を説明する。
図1は、本発明の第一の実施形態にかかる内部品質検査装置の構成を説明するブロック図である。
内部品質検査装置は、内部品質の判別対象であるリンゴ2に異なる方向から光を照射する二つの光源1a,1bと、これら光源1a,1bに対応して設けられ、リンゴ2を透過した光(透過光)を集光する二つの集光器3a,3bと、この集光器3a,3bによって集光された透過光を分光する無偏光ビームスプリッタ4と、この無偏光ビームスプリッタ4によって分光された一方の透過光が入射するように配置された第二波長フィルタ5bと、第二波長フィルタ5bを通過した所定波長の光を受光する第二光センサ6bと、無偏光ビームスプリッタ4aを透過して直進した他方の透過光の進路上に配置された第一波長フィルタ5aと、第一波長フィルタ5aを通過した所定波長の光を受光する第一光センサ6aと、第一及び第二光センサ6a,6bから出力された第一及び第二透過光強度信号が入力され、これら第一及び第二透過光強度信号に基づいて比強度を計算する比強度計算部7と、この比強度計算部7で得られた比強度と第一光センサ6aから入力された第一透過光強度信号に基づいてリンゴ2の内部品質を判別する判別部8とを有している。
【0018】
光源1a,1bには、キセノンランプやハロゲンランプを用いるとよい。これら光源は、透過光強度を計測する波長を含む波長帯域にわたる発光スペクトルを有している。光源1a,1bは、リンゴ2の芯2aを通る軸線(図1の紙面に直交する軸線)を中心に、光の照射方向が90度の角度をなすように配置するのがよい。すなわち、図1において、二つの光源1a,1bから照射された光のなす角度α=90度とすることで、芯2aの陰となって光を透過させることのできない部分の大きさを最小にすることができる。
【0019】
光源1a,1bは、連続発光させてよいし、断続的にパルス発光させてもよい。また、光源1aと光源1bとを交互に発光させたり、光源1a,1b又は集光器3a,3bにシャッタを設けたりして、光源1aの透過光と光源1bの透過光とが交互に無偏光ビームスプリッタ4に入射するようにするとよい。
【0020】
透過光を受光する集光器3a,3bは、光源1a,1bのそれぞれに対応して配置されている。そして、リンゴ2を透過した光源1aの透過光は集光器3aに集光され、リンゴ2を透過した光源1bの透過光は集光器3bに集光される。
なお、光源1a,1b及び集光器3a,3bは、二つに限らず、三つ以上とすることも可能である。また、リンゴ2の後方(無偏光ビームスプリッタ4側)に反射鏡やレンズ等を設けて透過光を屈折させ、複数の光源の透過光を単一の集光器に集光するようにすることも可能である。
【0021】
図2及び図3は、異なる複数の方向から光を照射するようにした他の実施形態の説明図である。
図2の例では、リンゴ2を搬送するコンベア10に沿って、光の照射方向が異なる角度になるように、二つの光源21a,21bと二つの集光器23a,23bとが離間して配置されている。二つの光源21a,21bによる光の照射方向は、前記したように90度となるようにするのがよい。
【0022】
そして、コンベア10によって搬送されたリンゴ2は、まず、光源21aと集光器23aとの間の位置で停止して光源21aから光が照射され、次いで、コンベア10によって光源21bと集光器23bとの間の位置まで移動して、光源21bから光が照射される。
【0023】
なお、この例では、無偏光ビームスプリッタ4,第一及び第二波長フィルタ5a,5b,光センサ6a,6b,比強度計算部7を含む装置本体Mを、光源21aと集光器23aの組及び光源21bと集光器23bの組の各々について設け、この二つの装置本体M,Mから比強度信号を共通の判別部8に入力するようにしている。
【0024】
図3の例では、コンベア10によるリンゴ2の搬送方向と直交する方向から光を照射できるように、二つの光源31a,31bと二つの集光器33a,33bとが離間して配置されている。
光源31a及び集光器33aと光源31b及び集光器33bとの間には、リンゴ2の姿勢を90度回転させる姿勢変換装置11が設けられている。
【0025】
この姿勢変換装置11は、駆動プーリ11a及び従動プーリ11bと、駆動プーリ11aと従動プーリ11bとの間に巻掛けられたベルト11cとを、コンベア10によるリンゴ2の搬送経路の両側に設けてなっている。
そして、各々のベルト11,11を互いに逆向きに走行させることで、コンベア10によって搬送されるリンゴ2を90度回転させるようになっている。
【0026】
コンベア10によって搬送されたリンゴ2は、まず、光源31aと集光器33aとの間の位置で停止して光源31aから光が照射され、次いで、コンベア10によって搬送される間に、姿勢変換装置11によって90度回転され、光源31bと集光器33bとの間の位置で光源21bから光が照射される。
【0027】
