JP3788500B2 - 排ガス浄化装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、NOx吸蔵型触媒を用いた排ガス浄化装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の排ガス浄化装置に関する従来技術としては、例えば特許第2722982号公報に掲載された排気浄化装置が挙げられる。この公知の浄化装置は内燃機関の排気通路に配置されたNOx吸蔵型触媒と、触媒への排ガスの流入を部分的に遮断して、代わりに還元剤を供給する還元剤導入手段とを備えている。NOx吸蔵型触媒は排ガスの空燃比がリーンのときは排ガス中のNOxを吸蔵し、一方、排ガス中の酸素濃度が低下すると吸蔵したNOxを放出する。このとき還元剤導入手段は触媒への排ガス流入の遮断および還元剤の供給を一時に一部ずつ行うことにより、触媒の全体について順次NOxの放出と還元浄化とを行わせるものとしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
公知の浄化装置は触媒からNOxを放出する際、エンジンの外部から還元剤を供給する必要がある。このため還元剤の供給設備を別途設ける必要があり、装置の構造が複雑化する。また還元剤を消費してしまうと、その後にNOxの放出ができなくなるため、その機能を維持するためには還元剤の残量を確認して適宜これを補給しなければならないという問題がある。
【0004】
この点、エンジン外部から還元剤を供給することなく、エンジンの運転制御によって触媒からのNOxの放出を行う技術が知られている。具体的には、瞬間的にエンジンの過濃空燃比運転を行って未燃HCやCOを排ガス中に発生させ、これらHC,COを用いて触媒からのNOxの放出およびその還元浄化を行うものである。
【0005】
しかしながら、上述した公知技術ではNOxの放出・還元時に瞬間的にエンジンが希薄燃焼状態から過濃燃焼状態に移行するため、そのままでは急激なトルクショックが発生してしまう。このためトルクショックの対策としてEGR制御や吸気絞り制御、その他の制御を複雑に組み合わせてトルクショックを緩和する必要があり、そのための制御システムの確立に多大なコストを要する。
【0006】
そこで本発明は、外部設備を設けることなくNOxの放出を可能とし、またNOx放出時に複雑な制御を要しない排ガス浄化装置の提供を課題としたものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、本発明の排ガス浄化装置(請求項1)は以下の構成により実現される。
排ガス浄化装置の排気系は所定の気筒からの排ガスを単独の排気通路に排気させ、他の気筒からの排ガスを集合した排気通路に排気させる。NOx吸蔵型触媒は排気系に接続される導入口を有しており、導入口から軸線方向に排ガスを流通可能に成型されている。また、NOx吸蔵型触媒への排ガスの導入口は排ガス分配手段により2つの領域に区画されており、単独の排気通路からの排ガスと集合した排気通路からの排ガスとはそれぞれ別々の領域に気密に配分されてNOx吸蔵型触媒に導入される。そして、NOx吸蔵型触媒は駆動手段によりその軸線周りに回転され、これにより区画された各領域に対して導入口が相対的に変位される。また内燃機関は、燃料の同一噴射サイクルにおいて、単独の排気通路を有する所定の気筒のみ主噴射後に更にポスト噴射を行うことにより、所定の気筒においては噴射サイクル毎にストイキ燃焼状態またはそれ以上に燃料量の割合が高いリッチ燃焼状態にする燃焼制御手段により制御される。
【0008】
