JP3786889B2 - 潤滑剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体摩擦面間の潤滑に用いられる潤滑剤に関する。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】
例えばエンジンや電動機、発電機等の各種機械の軸受部やギヤ部、ピストン,シリンダ部等における潤滑のためには、石油系の液状の潤滑油が用いられることが一般的である。これに対し、本出願人は、従来の石油系の潤滑油に代わる、自然環境の汚染を招くことのない無公害の液状の潤滑剤として、精製糖,粗糖,含密糖などの糖質を0.1質量%以上含む水溶液からなる潤滑剤を開発し、先に出願している(特願平11−364288号)。
【0003】
ところが、その後の本発明者らの研究によれば、潤滑剤の成分として、糖質であればどれもこれも全て良好な潤滑特性(摩擦係数、耐摩耗性、非焼付性)が得られるとは限らず、特に非焼付性の面で劣るものがあること、また、糖質を入れただけでは、潤滑特性の向上に限度があるといったことが明らかとなり、潤滑特性に優れた潤滑剤を得るといった点では、未だ改良の余地が残されていたのである。
【0004】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、従来の潤滑油に代わる無公害のものであって、潤滑特性に優れる潤滑剤を提供するにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、糖質を含む水溶液からなる無公害の水系潤滑剤にあって、潤滑特性のより一層の向上を図るべく試験,研究を重ねた結果、糖質のうちスクロースが最も良好な潤滑特性、特に非焼付性を得ることができることを知見し、これと共に、脂肪酸のアルカリ金属塩なかでもラウリン酸ナトリウムを含むことによって、より一層の潤滑特性の向上を図ることができることを知見し、本発明を成し遂げたのである。
【0006】
即ち、本発明の請求項1の潤滑剤は、スクロースを1〜15質量%含むと共に、ラウリン酸ナトリウムを0.001〜1質量%含む水溶液からなるところに特徴を有する。これにより、従来の潤滑油に代わる自然環境の汚染を招くことのない無公害のものであって、潤滑特性に極めて優れた潤滑剤を提供することができるのである。
【0007】
ここで、糖質には、単糖類、二糖類、多糖類があるが、そのうち二糖類が他のものに比べて非焼付性に優れることが確認された。また、二糖類は、トレハロース型とマルトース型とに分けられるが、そのうちトレハロース型のスクロースが、マルトース型に比べてより優れた結果となった。さらに、スクロースに加えてラウリン酸ナトリウムを含むことによって、摩擦係数、耐摩耗性、非焼付性の全てについて優れた潤滑剤を得ることができた。
【0008】
一般的には、糖類の中で炭素環構造をもつ構造体が水中で良好な摺動特性を示すが、そのなかでも、特にスクロースのように両構成単糖の還元基のアルコールをもつ炭素原子がエーテル結合しているものが、優れた摺動特性を得ることができたと考えられる。これは、水潤滑剤としての使用時に、エーテル結合している炭素に付いている還元性を示すアルコールが、金属表面との親和性を呈し、従って、スクロースが摺動面である金属表面に吸着するため優れた摺動特性が発現したものと推測される。これに加えて、脂肪酸のアルカリ金属塩であるラウリン酸ナトリウムも、摺動する金属面上に分子が化学吸着や物理吸着によって配向し、スクロースの吸着と併せて相乗効果を発揮するものと考えられる。
このとき、本発明者らの研究によれば、脂肪酸のアルカリ金属塩のなかでも、特にラウリン酸ナトリウムが摺動特性の面で著しい効果を発揮した。これは、ラウリン酸ナトリウムが、ステアリン酸等の他の脂肪酸のアルカリ金属塩に比較して常用使用温度域における比表面張力が低く安定しており、水と摺動材料表面が濡れやすくなるためであると考えられる。
【0009】
