JP3792162B2 - 可変容量圧縮機 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主として空調装置において任意の量の冷媒を圧縮するために使用される可変容量圧縮機に係り、その中でも、駆動軸に傾斜し得るドライブプレートが取り付けられていて、それによって複数個のピストンが往復運動を強制されると共に、吐出容量を変化させるために、駆動軸に対して垂直な平面に対するドライブプレートの傾斜角度が無段階に変更可能となっている形式のピストン式可変容量圧縮機に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のピストン式可変容量圧縮機には代表的な2つの形式がある。その一つの形式は、傾斜した状態で駆動軸に取り付けられて回転運動と揺動運動をする斜板の表裏の面に対して、ピストンロッドの端部に取り付けられた2個の半球形シューを直接に摩擦接触させることにより、ピストンへ直接に往復運動を取り出すものである。この形式の圧縮機における問題は、圧縮機の高速回転時に斜板とシューとの間の相対的な摺動速度が大きくなるために、潤滑油の供給量が不足するような運転条件下では斜板とシューとの間の潤滑状態が不良となり、焼き付き等の不具合が発生しやすいということである。また、斜板とシューが摩擦接触をしているので、転がり接触の場合に比べて機械損失が大きいという問題もある。
【0003】
他の一つの形式は、斜板とシューとの間の摩擦の大きい滑り接触を転がり接触に改めて機械損失等を低減させるもので、その一例が特開2001−123945号公報に記載されている。
この形式においては、ピストンの一端に、ピストンの軸線に対して自由に傾斜することができるシューを取り付けると共に、このシューと斜板との間にスラストニードルベアリングを介在させることによって、滑り接触部分が転がり接触部分になるように構成する。しかしながら、これらの構成要素だけでは、ピストンをシリンダボア内へ押し込んで流体を圧縮する圧縮作動をさせることはできるものの、シリンダボアからピストンを引き抜いて流体を吸入する吸入作動をすることはできない。何故なら、スラストニードルベアリングは軸方向の圧縮荷重を支持することはできるが,引張り荷重を伝達或いは支持することができないからである。
【0004】
そこで、前述の特開2001−123945号公報に記載された圧縮機においては、吸入作動を可能にするために、ピストンの端部に取り付けられたシューを適当な隙間をもって嵌合保持する揺動部材と、駆動軸にその軸方向に摺動自由に嵌合するスライダを設けて、揺動部材とスライダを転がり軸受によって結合すると共に、スライダをコイルスプリングによって斜板の方へ付勢するという構成をとっている。この例における圧縮機は固定容量型であるが、もし、斜板の傾斜角度を変更可能に構成して圧縮機を可変容量型のものに改造しようとしても、このような構成では、シューを嵌合保持している揺動部材の傾斜角度を変化させることが不可能であるから、この圧縮機を可変容量型とすることはできない。
【0005】
また、この例では、従来のこの種の圧縮機において慣用される構造と同様に、駆動軸が、斜板(ドライブプレート)や、それによって軸受を介して駆動される揺動部材(シュー押さえ板)の中心部を貫通して、シリンダブロックの内部まで伸びているので、シリンダブロックの内部に軸受を設けて駆動軸の先端を支持している。この場合はドライブプレート以外に駆動軸によって駆動する必要があるものがないのに、駆動軸が揺動部材等を貫通して後方のシリンダブロックまで伸びているため、圧縮機全体が必要以上に大型化するという問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来技術における前述のような諸問題に鑑み、それらの問題を解消することができる新規な構成のピストン式可変容量圧縮機を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、この課題を解決するための手段として特許請求の範囲の請求項1に記載されたピストン式可変容量圧縮機を提供する。
この圧縮機においては、ピストンに連結されたシューが、シューとドライブプレートの間に配設されたドライブスラストベアリングを介して、圧縮作動に必要な荷重を支持するため、従来の斜板型圧縮機におけるシューのように、荷重を支持しながら高速で滑り摩擦摺動をするというというようなことがないため、摺動部分の摩擦による焼き付きや、機械損失の増大などの恐れがなくなる。
【0008】
更に、このシューは、半径方向に複数個のシュー案内溝が形成されたシュー押さえ板によってドライブスラストベアリングの側へ付勢され、ドライブプレートと、ドライブスラストベアリングと、シューとのそれぞれの間に空隙が生じるのを防止しているが、このシュー押さえ板は、ドライブプレートの自転軸上に相対回転自在に支持されているため、圧縮機の吐出容量を変化させるためにドライブプレートの傾斜角度を変化させた場合でも、ドライブプレートの傾斜に完全に追従して同じ傾斜角度をとる。従って、シューとドライブプレートの間隔は常に一定に保たれ、吐出容量を変更する時に両者の間のクリアランスが増加するというような不具合が生じない。
【0009】
請求項2に記載されたピストン式可変容量圧縮機においては、ピストンに係合しているシューが、シュー本体とそれに設けられたシュー鍔部によって、シュー押さえ板に半径方向に形成されたシュー案内溝に係合しているので、シューは常に確実にドライブプレート側へ付勢される。この場合、シューとシュー押さえ板との接触部分の面積は、面荷重を小さくするという観点から大きくすることが望ましい。
【0010】
従来、この種のシューの形状は一般的に円盤形とすることが多いが、前述のように接触面積を大きくするためにシューの直径を大きくすると、ドライブプレートの周辺部からはみ出すので、ドライブプレートを大径のものとする結果、圧縮機の胴径が大きくなるし、中心部側では、シューがシュー押さえ板の中心部と干渉するというような問題が生じる。これに対して、請求項2に記載されたピストン式可変容量圧縮機の場合は、シューを略長方形の形状等とすることが可能になるので、円盤形のシューに比べて小さくて、ドライブプレートの周辺部からはみ出したり、中心部で干渉する恐れがないにもかかわらず、シュー押さえ板に確実に係合して、シューとの接触面積を増加させることができる。
【0011】
請求項3に記載されたピストン式可変容量圧縮機においては、駆動軸とドライブプレートを連結するために、駆動軸の軸心から離れた位置に複数個のピンとそれらのピンが係合する複数個の案内溝からなるダブルスライドリンク機構を設けているので、ドライブプレートとシュー押さえ板が適正な姿勢及び位置を維持しながら、駆動軸に対して垂直な仮想の平面に対する傾斜角度を円滑に変化することができることは勿論であるが、この機構によって、駆動軸がドライブプレートと、このドライブプレートの傾斜回転運動をピストンの往復運動に変換する機構に含まれるシュー押さえ板のような部材等の中心部を貫通する必要がなくなるので、このシュー押さえ板のような部材をドライブプレートに回転自在に結合するために当然に必要になる、押さえ板スラストベアリングのような軸受手段を小径化することができる。従って、圧縮機全体の体格を小型化することができる。
【0012】
請求項4のピストン式可変容量圧縮機においては、請求項3に記載された圧縮機を具体化するための手段として、ベアリングによって圧縮機ハウジングの前端部のみによって軸承される駆動軸を用いることを提案している。この場合は、駆動軸がドライブプレートや、シュー押さえ板のような部材を貫通する必要が全くないので、圧縮機全体を小型化することができる。
【0013】
請求項5ないし9に記載されたピストン式可変容量圧縮機においては、ピストンの構造を、予め球形端部と一体に成形された円錐形肩部と、該円錐形肩部に対して一体化された円筒部と、該円筒部に対して一体化された底部とから構成すること、及び、予め球形端部と一体に成形された円錐形肩部と、予め該円錐形肩部と一体に成形された円筒部と、該円筒部に対して一体化された底部とから構成すること、及び、予め球形端部と一体に成形された円錐形肩部と、該円錐形肩部に対して一体化された円筒部と、予め該円筒部と一体に成形された底部とから構成すること、及び、球形端部に対して一体化された円錐形肩部と、該円錐形肩部に対して一体化された円筒部と、該円筒部に対して一体化された底部とから構成すること、及び、球形端部に対して一体化された円錐形肩部と、予め該円錐形肩部と一体に成形された円筒部と、予め該円筒部と一体に成形された底部とから構成することのいずれかの構造を採用することができる。それによって、応力集中部がない丈夫なピストンが得られる。
