JP3790340B2 - 鉄骨被覆用耐火積層体及び耐火被覆鉄骨構造体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、柱、はり(梁)、壁等の鉄骨に用いる鉄骨被覆用耐火積層体であって、簡便に設置することができ、かつ、優れた耐火性能を有する鉄骨被覆用耐火積層体、及び、この鉄骨被覆用耐火積層体により被覆された耐火被覆鉄骨構造体に関する。
【0002】
【従来の技術】
建築物の高層化等にともない、建築物の構造材をなす梁、柱等として軽量な鉄骨が用いられるようになっている。建築物の構造材として用いられる鉄骨には、建設省告示第2999号やJIS A 1304により耐火性能基準が定められており、その基準を満たすために、鉄骨の表面を耐火性に優れた材料で被覆することが一般的に行われている。
【0003】
鉄骨に耐火性を付与するための被覆材料として、特開平6−32664号公報には、水ガラスや水硬性セメントにバーミキュライト、ロックウール等の無機成分を混合したものが開示されている。しかしながら、このものは、施工時に現場で鉄骨に対して塗布又は吹き付ける必要があり、施工性が悪かった。また、形成される耐火被覆層の厚さにムラが生じやすく、ムラが生じた場合は充分な耐火性を発揮することができなかった。また、形成される耐火被覆層にヒビ割れが発生して耐火性が低下する場合があった。更には、湿式又は半乾式により吹き付けた場合は硬化するまで長時間必要であり、作業効率が悪かった。
【0004】
三井金属塗料社等からは耐火塗料が市販されているが、このような耐火塗料は施工現場において2種類の塗料を混合する必要があるため、塗りムラが発生しやすく、鉄骨に対して均一な耐火性を付与することが困難であった。また、珪酸カルシウム板を鉄骨の回りを囲むように設置する方法もあるが、厚い珪酸カルシウム板を使用し、これを大量の釘、ビス等で固定する必要があるため、施工性が非常に悪く、また、珪酸カルシウム板切削時に多量の粉塵が発生するという不都合があった。
【0005】
実開昭62−163206号公報には、ロックウールフェルト等からなる基材と、セラミック繊維フェルトと、網状物とが重さね合わされ、線材で縫合されて一体化され、一方の突き付け端部に耳部が形成された耐火被覆材が開示されている。しかし、この耐火被覆材を用いて鉄骨を被覆するには、耐火被覆材を鉄骨に当て付けた後、耳部の部分を互い違いに重ね合わせて金属網状物を重ね折りする必要があり、また、耐火被覆材を鉄骨に固定するために溶接ガンを用いて溶接ピン等を立て、多数の箇所で掛け止めする必要があり、やはり施工性に問題があった。
【0006】
特開平2−108748号公報には、鉄骨構造物の周囲に耐火被覆材を取り付けて鉄骨の周囲に耐火被覆を形成するようにした構造物が開示されている。この構造物は、金属板の内側に発泡断熱材料、耐火塗料が塗布された発泡材料等を裏張りしたものであり、施工性の良好なものであった。しかしながら、当該構造物は、金属板と断熱材料とのみからなるものであり、その耐火性能に限度があり、40mm以上の厚い被覆が必要であった。
【0007】
特開平7−133640号公報には、吸水性ゲルをアルミ蒸着ポリエチレンでパックし、更に、セラミックマットで包んだ被覆材料が開示されている。しかしながら、このものは、施工時にゲル部分を切断してしまったり、釘を打ちつけると内部の吸水性ゲルが漏れだして使用不能になったりする欠点があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記に鑑み、施工性及び耐火性に優れた鉄骨被覆用耐火積層体、及び、この鉄骨被覆用耐火積層体により被覆された耐火被覆鉄骨構造体を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明1の鉄骨被覆用耐火積層体は、鉄骨の周囲を被覆する不燃性材料からなる板材(A)の鉄骨に面する側に、耐火膨張シート(B)及び発泡体又は緩衝材からなる層(C)を積層してなる鉄骨被覆用耐火積層体であって、前記耐火膨張シート(B)は、熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質、リン化合物及び無機充填剤を含有する樹脂組成物からなるものであり、
前記熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質は、ポリオレフィン系樹脂、ポリ(1−)ブテン系樹脂、ポリペンテン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、フェノール系樹脂、ポリブテン、ポリクロロプレン、ポリブタジエン、ポリイソブチレン、ニトリルゴム、塩素化ブチル系樹脂および非加硫ゴムよりなる群から選ばれる少なくとも一種であり、
前記無機充填剤と前記リン化合物との重量比〔(無機充填剤)/(リン化合物)〕は、
0.6〜1.5の範囲のものである。
また、本発明2の鉄骨被覆用耐火積層体は、鉄骨の周囲を被覆する不燃性材料からなる板材(A)の鉄骨に面する側に、耐火膨張シート(B)及び波形、突条もしくは凹凸形状の賦された金網からなる層(D)を積層してなる鉄骨被覆用耐火積層体であって、前記耐火膨張シート(B)は、熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質、リン化合物及び無機充填剤を含有する樹脂組成物からなるものであり、
前記熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質は、ポリオレフィン系樹脂、ポリ(1−)ブテン系樹脂、ポリペンテン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、フェノール系樹脂、ポリブテン、ポリクロロプレン、ポリブタジエン、ポリイソブチレン、ニトリルゴム、塩素化ブチル系樹脂および非加硫ゴムよりなる群から選ばれる少なくとも一種であり、
前記無機充填剤と前記リン化合物との重量比〔(無機充填剤)/(リン化合物)〕は、0.6〜1.5の範囲のものである。
以下に本発明を詳述する。
【0010】
本発明1の鉄骨被覆用耐火積層体は、不燃性材料からなる板材(A)の鉄骨に面する側に、耐火膨張シート(B)及び発泡体又は緩衝材からなる層(C)を積層してなる。
上記耐火膨張シート(B)及び上記発泡体又は緩衝材からなる層(C)の積層される順は特に限定されず、不燃性材料からなる板材(A)の鉄骨に面する側に、(B)、(C)の順に積層してもよいし、(C)、(B)の順に積層してもよい。
【0011】
上記不燃性材料からなる板材(A)としては特に限定されず、例えば、鉄板、ステンレス板、ステンレス箔、アルミニウム板、アルミニウム箔、亜鉛メッキ鋼板、アルミニウム・亜鉛合金メッキ鋼板等の金属板、珪酸カルシウム板、繊維混入珪酸カルシウム板、炭酸カルシウム板、石膏ボード、強化石膏ボード、パーライトセメント板、繊維強化セメント板、木片セメント板、木粉セメント板、スラグ石膏板等の無機質板、ロックウール保温板、セラミックウールブランケット、アルミナシリカ繊維フェルト、セラミック紙、水酸化アルミニウム紙等が挙げられる。上記不燃性材料からなる板材(A)は、上記材質の板材が複数枚貼り合わされたものであってもよい。
【0012】
上記発泡体又は緩衝材からなる層(C)を構成する発泡体材料としては特に限定されず、例えば、ポリウレタン系樹脂発泡シート、ポリスチレン系樹脂発泡シート、ポリエチレン系樹脂発泡シート、ポリプロピレン系樹脂発泡シート、フェノール樹脂発泡シート等が挙げられる。
【0013】
上記発泡体中には、ガラス繊維、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機充填材が配合されていてもよい。