この場合、スクロースの含有量(濃度)は、全体の1〜15質量%であることが望ましい。スクロースの含有量が1質量%未満では、摩耗量、摩擦係数が大きくなると共に、非焼付性に劣るものとなり、15質量%を越えると、非焼付性には優れるものの、摩耗量、摩擦係数が大きくなる。また、ラウリン酸ナトリウムは、極く少量の添加でも効果が得られ、その含有量を、全体の0.001〜1質量%とすることが望ましい。ラウリン酸ナトリウムの含有量が、0.001質量%未満では、非焼付性に劣るものとなり、1質量%を越えると、摩耗量、摩擦係数共に大きくなる。
【0010】
さらに、スクロースを含む水溶液では、細菌やカビの発生,増殖を招き、衛生上や潤滑性能上の問題を発生させる虞があるので、防腐剤を添加してそのような細菌やカビの発生,増殖を防止する必要がある。また、水系の潤滑剤では、相手材(摺動面)の錆の発生を招く虞があるので、防錆剤を添加して錆の発生を防ぐ必要がある。
【0011】
請求項2の発明では、さらに防腐剤および防錆剤を添加することによって、長期間の使用に耐える潤滑剤を得ることができた。
【0013】
請求項3の発明では、上記防腐剤として、ソルビン酸カリウムを採用すると共に、その添加量を、全体の0.1〜3質量%としたところに特徴を有する。この場合、本発明者らは、複数種類の防腐剤においてその防腐効果を確かめる試験を行った結果、防腐剤としての効果に優れ、且つ、環境への悪影響が少ないという観点から、ソルビン酸カリウムを採用することが最も好ましいことが明らかとなった。そして、その添加量としては全体の0.1〜3質量%が適量であり、0.1質量%未満では、防腐剤としての効果が十分に得られず、また、3質量%を越えて添加しても、効果的には変化がない。
【0014】
請求項4の発明では、上記防錆剤として、ベンゾトリアゾール及びそのアルカリ金属塩を採用すると共に、その添加量を、全体の0.1〜3質量%としたところに特徴を有する。この場合も、本発明者らは、複数種類の防錆剤においてその防錆効果を確かめる試験を行った結果、ベンゾトリアゾール及びそのアルカリ金属塩を採用することが最も好ましいことが明らかとなった。そして、その添加量としては全体の0.1〜3質量%が適量であり、0.1質量%未満では、防錆剤としての効果が十分に得られず、また、3質量%を越えて添加しても、効果的には変化がない。
【0015】
請求項5の発明では、上記した水溶液に対するナノマイザー処理がなされているところに特徴を有する。ナノマイザー処理とは、溶質を含む液体を、例えば2つのノズルをもつジェネレータの中で最高200m/Sの速度で衝突させ、乱流による衝撃波や超音波によって液体中の溶質や分散物を破砕し均一に微細分散をさせる処理法である。この処理法を行うことにより、本発明の水溶液中の各成分が分子に近いレベルまで細かくなり均質に分散されるようになり、より一層優れた潤滑性能が得られるようになる
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。まず、本実施の形態に係る潤滑剤を適用した具体例として、水力発電機のロータシャフトを受ける軸受ユニットにおける潤滑構造について、図3及び図4を参照して簡単に述べる。
【0017】
この軸受ユニット1は、箱状のケーシング2を備え、水力発電機のロータシャフト3は、そのケーシング2の中央やや上部寄り部位を、図3で左右に貫通した状態で支持されるようになっている。このとき、ケーシング2におけるロータシャフト3の貫通部分には、オイルシール等が設けられ密閉状態とされるようになっている。このケーシング2内には、支持壁部4が、内部を図3で左右に仕切るように設けられており、この支持壁部4に、軸受ハウジング5が取付けられるようになっている。ケーシング2内の下部は、本実施形態に係る潤滑剤が収容される潤滑剤溜り2aとされる。この潤滑剤の詳細については後述する。
【0018】
