JP3785683B2 - 面発光素子 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、発光ダイオード(LED)や垂直キャビティ面発光レーザ(VCSEL)等の面発光素子の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
基板上に量子井戸から成る発光層と、その発光層を挟んで位置させられてその発光層で発生した光を反射する光共振器を構成する一対の反射層とを含む複数の半導体層が積層されて成り、それら複数の半導体層の両面側に設けられた一対の電極間に通電することにより前記発光層で発生した光を前記基板とは反対側の半導体層の表面から取り出す形式の面発光素子が知られている。このような面発光素子にはRC−LED(共鳴空洞発光ダイオード)或いはVCSELと呼ばれるものがあるが、発光層内の電子波と光共振器内の光波が結合し、共振モードのみの光が発光層で発生する所謂キャビティQED効果によって、強指向性および狭線幅の光が射出されることとなるため、結晶表面での全反射がなく高い外部量子効率が得られるという利点がある。例えば、特開平4−167484号公報に記載されている光半導体装置等がそれである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のような面発光素子では、高い外部量子効率が得られる一方で、上述のように射出される光の利得幅(一般に、発光層のピーク波長における利得の80%或いは90%の利得が得られる幅)が狭いという特徴がある。そのため、量子井戸から構成される発光層では、温度に応じてその発光スペクトルが変化させられることから、温度変化が大きい場合には光共振器の共振波長が発光スペクトルの利得幅から外れることが起こり得る。したがって、所望の発光特性が得られる温度範囲が小さいという問題があった。しかも、共振波長は光共振器長の僅かな変動によって大きく変化させられることから、上記のように利得幅が狭いことに起因して製造マージン(すなわち製造時のバラツキの許容範囲)が小さいという問題もあった。
【0004】
そこで、例えば、特開平7−245449号公報等に記載されているように、相互にバンドギャップの異なる、すなわち発光波長の異なる複数の量子井戸によって発光層を構成した面発光素子が提案されている。このようにすれば、各量子井戸からの発光の中心波長が相互に異なることから、それぞれのバンドギャップを適当に選択することにより、それらが合成されて射出される光の利得幅を大きくできて、温度特性が改善されると共に、製造マージンが拡大される。しかも、この技術によれば、複数の量子井戸から発光層が構成されることから、単一の量子井戸から発光層が構成される場合に比較して注入されたキャリアが溢れることが抑制されるため、一層高い発光出力が得られるという利点もある。
【0005】
上記公報においては、発光層を構成する量子井戸の一例として、例えば、厚さがそれぞれ10(nm)のun-In0.22Ga0.78As 、un-In0.23Ga0.77As 、un-In0.24Ga0.76As を、厚さが10(nm)のun-Al0.25Ga0.75As で挟んだ構造や、厚さがそれぞれ8.2(nm) 、8.2(nm) 、6.5(nm) 、5.3(nm) のun-In0.3Ga0.7As を厚さが10(nm)のバリア層の間に介挿した構造等が示されている。しかしながら、本発明者等がこれらの構造について評価を行ったところ、面発光素子から射出される光のスペクトルすなわち発光層での利得スペクトルは、必ずしも各量子井戸の準位に基づいて得られる発光スペクトルを重ね合わせたものにならず、所望の発光スペクトルが得られないことが明らかとなった。これは、量子井戸相互の間隔が小さいことから隣接する量子井戸間の結合によって新たな準位が形成され、その準位に応じた発光スペクトルが得られるためと考えられるが、新たに形成される準位を予測することは極めて困難である。
【0006】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的とするところは、発光スペクトルのピーク波長が相互に異なる複数の量子井戸から成る発光層を備えた面発光素子において、所望の発光スペクトルが得られる発光層を備えた面発光素子を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
