JP3789622B2 - 空調システム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は空調システムに関し、詳しくは、ファンに接続した主風路に複数の対象室を分岐風路を介して並列に接続し、これら分岐風路の夫々に風量調整ダンパを設け、分岐風路夫々の検出通風量に基づき、これら分岐風路の通風量が各々の設定通風量になるように風量調整ダンパを開度調整する、又は、対象室夫々の検出室圧に基づき、これら対象室の室圧が各々の設定室圧になるように風量調整ダンパを開度調整するダンパ制御手段と、風量調整ダンパ夫々の検出開度に基づき、これら風量調整ダンパの開度が全て、上下限値ともに中間開度値に設定してある目標中間開度範囲の範囲内になるようにファンを出力調整するファン制御手段とを設ける空調システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の空調システムについては、特開平1−33447号(特公平8−27043号)を先に提案したが、従来、この種の空調システムでは、目標中間開度範囲の設定変更(具体的には上下限値の設定変更)を可能にしているものの、設定した目標中間開度範囲は、通風量調整上又は室圧調整上の各風量調整ダンパの開度変化に関わり無く固定化していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、この種の空調システムは、分岐風路の通風量が各々の設定通風量になるように、又は、対象室の室圧が各々の設定室圧になるように、分岐風路夫々の風量調整ダンパが開度調整されるのに対し、これら風量調整ダンパの開度(同一時点における各ダンパの開度)が全て、上下限値ともに中間開度値に設定してある目標中間開度範囲の範囲内になるように、主風路に接続のファンを出力調整することから、別形式として、例えば、特公平2−13217号公報に見られるように、風量調整ダンパのいずれもが最大流路断面積の一歩手前の開度に至らないときファンを出力低下させ、かつ、風量調整ダンパのいずれか一つが最大流路断面積の開度(すなわち全開)になるとファンを出力上昇させる形式(つまり、風量調整ダンパのうち最大開度のものが、最大流路断面積の一歩手前の開度を範囲下限とし、かつ、最大流路断面積の開度(全開)を範囲上限とする全開上限の所定開度範囲内になるようにファンを出力調整する形式)に比べ、基本的に次の(イ),(ロ)の利点を有する。
【0004】
(イ)上記の別形式のものでは、風量調整ダンパのうち最大開度のものが全開(最大流路断面積)に至らない限りファンが出力上昇側に調整されず、風量調整ダンパの夫々について全開の極近くに偏ったままの状態が許される為、一般に全開寄りでは開度変化に対する風量変化率が小さくなって風量調整や圧力調整の調整感度が低下し、一方、全閉寄りでは開度変化に対する風量変化率が大きくなって風量調整や圧力調整の安定性が低下する周知のダンパ特性上、風量調整ダンパ(特に最大開度のもの)の風量・圧力調整作用が感度面で平均的にかなり悪い状態の運転になる。
【0005】
また特に、通風量や室圧の調整上で風量調整ダンパをさらに開度増大させる要求があることに対し、全開近くに偏ったままの状態にある風量調整ダンパ(特に最大開度のもの)の全開までの残りの開度幅に余裕が無くてダンパ開度の調整では対応しきれず、結果的に全開後のファンの出力上昇を待つしかない状況になって要求に即応できない場合が多く生じ、この為に、通風量や室圧が何らかの原因で目標の設定値から外れた状態になるのに対し、その状態の解消にかなりの時間を要する場合が多く見られる。
【0006】
これに対し、風量調整ダンパの開度が全て、上下限値ともに中間開度値に設定してある目標中間開度範囲の範囲内になるようにファンを出力調整する形式を採れば、風量調整ダンパ(特に最大開度のもの)が目標中間開度範囲の上限値(中間開度値)を開き側に越えて全開近くに偏ったままの状態になるのを防止できて、ダンパ特性上、風量調整ダンパの風量・圧力調整作用を感度面で良好に保った運転を維持でき、殊に、通風量や室圧の調整上で風量調整ダンパ(特に最大開度のもの)をさらに開度増大させる要求がある場合、目標中間開度範囲の上限値と全開との間を一時的な開度超過を許す余裕開度域として、その要求に対し、ダンパ開度の調整で余裕をもって即応することができ、これらの点で、分岐風路の通風量を各々の設定通風量に調整する、又は、対象室の室圧を各々の設定室圧に調整することの調整性能を大きく向上できる。
【0007】
(ロ)前記の別形式のものでは、通風量や室圧の調整上で風量調整ダンパのうち最大開度以外のもの(その一部ないし全部)が閉じ側に大きく偏ったとき、この閉じ側への大きな偏りにもかかわらず、最大開度のものが範囲下限の近傍で一応は前記の所定開度範囲内にある為に、ファンの出力低下側への調整が実施されず、その閉じ側への大きな偏りがそのままに放置される場合があり、この為、ダンパ特性上で風量調整ダンパのうち最大開度以外のものの風量・圧力調整作用が安定性の面で大きく悪化した運転になることがある。
【0008】
これに対し、風量調整ダンパの開度が全て、上下限値ともに中間開度値に設定してある目標中間開度範囲の範囲内になるようにファンを出力調整する形式を採れば、最大開度以外のものが閉じ側へ大きく偏ることを含め、風量調整ダンパのうち最小開度のものが目標中間開度範囲の下限値(中間開度値)を閉じ側に越えた状態で、風量調整ダンパが閉じ側に大きく偏ったままの状態になるのを防止できて、ダンパ特性上、風量調整ダンパの風量・圧力調整作用を安定性の面でも良好に保った運転を維持でき、この点で、分岐風路の通風量を各々の設定通風量に調整する、又は、対象室の室圧を各々の設定室圧に調整することの調整性能を一層向上できる。また、このように風量調整ダンパの閉じ側への大きな偏りを防止することで、ダンパでの圧力損失の大きい状態でファンを運転することによる動力浪費も併せ一層効果的に防止できて、ファン消費動力を一層節減できる。