上記緩衝材の材料としては特に限定されず、例えば、ガラスウール、セラミックウール、ロックウール、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ナイロン、ポリプロピレン等の樹脂繊維不織布等が挙げられる。
【0014】
上記耐火膨張シート(B)は、熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質、リン化合物及び無機充填剤を含有する樹脂組成物からなる。
【0015】
上記熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質としては、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリ(1−)ブテン系樹脂、ポリペンテン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、フェノール系樹脂、ポリブテン、ポリクロロプレン、ポリブタジエン、ポリイソブチレン、ニトリルゴム、塩素化ブチル系樹脂および非加硫ゴムが挙げられる。
【0016】
クロロプレン系樹脂、塩素化ブチル系樹脂等のハロゲン化された樹脂は、それ自体難燃性が高く、熱による脱ハロゲン化反応により、架橋が起こり、加熱後の残渣の強度が向上する点において好ましい。
上記熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質として例示したものは、非常に柔軟でゴム的性質を持っていることから、上記無機充填剤を高充填することが可能であり、得られる樹脂組成物が柔軟でフレキシブルなものとなる。
より柔軟でフレキシブルな樹脂組成物を得るためには、非加硫ゴムやポリエチレン系樹脂が好適に用いられる。
【0017】
上記熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。樹脂の溶融粘度、柔軟性、粘着性等の調整のため、2種以上の樹脂をブレンドしたものをベース樹脂として用いてもよい。
【0018】
上記熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質には、更に、本発明1における耐火膨張シート(B)の耐火性能を阻害しない範囲で、架橋や変性が施されてもよい。
上記熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質の架橋や変性を行う時期については特に限定されず、予め架橋、変性した熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質を用いてもよく、後述のリン化合物や無機充填剤等の他の成分を配合する際同時に架橋や変性してもよいし、又は、熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質に他の成分を配合した後に架橋や変性してもよく、いずれの段階で行ってもよい。
上記熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質の架橋方法については特に限定されず、熱可塑性樹脂又はゴム物質について通常行われる架橋方法、例えば、各種架橋剤、過酸化物等を使用する架橋、電子線照射による架橋方法等が挙げられる。
【0019】
上記リン化合物としては特に限定されず、例えば、赤リン;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート等の各種リン酸エステル;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸マグネシウム等のリン酸金属塩;ポリリン酸アンモニウム類;下記一般式(1)で表される化合物等が挙げられる。これらのうち、耐火性の観点から、赤リン、ポリリン酸アンモニウム類、及び、下記一般式(1)で表される化合物が好ましく、性能、安全性、費用等の点においてポリリン酸アンモニウム類がより好ましい。
【0020】
【化1】
【0021】
式中、R1 及びR3 は、水素、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は、炭素数6〜16のアリール基を表す。R2 は、水酸基、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基、炭素数6〜16のアリール基、又は、炭素数6〜16のアリールオキシ基を表す。
【0022】
上記赤リンは、少量の添加で難燃効果が向上する。上記赤リンとしては、市販の赤リンを用いることができるが、耐湿性、混練時に自然発火しない等の安全性の点から、赤リン粒子の表面を樹脂でコーティングしたもの等が好適に用いられる。
【0023】
上記ポリリン酸アンモニウム類としては特に限定されず、例えば、ポリリン酸アンモニウム、メラミン変性ポリリン酸アンモニウム等が挙げられるが、取扱性等の点からポリリン酸アンモニウムが好適に用いられる。市販品としては、例えば、ヘキスト社製「AP422」、「AP462」、住友化学社製「スミセーフP」、チッソ社製「テラージュC60」等が挙げられる。
【0024】
上記一般式(1)で表される化合物としては特に限定されず、例えば、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、2−メチルプロピルホスホン酸、t−ブチルホスホン酸、2,3−ジメチル−ブチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ジオクチルフェニルホスホネート、ジメチルホスフィン酸、メチルエチルホスフィン酸、メチルプロピルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジオクチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、ジエチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ビス(4−メトキシフェニル)ホスフィン酸等が挙げられる。なかでも、t−ブチルホスホン酸は、高価ではあるが、高難燃性の点においては好ましい。
上記リン化合物は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0025】
上記無機充填剤としては特に限定されず、例えば、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類等の金属酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト等の含水無機物;塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム等の金属炭酸塩;硫酸カルシウム、石膏繊維、けい酸カルシウム等のカルシウム塩;シリカ、珪藻土、ドーソナイト、硫酸バリウム、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化けい素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム「MOS」(商品名)、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化けい素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、脱水汚泥等が挙げられる。なかでも、含水無機物及び金属炭酸塩が好ましい。
【0026】