【0014】
請求項10に記載されたピストン式可変容量圧縮機においては、ピストンを構成するこれらの部材が溶接もしくはかしめ加工によって結合して強固に一体化される。また、請求項11に記載されたピストン式可変容量圧縮機においては、前述のピストンを中空の構造とすることができる。それによってピストンが軽量化されるために、ピストンを支持したり、或いは駆動する機構に無理な力が作用しないのと、ピストンを駆動するために必要な動力量が比較的に小さくなる。
【0015】
請求項12に記載されたピストン式可変容量圧縮機においては、ピストンを鉄系の材料から製作することができる。それによって、従来からよく使用されているアルミニウム製のピストンよりも強度及び耐久性が大幅に向上するし、中空の構造とすれば重量の増加も問題にならない。
【0016】
請求項13に記載されたピストン式可変容量圧縮機においては、ドライブプレートに、少なくともそのドライブプレートの傾斜角度が大なる状態においては傾斜角度が減少する方向に、そして傾斜角度が零又は最小となる運転状態においては傾斜角度が増大する方向にドライブプレートを付勢するねじりコイルばねを設けることができる。このねじりコイルばねを設けることによって、ドライブプレートの傾斜角度が零又は最小となる時に、ねじりコイルばねがドライブプレートを付勢してその傾斜角度を増大させるので、それに対抗する力が作用していなければドライブプレートの傾斜角度が増加するため、次に吐出容量を増加させる必要が生じた時に迅速に応答することができる。
【0017】
請求項14に記載されたピストン式可変容量圧縮機においては、前述のねじりコイルばねを単一で且つ一連のものとすることができる。それによってドライブプレートの傾斜角度を増大させるための付勢手段の構成が簡素になり、従来のようにコイルスプリングを2個使用した場合に比べて部品点数が少なくなる。
【0018】
請求項15に記載されたピストン式可変容量圧縮機においては、シューがシュー本体とシュー鍔部とからなっていて、シュー本体がピストン側の球形端部を鋳込むように鋳造によって成形されている。また、請求項15に記載されたピストン式可変容量圧縮機においては、ピストンがシューに連結されるコネクティングロッド側の球形端部を鋳込むように鋳造によって成形されている。従って、いずれの場合も球形端部の形状が鋳造によってそれを取り囲むシュー或いはピストン側の球形の窪みに転写されるので、球形の窪みを機械的に加工する必要もなく、同等の表面精度が自動的に得られる。しかも、かしめ加工をしないので、窪みを形成する部材の肉厚を任意に大きくして強化することができる。
【0019】
請求項17に記載されたピストン式可変容量圧縮機においては、ドライブスラストベアリングとして、複数個の同心円上に分けて放射状に配列された多数の短いコロを備えているものを使用することができる。それぞれのコロが短いので、それらの両端における周速の差が小さくなってスリップ率が減少する。しかし、同心円上に多数のコロが配置されて荷重を負担するので、長くてスリップ率が大きいコロを使用する場合と同等の大きい荷重を支持することができる。従って、ドライブスラストベアリングの摩耗が少なくなり、動力損失も低減する。
【0020】
具体的に、請求項18に記載されたピストン式可変容量圧縮機においては、複数個の同心円上に分けて放射状に配列される多数の短いコロを、それぞれの同心円ごとに別の保持器によって保持することができる。つまり、複数個の別の同心円状の保持器を使用することになる。また、請求項19に記載されたピストン式可変容量圧縮機においては、複数個の同心円上に分けて放射状に配列された多数の短いコロを共通の保持器によって保持することもできる。更に、請求項20に記載されたピストン式可変容量圧縮機においては、複数個の同心円上に分けて放射状に配列される多数の短いコロのうちで半径方向に同じ線上に並んでいる複数個のコロを、共通の保持器に形成された同じ窓開口によって保持するように構成することもできる。
【0021】
請求項21に記載されたピストン式可変容量圧縮機においては、シュー押さえ板によって押えられるシューとして、シュー本体と一体のシュー鍔部とを備えているものを使用すると共に、シュー鍔部の平面形状を実質的に長方形とすることができる。請求項22に記載されたピストン式可変容量圧縮機においてはシュー鍔部の平面形状を実質的に扇形とすることができる。更に、請求項23に記載されたピストン式可変容量圧縮機においては、シュー鍔部の平面形状を実質的に長方形と扇形の中間の形状とすることができる。いずれの場合も、シュー鍔部の平面的な大きさを円形の場合に比べて相互の干渉を避けながら可及的に大きくすることができるので、シューの摺動が円滑になることから、吐出容量の変更を円滑に行なうことができる。
【0022】
請求項24に記載されたピストン式可変容量圧縮機においては、シュー押さえ板及びドライブスラストベアリングを取り除いて、シューをドライブプレートに対して直接に摺動可能に係合させる。つまり、ドライブプレートとシューの係合部分は従来からよく行なわれている構成とするが、駆動軸はドライブプレートを貫通しておらず、ドライブプレートがハウジングの前端部分のみによって支持されている。従って、このような構成によっても前述のような本発明の効果を得ることができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
図1から図4は本発明のピストン式可変容量圧縮機の第1実施例を示すものである。最大の吐出容量をもたらす運転状態における圧縮機全体の縦断面構造を示す図1において、1は圧縮機の外殻の一部であるフロントハウジング、2はシリンダブロックであって、フロントハウジング1の内部へ挿入され、通しボルトのような締結手段によってフロントハウジング1及び後部のリアハウジング3と一体化されている。シリンダブロック2の内部には図1において横方向(後述の「軸方向」)に複数個(例えば6個)のシリンダボア21が、中心線の周りに概ね均等に形成されている。リアハウジング3の内部の外周部分には空間としての吸入室31が形成されていると共に、中心部分には空間としての吐出室32が形成されている。
【0024】
4は外部の動力源から回転動力を受け入れるための駆動軸であって、それと直交するように円板部41が一体的に形成されている。円板部41の外周の一部から1枚の半径方向のアーム42が概ね軸方向に突出するように設けられている。アーム42にはカムとしての2つの案内溝、即ち、上部案内溝43と下部案内溝44が上下の所定の位置に所定の形状で形成されている。駆動軸4はラジアルベアリング402及び404を介してフロントハウジング1によって軸承されていると共に、円板部41の背面を支持するスラストベアリング403を介して、軸方向にもフロントハウジング1によって軸承されている。なお、これらの軸承部分には軸封装置401が設けられて、駆動軸4の周りから流体が外部へ漏洩するのを防止している。
【0025】
5はドライブプレートであって、概ね円板形のディスク部分5aと、その中心部から突出するように形成された軸部分5bと、軸部分5bの周りにおいてディスク部分5aから円環状に突出するリム部分5c等からなっている。ドライブプレート5はその背面から円板部41に向かって突出する2枚の半径方向のアーム51を備えており、2枚のアーム51の間に2本のピン52及び53を支持している。これらのピン52及び53は、前述の駆動軸4側のアーム42に形成された上部案内溝43及び下部案内溝44に挿入されて摺動可能に係合している。それによってドライブプレート5は駆動軸4と共に回転することができると共に、駆動軸4に対して傾斜することができる。
【0026】
ドライブプレート5の軸部分5bには、中心に開口を有するシュー押さえ板6が嵌め込まれ、押さえ板スラストベアリング601及びロックナット9によってドライブプレート5に対して回転自在に結合されている。シュー押さえ板6は、後述のシュー8及びドライブスラストベアリング500を、ドライブプレート5との間で挟持すると共に、シュー8の半径方向の移動を案内するために用いられる。なお、ドライブプレート5の軸部分5bにはロックナット9を螺着するための雄螺子部が設けられている。