これに対し、前記ケーシング2の外部には、図4に示すように、潤滑剤タンク6が設けられ、供給管7及び戻し管8によって前記ケーシング2の下部部分と接続されている。この潤滑剤タンク6には、潤滑剤が収容され、また、該潤滑剤を冷却する冷却機能を有している。これにて、潤滑剤タンク6からの低温の潤滑剤が、供給管7を通してケーシング2内の潤滑剤溜り2aに供給されると共に、ケーシング2内で高温となった潤滑剤が、戻し管8を通して潤滑剤タンク6に戻されて冷却されるという循環がなされるようになる。尚、ケーシング2内では、常に潤滑剤の液位Aが保たれるようになっている。また、前記支持壁部4には、潤滑剤の流通を可能とするための開口部4aが設けられている。
【0019】
そして、図3に示すように、前記軸受ハウジング5の内周部のうち左半部には、前記ロータシャフト3のラジアル荷重を受けるための円筒状のジャーナル軸受9が設けられる。このジャーナル軸受9は、軸方向の一部(図3で左端寄り部分)においてほぼ上半部が切欠かれており、この切欠き部分に位置して給油用のリング10が設けられている。このリング10の上部内周がロータシャフト3に引掛かっていると共に、その下部が前記潤滑剤に浸っており、ロータシャフト3の回転に伴ってリング10が潤滑剤をすくい上げるようにして、ジャーナル軸受9とロータシャフト3との摩擦摺動面に潤滑剤が循環供給されるようになっている。
【0020】
また、前記ロータシャフト3の途中部には、径大な鍔状部11が設けられており、軸受ハウジング5の内周部の右半部には、その鍔状部11に対応して径大となった径大部が設けられ、この径大部に、ロータシャフト3のスラスト荷重を受けるための一対のスラスト軸受(ティルティングパッド軸受)12,12が、該鍔状部11を挟むように設けられている。このスラスト軸受12は、周知のように、キャリアリングの内面に複数のスラストパッドを有して構成され、またキャリアリングの外面側には軸受ハウジング5との間にスペーサが設けられる。
【0021】
このとき、軸受ハウジング5の下部には、前記鍔状部11の外周側に位置して潤滑剤入口部13及び潤滑剤出口部14が形成されており、また、ケーシング2内には、前記潤滑剤入口部13に連なるように吸上管15が設けられている。これにて、ロータシャフト3と一体に回転する鍔状部11の回転によるポンプ作用によって、吸上管15から潤滑剤入口部13を通して吸上げられ、鍔状部11の外周部を通って摩擦摺動面に潤滑剤が循環供給されるようになっており、さらにその潤滑剤は、潤滑剤出口部14を通して隣のジャーナル軸受9部分などにも供給されるようになっている。
【0022】
ここで、本実施形態に係る潤滑剤について述べる。この潤滑剤は、特許請求の範囲の記載の通りのものであり、スクロースを1〜15質量%含むと共に、ラウリン酸ナトリウムを0.001〜1質量%含み、さらに防腐剤及び防錆剤を含み、残部を水(純水)とした水溶液から成る。より具体的には、前記防腐剤としては、ソルビン酸カリウムが採用されると共に、その添加量が0.1〜3質量%とされ、前記防錆剤としては、ベンゾトリアゾール及びそのアルカリ金属塩が採用されると共に、その添加量が0.1〜3質量%とされている。さらに、上記した配合の水溶液が、ナノマイザー処理されて潤滑剤とされるようになっている。
【0023】
さて、後に掲載する表1は、適量のスクロース(この場合上白糖を使用)及びラウリン酸ナトリウムを含んだ潤滑剤(実施例1〜実施例7)が、優れた摺動特性(摩擦係数、耐摩耗性、非焼付性)を有することを、いくつかの比較例(比較例1〜比較例10)と比較することにより調べた摩擦摩耗試験の結果を示している。
【0024】
即ち、実施例1〜実施例7は、特許請求の範囲に含まれる潤滑剤であり、具体的には、実施例1は、1.5質量%のスクロース及び0.05質量%のラウリン酸ナトリウムを配合し、実施例2は、5質量%のスクロース及び0.05質量%のラウリン酸ナトリウムを配合し、実施例3は、5質量%のスクロース及び0.05質量%のラウリン酸ナトリウムを配合すると共に防腐剤(ソルビン酸カリウム)及び防錆剤(ベンゾトリアゾール)を夫々1質量%ずつ配合し、実施例4は、12質量%のスクロース及び0.05質量%のラウリン酸ナトリウムを配合し、実施例5は、5質量%のスクロース及び0.5質量%のラウリン酸ナトリウムを配合し、実施例6は、5質量%のスクロース及び0.05質量%のラウリン酸ナトリウムを配合し、夫々、残部を水(純水)とした水溶液から成る。