なお、特に図示はしないが、この図3の例では、図2の例と同様に、光源31aと集光器33aの組及び光源31bと集光器33bの組の各々に対応して二つの装置本体M,Mを設け、この装置本体M,Mから比強度信号が共通の判別部8に入力されるようにしている。
【0028】
リンゴ2に対して異なる方向から光を照射させる他の実施形態は、上記の図2及び図3に示すものには限られない。
例えば、サーボモータ等を用いて、芯2aを通る軸線を中心にリンゴ2を回転させ、リンゴ2が所定角度回転したところで、単一の光源から光を照射して内部品質の判別を行うようにしてもよい。
【0029】
図1に示すように、リンゴ2を透過し、集光器3a,3bによって集光された透過光は、無偏光ビームスプリッタ4によって二方向に分光される。無偏光ビームスプリッタ4を透過して直進した透過光は、第一波長フィルタ5aへ入射する。リンゴ2の透過分光スペクトルは、可視光領域では、550nm±30nm、630nm±30nm、700nm±30nmの範囲内に山となるピーク波長帯を有し、特に、700nm付近の強度が高く、次に、630nm付近の強度が高い。
【0030】
そこで、この実施形態では、第一波長フィルタ5aとして、700nm±30nmの狭域干渉フィルタを用いた。この第一波長フィルタ5aは、入射した透過光のうち、可視光領域の670nm〜730nmの範囲の光のみを選択的に透過する。もちろん、第一波長フィルタ5aとして他のピーク波長帯の光、例えば、630nm付近の光のみを選択的に透過させる狭域干渉フィルタを用いてもよい。
【0031】
また、無偏光ビームスプリッタ4で分波された他方の透過光は、第二波長フィルタ5bへ入射する。第二波長フィルタ5bは、780nm〜830nm狭域干渉フィルタであり、入射した透過光のうち、赤外領域の780nm〜830nmnmの範囲の光のみを選択的に透過する。
【0032】
第一及び第二波長フィルタ5a,5bを透過した光は、光センサ6a,6bに入射される。光センサ6a,6bとしては、可視光領域から近赤外光領域にかけて分光感度をもつシリコンフォトダイオードを用いることができる。もちろん、これに限定されるものではなく、光電子倍増管、太陽電池など要求される分光感度をもつものであればよい。
【0033】
光センサ6aから出力された第一透過光強度信号及び光センサ6bから出力された第二透過光強度信号とは、比強度計算部7に入力される。この実施形態では、光源1a,1bから交互にリンゴ2に対して光が照射されるので、光源1aの透過光による第一及び第二透過光強度信号と、光源1bの透過光による第一及び第二透過光強度信号とが、交互に比強度計算部7に入力されることになる。
したがって、比強度計算部7は、光源1aの光の照射による比強度と、光源1bの光の照射による比強度とをそれぞれ求め、比強度信号として判別部8に送る。
【0034】
判別部8には、比強度計算部7からの比強度信号が入力される。判別部8は、この比強度に基づいて、リンゴ2の内部品質の判別を行なう。この場合、判別部8には、光源1aの光の照射による比強度信号と、光源1bの光の照射による比強度信号とが交互に入力されるため、各々についてリンゴ2の内部品質の判別を行った後、これら各々の判別結果を総合して、リンゴ2の内部品質の最終的な判別を行う。
【0035】
例えば、リンゴ2の内部品質が、良品から順にA,B,Cと複数に区分けされている場合において、光源1aの光の照射による比強度に基づく判別結果がAで、かつ、光源1bの光の照射による比強度に基づく判別結果もAである場合は、判別部8は、最終的に、このリンゴ2の内部品質をAと判別する。
また、光源1aの光の照射による比強度に基づく判別結果がAであり、光源1bの光の照射による比強度に基づく判別結果がBである場合は、判別部8は、最終的に、このリンゴ2の内部品質をBと判別する。
このように、本発明は、異なる方向から光を照射し、それぞれの照射方向ごとに内部品質の判別を行い、これらを総合してリンゴ2の最終的な内部品質の判別を行うようにしているので、より正確にリンゴ2の内部品質を判別することができるという利点がある。
【0036】
なお、判別部8による内部品質の判別処理は、光源1a,1bの前面の所定位置に、内部品質の判別対象であるリンゴ2が位置していることを条件に行われる。リンゴ2が光源1a,1bの前面の所定位置に位置しているかどうかは、当該位置に設けられたセンサやスイッチ等からの出力信号によって判断することができる。
【0037】
次に、この判別部8による内部品質の判別の具体的な手法を、図4及び図5を参照しながら説明する。
図4に、リンゴの透過分光スペクトルの経時変化の一例を示す。
図4のグラフの横軸は透過光の波長(nm)を表し、縦軸は透過光強度(カウント数)を表す。グラフ中の曲線IVは、新鮮なリンゴの透過分光スペクトルを表す。また、破線Vは、日数が経過した後における同一のリンゴの透過分光スペクトルを表す。そして、曲線IV及び破線Vに示すように、日数が経過すると、果肉の含水量が低下するため、スペクトル強度が全体的に低下している。