【0009】
しかし、この形式では、上記の利点を有するものの、全ての風量調整ダンパが目標中間開度範囲の範囲内に収まるようにするのに、範囲設定上で、風量調整ダンパ夫々の開度にバラツキが生じることを見込んで目標中間開度範囲の範囲幅をある程度大きく設定する為、設定後の固定化された目標中間開度範囲に対し、全ての風量調整ダンパがその範囲内にあるものの、それら風量調整ダンパの開度が全体的に範囲上限側に偏ったままの状態になったり、逆に範囲下限側に偏ったままの状態になることがあり、この点、風量調整ダンパの風量・圧力調整作用を全体として極力良好に保った状態で、それら風量調整ダンパを通風量調整機能または室圧調整機能させることにおいて、未だ改善の余地があった。
【0010】
以上の実情に対し、本発明の主たる課題は、分岐風路の夫々に設けた風量調整ダンパの開度が全て目標中間開度範囲の範囲内になるように、主風路に接続のファンを出力調整する形式において、さらに合理的な制御形態を採ることで、これら風量調整ダンパを全体として一層、風量・圧力調整作用の良好な状態で通風量調整機能ないし室圧調整機能させる点にある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
〔1〕請求項1記載の発明では、複数の対象室に対する分岐風路の夫々に設けた風量調整ダンパの検出開度に基づき、これら風量調整ダンパの開度が全て、上下限値ともに中間開度値に設定してある目標中間開度範囲の範囲内になるように、主風路に接続のファンを出力調整する運転において、これら風量調整ダンパの検出開度の平均値が設定目標平均値よりも小さくなったとき、目標中間開度範囲を大開度側へ範囲移行修正することにより、その修正された範囲内に全ての風量調整ダンパの開度を収める上でファンを出力低下側に調整する傾向が生じるようにし、そして、この低下側へのファン出力調整に対し通風量や室圧の調整上で全ての風量調整ダンパを開き側に開度調整して、それら風量調整ダンパの開度の平均値を設定目標平均値の側へ戻す傾向が生じるようにする。
【0012】
すなわち、このことにより、設定後の目標中間開度範囲を固定化する従来システムでは、その固定化された目標中間開度範囲の範囲内において風量調整ダンパの開度が全体的に範囲下限側に偏ったままの状態になることがあったのに対し、同様の状況において、これら風量調整ダンパの開度を全体的に開き側に修正することが可能になる。
【0013】
一方、風量調整ダンパの検出開度の平均値が設定目標平均値よりも大きくなったときは、目標中間開度範囲を小開度側へ範囲移行修正することにより、その修正された範囲内に全ての風量調整ダンパの開度を収める上でファンを出力上昇側に調整する傾向が生じるようにし、そして、この上昇側へのファン出力調整に対し通風量や室圧の調整上で全ての風量調整ダンパを閉じ側に開度調整して、それら風量調整ダンパの開度の平均値を設定目標平均値の側へ戻す傾向が生じるようにする。
【0014】
すなわち、このことにより、設定後の目標中間開度範囲を固定化する従来システムでは、その固定化された目標中間開度範囲の範囲内において風量調整ダンパの開度が全体的に範囲上限側に偏ったままの状態になることがあったのに対し、同様の状況において、これら風量調整ダンパの開度を全体的に閉じ側に修正することが可能になる。
【0015】
したがって、請求項1記載の発明によれば、設定目標平均値として、ダンパでの圧力損失なども考慮しながら、感度面及び安定性の面の両方についてダンパ特性上で極力良好な風量・圧力調整作用が得られる開度値を設定しておくことで、従来システムに比べ、風量調整ダンパを全体として一層、風量・圧力調整作用の良好な状態で通風量調整機能ないし室圧調整機能させることができ、これにより、分岐風路の通風量を各々の設定通風量に調整する、又は、対象室の室圧を各々の設定室圧に調整することの調整性能を一層向上させることができる。
【0016】
また、風量調整ダンパが全体として閉じ側に偏ったままの状態(開度平均値が設定目標平均値よりも小さいままの状態)を抑止できることで、ファン消費動力も一層効果的に節減できる。
【0017】
なお、風量調整ダンパを強制的に全閉にしたり、別途の遮断ダンパを閉じる等で、分岐風路のうち一部のものにおける通風を停止することがある場合には、その通風を停止した分岐風路における風量調整ダンパの開度は、目標中間開度範囲の範囲内にあるか否かの判定対象、及び、開度平均値の演算対象の夫々から除外し、これにより、通風を停止した分岐風路の影響を受けることなく、残りの分岐風路ついての通風量調整や残りの分岐風路に接続の対象室についての室圧調整において、風量調整ダンパの開度に応じたファンの出力調整及び開度平均値に応じた目標中間開度範囲の範囲移行修正を適切に行えるようにする。
【0018】
範囲移行修正の具体的修正形態については、目標中間開度範囲の上下限値そのものを検出開度の平均値に応じて変更する形態を採る他、例えば、風量調整ダンパの開度が全て目標中間開度範囲の範囲内にあるか否かの判定に用いる検出開度を、それら検出開度の平均値に応じ補正する等して、実質的に目標中間開度範囲の上下限値を検出開度の平均値に応じ変更するのと等しくする修正形態を採ってもよい。
【0019】
また、範囲移行修正の具体的修正動作としては、検出開度の平均値と設定目標平均値との偏差に対し修正量(修正方向を含む)を関連付けた修正基準を予め設定しておき、そして、その修正基準に基づき現状の平均値偏差に応じた修正量だけ目標中間開度範囲を範囲移行させる形態、あるいは、検出開度の平均値が設定目標平均値から外れている間、その外れ方向とは反対の方向へ目標中間開度範囲を所定時間毎に所定量づつ、又は、所定速度で連続的に範囲移行させる形態、また場合によっては、検出開度の平均値が設定目標平均値から外れると、その外れ方向とは反対の方向へ目標中間開度範囲を一定修正量だけ範囲移行させる形態など、種々の移行形態を採ることができる。
