JP3786453B2 - 磁気記録媒体および磁気記録再生装置 - Google Patents

磁気記録媒体および磁気記録再生装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気テープ、磁気ディスク等で用いられる磁気記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年のコンピュータの高性能化に伴い、特にハードディスク用途においては、磁気記録媒体に対しより高密度の記録・再生能力が要求されるようになってきた。この要求を満たすために、現在では飽和磁化Isの大きいCoPtなどの磁性金属の薄膜が記録層に用いられている。しかし、これらの磁性金属薄膜は機械的強度に劣るため、記録・再生ヘッドとの衝突時に破損が生じないように、磁性金属薄膜上に硬質の保護層を設け、その上方に記録・再生ヘッドを非常に小さな間隙を保って浮上させている。なお、保護層としては例えばバルク状態でのビッカース硬度が2GPaであるSiO2 薄膜が用いられている。
【0003】
ところで、磁気記録の原理上、記録密度が高密度になればなるほど、記録・再生ヘッドと記録層との距離(スペーシング)を小さくする必要がある。しかし、保護層を設けるとスペーシングの低減に対する制限となるため、磁気記録媒体の高密度化にとって大きな障害となっている。そこで、非常に薄い保護層を設け、かつヘッドの浮上量を小さくする努力がなされているが、このような保護層の保護性能が低い場合には、かえってヘッドとの接触による磁性金属薄膜の破損の確率は増加してしまう。最近では炭素薄膜などを用いてより薄くかつ保護性能の高い保護層が開発されつつあるが、いずれにしても保護層を設ける限り高密度化に対しての本質的な解決策とはならない。
【0004】
そこで、硬質の酸化物磁性体を用いて磁性薄膜自体の硬度を増加させることが考えられるが、現在知られている酸化物磁性体の磁化の値は小さいため、保護層をなくしたとしても高密度記録には適さない。
【0005】
この他にも、高密度記録を実現するためには、磁性薄膜中において結晶粒間の磁気的相互作用を十分に分断する必要がある。また、一般に基板上に磁性薄膜を形成する場合、磁性薄膜内部に応力が生じて磁性薄膜の密着性や磁気特性などに影響を及ぼすことが知られているため、応力を緩和する必要がある。
【0006】
さらに近年、高感度の磁気ヘッドとして磁気抵抗(MR)素子を用いたものが開発されているが、MRヘッドと磁性薄膜とが接触した際に電気的な導通があると、MR素子に大電流が流れてヘッドが損傷する恐れがある。一方、磁性薄膜が絶縁体である場合は、磁性薄膜上に空気との摩擦等により発生する電荷が蓄積され、そこから素子への放電が起こり、これによりヘッドが損傷する恐れがある。このような現象を避けるためには、磁性薄膜の電気抵抗率が磁気記録装置の構成や材料等に適合した値に設定することが好ましい。しかしながら、これらをすべて満足する高密度記録に適した磁気記録媒体は得られていないのが現状である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、高密度記録が可能な磁気記録媒体を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、結晶質の非磁性下地層と、前記非磁性下地層上に形成され、複数の磁性金属粒子と非磁性母材とから構成される磁性薄膜とを有する磁気記録媒体において、前記非磁性母材の硬度が前記磁性金属粒子の硬度よりも大きく、前記磁性金属粒子が形状磁気異方性および結晶磁気異方性を有しており、前記非磁性母材における前記磁性金属粒子間の中央部の磁性金属元素の含有率が20原子%以下であり、前記磁性金属粒子はそれぞれ前記磁性薄膜の膜厚方向に細長い形状を有し且つそれらの少なくとも一部は前記非磁性下地層と接触し、前記磁性金属粒子の前記磁性薄膜に対する充填率は0.05乃至0.5の範囲内にあり、前記非磁性母材が、一般式M−G(MはSi、Al、Zr、TiおよびBからなる群より選ばれた少なくとも1つ、Gは酸素、窒素および炭素からなる群より選ばれた少なくとも1つ)で表される化合物、または炭素の同素体からなり、かつ前記磁性金属粒子が、一般式M1−M2(M1はCo、Ni、またはこれらの合金、M2はPt、Sm、Cr、Mn、BiおよびAlからなる群より選ばれた少なくとも1つ)で表される合金からなり、前記磁性金属粒子の充填率が前記磁性薄膜の厚さ方向に沿って、その高い部分と低い部分とが交互に現れるように変化していることを特徴とする磁気記録媒体を提供する。
また本発明は、結晶質の非磁性下地層と、前記非磁性下地層上に形成され、複数の磁性金属粒子と非磁性母材とから構成される磁性薄膜とを有する磁気記録媒体において、前記非磁性母材の硬度が前記磁性金属粒子の硬度よりも大きく、前記磁性金属粒子が形状磁気異方性および結晶磁気異方性を有しており、前記非磁性母材における前記磁性金属粒子間の中央部の磁性金属元素の含有率が20原子%以下であり、前記磁性金属粒子はそれぞれ前記磁性薄膜の膜厚方向に細長い形状を有し且つそれらの少なくとも一部は前記非磁性下地層と接触し、前記磁性金属粒子の前記磁性薄膜に対する充填率は0.05乃至0.5の範囲内にあり、前記非磁性母材が、一般式M−G(MはSi、Al、Zr、TiおよびBからなる群より選ばれた少なくとも1つ、Gは酸素、窒素および炭素からなる群より選ばれた少なくとも1つ)で表される化合物、または炭素の同素体からなり、かつ前記磁性金属粒子が、一般式M1−M2(M1はCo、Ni、またはこれらの合金、M2はPt、Sm、Cr、Mn、BiおよびAlからなる群より選ばれた少なくとも1つ)で表される合金からなり、前記磁性金属粒子の充填率が前記非磁性下地層の表面から前記磁性薄膜表面に向かって低くなるように変化していることを特徴とする磁気記録媒体を提供する。
更に本発明は、結晶質の非磁性下地層と、前記非磁性下地層上に形成され、複数の磁性金属粒子と非磁性母材とから構成される磁性薄膜とを有する磁気記録媒体において、前記非磁性母材の硬度が前記磁性金属粒子の硬度よりも大きく、前記磁性金属粒子が形状磁気異方性および結晶磁気異方性を有しており、前記非磁性母材における前記磁性金属粒子間の中央部の磁性金属元素の含有率が20原子%以下であり、前記磁性金属粒子はそれぞれ前記磁性薄膜の膜厚方向に細長い形状を有し且つそれらの少なくとも一部は前記非磁性下地層と接触し、前記磁性金属粒子の前記磁性薄膜に対する充填率は0.05乃至0.5の範囲内にあり、前記非磁性母材が、一般式M−G(MはSi、Al、Zr、TiおよびBからなる群より選ばれた少なくとも1つ、Gは酸素、窒素および炭素からなる群より選ばれた少なくとも1つ)で表される化合物、または炭素の同素体からなり、かつ前記磁性金属粒子が、一般式M1−M2(M1はCo、Ni、またはこれらの合金、M2はPt、Sm、Cr、Mn、BiおよびAlからなる群より選ばれた少なくとも1つ)で表される合金からなり、前記磁性金属粒子の充填率が前記非磁性下地層の表面から前記磁性薄膜表面に向かって高くなるように変化していることを特徴とする磁気記録媒体を提供する。
【0009】
本発明の磁気記録媒体において、磁性金属粒子は磁気記録システムに応じた情報にしたがって所定の方向に磁化され、長手記録、斜め記録または垂直記録が可能である。また、本発明の磁気記録媒体は、記録・再生装置(へッド)が磁気記録媒体に接触する方式、ヘッドが磁気記録媒体から浮上する方式のいずれにも適用することができる。
【0010】
本発明の磁気記録媒体において、磁性金属粒子は形状磁気異方性および結晶磁気異方性を有するようにする。あるいは、磁性金属粒子は形状磁気異方性エネルギーが104 J/m3 以上、好ましくは5×104 J/m3 以上であり、結晶磁気異方性エネルギーが5×105 J/m3 以上、好ましくは106 J/m3 以上であるようにする。
【0011】
ここで、形状磁気異方性と結晶磁気異方性について簡単に説明する。磁気異方性とは、物体の方向によって磁気的特性が異なる性質のことであり、その異なる特性の原因が磁性体の形状によるものが形状磁気異方性、結晶構造によるものが結品磁気異方性である。例えば、針状の磁性体は長軸の方向に磁化され易いので、形状磁気異方性がある。また、Coは結晶構造上のある特定の方向(C軸)が磁化され易いので、結晶磁気異方性がある。また、磁化され易い方向と困難な方向に磁化を向けるのに必要なエネルギーの差が、磁気異方性エネルギーであり、このエネルギーが大きいほど、ある方向に磁化を安定して向けることができる。また、磁気異方性エネルギーが大きいと、記録した情報を安定して保持することができ、また、信号出力を大きくすることができる等の磁気記録媒体にとって好ましい磁気特性が得られる。
【0012】
本発明の磁気記録媒体においては、磁性金属粒子に膜厚方向に細長い形状を有するものを用いて、形状磁気異方性を膜厚方向に付与することによって、垂直磁化膜とする。また、磁性金属粒子にCo基合金を用いて、膜厚方向へ結晶のC軸が向くように成長させることによって、同様に垂直磁化膜とすることができる。磁性金属粒子が形状磁気異方性と結晶磁気異方性の両方を有することによって、より大きな垂直磁気異方性を磁性薄膜に付与することができ、また、垂直記録用の磁気記録媒体に適用することができる。例えば、Co基合金からなる磁性金属粒子が膜厚方向に細長の形状を有し、かつ結晶のC軸が膜厚方向に沿って成長している場合は、2つの磁気異方性の相乗効果によってより大きな磁気異方性を得ることができる。この場合、保磁力を大きくすることができ、記録磁区の小さな、より高密度の記録ができるようになる。