【0025】
尚、実施例6においては、軸受材料及び相手材の材質を他の6つの実施例と異ならせたものである。また、スクロース及びラウリン酸ナトリウムについての効果(摺動特性)を純粋に調べるため、実施例3を除いては、防腐剤(ソルビン酸カリウム)及び防錆剤(ベンゾトリアゾール)を除いた(添加しない)状態で試験を行っている。さらに、実施例7では、水溶液に対するナノマイザー処理がなされたものを使用している。この方法は、ジェネレータ内のノズル径0.8mmφの2本のノズルから、流速100m/Sでふき出し、衝突させるナノマイザー処理を、表1に示す成分で、繰り返し2回の処理を行った。
【0026】
これに対し、比較例1〜比較例10は、比較のために調整した、特許請求の範囲から外れた潤滑剤であり、比較例1は、スクロースのみを配合しラウリン酸ナトリウムを含まないものであり、比較例2は、スクロースの配合量を過少としたものであり、比較例3は、スクロースの配合量を過多としたものであり、比較例4は、スクロースに代えてマルトース(麦芽糖)を配合したものであり、比較例5は、スクロースに代えてグルコース(ブドウ糖)を配合したものであり、比較例6は、ラウリン酸ナトリウムの配合量を過少としたものであり、比較例7は、ラウリン酸ナトリウムの配合量を過多としたものであり、比較例8は、ラウリン酸ナトリウムに代えてステアリン酸ナトリウムを0.05質量%配合したものである。比較例9は、純水のみからなるものであり、比較例10は、SAE#30と称される代表的な石油系の潤滑油である。
【0027】
この摩擦摩耗試験は、スラスト型試験機を用い、軸受材料の材質に、Cu−23質量%Pb−1質量%Sn(裏金付き焼結材料)を採用し、相手材の材質にSUS304を採用して行った。但し、実施例6に関しては、軸受材料、相手材共に鋳鉄FC30を採用した。また、試験片の表面粗さは、軸受材料、相手材共にRy0.3μm以下とし、試験開始時の潤滑剤の温度を30℃とした。そして、摩擦摩耗試験は、摺動速度が60m/min 、面圧が2MPaの条件で行い、焼付試験は、摺動速度が60m/min 、面圧を10分毎に0.5MPaずつ増加する条件で行った。試験結果は、次の表1の通りである。尚、焼付判断は、試料の背面温度が200℃以上に上昇した場合、あるいは、急激なトルク上昇があった場合に、その焼付く前の面圧を限界焼付荷重とした。
【0028】
【表1】
Figure 0003786889
【0029】
この表1から明らかなように、適量のスクロース及びラウリン酸ナトリウムを配合した実施例1〜実施例7の潤滑剤は、全てについて、従来の石油系の潤滑油(比較例10)と比べて、摩擦係数が飛躍的に小さくなると共に、非焼付性にも優れ、またほぼ同等の耐摩耗性(摩耗量)が得られた。また、単なる水による潤滑(比較例9)に比べても著しく良好な潤滑性が得られた。
【0030】
この場合、比較例4及び比較例5の結果から判るように、同じ糖類でもマルトースやグルコースでは、スクロースを採用した実施例1〜実施例7に比べて、摩擦係数、耐摩耗性、非焼付性のいずれについても劣っていた。また、ラウリン酸ナトリウムを配合しなかった比較例1では、実施例1〜実施例7と比べて非焼付性が大きく劣ることになった。ラウリン酸ナトリウムに代えてステアリン酸ナトリウムを配合した比較例8では、摩擦係数、耐摩耗性、非焼付性の全てについて劣る結果であった。
【0031】
さらに、スクロースの配合量を過少とした比較例2では、摩擦係数、耐摩耗性、非焼付性の全てについて劣るものとなり、スクロースの配合量を過多とした比較例3では、非焼付性には優れるものの、摩擦係数、耐摩耗性に大きく劣っていた。ラウリン酸ナトリウムの配合量を過少とした比較例6では、特に耐摩耗性、非焼付性に劣っており、ラウリン酸ナトリウムの配合量を過多とした比較例7では、摩擦係数、耐摩耗性、非焼付性の全てについて劣っていた。
【0032】