【0027】
第1実施例におけるシュー押さえ板6の具体的な形状は、図1や図2に加えて図3をも参照すれば明らかである。シュー押さえ板6は中央に円形の窪み6aを備えていて、窪み6aの中に押さえ板スラストベアリング601を収容することができる。窪み6aの中心部には、前述のように、ドライブプレート5の軸部分5bに嵌合する中心開口6bが形成されている。シュー押さえ板6の周辺部には放射状にU字形の切り欠きとしてシュー案内溝6cがピストン7の数(例えば、6個)だけ形成されている。
【0028】
シュー案内溝6cには、図3及び図4に示したような形状の耐摩耗性のあるシュー8の、有底円筒形に近いシュー本体8aが摺動可能に係合する。シュー押さえ板6はドライブプレート5に対して相対的に回転自在に結合されているが、シュー押さえ板6のシュー案内溝6cにはピストン7に取り付けられたシュー本体8aが嵌合しているため、シュー押さえ板6の回転は阻止されて、ドライブプレート5の傾斜回転運動に伴って揺動運動だけを行なう。それに伴って、シュー押さえ板6上における複数個のシュー本体8a相互間の距離やそれぞれの位置に若干の変化が生じる。そのために、シュー押さえ板6のシュー案内溝6cにおける幅等の寸法は、シュー本体8aとの間に図3の中に参照符号62a,62bによって示すような隙間が生じるように、若干の余裕を持って設定されている。
【0029】
また、それぞれのシュー8にはシュー本体8aから側方へ張り出すようにシュー鍔部8cが形成されていて、それぞれのシュー鍔部8cが、シュー押さえ板6に形成されたシュー案内溝6cの両側の部分によって押えられるようになっている。また、図4に示すように、シュー8にはそれぞれ球形の窪み8bが形成されていて、それに対してピストン7の一端に形成された球形端部7aが嵌入し、かしめ等の方法で抜け止めが施されることによって、シュー8に対して回転摺動自由に係合している。シュー8が取り付けられたピストン7は、前述のシリンダボア21にそれぞれ摺動可能に挿入されている。
【0030】
ドライブプレート5の軸部分5bに形成された雄螺子に螺着されるロックナット9は、押さえ板スラストベアリング601を介して、シュー押さえ板6をドライブスラストベアリング500及びドライブプレート5に向かって押圧する。それによって、シュー押さえ板6が複数個のシュー8を同時にドライブスラストベアリング500の上へ押圧する。このようにして、ドライブプレート5の上に、スラストベアリング500、複数個のシュー8、シュー押さえ板6、及び押さえ板スラストベアリング601の各部分が組み付けられる。ドライブプレート5のリム部分5cは、ディスク部分5aに対するベアリング500の位置決めのために役立つ。なお、図1及び図2に示す501,502はリング状のプレートで、ドライブスラストベアリング500の一部を構成する部材である。
【0031】
10は厚板からなるバルブポートプレートであって、各シリンダボア21に対応する位置においてそれを貫通するように少なくとも1個ずつの吸入口10aと吐出口10bが開口している。バルブポートプレート10の各吸入口10aは、1枚の薄いばね鋼板からなる吸入バルブ13の一部によって、リアハウジング3内の吸入室31に対してシリンダボア21の側から閉塞されている。各吐出口10bは、やはり1枚の薄いばね鋼板からなる吐出バルブ11の一部によって、リアハウジング3内の吐出室32の側から閉塞されている。吐出バルブ11は、それを保護する弁押さえ12がボルト14によってバルブポートプレート10に螺着されるときに同時に固定される。また、バルブポートプレート10と吸入バルブ13は、フロントハウジング1及びシリンダブロック2とリアハウジング3が締結されて全体が一体化されるときに、それらの間に挟み込まれて固定される。
【0032】
次に、第1実施例のピストン式可変容量圧縮機の作動について説明する。駆動軸4が車両に搭載された内燃機関やモータのような外部の動力源によって回転駆動されると、駆動軸4の円板部41に対してアーム42、上下の案内溝43及び44、2本のピン52及び53、2枚のアーム51を介して連結されているドライブプレート5が駆動軸4と一体的に回転する。しかし、シュー押さえ板6は、ドライブプレート5に対して押さえ板スラストベアリング601を介して支持されているのと、シュー案内溝6cに係合している複数個のシュー8がそれぞれピストン7の球形端部7aに係合しているので回転することはない。従って、ドライブプレート5が駆動軸4と直交する仮想の平面に対して傾斜しているときだけ、シュー押さえ板6は、ドライブプレート5との間にドライブスラストベアリング500と複数個のシュー8を挟持しながら、その傾斜角度に応じた大きさの揺動運動をする。それによって、シュー押さえ板6とドライブプレート5との間にドライブスラストベアリング500を介して挟持されている複数個のシュー8と、それらに連結されている複数個のピストン7が、それぞれのシリンダボア21内で往復運動をする。
【0033】
第1実施例の場合、ドライブプレート5とシュー押さえ板6は、2本のピン52及び53が駆動軸4側の上部案内溝43及び下部案内溝44の中で摺動しながら移動するときに、駆動軸4に対して垂直な平面に対する傾斜角度が変化するので、全てのピストン7のストロークが同時に同じ量だけ変化する。それによって圧縮機の吐出容量が無段階に変化することになる。
【0034】
複数個のピストン7の中でも吸入行程にあるものの頂面に形成される作動室Cは拡大して低圧となるので、その中へ吸入室31内にある圧縮すべき流体、例えば空調装置の冷媒が、バルブポートプレート10の吸入口10aに設けられた吸入バルブ13を押し開いて流入する。これと反対に、圧送行程にあるピストン7の頂面に形成される作動室Cは縮小するため、その内部にある流体は圧縮されて高圧となり、バルブポートプレート10の吐出口10bに設けられた吐出バルブ11を押し開いて吐出室32へ吐出される。その場合の吐出容量は、ドライブプレート5及びシュー押さえ板6の傾斜角度によって決まるピストン7のストロークの長さに概ね比例している。
【0035】
このように、ドライブプレート5及びシュー押さえ板6の傾斜角度を変化させると圧縮機の吐出容量が変化するので、吐出容量を制御するために、第1実施例の圧縮機においては、全てのピストン7の背圧となるフロントハウジング室1a内の圧力を、図示しない圧力制御弁等を使用して変化させる。通常、フロントハウジング室1a内には吐出室32内の高圧と、吸入室31内の低圧との中間の圧力が圧力制御弁から導入される。
【0036】
フロントハウジング室1a内の圧力、即ち、全てのピストン7の背圧を高めると、各ピストン7の頂面に形成される作動室C内の圧力との釣り合い状態が崩れるので、新たな釣り合い状態が得られるところまで、各ピストン7の往復動における平均的な位置がバルブポートプレート10に近い位置に向かって移動する。それによって全てのピストン7のストロークが一斉に小さくなるので、圧縮機の吐出容量が無段階に減少する。
【0037】
図2はピストン7のストロークが実質的に零になって、吐出容量も実質的に零になった状態を示している。この場合は、フロントハウジング室1a内の圧力が最大となって、ドライブプレート5及びシュー押さえ板6の傾斜角度が実質的に零になっているから、全てのピストン7が実質的に上死点の位置にあってシリンダボア21内で殆ど往復運動をすることがない。
【0038】
これと反対に、図示しない圧力制御弁を作動させてフロントハウジング室1a内の圧力を低下させると、ピストン7に作用する背圧が小さくなるために、全てのピストン7のストロークが一斉に大きくなって、圧縮機の吐出容量が無段階に大きくなる。図1は、フロントハウジング室1a内の圧力が最小となってドライブプレート5とシュー押さえ板6の傾斜角度が最大限度まで大きくなり、ピストン7のストローク及び圧縮機の吐出容量が最大となった状態を示している。
【0039】
第1実施例の特徴は、ピストン7の球形端部7aにそれぞれ直接に係合している複数個のシュー8を単一のシュー押さえ板6によってドライブプレート5との間にドライブスラストベアリング500を介して挟持支持させたことと、このドライブプレート5を駆動軸4側のアーム42に対して、2個の案内溝43及び44と2本のピン52及び53からなるダブルスライドリンク機構を使用して連結した点にある。
