JP3788257B2 - スライドドアのローラ取付構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はスライドドアのローラ取付構造、特に垂直ローラの取付構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
図5に示すように、一般に自動車のスライドドア1は、車体9のドア開口部10の上縁および下縁にそれぞれ設けられた上下のガイドレール9A,9Cと、ドア開口部10の開口後縁中段から車体9の外面に沿って後方に延びるセンタガイドレール9Bとに案内されて開閉作動されるようになっている。そして、スライドドア1の上縁、下縁の前部および後縁中段部には上下のガイドレール9A,9Cおよびセンタガイドレール9Bに案内されて車体前後方向に移動するローラユニット2A,2C,2Bがそれぞれ設けられている。通常、スライドドア1はドア内面に設けたローラユニット2A,2C,2Bの水平ローラ(図略)を上記ガイドレール9A,9C,9B内に転動せしめることにより案内され移動するとともに、センタローラユニット2B、ロアローラユニット2Cに設けた垂直ローラ(図略)によりドア荷重を支持せしめている。
【0003】
スライドドア1は、工場の板金工程で車体9へ建付けされ、次いで塗装工程を通して車体9とともに同時に塗装される。
【0004】
ところで垂直ローラはドア荷重を支持する必要上、従来、金属体で構成されており、このためドア開閉時にガイドレール9B,9Cの垂直ローラ転動面との金属接触による異音が発生する問題があった。この異音を防止するために、最近、垂直ローラの金属体の外周に樹脂部材を一体成形して複合ローラを構成したものが採用されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、複合ローラ構造とした場合には、次のような問題がある。スライドドア1を建付けた車体9が塗装工程通過中に静電塗装の高温溶液および塗装乾燥炉内の高熱にさらされると、垂直ローラの樹脂部材がドア荷重によりクリープしてしまい、ドア開閉時の異音発生の原因となる。また、吹付塗装時に垂直ローラの下端接触部に塗装バリが付着し、ドア開閉時のローラ転動音の悪化原因にもなる。
【0006】
このようなことから、センタローラユニット2Bおよびロアローラユニット2Cを、ドア建付け後に一旦スライドドア1から取り外し、スライドドア1を図略の吊り治具を用いて車体9の所定個所に持ち上げるようにして取付けて塗装工程を通し、塗装工程通過後にスライドドア1を車体9から取り外し、センタローラユニット2Bおよびロアローラユニット2Cを再度スライドドア1に取付けることが行われている。
【0007】
ローラユニットの構造は、図4に示す構造が一般に採用されている。センタローラユニット2Bおよびロアローラユニット2Cはほぼ同一構造で、センタローラユニット2Bについて説明する。
【0008】
スライドドア1の内面にドア側ブラケット5を設置して、ドア側ブラケット5にローラ支持ブラケット2´をボルトにより取り外し可能に設けた構造としている。ローラ支持ブラケット2´はヒメールブラケット21´にメールブラケット22´を首振り自在に軸支し、一対の水平ローラ3と、垂直ローラ4をともにメールブラケット22´に回動自在にピンかしめして軸支しており、水平ローラ3および垂直ローラ4は脱着できない。このため、塗装工程前にローラ支持ブラケット2´をドア側ブラケットから取り外してスライドドア1を車体9に吊り治具で支持させ、塗装工程後にスライドドア1を車体9から取り外し、更にローラ支持ブラケット2´をドア側ブラケット5に取り付けており、ドア建付け作業が極めて面倒かつ、コスト高となっている。
【0009】
