JP2011180032A - 透過光を利用する生物検査装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】検査対象物の透過光の特性を利用して検査を行う技術を提供する。
【解決手段】本発明は、生物の光の透過特性に基づいて検査を行う生物検査装置50を提供する。本生物検査装置50は、生物に照射光を照射する照射部11と、照射光が生物を透過した光である透過光を受光する受光部12と、透過光のスペクトルDsの波形に基づいて良品と不良品とを含む複数の分類のいずれであるかを判定する判定部30と、を備える。判定部30は、良品の透過光のスペクトルの波形の特徴である良品特徴と、不良品の透過光のスペクトルの波形の特徴である不良品特徴と、の少なくとも一方を使用して判定を行う。
【選択図】 図1

Description

本発明は、検査対象の光の透過状態に基づいて検査を行う非破壊検査装置に関し、特に生物の検査装置に関する。
従来から、検査対象である青果に光を透過させて、その透過状態に基づいて酸度などの内部品質を検査する非破壊検査装置が提案されている(特許文献1)。本検査は、検査対象である青果の含有成分物質の種々の官能基(たとえばO−HやC−H等)が特性の波長の周波数を吸収する点を利用して透過率に基づいて判定を行っている。
ところが、このような検査では、照射系であるハロゲンランプ等のスペクトル特性の径時変化、あるいは計測系である分光器の測定基準値の時間的な変動といった光環境の変化に起因して判定誤差の問題が発生していた。この問題に対して、特許文献1の技術では、人工青果物参照体を使用して校正を行う技術が提案されている。人工青果物参照体は、水溶液に光分散体を混入することで光透過率を調節した校正用の人工物である。
特開2007−232742号公報
しかし、透過光のスペクトルの特定帯域の光強度に基づく検査では、光の照射状態や検査対象の透過状態といった計測状態の変動に起因する誤差の本質的な排除が困難であった。
本発明は、上述の従来の課題の少なくとも一部を解決するために創作されたものであり、検査対象物の透過光の特性を利用して検査を行う技術を提供することを目的とする。
以下、上記課題を解決するのに有効な手段等につき、必要に応じて効果等を示しつつ説明する。
手段1.生物の光の透過特性に基づいて検査を行う生物検査装置であって、
前記生物に照射光を照射する照射部と、
前記生物を透過した照射光である透過光を受光する受光部と、
前記透過光のスペクトルの波形に基づいて良品と不良品とを含む複数の分類のいずれであるかを判定する判定部と、
を備え、
前記判定部は、前記良品の透過光のスペクトルの波形の特徴である良品特徴と、前記不良品の透過光のスペクトルの波形の特徴である不良品特徴と、の少なくとも一方を使用して前記判定を行う生物検査装置。
上記構成では、照射部によって照射された照射光が生物を透過して透過光が得られる。本構成では、その透過光のスペクトルの波形に基づいて良品と不良品とを含む複数の分類のいずれであるかが判定されるので、透過光の光量に関わらず波形によって正確な判定を実現することができる。本構成では、良品特徴と不良品特徴の少なくとも一方を使用して判定が行われるので、検査対象に応じた自由度の高い検査内容を実現することができる。なお、複数の分類には、良品と不良品とに限られず、たとえば保留や故障も含まれる。
手段2.前記判定部は、前記良品特徴と前記不良品特徴の双方を使用して前記良品であると判定する手段1の生物検査装置。
上記構成によれば、良品特徴と不良品特徴の双方を使用して判定が行われるので、信頼性の高い検査を実現することができる。さらに、不良品特徴を使用すれば、たとえば中腐れといった外部から分らない不良品の状態のように、透過光による検査の重要性が特に高い状態の検査精度だけを高めるといったきめ細かな検査をも可能とすることができる。
手段3.前記照射部は、相互に中心波長が相違する複数の発光ダイオードを備え、
前記生物検査装置は、さらに、前記照射光のスペクトルを操作するスペクトル操作部を有する手段1または2の生物検査装置。
上記構成によれば、照射光のスペクトルを操作することができるので、たとえば波形の特徴部分のみの帯域の照射による検査、あるいは良品特徴や不良品特徴の現れやすいスペクトルの照射光による検査といった検査の自由度を提供することができる。