【0013】
長手記録用の媒体の場合は、ある程度の垂直磁気異方性を有する方が高密度記録に適していると言われており、これは、例えば、膜面内方向にC軸が配向している磁性金属粒子が膜厚方向に細長い形状を有することにより実現できる。なお、形状磁気異方性と結晶磁気異方性とはその起源が異なるので、媒体作製プロセスや材料選択等の面で独立に制御し易い。したがって、この2つの磁気異方性を具備することは、高密度の磁気記録媒体にとって好ましいと言える。なお、磁気異方性の大きさや向きは、磁気記録媒体を構成する材料、作製装置、ドライブに要求される仕様等により決定される。
【0014】
本発明の磁気記録媒体は、膜厚方向および膜面内方向に連続して存在する非磁性母材並びに非磁性母材内に保持された磁性金属粒子からなる磁性薄膜から構成されている。非磁性母材が磁性薄膜の膜厚方向および膜面内方向に連続して存在するということは、非磁性母材がネットワーク状の構造を持つことを意味する。本発明における非磁性母材は、磁性薄膜全体の機械的強度を向上させ、電気抵抗率を高め、かつ磁性金属粒子間の磁気的相互作用を分断する役割を担っている。
【0015】
磁性金属粒子としては、飽和磁化Isが大きく、かつ磁気異方性が大きいものが望ましい。このようなものとして、例えば一般式M1−M2(M1はCo、Ni、またはこれらの合金、M2はPt、Sm、Cr、Mn、BiおよびAlからなる群より選ばれた少なくとも1つ)で表される合金を用いることができる。特に、大きな結晶磁気異方性を有するCoPt、SmCo、CoCr等のCo基合金や、大きい異方性エネルギーを有するMnBi、MnAl等のMn合金を用いることが好ましい。また、これらの金属または合金に、磁気特性を制御する目的で、Feおよび/またはNiを添加してもよい。さらに、これらの金属または合金に、磁気特性を向上させるために、例えばCr、Nb、V、Ta、Ti、W、Hf、In、Si、B等を添加してもよい。
【0016】
磁性金属粒子の形状は、形状磁気異方性を向上させるために円柱状、回転楕円体形状等でも良い。磁性金属粒子は、記録される情報にしたがって所望の方向(媒体表面に垂直な方向)に磁化され、これにより情報が記録される。磁性金属粒子を、その長軸方向が磁気記録媒体表面に対して垂直な方向に傾くように配置すると次第に垂直方向に磁化され易くなる。
【0017】
磁気記録媒体に磁気ヘッドが接触したときの損傷を防ぐという目的を達成するために磁気記録媒体が満たすべき物理特性を正確に決定することは一般には困難であるが、1つの基準として硬度を採用することができる。原理的には、硬度が大きいほど磁気ヘッドとの接触による磁気記録媒体の損傷が小さくなると考えられる。
【0018】
このような観点から、非磁性母材としてはバルク状態で高い硬度で高い抵抗率を有するものが用いられる。一般的に、バルクで硬い材料は薄膜化しても充分な硬度を保つ。このような非磁性母材の材料として、例えば一般式M−Gで表される化合物が挙げられる。ここで、MはSi、Al、Zr、Ti、In、SnおよびBからなる群より選択される少なくとも1種であり、Gは酸素、窒素および炭素からなる群より選択される少なくとも1種である。具体的には、Si−O、Al−O、Zr−O、Ti−O、Si−N、Al−N、Zr−N、Ti−N、B−N、Si−C、Ti−C、B−C、SiAl−ON、Si−ON、AlTi−OC、In−Sn−O等が好ましい。また、非磁性母材の材料としては、潤滑性に優れバルク状態で高硬度である炭素の同素体、例えばダイヤモンド、アモルファスカーボン、ダイヤモンドライクカーボン等を用いることもできる。これらの非磁性母材を構成する材料のバルクにおける硬度は、バルクのSiO2 が有するビッカース硬度2GPaと同程度またはそれ以上であることが好ましい。さらに、非磁性母材の材料として、電気絶縁体または半導体からなる材料を用いることにより、磁気記録媒体全体の電気抵抗率を金属薄膜媒体に比べて大幅に高くすることが可能である。
【0019】
また、非磁性母材の硬度や耐摩耗性を向上させるために、上記材料に非磁性の元素を添加してもよい。この場合、添加元素が非磁性母材中に固溶していてもよく、相分離した状態で添加されていてもよい。また、添加元素が微粒子の状態で非磁性母材中に存在していてもよい。添加元素が存在する状態は、磁性金属粒子が分散される状態における磁性薄膜の機械的特性や磁気的特性により適宜選択する。
【0020】
本発明における磁性薄膜は、磁性金属粒子や非磁性母材の特性向上のために上述したような添加元素を加える場合に、磁性金属粒子と非磁性母材とに同じ元素が添加されていてもよい。また、後述するように、原子レベルで磁性金属粒子と非磁性母材とが完全に分離された状態の複合膜を形成することは事実上不可能であるので、磁性金属粒子に対する添加元素が非磁性母材中に存在してもよい。この場合、添加元素の効果をより効率的に発揮させるために、非磁性母材中の添加元素は磁性金属粒子内に比べて1/10以下、より好ましくは1/100以下の割合であればよい。この関係は、非磁性母材と磁性金属粒子とを入れ換えても成り立つ。
【0021】
磁性金属粒子と非磁性母材とからなる磁性薄膜を支持する基板としては、金属、ガラス、セラミック等を用いることができる。なお、基板と磁性薄膜との間には、非磁性体からなる下地層を設ける。特に、金属基板を用いる場合には、磁気ヘッドと磁気記録媒体との間の短絡を防止するために、電気絶縁性を有する下地層を用いることが望ましい。また、磁気記録媒体の表面には、必要に応じて極薄い(100オングストローム以下)保護膜を設けてもよい。さらに、磁性金属粒子同士は、磁気的交換力が及ばない程度の距離(1nm以上)をおいて非磁性母材に保持されていることが望ましい。これは、電気抵抗を高めるだけでなく、磁気記録媒体の保磁力を向上させ、磁気記録媒体のノイズを低減させるためである。
【0023】
非磁性体からなる下地層は、磁性金属粒子や非磁性母材の結晶構造を制御する目的、あるいは基板からの不純物の混入を防ぐ目的で配置される。例えば、磁性金属粒子の所望の結晶構造の格子間隔に近い格子間隔を持つ材料からなる下地層を用いることにより、磁性金属粒子の結晶の格子間隔を制御することが可能である。また、基板からの不純物の混入を防止する場合には、格子間隔の小さい薄膜あるいは緻密な薄膜を下地層として用いればよい。上記下地層は、イオンプレーティング、雰囲気ガス中でのドーピング、中性子線照射等により基板の表面を改質することにより形成してもよい。これらの方法によれば、薄膜形成工程を介さないので媒体作製上好ましい。
【0024】
本発明の磁気記録媒体においては、磁性金属粒子と非磁性母材との間に、磁性金属粒子と非磁性母材とを効率よく結合させ、あるいは磁性金属粒子および非磁性母材の構成元素の相互拡散を防止するための界面層が存在していてもよい。この界面層には、磁性金属粒子あるいは非磁性母材の少なくとも一方を構成する元素が主成分として存在してもよく、磁性金属粒子および非磁性母材を構成する元素がほとんど存在していなくてもよい。前者の場合、磁性金属粒子と非磁性母材とを機械的に強固に結合させるという点で好ましく、後者は磁性金属粒子と非磁性母材とを磁気的に完全に分離するという点で好ましい。
【0025】
本発明における磁性薄膜は、磁性金属材料および非磁性材料を真空中において物理的蒸着法や化学的蒸着法により基板上に堆積させることにより形成する。物理的蒸着法としては、次に示す方法が挙げられる。
(a)磁性金属材料のターゲットおよび非磁性材料のターゲットを用いて同時スパッタリング。
(b)複数の金属材料のタ一ゲットを用い、酸素、窒素または炭素を含む不活性ガス雰囲気中における同時スパッタリング。
【0026】
この場合、一部の金属と酸素、窒素または炭素との化合物からなる非磁性母材が形成される。なお、(a)および(b)の場合において、磁性金属粒子と非磁性母材の材料は、それぞれ別々のターゲットに配置されていてもよく、両材料を同じターゲットに配置した複合ターゲットでもよい。前者の場合は、磁気的特性や機械的特性の経時変化に対して対応し易いという利点かあり、後者の場合は、大量生産に適しているという利点がある。
【0027】
すなわち、これらの薄膜形成方法では、一般に結晶が柱状に成長することが知られている。したがって、投入電力、スパッタリング圧力、反応性ガス種、成膜速度、バイアス電力、添加物の種類等のプロセスパラメータを選択することにより、磁性金属粒子および非磁性母材を共に柱状に成長させることができる。また、スパッタリング法による薄膜形成の場合、一般に磁性金属は柱状に成長し易く、硬質誘電体薄膜はアモルファス化し易い。このことから、スパッタリング法で磁性金属と硬質誘電体材料を同時に成長させることにより、アモルファス化した硬質誘電体からなる非磁性母材中に形状磁気異方性の大きな柱状の磁性金属粒子が混入した磁性薄膜を得ることが可能となる。
【0028】
このとき、磁性金属粒子の形状磁気異方性は、磁性金属粒子が細長い柱状に成長した場合には、磁性薄膜の膜厚方向に付与されるが、結晶の成長の状態によっては、円柱状の結晶粒がその中心軸を膜面内方向に向けて成長することもある。その場合には、膜面内方向に形状磁気異方性が付与されることになる。また、結晶磁気異方性の向きは、異方性を有する結晶軸が膜厚方向/膜面内方向のどの方向に向くかによって決まる。これは、結晶成長の状態により制御することが可能である。結晶成長の状態に影響を与えるプロセスパラメータとしては、上述の投入電力、スパッタリング圧力、反応性ガス種、成膜速度、バイアス電力、添加物の種類等が挙げられる。この他にも、基板の状態や下地膜の成膜の状態、例えば結晶方位や表面エネルギー等も磁気異方性に影響を及ぼすので、これらのパラメータを選択することによっても所定の磁気異方性を得ることができる。