【0020】
さらにまた、設定目標平均値は1つの開度値で与える形態、あるいは、適当な範囲幅を有する開度範囲で与える形態のいずれを採ってもよく、設定目標平均値を1つの最適開度値で与える場合には、風量調整ダンパを全体として極力、風量・圧力調整作用の良好な状態で通風量調整機能ないし室圧調整機能させる所期目的をより高度に達成でき、一方、設定目標平均値を適当な範囲幅を有する開度範囲で与える場合には、範囲移行修正の修正頻度を少なくしてその範囲移行修正に伴うファン出力変更やダンパ開度変更の頻度を少なくし、これにより、運転の安定性を高めることができる。
【0021】
〔2〕請求項2記載の発明では、目標中間開度範囲の修正において、目標中間開度範囲の上限値に対する大開度側修正限界の中間開度値と、下限値に対する小開度側修正限界の中間開度値との夫々を規定するから、範囲修正において、全開ないし全開に近い開度を範囲上限とする状態にまで目標中間開度範囲が無制限に修正されることで、却って、風量調整ダンパ(特に最大開度のもの)が全開近くに偏った状態が許される可能性が生じてしまうことを防止でき、これにより、風量調整ダンパ(特に最大開度のもの)の風量・圧力調整作用が感度面で一定限度以上に大きく悪化した状態の運転になること、及び、通風量調整や室圧調整上での開度増大要求に対しダンパ開度の調整で即応できなくなることを一層確実に防止できる。
【0022】
また同様に、範囲修正において、全閉や全閉に近い開度を範囲下限とする状態にまで目標中間開度範囲が無制限に修正されることで、却って、風量調整ダンパ(特に最小開度のもの)が閉じ側に大きく偏った状態が許される可能性が生じてしまうことも防止でき、これにより、風量調整ダンパ(特に最小開度のもの)の風量・圧力調整作用が安定性の面で一定限度以上に大きく悪化した状態の運転になること、及び、風量調整ダンパでの圧力損失が大きくなってファン動力の浪費が大きくなることを一層確実に防止できる。
【0023】
つまり、請求項2記載の発明によれば、風量調整ダンパの開度平均値に応じて目標中間開度範囲を範囲修正する形態を採りながらも、基本的には、風量調整ダンパの開度が全て、上下限値ともに中間開度値に設定してある目標中間開度範囲の範囲内になるようにファンを出力調整する形式における先述(イ),(ロ)の利点を確実に維持することができて、分岐風路の通風量を各々の設定通風量に調整する、又は、対象室の室圧を各々の設定室圧に調整することの調整性能の向上、及び、ファン消費動力の節減を一層確実なものにすることができる。
【0024】
ちなみに、風量調整ダンパを全体として極力、風量・圧力調整作用の良好な状態で通風量調整機能または室圧調整機能させるのに、別法としては、所定の範囲幅を有する目標中間開度範囲を設けず、単に、風量調整ダンパの開度の平均値が設定目標平均値になるようにファンを出力調整する方式も考えられるが、この場合、平均値の変化は伴わない状態で各風量調整ダンパが開度変化することにおいて、最大開度のものが全開近くに偏ったとしても、また、最小開度のものが全閉近くに偏ったとしても、開度平均値の変化がない限りファンの出力調整は実施されず、その偏り状態がそのままに放置されてしまい、この点で、請求項2記載の発明の方が優れたものとなる。
【0025】
なお、目標中間開度範囲の範囲移行修正において、範囲上限値に対する大開度側修正限界の中間開度値と、範囲下限値に対する小開度側修正限界の中間開度値とを規定するには、それら上下限値そのものを具体的中間開度値に数値規定する形態を採る他、例えば、目標中間開度範囲の範囲中心値に対する許容変化範囲を規定する等して、実質的に目標中間開度範囲の上下限値を中間開度値に数値規定するのと等しくする規定形態を採ってもよい。
【0026】
〔3〕請求項3記載の発明では、風量調整ダンパの開度が全て目標中間開度範囲の範囲内になるようにファンを出力調整することの具体的調整形態として、検出開度のうち最大のものが目標中間開度範囲を大開度側に逸脱(すなわち、風量調整ダンパのうち最大開度のものが目標中間開度範囲を開き側に逸脱)しているときファンを出力上昇させ、このファン出力の上昇に対し、通風量や室圧の調整上で風量調整ダンパを全体として閉じ側に開度調整させることにより、風量調整ダンパのうち最大開度のものを目標中間開度範囲の範囲内に復帰させる。
【0027】
そして、この場合、検出開度のうち最小のものが目標中間開度範囲を小開度側に逸脱しているか否かにかかわらず、上記の如く、検出開度のうち最大のものが目標中間開度範囲を大開度側に逸脱していることのみを条件として、ファンを出力上昇させることにより、風量調整ダンパのうち最小開度のものを目標中間開度範囲の範囲内に収めることよりも、最大開度のものを目標中間開度範囲の範囲内に収めることを優先する調整形態とする。
【0028】
他方、検出開度のうち最大のものが目標中間開度範囲の範囲内にある状態で、それら検出開度のうち最小のものが目標中間開度範囲を小開度側に逸脱(すなわち、風量調整ダンパのうち最小開度のものが目標中間開度範囲を閉じ側に逸脱)しているときはファンを出力低下させ、このファン出力の低下に対し、通風量や室圧の調整上で風量調整ダンパを全体として開き側に開度調整させることにより、風量調整ダンパのうち最小開度のものを目標中間開度範囲の範囲内に復帰させる。
【0029】
また、検出開度の全てが目標中間開度範囲の範囲内にあるときは、ファンをその時の出力に維持することで、風量調整ダンパの開度が全て目標中間開度範囲の範囲内にある現状を保つようにする。
【0030】