【0038】
上記したように、リンゴ2の透過分光スペクトルの特徴として、近赤外領域である780nm〜830nmで一つの山となるピーク波長帯があり、また、可視光領域である550nm〜770nmの範囲内の630nm近傍及び700nm近傍で、二つの山となるピーク波長帯がある。
【0039】
そこで、この実施形態では、近赤外領域である780nm〜830nmにおけるピーク波長帯の透過光強度と、可視光領域である550nm〜780nmの範囲内の700nm付近におけるピーク波長帯の透過光強度とを利用して、リンゴの内部品質の判別を行う。
なお、褐変や含水率の低下,蜜の減少等は、ともに透過光強度の変化で判断することができるが、この実施形態の内部品質の判別においては、このうち、褐変の程度について判別を行うものとする。
【0040】
図5に、リンゴ2の透過光強度及び比強度の一例を示す。この実施形態では、内部に褐変が生じたリンゴ2のうち、内部品質の悪化の程度の軽いものから順に、A:蜜入りであるが蜜が中程度に褐変したもの(以下、蜜中褐変リンゴという)、B:内部の一部分に褐変が生じたリンゴ(以下、中褐変リンゴという)、及び、C:内部の大部分に褐変が生じたリンゴ(以下、大褐変リンゴという)の三通りに区分けされているものとする。
【0041】
図5の(a)は、リンゴの透過光の波長スペクトルを示すグラフである。グラフの横軸は波長(nm)を表し、縦軸は透過光強度を表す。ここでは、透過光強度を任意のカウント数で表している。そして、グラフ中の曲線Iaは、A:蜜中褐変リンゴの透過分光スペクトルを示し、破線IIaは、B:中褐変リンゴの透過分光スペクトルを示し、一点鎖線IIIaは、C:大褐変リンゴの透過分光スペクトルを示す。
【0042】
曲線Iaに示すように、A:蜜中褐変リンゴの透過分光スペクトルは、670nm〜730nmの可視光領域でのピーク強度が、540(カウント数)と高くなっている。これに対して、破線IIaに示すように、B:中褐変リンゴでは、同ピーク強度が、380(カウント数)と低下している。さらに、一点鎖線IIIaに示すように、C:大褐変リンゴでは、同ピーク強度が、150(カウント数)と大幅に低下している。
したがって、可視光領域のピーク強度は、蜜が褐変したものが高く、果肉が褐変すると大きく低下することが分かる。
【0043】
ところで、曲線Iaに示すように、A:蜜中褐変リンゴでは、780nm〜830nmの赤外領域のピーク強度も高くなっているが、破線IIa及び一点鎖線IIIaに示すように、果肉に褐変が生じたリンゴでは、赤外領域でのピーク強度が互いに同程度に低くなっている。
【0044】
そこで、図5の(b)に、赤外領域でのピーク強度を「1」として、規格化したスペクトルを示す。図5のグラフの横軸は波長(nm)を表し、縦軸は比強度(相対値)を表す。グラフ中の曲線Ibは、A:蜜中褐変リンゴの規格化スペクトルを表し、破線IIbは、B:中褐変リンゴの規格化スペクトルを表し、一点鎖線IIIbは、C:大褐変リンゴの規格化スペクトルを表す。
【0045】
破線IIbに示すように、B:中褐変リンゴの、赤外領域のピーク強度に対する可視光領域のピーク強度の比強度は1.7となっている。これに対して、曲線Ibに示すように、A:蜜中褐変リンゴの比強度は1.1となっている。また、一点鎖線IIIbに示すように、C:大褐変リンゴの比強度は、0.8となっている。
【0046】
したがって、図5の(a)に示した透過光強度から、図5の(b)に示した比強度を求めることにより、リンゴの内部品質を判別することができる。
例えば、A:蜜中褐変リンゴの場合は、曲線Iaに示したように透過光強度が540(カウント数)と高く、かつ、曲線Ibに示したように比強度が1.1と中程度である。これに対して、B:中褐変リンゴの場合は、破線IIaに示したように透過光強度が380(カウント数)と中程度であり、かつ、破線IIbに示したように比強度が1.7と高くなっている。
【0047】
また、C:大褐変リンゴの場合は、一点鎖線IIIaに示したように透過光強度が150と低く、かつ、一点鎖線IIIbに示したように比強度も0.8と低くなっている。
これにより、透過光強度から求めた比強度に基づいて、A:蜜中褐変リンゴと、B:中褐変リンゴ及びC:大褐変リンゴとの判別を容易に行うことができる。なお、可視光領域として、670nm〜730nmの範囲内の透過光強度を計測した例について説明したが、本発明では、これ以外の可視光領域のピーク波長帯の透過光強度を計測してもよい。また、可視光領域として、複数のピーク波長帯を計測してもよい。
【0048】
本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態により限定されるものではない。