斯かる目的を達成するため、本発明の要旨とするところは、バリヤ層によって隔てられ、発光スペクトルのピーク波長が相互に異なる複数の量子井戸から成る発光層と、その発光層を挟んで設けられてその発光層で発生した光を反射させる光共振器を構成する一対の反射層とを含む複数の半導体層が積層されて成り、その発光層で発生した光をそれら複数の半導体層の表面から取り出す形式の面発光素子であって、前記複数の量子井戸が、前記光共振器中における電子のコヒーレント長よりも長い所定間隔を相互に隔てて設けられていることにある。
【0008】
【発明の効果】
このようにすれば、面発光素子は、発光層を構成する複数の量子井戸が、バリヤ層によって隔てられ、光共振器中における電子のコヒーレント長よりも長い所定間隔を相互に隔てて設けられる。そのため、発光スペクトルのピーク波長が異なる複数の量子井戸相互の間隔が電子のコヒーレント長よりも長くされていることから、量子井戸間の結合に基づき新たな準位が生じることが抑制されて、複数の量子井戸個々の発光スペクトルが、それぞれ個々に設けられて単独で発光層を構成する場合の単層発光スペクトルに保たれる。したがって、面発光素子内で発生して射出される光のスペクトルすなわち発光層での利得スペクトルは、個々の量子井戸の準位に応じて発生する光が単純に重ね合わされて合成されたものとなることから、所望の発光スペクトルを合成する複数の単層発光スペクトルにそれぞれ対応する複数の量子井戸を設けることにより、その所望の発光スペクトルを有する発光層を備えた面発光素子を得ることができる。
【0009】
なお、電子のコヒーレント長は、位相等の電子の量子状態が保たれる長さであって、電子が散乱することなく移動し得る距離(平均自由行程)に略等しい値である。
【0010】
【発明の他の態様】
ここで、好適には、前記所定間隔は、前記光共振器の共振波長の1/2 程度の長さに設定されているものである。このようにすれば、発光層を構成する全ての量子井戸が光共振器内で発生する定在波の腹に位置するように構成し得るため、一層高い発光出力が得られることになる。
【0011】
また、好適には、前記所定距離は、前記光共振器中におけるキャリアの拡散長よりも短くされているものである。このようにすれば、バリアを越えたキャリアが拡散によって別の量子井戸に到達し得るため、全ての量子井戸にキャリアが注入されて、一層高い発光出力が得られる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において、各部の寸法比等は必ずしも正確に描かれていない。
【0013】
図1は、本発明の面発光素子の一実施例である面発光型発光ダイオード(以下、単に発光ダイオードという)10の構成を示す図である。図において、発光ダイオード10は、例えば、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition :有機金属化学気相成長)法等のエピタキシャル成長技術によって、基板12上に順次結晶成長させられた基板側反射層14、第1バリア層16、第1活性層18、第2バリア層20、第2活性層22、第3バリア層24、第3活性層26、第4バリア層28、放射面側反射層30、クラッド層32、および電流阻止層34と、基板16の下面および電流阻止層34の上面にそれぞれ固着された下部電極36および上部電極38とから構成されている。
【0014】
上記基板12は、例えば350(μm)程度の厚さのn-GaAs単結晶から成る化合物半導体である。また、基板側反射層14は、例えば70(nm)程度の厚さのn-AlAs単結晶から成る化合物半導体と、例えば60(nm)程度の厚さのn-Al0.2Ga0.8As単結晶から成る化合物半導体とを、前者が基板12側となるように交互に例えば30組積層して構成された所謂n型の分布反射型半導体多層膜反射層(DBR)である。なお、この基板側反射層14を構成する各層の厚さは、第1活性層18乃至第3活性層26で発生する光のピーク波長(個々の光のピーク波長ではなく、後述の合成された光のピーク波長)の 1/4波長程度となるように決定されている。
【0015】