水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の含水無機物は、加熱時の脱水反応によって生成した水のために吸熱が起こり、温度上昇が低減されて高い耐熱性が得られる点、及び、加熱残渣として酸化物が残存し、これが骨材となって働くことで残渣強度が向上する点で特に好ましい。水酸化マグネシウムと水酸化アルミニウムは、脱水効果を発揮する温度領域が異なるため、併用すると脱水効果を発揮する温度領域が広がり、より効果的な温度上昇抑制効果が得られることから、併用することが好ましい。
炭酸カルシウム、炭酸亜鉛等の金属炭酸塩は、上記リン化合物との反応で膨張を促すと考えられ、特に、リン化合物として、ポリリン酸アンモニウムを使用した場合に、高い膨張効果が得られる。また、有効な骨材として働き、燃焼後に形状保持性の高い残渣を形成する。
また、上記金属炭酸塩の中では、更に、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩;炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム等のアルカリ土類金属炭酸塩;炭酸亜鉛等の周期律表IIb族金属の炭酸塩が好ましい。
一般的に、無機充填剤は、骨材的な働きをすることから、残渣強度の向上や熱容量の増大に寄与すると考えられる。
上記無機充填剤は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0027】
上記無機充填剤の粒径としては、0.5〜100μmのものが使用でき、より好ましくは、約1〜50μmである。
また、粒径の大きい無機充填剤と粒径の小さいものを組み合わせて使用することがより好ましく、組み合わせて用いることによって、シートの力学的性能を維持したまま、高充填化することが可能となる。
【0028】
上記耐火膨張シート(B)には、熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質、リン化合物及び無機充填剤の他に、中和処理された熱膨張性黒鉛、多価アルコール等が添加されていてもよい。
上記中和処理された熱膨張性黒鉛とは、従来公知の物質である熱膨張性黒鉛を中和処理したものである。上記熱膨張性黒鉛は、天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の粉末を、濃硫酸、硝酸、セレン酸等の無機酸と濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等の強酸化剤とで処理することにより生成するグラファイト層間化合物であり、炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物である。
【0029】
上述のように酸処理して得られた熱膨張性黒鉛は、更にアンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等で中和することにより、上記中和処理された熱膨張性黒鉛とする。
上記脂肪族低級アミンとしては特に限定されず、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン等が挙げられる。
上記アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物としては特に限定されず、例えば、カリウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム等の水酸化物、酸化物、炭酸塩、硫酸塩、有機酸塩等が挙げられる。
上記中和処理された熱膨張性黒鉛の市販品としては、例えば、日本化成社製「CA−60S」等が挙げられる。
【0030】
上記中和処理された熱膨張性黒鉛の粒度は、20〜200メッシュが好ましい。粒度が200メッシュより小さくなると、黒鉛の膨張度が小さく、所定の耐火断熱層が得られず、粒度が20メッシュより大きくなると、黒鉛の膨張度が大きいという利点はあるが、熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質と混練する際に分散性が悪くなり、物性の低下が避けられない。
【0031】
上記多価アルコールは、分子中に水酸基を2つ以上有する炭化水素化合物であるが、その炭素数は1〜50が好ましい。上記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、モノペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ネオペンタエリスリトール、ソルビトール、イノシトール、マンニトール、グルコース、フルクトース、デンプン、セルロース等が挙げられる。
上記多価アルコールは、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0032】
上記多価アルコールとしては、分子中の水酸基数と炭素数との比〔(水酸基数)/(炭素数)〕が、0.2〜2.0であるものが好ましく、より好ましくは、ペンタエリスリトール類、ソルビトール、マンニトール等に代表されるような、〔(水酸基数)/(炭素数)〕が、0.7〜1.5のものである。なかでも、ペンタエリスリトール類は、水酸基含有率が高いため炭化促進効果が高く、最も好ましいものである。
【0033】
上記分子中の水酸基数と炭素数との比〔(水酸基数)/(炭素数)〕が0.2〜2.0の範囲にある多価アルコールは、燃焼時に脱水縮合して効果的に炭化層を形成する。上記比〔(水酸基数)/(炭素数)〕が0.2未満であると、燃焼時には脱水縮合よりも炭素鎖の分解が起こり易くなるため、充分な炭化層を形成することができず、2.0を超えると、炭化層の形成には差し支えないが、耐水性が大幅に低下する。耐水性が低下すると、成形直後の樹脂組成物を水冷する際に、上記多価アルコールが溶出したり、成形体の保管中の湿度によって、上記多価アルコールがブリードアウトする等の問題点がある。
【0034】
以下、本発明1の耐火膨張シート(B)を構成する樹脂組成物として、好ましいものを具体的に例示しながら説明する。以下に説明する樹脂組成物1〜5を構成する熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質等の各材料しては、上述したものが使用される。
まず、本発明1における樹脂組成物1として、熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質、リン化合物、中和処理された熱膨張性黒鉛、及び、無機充填剤からなり、上記リン化合物及び上記中和処理された熱膨張性黒鉛の配合量が、上記熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質100重量部に対して合計量で20〜200重量部、中和処理された熱膨張性黒鉛と上記リン化合物との重量比〔(中和処理された熱膨張性黒鉛)/(リン化合物)〕が、0.01〜9、上記無機充填剤の配合量が、上記熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質100重量部に対して50〜500重量部、上記無機充填剤と上記リン化合物との重量比〔(無機充填剤)/(リン化合物)〕が、0.6〜1.5の樹脂組成物が挙げられる。
【0035】
上記無機充填剤の中では、上記含水無機物、上記アルカリ金属、アルカリ土類金属及び周期律表IIb族金属の金属炭酸塩、上記含水無機物と上記金属炭酸塩との混合物等が好ましい。
【0036】
上記リン化合物及び上記中和処理された熱膨張性黒鉛の配合量は、上記熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質100重量部に対して、合計量で20〜200重量部が好ましい。20重量部未満であると、充分な耐火性が得られず、200重量部を超えると、機械的物性の低下が大きく、使用に耐えない。