【0040】
それによって、従来の斜板型可変容量圧縮機においては斜板とシュー8との間に生じる大きい摩擦をスラストベアリング500によって避けることができるので、シュー8の耐久性、従って、可変容量圧縮機の信頼性が大幅に向上する。
更に、ドライブプレート5とシュー8との間の摩擦損失が減少するため、機械効率が改善されて、圧縮効率が向上するという大きな利点が得られる。
【0041】
また、駆動軸4をフロントハウジング1の前端部分に設けられたラジアルベアリング402及び404によって支持し、駆動軸4とドライブプレート5をダブルスライドリンク機構によって結合する場合には、駆動軸4をドライブプレート5の中心部を貫通させてシリンダブロック2まで延長させる必要がなくなる。このため、ドライブプレート5とシュー押さえ板6を結合する押さえ板スラストベアリング601に小径のものを使用することが可能になること等から、構成上の制約がなくなるので、圧縮機全体の体格を小型化することができ、構成が簡素になる。これは製作コスト低減のためにも大いに寄与する。
【0042】
ちなみに、ダブルスライドリンク機構を使用しなくてもドライブプレート5とシュー押さえ板6を駆動軸4に結合することは可能であるが、その場合にはドライブプレート5やシュー押さえ板6の中心部を貫通して駆動軸4を設ける必要があることから、押さえ板スラストベアリング601には、その中心部を駆動軸4が通過することができるような大きい寸法を有するものを使用する必要が生じるため、それが波及してシュー押さえ板6の直径が大きくなるだけでなく、圧縮機全体の胴径が大きくなる。
【0043】
なお、ドライブプレート5及びシュー押さえ板6の傾斜角度を変更して圧縮機の吐出容量を変化させるための手段として、第1実施例においては、フロントハウジング室1a内の圧力を変化させるように構成しているが、本発明はこの手段の内容に特徴を有する訳ではないから、同じ目的を達し得るものであれば他の手段を採用することができることは言うまでもない。
【0044】
次に、本発明の可変容量圧縮機の第2実施例について説明する。図5に示す第2実施例から図9に示す第6実施例までの各実施例はいずれもピストン7の構造に特徴があって、それ以外の構成は前述の第1実施例のそれと同様なものであってもよいから、これらの実施例に関しては全体構成についての説明は省略して、ピストン7の細部構造のみについて説明する。また、前述の第1実施例と共通の部分については同じ参照符号を説明抜きで使用することにする。
【0045】
これらの実施例の要部であるそれぞれのピストン7の間には若干の共通点がある。第1の共通点はいずれも中空の薄肉構造を有することである。そして中空の円筒形部分の一端に前述のような球形端部7aが予め一体的に成形されているか或いは溶接のような方法によって一体化されている。この場合、球形端部7aだけは中実となっている。ピストン7の殆ど全体を中空の薄肉構造とすることによって、ピストン7の質量の大きさに応じてピストン7の球形端部7aとシュー8との間に作用する慣性力が小さくなる。それによって、この部分に作用する摩擦力が減少し、摩耗を低減するすることができるので耐久性が高くなる。
【0046】
また、これらの実施例の間にある第2の共通点は使用する材料の選択にあり、従来からよく用いられているアルミニウム系の材料を使用しないで鉄系の材料を使用するという点にある。しかし、シリンダブロック2の材料としては従来と同様にアルミニウム系の材料を使用する。もし、ピストン7にもアルミニウム系の材料を使用すると、シリンダボア21とピストン7の摺動面は同種の金属の摩擦によって焼き付きを起こし易いので摺動面にコーティングを施す必要があるが、ピストン7に鉄系の材料を使用すると焼き付きが起こり難くなるので、アルミニウム系の材料を使用するシリンダボア21との摺動面にコーティングを行なう必要がなくなる。
【0047】
なお、ピストン7に鉄系の材料を使用するとアルミニウム系の材料を使用した場合に比べて質量が増大するという問題があるが、この問題は前述のようにピストン7を中空の薄肉構造として軽量化することによって回避することができる。また、ピストン7に鉄系の材料を使用すると、アルミニウム系の材料を使用するシリンダボア21との摺動面にコーティングを行なう必要がないので、シリンダブロック2とピストン7のコストが安くなるだけでなく、ピストン7の強度が著しく高くなるという利点がある。
【0048】
更に、これらの実施例の間にある第3の共通点は、いずれのピストン7も円錐形肩部7bを備えていることである。円錐形肩部7bが球形端部7a及び円筒部7cに対して滑らかに接続していることによって、球形端部7aと円筒部7cとの接続部分等に応力集中が起こり難くなることからピストン7の強度や耐久性が向上するので、肉厚をより薄くして軽量化することが可能になる。
【0049】
次に、第2実施例から第6実施例までの各実施例の要部であるピストン7のそれぞれについて個別に構造上の特徴を説明する。まず、図5に示す第2実施例のピストン7の特徴は、球形端部7aとそれに接続する中空の円錐形肩部7bとが予め一体的に成形されていて、その円錐形肩部7bの開口端部を巻き込むように中空の円筒部7cの一端部がかしめ付け(或いは溶接等でもよい)によって一体化されており、更に、円筒部7cの他端部には浅い皿状の底部7dが圧入、かしめ、圧接或いは溶接等の方法によって一体的に結合されている。なお、円錐形肩部7bと円筒部7cとの結合部分を補強するために、円筒部7cの一端部に段部7eと薄肉部7fを形成している。
【0050】
図6に示す第3実施例のピストン7の特徴は、球形端部7aと円錐形肩部7bと円筒部7cが予め一体的に成形されていて、その円筒部7cの開口端部に、第2実施例の場合と同様な方法によって、底部7dが一体的に結合されている点にある。第3実施例においては第2実施例に比べて構造がより簡素化されているので、コストや強度等の面で第2実施例よりも優れた結果が得られることがある。
【0051】
図7に示す第4実施例のピストン7の特徴は、円筒部7cと底部7dが予め一体的に成形されていて、その円筒部7cの開口端部に円錐形肩部7bが第2実施例の場合と同様な方法で一体的に結合されている点にある。この場合も、コストや強度等の面で第2実施例よりも優れた結果が得られることがある。
【0052】
図8に示す第5実施例のピストン7の特徴は、円錐形肩部7bと円筒部7cと底部7dが第2実施例の場合と同様な方法で一体的に結合されているが、球形端部7aがそれらとは別体のものとして製作された後に、円錐形肩部7bの先端に溶接のような方法によって一体的に結合されている点にある。予め各部分が別に製作されるので、比較的に難しい球形端部7a等の製作が容易になる反面、それらを一体的に結合するためのコストが嵩むとか、強度が前述のものに比べて劣る場合があるというような欠点もある。
【0053】
図9に示す第6実施例のピストン7の特徴は、円錐形肩部7bと円筒部7cと底部7dが予め一体的に成形されていて、球形端部7aがそれらとは別体のものとして製作された後に、円錐形肩部7bの先端に溶接のような方法によって一体的に結合されている点にある。この場合も比較的に難しい球形端部7aの製作が容易になるが、円錐形肩部7bに対する球形端部7aの溶接の仕方によっては強度が前述のものに比べて劣る場合がある。
【0054】
図10から図14に本発明の第7実施例を示す。一般に作動室C内における圧縮反力と、フロントハウジング室1a内の圧力のようなピストン7の背圧との釣り合いによって吐出容量が自動的に変化する形式の可変容量圧縮機においては、エンジンが始動され、それに伴って圧縮機が回転を開始する時には、エンジンへの負荷を減少して、回転開始時のショックを緩和するために、小容量状態で停止していることが好ましい。このためドライブプレートの傾斜角度を減少させる方向に力を付与するスプリングが組み込まれる。しかし、図2に示すように、ドライブプレート5の傾斜角度が実質的に零又は最小となって運転が停止されている状態から運転を再開する時のように、傾斜角度が零又は最小の値から図1に示したように増大して行く運転状態においては、最初はピストン7のストロークがきわめて小さくて、作動室C内において流体の圧縮仕事を殆どしないために作動室C内の圧力が低いことから、ドライブプレート5を図1に示したように傾斜させようとする力が弱くて、吐出容量の上昇が緩慢になるという性質がある。従って吐出容量を迅速に増大させる必要がある時には応答性が問題になる。この問題を解決するために、駆動軸がドライブプレート(斜板)の中心部を貫通してシリンダブロックの内部まで伸びている従来の形式の可変容量圧縮機においては、駆動軸が斜板を貫通している位置において斜板の両側にそれぞれコイルスプリングを設けて、それら2個の圧縮コイルスプリングが相互に押し合う力によって斜板をその傾斜角度が増大する方向に付勢している。