【0029】
また、化学的蒸着法としては、MOCVDやプラズマCVD、多元同時蒸着等が挙げられる。これらの方法において、必要に応じて基板上に堆積された材料に熱処理を施して、非磁性母材中に磁性金属粒子を析出させてもよい。
【0030】
磁性薄膜を基板上に形成する際に、媒体表面側で磁性金属粒子が非磁性母材に示める割合を小さくし、基板界面側でその割合を大きくすることにより、磁気ヘッドとの間の短絡をより完全に防止することができる。反対に、上記割合を媒体表面側で大きくし、基板界面側で小さくすることにより、媒体磁界強度を向上させることができる。なお、磁性金属材料のターゲットと非磁性材料のターゲットに投入するパワー比等の成膜条件を変えることにより、非磁性母材中の磁性金属粒子の割合や分布状態を選択することができる。
【0031】
本発明の磁気記録媒体は、従来の磁気記録媒体に対して以下に示すような特徴を有する。
(1)保護層によるスペーシングロスの解消
本発明の磁気記録媒体は、非磁性母材が高硬度の材料からなるために、磁性薄膜が充分な機械的強度を有する。このため、従来の磁気記録媒体で必須であった保護層を設ける必要がなくなる。記録・再生へッドと磁性薄膜との間の距離であるスペーシングは、従来は保護層の厚さ以上にしかできなかったが、本発明による磁気記録媒体では、この制限が全くなくなる。このことは、スペーシングを小さくして、従来は不可能であった高密度記録が可能になることを意味し、また、従来と同程度の記録密度とする場合には、磁気記録媒体とへッドとの距離を大きくすることができ、へッドや媒体の損傷確率を大幅に低減できることを意味する。さらに、保護層を作製する工程が不要になるため、媒体作製の歩留りが向上し、媒体の製造コストを下げることができる。なお、保護層がない状態での動作に耐えるに充分な硬度を磁性薄膜が持たない場合、あるいは接触動作等の従来の保護層つきの媒体ですら耐えられないような使われ方をする場合には、本発明による磁性薄膜上に保護層を設けてもよい。この場合、磁性薄膜自体の硬度は従来の金属薄膜に対して大きいので保護層は作製し易い。
(2)媒体ノイズの低減
本発明の磁気記録媒体では、個々の磁性金属粒子の間に非磁性母材が存在し、磁性金属粒子間の距離が交換相互作用の及ぶ距離よりも大きいので、媒体ノイズを小さくすることができる。
【0032】
情報の記録は磁気記録媒体上に反転磁区を形成することによって行われるが、この反転磁区はさらに磁性薄膜の結晶粒から構成される。結晶粒内では各原子のスピンは同じ向きを向いており、へッドからの磁界によって結晶粒内でほぼ同時に反転する。したがって、反転磁区の境界の粗さは理想的には結晶粒の大きさ程度であり、この境界の粗さが情報を記録することによって生じる記録ノイズの原因となる。磁性薄膜では、一般には磁性体の結晶粒の間には酸化物等の非磁性体が存在するが、結晶粒間の距離が短く磁気的な絶縁が不充分であると結晶粒間に交換相互作用が働く。このような状態では、一つの結晶粒が磁化反転すると交換相互作用によって隣接する結晶粒も磁化反転してしまい、磁化反転の単位はいくつかの結晶粒群となる。この場合、反転磁区の境界はより粗くなり、大きな媒体ノイズか発生してしまう。従来の磁気記録媒体は、この問題に悩まされており、媒体材料にいろいろな添加物を添加することが試みられているが、結晶粒間の相互作用を完全に分断することはできていない。現在までのところ、結晶粒間を1nm程度にまで離すことができてはいるが、磁性元素の拡散等のために磁気的な絶縁は完全ではなく、数〜数10dBの記録ノイズが発生している。一方、本発明の磁気記録媒体にはこの間題がない。すなわち、磁性結晶粒間が非磁性母材により完全に絶縁されているために、交換相互作用が極めて小さい。
(3)媒体の抵抗率の制御性
高感度の磁気抵抗効果(MR)型へッドを用いる場合には、磁気記録媒体の抵抗率が問題になる。すなわち、媒体一へッド間の放電による記録・再生素子や媒体の破壊が問題となる場合には、磁気記録媒体の電気伝導性が高い方が好ましい。また、媒体への電流リークによるMR素子の破壊や信号強度の低下が問題となる場合には、磁気記録媒体は絶縁性である方が好ましい。
【0033】
従来の磁気記録媒体の構成は、金属薄膜上に絶縁性保護層が形成された構成であり、磁気特性や保護性能を損なわずに磁気記録媒体全体の電気抵抗率を制御することは不可能であった。ところが、本発明による磁気記録媒体は、磁性金属粒子と非磁性母材との混合物であり、両者の混合比や添加物の種類や量等で電気抵抗率を任意に制御することができる。
【0034】
また、従来の金精薄膜媒体が有する上記の問題点を解決する方法として、磁性金属微粒子を誘電体中に分散してなる磁性薄膜が提案されている(USP4,973,525)。しかしながら、この磁性薄膜は、磁気記録媒体に使用可能な磁気特性を得るのためには、700〜800Kに加熱した基板上にスパッタリングにより作製する必要があることが記載されているだけで、大きな磁気異方性エネルギーをどのようにして得るのかということについて述べられていない。特に、実施例に挙げられているFe微粒子は結晶磁気異方性エネルギーがかなり小さい材料であることが知られており、また、形状も球形に近く、磁気記録媒体に必要な保磁力を得ることは難しい。実施例では1kOc程度の保磁力が得られることが記載されているが、これは熱処理等による応力によって誘起されたものと考えられる。この場合、応力による膜の剥離が問題となる可能性があり、また、700〜800Kという熱処理温度は基板にダメージを与える可能性がある。これに対して、本発明の磁気記録媒体は、磁性金属粒子が形状磁気異方性と結晶磁気異方性の両方を有するので、大きな保磁力を得ることが可能である。また、熱処理を必要としないので基板に与えるダメージもない。
【0035】
ここで、本発明の磁気記録媒体の例を図1および図2を参照して説明する。
図1は、参考例に係る磁気記録媒体を概略的に示す断面図である。図2は、本発明の一態様に係る磁気記録媒体を概略的に示す断面図である。
図1において、ガラス基板11上には、形状磁気異方性および結晶磁気異方性を有する磁性金属粒子1と膜厚方向および膜面内方向に連続して存在する非磁性母材2とからなる磁性薄膜が形成されている。
【0036】
また図2において、ガラス基板11上には下地層12が形成され、さらにその上に形状磁気異方性および結晶磁気異方性を有する磁性金属粒子1と、膜厚方向および膜面内方向に連続して存在する非磁性母材2とからなる磁性薄膜が形成されている。ここで、このような磁性薄膜の厚さは100nm以下、さらには50nm以下、さらには20nm以下であることが好ましい。これは、磁性薄膜の厚さが厚すぎると成膜時間が長時間化する上、磁性薄膜中に応力に起因する歪みが入り、膜が剥離し易くなるからである
【0037】
本発明の磁気記録媒体を構成する磁性薄膜は、磁性金属粒子と非磁性母材との複合材料とみなすことができる。この磁性薄膜を複合材料のconnectivityの定義に従って表現すれば、非磁性母材が3次元に広がり、磁性金属粒子が2次元または1次元の結合状態になっていることから、いわゆる「3−1結合」または「3−2結合」であるといえる。このような結合状態は、従来の磁気記録媒体では知られていない。
【0038】
本発明の磁気記録媒体において、非磁性母材がネットワーク状になっていることは、磁性薄膜を酸等に浸して磁性金属粒子のみを充分に溶解することにより確認できる。そして、磁性金属粒子のみを取り除いても、非磁性母材が元の磁性薄膜の形状を保った状態で基板上に残存するのであれば、磁性薄膜自体が堅牢性に対する必要条件を充分に満たしていると言える。
【0039】
本発明の磁気記録媒体は、磁性金属粒子と非磁性母材とが相分離して混在している構造を有する。ただし、微視的な観点からは、薄膜形成時あるいは薄膜形成後に、磁性金属粒子を構成する原子と非磁性母材を構成する原子の拡散が起こり得るので、原子レベルで完全に磁性金属粒子と非磁性母材とが分離された複合膜を形成することは困難である。したがって、磁性金属粒子と非磁性母材とが分離された構造がもたらす上述の利点を得るためには、非磁性母材の特定領域(中央部)において、磁性金属粒子を構成する磁性元素の含有率が20原子%以下である、あるいは磁性金属粒子中央部において非磁性母材を構成する元素の含有率が20原子%以下であることが必要である。
【0040】
ここで、磁性金属粒子の中央部および非磁性母材における磁性金属粒子間の特定領域(中央部)について説明する。図3は図1に示す構成において、磁性金属粒子としてCoPt粒子を用い、非磁性母材の材料にSiOを用いた場合における微粒子分散薄膜の透過型電子顕微鏡(TEM)による薄膜平面像を示す図である。図中31は主にCoPtからなる磁性全属粒子部を示し、32は主にSiOからなる非磁性母材部を示す。これらの部分は、平面TEM像において、結晶格子の不連続部、像のコントラストの不連続変化部等によって明瞭に区別できる。
【0041】