【0037】
上記無機充填剤の配合量は、上記熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質100重量部に対して、50〜500重量部が好ましい。50重量部未満であると、充分な耐火性が得られず、500重量部を超えると、機械的物性の低下が大きく、使用に耐えない。より好ましくは、60〜300重量部である。
上記無機充填剤と上記リン化合物との重量比〔(無機充填剤)/(リン化合物)〕は、0.6〜1.5である。
【0038】
上記中和処理された熱膨張性黒鉛と上記リン化合物との重量比〔(中和処理された熱膨張性黒鉛)/(リン化合物)〕は、0.01〜9が好ましい。中和処理された熱膨張性黒鉛とリン化合物との重量比を、0.01〜9とすることによって、燃焼残渣の形状保持性と高い耐火性能を得ることができる。中和処理された熱膨張性黒鉛の配合比率が多すぎると、燃焼時に膨張した黒鉛が飛散し、充分な膨張断熱層が得られない。一方、リン化合物の配合比率が多すぎると、断熱層の形成が充分ではなくなるので、充分な断熱効果が得られない。
【0039】
上記中和処理された熱膨張性黒鉛とリン化合物との重量比〔(中和処理された熱膨張性黒鉛)/(リン化合物)〕が、0.01〜9の上記範囲内においても、中和処理された熱膨張性黒鉛の配合比率が多いと、高い膨張倍率は得られるが形状保持性が充分ではなくなる。この場合、燃焼時の形状保持性の観点から、中和処理された熱膨張性黒鉛とリン化合物との重量比は、0.01〜2が好ましい。より好ましくは、0.02〜0.3であり、更に好ましくは、0.025〜0.2である。
上記中和処理された熱膨張性黒鉛の配合量が10重量部以下のときは、形状保持性が比較的良好で、加熱残渣が崩れ落ちることがない。
【0040】
上記樹脂組成物1の耐火の機構は、必ずしも明らかではないが、以下のように発現するものと考えられる。即ち、中和処理された熱膨張性黒鉛は、加熱により膨張して断熱層を形成し、熱の伝達を阻止する。無機充填剤は、その際熱容量の増大に寄与する。リン化合物は、膨張断熱層の形状保持能力を有する。
【0041】
次に、本発明1における樹脂組成物2として、熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質、リン化合物、及び、上記アルカリ金属、アルカリ土類金属及び周期律表IIb族金属の金属炭酸塩からなり、上記リン化合物及び金属炭酸塩の合計量が、熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質100重量部に対して50〜900重量部、上記金属炭酸塩と上記リン化合物との重量比〔(金属炭酸塩)/(リン化合物)〕が、0.6〜1.5の樹脂組成物が挙げられる。
【0042】
上記リン化合物及び金属炭酸塩の合計量としては、熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質100重量部に対して、50〜900重量部を配合することが好ましい。上記金属炭酸塩と上記リン化合物との重量比〔(金属炭酸塩)/(リン化合物)〕は、0.6〜1.5が好ましい。上記金属炭酸塩とリン化合物との重量比を0.6〜1.5とすることによって、発泡膨張し、かつ、強固な皮膜を形成することができる。上記金属炭酸塩が多すぎると、充分な膨張倍率が得られず、上記リン化合物が多すぎると、破断強度が低下し、樹脂組成物2の機械的物性が低下する。
【0043】
上記樹脂組成物2の耐火の機構は、必ずしも明らかではないが、以下のように発現するものと考えられる。即ち、加熱時にリン化合物より発生するポリリン酸と炭酸塩との化学反応により、脱炭酸、脱アンモニア反応が促進する。リン化合物はポリリン酸を発生させるとともに、発泡皮膜のバインダーとして働く。金属炭酸塩は骨材的役割を果たす。含水無機物及び/又はカルシウム塩は、上記金属炭酸塩と同様に骨材的役割を果たすと考えられる。
【0044】
次に、本発明1における樹脂組成物3として、熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質、リン化合物、上記アルカリ金属、アルカリ土類金属及び周期律表IIb族金属の金属炭酸塩、及び、含水無機物及び/又はカルシウム塩からなり、上記リン化合物、金属炭酸塩並びに含水無機物及び/又はカルシウム塩の合計量が、熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質100重量部に対して50〜900重量部、上記リン化合物に対する上記金属炭酸塩並びに上記含水無機物及び/又はカルシウム塩の合計量との重量比〔(金属炭酸塩並びに含水無機物及び/又はカルシウム塩の合計量)/(リン化合物)〕が、0.6〜1.5、含水無機物及び/又はカルシウム塩の合計量が、上記金属炭酸塩100重量部に対して1〜70重量部の樹脂組成物が挙げられる。
上記カルシウム塩としては特に限定されず、例えば、硫酸カルシウム、石膏、二リン酸カルシウム等が挙げられる。
【0045】
上記リン化合物、金属炭酸塩並びに含水無機物及び/又はカルシウム塩の合計量としては、熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質100重量部に対して、50〜900重量部を配合することが好ましい。50重量部未満であると、加熱後の残渣量が不充分となり、耐火断熱層を形成することができず、900重量部を超えると、樹脂組成物3の機械的物性が低下する。
含水無機物及び/又はカルシウム塩の合計量としては、上記金属炭酸塩100重量部に対して、1〜70重量部を配合することが好ましい。70重量部を超えると、良好な形状保持性が発揮できない。
【0046】
上記リン化合物に対する上記金属炭酸塩並びに上記含水無機物及び/又はカルシウム塩の合計量との重量比〔(金属炭酸塩並びに含水無機物及び/又はカルシウム塩の合計量)/(リン化合物)〕は、0.6〜1.5が好ましい。
【0047】
上記樹脂組成物3の耐火の機構は、必ずしも明らかではないが、以下のように発現するものと考えられる。即ち、加熱時にリン化合物より発生するポリリン酸と炭酸塩との化学反応により、脱炭酸、脱アンモニア反応が促進する。リン化合物はポリリン酸を発生させるとともに、発泡皮膜のバインダーとして働く。金属炭酸塩は骨材的役割を果たす。含水無機物及び/又はカルシウム塩は、上記金属炭酸塩と同様に骨材的役割を果たすと考えられる。
【0048】
また、本発明1における樹脂組成物4として、熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質、リン化合物、多価アルコール、及び、上記アルカリ金属、アルカリ土類金属及び周期律表IIb族金属の金属炭酸塩からなり、上記リン化合物、多価アルコール及び金属炭酸塩の合計量が、熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質100重量部に対して50〜900重量部、上記多価アルコールと上記リン化合物との重量比〔(多価アルコール)/(リン化合物)〕が、0.05〜20、上記金属炭酸塩と上記リン化合物との重量比〔(金属炭酸塩)/(リン化合物)〕が、0.01〜50の樹脂組成物が挙げられる。
【0049】
上記リン化合物、多価アルコール及び金属炭酸塩の配合量としては、熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質100重量部に対して、その3成分の合計量が50〜900重量部となるように配合することが好ましい。