なお、本発明は、生物検査装置だけでなく、生物検査方法、生物を検するためのプログラム、及びそのプログラムを格納する記憶媒体として具現化することができる。
第1実施形態の青果検査装置50の概略構成を示す模式図。 種々の状態におけるたまねぎの透過率の特性を示すグラフ。 青果の選別処理の処理内容を示すフローチャート。 判定処理の処理内容を示すフローチャート。 レベル調整処理前のスペクトルを示すグラフ。 レベル調整処理後のスペクトルを示すグラフ。 ピーク位置調整処理前のスペクトルを示すグラフ。 ピーク位置調整処理後のスペクトルを示すグラフ。 第1実施形態における青果の選別処理の処理内容を示すフローチャート。 重回帰分析におけるサンプリング状態を示すグラフ。 変形例における照射光のスペクトルを示すグラフ。
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図面に従って説明する。本実施形態は、近赤外光を使用する青果検査装置として具体化しており、まずは青果検査装置の基本構成を図1の模式図に基づいて説明する。青果検査装置は、生物検査装置とも呼ばれる。
図1は、第1実施形態の青果検査装置50の概略構成を示す模式図である。青果検査装置50は、計測ユニット10と、検査対象の青果Sを運ぶベルトコンベア15と、分光器20と、パーソナルコンピュータ30とを備えている。計測ユニット10は、近赤外光である照射光L1を照射する照射部11と、青果を透過した透過光L2を受光する受光部12と、受光した透過光L2を分光器20に伝達する光ファイバ13と、を備えている。照射光は、本実施形態では、波長600nm乃至850nmの範囲(帯域)の赤色光と近赤外光である。パーソナルコンピュータ30は、分析用ソフトウェア31を備えている。パーソナルコンピュータ30は、判定部とも呼ばれる。
照射部11は、可視光の赤色LED(中心波長660nm近辺)と、近赤外光を照射する複数個の特殊波長LEDとを光源として備えている。特殊波長LEDは、特殊用途のLEDとして開発され、近赤外の帯域では、すでに5nm〜10nm刻みの中心波長のLEDが利用可能である。照射部11は、LEDを光源としているので、安定したスペクトルで照射できる。さらに、照射部11は、中心波長が相互に相違する複数のLED光源を有しているので、スペクトルの操作も可能である。ただし、光源は、LEDに限られず、ハロゲンランプ等の広い発光スペクトルを有することによって、600nm乃至850nmの範囲をカバーできるものでもよい。
受光部12は、光学部品であり、受光した光を光ファイバ13に伝達する。光ファイバ13は、その受光した分光器20に伝達する。分光器20は、波長600nm乃至850nmの帯域の光の強度を表すデジタル信号としてのスペクトルデータDsを生成する。スペクトルデータDsは、光の強度を1nm毎にAD変換した値を含む150個程度のデータの集合であり、パーソナルコンピュータ30に電気信号として送信される。
パーソナルコンピュータ30の分析用ソフトウェア31は、透過率算出機能を有している。透過率算出機能は、照射光L1に対する検査対象の青果の透過光L2の強度を波長ごとに算出する機能である。透過率は、照射光特性データを基準値として算出される。これにより、照射部11の5個のLEDの光源で形成される照射光の特性を利用して透過率を計算することができる。照射光L1の特性は、予め設定された複数パターンの照度調整(5個のLEDの光量バランス)毎に取得するようにしてもよい。
基準値は、たとえば減光フィルタ(Neutral Density Fiter)で減光して照射光の特性(波長毎の受光量)をハードディスクに格納することによって利用可能となる。減光するのは、検査対称の透過光に近い光強度レベルにするためである。減光フィルタは、吸収特性が波長にかかわらず均一な吸収特性のものを使用することが好ましい。
次に、図2を参照して青果検査装置50を使用した判定処理の原理を説明する。図2は、予め想定されている種々の状態におけるたまねぎの透過率の特性を示すグラフである。グラフG1は良品のたまねぎの透過率特性である。グラフG2は中腐れが発生している状態のたまねぎの透過率特性である。グラフG3は一枚腐れが発生している状態のたまねぎの透過率特性である。グラフG4は欠損が発生している状態のたまねぎの透過率特性である。