【0055】
しかしながら、本発明の可変容量圧縮機においては、基本的に駆動軸4がドライブプレート5を貫通していない点を特徴の1つとしており、ドライブプレート5は駆動軸4によって片持ち式に支持されているので、そのような2個の圧縮コイルスプリングを設けることができない。そこで、本発明の第7実施例においては、2個の圧縮スプリングに代わるものとして図13や図14に示すような単一のねじりコイルばね15を設けてこの問題を解決している。
【0056】
ねじりコイルばね15の形状とその各部分の係合状態は、図10から図12のいずれかと図13とを参照すれば明らかである。即ち、ねじりコイルばね15は図13に示すように左右対称的な形状を有しており、中央のフロントばねアーム15aと名付けた部分が図12に示すように駆動軸4の円板部41の表面に係合するようになっている。ねじりコイルばね15の両側の部分は、ドライブプレート5の単一の上部アーム51aによって支持されている上部ピン52に巻きついた後に、一対の下部アーム51bによって支持されている下部ピン53にも巻きつき、更に延びて両端部において一対のリアばねアーム15bを形成している。リアばねアーム15bのそれぞれの先端部分は、図11及び図12に示したようにドライブプレート5の傾斜角度が零又は最小となった時に、円板部4に設けられた下部アーム42bの突起状の爪部42cに対して係合するように、また、図10に示したようにドライブプレート5の傾斜角度が所定値よりも大きくなった時に、爪部42cから離れるように構成されている。
【0057】
ねじりコイルばね15は、上部ピン52の回りに巻き付けられた部分の弾性力によって、ドライブプレート5をその傾斜角度が零又は最小になる方向に付勢する力FB1を発生する。この力FB1はフロントばねアーム15aが円板部41の表面に常に接触しているために、下部ピン53を介して常にドライブプレート5に作用している。また、ねじりコイルばね15は、下部ピン53の回りに巻き付けられた部分の弾性力によって、ドライブプレート5をその傾斜角度が大きくなる方向に付勢する力FB2をも発生することができる。しかしながら、この力FB2は、フロントばねアーム15aの先端が爪部42cに係合している図11や図12に示したような時、即ち、ドライブプレート5の傾斜角度が零又は最小に近い時に限って有効に作用してドライブプレート5の傾斜角度を増大させようとして力FB1を打ち消す方向に作用するが、図10に示した場合のようにドライブプレート5の傾斜角度が所定値以上の大きさを有する時には、フロントばねアーム15aの先端が足掛りとなる爪部42cから離れているので有効に作用することはない。従って、このような運転状態においてはねじりコイルばね15は力FB1のみを発生している。このような作用によって、ねじりコイルばね15は、ドライブプレート5の傾斜角度が大きい状態においては傾斜角度が減少する方向に、また、傾斜角度が零又は最小となる状態においては、傾斜角度が増大する方向にドライブプレート5を付勢することができる。
【0058】
第7実施例の可変容量圧縮機はこのような作用をする単一のねじりコイルばね15を備えているから、図12に示した運転停止時や、図11に示したように吐出容量が零又は最小となった運転状態においては、力FB2を発生してドライブプレート5の傾斜角度を増大させる方向に作用するから、ピストン7にフロントハウジング室1a内の背圧FHが作用していない停止時や、背圧FHが十分に上昇していない運転開始直後の運転状態では、ドライブプレート5は力FB2によって所定の傾斜角度をとるように強制されて、図12に示したよう状態になる。なお、図11に示したように運転中に吐出容量を零又は最小とした時には、フロントハウジング室1a内の圧力FHが高く、しかも作動室C内の圧縮反力FPが小さいから、ねじりコイルばね15による力FB2が作用していてもドライブプレート5の傾斜角度は零又は最小となる。従って、ねじりコイルばね15を設けても吐出容量の制御に支障を来たすことはない。
【0059】
次に、本発明の可変容量圧縮機の第8実施例として、ピストン7の一端の球形端部7aと、シュー8との連結部分であるボールジョイント部の構成或いは製造方法に特徴がある実施例について説明する。第8実施例の特徴はボールジョイント部にのみあるので、それ以外の構成は他の実施例と同様なものとしてもよい。本発明の第8実施例においては、図15の(A)に示したように、先ずピストン7とその球形端部7aを製作してから、その球形端部7aを鋳込むように所定の鋳型を使用してシュー8を鋳造する。それによってシュー本体8aとシュー鍔部8cが成形されると同時に、鋳込み成形によるジョイント部17が一挙に形成される。シュー8側に自動的に形成される球形の窪み8bはピストン7側の球形端部7aの球面を転写したものとなるから、表面の粗さ等の表面性状も同様に転写される。従って、球形の窪み8bに対する機械加工等は不要となる。また、球形端部7aの周囲のシュー本体8aを厚肉とすることが容易であるから、鋳込み成形によるジョイント部17の引張り強度を非常に高くすることができる。
【0060】
比較のために、従来から行なわれているかしめ加工によるジョイント部16を図15の(B)に示す。この場合も、ピストン7側の球形端部7aを先に成形した後に、その球形端部7aの周囲にシュー8のシュー本体8aをかしめ付ける加工を行なうが、かしめ加工が可能なシュー本体8aの肉厚には限界があるので、かしめ加工によるジョイント部16の引張り強度を高めることは難しい。また、かしめ加工によってシュー8の球形の窪み8bの表面性状が悪化しても、それを機械加工等によって修正することは困難である。逆に、そのような問題が生じないということは、鋳込み成形によるジョイント部17の利点と言える。
【0061】
図16の(A)及び(B)は鋳込み成形によるジョイント部17を有するシュー8の具体例をそれぞれ示すもので、いずれも従来のかしめ加工による方法では成形が困難な場合である。即ち、(A)の場合はシュー8の鋳込み成形によるジョイント部17を形成するシュー本体が楕円形であって、しかも楕円形のシュー本体8eの短径部分に補強用のリブ8dが形成されている。シュー8がこのように複雑な形状であっても、第8実施例においては鋳造を利用するので容易に実施することができる。図16(B)の場合は、シュー8の本体がテーパー面8fを備えているが、これもまた、鋳造によってピストン7の球形端部7aを鋳込むことにより、鋳込み成形によるジョイント部17を簡単に形成することができる。
【0062】
鋳込み成形によるジョイント部17は、球形端部7aがピストン7の端部に直接に形成されている場合に限って実施されるだけではない。図17の(A)に示すように、ピストン7の一部に球形の窪み7gが形成されていると共に、それに対してコネクティングロッド18の球形端部18aが連結している場合に、コネクティングロッド18の球形端部18aを先に製作して、それを鋳込むようにピストン7を鋳造することにより、鋳込み成形によるジョイント部17を形成することができる。
【0063】
また、図17の(B)に示したように、ピストン7とコネクティングロッド18の一端との間に鋳込み成形によるジョイント部17を形成するだけでなく、コネクティングロッド18の他端に形成された球形端部18bとシュー8との間に鋳込み成形によるジョイント部17を形成することもできる。この場合は、コネクティングロッド18の他端に予め球形端部18bを形成しておいて、その球形端部18bを鋳込むようにシュー8を鋳造することになる。
【0064】