上記3成分の合計量が50重量部未満であると、加熱後の残渣量が不充分となり、耐火断熱層を形成することができず、900重量部を超えると、樹脂組成物4の機械的物性が低下する。より好ましくは、100〜700重量部であり、更に好ましくは、200〜500重量部である。
【0050】
上記多価アルコールと上記リン化合物との重量比〔(多価アルコール)/(リン化合物)〕は、より高い耐火性能と残渣の形状保持性を発揮する観点から、0.05〜20が好ましい。上記重量比が0.05未満であると、発泡断熱層が脆くなるため使用に耐えられなくなり、20を超えると、発泡膨張せず、充分な耐火性能が得られない。より好ましくは、0.3〜10であり、更に好ましくは、0.4〜5である。
【0051】
上記金属炭酸塩と上記リン化合物との重量比〔(金属炭酸塩)/(リン化合物)〕は、耐火性能と残渣の形状保持性を向上させる観点から、0.01〜50が好ましく、より好ましくは0.3〜15であり、更に好ましくは0.5〜7である。上記重量比が0.01未満であると、発泡断熱層が脆くなる。リン化合物は金属炭酸塩のバインダー的役割を果たしているので、上記重量比が50を超えると、リン化合物がバインダーとして機能せず、成形が困難となるだけでなく、加熱時の発泡膨張が不充分となるため、充分な耐火性能が得られない。
【0052】
上記樹脂組成物4においては、リン化合物、多価アルコール及び金属炭酸塩とを組み合わせることによって、充分な耐熱性を有し、かつ、燃焼後の残渣を強固なものにし、形状保持を図るものである。多価アルコールと金属炭酸塩に対するリン化合物の配合割合が大きすぎると、燃焼時に大きく膨張するため、断熱層が脆くなり、材料を垂直において燃焼させた後も崩れない程度に充分に強固な燃焼残渣が得られなくなる。
上記金属炭酸塩の配合量が多すぎたり、粒径が小さいと、吸油量が大きくなって、発泡時のマトリックス粘度が大きくなるために、発泡が抑制され、断熱効果が充分ではなくなる。金属炭酸塩の配合量が少ないと、粘度が低すぎて発泡せずに流れてしまう。
【0053】
上記樹脂組成物4の耐火の機構は、必ずしも明らかではないが、以下のように発現するものと考えられる。即ち、加熱によりリン化合物は脱水、発泡すると共に、炭化触媒としても作用する。多価アルコールはリン化合物の触媒作用を受けて炭化層を形成し、形状保持性の優れた断熱層を形成する。金属炭酸塩は骨材的役割を果たし、炭化層をより強固なものとする。
【0054】
更に、本発明1における樹脂組成物5として、熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質、リン化合物、中和処理された熱膨張性黒鉛、多価アルコール、及び、上記アルカリ金属、アルカリ土類金属及び周期律表IIb族金属の金属炭酸塩からなり、上記リン化合物、上記中和処理された熱膨張性黒鉛、上記多価アルコール及び上記金属炭酸塩の合計量が、上記熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質100重量部に対して50〜900重量部、上記多価アルコールと上記リン化合物との重量比〔(多価アルコール)/(リン化合物)〕が、0.05〜20、上記中和処理された熱膨張性黒鉛と上記リン化合物との重量比〔(中和処理された熱膨張性黒鉛)/(リン化合物)〕が、0.01〜9、上記金属炭酸塩と上記リン化合物との重量比〔(金属炭酸塩)/(リン化合物)〕が、0.01〜50の樹脂組成物が挙げられる。
【0055】
上記リン化合物、上記中和処理された熱膨張性黒鉛、上記多価アルコール及び上記金属炭酸塩の配合割合としては、上記熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質100重量部に対して、それらの合計量が50〜900重量部であることが好ましい。
上記4成分の合計量が50重量部未満であると、加熱後の残渣量が不充分となり、耐火断熱層を形成することができず、900重量部を超えると、樹脂組成物4の機械的物性が低下する。より好ましくは、100〜700重量部であり、更に好ましくは、200〜500重量部である。
【0056】
上記中和処理された熱膨張性黒鉛と上記リン化合物との重量比〔(中和処理された熱膨張性黒鉛)/(リン化合物)〕は、0.01〜9であることが好ましい。上記中和処理された熱膨張性黒鉛とリン化合物との重量比を、0.01〜9とすることによって、燃焼残渣の形状保持性と高い耐火性能を得ることができる。中和処理された熱膨張性黒鉛の配合比率が多すぎると、燃焼時に膨張した黒鉛が飛散し、充分な膨張断熱層が得られない。一方、リン化合物の配合比率が多すぎると、断熱層の形成が充分ではないために、充分な断熱効果が得られない。
【0057】
燃焼時の形状保持性という点からは、上記中和処理された熱膨張性黒鉛とリン化合物との重量比は、0.01〜5であることがより好ましい。樹脂組成物4自体が難燃性であっても、形状保持性が不充分であると脆くなった残渣が崩れ落ち、火炎を貫通させてしまう可能性もあるため、適用される用途において形状保持性が必要であるか否かによって、中和処理された熱膨張性黒鉛の配合比率を選択することができる。更に好ましくは、上記範囲は、0.01〜2である。
【0058】
上記多価アルコールと上記リン化合物との重量比〔(多価アルコール)/(リン化合物)〕は、より高い耐火性能と残渣の形状保持性を発揮する観点から、0.05〜20であることが好ましい。重量比が0.05未満であると、発泡焼成層が脆くなるため使用に耐えられなくなり、20を超えると、発泡膨張せず、充分な耐火性能が得られない。より好ましくは、0.3〜10であり、更に好ましくは、0.4〜5である。
【0059】
上記金属炭酸塩と上記リン化合物との重量比〔(金属炭酸塩)/(リン化合物)〕は、耐火性能と残渣の形状保持性を向上させる観点から、0.01〜50が好ましく、より好ましくは0.3〜15であり、更に好ましくは0.5〜7である。重量比が0.01未満であると、発泡焼成層が脆くなる。リン化合物は金属炭酸塩のバインダー的役割を果たしているので、上記重量比が50を超えると、リン化合物がバインダーとして機能せず、成形が困難となるだけでなく、加熱時の発泡膨張が不充分となるため、充分な耐火性能が得られない。
【0060】
上記樹脂組成物5の耐火の機構は、必ずしも明らかではないが、以下のように発現するものと考えられる。即ち、加熱によりリン化合物は脱水、発泡すると共に、炭化触媒としても作用する。多価アルコールはリン化合物の触媒作用を受けて炭化層を形成し、形状保持性の優れた断熱層を形成する。金属炭酸塩は骨材的役割を果たし、炭化層をより強固なものとする。中和処理された熱膨張性黒鉛は、その際に膨張して断熱層を形成し、熱の伝達を阻止するためにより有効に作用する。
【0061】
上記樹脂組成物からなる耐火膨張シート(B)は、25℃での初期のかさ密度が0.8〜2.0g/cm3 であるものが好ましい。25℃での初期のかさ密度を0.8〜2.0g/cm3 の範囲内とすることによって、上記耐火膨張シート(B)に要求される断熱性、耐火性等の物性を損なわず、しかも、作業性に優れたものとすることができる。
【0062】
25℃における初期のかさ密度が、0.8g/cm3 未満であると、樹脂組成物中に充分な量の膨張剤、炭化剤、不燃性充填剤等を添加することができず、加熱後の膨張倍率、残渣量が不充分となり、耐火断熱層を形成することができない。25℃における初期のかさ密度が、2.0g/cm3 を超えると、上記樹脂組成物の重量が大きくなりすぎるために、大面積の樹脂組成物の張り付け作業等における作業性が低下する。より好ましくは、1.0〜1.8g/cm3 である。
【0063】