図4は図3中のA−A線上のSiとCoの組成分布を示す図である。この微細な組成分析は、電子線回折によって図3の像と同時に得ることができる。図4中には図3より判断される磁性金属粒子部31および非磁性母材部32の境界も示してある。本発明の磁気記録媒体において、非磁性母材における磁性金属粒子間の特定領域とは、図4の磁性全属粒子部31間の非磁性母材部32の領域の中央部80%の領域のことをいう。また、磁性金属粒子の中央部とは、図4の磁性全属粒子部31の領域の中央部80%の領域のことをいう。また、この領域は、平面TEM上でのA−A線の選び方によって広さが異なるので、上記の分析を複数回行って、その平均値で決定する。したがって、分析平均値により、磁性金属粒子と非磁性母材との分散の度合いを評価することとなる。
【0042】
図5は、図3と同様の組成で、上述の磁性金属粒子と非磁性母材の間に界面層が存在している場合の平面TEM像を示す図である。図中31は主にCoPtからなる磁性金属粒子部を示し、32は主にSiOからなる非磁性母材部を示し、51はアモルファスCoOからなる界面層を示す。図3の場合と同様に、これらの部分は、平面TEM上で明確に区別できる。また、図6は、図5のB−B線上の組成分折の結果を示す図である。図6の場合の磁性金属粒子中央部は、領域31の中央部80%の領域であり、非磁性母材における磁性金属粒子間の特定領域は、領域31間の領域32の中央部80%の領域である。
【0043】
非磁性母材中の磁性金属原子は、磁性金属粒子間の交換相互作用を強める作用を持つ。図7に図3の例における非磁性母材の特定領域の磁性元素(Co)量に対する交換相互作用の減衰量を示す。これは、2つの磁性金属粒子間に非磁性母材を設置し、Co量が0原子%の場合の交換相互作用の減衰量を1としたときの相対量で示してある。図7から分かるように、Co量が5,10,20原子%のときに、減衰量がそれぞれ0.99,0.97,0.95であり、50原子%になるとほとんど減衰しなくなる。このことから、非磁性母材の特定領域の磁性元素の許容濃度は20原子%以下、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下である。20原子%以上の濃度では、磁性金属粒子と非磁性母材との間での構成元素の拡散(例えば、非磁性母材中の酸素原子の磁性金属粒子内への拡散)が起こり易くなり、磁性薄膜全体の磁気特性の劣化につながってしまう。
【0044】
図8には、図3の例における磁性金属粒子の中央部におけるSi量に対する磁気異方性エネルギーの変化を示す。Si量が0原子%の場合を1とした相対値で示す。図8から分かるように、Si量が5,10,20原子%のときに、磁気異方性エネルギーがそれぞれ0.95,0.90,0.80であり、20原子%以上ではCoPtの持つ磁気異方性エネルギーを充分に引き出せなくなり、磁気記録媒体としての磁気特性を維持できなくなる。このことから、磁性金属粒子中央部での非磁性母材の構成元素の許容濃度は20原子%以下、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下である。20原子%以上の濃度では、磁性金属粒子と非磁性母材との間での構成元素の拡散が起こり易くなり、磁性薄膜全体の磁気特性の劣化につながってしまう。なお、上記元素分析は、表面化領域で行うが、厚さ100nm以下程度の薄膜では、表面化領域における元素分析と膜厚方向における元素分析とは等価である。
【0045】
本発明の磁気記録媒体において、形状磁気異方性をもつ磁性金属粒子は、球形以外の異方的な物理的形状をもつのが一般的であり、異方性を生じさせたい方向に円柱、回転楕円体などの長い棒状の形状であることが好ましい。ここで、磁性金属粒子の形状についてさらに詳細に説明する。いま、磁化Iを持つ体積vの磁性粒子について、その反磁界係数をN、真空の透磁率をμ0 とすると、Nの方向の静磁エネルギーは、
U=1/2μ0 ・N・I2 ・v
で表される。磁性粒子がz軸に関して軸対称であれば、x、y、z軸方向の反磁界係数Nx 、Ny 、Nz
x =Ny =(1−Nz )/2
である。磁性粒子の形状が回転楕円体である場合を考えると、飽和磁化Isがz軸から角度θで傾いている場合の静磁エネルギーUは、
U=1/4μ0 ・Is2 ・v・(3Nz −1)cos2 θ+const.
である。この式から、形状磁気異方性エネルギーの大きさは(1−3Nz )に比例することがわかる。また、形状磁気異方性が最大になるのはNz =0、最小になるのはNz =1/3のときである。z軸に沿って細長の回転楕円体の(長軸の長さ)/(短軸の長さ)をrとし、rと(1−3Nz )との関係を調べると、r=1、1.5、2、3、5、10に対してそれぞれ(1−3Nz )=0、0.30、0.48、0.67、0.83、0.94となる。このことから、rが1.5以上であれば最大の形状磁気異方性のほぼ30%、さらにrが3以上であればほぼ70%の形状磁気異方性を得ることができる。またこれは、磁性金属粒子の形状が長い棒状であれば、回転楕円体に限らずほぼ同様の関係が満足される。
【0046】
次に、本発明における磁気記録媒体を用いて高密度記録を実現するために、磁性薄膜が満たすべき条件について検討する。以下において磁性薄膜の物性のうち充填率および電気抵抗率について説明する。
(1)充填率
非磁性母材中における磁性金属粒子の充填率は磁性薄膜の硬度、磁気特性等に重要な影響を及ぼす。いま、磁性金属粒子が円柱形状であり、底面から見た粒子の配列がhcpであると仮定すると、充填率pは粒子の半径aおよび粒子間の間隔bを用いて、以下の数式(I)で表される。
【0047】
【数1】
Figure 0003786453
【0048】
現在用いられている典型的な薄膜型磁気記録媒体の磁性金属粒子の結晶粒径は約40nmであり、磁性金属粒子間の交換相互作用を分断するために要する距離は少なくとも約1nmであることが知られている。これらの値を代入して計算するとpは0.7以下となる。さらに、磁性金属粒子の充填率を制御することによって、磁性金属粒子間の磁気的相互作用の分断の度合を制御できることは明らかである。より高密度の記録を行うには、充填率の値は0.5以下とする。ただし、充填率の値は指針の1つであり、pの最適値は磁気ドライブシステムの仕様によって決まるものである。また、本発明の磁気記録再生装置における磁気記録媒体では、磁性金属粒子を非磁性母材の不純物とみなすことができるため、充填率によって磁性薄膜の内部応力を制御することができる。なおここで、磁性金属粒子の底面から見た配列がfcc等hcp以外であっても、同様の理由からこのような充填率の値0.7以下で磁性金属粒子の交換相互作用は有効に分断される。以上のように磁性薄膜全体にわたる充填率の平均値を制御することもできるが、磁性薄膜の膜厚方向に沿って充填率の変化のさせ方を任意に制御して種々の特性を改善することもできる。なお、充填率の下限は、0.05以上とする
【0049】
例えば、磁性薄膜の厚さ方向に沿って充填率の高い部分と低い部分とが交互に現れるように変化させると、局所的に少しずつ応力を集中させることができ、全体として内部応力を緩和させることができる。磁性薄膜の内部応力が緩和されると、基板に対する磁性薄膜の密着性が向上するので、磁気記録媒体の耐久性、寿命が向上し、さらにバーストノイズの原因となる磁性薄膜の欠陥を減少することができる。なお、このような充填率の変化のさせ方は一例であって、磁性薄膜の成膜条件によって内部応力の値は異なるので、それぞれの場合によって適切な変化を与えればよい。
【0050】
また、基板面から磁性薄膜表面に向かって充填率が低くなるように変化させると、磁気記録媒体の表面の硬度が向上するので、ヘッドクラッシュ等に対する磁気記録媒体の耐久性をより向上させることができる。この場合、ヘッドを接触走行させて記録させても十分な耐久性を有するので、非常に高密度の磁気記録が可能な磁気記録媒体を実現できる。
【0051】
逆に、基板面から磁性薄膜表面に向かって充填率が増加するように変化させると、磁性薄膜の表面における磁化が大きくなるため、再生出力を大きくさせることができる。ここで、基板と非磁性母材の材料が類似しており、両者の膨張係数などの機械的特性が類似している場合には、基板と磁性薄膜との界面における機械的特性の差が小さくなるため、密着性を向上させることができる。
【0052】
さらに、磁性薄膜と磁気ヘッドとを接触させて記録する場合には、磁性薄膜の表面における硬度および電気絶縁性が高いことも重要な因子になる。したがって、磁性薄膜の表面における磁性金属粒子の割合も重要なパラメータの1つである。磁性薄膜の表面においては、(磁性金属粒子の面積)/(非磁性母材の面積)の値が、磁性金属粒子の充填率と同様に、0.7以下、さらには0.5以下であることが好ましい。実質的には、0.05以上あれば充分である。
(2)電気抵抗率
本発明の磁気記録媒体では、非磁性母材として絶縁体を用いれば、磁性金属粒子の充填率を制御することによって、磁性薄膜の電気抵抗率を制御することができる。また、非磁性母材に元素を添加することにより薄膜全体の電気抵抗率を制御することができる。例えば、磁性薄膜の電気抵抗率が1Ω・cm以上であれば、ヘッドの導体部分に比べて充分に絶縁体とみなすことができ、MRヘッドを用いた場合でも接触時の媒体へ電流がリークすることによるヘッドの破壊を防ぐことができる。MRヘッドのようにヘッドの導体部分が微細化されている場合には、その部分の抵抗が増加するので、磁性薄膜の電気抵抗率は105 Ω・cm以上であることが好ましく、さらに完全な電気絶縁性を保つためには1010Ω・cm以上であることが好ましい。