次に、本発明の第9実施例について説明する。第9実施例の可変容量圧縮機の特徴はドライブプレート5とシュー8との間に設けられるドライブスラストベアリング500の改良された構成にある。この部位に設けられるドライブスラストベアリング500には、以下の理由から半径方向に長いコロ(ニードルローラ)を有する所謂ニードルベアリングを使用することが望ましい。図18及び図19は、ドライブプレート5、ピストン7、シュー8、及びドライブスラストベアリング500のそれぞれの位置関係と、それらに作用する力の関係を示す模式図である。図18に示す吐出容量が零又は最小の運転状態では、ドライブプレート5が駆動軸4に対して略垂直になっているので、この例では、放射状に配列している細長いコロ500aの中央部分がシリンダボア21及びピストン7の中心軸線BS上に来るように設計されている。これはピストン7からの押し付け力FPがコロ500aの長手方向(ドライブプレート5の半径方向)の中央部分に印加される最も望ましい状態である。
【0065】
このような設計の場合、ドライブプレート5を図において参照符号4aによって示す傾転中心4aの回りに角度αだけ傾斜させた状態を図19に示す。図19において、コロ500aの中央部分を通ってそれと直交する直線をNSとし、下死点及び上死点に位置する2個のピストン7からの力の方向線をそれぞれFPx及びFPyとし、ドライブプレート5の傾転中心4aからピストン7の球形端部7aまでの距離をtとし、駆動軸4の中心軸線からピストン7の中心軸線BSまでの距離をBPとして示している。
【0066】
図19から明らかなように、ドライブプレート5が傾斜することによって力の方向はコロ500aの中央部分から外れて、下死点にあるピストン7xにおいては、力の方向線FPxがコロ500aの中央部分よりも内側へ移動する。また、上死点にあるピストン7yにおいては、力の方向線FPyがコロ500aの中央部分よりも外側へ移動する。コロ500aに作用する力の位置はその中央部分にあることが最も好ましいので、コロ500aの端部に力が作用することは避ける必要がある。このため、コロ500aは可及的に長いものが必要になる。
【0067】
しかしながら、一般に多数のコロを放射状に配置しているニードルスラストベアリングにおいては、それぞれのコロが、それらを挟んでいる相手方の面に対して厳密な意味での転がり接触のみをしている訳ではなく、コロの長さやコロが係合している位置における相手方の面の半径に応じた大きさのスリップが生じる。本発明の可変容量圧縮機におけるドライブスラストベアリング500として使用することができる従来型のニードルスラストベアリングの構造を図20から図22に例示する。単一の円の上に配列された多数のコロ500aは、籠状の保持器500bによって所定の間隔を維持しているが、保持器500bは相互に組み合わされた2個の保持器半部500c及び500dから構成され、それらの半部にはそれぞれコロ500aが顔を出す窓のような開口500e,500fが形成されている。
【0068】
このような構造を有する従来型のスラストベアリングにおいては、全てのコロ500aの中央部分を連ねた円の直径をφDとし、各コロ500aの長さをWとすると、それぞれのコロ500aの外端部ではスリップ率W/2πDのスリップが生じると共に、内端部ではスリップ率−W/2πDのスリップが生じる。従って、全てのコロ500aの中央部分が係合する円の半径が同じである場合には、これらのスリップ率の絶対値はコロ500aの長さに比例した大きさとなる。勿論、スリップ率は小さい方が望ましく、荷重条件にもよるが、スリップ率が過大になるとドライブスラストベアリング500の寿命が短くなる。
【0069】
一方、本発明の可変容量圧縮機においては、ドライブプレート5とピストン7のシュー8との間に大きな荷重を支持し得るドライブスラストベアリング500を設ける必要があるので、前述のように長いコロ500aを有するニードルスラストベアリングを使用する必要が生じるが、これはベアリングの寿命を長くしたいという要求と相反することになる。そこで本発明の第9実施例においては、これら双方の要求を同時に満たすために、十分に大きい荷重負担能力を有しながらもスリップ率の小さいドライブスラストベアリング500を提供する。
【0070】
図23に示したように、本発明の第9実施例におけるドライブスラストベアリング500は、多数の短いコロを複数個の同心円上に分けて配列させた点に特徴を有する。そのために、第9実施例においては、同心円状の複数個の保持器503及び504を使用して、それらの保持器503及び504によってそれぞれ独立に多数の短いコロ505及び506を保持させている。コロ505及び506はいずれも短いので、それぞれの外端の周速と内端の周速との差が小さくなり、スリップ率も小さくなる。
【0071】
概ね同様な考え方から案出された第10実施例の要部であるドライブスラストベアリング500が図24に示されている。第10実施例においても内外2列の短いコロ505及び506を使用するが、この場合は、それらのコロ505及び506が単一の保持器507によって保持されている点に特徴がある。前述の第9実施例のように別の保持器503及び504を使用すると、内外のコロ505及び506の間に生じる隙間δWを比較的に大きくとる必要があるために、ドライブスラストベアリング500全体の外径が大きくなるが、第10実施例のように単一の保持器507を使用すると隙間δWが小さくなるので、ドライブスラストベアリング500全体の外径を比較的に小さくすることができる。
【0072】
第10実施例の考え方を更に推し進めたものが図25に示した第11実施例である。この場合は単一の保持器508を使用して、同じ窓開口から内外のコロ505及び506が顔を出すようにする。コロ505及び506それぞれの回転速度の間には僅かな差が生じるが、その差は小さいので殆ど問題にならない。第11実施例においては前述の隙間δWが零になるので、ドライブスラストベアリング500全体の外径を第9実施例や第10実施例の場合よりも小さくすることができる。いずれにしても、複数個の同心円上に配置された多数の短いコロ505及び506を使用することによって、スリップ率の増加を抑えながら、ドライブスラストベアリング500の荷重負担能力を増大させることが可能になる。
【0073】
本発明のような可変容量圧縮機において吐出容量を変化させる時にはフロントハウジング室1a内の圧力を高めて、ピストン7をシリンダブロック2の方向へ付勢する必要があるため、シュー8はリング状のプレート502或いはシュー押さえ板6に向かって強く押し付けられる。この力は吐出容量やピストン7の直径等の圧縮機の諸元によって異なるが、例えば、ピストン7の直径が31mmでHFC−134aを冷媒とする冷媒圧縮機の場合には150Nとなる。この力は、特にCO2 を冷媒とする場合には著しく大きくなる。例えば、ピストン7の直径が20mmであっても約500Nに達する。
【0074】
一方、運転中にはシュー8とシュー押さえ板6との間に微小な距離ではあるが相対的な摺動が生じるため、摺動を円滑にするためにそれらの接触面積を大きくすることが望ましい。しかしながら、シュー8の鍔部8cを大きくしてシュー押さえ板6との摺動接触面積を増大させると、従来から使用されているような円形のシューでは、そのシュー8と他のシュー8との間に、或いはその他の部材との間に幾何学的な干渉を生じる。
【0075】
この問題に対処するための手段として、図26及び図27に示す本発明の第12実施例を説明する。第12実施例の特徴はシュー8の形状、特にシュー押さえ板6に摺動接触するシュー鍔部8cの形状にある。この形状を一言で表現するとすれば「概ね扇形」と言うことになる。なお、第1実施例においては図3に示したようにシュー鍔部8cを概ね長方形としているので、従来の円形シューよりもシュー押さえ板6との接触面積が大きくなるが、第12実施例のように可能な限りシュー鍔部8cを大きくしたものと比べると接触面積は僅かに小さい。第12実施例におけるシュー鍔部8cは、その外周面8g及び内周面8hをシュー押さえ板6の外周円と概ね同心円状の円弧面とすると共に、両側面8iを半径方向の平面とすることにより、最大限までシュー鍔部8cの面積を大きくしている。なお、4個の角部8jには適宜にRを付ける。
【0076】
図示していない第12実施例の可変容量圧縮機の全体構成は図1及び図2に示したような第1実施例のそれと同様なものであるが、若干異なる点として、図3に対応する図27から明らかなように、第12実施例においてはピストン7及びシリンダボア21の数が第1実施例よりも1個少ない5個であって、シュー押さえ板6のシュー案内溝6cの数も5個となっている。従って、この点からもシュー鍔部8cの面積を第1実施例のそれよりも大きくすることができる。