上記耐火膨張シート(B)は、500℃で1時間加熱したときのかさ密度が0.05〜0.5g/cm3 であるものが好ましい。500℃で1時間加熱したときのかさ密度が、0.05g/cm3 未満であると、隙間が多すぎるため、膨張時の崩れにより耐火断熱層を層として形成することができなくなり、0.5g/cm3 を超えると、膨張倍率が不充分となり、耐火性能を充分に発揮することができず、耐火断熱層を形成することができなくなる。より好ましくは、0.1〜0.3g/cm3 である。
【0064】
上記樹脂組成物からなる耐火膨張シート(B)は、50kW/cm2 の加熱条件下で30分間体積膨張させた後の熱伝導率が、0.01〜0.3kcal/m・h・℃であることが好ましい。50kW/cm2 の加熱条件下で30分間体積膨張させた後の熱伝導率が、0.3kcal/m・h・℃を超えると、断熱性能が不充分であるため充分な耐火性能を発揮することができず、0.01kcal/m・h・℃未満であるものは、有機物及び無機物の混合物では作ることができない。
【0065】
上記樹脂組成物からなる耐火膨張シート(B)は、示差走査熱量計(DSC)により、10℃/分で600℃まで昇温した場合の総吸熱量が、100J/g以上であることが好ましい。100J/g以上であると、温度上昇が遅くなり、断熱性能がより良好となる。
【0066】
本発明1においては、上記樹脂組成物からなる耐火膨張シート(B)は、粘着性を有するものであることが好ましい。粘着性を有するとは、不燃性材料からなる板材(A)又は等に仮止め固定が可能となるような性質を有することを意味し、広く粘着性及び/又は接着性を有することをいう。上記耐火膨張シート(B)が粘着性を有するものとすることにより、不燃性材料からなる板材(A)又はに簡単に接着することができ、鉄骨被覆用耐火積層体作製時の施工性が向上する。
【0067】
上記耐火膨張シート(B)に粘着性を付与するためには、例えば、上記熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質に粘着付与剤を添加することにより行うことができる。
上記粘着付与剤としては特に限定されず、例えば、粘着付与樹脂、可塑剤、油脂類、高分子低重合物等が挙げられる。
上記粘着付与樹脂としては特に限定されず、例えば、ロジン、ロジン誘導体、ダンマル、コーパル、クマロン、インデン樹脂、ポリテルペン、非反応性フェノール樹脂、アルキッド樹脂、石油系炭化水素樹脂、キシレン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0068】
上記可塑剤は、単独では上記耐火膨張シート(B)に粘着性を付与することは難しいが、上記粘着付与樹脂と併用することにより粘着性をより向上させることができる。上記可塑剤としては特に限定されず、例えば、フタル酸系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、アジピン酸エステル系可塑剤、サバチン酸エステル系可塑剤、リシノール酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、エポキシ系可塑剤、塩化パラフィン等が挙げられる。
上記油脂類は、上記可塑剤と同様の作用を有し、可塑性付与と粘着調整剤の目的で用いることができる。上記油脂類としては特に限定されず、例えば、動物性油脂、植物性油脂、鉱物油、シリコーン油等が挙げられる。
【0069】
上記高分子低重合物は、粘着性付与以外に耐寒性向上、流動調整の目的で用いることができる。上記高分子低重合物としては特に限定されず、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、1,2−ポリブタジエンゴム(1,2−BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン−プロピレンゴム(EPM、EPDM)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、アクリルゴム(ACM、ANM)、エピクロルヒドリンゴム(CO、ECO)、多加硫ゴム(T)、シリコーンゴム(Q)、フッ素ゴム(FKM,FZ)、ウレタンゴム(U)等の低重合体等が挙げられる。
【0070】
本発明1においては、耐火膨張シート(B)を構成する上記樹脂組成物に、上記樹脂組成物の物性を損なわない範囲で、難燃剤、酸化防止剤、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、顔料、粘着付与樹脂等が添加されてもよい。
【0071】
上記樹脂組成物は、上記各成分を単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー、二本ロール等公知の混練装置を用いて溶融混練することにより得ることができる。
上記樹脂組成物は、例えば、プレス成型、押出し成型、カレンダー成型等の従来公知の方法により、上記耐火膨張シート(B)に成型することができる。
【0072】
本発明1の鉄骨被覆用耐火積層体において、不燃性材料からなる板材(A)の厚みは、0.2〜20mmが好ましい。0.2mm未満であると、加熱された際にその形状を維持するのが難しくなり、20mmを超えると、使用量が多くなるため、経済的でない。より好ましくは、0.3〜10mmである。
【0073】
耐火膨張シート(B)の初期厚みは、0.5〜40mmが好ましい。0.5mm未満であると、膨張しても充分な断熱性を発揮することができず、40mmを超えると、重量が重くなり、取り扱いが困難となる。上記初期厚みとは、25℃における加熱膨張前の耐火膨張シート(B)の厚み(mm)をいう。
【0074】
耐火膨張シート(B)は、火災等が発生し、上記鉄骨被覆用耐火積層体の温度が上昇すると熱により膨張し、発泡体又は緩衝材からなる層(C)の消失等により生じたスペースを充填する。
発泡体層の厚みは、1〜60mmが好ましい。1mm未満であると、充分な膨張代を確保することができず、60mmを超えると、施工の際の取り扱い性が悪くなる。好ましくは、5〜40mmである。
【0075】
耐火膨張シート(B)と発泡体又は緩衝材からなる層(C)との厚みの比(発泡体又は緩衝材からなる層(C)/耐火膨張シート(B))は、1〜20が好ましい。1未満であると、スペースが小さすぎるため、耐火膨張シート(B)が充分に膨張することができず、20を超えると、上記スペースが大きくなりすぎ、膨張後の耐熱性断熱層が崩れ、断熱性を発揮することができなくなるおそれがある。
上記鉄骨被覆用耐火積層体全体の厚みは、1〜100mmが好ましい。1mm未満では、耐火性能が充分発揮されず、100mmを超えると、取り扱いが困難となる。
【0076】
本発明1の鉄骨被覆用耐火積層体には、最も鉄骨に面する側に、更に、不燃性材料層(E)を設けるのが好ましい。
上記不燃性材料層としては、例えば、セラミック紙、ガラス繊維不織布、ガラス繊維織布、鉄、アルミニウム、ステンレス等の金属板;金属網、ガラス繊維粗布にアルミニウム箔がラミネートされた複合布等が挙げられる。
【0077】
また、本発明1の鉄骨被覆用耐火積層体には、種々の機能を有する機能層が積層されていてもよい。例えば、耐火膨張シート(B)のクリープ性を高めるために、機能層として、補強基材が耐火膨張シート(B)に隣接して積層されていてもよい。上記補強基材としては、加熱時において耐火性シート状成形体の粘着保持力を補強できるものであれば特に限定されず、例えば、紙、織布、不織布、フィルム、金網等が挙げられる。
【0078】
上記紙としては、クラフト紙、和紙、Kライナー紙等の公知のものを適宜使用することができる。水酸化アルミニウムや炭酸カルシウムを高充填した不燃紙や、難燃剤を配合又は表面に塗布した難燃紙や、ロックウール、セラミックウール、ガラス繊維を用いた無機繊維、炭素繊維紙を用いると耐火性を更に向上できる。