たまねぎの各状態は、以下の意味を有している。
(1)中腐れとは、内部に腐敗が発生している状態を意味する。
(2)一枚腐れとは、表皮に腐敗が発生している状態を意味する。
(3)欠損は、傷や欠けが発生している状態を意味する。
(4)良品は、予め想定された欠陥が存在しない状態を意味する。
これらの中で、中腐れの状態は、外部からの目視で発見することができないので、検出精度あるいは検出の信頼性(見落としがないこと。)が最も要求される状態である。
本発明者は、各状態の透過率特性に基づいて以下の特性を見出した。
(1)第1特性(良品共通特性):良品は、波長630nm近傍から660nm近傍に向かって急激な光量の上昇が見られる。中腐れ(グラフG2)、一枚腐れ(グラフG3)、及び欠損の状態(グラフG4)は、このような特徴が明確に現れないという共通の特徴を有している。このような特徴は、良品特徴とも呼ばれる。なお、欠損の状態では、透過の方向によってばらつきが見られるので、明確な特徴として確認することができない。
(2)第2特性(中腐れなし固有特性):中腐れが存在しない場合には、波長720nm近傍から740nm近傍に向かう急激な光量の低下に顕著な差が見られる(グラフG1、G2)。この特徴は、中腐れにのみ見られる特徴であり、不良品特徴とも呼ばれる。
次に、図3を参照して青果検査装置50を使用した青果の選別処理の内容を説明する。図3は、第1実施形態における青果の選別処理の処理内容を示すフローチャートである。ステップS10では、オペレータは、校正処理を実行する。校正処理は、前述のように減光フィルタで減光された照射光の特性(波長毎の受光量)をハードディスクに格納(更新)することによって行われる。これにより、検査の準備が完了したことになる。
ステップS20では、オペレータは、青果検査装置50を操作して照射パルスの出力を開始させる。照射パルスは、一定間隔(たとえば5m秒)で照射される。照射間隔は、パーソナルコンピュータ30と分光器20の処理速度に基づいて予め決定された時間間隔である。具体的には、本実施形態では、照射間隔の間に判定処理が完了する範囲において設定されることになる。
ステップS30では、オペレータは、青果検査装置50を操作してベルトコンベア15による青果Sの搬送を開始する。搬送の速度は、各青果Sに対して予め設定された回数(たとえば5回)の透過光データが取得できる速度として決定される。透過光データは、光ファイバ13を介して分光器20に送られ、デジタル信号が生成される。デジタル信号は、パーソナルコンピュータ30に電気信号として送信される。
ステップS40では、パーソナルコンピュータ30は、判定処理を実行する。判定処理とは、各青果Sが良品であるか否かを判定する処理である。判定処理の結果、青果Sが不良品と判定されると(ステップS50)、搬送先変更処理が実行される(ステップS60)。搬送先変更処理は、パーソナルコンピュータ30がベルトコンベア15を操作して、不良品と判定された青果Sを出荷対象から排除するために別ルート(図示省略)に流す処理である。
このような処理(ステップS10〜ステップS60)は、オペレータによって選別の停止指示が行われるまで継続されることになる(ステップS70)。
次に、図4を参照して青果検査装置50を使用した判定処理の原理を説明する。図4は、第1実施形態における判定処理の処理内容を示すフローチャートである。ステップS41では、パーソナルコンピュータ30は、スペクトルデータ取得処理を実行する。スペクトルデータ取得処理とは、分光器20から受信したスペクトルデータDsを受信する処理である。スペクトルデータDsは、前述のように600nm乃至850nmの範囲の光について1nm毎の光の強度を表す150個ほどのデジタル信号の集合である。
ステップS42では、パーソナルコンピュータ30は、ピーク値決定処理を実行する。ピーク値決定処理とは、青果Sの良品において予め想定されている2つのピークP1s、P2sにおけるレベル値を決定する処理である。2つのピークP1s、P2sにおけるレベル値の決定は、たとえば150個ほどのデジタル信号に対して平滑化処理を行って微分値が正から負に変化する波長におけるAD変換値として決定することができる。