【0053】
一方、ガラス基板上の磁性体薄膜からなるディスク状の媒体を高速に回転させると、大気との摩擦によってディスク上に電荷が発生することが知られている。ディスク上にたまった電荷が磁気へッドへと放電してしまうと、へッド素子が破壊される可能性がある。たまった電荷量が少なくても、磁気へッドの導体部分の体積が小さいと、そこに流れる電流は大きくなる。したがって、ヘッド素子の集積化が進むにつれて、このディスク上にたまる電荷が問題となる。上記の絶縁性よりも電荷の方が問題となる場合には、媒体にある程度の導電性を付与することが好ましい。ただし、完全に導体となってしまうと上述のへッド素子からの電流のリークが発生するので好ましくない。具体的には、電気抵抗率は10-4〜105 Ω・cmであることが好ましい。なお、上記の絶縁性およびある程度の電気伝導性は、用いるへッドや磁気ディスク装置等のシステム環境によって選択する。10-4Ω・cm以上の電気抵抗率を実現する母材材料としてはインジウム錫酸化物(ITO)が知られている。また、10-2Ω・cm以上の電気抵抗率を実現する母材材料としては、TiN、TaN、TiC等の遷移金属の窒化物が知られている。それ以上の電気抵抗率を実現する場合には、通常の誘電体材料、例えばSiO、AlN、BN等を用いればよい。
【0054】
上述の媒体の電気抵抗率に対する要求は、磁気ディスクドライブシステム上においては、へッドを媒体に接触させた状態で、媒体基板またはスピンドルとへッド内のいかなる導電性部分との間においても満たされるのが好ましい。例えば、静電気によるへッド素子の破壊を防止するのであれば、へッドを媒体に接触させた状態で、媒体基板またはスピンドルとへッド内のいかなる導電性部分との間においても電気抵抗率を1Ω・cm以上に設定すれば、いかなる動作条件下においてもへッドの損傷か起こらない。同様に、上述のへッド素子からの電流のリークを防止するためには、へッドを媒体に接触させた状態で、媒体基板またはスビンドルとへッド内のいかなる導電性部分との間においても電気抵抗率を10-4Ω・cm以上に設定することが好ましい。
(3)磁性薄膜全体の磁気特性
本発明の磁気記録媒体が、1Gb/in2 以上の高密度磁気記録を可能にするためには、微小な記録磁区を安定に保持するために高い保磁力Hcが必要である。具体的には、2kOe以上のHcを有することが好ましい。さらに、10Gb/in2 レベルの記録密度を達成するためには、3kOe以上のHcを有することが好ましい。また、へッド−媒体相互作用から考えると、磁気記録媒体のHcは磁気記録へッドの飽和磁束密度Bsと密接な関係がある。
【0055】
図9に、記録トラック幅3μm、ギャップ長0.25μm、スペーシング0.06μmである場合の計算機シミュレーションによる、Bsと磁化転移幅(transition length )と保磁力Hcとの関係を示す。図9中の各曲線における極小値が、そのBsで記録できる最小の磁区幅、すなわち最高の記録密度を達成できる条件となる。図9の各曲線の極小値が各Bsでの最高の記録密度を達成するのに必要な最大のHcに相当する。すなわち、Bs=0.8Tで2200 Oe、Bs=1.0Tで2800 Oe、Bs=1.2Tで3500 Oe、Bs=1.6Tで4500 Oeである。この結果から、磁気記録媒体のHcは、CGS単位系でへッドのBsの1/2以下、さらにはl/4以下であることがより好ましい。
(4)磁性薄膜表面の機械的構造
本発明による磁気記録媒体には、媒体の保護のため、従来の磁気記録媒体で用いられている潤滑剤を塗布してもよい。この場合、本発明における磁性薄膜においては、非磁性母材部分あるいは非磁性母材と磁性金属粒子との界面部分に存在する空隙に潤滑剤が埋め込まれて密着性が向上する利点がある。また、積極的に潤滑剤を空隙に埋め込むために、媒体作製後に研磨することによって、磁性金属粒子あるいは非磁性母材と磁性金属粒子との界面部分に選択的に空隙を形成してもよい。この空隙は、充分な密着性を発揮させるために、半径1nm以上、深さ2nm以上であることが好ましい。
【0056】
さらに、本発明の磁気記録媒体を用いて高密度記録を実現するために、磁性金属粒子自体が満たすべき種々の物性について検討する。
(5)磁性金属粒子の体積
一般に磁性体が非常に小さくなると、熱ゆらぎによって磁化を一定の方向にそろえておくことができなくなることが知られている。磁気異方性エネルギーKuを持つ体積vの磁性体の熱ゆらぎによる磁化Iの時間変化は、
I(t)=Is・exp(−t/τ)
で表される。ここで、tは時間、Isは最初の磁化の値であり、τは
τ=τ0 ・exp(v・Ku/kT)
で表される。ここで、τ0 は約10-9、kはボルツマン定数、Tは絶対温度である。この式から、室温(T=300K)においてτが実用的な記録保持時間10年を満たすための条件は、v・Ku<1.7×10-19 Jとなる。SmCoを例にとりKuに9.5×106 J/m3 を代入すると、v=1.8×10-263 となる。したがって、この値以上の体積であれば、熱ゆらぎによる磁化の消失がなく、磁気記録媒体として好ましく用いることができる。
(6)磁気クラスターのサイズ
磁性薄膜上には磁気ヘッドからの磁界によって磁区が形成され、これが情報の記録の1単位となる。このとき、その磁性薄膜の最小の磁区サイズが形成されるべき磁区よりも大きいと信号のS/N比が劣化し、最悪の場合再生不可能となる。最小磁区サイズは磁気記録媒体を交流消磁したときの磁気クラスターサイズで見積もることができる。1GB/in2 の記録密度を達成する記録磁区の線方向の長さは150nmであることが知られている(Murdock:IEEE Trans.Magn.,Vol.28,p.3078,1992) 。したがって、磁気クラスターサイズの平均の大きさをこの値より小さくすれば、1GB/in2 以上の高密度記録が可能となる。ただし、実用レベルでは、磁区の短辺に数個の磁気クラスターが入る程度でないとノイズレベルが大きくなるので、この磁気クラスターの大きさは100nm以下、さらに50nm以下であることが好ましい。高S/N比の再生を実現するためには、30nm以下であることがより好ましい。
(7)磁性金属粒子の粒径
磁性金属粒子の粒径が、磁気記録媒体を交流消磁したときの磁気クラスターのサイズと同程度あるいはそれ以上である場合、磁気記録媒体に形成される磁区の形状はヘッドからの磁界を反映することができず、再生時のノイズの原因となってしまう。この場合、磁性金属粒子の膜面内の平均粒径が交流消磁をしたときの磁気クラスターの平均サイズの1/10以下であれば、再生時のノイズを低減することができる。ここで、磁性金属粒子の膜面内の平均粒径を算出するには、例えば磁性薄膜の表面を顕微鏡で観察して複数の磁性金属粒子についてその平均径を測定し、平均すればよい。なお、磁性薄膜表面から観察した磁性金属粒子の形状が長い棒状である場合は、例えば膜表面の顕微鏡写真に1本またはそれ以上の直線を引いて、この直線が磁性金属粒子を横断する合計長さを横断した磁性金属粒子の個数で平均し、磁性金属粒子の膜面内の平均粒径を算出する。また、磁性薄膜表面から観察した磁性金属粒子の形状が楕円体であるときは、その長軸及び短軸の長さを平均することで、磁性金属粒子の膜面内の平均粒径を算出してもよい。
【0057】
本発明における磁性薄膜では、磁性金属粒子の間隔は交換相互作用が働かない程度に離れているので、磁性金属粒子が磁化反転の最小単位となる。したがって、上記のような磁性金属粒子の粒径と磁気クラスターとの関係でノイズを低減する効果が得られる。この関係を通常の金属薄膜型の磁気記録媒体において、例えば結晶粒と磁気クラスターとの関係として適用しようとしても、一つの結晶粒が磁化反転の最小単位とはならないので無意味である。
(8)磁性金属粒子間の間隔の標準偏差
前述したように、磁性金属粒子間の磁気的相互作用を分断し、高密度の磁気記録が行うことができるようにするには、磁性金属粒子間の距離が約1nm以上であることが必要であるといわれている。また、この距離のばらつきが大きいと磁性薄膜全体にわたる均一な保磁力が得られず、記録磁区形状が乱れてノイズが増加するため好ましくない。これを防ぐためには、磁性金属粒子の間隔の標準偏差が1nm以下であることが好ましい。より高密度記録を実現するためには、この標準偏差が0.5nm以下であることがより好ましい。
【0058】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して具体的に説明する。
(第1の参考例
以下のようにスパッタリング法を用いて、図1に断面で示すように、ガラス基板11上に磁性金属粒子1と非磁性母材2とからなる磁性薄膜を形成した。すなわち、CoPtおよびSi−Oターゲットを用い、1PaのAr雰囲気中で2元同時スパッタリングを行い、50nm厚さの磁性薄膜を成膜した。この磁性薄膜は、CoPtからなる磁性金属粒子とSi−Oからなる非磁性母材とで構成されていた。非磁性母材の組成はSiO2に近く、この材料はバルク状態で2GPaのビッカース硬度を有する。また、この磁性薄膜を王水中に浸し、CoPtのみを選択的に溶解させたところ、非磁性母材の部分のみ元の磁性薄膜の形状を保って残存し、非磁性母材が磁性薄膜の膜厚方向および膜面内方向に連続して存在することが確認された。
【0059】