つまり、請求項3記載の発明によれば、通風量や室圧の調整上で各風量調整ダンパの開度が変化することにおいて、それら風量調整ダンパの開度のバラツキ具合が変化(特に、分岐風路の設定通風量の変更や対象室の設定室圧の変更、あるいはまた、分岐風路に配したフィルタの通気抵抗変化などが原因)し、そして、そのバラツキ具合によっては、それら風量調整ダンパの開度を全て目標中間開度範囲の範囲内に収めることができなくなる可能性があるのに対し、上記の如く、風量調整ダンパのうち最小開度のものを目標中間開度範囲の範囲内に収めることよりも、最大開度のものを目標中間開度範囲の範囲内に収めることを優先する調整形態を採ることにより、通風量調整上や室圧調整上で最も回避すべき事態、すなわち、風量調整ダンパ(特に最大開度のもの)が全開近くに偏った状態になって、通風量調整や室圧調整上での開度増大要求に対しダンパ開度の調整で即応しきれなくなる事態を一層確実に防止できる。
【0031】
なお、ファンを出力調整するには、風量調整ダンパのうち最大開度のものや最小開度のものが目標中間開度範囲から逸脱している間、その逸脱を解消する側へファンの出力を一定の出力変更速度で変更する調整形態、あるいは、最大開度のものや最小開度のものの目標中間開度範囲からの逸脱量が大きいほど大きい出力変更速度でファンの出力を逸脱解消側へ変更する調整形態など、種々の調整形態を採用でき、後者の調整形態の場合、逸脱量が大きいほど大きい出力変更速度でファンの出力が変更されることにより逸脱の解消が速やかになり、また、逸脱量が小さいほど小さい出力変更速度でファンの出力が変更されることによりオーバーシュート的な現象が防止されて運転が安定化する。
【0032】
〔4〕請求項4記載の発明では、前記の範囲移行修正に加え、検出開度のうち最大のものと最小のものとの差が小さくなるほど、目標中間開度範囲の上限値と下限値との両方を所定比率で範囲縮小側に修正し、かつ、検出開度のうち最大のものと最小のものとの差が大きくなるほど、目標中間開度範囲の上限値と下限値との両方を所定比率で範囲拡大側に修正する範囲幅修正を行うことにより、次の機能を得ることができる。
【0033】
つまり、通風量や室圧の調整上で各風量調整ダンパの開度が変化することにおいては、前記の如く、それら開度のバラツキ具合が変化することがある為、そのバラツキ具合によっては、目標中間開度範囲の範囲幅が風量調整ダンパの開度のうちの最大のものと最小のものとの差(最大最小開度差)に比べ必要以上に大きくなって、最大のものと範囲上限値との間の不感開度幅や、最小のものと範囲下限値との間の不感開度幅が過大になり、この為に、開度平均値の変化に対し目標中間開度範囲の範囲移行修正をもって風量調整ダンパの開度を修正(すなわち開度平均値を修正)する機能や、開度平均値の変化は伴わずに風量調整ダンパの開度が変化することに対しファンの出力調整をもってダンパの開度を修正する機能の応答性が低下してしまう場合がある。
【0034】
また、バラツキ具合によっては、逆に、目標中間開度範囲の範囲幅が風量調整ダンパの最大最小開度差に比べ小さくなって、全ての開度を目標中間開度範囲の範囲内に収めることができなくなり、この為に、全ての開度を目標中間開度範囲の範囲内に収めることを目的として実施するファンの出力調整動作が不安定にある場合もある。
【0035】
これに対し、上記の範囲幅修正を行えば、バラツキ具合の変化による最大最小開度差の変化に対し、目標中間開度範囲を、全ての開度を収めることが可能で、かつ、開度のうちの最大のものと範囲上限値との間の不感開度幅や、開度のうちの最小のものと範囲下限値との間の不感開度幅(これら不感開度幅はファンの出力調整頻度が過大になるのを防止して運転を安定化するのに必要)が適度になる適切な範囲幅のものに維持でき、これにより、上記の如き応答性の低下を効果的に防止できて、風量調整ダンパを全体として極力、風量・圧力調整作用の良好な状態で通風量調整機能ないし室圧調整機能させる所期目的を一層効果的に達成できるとともに、上記の如きファンの出力調整動作の不安定化も防止できて運転を安定化することができる。
【0036】
しかも、分岐風路の設定通風量の変更や対象室の設定室圧の変更、あるいはまた、分岐風路に配したフィルタの通気抵抗変化など種々の要因で、ダンパ開度のバラツキ具合に変化を来すとき、その度に、目標中間開度範囲の再設定操作をもってその範囲幅を適当幅に調整するといった煩雑な操作も不要になり、システム管理も大巾に容易になる。
【0037】
なお、上記の範囲幅修正においては、請求項2記載の発明と同様、目標中間開度範囲の上限値に対する大開度側修正限界の中間開度値と、下限値に対する小開度側修正限界の中間開度値とを規定し、これにより、全開や全開に近い開度を範囲上限とする状態にまで無制限に範囲幅修正が行われることで、却って、風量調整ダンパ(特に最大開度のもの)が全開近くに偏った状態が許される可能性が生じてしまうことや、全閉や全閉に近い開度を範囲下限とする状態にまで無制限に範囲幅修正が行われることで、却って、風量調整ダンパ(特に最小開度のもの)が閉じ側に大きく偏った状態が許される可能性が生じてしまうことを防止するのが望ましい。
【0038】
また、範囲移行修正と範囲幅修正の夫々について、目標中間開度範囲の上限値に対する大開度側修正限界の中間開度値と、下限値に対する小開度側修正限界の中間開度値とを規定する場合、両修正に対する大開度側修正限界の中間開度値どうし、及び、小開度側修正限界の中間開度値どうしを一致させ、これにより、両修正に整合性を持たせて運転の安定化を図るのが望ましい。
【0039】
上記の範囲幅修正を実施する場合、最大最小開度差の変化に対し目標中間開度範囲の範囲幅を適切な幅に維持できることから、通常は、ファンの出力調整において請求項3記載の発明による最大開度優先のファン調整形態、すなわち、風量調整ダンパのうち最小開度のものを目標中間開度範囲の範囲内に収めることよりも、最大開度のものを目標中間開度範囲の範囲内に収めることを優先するファン出力調整が特に必要となる状況は生じないが、範囲移行修正や範囲幅修正で範囲上限値が上記の大開度側修正限界に至って、範囲拡大側への範囲幅修正が制限される状況になったとき、風量調整ダンパ(特に最大開度のもの)が全開近くに偏る状態をより確実に防止する上で、請求項3記載の発明による最大開度優先のファン調整形態が有効になる。