2つのピークP1s、P2sにおけるレベル値の決定は、予め想定されている波長帯において行われる。具体的には、たとえば第1のピークP1と第2のピークP2におけるピーク値hp1、hp2は、それぞれ波長が800nm〜830nmの範囲と、波長が690nm〜730nmの範囲とにおいて捜索される。本実施形態では、波長が800nm〜830nmの範囲における第1のピークにおけるレベル値が最大ピーク値hp1を有しているものとする。
ステップS43では、パーソナルコンピュータ30は、最大ピーク値hp1が予め設定されている閾値Thよりも大きいか否かでデータの有効性を確認する。最大ピーク値hp1が閾値Th以下のときには有効なデータではないとしてデータが廃棄され、処理がステップS41に戻される。一方、データが有効であると判断された場合には、処理がステップS44に進められる。
ステップS44では、パーソナルコンピュータ30は、レベル調整処理を実行する。レベル調整処理とは、スペクトルデータDsが有する150個ほどのデジタル信号のレベルを調整して波形による判定を可能とするための処理である。これにより、最大ピーク値hp1も、この調整によって基準スペクトルと一致することになる。
図5は、第1実施形態におけるレベル調整処理前のスペクトルを示すグラフである。振幅Arefは、予め想定されている良品の青果のスペクトルである基準スペクトルの基準ピークP1rにおける最大振幅値である。振幅As(レベル)は、検査対象の青果SのスペクトルデータDsのピークP1sにおける最大振幅値(最大ピーク値hp1)である。
図6は、第1実施形態におけるレベル調整処理後のスペクトルを示すグラフである。本図では、スペクトルデータDs1は、スペクトルデータDsのレベル調整処理後のデータである。スペクトルデータDs1では、スペクトルデータDs1の全データ(AD変換値)のレベル調整が行われ、最大振幅値が振幅Arefに一致している。これにより、透過状態、すなわち青果Sの透過位置の厚み等に起因するレベルの変動を排除することができる。
ステップS45では、パーソナルコンピュータ30は、ピーク位置調整処理を実行する。ピーク位置調整処理とは、計測データの2つのピークの各々の波長を基準スペクトルの2つのピークの各々の波長にそれぞれ一致させることによって波長のずれを抑制するための処理である。これにより、スペクトルデータDsのレベル(強度)と波長とが基準スペクトルに一致したことになるので、純粋に波形による良品判定が可能な状態となった。
図7は、第1実施形態におけるピーク位置調整処理前のスペクトルを示すグラフである。基準ピークP1rの波長は、予め想定されている良品の青果のスペクトルである基準スペクトルの最大振幅位置における波長である。ピークP1sの波長は、検査対象の青果SのスペクトルデータDs1の最大振幅位置における波長である。ピークP2sの波長は、検査対象の青果SのスペクトルデータDs1の他のピーク位置における波長である。
図8は、第1実施形態におけるピーク位置調整処理後のスペクトルを示すグラフである。本図では、スペクトルデータDs2は、スペクトルデータDs1のレベルピーク位置調整処理後のデータである。スペクトルデータDs2では、スペクトルデータDs1の波長の調整が行われ、2つのピーク波長の各々がそれぞれ基準ピークP1r、P2rの波長に一致している。これにより、波長のズレに起因する検査誤差を排除することができる。
ステップS46では、パーソナルコンピュータ30は、良品共通特性がスペクトルデータDsに見られるか否かを判定する。良品共通特性は、波長630nm近傍から660nm近傍に向かって急激な光量の上昇R1を特徴とする特性である。この特徴が見られない場合には、処理がステップS48に進められ、不良品との判定がなされて不良品のフラグが立てられることになる。一方、この特徴が見られる場合には、処理がステップS47に進められる。
ステップS47では、パーソナルコンピュータ30は、中腐れなし固有の特性がスペクトルデータDsに見られるか否かを判定する。中腐れなし固有の特性は、波長720nm近傍から740nm近傍に向かう急激な光量の低下R2を特徴とする特性である。この例では、基準ピークP2rの波長は720nmである。この特徴が見られない場合には、不良品との判定がなされて不良品のフラグが立てられることになる。一方、この特徴が見られる場合には、処理がステップS49に進められ、良品との判定がなされて、良品のフラグが立てられることになる。