上記の磁性薄膜のTEM観察を行ったところ、図5に見られるような像が観察された。また、CoPt磁性金属粒子の中央部において、非磁性母材の構成元素であるSiおよびOの含有率は5原子%以下であった。また、Si−O非磁性母材の特定領域において、磁性金属粒子を構成する磁性元素であるCoの含有率は5原子%以下であった。CoPtとSi−Oとの界面領域は、詳細な組成分析の結果Co−O相であることがわかった。これは、CoPt磁性金属粒子とSi−O非磁性母材との結合を強める作用があり、磁性薄膜全体の靭性が向上することによって磁気記録媒体としての耐久性が向上した。
【0060】
この磁性薄膜の磁気特性を測定したところ、垂直磁気異方性を有し保磁力Hcは約160kA/m(2000 Oe)、飽和磁化Isは約0.5Wb/m2 (400G)であった。磁性薄膜をTEM観察し、CoPtの体積充填率を算出したところ、薄膜全体にわたって一様に約0.65であった。磁性金属粒子の平均体積は4×10-253 であった。さらに、磁性薄膜表面から測定した磁性金属粒子の膜面内の平均粒径は3〜4nmで、この試料を交流消磁したときの磁気クラスターの平均径約50nmの1/10以下であり、かつ磁性金属粒子は細長回転楕円体の形状であり、(長軸の長さ)/(短軸の長さ)は2〜5、形状磁気異方性は2.1〜3.2×105 J/m3 であった。また、CoPt磁性金属粒子の結晶磁気異方性を磁気トルク測定により見積もったところ、2×106 J/m3 であった。また、磁性薄膜の表面にプローブを接触させて電気抵抗率を測定したところ、約10Ω・cmであった。
【0061】
上記の磁性薄膜の特性を向上させるために、磁性金属粒子および非磁性母材に添加元素を加えた。まず、Bを添加したCoPtターゲットを用いてスパッタリングを行うことにより、磁性薄膜中の磁性金属粒子にBを添加した。このことにより、保磁力が220kA/mに向上した。このとき、組成分析をTEM(透過電子顕微鏡)により行ったところ、非磁性母材中の平均B濃度は磁性金属粒子部における平均B濃度の1/50以下であった。一方、Taを添加したSi−Oターゲットを用いてスパッタリングを行うことにより、磁性薄膜中の非磁性母材にTaを添加した。このことにより、磁性薄膜の電気伝導率が増加し、約10-2Ω・cmとなり、MRへッドからの電流リークによる素子の損傷確率が減少した。このとき、組成分析をTEMにより行ったところ、磁性金属粒子部の平均Ta濃度は非磁性母材中の平均のTa濃度の1/10以下であった。また、Bを添加したCoPtターゲットとBを添加したSi−Oターゲットを用いてスパッタリングを行うことにより、磁性金属粒子と非磁性母材の両方にBを添加した。磁性金属粒子に対するBの添加により保磁力が220kA/mになった。また、非磁性母材に対するB添加により磁性薄膜全体の歪が減少し、磁気記録媒体としての耐久性が向上した。
【0062】
実際に、2.5インチのディスク状ガラス基板に上記磁気薄膜を形成し、記録・再生評価を行い、スペクトルアナライザーを用いてノイズレベルの測定を行ったところ、上記のいずれの場合においてもDC消去ノイズレベルと信号の記録後のノイズレベルは同じであった。また、磁気記録へッド/媒体の摺動特性評価に通常用いられるCSS(Contact Start Stop)試験を行ったところ、保護膜なしの状態で50万回以上の耐久性が得られた。
(第2の参考例
以下のようにスパッタリング法を用いて、図1と同様にガラス基板上に磁性薄膜を形成した。すなわち、Co、FeおよびAlターゲットを用い、酸素分圧10%のAr雰囲気中で3元同時スパッタリングを行い、200nm厚さの磁性薄膜を成膜した。この磁性薄膜は、FeCoからなる磁性金属粒子とAl23に近い組成を有する非磁性母材とで構成されていた。この非磁性母材の材料はバルク状態では12GPaのビッカース硬度を有する。また、この磁性薄膜を王水中に浸し、FeCoのみを選択的に溶解させたところ、非磁性母材の部分のみ元の磁性薄膜の形状を保って残存し、非磁性母材が磁性薄膜の膜厚方向および膜面内方向に連続して存在することが確認された。
【0063】
上記の磁性薄膜のTEM観察を行ったところ、図5に見られるような像が観察された。また、FeCo磁性金属粒子の中央部において、非磁性母材の構成元素であるAlおよびOの含有率は5原子%以下であった。また、Al−O非磁性母材の特定領域において、磁性金属粒子を構成する磁性元素であるCoおよびFeの含有率は5原子%以下であった。FeCoとAl−Oとの界面領域の組成分析を行ったところ、ごく薄いFeCo−O相が存在することがわかった。これは、FeCo磁性金属粒子とAl−O非磁性母材との結合を強める作用があり、磁性薄膜全体の靭性が向上することによって磁気記録媒体としての耐久性が向上した。
【0064】
この磁性薄膜の磁気特性を測定したところ、面内磁気異方性を有し保磁力Hcは約160kA/m、飽和磁化Isは約1Wb/m2 であった。磁性薄膜をTEM観察し、FeCoの体積充填率を算出したところ、薄膜全体にわたって一様に約0.65であった。磁性金属粒子の平均体積は4×10-253 であった。さらに、磁性薄膜表面から測定した磁性金属粒子の膜面内の平均粒径は3〜4nmであり、この試料を交流消磁したときの磁気クラスターの平均径約50nmの1/10以下であり、かつ磁性金属粒子は細長回転楕円体の形状であり、(長軸の長さ)/(短軸の長さ)は2〜5、形状磁気異方性は5.4〜8.2×105 J/m3 であった。また、FeCo磁性金属粒子の結晶磁気異方性を磁気トルク測定により見積もったところ、106 J/m3 であった。磁性薄膜の表面にプローブを接触させて電気抵抗率を測定したところ、約10Ω・cmであった。
【0065】
次に、上記の3種のターゲットに加えてさらにCrターゲットを用い、酸素分圧10%のAr雰囲気中で4元同時スパッタリングを行い、20nm厚さの磁性薄膜を成膜した。この磁性薄膜は、FeCoCrからなる磁性金属粒子とAl23 に近い組成を有するAl−O非磁性母材とで構成されていた。この場合、磁性薄膜の保磁力Hcは約180kA/mとなった。FeCoとAl−Oとの界面領域の組成分析を行ったところ、ごく薄いFeCo−O相およびCr相が存在することがわかった。これは、FeCo磁性金属粒子とAl−O非磁性母材との結合を強める作用があり、磁性薄膜全体の靭性が向上することによって磁気記録媒体としての耐久性が向上した。
【0066】
また、バイアススパッタリングを行った以外は上記と同様に4元同時スパッタリングで磁性薄膜を成膜したところ、得られた磁性薄膜の保磁力は220kA/mとなった。
【0067】
さらに、永久磁石により基板に対して垂直方向に平均40kA/mの磁界を印加しながら、上記と同様に4元同時スパッタリングで磁性薄膜を成膜した。得られた磁性薄膜中の磁性金属粒子の長軸はほぼ膜面に垂直な方向を向いており、垂直磁化膜が得られた。
【0068】
なお、磁性金属粒子を構成する材料としてPt、Sm、Ni等、非磁性母材を形成する材料としてZr、Ti、B等、磁性金属の添加元素としてTa、W、Hf、V、In、Si、B等、反応性ガスとして窒素、有機ガスを用いた場合にも上記と同様な結果が得られる。
【0069】
実際に、2.5インチのディスク状ガラス基板に上記磁気薄膜を形成し、記録・再生評価を行い、スペクトルアナライザーを用いてノイズレベルの測定を行ったところ、上記のいずれの場合においてもDC消去ノイズレベルと信号の記録後のノイズレベルは同じであった。また、磁気記録へッド/媒体の摺動特性評価に通常用いられるCSS試験を行ったところ、保護膜なしの状態で50万回以上の耐久性が得られた。
(第3の参考例
以下のようにスパッタリング法を用いて、図2に示すように、ガラス基板11上に形成された軟磁性下地層12上に磁性金属粒子1と非磁性母材2とからなる磁性薄膜を形成した。すなわち、まず、MnBiターゲットを用いてAr雰囲気中でスパッタリングを行い、ガラス基板11上に軟磁性下地層12を形成した。次いで、MnBiとCとがモザイク状に配置されている複合ターゲットを用いて、Ar雰囲気中でスパッタリングを行い、軟磁性下地層12上に50nm厚さの磁性薄膜を成膜した。その後、堆積した磁性薄膜を400℃で2時間アニールした。この磁性薄膜は、MnBiからなる磁性金属粒子とCからなる非磁性母材とで構成されていた。また、構造分析の結果、非磁性母材を構成するCはダイヤモンドライクカーボンであることがわかった。また、この磁性薄膜を王水中に浸し、MnBiのみを選択的に溶解させたところ、非磁性母材の部分のみ元の磁性薄膜の形状を保って残存し、非磁性母材が磁性薄膜の膜厚方向および膜面内方向に連続して存在することが確認された。
【0070】
上記の磁性薄膜のTEM観察を行ったところ、図3に見られるような像が観察された。また、MnBi磁性金属粒子の中央部において、非磁性母材の構成元素であるCの含有率は10原子%以下であった。また、C非磁性母材の特定領域において、磁性金属粒子を構成する磁性元素であるMnおよびBiの含有率は10原子%以下であった。
【0071】
この磁性薄膜の磁気特性を測定したところ、垂直磁気異方性を有し保磁力Hcは約160kA/m、飽和磁化Isは約1Wb/m2 であった。磁性薄膜をTEM観察し、MnBiの体積充填率を算出したところ、薄膜全体にわたって一様に約0.65であった。磁性金属粒子の平均体積は4×10-253 であった。さらに、磁性薄膜表面から測定した磁性金属粒子の膜面内の平均粒径は3〜4nmで、この試料を交流消磁したときの磁気クラスターの平均径約50nmの1/10以下であり、かつ磁性金属粒子は細長回転楕円体の形状であり、(長軸の長さ)/(短軸の長さ)は2〜5、形状磁気異方性は1.7〜2.6×105 J/m3 であった。また、MnBi磁気金属粒子の結晶磁気異方性を磁気トルク測定により見積もったところ、8×105 J/m3 であった。また、磁性薄膜表面での磁性金属粒子の間隔の標準偏差を測定したところ、8nmであった。