【0040】
範囲幅修正において、目標中間開度範囲の上限値と下限値との両方を所定比率で範囲縮小側や範囲拡大側に修正するのに、上限値と下限値との修正比率は同率にしてもよく、また、互いに異なる比率にしてもよく、その修正比率には運転条件等に応じ種々の値を採用できるが、通風量調整や室圧調整上での開度増大要求に対し風量調整ダンパの開度調整で即応しきれなくなる事態を一層確実に防止するには、上限値の修正比率の方を下限値の修正比率よりも小さくすることが望ましい。
【0041】
風量調整ダンパを強制的に全閉にしたり、別途の遮断ダンパを閉じる等で、分岐風路のうち一部のものにおける通風を停止することがある場合、その通風を停止した分岐風路における風量調整ダンパの開度は、範囲移行修正の場合と同様、範囲幅修正における最大最小開度差の演算対象から除外し、これにより、通風を停止した分岐風路の影響を受けることなく、残りの分岐風路ついての通風量調整や残りの分岐風路に接続の対象室についての室圧調整において、最大最小開度差に応じた目標中間開度範囲の範囲幅修正を適切に行えるようにする。
【0042】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態を説明する。
【0043】
図1は複数の対象室1に対する空調システムを示し、2は給気ファンFsの吐出側に接続した主給気風路、3は排気ファンFrの吸入側に接続した主排気風路であり、各対象室1は給気側の分岐風路2aを介して主給気風路2に接続するとともに、排気側の分岐風路3aを介して主排気風路3に接続してある。また、4は対象室1への供給空気を温湿度調整する空調機である。
【0044】
Vsは給気側の各分岐風路2aに介装した給気側の風量調整ダンパであり、これら給気側風量調整ダンパVsの開度調整により各対象室1に対する給気量qsを調整する。
【0045】
また、Vrは排気側の各分岐風路3aに介装した排気側の風量調整ダンパであり、これら排気側風量調整ダンパVrの開度調整により各対象室1からの排気量qrを調整することで各対象室1の室圧p(具体的には室内外の差圧)を調整する。
【0046】
5Aは給気側風量調整ダンパVsに対するダンパ制御手段としての給気側ダンパ制御器であり、これら給気側ダンパ制御器5Aは、各対象室1への給気量qs(換言すれば、給気側分岐風路2aの通風量)が統括制御器CCによる設定給気量qss(設定通風量)になるように、給気量センサ6による検出給気量qsに基づき給気側風量調整ダンパVsを開度調整する。
【0047】
5Bは排気側風量調整ダンパVrに対するダンパ制御手段としての排気側ダンパ制御器であり、これら排気側ダンパ制御器5Bは、各対象室1の室圧pが統括制御器CCによる設定室圧psになるように、室圧センサ7による検出室圧pに基づき排気側風量調整ダンパVrを開度調整する。
【0048】
給気ファンFsに対しては、圧力センサ8aによる検出風路圧fsに基づき、主給気風路2の風路圧fsが設定風路圧fssになるように、インバータ制御をもって給気ファンFsを出力調整する給気ファン制御器9Aを設けてあり、これに対し、統括制御器CCには、給気側風量調整ダンパVs夫々の検出開度a1〜a3に基づき、図2に示す如く、これら給気側風量調整ダンパVsの開度a1〜a3が全て、上下限値x1,x2ともに中間開度値に設定してある給気側の目標中間開度範囲Xの範囲内になるように、給気側の上記設定風路圧fssを変更する給気側の風路圧調整部10Aを設けてある。
【0049】
また、排気ファンFrに対しては、圧力センサ8bによる検出風路圧frに基づき、主排気風路3の風路圧frが設定風路圧frsになるように、インバータ制御をもって給気ファンFrを出力調整する排気ファン制御器9Bを設けてあり、これに対し、統括制御器CCには、給気側と同様(図2参照)、排気側風量調整ダンパVr夫々の検出開度b1〜b3に基づき、これら排気側風量調整ダンパVrの開度b1〜b3が全て、上下限値y1,y2ともに中間開度値に設定してある排気側の目標中間開度範囲Yの範囲内になるように、排気側の上記設定風路圧frsを変更する排気側の風路圧調整部10Bを設けてある。
【0050】
つまり、給気ファン制御器9Aと給気側の風路圧調整部10Aとは、給気側風量調整ダンパVs夫々の検出開度a1〜a3に基づき、これら給気側風量調整ダンパVsの開度a1〜a3が全て上記給気側の目標中間開度範囲Xの範囲内になるように給気ファンFsを出力調整する給気側のファン制御手段を構成し、また、排気ファン制御器9Bと排気側の風路圧調整部10Bとは、排気側風量調整ダンパVr夫々の検出開度b1〜b3に基づき、これら排気側風量調整ダンパVrの開度b1〜b3が全て上記排気側の目標中間開度範囲Yの範囲内になるように排気ファンFrを出力調整する排気側のファン制御手段を構成する。
【0051】
給気側の風路圧調整部10Aは、具体的には次の(イ)〜(ハ)の形態で主給気風路2の設定風路圧fssを変更する構成にしてある。
【0052】
(イ)給気側風量調整ダンパVsの検出開度a1〜a3のうち最大のものが給気側の目標中間開度範囲Xを大開度側に逸脱しているとき、それら給気側風量調整ダンパVsの検出開度a1〜a3のうち最小のものが給気側の目標中間開度範囲Xを小開度側に逸脱しているか否かにかかわらず、主給気風路2の設定風路圧fssを上昇側に変更する。
【0053】
すなわち、この設定風路圧fssの上昇側への変更により給気ファンFsを出力上昇側に調整させて、この出力調整に対し給気量qsの調整上で給気側風量調整ダンパVsの夫々が閉じ側に開度調整されるようにし、これにより、大開度側への逸脱を解消する。
【0054】