このような処理が完了すると、良品あるいは不良品のフラグが立てられた状態で、処理がメインルーチンのステップS50(図4参照)に戻されることになる。ステップS50では、フラグに基づいて良否が判定される。
このように、第1の実施形態では、透過光のスペクトルの波形の特徴を利用して良否を判定しているので、原理的に分光器20の基準値に変動があっても原理的に判定性能に影響を与えないので信頼性の高い判定を実現している。さらに、第1の実施形態は、特に検査の信頼性が要求される不良モード(中腐れ)の検出精度を高めることができるという利点をも有している。ただし、不良モード(中腐れ)の検出は必須の構成要素ではなく、良品特徴と不良品特徴の少なくとも一方を使用して判定するものであればよい。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について、図9及び図10を参照して第1の実施形態との相違点を中心に説明する。本実施形態では、パーソナルコンピュータ30が重回帰分析によって良否を判定する点で第1の実施形態と相違し、他の構成を共通としている。
図9は、第2実施形態における判定処理の処理内容を示すフローチャートである。第2実施形態の判定処理は、良品判定(ステップS46a)と中腐れなし判定(ステップS47a)とが重回帰分析で処理されている点を除き、第1実施形態と共通している。
重回帰分析とは、回帰分析の独立変数が複数になったものである。回帰分析とは、従属変数y(目的変数)と連続尺度の独立変数(説明変数)の間に予測式を設定し、従属変数を説明変数によって予測する分析である。予測式は、本実施形態では、スペクトルデータDsに基づいて良品か否かの判定である良品判定(ステップS46a)と、中腐れなしか否かの判定である中腐れなし判定(ステップS47a)とが行われる。
予測式は、目的変数Yと、説明変数(X1〜Xn)と、偏回帰係数(a1〜an)とを使用する重回帰式(Y=a1*X1+a2*X2+・・・an*Xn+定数項b)として表される式である。良品判定(ステップS46a)では、目的変数Yは良品か否かを百分率で表され、説明変数(X1〜Xn)はスペクトルデータDsの波形のサンプリングデータであり、偏回帰係数(a1〜an)は予め設定された値である。
図10は、スペクトルデータDs2の波形のサンプリングの様子を示すグラフである。スペクトルデータDs2は、第1実施形態と同様にレベル調整と波長調整とが行われたデータである。サンプリングデータは、本実施形態では、5nm毎にサンプリングされたAD変換値Snpである。なお、サンプリングデータは、ノイズが十分に小さく、波長調整も不要である場合には最初から5nm毎にAD変換値を取得するようにしてもよい。
偏回帰係数(a1〜an)は、決定手法が確立されており、良品判定については以下のようにして決定することができる。
(1)目視判定処理:予め数十個の青果の計測を行うとともに、その青果の良否をオペレータが切断等を行って目視で判定する。
(2)定量化処理:目視判定の結果は、たとえば良否判定の場合には、良品を100%とし、不良品を0%として簡単に決定することもできる。
(3)偏回帰係数決定処理:青果毎に、目視判定の結果(%)と、重回帰式で算出される目的変数Y(%)との残差δ(%)を使用し、残差δ(%)の二乗の和が最小となるように偏回帰係数が決定される(最小二乗法)。
偏回帰係数(a1〜an)は、中腐れなし判定(ステップS47a)については定量化処理において、目視判定の結果が、たとえば中腐れなしを100%とし、中腐れ有りを0%とすることによって簡単に決定することもできる。この定量化の際には、一枚腐れや欠損、良否については判定しないようにすることによって、中腐れなしのスペクトルのみに着目した偏回帰係数を決定することができる。
偏回帰係数の決定は、スペクトルデータのサンプリングと検査の目的の定量化(良品:100%、不良品10%)といった作業によって行うことができ、解析等の作業が不要なので簡単に実現することができる。さらに、重回帰式による判定精度と偏回帰係数とに基づいて解析を行うことも可能である。係数の絶対値が大きな波長の部分がスペクトルの波形の特徴を有する部分として判断できるからである。