上記不織布としては、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、セルロース繊維等からなる湿式不織布や、長繊維不織布を用いることができる。秤量が7g/m2 未満の不織布を用いると、成形体の厚みによっては破断しやすくなることがあるので、8〜500g/m2 のものが好ましい。より好ましくは、10〜400g/m2 のものである。
上記フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ナイロン、アクリル等のプラスチックフィルム等を適宜用いることができる。
上記金網としては、通常使用される金網等の他に金属ラス等を用いることができる。
【0079】
本発明2の鉄骨被覆用耐火積層体は、鉄骨の周囲を被覆する不燃性材料からなる板材(A)の鉄骨に面する側に、耐火膨張シート(B)及び波形、突条もしくは凹凸形状の賦された金網からなる層(D)を積層してなる。
上記耐火膨張シート(B)及び上記波形、突条もしくは凹凸形状の賦された金網からなる層(D)の積層される順は特に限定されない。(A)、(D)、(B)の順である場合は、不燃性材料層(E)を鉄骨側に積層した方がよい。
上記不燃性材料からなる板材(A)及び上記耐火膨張シート(B)については、本発明1の鉄骨被覆用耐火積層体の説明の項で詳述した。
【0080】
上記金網からなる層(D)は、波形、突条もしくは凹凸形状が賦されているため、火災時等における耐火膨張シート(B)のダレを防止し、その形状を保持する役割を果たし、また、上記金網からなる層(D)は、波形、突条もしくは凹凸形状が賦されているため、耐火膨張シート(B)の膨張空間を確保することができる。
上記波形、突条もしくは凹凸形状の賦された金網としては特に限定されず、例えば、エキスパンド加工した金網や、針金が立体的に編み込まれて形成されたもの、例えば、波形ラス、コブラス、リブラス等が挙げられる。
【0081】
また、上記波形、突条もしくは凹凸形状の賦された金網からなる層(D)の厚みは、1〜60mmが好ましい。1mm未満であると、耐火膨張シート(B)の膨張空間を充分に確保することができず、60mmを超えると、施工性が困難になる。
この波形、突条もしくは凹凸形状の賦された金網からなる層(D)は、耐火膨張シート(B)上に積層してもよく、耐火膨張シート(B)中に埋め込んでもよい。
【0082】
耐火膨張シート(B)と波形、突条もしくは凹凸形状の賦された金網からなる層(D)との厚みの比(波形、突条もしくは凹凸形状の賦された金網からなる層(D)/耐火膨張シート(B))は、1〜20が好ましい。1未満であると、スペースが小さすぎるため、耐火膨張シート(B)が充分に膨張することができず、20を超えると、上記スペースが大きくなりすぎ、膨張後の耐熱性断熱層が崩れ、断熱性を発揮することができなくなるおそれがある。
【0083】
上記鉄骨被覆用耐火積層体全体の厚みは、1〜100mmが好ましい。1mm未満では、耐火性能が充分発揮されず、100mmを超えると、取り扱いが困難となる。
【0084】
本発明2の鉄骨被覆用耐火積層体には、本発明1の鉄骨被覆用耐火積層体の場合と同様に、補強基材等の種々の機能を有する機能層が積層されていてもよい。
【0085】
【発明の実施の形態】
以下に図面を参照しながら、本発明の鉄骨被覆用耐火積層体の実施形態について説明する。
【0086】
図1は、本発明1の鉄骨被覆用耐火積層体の第一の実施の形態を模式的に示した断面図である。
この鉄骨被覆用耐火積層体10では、最外層に不燃性材料からなる板材(A)として、ステンレス板11を配置し、このステンレス板11のH形鋼15に面する側に、耐火膨張シート(B)12及び発泡体層(C)13を順次配置し、更に、鉄骨に最も近い側に、不燃性材料層(E)として、鋼鉄製平ラス金網14を配置している。
【0087】
鉄骨被覆用耐火積層体10の継ぎ目の部分では、図1に示したように、ステンレス板等を数cm重ね、重なった部分に釘、ネジ、溶接ピン等の固定具16を打ち込むことにより鉄骨に固定することができる。
この鉄骨被覆用耐火積層体10においては、ステンレス板11と耐火膨張シート(B)12とが密着しているが、これらの間に空隙が形成されていてもよい。また、固定のために、珪酸カルシウム板、石膏ボード等を下地材として鉄骨に接着し、この下地材に鉄骨被覆用耐火積層体10を接合してもよい。
【0088】
図2は、本発明1の鉄骨被覆用耐火積層体の第二の実施の形態を模式的に示した断面図である。
この鉄骨被覆用耐火積層体20においては、最外層の不燃性材料からなる板材(A)として、セラミックウールブランケット21を配置し、その他は、鉄骨被覆用耐火積層体10と同様に構成している。
【0089】
図3は、本発明1の鉄骨被覆用耐火積層体の第三の実施の形態を模式的に示した断面図である。
この鉄骨被覆用耐火積層体30は、角鋼管柱35を被覆した一例であり、屈曲部分が曲面を形成している他は、鉄骨被覆用耐火積層体10と同様に構成している。
【0090】
図4は、本発明1の鉄骨被覆用耐火積層体の第四の実施の形態を模式的に示した断面図である。
この鉄骨被覆用耐火積層体40においては、一面が開放された部材40aと平面状の部材40bとを平面状の部材40bの両端に延設したステンレス板41aにおいて、釘等の固定具16により連結している。
耐火膨張シート(B)42、発泡体層(C)43、及び、鉄鋼製平ラス金網44の構成は、鉄骨被覆用耐火積層体10と同様である。
【0091】
図5は、本発明1の鉄骨被覆用耐火積層体の第五の実施の形態を模式的に示した断面図である。
この場合には、天井梁として設置されたH形鋼55等を鉄骨被覆用耐火積層体50で被覆している。
天井梁を被覆しているため、鉄骨被覆用耐火積層体50の一面は完全に開放されており、天井に固定するための固定部50aが上部両端に形成されている。その他の構成は図1に示した鉄骨被覆用耐火積層体10とほぼ同様である。
【0092】
図6は、本発明1の鉄骨被覆用耐火積層体の第六の実施の形態を模式的に示した断面図である。
この鉄骨被覆用耐火積層体60は、鉄骨被覆用耐火積層体60の断面形状をH形鋼15の周囲に沿った形状としたものであり、図1の場合と同様に、最外層にはステンレス板61が配置され、このステンレス板61の鉄骨に面する側に、耐火膨張シート(B)62、発泡体層(C)63を順次配置している。
このように、鉄骨被覆用耐火積層体60の断面形状をH形鋼15等の鉄骨の周囲に沿った形状としてもよい。
【0093】
図7は、本発明2の鉄骨被覆用耐火積層体の第一の実施の形態を模式的に示した断面図である。
この鉄骨被覆用耐火積層体70では、最外層に不燃性材料からなる板材(A)として、ステンレス板71を配置し、このステンレス板11のH形鋼15に面する側に、耐火膨張シート(B)72、及び、波形、突条もしくは凹凸形状の賦された金網からなる層(D)として、波形ラス73を順次配置したものである。
【0094】
図8は、本発明2の鉄骨被覆用耐火積層体の第二の実施の形態を模式的に示した断面図である。
この鉄骨被覆用耐火積層体80においては、最外層の不燃性材料からなる板材(A)として、セラミックウールブランケット81を配置し、このセラミックウールブランケット81のH形鋼15に面する側に、耐火膨張シート(B)82、及び、波形、突条もしくは凹凸形状の賦された金網からなる層(D)として、コブラス83を順次配置したものである。
【0095】
これら鉄骨被覆用耐火積層体が装着された建物に火災等が発生して、周囲の温度が上昇した際には、発泡体又は緩衝材からなる層(C)が消失又は収縮し、耐火膨張シート(B)が発泡体又は緩衝材からなる層(C)が存在していたスペースにまで膨張し、これにより断熱層が形成されるため、内部の鉄骨等の温度の上昇を防止することができる。
【0096】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0097】