また、この際、検出開度a1〜a3のうち最大のものについて給気側の目標中間開度範囲Xからの逸脱量が大きいほど大きい変更速度で主給気風路2の設定風路圧fssを上昇側に変更して、上記最大のものの逸脱量が大きいほど大きい出力変化速度で給気ファンFsの出力を上昇させる。
【0055】
(ロ)給気側風量調整ダンパVsの検出開度a1〜a3のうち最大のものが給気側の目標中間開度範囲Xの範囲内にある状態で、それら給気側風量調整ダンパVsの検出開度a1〜a3のうち最小のものが給気側の目標中間開度範囲Xを小開度側に逸脱しているとき、主給気風路2の設定風路圧fssを低下側に変更する。
【0056】
すなわち、この設定風路圧fssの低下側への変更により給気ファンFsを出力低下側に調整させて、この出力調整に対し給気量qsの調整上で給気側風量調整ダンパVsの夫々が開き側に開度調整されるようにし、これにより、小開度側への逸脱を解消する。
【0057】
また、この際、検出開度a1〜a3のうち最小のものについて給気側の目標中間開度範囲Xからの逸脱量が大きいほど大きい変更速度で主給気風路2の設定風路圧fssを低下側に変更して、上記最小のものの逸脱量が大きいほど大きい出力変化速度で給気ファンFsの出力を低下させる。
【0058】
(ハ)給気側風量調整ダンパVsの検出開度a1〜a3が全て給気側の目標中間開度範囲Xの範囲内にあるとき(図2に示す状態)、主給気風路2の設定風路圧fssを現状値に維持する。
【0059】
すなわち、これにより給気ファンFsをその時の出力に維持して、給気側風量調整ダンパVsの開度a1〜a3が全て給気側の目標中間開度範囲Xの範囲内にある現状を保つようにする。
【0060】
一方、排気側の風路圧調整部10Bは、給気側の風路圧調整部10Aと同様、具体的には次の(ニ)〜(ヘ)の形態で主排気風路3の設定風路圧frsを変更する構成にしてある。
【0061】
(ニ)排気側風量調整ダンパVrの検出開度b1〜b3のうち最大のものが排気側の目標中間開度範囲Yを大開度側に逸脱しているとき、それら排気側風量調整ダンパVrの検出開度b1〜b3のうち最小のものが排気側の目標中間開度範囲Yを小開度側に逸脱しているか否かにかかわらず、主排気風路3の設定風路圧frsを低下側に変更する。
【0062】
すなわち、この設定風路圧frsの低下側への変更により排気ファンFrを出力上昇側に調整させて、この出力調整に対し室圧pの調整上で排気側風量調整ダンパVrの夫々が閉じ側に開度調整されるようにし、これにより、大開度側への逸脱を解消する。
【0063】
また、この際、検出開度b1〜b3のうち最大のものについて排気側の目標中間開度範囲Yからの逸脱量が大きいほど大きい変更速度で主排気風路3の設定風路圧frsを低下側に変更して、上記最大のものの逸脱量が大きいほど大きい出力変化速度で排気ファンFrの出力を上昇させる。
【0064】
(ホ)排気側風量調整ダンパVrの検出開度b1〜b3のうち最大のものが排気側の目標中間開度範囲Yの範囲内にある状態で、それら排気側風量調整ダンパVrの検出開度b1〜b3のうち最小のものが排気側の目標中間開度範囲Yを小開度側に逸脱しているとき、主排気風路3の設定風路圧frsを上昇側に変更する。
【0065】
すなわち、この設定風路圧frsの上昇側への変更により排気ファンFrを出力低下側に調整させて、この出力調整に対し室圧pの調整上で排気側風量調整ダンパVrの夫々が開き側に開度調整されるようにし、これにより、小開度側への逸脱を解消する。
【0066】
また、この際、検出開度b1〜b3のうち最小のものについて排気側の目標中間開度範囲Yからの逸脱量が大きいほど大きい変更速度で主排気風路3の設定風路圧frsを上昇側に変更して、上記最小のものの逸脱量が大きいほど大きい出力変化速度で排気ファンFrの出力を低下させる。
【0067】
(へ)排気側風量調整ダンパVrの検出開度b1〜b3が全て排気側の目標中間開度範囲Yの範囲内にあるとき(図2に示す状態)、主排気風路3の設定風路圧frsを現状値に維持する。
【0068】
すなわち、これにより排気ファンFrをその時の出力に維持して、排気側風量調整ダンパVrの開度b1〜b3が全て排気側の目標中間開度範囲Yの範囲内にある現状を保つようにする。
【0069】
統括制御器CCには、上記の風路圧調整部10A,10Bに加え、給気側の目標範囲修正手段として給気側の目標中間開度範囲Xを自動修正する給気側範囲修正部11Aを設けてあり、この給気側範囲修正部11Aは、給気側風量調整ダンパVs夫々の検出開度a1〜a3に基づき次の(A),(B)の修正を実行する構成にしてある。
【0070】
(A)給気側の範囲移行修正:給気側風量調整ダンパVsについての検出開度a1〜a3の平均値Ha(=(a1+a2+a3)/3)が設定目標平均値Hasよりも小さくなると、開度平均値Haと設定目標平均値Hasとの偏差ΔHaに対し修正量Δx(修正方向を含む)を予め関連付けてある修正基準に基づき、現状の平均値偏差ΔHaに応じた修正量Δxだけ、給気側の目標中間開度範囲Xを図3に示す如く大開度側に範囲移行修正する。
【0071】
すなわち、この修正により、その修正された給気側の目標中間開度範囲Xの範囲内に全ての給気側風量調整ダンパVsの開度a1〜a3を収める上で給気ファンFsを出力低下側に調整する傾向を生じさせ、これに対し給気量qsの調整上で各給気側風量調整ダンパVsを開き側に開度調整して、これら給気側風量調整ダンパVsの開度a1〜a3の平均値Haを設定目標平均値Hasの側へ戻す傾向を生じさせる。
【0072】
また逆に、給気側風量調整ダンパVsについての検出開度a1〜a3の平均値Haが設定目標平均値Hasよりも大きくなると、上記の修正基準に基づき現状の平均値偏差ΔHaに応じた修正量Δxだけ、給気側の目標中間開度範囲Xを図4に示す如く小開度側に範囲移行修正する。
【0073】