このように、第2実施形態では、重回帰分析によって第1実施形態と同様の処理を実現している。重回帰分析によれば、検査の目的を明確化し、これを定量化するだけで解析等を行うことなく検査の判定方法と基準とが自動的に作成されるので、簡易な実装が可能となる。ただし、不良モード(中腐れ)の検出は、本実施形態においても必須の構成要素ではなく、良品特徴と不良品特徴の少なくとも一方を使用して判定するものであればよい。
(変形例)
なお、上述した各実施の形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。
(a)上述した各実施形態では、レベル調整と波長調整とが実施されているが、波長のばらつきが小さいときには波長調整は省略可能である。青果においては、波長のばらつきは小さい場合が多いことが本発明者によって見出された。
(b)上述した各実施形態では、照射光L1は、一度のパルスで検査に使用されるスペクトルを取得しているが、たとえば複数回のパルスの照射光で部分毎に取得するようにしてもよい。
具体的には、たとえば図11に示されるように、4回のパルスでスペクトルを取得するようにしてもよい。第1のパルスでは、中心波長660nm近辺の赤色LEDを使用して帯域W1のスペクトルが取得される。第2のパルスでは、中心波長700nmの近赤外の特殊波長LEDを使用して帯域W2のスペクトルが取得される。第3のパルスでは、中心波長740nmの近赤外の特殊波長LEDを使用して帯域W3のスペクトルが取得される。第4のパルスでは、中心波長810nmの近赤外の特殊波長LEDを使用して帯域W4のスペクトルが取得される。
本構成では、パルス毎のピーク値を使用して、以下のような処理も可能である。
(1)第4のパルス(帯域W4)のピーク値を使用してデータの可否の判定とレベル調整の調整量を決定することができる。
(2)第1のパルス(帯域W1)の複数のサンプル値(たとえば5nm毎)を使用して良否を判定することができる。
(3)第2のパルス(帯域W2)と第3のパルス(帯域W3)のピーク値を使用し、その差分に基づいて中腐れなしを判定することができる。
なお、ピーク値の代わりに平均値やサンプル値を利用するようにしてもよい。
(c)上述した各実施形態では、照射部と受光部は一対であるが、たとえば複数対の照射部と受光部を備えるように構成してもよい。さらに、複数対の照射部と受光部を備える場合には、ベルトコンベアの搬送方向に対して垂直な方向(実施形態の例)だけでなく、搬送方向に対して傾斜を有する方向に装備してもよい。さらに、受光部はCCDを含む構成であってもよい。
(d)上述した各実施形態では、たまねぎの検査を例にとって説明がなされているが、たとえばじゃがいもやみかん、りんごといった他の青果についても適用が可能である。特に、じゃがいも、みかん、及びりんごについては、上記とほぼ同一の基準で検査が可能であることが本発明者によって確認された。さらに、本発明は、青果に限られず、魚、肉、餃子といった生物(食品を含む)、残留農薬を含む生物といった特定の帯域の光を透過する物体の内部品質の検査に広く適用することができる。
10…計測ユニット、11…照射部、12…受光部、13…光ファイバ、15…ベルトコンベア、20…分光器、30…パーソナルコンピュータ、31…分析用ソフトウェア、
50…青果検査装置。

Claims (3)

  1. 生物の光の透過特性に基づいて検査を行う生物検査装置であって、
    前記生物に照射光を照射する照射部と、
    前記生物を透過した照射光である透過光を受光する受光部と、
    前記透過光のスペクトルの波形に基づいて良品と不良品とを含む複数の分類のいずれであるかを判定する判定部と、
    を備え、
    前記判定部は、前記良品の透過光のスペクトルの波形の特徴である良品特徴と、前記不良品の透過光のスペクトルの波形の特徴である不良品特徴と、の少なくとも一方を使用して前記判定を行う生物検査装置。
  2. 前記判定部は、前記良品特徴と前記不良品特徴の双方を使用して前記良品であると判定する請求項1記載の生物検査装置。
  3. 前記照射部は、相互に中心波長が相違する複数の発光ダイオードを備え、
    前記生物検査装置は、さらに、前記照射光のスペクトルを操作するスペクトル操作部を有する請求項1または2に記載の生物検査装置。
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