【0072】
実際に、2.5インチのディスク状ガラス基板に上記磁気薄膜を形成し、記録・再生評価を行い、スペクトルアナライザーを用いてノイズレベルの測定を行ったところ、上記のいずれの場合においてもDC消去ノイズレベルと信号の記録後のノイズレベルは同じであった。また、磁気記録へッド/媒体の摺動特性評価に通常用いられるCSS試験を行ったところ、保護膜なしの状態で50万回以上の耐久性が得られた。
実施形態
以下のようにスパッタリング法を用いて、図2に示すように、ガラス基板11上に形成された非磁性下地層12上に磁性金属粒子1と非磁性母材2とからなる磁性薄膜を形成した。まず、Crターゲットを用いてAr雰囲気中でスパッタリングを行い、ガラス基板11上に非磁性下地層12を形成した。引き続きCoPt、CrTaおよびSiターゲットを用い、窒素10%分圧のAr雰囲気中で3元同時バイアススパッタリングを行い、非磁性下地層12上に磁性薄膜を成膜した。この磁性薄膜は、CoPtCrTaからなる磁性金属粒子とSi−Nからなる非磁性母材とで構成されていた。また、この磁性薄膜を王水中に浸し、CoPtCrTaのみを選択的に溶解させたところ、非磁性母材の部分のみ元の磁性薄膜の形状を保って残存し、非磁性母材が磁性薄膜の膜厚方向および膜面内方向に連続して存在することが確認された。
【0073】
上記の磁性薄膜のTEM観察を行ったところ、図5に見られるような像が観察された。また、CoPtCrTa磁性金属粒子の中央部において、非磁性母材の構成元素であるSiおよびNの含有率は5原子%以下であった。また、Si−N非磁性母材の特定領域(中央部)において、磁性金属粒子を構成する磁性元素であるCoおよびPtの含有率は1原子%以下であった。また、CoPtCrTaとSi−Nとの界面領域の組成分析を行ったところ、ごく薄いCr相が存在することがわかった。これは、CoPtCrTa磁性金属粒子とSi−N非磁性母材との結合を強める作用があり、磁性薄膜全体の靭性が向上することによって磁気記録媒体としての耐久性が向上した。また、磁性金属粒子内での組成変調構造を誘起し、磁気特性、特に保磁力を向上させる作用があった。
【0074】
この磁性薄膜の磁気特性を測定したところ、面内磁気異方性を有し保磁力Hcは約200kA/m、飽和磁化Isは約0.8Wb/m2 であった。磁性薄膜をTEM観察し、CoPtCrTaの体積充填率を算出したところ、薄膜全体にわたって一様に約0.5であった。磁性金属粒子の平均体積は4×10-253 であった。さらに、磁性薄膜表面から測定した磁性金属粒子の膜面内の平均粒径は3〜4nmであり、この試料を交流消磁したときの磁気クラスターの平均径約50nmの1/10以下であり、かつ磁性金属粒子は細長回転楕円体の形状であり、(長軸の長さ)/(短軸の長さ)は2〜5、形状磁気異方性は3.4〜5.1×105 J/m3 であった。また、CoPtCrTa磁性金属粒子の結晶磁気異方性を磁気トルク測定により見積もったところ、2×106 J/m3 であった。
【0075】
この磁気記録媒体をドライブ装置に取り付け、静止状態でへッドを接触させ、へッドとスピンドルとの間の電気抵抗率を数箇所測定したところ、いずれも約10-2Ω・cm以上であった。また、このへッドの記録素子において、磁極部分の飽和磁束密度Bsが0.4Tに設定すると、保磁力200kA/m(2.5k0e)では充分な記録ができず、ノイズが増加し、信号/雑音比(S/N比)か小さく、高密度記録ができなかった。一方、磁極部分の飽和磁束密度Bsが1Tに設定すると、ノイズが減少し、S/N比が8dB増加した。
【0076】
この磁性薄膜の断面構造をTEMを用いて観察したところ、表面に半径2nm、深さ3nm程度の空隙が多数あることが確認された。この大きさは、直径数オングストローム、長さ数nmの潤滑材分子が入り込むには充分な大きさである。
【0077】
この磁性薄膜を有する磁気記録媒体に潤滑材を塗布し、へッドを接触状態で走行させて密着性を調べたところ、CoPtCrTa金属薄膜からなる磁気記録媒体の場合に比べて耐久性が向上したことがわかった。また、潤滑材塗布の前工程であるバニッシング工程の際に、磁性金属粒子の部分と非磁性母材との部分で削れ方が異なるために、これを利用してより多くより大きな空隙を表面に形成することができる。したがって、本発明の磁気記録媒体における磁性薄膜においては、膜厚方向に均一に削れていく金属薄膜媒体に比べて、潤滑材を埋め込みのための空隙を特に工程を増やすことなく容易に作ることができる利点を有している。
【0078】
上記の磁性薄膜の磁気特性を向上させる目的で、CoPt、CrTa、Si−OおよびSiターゲットを用い、窒素10%分圧のAr雰囲気中で4元同時バイアススパッタリングを行うこと以外は同様のプロセスで、CoPtCrTa磁性金属粒子とSi−N非磁性母材とからなる磁性薄膜を非磁性下地層上に形成した。
【0079】
この磁性薄膜の磁気特性を測定したところ、面内磁気異方性を有し、保磁力Hcは約220kA/m、飽和磁化Isは約0.9Wb/m2 であった。磁性薄膜の微細な領域の組成分析をTEMにより行ったところ、CoPtCrTa磁性金属粒子の中央部において、非磁性母材の構成元素であるSiおよびNの含有率は1原子%以下、Oの含有率は10原子%以下であった。また、Si−N非磁性母材の中央部において、磁性金属粒子を構成する磁性元素であるCoおよびPtの含有率は1原子%以下であった。また、CoPtCrTa磁性金属粒子とSi−N非磁性母材との界面領域に界面層が存在しており、この界面層はCrとSiO2 から構成されていることがわかった。このCrとSiO2 は、CoPtCrTa磁性金属粒子とSi−N非磁性母材との結合を強める作用があり、磁性薄膜全体の靭性が向上することによって磁気記録媒体としての耐久性が向上した。また、磁性金属粒子内での組成変調構造を誘起し、構成原子の相互拡散を防止することによって、保磁力を向上させる作用がある。
【0080】
非磁性Cr下地層の効果を調べるために、比較例として、非磁性下地層を設けずに、ガラス基板上に磁性薄膜を形成した。この磁性薄膜は磁性金属粒子と非磁性母材とが分離された構造を有するが、磁性金属粒子の結晶性が悪く、保磁力は80kA/m、結晶磁気異方性は2×105 J/m3 であった。
【0081】
上記の磁性薄膜を用いた磁気記録媒体を、浮上型のスライダーに設置したMRRへッドで再生を行ったところ、媒体のチャージアップによるMR素子の静電破壊の確率が増加した。そこで、媒体の非磁性母材に導電性を付与した。まず、Siの代わりにTiを用いること以外は前記と同様のプロセスでCoPtCrTa磁性金属粒子とTi−N非磁性母材とからなる磁性薄膜をガラス基板上に形成した。この磁性薄膜を王水中に浸し、CoPtCrTaのみを選択的に溶解させたところ、非磁性母材の部分のみ元の磁性薄膜の形状を保って残存し、非磁性母材が磁性薄膜の膜厚方向および膜面内方向に連続して存在することが確認された。また、この磁性薄膜の磁気特性は、上記に示した磁気薄膜とほぼ同様であった。
【0082】
この磁気記録媒体をドライブ装置に取り付け、静止状態でへッドを接触させ、へッドとスピンドルとの間の電気抵抗率を数箇所測定したところ、いずれも約5×10-2Ω・cm以上であった。この磁性薄膜を有する磁気記録媒体を用いることにより、MRへッドの損傷確率が減少した。
【0083】
さらに、Siの代わりにIn−Sn−Oを用い、窒素の代わりに酸素を用いること以外は上記と同様のプロセスでCoPtCrTa磁性金属粒子とInSnO(ITO)非磁性母材とからなる磁性薄膜をガラス基板上に形成した。この磁性薄膜を王水中に浸し、CoPtCrTaのみを選択的に溶解させたところ、非磁性母材の部分のみ元の磁性薄膜の形状を保って残存し、非磁性母材が磁性薄膜の膜厚方向および膜面内方向に連続して存在することが確認された。
また、この磁性薄膜の磁気特性は、上記に示した磁気薄膜とほぼ同様であった。
【0084】
この磁気記録媒体をドライブ装置に取り付け、静止状態でへッドを接触させ、へッドとスピンドルとの間の電気抵抗率を数箇所測定したところ、いずれも約10-3Ω・cm以上であった。この磁性薄膜を有する磁気記録媒体を用いることにより、MRへッドの損傷確率はさらに減少した。
【0085】
実際に、2.5インチのディスク状ガラス基板に上記磁気薄膜を形成し、記録・再生評価を行い、スペクトルアナライザーを用いてノイズレベルの測定を行ったところ、上記のいずれの場合においてもDC消去ノイズレベルと信号の記録後のノイズレベルは同じであった。また、磁気記録へッド/媒体の摺動特性評価に通常用いられるCSS試験を行ったところ、保護膜なしの状態で50万回以上の耐久性が得られた。
第4の参考例
第1の参考例と同様な磁性薄膜を成膜するにあたり、CoPtターゲットおよびSi−Oターゲットへの投入電力比を図10に示すように3種の方法で変化させた。Aの方法は投入電力比を正弦波状に周期的に変化させる方法である。Bの方法はSi−Oへの投入電力に対するCoPtへの投入電力の比を徐々に増加させる方法である。Cの方法はSi−Oへの投入電力に対するCoPtへの投入電力の比を徐々に減少させる方法である。各方法で得られた磁性薄膜の断面をTEM観察し、膜厚方向の磁性金属粒子の充填率の変化および磁性薄膜の特性を調べた。