【0077】
第12実施例の変形例として図28に本発明の第13実施例を示す。図27と比較すれば明らかなように、第13実施例におけるシュー鍔部8cの形状は、図27に示す第12実施例の扇形と、図3に示す第1実施例の長方形との中間の形状となっている。しかしながら、シュー鍔部8cの張り出し部分を、隣接するシュー鍔部8c等との干渉が生じない範囲内で可及的に大きくすることにより、シュー押さえ板6やリング状のプレート502との摺動接触面積を大きくしていることは同じである。この程度にシュー鍔部8cを大きくするだけで、従来の円形シューよりも遥かに良好な結果が得られる。
【0078】
次に、図29から図31の各図によって本発明の可変容量圧縮機の第14実施例を説明する。第14実施例の可変容量圧縮機と図1や図2に示す第1実施例のそれとの主な相違点は、第1実施例においてはピストン7のシュー8がドライブプレート5に対してドライブスラストベアリング500を介して間接的に係合しているのに対して、第14実施例においては、従来の斜板型可変容量圧縮機においてよく行なわれているように、ピストン7に設けられた一対の半球形のシュー19及び20が、ドライブプレート(斜板)5を挟むように直接に摺動可能に係合していることである。従って、第1実施例におけるドライブスラストベアリング500やシュー押さえ板6、押さえ板スラストベアリング601等を設ける必要はない。このように一対のシュー19及び20が直接にドライブプレート5に摺動係合する点を除いて、第14実施例の可変容量圧縮機は第1実施例のそれと実質的に同じ構成を有する。
【0079】
第14実施例の可変容量圧縮機はシュー19及び20とドライブプレート5との間に高速の摺動が生じるために高速、高負荷の運転には適していないが、ドライブプレート5とシュー8との係合部分を除いて、他の部分の構成は第1実施例と同様であるから、ドライブプレート5が駆動軸4によって、ダブルスライドリンク機構を介して片持ち支持されていること等によって、第1実施例等と実質的に同じ作用効果を奏する。従って、第14実施例は、本発明の技術思想を従来形式のシュー19及び20を用いる可変容量圧縮機に対して適用することが可能であることを例示したものである。
【0080】
第14実施例においては細部の構造として、ドライブプレート5に設けられたアーム51が、図10等に示す第7実施例と同様に、第14実施例においては上部アーム51aと下部アーム51bとに分岐していると共に、図31に示したように、それらが単に1枚の板状となっている。従って、上部アーム51aに取り付けられた上部ピン52(図31においてはそのヘッドを52a、抜け止めのスナップリングを52bとして示す)を上部案内溝43によって支持すると共に、下部アーム51bに取り付けられた下部ピン53を下部案内溝44によって支持する2枚のアーム42は、1枚の板からなる上部アーム51a及び下部アーム51bを両側から挟んで支持している。
【0081】
第14実施例の変形例として、第15実施例の要部を図32に示す。第15実施例が第14実施例と異なる点は、上部アーム51a(従って、図29に示すような下部アーム51bもまた)が所定の間隔をおいて2枚設けられていて、2枚のアーム42がそれらのアーム51a,51bをピン52を介して外側から支持している点にある。2枚のアーム42の間隔を十分に大きくとることによって、駆動軸4によるドライブプレート5の支持状態が第14実施例よりも更に安定なものとなる利点がある。
【0082】
なお、図示実施例においては、本発明は可変容量型の圧縮機に関するものとして説明しているが、ドライブプレート5の傾斜角度が一定である固定容量型の圧縮機は可変容量型の圧縮機における特別の形態であると考えると、本発明の特徴とする部分の一部は、固定容量型の圧縮機に適用することも可能であることは明らかであるから、その意味において本発明は固定容量型の圧縮機をも包含する。そして、本発明を固定容量型の圧縮機に適用した場合にも、圧縮機を小型化すると共に簡素化することができるというような、前述の本発明の効果が得られることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のピストン式可変容量圧縮機の第1実施例を示す縦断正面図である。
【図2】図1に示す実施例の他の運転状態を示す縦断正面図である。
【図3】シュー押さえ板とシューとの関連構成を例示する側面図である。
【図4】シューの形状を例示する断面図である。
【図5】第2実施例のピストンの構造を示す断面図である。
【図6】第3実施例のピストンの構造を示す断面図である。
【図7】第4実施例のピストンの構造を示す断面図である。
【図8】第5実施例のピストンの構造を示す断面図である。
【図9】第6実施例のピストンの構造を示す断面図である。
【図10】第7実施例の可変容量圧縮機が最大の吐出容量をもたらす運転状態を示す部分的な縦断面図である。
【図11】第7実施例の可変容量圧縮機が停止している状態を示す部分的な縦断面図である。
【図12】第7実施例の可変容量圧縮機が実質的に最小の吐出容量をもたらす運転状態を示す部分的な縦断面図である。
【図13】第7実施例の特徴であるねじりコイルばねと、部分的に切断した関連部分を示す側面図である。
【図14】第7実施例のねじりコイルばねのみを示す図である。
【図15】(A)は第8実施例の要部を示す縦断面図、(B)は対比すべき従来例を示す縦断面図である。
【図16】(A)は第8実施例の具体例を示す平面図、(B)はその縦断面図である。
【図17】(A)は第8実施例の応用例を示す縦断面図、(B)は他の応用例を示す縦断面図である。
【図18】ドライブプレートの傾斜角度が零である場合の位置関係と力関係を示す概念図である。
【図19】ドライブプレートの傾斜角度が大きい場合の位置関係と力関係を示す概念図である。
【図20】ドライブスラストベアリングとして使用することができる従来型のニードルベアリングを示す概念図である。
【図21】図20に示すニードルベアリングの断面図である。
【図22】従来型のニードルベアリングの保持器を示す斜視図である。
【図23】第9実施例の要部であるドライブスラストベアリングを示す概念図である。
【図24】第10実施例の要部であるドライブスラストベアリングを示す概念図である。
【図25】第11実施例の要部であるドライブスラストベアリングを示す概念図である。
【図26】本発明の第12実施例の要部を示す斜視図である。
【図27】第12実施例におけるシュー押さえ板とシューとの関連構成を示す側面図である。
【図28】第13実施例におけるシュー押さえ板とシューとの関連構成を示す側面図である。
【図29】本発明のピストン式可変容量圧縮機の第14実施例を示す縦断正面図である。
【図30】図29に示す実施例の他の運転状態を示す縦断正面図である。
【図31】図29に示す実施例の要部を示す平面図である。
【図32】本発明の第15実施例の要部を示す平面図である。
【符号の説明】
1…フロントハウジング
1a…フロントハウジング室
4…駆動軸
5…ドライブプレート
6…シュー押さえ板
6c…シュー案内溝
7…ピストン
7a…球形端部
7b…円錐形肩部
8…シュー
8c…シュー鍔部
15…ねじりコイルばね
17…鋳込み成形によるジョイント部
21…シリンダボア
43,44…案内溝
52,53…ピン
500…ドライブスラストベアリング
503,504…複数個の保持器
505,506…短いコロ
601…押さえ板スラストベアリング

Claims (26)

  1. ベアリングを介してハウジングの前端部分のみによって軸承されて、動力源からの回転動力を受け入れる駆動軸と、
    該駆動軸に連結されて支持されることにより回転すると共に、前記駆動軸に対して傾斜することができるドライブプレートと、
    転がり軸受である押さえ板スラストベアリングを介して前記ドライブプレートによって支持されることにより同じ傾斜角度をとるが、回転は阻止されるシュー押さえ板と、
    該シュー押さえ板の周辺部に半径方向に形成されている複数個のシュー案内溝に係合して、半径方向に摺動することができる複数個のシューと、
    該シューと前記ドライブプレートとの間に配設されたドライブスラストベアリングと、
    前記シューに直接に連結されて往復運動をすると共に、シリンダボア内に挿入されて流体を吸入及び圧縮し、更に前記シュー押さえ板の回転を阻止する複数個のピストンと、