本発明の排ガス浄化装置によれば、その燃焼制御により所定の気筒からの排ガスはストイキ空燃比またはそれ以上のリッチ空燃比となり、この排ガスは単独の排気通路により他の気筒から独立して排気される。さらにこの排ガスは、NOx吸蔵型触媒の導入口にて区画された一方の領域から導入され、この領域に連なる部分だけを流通する。したがって、NOx吸蔵型触媒に所定の気筒からの排ガスだけが流通する部分では、NOxの放出および還元が行われる。これに対し、その他の気筒からの排ガスは、他方の領域からNOx吸蔵型触媒に導入され、この領域に連なる部分では通常どおりNOxの吸蔵が行われる。このときNOx吸蔵型触媒が軸線周りに回転されていると、リッチ空燃比の排ガスが導入される部分は順次軸線周りにずれていく。したがって、NOx吸蔵型触媒にはその回転に伴い、リッチ空燃比の排ガスが導入されたり、通常の排ガスが導入されたりするため、触媒全体でみればNOxを吸蔵しては放出・還元し、また放出・還元しては吸蔵するという機能を常時発揮することができる。
【0009】
好ましくは、NOx吸蔵型触媒はシリンダ形状の担体を有しており、その内部に多数の流通路が形成されている。個々の流通路はNOx吸蔵型触媒の導入口から出口までの間を軸線方向に通じており、それぞれ内面に触媒層が担持されている。このような構造により、NOx吸蔵型触媒は全体として軸線方向への排ガス流通性を有することができる。一方、NOx吸蔵型触媒の導入口が2つの領域に区画されていると、個々の流通路はいずれか一方の領域のみに連なり、各領域に分配された排ガスはその領域に連なる流通路だけに導入される。このためNOx吸蔵型触媒の回転により全ての流通路に満遍なくリッチ空燃比の排ガスを流通させるには、NOx吸蔵型触媒の導入口はその軸線周りに区画されていることが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1は、一実施形態の排ガス浄化装置が装備されたエンジン1の構成を概略的に示している。エンジン1は例えばディーゼル機関からなり、このエンジン1は直列4気筒型のシリンダレイアウトを有している。エンジン1の吸気系にはターボチャージャ2が装備されており、ここで過給された吸気はインタークーラ4を介して吸気マニホールド6に流れ込む。
【0011】
エンジン1の燃料供給系は例えばコモンレールシステムからなり、このシステムにはコモンレール8および気筒毎のインジェクタ10が含まれている。コモンレールシステムの作動は電子制御ユニット(以下、「ECU」と称する。)12を用いて制御することができ、ECU12は各インジェクタ10に作動信号を出力してその燃料噴射量や噴射時期等を制御することができる。なおシステムの具体的な制御には、例えばクランク角センサやアクセル開度センサ等の各種センサ類が用いられるが、これらは公知であるため図示とともに説明を省略する。
【0012】
エンジン1の排気系は、例えば、最も出力軸側の1気筒だけに単独で接続された排気管14を有しており、その他の3つの気筒には排気マニホールド16を介して1つに集合した排気管18が接続されている。なお、排気マニホールド16にはEGR通路13が接続されており、排ガスの一部はEGR通路13を通じて吸気系に還流される。なおEGR通路13にはEGRクーラ15が介挿されており、またEGR通路13はEGRバルブ17を介して吸気系に接続されている。
【0013】
排気管18には触媒ユニット20が接続されており、この触媒ユニット20はケーシング22の内部に収容されたNOx吸蔵型の触媒24を有している。触媒24はシリンダ状に成型された担体を有し、その内部には多数の排ガス流通路が形成されている。流通路は触媒24の両端にて開口し、その導入口から出口までの間で軸線方向に排ガスを流通させることができる。触媒24はその担体にて触媒層を担持しており、個々の流通路の内面には触媒層が露出して形成されている。なお担体には、例えば正方形セルや正六角形セルのモノリス担体を使用することができる。
【0014】
ケーシング22の内部には、触媒24の上流側に区画された分配室26,28が形成されており、一方の分配室28はケーシング22の入口を通じて排気管18に接続されている。他方の分配室26はケーシング22の外周にて開口し、この開口を通じて単独の排気管14に接続されている。これら分配室26,28は気密を存して相互に仕切られおり、互いに独立して触媒24に排ガスを導入することができる。それゆえ、触媒24の導入口は分配室26,28にそれぞれ面する2つの領域に区画されており、排気管14,18からの排ガスは、これら分配室26,28を通じてそれぞれ別個の領域に分配される(排ガス分配手段)。