例えば、上記の説明は、リンゴ2の芯2aを通る軸線を中心として、照射された光がα=90度になるように光源を配置又はリンゴを回転させているが、芯2aによってできる陰を小さくすることができるのであれば、光の照射方向は上記のもの及び角度には限定されず、複数のあらゆる方向から及びあらゆる角度でリンゴ2に向けて光を照射するようにしてもよい。
【0049】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、リンゴのような有芯青果物に光を照射して内部品質の判別を行うに際し、有芯青果物に対して複数方向から光を照射することで芯によってできる陰の部分を最小又は完全に無くし、内部品質を容易かつ確実に判別することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における内部品質検査装置の一実施形態の構成を説明するためのブロック図である。
【図2】リンゴに対して異なる方向から光を照射させる他の実施形態の説明図である。
【図3】リンゴに対して異なる方向から光を照射させる他の実施形態の説明図である。
【図4】透過光スペクトルの経時変化を示すグラフである。
【図5】(a)は、透過光スペクトルの計測結果を示すグラフであり、(b)は、(a)に示す測定結果を正規化したグラフである。
【符号の説明】
1a,1b 光源
2 リンゴ(有芯青果物)
3a,3b 集光器
4 無偏光ビームスプリッタ
5a,5b 波長フィルタ
6a,6b 光センサ
7 比強度計算部
8 判別部

Claims (8)

  1. 内部品質の判別対象である有芯青果物に対して複数の方向から光を照射し、各透過光ごとに、前記透過光の可視光領域から近赤外線領域においてピークを形成する複数の波長帯のうち、前記可視光領域における所定の波長帯の透過光強度、前記可視光領域における所定の波長帯の透過光強度と前記近赤外領域における所定の波長帯の透過光強度との比率である比強度、及び前記透過光強度と前記比強度との組み合わせの中のいずれかに基づいて、複数の褐変の程度の中から前記有芯青果物の褐変の程度がいずれであるかを判別する
    ことを特徴とする有芯青果物の内部品質検査方法。
  2. 前記光の照射角度を前記有芯青果物に対して相対的に変化させることで、有芯青果物に対して複数の方向から光を照射するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の有芯青果物の内部品質検査方法。
  3. 前記有芯青果物に単一の前記光源から光を照射し、前記有芯青果物を所定角度回転させることで前記光の照射方向を変化させることを特徴とする請求項2に記載の有芯青果物の内部品質検査方法。
  4. 複数の前記光源を、前記有芯青果物の周囲の異なる位置に配置し、この複数の光源から順次前記有芯青果物に向けて光を照射することを特徴とする請求項1又は2に記載の有芯青果物の内部品質検査方法。
  5. 光の照射方向を90度変化させることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の有芯青果物の内部品質検査方法。
  6. 可視光領域の検出すべき波長帯として、前記可視光領域のピーク波長帯として、550nm±30nm、630nm±30nm、700nm±30nmの群の中から少なくとも一つの波長帯を選択するとともに、前記近赤外領域のピーク波長帯として、780nm〜830nmを選択することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の有芯青果物の内部品質検査方法。
  7. 内部品質の判別対象である有芯青果物に対して光源から光を照射し、有芯青果物を透過した光の可視光領域から近赤外領域においてピークを形成する複数の波長帯のうち、前記可視光領域における所定の波長帯の透過光強度、前記可視光領域における所定の波長帯の透過光強度と前記近赤外領域における所定の波長帯の透過光強度との比率である比強度、及び前記透過光強度と前記比強度との組み合わせの中のいずれかに基づいて、前記有芯青果物の褐変の程度を判別する内部品質検査装置であって、
    前記光源から前記有芯青果物に照射される光の方向を変化させる光照射方向変換手段と、
    各方向からの光の照射ごとに、前記有芯青果物を透過した光に基づく前記透過光強度及び/又は前記比強度を求め、前記透過光強度、前記比強度及び前記透過光強度と前記比強度との組み合わせの中のいずれかに基づいて、全ての照射方向について前記有芯青果物の褐変の程度を総合的に判別する判別部と
    を有することを特徴とする有芯青果物の内部品質検査装置。
  8. 前記光照射方向変換手段は、前記有芯青果物に照射する光の方向を90度変化させるものであることを特徴とする請求項7に記載の有芯青果物の内部品質検査装置。
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