このように、適量のスクロース及びラウリン酸ナトリウムを配合した実施例1〜実施例7の潤滑剤は、従来の潤滑油に代わる自然環境の汚染を招くことのない無公害のものであって、極めて優れた潤滑特性を得ることができるのである。尚、実施例2と実施例6とにおける試験結果の差はなく、軸受材料及び相手材の材質に関係なく良好な摺動特性を得ることができるということができる。また、実施例3のように、防腐剤(ソルビン酸カリウム)及び防錆剤(ベンゾトリアゾール)を添加しても、実施例2と比べて摺動特性が悪化することはなかったのである。また、実施例3と実施例7とを比較すると、ナノマイザー処理された実施例7はより良好な摺動特性を示している。
【0033】
ところで、上記したような適量のスクロース及び脂肪酸のアルカリ金属塩(ラウリン酸ナトリウム)を配合した水溶液からなる潤滑剤では、細菌やカビの発生,増殖を招き、衛生上や潤滑性能上の問題を発生させる虞があるので、防腐剤を添加してそのような細菌やカビの発生,増殖を防止する必要がある。また、水系の潤滑剤では、相手材(摺動面)の錆の発生を招く虞があるので、防錆剤を添加して錆の発生を防ぐ必要がある。そこで、本発明者らは、本発明に係る潤滑剤において採用すべき防腐剤並びに防錆剤の適正を調べる試験を行っており、以下、その試験について述べる。
【0034】
まず、次の表2に示すように、防錆剤を添加した際の防錆効果を調べる防錆試験を、3種類の防錆剤について行った。表2及び後述する図1,図2では、これら防錆剤を、防錆剤▲1▼、防錆剤▲2▼、防錆剤▲3▼と記しているが、そのうち防錆剤▲1▼がベンゾトリアゾール(BTZ)であり、防錆剤▲2▼は亜硝酸ソーダであり、防錆剤▲3▼はクエン酸アンモニウムである。
【0035】
防錆試験は、スクロースを5質量%及びラウリン酸ナトリウムを0.05質量%配合した水溶液に対し、上記した各防錆剤を夫々0.5質量%の濃度で添加したものに、2種類の試料片(鋳鉄FC30及びスチール)を浸漬し、室温20±2℃、湿度60±5%を維持して、100時間経過後の、錆の発生、外観変化、重量減、鉄溶出量(スチールのみ)を調べることにより行った。その結果を次の表2に示す。評価結果については、特に優れたものを「○」、良好であったものを「△」、不可であったものを「×」で示している。
【0036】
【表2】
Figure 0003786889
【0037】
この表2から明らかなように、防錆剤として、ベンゾトリアゾール(防錆剤▲1▼)が、全てについて優れた結果が得られた。さらに、図1は、この浸漬試験におけるスチールの鉄溶出量について、上記した100時間に加え、200時間、300時間、500時間に関しても調べた試験結果を示している。また、図2は、この浸漬試験における2種の試料片(鋳鉄FC30(a)、及び、スチール(b))の重量変化量(腐食減量)について、やはり200時間、300時間、500時間に関しても調べた試験結果を示している。
【0038】
これらの結果からも、本発明の潤滑剤に採用する防錆剤としては、ベンゾトリアゾール及びそのアルカリ金属塩が最も好ましいということができるのである。又、ベンゾトリアゾールとそのアルカリ金属塩は同等の防錆効果を得られるが、アルカリ塩にすることにより更に水溶液中での溶解度が向上する。このベンゾトリアゾール及びそのアルカリ金属塩の添加量としては全体の0.1〜3質量%が適量であり、0.1質量%未満では、防錆剤としての効果が十分に得られず、また、3質量%を越えて添加しても、効果的には変化がないことも併せて明らかになった。
【0039】
次に、表3に示すように、防腐剤を添加した際の防腐効果を調べる防腐試験を、4種類の防腐剤について行った。表3(及び後述する表4)では、これら防腐剤を、防腐剤A、防腐剤B、防腐剤C,防腐剤Dと記しているが、そのうち防腐剤Aは安息香酸ナトリウムであり、防腐剤Bがソルビン酸カリウムであり、防腐剤Cはデヒドロ酢酸ナトリウムであり、防腐剤Dはヨウ素である。
【0040】