【0015】
触媒24はケーシング22に対して軸線周りに回転自在に支持されており、その外面とケーシング22の内面との間は気密にシールされている。また触媒24の外周にはリングギヤ30が設けられており、このリングギヤ30にはドライブピニオン32が噛み合わされている。ドライブピニオン32は触媒24とともにケーシング22に収容され、ケーシング22内にて回転自在に支持さている。
【0016】
触媒ユニット20に隣接して駆動モータ34が配設されており、この駆動モータ34の出力軸はドライブピニオン32に取り付けられている。駆動モータ34は上述のECU12から作動信号の供給を受けて作動し、ドライブピニオン32を回転させる。これにより、触媒24はケーシング22内にてその軸線周りに回転されるので、分配室26,28により区画される各領域に対して触媒24の導入口は軸線周りに変位することができる(駆動手段)。
【0017】
図2は触媒24の導入口を示している。導入口はその全域のうち一方の分配室26に面する領域が4分の1を占め、他方の分配室28に面する領域が4分の3を占めている。これら領域間の境界は導入口の中心から径方向に延びており、それゆえ、各領域は触媒24の軸線周り方向に区画されている。したがって、触媒24がその軸線周りの一方向に回転されると、各領域に対して導入口が回転方向に変位する結果、触媒24が一回転する間にその全ての流通路の導入口が両方の領域を通過する。
【0018】
図3は、気筒別に設定された燃料噴射パターンの一例を示している。ECU12はコモンレールシステムの制御に際し、所定の燃料噴射パターンに基づいて気筒毎にインジェクタ10を開閉弁させる。例えば、単独の排気管14が接続された気筒を触媒24からNOxを放出させるためのNOx放出用気筒とし、その他の気筒を通常気筒としてそれぞれ区別すると、内燃機関の定常運転時には通常気筒に対する噴射パターンが主噴射だけで与えられる。これに対し、NOx放出用気筒に対する噴射パターンは主噴射とポスト噴射で与えられる。これにより、NOx放出用気筒では吸入空気量に対してストイキ燃焼状態またはそれ以上に燃料量の割合が高いリッチ燃焼状態が形成され、その結果、排ガスはリッチ空燃比となる(燃焼制御手段)。
【0019】
NOx放出用気筒からの排ガスは単独の排気管14を通じて排気され、上述のように分配室26を介して触媒24に導入される。ここで、ポスト噴射による燃焼は上述のようにリッチ燃焼状態を形成し、排ガス中に未燃HCやCOを発生させることができる。これらHCやCOを含む排ガスは、触媒24にて吸蔵されたNOxを放出させるとともに、その還元浄化に寄与する。一方、その他の通常気筒からの排ガスは集合した排気管18を通じて排気され、分配室28を介して触媒24に導入される。この場合、排ガス中のNOxは触媒24に吸蔵されるので、通常どおり排ガスの浄化が行われる。
【0020】
この間、ECU12は駆動モータ34の回転速度を制御し、例えば1分間で触媒24を約1回転(=1rpm)させている。個々の流通路でみれば、その導入口が触媒24の回転に伴い軸線周りに移動し、分配室28の領域内にあるときは、流通路内にリーン空燃比の排ガスを導入してNOxを吸蔵し、一方、導入口が分配室26の領域内にあるときは流通路内にリッチ空燃比の排ガスを導入してNOxの放出・還元を行うものとなる。したがって、触媒24の全体としてNOxの浄化および放出・還元を常時行うことができる。なお、触媒24の回転速度は例えばエンジン1の回転速度に応じて適宜可変させてもよい。
【0021】
また、図3の燃料噴射パターンから明らかなように、その燃焼制御はNOx放出用気筒のみにポスト噴射を定常的に行うものであるから、全ての気筒に対して瞬間的に過濃空燃比運転を行う必要がなく、運転状態の切換えに伴うトルクショックが発生しない。