実施例1
ブチルゴム42重量部、粘着付与樹脂8重量部、ポリブテン50重量部、中和処理された熱膨張性黒鉛(日本化成社製 CA−60S)8重量部、ポリリン酸アンモニウム(住友化学社製 スミセーフP)100重量部、水酸化アルミニウム(日本軽金属社製 B703S)をロールを用いて溶融混練し、粘着性を有する樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を90℃でTダイ押出機により成型し、厚みが6mmの耐火膨張シート(B)1を得た。
次に、厚みが8mmのポリエチレン性発泡体(積水化学社製 ソフトロンSK)上に耐火膨張シート(B)1を積層した後、更に、耐火膨張シート(B)1の上に厚みが0.3mmのステンレス板を積層圧着し、ステンレス板が外側にくるように折り曲げることにより、鉄骨被覆用耐火積層体1を製造した。
【0098】
次に、この鉄骨被覆用耐火積層体1を、図1に示すように、200mm×400mm×1550mmのH形鋼15に被覆し、JIS A 1304に準じて耐火試験を行った。1時間後の平均鉄骨温度は330℃と良好な結果が得られた。
【0099】
実施例2
実施例1の場合と同じ耐火膨張シート(B)1を用い、厚みが6mmのセラミックウールブランケット(イソライト工業社製 カオウール)の上に、耐火膨張シート(B)1を積層した後、更に、厚みが25mmの押し出しスチレン発泡体積層圧着し、セラミックウールブランケットが外側にくるように折り曲げることにより、鉄骨被覆用耐火積層体2を製造した。
得られた鉄骨被覆用耐火積層体2について、実施例1の場合と同様に耐火試験を行ったところ、1時間後の平均鉄骨温度は320℃と良好な結果が得られた。
【0100】
実施例3
実施例1の場合と同じ耐火膨張シート(B)1を製造し、厚みが10mmの波形ラス(山中製作所社製 YM式波形ラス)の上に、耐火膨張シート(B)1を積層した後、厚みが0.3mmのステンレス板を積層圧着し、ステンレス板が外側にくるように折り曲げることにより、鉄骨被覆用耐火積層体3を製造した。
【0101】
次に、この鉄骨被覆用耐火積層体3を、図7に示すように、200mm×400mm×1550mmのH形鋼15に被覆し、実施例1と同様に耐火試験を行った。1時間後の平均鉄骨温度は340℃と良好な結果が得られた。
【0102】
実施例4
波形、突条もしくは凹凸形状の賦された金網として、コブラス(山中製作所社製 YM式コブラス)を用い、耐火膨張シート(B)として、実施例1の場合と同じ耐火膨張シート(B)1を用いた。
そして、実施例2で使用したセラミックウールブランケット上に、耐火膨張シート(B)1を積層した後、コブラスを積層、圧着し、セラミックウールブランケットが外側にくるように折り曲げることにより、鉄骨被覆用耐火積層体4(図8)を製造した。
得られた鉄骨被覆用耐火積層体4について、実施例1の場合と同様に耐火試験を行ったところ、1時間後の平均鉄骨温度は320℃と良好な結果が得られた。
【0103】
比較例1
実施例1で用いたポリエチレン性発泡体とステンレス板とを耐火膨張シート(B)1なしで、直接酢酸ビニル系接着剤で接着し、実施例1の場合と同様に耐火試験を行ったが、10分後には350℃を超えてしまった。
【0104】
比較例2
実施例3で用いた波形ラスとステンレス板とを耐火膨張シート(B)1なしで、直接酢酸ビニル系接着剤で接着し、実施例1の場合と同様に耐火試験を行ったが、10分後には350℃を超えてしまった。
【0105】
比較例3
実施例1の鉄骨被覆用耐火積層体10を使用した場合、1時間後の平均鉄骨温度は330℃であったが、1箇所350℃を超えてしまった部分があった。後で、その箇所を調べてみると、その部分に耐火膨張シート(B)1の欠落があった。
【0106】
【発明の効果】
本発明1及び本発明2のの鉄骨被覆用耐火積層体は、上述の構成からなるので、耐火性能に優れると共に、鉄骨等への装着が簡単であり、施工性に優れるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明1の鉄骨被覆用耐火積層体の第一の実施の形態を模式的に示した断面図である。
【図2】本発明1の鉄骨被覆用耐火積層体の第二の実施の形態を模式的に示した断面図である。
【図3】本発明1の鉄骨被覆用耐火積層体の第三の実施の形態を模式的に示した断面図である。
【図4】本発明1の鉄骨被覆用耐火積層体の第四の実施の形態を模式的に示した断面図である。
【図5】本発明1の鉄骨被覆用耐火積層体の第五の実施の形態を模式的に示した断面図である。
【図6】本発明1の鉄骨被覆用耐火積層体の第六の実施の形態を模式的に示した断面図である。
【図7】本発明2の鉄骨被覆用耐火積層体の第一の実施の形態を模式的に示した断面図である。
【図8】本発明2の鉄骨被覆用耐火積層体の第二の実施の形態を模式的に示した断面図である。
【符号の説明】
10、20、30、40、50、60、70、80 鉄骨被覆用耐火積層体
11、41、51、61、71 ステンレス板
21、31、81 セラミックウールブランケット
12、32、42、52、62、72、82 耐火膨張シート(B)
13、33、43、53、63 発泡体層(C)
14、44、54 鋼鉄製平ラス金網
15、55 H形鋼
35 角鋼管柱
73 波形ラス
83 コブラス
Claims (3)
- 鉄骨の周囲を被覆する不燃性材料からなる板材(A)の鉄骨に面する側に、耐火膨張シート(B)及び発泡体又は緩衝材からなる層(C)を積層してなる鉄骨被覆用耐火積層体であって、
前記耐火膨張シート(B)は、熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質、リン化合物及び無機充填剤を含有する樹脂組成物からなるものであり、
前記熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質は、ポリオレフィン系樹脂、ポリ(1−)ブテン系樹脂、ポリペンテン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、フェノール系樹脂、ポリブテン、ポリクロロプレン、ポリブタジエン、ポリイソブチレン、ニトリルゴム、塩素化ブチル系樹脂および非加硫ゴムよりなる群から選ばれる少なくとも一種であり、
前記無機充填剤と前記リン化合物との重量比〔(無機充填剤)/(リン化合物)〕は、0.6〜1.5の範囲である、
ことを特徴とする鉄骨被覆用耐火積層体。 - 鉄骨の周囲を被覆する不燃性材料からなる板材(A)の鉄骨に面する側に、耐火膨張シート(B)及び波形、突条もしくは凹凸形状の賦された金網からなる層(D)を積層してなる鉄骨被覆用耐火積層体であって、
前記耐火膨張シート(B)は、熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質、リン化合物及び無機充填剤を含有する樹脂組成物からなるものであり、
前記熱可塑性樹脂及び/又はゴム物質は、ポリオレフィン系樹脂、ポリ(1−)ブテン系樹脂、ポリペンテン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、フェノール系樹脂、ポリブテン、ポリクロロプレン、ポリブタジエン、ポリイソブチレン、ニトリルゴム、塩素化ブチル系樹脂および非加硫ゴムよりなる群から選ばれる少なくとも一種であり、
前記無機充填剤と前記リン化合物との重量比〔(無機充填剤)/(リン化合物)〕は、0.6〜1.5の範囲である、
ことを特徴とする鉄骨被覆用耐火積層体。 - 請求項1又は請求項2記載の鉄骨被覆用耐火積層体により被覆された耐火被覆鉄骨構造体。
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