防腐試験は、スクロースを5質量%及びラウリン酸ナトリウムを0.05質量%配合した水溶液に対し、上記した各防腐剤を夫々0.5質量%、及び、1.0質量%の濃度で添加した各水溶液について、室温30±2℃、湿度70±5%を維持して約2ヶ月間放置した後、目視にて水溶液中のカビの発生を調べることにより行った。また、防腐剤を添加しない水溶液(防腐剤濃度0%)についても同様にカビの発生を調べた。その結果を次の表3に示す。評価結果については、カビの発生がなかったものを「○」、少量のカビの発生が見られたものを「△」、かなりの量のカビが発生したものを「×」で示している。
【0041】
【表3】
Figure 0003786889
この結果から、防腐剤B、防腐剤C,防腐剤Dについては、防腐剤として優れた効果が得られた。
【0042】
さらに、本発明者らは、次の表4に示すように、防腐剤及び防錆剤の双方を添加した水溶液(潤滑剤)について、上記防錆試験(表2)と同様の浸漬試験を行い、防腐剤を追加した場合における防錆効果を確認した。この試験は、スクロースを5質量%及びラウリン酸ナトリウムを0.05質量%、並びに防錆剤としてのベンゾトリアゾールを0.5質量%配合した水溶液に対し、上記各防腐剤(A〜D)を夫々1質量%の濃度で添加し、2種類の試料片(鋳鉄FC30及びスチール)を浸漬し、室温20±2℃、湿度60±5%を維持して100時間経過後の、錆の発生、外観変化、重量減、鉄溶出量(スチールのみ)を調べることにより行った。評価の基準も、上記表2と同様である。
【0043】
【表4】
Figure 0003786889
【0044】
この結果から、防腐剤Bすなわちソルビン酸カリウムが総合的に最も優れた結果が得られた。従って、表3及び表4の結果から、本発明の潤滑剤に採用する防腐剤としては、ソルビン酸カリウムが最も好ましいということができるのである。そして、このソルビン酸カリウムの添加量としては全体の0.1〜3質量%が適量であり、0.1質量%未満では、防腐剤としての効果が十分に得られず、また、3質量%を越えて添加しても、効果的には変化がないことも併せて明らかになった。尚、このソルビン酸カリウムは、食品等にも使用されており、人体や環境への影響が少ないものとなっている。
【0045】
尚、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、例えば、本発明の潤滑剤は、上記した水力発電機用の軸受ユニットに限らず、自動車用のエンジンや変速機、電動機,ディーゼル機関、各種工業用機械の軸受部やギヤ部、ピストン,シリンダ部の潤滑や作動油等、様々な用途に適用することができる。さらには、本発明の潤滑剤は、濃縮液状で提供し、実使用時に水で薄めるといった使用形態をとることもできるなど、本発明は要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】各種防錆剤を添加した場合の浸漬試験におけるスチールの鉄溶出量を示す図
【図2】各種防錆剤を添加した場合の浸漬試験における鋳鉄FC30(a)、及び、スチール(b)の重量変化量を示す図
【図3】軸受ユニットの縦断正面図
【図4】一部を断面で示す軸受ユニット部分の側面図
【符号の説明】
図面中、1は軸受ユニット、2はケーシング、2aは潤滑剤溜り、3はロータシャフト、6は潤滑剤タンク、7は供給管、8は戻し管、9はジャーナル軸受、12はスラスト軸受を示す。

Claims (5)

  1. スクロースを1〜15質量%含むと共に、ラウリン酸ナトリウムを0.001〜1質量%含む水溶液からなる潤滑剤。
  2. さらに防腐剤及び防錆剤を添加したことを特徴とする請求項1記載の潤滑剤。
  3. 前記防腐剤は、ソルビン酸カリウムからなり、0.1〜3質量%添加されていることを特徴とする請求項2記載の潤滑剤。
  4. 前記防錆剤は、ベンゾトリアゾール及びそのアルカリ金属塩からなり、0.1〜3質量%添加されていることを特徴とする請求項2又は3記載の潤滑剤。
  5. 前記水溶液に対するナノマイザー処理がなされていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の潤滑剤。
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