また、第1バリア層16乃至第4バリア層28は、何れもi-Al0.3Ga0.7As単結晶から成る化合物半導体である。各層の厚さは、第1バリア層16および第4バリア層28が、それぞれ55(nm)程度に、第2バリア層20および第3バリア層24が、それぞれ110(nm) 程度とされている。したがって、3つの活性層18、22、26相互の間隔d12、d23は、何れも110(nm) 程度にされている。これらの間隔d12、d23は、後述の合成ピーク波長すなわち共振波長の1/2 波長程度の値である。また、第1活性層18乃至第3活性層26(以下、纏めて活性層18、22、26という)は、何れも、i-GaAs単結晶から成る化合物半導体によって構成された所謂量子井戸である。各層の厚さは、例えば第1活性層18が7.5(nm) 程度、第2活性層22が9.0(nm) 程度、第3活性層26が12.5(nm)程度とされている。そのため、活性層18、22、26の発光スペクトルの常温におけるピーク波長は、それぞれ838(nm) 程度、846(nm) 程度、856(nm) 程度である。本実施例においては、活性層18、22、26が発光層を構成する複数の量子井戸に相当する。
【0016】
また、放射面側反射層30は、前記基板側反射層14と同様に、例えば厚さが70(nm)程度のp-AlAs単結晶から成る化合物半導体と、例えば厚さが60(nm)程度のp-Al0.2Ga0.8As単結晶から成る化合物半導体とが交互に10組積層されて構成されたDBRである。本実施例においては、これら基板側反射層14および放射面側反射層30が一対の反射層に相当し、その間隔すなわち光共振器長は、真空中(すなわち屈折率n=1)における長さに換算した値で例えばL=1260(nm)程度、すなわち後述の合成光スペクトルのピーク波長(=841[nm] )の1.5 倍程度の長さとされている。このため、活性層18、22、26で発生した光は、それら基板側反射層14および放射面側反射層30において繰り返し反射されることとなり、図に示されるように定在波40を形成することとなる。すなわち、基板側反射層14および放射面側反射層30は、発光層で発生した光を繰り返し反射する光共振器を構成する。このとき、光共振器長およびバリア層16乃至28の厚さが前述のように設定されていることから、図に示されるように、活性層18、22、26は全て定在波40の腹に位置する。なお、本実施例においては、光共振器がGaAsおよびAlGaAsから構成されることから、光共振器内におけるキャリア(電子またはホール)が拡散長は0.5(μm)程度、電子のコヒーレント長が50(nm)程度であるため、活性層18、22、26相互の間隔d12、d23(=110[nm] )は、キャリアの拡散長よりも十分に短く、電子のコヒーレント長よりも十分に長い値に設定されている。
【0017】
また、クラッド層32は、例えば厚さが2(μm)程度のp-Al0.2Ga0.8As単結晶から成る化合物半導体であり、電流阻止層34は例えば厚さが1(μm)程度のn-Al0.2Ga0.8As単結晶から成る化合物半導体である。これらクラッド層32および電流阻止層34の図に斜線で示される一部には、p型のドーパントである不純物(例えばZn等)が高濃度で拡散された高濃度拡散領域42が形成されており、その斜線に示される高濃度拡散領域42内においては、クラッド層32の導電性が高められると共に、電流阻止層34の導電型が反転させられてp型半導体にされている。このため、発光ダイオード10には、電流阻止層34が表面44からクラッド層32との境界まで導電型を反転させられた中央部の通電可能領域を通る経路のみで通電可能な電流狭窄構造が形成されている。
【0018】
また、前記下部電極36は、例えば1(μm)程度の厚さであって、例えば基板12の下面全面にその基板12側から順にAu−Ge合金、NiおよびAuが積層形成されたものである。また、上部電極38は、例えば1(μm)程度の厚さであって、電流阻止層34の表面44の中央部の円形領域を除く周縁部にその電流阻止層34側から順にAu−Zn合金およびAuが積層形成されたものである。これら下部電極36および上部電極38は、何れもオーミック電極である。
【0019】
また、上記電流阻止層34の上部電極38の内周側に位置する円形領域には、例えば、直径50 (μm)程度の凹部46が設けられている。前記の通電可能領域はこの凹部46の直下に同様な径寸法で設けられており、光が射出される光取出部48の直径と通電可能領域の直径とは略同様である。なお、この凹部46は、表面44側から不純物を拡散する際に通電可能領域を形成する領域の拡散深さを深くする目的で、例えばエッチング等によって形成されているものである。