本発明は上記事情に鑑み、垂直ローラを容易に脱着することができ、かつ垂直ローラを強固に取付けることができるスライドドアのローラ取付構造を提供することを課題としてなされたものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は車体側面に設けたガイドレール内を転動する水平ローラに案内されて乗降口を開閉するようになし、垂直ローラによりドア荷重を支持せしめてなるスライドドアのローラ取付構造において、スライドドアから車内側に向けて突出して設けたローラ支持ブラケットの貫通孔に、軸方向に凸状に形成したナットの小径部を嵌挿してナットを上記ローラ支持ブラケットに固着し、上記ナットに脱着可能に締結したボルトに垂直ローラを回転自在に軸支せしめる構造とした(請求項1)。垂直ローラを従来のピンかしめ構造からボルト軸廻りに回転自在に支持させ、ボルトを脱着可能にナットに締結する構造としたから、ボルトをナットに脱着させることにより、垂直ローラを支持ブラケットに対し容易に脱着させることができる。また、ナットはその形状によりねじ部を充分長く確保することができ、垂直ローラを強固に取付けることができる。また、垂直ローラの脱着が容易であるから、車体と一体にスライドドアを塗装する塗装工程では金属体よりなる第1の垂直ローラを軸支し、塗装工程後に第1の垂直ローラに換えて例えば金属ローラ外周に樹脂部材を一体成形した第2の垂直ローラを容易に取付けることができる。
【0011】
上記ナットには、大径側に座ぐりを形成し、垂直ローラを座ぐりに密嵌する段付ボルトに軸支せしめた(請求項2)。段付ボルトの軸部がナットの座ぐり部に密嵌することで、ねじ山への応力集中や、局部的な断面剛性の低下を抑制し、垂直ローラの取付強度の信頼性を向上し得る。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のローラ取付構造をセンタローラユニットに適用した実施形態について説明する。図1はスライドドア1の内面から車内側に向けて突設したローラ支持ブラケット2の平面を示し、図2は塗装工程を通すときに取付けられる後述の第1の垂直ローラ4Aの、図3は塗装工程通過後に第1の垂直ローラ4Aに換えて取付けられる後述の第2の垂直ローラ4Bの取付構造の半断面図である。スライドドア1は先ず工場の板金工程で、金属体のみからなる第1の垂直ローラ4Aを取付けて車体に建付けされ、次いで塗装工程に通されて車体とともに同時塗装される。
【0013】
図1に示すように、ローラ支持ブラケット2はスライドドア1の内面に固定されたヒメールブラケット21と、ヒメールブラケット21に首振り自在に軸支せしめたメールブラケット22とから構成されている。メールブラケット22にはピンかしめされた一対の水平ローラ3が回転可能に取付けてあるとともに、メールブラケット22の鉛直端面22aには垂直ローラ4がボルト7により回転自在に軸支され、鉛直端面22aに固着されたナット6に脱着可能にボルト7で締着してある。水平ローラ3は車体側に設けられたガイドレール内を転動してスライドドア1を車体の前後方向に移動させ、乗降口を開閉し、垂直ローラ4によりスライドドア1の荷重を支持する。
【0014】
図2において、6は軸方向に凸状に形成されたナットで小径部61と大径部62とからなり、ローラ支持ブラケット2のメールブラケット22の鉛直端面22aに設けた貫通孔22bに、上記小径部61を車内側から嵌挿して、大径部62の外周縁を鉛直端面22aに、小径部61の雌ねじ部63にかからないように溶接して固着してある。図中、65はナット6の小径部61の外周に刻設した筋目ローレットで、ローラ支持ブラケット2に溶接されたナット6の廻り止めを一層確実に保証する。ナット6の小径部61はメールブラケット22の鉛直端面22aの板厚(約4mm)より飛び出す長さに設定してあり、ボルトの緩みを防止するに充分なねじ山数を確保して雌ねじ部63を形成している。一方大径部62には座ぐり64が形成してある。また雌なじ部63は貫通孔22bとその径方向で重なる位置に形成されており、ボルトからの荷重を効率よくローラ支持ブラケットに伝達することができる。
【0015】
図2において、4Aは塗装工程を通す間、ローラ支持ブラケット2に取付けられドア荷重を支持する第1の垂直ローラで、円環状に形成された金属体のみからなり、ボルト7Aの軸部7A2に回動自在に軸支してある。ボルト7Aは平頭部7A1、軸部7A2、先端の雄ねじ部7A3より形成され、平頭部7A1にレンチ穴7A4を有し、ナット6の雌ねじ部63にボルト7Aの雄ねじ部7A3を螺合して第1の垂直ローラ7Aを軸支する。
【0016】