この点、従来の技術では瞬間的に過濃空燃比運転を行い、全ての気筒からの排ガスをリッチ空燃比化することから、その燃料噴射パターンは全ての気筒について主噴射およびポスト噴射により与えられる。この場合、ポスト燃焼によるトルク増大(例えば図3中の斜線部)が全ての気筒において発生するため、ポスト燃焼によるトルクに気筒数を乗じた分だけトルクショックが発生する。
【0022】
これに対し、本実施形態の場合は運転状態の切換えがないので、NOx放出のためにトルクショックの発生を考慮する必要がないという利点がある。したがって、トルクショックの緩和のために吸気スロットル制御やEGR制御等の対策を施す必要がなく、制御システムの構成がきわめて簡素化される。
本発明の排ガス浄化装置は一実施形態の他にも変形して実施可能である。例えば、エンジン1のシリンダレイアウトは直列4気筒型に限られず、直列でさらに多数の気筒(例えば6気筒)を有するものや、V型・水平対向型等のシリンダレイアウトであってもよい。また、NOx放出用気筒として選択される気筒は出力軸側だけのものに限られず、その他の位置にあるものでもよい。この場合、図2に示される各領域の占める割合は、例えばエンジン1の気筒数nに応じてそれぞれ1/n,(n−1)/nに設定することができる。
【0023】
また、触媒ユニット20はその入口が単独の排気管14に接続される態様であってもよいし、触媒24の回転をベルト駆動やチェーン駆動等によって行う態様であってもよい。
さらに本発明の排ガス浄化装置は、NOx吸蔵型触媒とディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)とを組み合わせた触媒システムにも適用可能である。この場合、DPFの前段に酸化触媒を配設し、ポスト噴射時期や噴射時期の制御によって排気昇温や触媒活性化を行うなど、その応用範囲はさらに広範なものとなる。
【0024】
また、上述の実施形態では本発明をディーゼルエンジンに適用した例としているが、本発明をガソリンエンジンにも適用できることはいうまでもない。
【0025】
【発明の効果】
本発明の排ガス浄化装置(請求項1)は、外部設備を用いることなくNOxの吸蔵および放出を常時行うことができるため、簡素な制御システムにより安定して排ガス浄化機能を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施形態の排ガス浄化装置を適用したディーゼルエンジンの概略図である。
【図2】図1中、II−II線に沿うケーシングの断面図である。
【図3】コモンレールシステムを用いた燃料噴射パターンの一例である。
【符号の説明】
1 エンジン
8 コモンレール
10 インジェクタ
12 ECU(燃焼制御手段)
14 排気管(単独排気通路)
18 排気管(集合排気通路)
24 触媒
26,28 分配室(排ガス分配手段)
34 駆動モータ(駆動手段)

Claims (1)

  1. 内燃機関に設けられ、所定の気筒からの排ガスを単独の排気通路を通じて排気する一方、その他の気筒からの排ガスを集合した排気通路を通じて排気する排気系と、
    前記排気系に接続される排ガスの導入口を有し、この導入口から軸線方向に排ガスを流通可能に配設されたNOx吸蔵型触媒と、
    前記導入口を2つの領域に区画し、前記単独の排気通路からの排ガスと前記集合した排気通路からの排ガスとをそれぞれ別個の領域に気密に分配して前記NOx吸蔵型触媒に導入させる排ガス分配手段と、
    前記NOx吸蔵型触媒をその軸線周りに回転させることにより、前記区画された各領域に対して前記導入口を相対的に変位させる駆動手段と、
    内燃機関の運転中、燃料の同一噴射サイクルにおいて、前記所定の気筒のみ主噴射後に更にポスト噴射を行うことにより、前記所定の気筒においては噴射サイクル毎にストイキ燃焼状態およびそれ以上に燃料量の割合が高いリッチ燃焼状態のいずれか一方を形成する燃焼制御手段と
    を具備したことを特徴とする排ガス浄化装置。
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