【0086】
投入電力比をAのように変化させる方法で得られた磁性薄膜は、粘着テープを用いた剥離試験で剥離がほとんど生じなかった。一方、投入電力比を一定にして得られた磁性薄膜では、剥離が生じ易かった。この結果は、Aの方法では磁性薄膜の内部応力が緩和されることを示している。また、この磁性薄膜を王水中に浸し、CoPtのみを選択的に溶解させたところ、非磁性母材の部分のみ元の磁性薄膜の形状を保って残存し、非磁性母材が磁性薄膜の膜厚方向および膜面内方向に連続して存在することが確認された。
【0087】
投入電力比をBのように変化させる方法で得られた磁性薄膜では、磁性薄膜の表面側へ向かうにつれてCoPtの充填率が大きくなった。また、この磁性薄膜では、粘着テープによる剥離試験で剥離が全く生じなかった。
【0088】
投入電力比をCのように変化させる方法で得られた磁性薄膜では、磁性薄膜の表面側へ向かうにつれてCoPtの充填率が小さくなった。磁性薄膜の表面にプローブを接触させて電気抵抗率を測定したところ、投入電力比を一定にして得られた磁性薄膜の電気抵抗率の約80%となった。
【0089】
なお、ガラス基板上に磁性薄膜を成膜する前に逆スパッタリングを行うと、磁性薄膜の密着性が向上することが認められた。例えば、投入電力比を一定にして得られた磁性薄膜でも、剥離試験による剥離率が低下した。また、磁性薄膜の保磁力は160kA/mから200kA/mへ増加した。これらの効果は、スパッタエッチング処理の際に、Arイオンがガラス基板に照射されることにより、基板表面の粗さが変化し、また、基板表面の浮遊酸素か消失したことにより発揮されたものである。なお、スパッタエッチング処理以外の表面改質法、例えば、中性子線照射やイオンプレーティングによっても同様の効果が得られる。
【0090】
実際に、2.5インチのディスク状ガラス基板に上記磁気薄膜を形成し、記録・再生評価を行い、スペクトルアナライザーを用いてノイズレベルの測定を行ったところ、上記のいずれの場合においてもDC消去ノイズレベルと信号の記録後のノイズレベルは同じであった。また、磁気記録へッド/媒体の摺動特性評価に通常用いられるCSS試験を行ったところ、保護膜なしの状態で50万回以上の耐久性が得られた。
【0091】
【発明の効果】
以上説明した如く本発明の磁気記録媒体は、磁性金属粒子と非磁性母材とから構成される磁性薄膜を有し、非磁性母材の硬度が磁性金属粒子の硬度よりも大きく、磁性金属粒子が形状磁気異方性および結晶磁気異方性を有しており、非磁性母材における磁性金属粒子間の中央部の磁性金属元素の含有率が20原子%以下であるので、高密度記録が可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】参考例に係る磁気記録媒体を示す断面図。
【図2】本発明の一態様に係る磁気記録媒体を示す断面図。
【図3】磁気記録媒体の透過型電子顕微鏡による平面観察像を示す図。
【図4】図3におけるA−A線上の組成分布を示す図。
【図5】磁気記録媒体の透過型電子顕微鏡による平面観察像を示す図。
【図6】図5におけるB−B線上の組成分布を示す図。
【図7】磁気記録媒体の非磁性母材における磁性金属粒子間の中央部のCo量と交換相互作用の減衰量との関係を示すグラフ。
【図8】磁気記録媒体の非磁性母材における磁性金属粒子間の中央部のSi量と磁気異方性エネルギーとの関係を示すグラフ。
【図9】記録へッドの磁極部分の飽和磁束密度と磁気記録媒体の保磁力の関係を示すグラフ。
【図10】第4の参考例において磁性薄膜の成膜時のCoPtターゲットおよびSiOターゲットへの投入電力比の変化の方法を説明する図。
【符号の説明】
1…磁性金属粒子、2…非磁性母材、11…ガラス基板、12…下地層、31…磁性金属粒子部、32…非磁性母材部、51…界面層。

Claims (11)

  1. 結晶質の非磁性下地層と、前記非磁性下地層上に形成され、複数の磁性金属粒子と非磁性母材とから構成される磁性薄膜とを有する磁気記録媒体において、前記非磁性母材の硬度が前記磁性金属粒子の硬度よりも大きく、前記磁性金属粒子が形状磁気異方性および結晶磁気異方性を有しており、前記非磁性母材における前記磁性金属粒子間の中央部の磁性金属元素の含有率が20原子%以下であり、前記磁性金属粒子はそれぞれ前記磁性薄膜の膜厚方向に細長い形状を有し且つそれらの少なくとも一部は前記非磁性下地層と接触し、前記磁性金属粒子の前記磁性薄膜に対する充填率は0.05乃至0.5の範囲内にあり、前記非磁性母材が、一般式M−G(MはSi、Al、Zr、TiおよびBからなる群より選ばれた少なくとも1つ、Gは酸素、窒素および炭素からなる群より選ばれた少なくとも1つ)で表される化合物、または炭素の同素体からなり、かつ前記磁性金属粒子が、一般式M1−M2(M1はCo、Ni、またはこれらの合金、M2はPt、Sm、Cr、Mn、BiおよびAlからなる群より選ばれた少なくとも1つ)で表される合金からなり、前記磁性金属粒子の充填率が前記磁性薄膜の厚さ方向に沿って、その高い部分と低い部分とが交互に現れるように変化していることを特徴とする磁気記録媒体。
  2. 結晶質の非磁性下地層と、前記非磁性下地層上に形成され、複数の磁性金属粒子と非磁性母材とから構成される磁性薄膜とを有する磁気記録媒体において、前記非磁性母材の硬度が前記磁性金属粒子の硬度よりも大きく、前記磁性金属粒子が形状磁気異方性および結晶磁気異方性を有しており、前記非磁性母材における前記磁性金属粒子間の中央部の磁性金属元素の含有率が20原子%以下であり、前記磁性金属粒子はそれぞれ前記磁性薄膜の膜厚方向に細長い形状を有し且つそれらの少なくとも一部は前記非磁性下地層と接触し、前記磁性金属粒子の前記磁性薄膜に対する充填率は0.05乃至0.5の範囲内にあり、前記非磁性母材が、一般式M−G(MはSi、Al、Zr、TiおよびBからなる群より選ばれた少なくとも1つ、Gは酸素、窒素および炭素からなる群より選ばれた少なくとも1つ)で表される化合物、または炭素の同素体からなり、かつ前記磁性金属粒子が、一般式M1−M2(M1はCo、Ni、またはこれらの合金、M2はPt、Sm、Cr、Mn、BiおよびAlからなる群より選ばれた少なくとも1つ)で表される合金からなり、前記磁性金属粒子の充填率が前記非磁性下地層の表面から前記磁性薄膜表面に向かって低くなるように変化していることを特徴とする磁気記録媒体。
  3. 結晶質の非磁性下地層と、前記非磁性下地層上に形成され、複数の磁性金属粒子と非磁性母材とから構成される磁性薄膜とを有する磁気記録媒体において、前記非磁性母材の硬度が前記磁性金属粒子の硬度よりも大きく、前記磁性金属粒子が形状磁気異方性および結晶磁気異方性を有しており、前記非磁性母材における前記磁性金属粒子間の中央部の磁性金属元素の含有率が20原子%以下であり、前記磁性金属粒子はそれぞれ前記磁性薄膜の膜厚方向に細長い形状を有し且つそれらの少なくとも一部は前記非磁性下地層と接触し、前記磁性金属粒子の前記磁性薄膜に対する充填率は0.05乃至0.5の範囲内にあり、前記非磁性母材が、一般式M−G(MはSi、Al、Zr、TiおよびBからなる群より選ばれた少なくとも1つ、Gは酸素、窒素および炭素からなる群より選ばれた少なくとも1つ)で表される化合物、または炭素の同素体からなり、かつ前記磁性金属粒子が、一般式M1−M2(M1はCo、Ni、またはこれらの合金、M2はPt、Sm、Cr、Mn、BiおよびAlからなる群より選ばれた少なくとも1つ)で表される合金からなり、前記磁性金属粒子の充填率が前記非磁性下地層の表面から前記磁性薄膜表面に向かって高くなるように変化していることを特徴とする磁気記録媒体。
  4. 前記磁性金属粒子の中央部における前記非磁性母材の構成元素の含有率が20原子%以下である請求項1ないし3のいずれか1つに記載の磁気記録媒体。
  5. 前記磁性金属粒子の膜面内の平均粒径が、交流消磁したときの磁気クラスターの平均サイズの1/10以下である請求項1ないし3のいずれか1つに記載の磁気記録媒体。
  6. 前記磁性薄膜の電気抵抗率が1Ω・cm以上である請求項1ないし3のいずれか1つに記載の磁気記録媒体。
  7. 隣り合う2つの前記磁性金属粒子の対向面同士を結ぶ線分上であって、前記線分の一端からの距離が前記線分の長さの10%の位置から90%の位置までの間で測定した磁性金属元素の含有率が20原子%以下である請求項1ないし3のいずれか1つに記載の磁気記録媒体。
  8. 前記磁性金属粒子の面内方向における平均粒径は交流消磁がなされたときの磁気クラスターの平均サイズの1/10以下である請求項7記載の磁気記録媒体。
  9. 請求項1ないし3のいずれか1つに記載の磁気記録媒体と、磁界による抵抗変化を利用して前記磁気記録媒体からの信号を再生する磁気ヘッドとを具備した磁気記録再生装置。
  10. 前記磁気記録媒体が前記磁気ヘッドと接触する状態で使用される請求項9記載の磁気記録再生装置。
  11. 前記非磁性母材は前記磁性薄膜の膜厚方向及び面内方向に連続しており、隣り合う2つの前記磁性金属粒子の対向面同士を結ぶ線分上であって、前記線分の一端からの距離が前記線分の長さの10%の位置から90%の位置までの間で測定した磁性金属元素の含有率が20原子%以下である請求項9記載の磁気記録再生装置。
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