第1の垂直ローラ4Aは樹脂部材を有しない金属体のみからなるローラのため塗装工程通過中にクリープを生じることもなく、塗装工程通過後取り外してボルト7Aとともに付着した塗膜バリを洗浄して再使用することができる。
【0017】
図3において、4Bは塗装工程後、スライドドア1を車体から取り外してスライドドア1に内装部材等を取り付ける際に上記第1の垂直ローラ4Aに換えて、上記ローラ支持ブラケット2に取り付けられスライドドア1の荷重を支持する第2の垂直ローラで、金属の内輪4B3の外周にベアリング4B4を介して金属の外輪4B1を設け、外輪4B1の外周面に樹脂部材B2を一体成形してあり、内輪4B3の軸孔がボルト7Bの軸部7B2に回動自在に軸支される。ボルト7Bは平頭部7B1、軸部7B2,先端の雄ねじ部7B3より形成され、平頭部7B1にレンチ孔7B4を有し、先にローラ支持ブラケット2に固着されていた上記ナット6の雌ねじ部63にボルト7Bの先端の雄ねじ部7B3を螺合して第2の垂直ローラ4Bを軸支する。ボルト7Bの軸部7B2は先端部側がナット6の座ぐり64に密嵌する形状に形成してあり、雄ねじ部7B3への応力集中や局部的な断面剛性の低下を抑制し、第2の垂直ローラ4Bの取付強度の信頼性を高めている。
【0018】
第2の垂直ローラ4Bは、塗装工程後に取付けられ、樹脂部材4B2のクリープおよび第2の垂直ローラ4B下端部への塗膜バリの付着等の不具合は全く生じることなく、ドア開閉時の転動が円滑に行われ、異音を発生しない。更に、第2の垂直ローラ4Bの樹脂部材4B2が摩耗してもボルト7Bは脱着可能であるから、容易に部品交換することができ、サービス性が良好である。なお、第1の垂直ローラとして樹脂製のものを用いることができる。但し、この場合、樹脂製の垂直ローラは塗装工程用として再使用することはできない。
【0019】
【発明の効果】
本発明によれば、垂直ローラは容易に脱着できるから、必要に応じ簡単な作業で垂直ローラを取り換えることができる。従って、車体と一体にスライドドアを塗装する塗装工程ではクリープ発生のない金属体よりなる第1の垂直ローラを用い、塗装工程後には第1の垂直ローラに換えて金属ローラの外周に樹脂部材を一体成形した第2の垂直ローラを容易に取付けることができる。また、ナットに充分なねじ山数を確保してボルトのゆるみを防止する。更に、垂直ローラを軸支するボルトの軸部がナットの座ぐりに密嵌することでねじ山への応力集中や局部的な断面剛性の低下を抑制して垂直ローラの取付強度への信頼性を向上することができる。また、塗装工程では垂直ローラとして金属体のみからなる簡単な構造のものを用いることができ、かつ、再使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のローラ支持ブラケットの平面図である。
【図2】第1の垂直ローラの取付構造を示す半断面図である。
【図3】第2の垂直ローラの取付構造を示す半断面図である。
【図4】従来例のローラ支持ブラケットの斜視図である。
【図5】スライドドアを備えた自動車の側面部の斜視図である。
【符号の説明】
1 スライドドア
2 ローラ支持ブラケット
3 水平ローラ
4 垂直ローラ
4A 第1の垂直ローラ
4B 第2の垂直ローラ
6 ナット
61 小径部
67 大径部
64 座ぐり
7 ボルト
7A,7B ボルト
9a,9b,9c ガイドレール

Claims (2)

  1. 車体側面に設けたガイドレール内を転動する水平ローラに案内されて乗降口を開閉するようになし、垂直ローラによりドア荷重を支持せしめてなるスライドドアのローラ取付構造において、スライドドアから車内側に向けて突出して設けたローラ支持ブラケットの貫通孔に、軸方向に凸状に形成したナットの小径部を嵌挿してナットを上記ローラ支持ブラケットに固着し、上記ナットに脱着可能に締結したボルトに垂直ローラを回転自在に軸支せしめることを特徴とするスライドドアのローラ取付構造。
  2. 上記ナットにはその大径部に座ぐりを形成し、上記垂直ローラを上記座ぐりに密嵌する段付ボルトに軸支せしめた請求項1記載のスライドドアのローラ取付構造。
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