すなわち、この修正により、その修正された給気側の目標中間開度範囲Xの範囲内に全ての給気側風量調整ダンパVsの開度a1〜a3を収める上で給気ファンFsを出力上昇側に調整する傾向を生じさせ、これに対し給気量qsの調整上で各給気側風量調整ダンパVsを閉じ側に開度調整して、これら給気側風量調整ダンパVsの開度a1〜a3の平均値Haを設定目標平均値Hasの側へ戻す傾向を生じさせる。
【0074】
(B)給気側の範囲幅修正:給気側風量調整ダンパVsの検出開度a1〜a3のうち最大のものと最小のものとの差Δa(最大最小開度差)が小さくなるほど、図5に示す如く給気側の目標中間開度範囲Xの上限値x1と下限値x2との両方を所定比率(本例では同率)で範囲縮小側に修正し、また逆に、その最大最小開度差Δaが大きくなるほど、図6に示す如く給気側の目標中間開度範囲Xの上限値x1と下限値x2との両方を所定比率(同率)で範囲拡大側に修正する。
【0075】
すなわち、この修正により、給気側風量調整ダンパVsの開度a1〜a3のバラツキ具合の変化による最大最小開度差Δaの変化によらず、給気側の目標中間開度範囲Xの範囲幅として、給気側風量調整ダンパVsの開度a1〜a3の全てを収めることが可能で、かつ、それら開度a1〜a3のうちの最大のものと範囲上限値x1との間の不感開度幅や、それら開度a1〜a3のうちの最小のものと範囲下限値x2との間の不感開度幅が適度になる適切な範囲幅(本例では最大最小開度差Δaよりも常に一定幅exだけ大きい範囲幅(Δa+ex))を維持する。
【0076】
なお、図7は大開度側への範囲移行修正と範囲縮小側への範囲幅修正との両方があった場合を示す。図3〜図7では、風量調整ダンパVs(Vr)の具体的開度a1〜a3(b1〜b3)の図示は省略してある。
【0077】
一方、排気側については、統括制御器CCに、排気側の目標範囲修正手段として排気側の目標中間開度範囲Yを自動修正する排気側範囲修正部11Bを設けてあり、この排気側範囲修正部11Bは、排気側風量調整ダンパVr夫々の検出開度b1〜b3に基づき、給気側と同様、次の(C),(D)の修正を実行する構成にしてある。
【0078】
(C)排気側の範囲移行修正:排気側風量調整ダンパVrについての検出開度b1〜b3の平均値Hb(=(b1+b2+b3)/3)が設定目標平均値Hbsよりも小さくなると、開度平均値Hbと設定目標平均値Hbsとの偏差ΔHbに対し修正量Δy(修正方向を含む)を予め関連付けてある修正基準に基づき、現状の平均値偏差ΔHbに応じた修正量Δyだけ、排気側の目標中間開度範囲Yを大開度側に範囲移行修正(図3参照)する。
【0079】
すなわち、この修正により、その修正された排気側の目標中間開度範囲Yの範囲内に全ての排気側風量調整ダンパVrの開度b1〜b3を収める上で排気ファンFrを出力低下側に調整する傾向を生じさせ、これに対し室圧pの調整上で各排気側風量調整ダンパVrを開き側に開度調整して、これら排気側風量調整ダンパVrの開度b1〜b3の平均値Hbを設定目標平均値Hbsの側へ戻す傾向を生じさせる。
【0080】
また逆に、排気側風量調整ダンパVrについての検出開度b1〜b3の平均値Hbが設定目標平均値Hbsよりも大きくなると、上記の修正基準に基づき現状の平均値偏差ΔHbに応じた修正量Δyだけ、排気側の目標中間開度範囲Yを小開度側に範囲移行修正(図4参照)する。
【0081】
すなわち、この修正により、その修正された排気側の目標中間開度範囲Yの範囲内に全ての排気側風量調整ダンパVrの開度b1〜b3を収める上で排気ファンFrを出力上昇側に調整する傾向を生じさせ、これに対し室圧pの調整上で各排気側風量調整ダンパVrを閉じ側に開度調整して、これら排気側風量調整ダンパVrの開度b1〜b3の平均値Hbを設定目標平均値Hbsの側へ戻す傾向を生じさせる。
【0082】
(D)排気側の範囲幅修正:排気側風量調整ダンパVrの検出開度b1〜b3のうち最大のものと最小のものとの差Δb(最大最小開度差)が小さくなるほど、排気側の目標中間開度範囲Yの上限値y1と下限値y2との両方を所定比率(本例では同率)で範囲縮小側に修正(図5参照)し、また逆に、その最大最小開度差Δbが大きくなるほど、排気側の目標中間開度範囲Yの上限値y1と下限値y2との両方を所定比率(同率)で範囲拡大側に修正(図6参照)する。
【0083】
すなわち、この修正により、排気側風量調整ダンパVrの開度b1〜b3のバラツキ具合の変化による最大最小開度差Δbの変化によらず、排気側の目標中間開度範囲Yの範囲幅として、排気側風量調整ダンパVrの開度b1〜b3の全てを収めることが可能で、かつ、それら開度b1〜b3のうちの最大のものと範囲上限値y1との間の不感開度幅や、それら開度b1〜b3のうちの最小のものと範囲下限値y2との間の不感開度幅が適度になる適切な範囲幅(本例では最大最小開度差Δbよりも常に一定幅eyだけ大きい範囲幅(Δb+ey))を維持する。
【0084】
上記給気側の範囲移行修正及び範囲幅修正においては、両修正に共通の修正限界値として、給気側の目標中間開度範囲Xの上限値x1に対する大開度側修正限界の中間開度値xx1と、下限値x2に対する小開度側修正限界の中間開度値xx2とを規定してあり、これにより、範囲上限値x1が大開度側修正限界の中間開度値xx1を大開度側に越える範囲移行修正や範囲拡大側への範囲幅修正、並びに、範囲下限値x2が小開度側修正限界の中間開度値xx2を小開度側に越える範囲移行修正や範囲拡大側への範囲幅修正は実施しないようにしてある。
【0085】
また同様に、排気側の範囲移行修正及び範囲幅修正においては、両修正に共通の修正限界値として、排気側の目標中間開度範囲Yの上限値y1に対する大開度側修正限界の中間開度値yy1と、下限値y2に対する小開度側修正限界の中間開度値yy2とを規定し、範囲上限値y1が大開度側修正限界の中間開度値yy1を大開度側に越える範囲移行修正や範囲拡大側への範囲幅修正、並びに、範囲下限値y2が小開度側修正限界の中間開度値yy2を小開度側に越える範囲移行修正や範囲拡大側への範囲幅修正は実施しないようにしてある。