    吐出容量を変化させるために、前記ドライブプレート及び前記シュー押さえ板の傾斜角度を変更することができる手段とを備えていることを特徴とするピストン式可変容量圧縮機。
  2. 請求項1において、前記シューが、前記ピストンに設けられた球形端部と嵌合する球形の窪みを備えているシュー本体と、該シュー本体から一体的に側方へ張り出しているシュー鍔部とからなっていることを特徴とするピストン式可変容量圧縮機。
  3. 動力源からの回転動力を受け入れる駆動軸と、
    該駆動軸に連結されて支持されることにより回転すると共に、前記駆動軸に対して傾斜することができるドライブプレートと、
    転がり軸受である押さえ板スラストベアリングを介して前記ドライブプレートによって支持されて同じ傾斜角度をとるシュー押さえ板と、
    シリンダボア内に挿入されて流体を吸入及び圧縮すると共に、前記シュー押さえ板の回転を阻止する複数個のピストンと、
    前記ドライブプレートの傾斜回転運動を前記ピストンの往復運動に変換する機構とを備えている可変容量圧縮機において、
    吐出容量を変化させるために前記ドライブプレートの傾斜角度を変更する手段として、前記駆動軸と前記ドライブプレートとを連結するために、前記駆動軸の軸心から離れた位置に、前記駆動軸側に形成されたアームと、前記ドライブプレート側に形成されたアームと、前記駆動軸側に形成されたアームに形成された複数個の案内溝と、前記ドライブプレート側に形成されたアームに支持され、前記複数個の案内溝に挿入されて摺動可能に係合した複数のピンとからなるスライドリンク機構を備えていることを特徴とするピストン式可変容量圧縮機。
  4. 請求項3において、前記駆動軸が、ベアリングを介してハウジングの前端部分のみによって軸承されていることを特徴とするピストン式可変容量圧縮機。
  5. 請求項1ないし3のいずれかにおいて、前記ピストンが、予め球形端部と一体に成形された円錐形肩部と、該円錐形肩部に対して一体化された円筒部と、該円筒部に対して一体化された底部とから構成されていることを特徴とするピストン式可変容量圧縮機。
  6. 請求項1ないし3のいずれかにおいて、前記ピストンが、予め球形端部と一体に成形された円錐形肩部と、予め該円錐形肩部と一体に成形された円筒部と、該円筒部に対して一体化された底部とから構成されていることを特徴とするピストン式可変容量圧縮機。
  7. 請求項1ないし3のいずれかにおいて、前記ピストンが、予め球形端部と一体に成形された円錐形肩部と、該円錐形肩部に対して一体化された円筒部と、予め該円筒部と一体に成形された底部とから構成されていることを特徴とするピストン式可変容量圧縮機。
  8. 請求項1ないし3のいずれかにおいて、前記ピストンが、球形端部に対して一体化された円錐形肩部と、該円錐形肩部に対して一体化された円筒部と、該円筒部に対して一体化された底部とから構成されていることを特徴とするピストン式可変容量圧縮機。
  9. 請求項1ないし3のいずれかにおいて、前記ピストンが、球形端部に対して一体化された円錐形肩部と、予め該円錐形肩部と一体に成形された円筒部と、予め該円筒部と一体に成形された底部とから構成されていることを特徴とするピストン式可変容量圧縮機。
  10. 請求項1ないし3のいずれかにおいて、前記ピストンの構成部材が溶接もしくはかしめ加工によって結合されていることを特徴とするピストン式可変容量圧縮機。
  11. 請求項1ないし3のいずれかにおいて、前記ピストンが中空であることを特徴とするピストン式可変容量圧縮機。
  12. 請求項1ないし3のいずれかにおいて、前記ピストンが鉄系の材料から製作されていることを特徴とするピストン式可変容量圧縮機。
  13. 請求項1ないし3のいずれかにおいて、少なくとも前記ドライブプレートの傾斜角度が大なる状態においては傾斜角度が減少する方向に、そして傾斜角度が零又は最小となる運転状態においては傾斜角度が増大する方向に前記ドライブプレートを付勢するねじりコイルばねを備えていることを特徴とするピストン式可変容量圧縮機。
  14. 請求項13において、前記ねじりコイルばねが単一で且つ一連のものであることを特徴とするピストン式可変容量圧縮機。
  15. 請求項1ないし3のいずれかにおいて、前記シュー押さえ板の周辺部に半径方向に形成されている複数個のシュー案内溝に係合して、半径方向に摺動することができる複数個のシューを備えていて、前記シューがシュー本体とシュー鍔部とからなり、前記シュー本体が前記ピストン側の球形端部を鋳込むように鋳造によって成形されていることを特徴とするピストン式可変容量圧縮機。
  16. 請求項1ないし3のいずれかにおいて、前記シュー押さえ板の周辺部に半径方向に形成されている複数個のシュー案内溝に係合して、半径方向に摺動することができる複数個のシューを備えていて、前記ピストンが前記シューに連結されるコネクティングロッド側の球形端部を鋳込むように鋳造によって成形されていることを特徴とするピストン式可変容量圧縮機。
  17. 請求項1ないし3のいずれかにおいて、前記シュー押さえ板の周辺部に半径方向に形成されている複数個のシュー案内溝に係合して、半径方向に摺動することができる複数個のシューと、前記シューと前記ドライブプレートとの間に配設されたドライブスラストベアリングとを備えていて、前記ドライブスラストベアリングが、複数個の同心円上に分けて放射状に配列された多数の短いコロを備えていることを特徴とするピストン式可変容量圧縮機。
  18. 請求項17において、複数個の同心円上に分けて放射状に配列された多数の短いコロが、それぞれの同心円上のコロの群ごとに別の保持器によって保持されていることを特徴とするピストン式可変容量圧縮機。
  19. 請求項17において、複数個の同心円上に分けて放射状に配列された多数の短いコロが共通の保持器によって保持されていることを特徴とするピストン式可変容量圧縮機。
  20. 請求項19において、複数個の同心円上に分けて放射状に配列された多数の短いコロのうちで半径方向に同じ線上に並んでいる複数個のコロが、共通の保持器に形成された同じ窓開口によって保持されていることを特徴とするピストン式可変容量圧縮機。
  21. 請求項1ないし3のいずれかにおいて、前記シュー押さえ板の周辺部に半径方向に形成されている複数個のシュー案内溝に係合して、半径方向に摺動することができる複数個のシューを備えていて、前記シュー押さえ板によって押えられる前記シューがシュー本体と一体のシュー鍔部を備えていると共に、該シュー鍔部の平面形状が実質的に長方形であることを特徴とするピストン式可変容量圧縮機。
  22. 請求項1ないし3のいずれかにおいて、前記シュー押さえ板の周辺部に半径方向に形成されている複数個のシュー案内溝に係合して、半径方向に摺動することができる複数個のシューを備えていて、前記シュー押さえ板によって押えられる前記シューがシュー本体と一体のシュー鍔部を備えていると共に、該シュー鍔部の平面形状が実質的に扇形であることを特徴とするピストン式可変容量圧縮機。
  23. 請求項1ないし3のいずれかにおいて、前記シュー押さえ板の周辺部に半径方向に形成されている複数個のシュー案内溝に係合して、半径方向に摺動することができる複数個のシューを備えていて、前記シュー押さえ板によって押えられる前記シューがシュー本体と一体のシュー鍔部を備えていると共に、該シュー鍔部の平面形状が実質的に長方形と扇形の中間の形状であることを特徴とするピストン式可変容量圧縮機。
  24. 請求項3において、シューが前記ドライブプレートに対して直接に摺動可能に係合していることを特徴とするピストン式可変容量圧縮機。
  25. 請求項3において、前記ドライブプレートと駆動軸が、前記ドライブプレート側に形成された1枚のアームと、該アームを挟むように前記駆動軸側に形成された2枚のアームとを介して連結されていることを特徴とするピストン式可変容量圧縮機。
  26. 請求項3において、前記ドライブプレートと駆動軸が、前記ドライブプレート側に間隔をおいて形成された2枚のアームと、該2枚のアームを外側から挟むように前記駆動軸側に形成された2枚のアームとを介して連結されていることを特徴とするピストン式可変容量圧縮機。
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