【0086】
なお、本例の空調システムでは、給気側風量調整ダンパVsと排気側風量調整ダンパVrとの強制的全閉操作、並びに、給気側及び排気側分岐風路2a,3aに介装した遮断ダンパDs,Drの閉じ操作により、一部の対象室1に対する給排気を選択的に停止できるようにしてあり、また、この際、給排気を停止した対象室1に対する給気側風量調整ダンパVsの開度、及び、排気側風量調整ダンパVrの開度は、目標中間開度範囲X,Yの範囲内にあるか否かの判定対象、範囲移行修正における開度平均値Ha,Hbの演算対象、範囲幅修正における最大最小開度差Δa,Δbの演算対象から除外して、ファンFs,Frの出力調整、範囲移行修正、並びに、範囲幅修正を実行する構成にしてある。
【0087】
〔別の実施形態〕
次に本発明の別の実施形態を説明する。
【0088】
前述の実施形態では、給気側風量調整ダンパVsの開度調整により各給気側分岐風路2aの通風量qs(対象室1に対する給気量)を設定通風量qssに調整し、かつ、排気側風量調整ダンパVrの開度調整により各対象室1の室圧pを設定室圧psに調整する例を示したが、逆に、排気側風量調整ダンパVrの開度調整により各排気側分岐風路3aの通風量qr(対象室1からの排気量)を設定通風量qrsに調整し、かつ、給気側風量調整ダンパVsの開度調整により各対象室1の室圧pを設定室圧psに調整するシステムにおいて、本発明を適用してもよい。
【0089】
また、室圧調整は実施せず、給気側風量調整ダンパVsの開度調整により各給気側分岐風路2aの通風量qsを設定通風量qssに調整することと、排気側風量調整ダンパVrの開度調整により各排気側分岐風路3aの通風量qrを設定通風量qssに調整することとのいずれか一方、又は、両方を実施するシステムにおいて、本発明を適用してもよい。
【0090】
さらにまた、給気側風量調整ダンパVsの開度調整により各対象室1の室圧pを設定室圧psに調整するだけのシステムや、排気側風量調整ダンパVrの開度調整により各対象室1の室圧pを設定室圧psに調整するだけのシステムにおいて、本発明を適用してもよい。
【0091】
対象室1はどのような用途のものであってもよく、また、室圧調整の目的や通風量調整の目的もどのようなものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】空調システムの全体構成図
【図2】風路圧(ファン出力)の調整形態を説明する図
【図3】範囲移行修正の修正形態を説明する図
【図4】範囲移行修正の修正形態を説明する図
【図5】範囲幅修正の修正形態を説明する図
【図6】範囲幅修正の修正形態を説明する図
【図7】範囲移行修正と範囲幅修正との複合修正を示す図
【符号の説明】
1 対象室
2,3 主風路
2a,3a 分岐風路
5A,5B ダンパ制御手段
9A,10A ファン制御手段
9B,10B ファン制御手段
11A,11B 目標範囲修正手段
Fs,Fr ファン
Vs,Vr 風量調整ダンパ
qs 通風量
qss 設定通風量
p 室圧
ps 設定室圧
a1〜a3 開度
b1〜b3 開度
Ha,Hb 開度平均値
Has,Hbs 設定目標平均値
Δa,Δb 最大最小開度差
X,Y 目標中間開度範囲
x1,y1 上限値
xx1,yy1 大開度側修正限界の中間開度値
x2,y2 下限値
xx2,yy2 小開度側修正限界の中間開度値

Claims (4)

  1. ファンに接続した主風路に複数の対象室を分岐風路を介して並列に接続し、これら分岐風路の夫々に風量調整ダンパを設け、
    前記分岐風路夫々の検出通風量に基づき、これら分岐風路の通風量が各々の設定通風量になるように前記風量調整ダンパを開度調整する、又は、前記対象室夫々の検出室圧に基づき、これら対象室の室圧が各々の設定室圧になるように前記風量調整ダンパを開度調整するダンパ制御手段と、
    前記風量調整ダンパ夫々の検出開度に基づき、これら風量調整ダンパの開度が全て、上下限値ともに中間開度値に設定してある目標中間開度範囲の範囲内になるように、前記ファンを出力調整するファン制御手段とを設ける空調システムであって、
    前記検出開度の平均値が設定目標平均値よりも小さくなると前記目標中間開度範囲を大開度側に範囲移行修正し、かつ、前記検出開度の平均値が設定目標平均値よりも大きくなると前記目標中間開度範囲を小開度側に範囲移行修正する目標範囲修正手段を設けてある空調システム。
  2. 前記目標範囲修正手段による範囲修正において、前記目標中間開度範囲の上限値に対する大開度側修正限界の中間開度値と、前記目標中間開度範囲の下限値に対する小開度側修正限界の中間開度値とを規定してある請求項1記載の空調システム。
  3. 前記ファン制御手段を、
    前記検出開度のうち最大のものが前記目標中間開度範囲を大開度側に逸脱しているとき前記ファンを出力上昇させ、
    前記検出開度のうち最大のものが前記目標中間開度範囲の範囲内にある状態で、それら検出開度のうち最小のものが前記目標中間開度範囲を小開度側に逸脱しているとき前記ファンを出力低下させ、
    前記検出開度の全てが前記目標中間開度範囲の範囲内にあるとき前記ファンをその時の出力に維持する構成にしてある請求項1又は2記載の空調システム。
  4. 前記目標範囲修正手段を、前記の範囲移行修正に加えて、
    前記検出開度のうち最大のものと最小のものとの差が小さくなるほど、前記目標中間開度範囲の上限値と下限値との両方を所定比率で範囲縮小側に修正し、かつ、前記検出開度のうち最大のものと最小のものとの差が大きくなるほど、前記目標中間開度範囲の上限値と下限値との両方を所定比率で範囲拡大側に修正する範囲幅修正を行う構成にしてある請求項1〜3のいずれか1項に記載の空調システム。
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