【0020】
以上のように構成される発光ダイオード10は、例えば、以下のようにして製造される。先ず、例えばMOCVD法によって基板12上に基板側反射層14乃至電流阻止層34を順次結晶成長させてエピタキシャルウェハを作製する。次いで、電流阻止層34の表面44のうち、中央部の例えば直径 50(μm)程度の円形領域を除く部分にレジストを形成し、例えばアンモニアと過酸化水素水とから成るエッチング液を用いて、表面44側からエッチング処理をする。これにより、電流阻止層34の中央部のみが選択的にエッチングされて前記凹所46が形成される。
【0021】
その後、レジストを除去して、例えば封管拡散法等の熱拡散によってZnの拡散処理を行うことにより、凹所46が形成されている部分はクラッド層32の中間の深さまで、凹所46が形成されていない部分は電流阻止層34の中間の深さまで、それぞれZnがドーピングされ、前記の高濃度拡散領域42が形成される。なお、上記の封管拡散法は、エピタキシャルウェハを拡散ソース(例えばZnAs2 )と共に石英アンプル内に真空封入して、電気炉等で600(℃) 程度の温度で24時間程度加熱するものである。この後、下部電極36および上部電極38を形成し、更に、ダイシングによって個々の発光ダイオードに対応するブロック毎に切断することにより、前記の発光ダイオード10が得られる。なお、発光ダイオード10は、例えば図示しないTO18フラットステム等にダイボンディングされ且つシールされた状態で上部電極38に正電圧を、下部電極36に負電圧をそれぞれ印加して用いられる。
【0022】
ここで、図2は、発光ダイオード10の発光スペクトルを示す図である。図において、井戸数1〜3は下記の表1のそれぞれに対応し、実線で示される『井戸数3』と表示されているものが発光ダイオード10の発光スペクトルを、一点鎖線で示される『井戸数2』は活性層が下記の2つ設けられた他の実施例を、破線で示される『井戸数1』は活性層が1つだけ設けられた比較例をそれぞれ示す。図から明らかなように、比較例の発光ダイオードでは、ピークを1とした相対利得が80%の波長幅Δλが、Δλ1 =12(nm)程度に過ぎないのに対し、本実施例の発光ダイオード10では、△λ3 =17(nm)程度と大きい利得幅が得られる。そのため、下記表に示されるように、その80%以上の利得が得られる温度範囲が比較例では45 (℃) 程度に過ぎないのに対して、発光ダイオード10では62 (℃) 程度と広くなる。
【0023】
【表1】
Figure 0003785683
【0024】
すなわち、本実施例の発光ダイオード10では、下部電極36および上部電極38間に電圧を印加されることにより、前記の通電可能領域を通る経路で発光ダイオード10に上側から下側に向かって電流が流れ、これによって活性層18、22、26が励起されて発光させられる。このとき、3つの量子井戸から成る活性層18、22、26によって構成された発光層は、一対の反射層14、30によって形成される光共振器(微小共振器)内に設けられていることから、それら活性層18、22、26で発生し得るのは、共振条件を満足する波長の発光スペクトル幅が狭い光のみとなる。ところが、発光ダイオード10の発光層を構成する活性層18、22、26は、相互に異なる厚さで設けられた量子井戸であることから、上記表に示されるようにそれぞれを単独で発光層として用いた場合の発光ピーク(単層発光ピーク)が相互に異なるものとなって、射出される発光スペクトルは、それらが重ね合わされた光となる。そのため、図2および表1に示されるように、単層の場合に比較して広い利得幅が得られるのである。なお、このとき、合成された光のスペクトルのピーク波長(合成ピーク波長)すなわち利得のピーク波長は、例えば841(nm) 程度である。
【0025】
この場合において、本実施例では、活性層18、22、26の相互の間隔d12、d23が何れも110(nm) 程度とされて、その光学的長さが共振波長すなわち合成ピーク波長の1/2 波長程度とされていることから、その相互の間隔d12、d23が光共振器内における電子のコヒーレント長よりも十分に長くなって、量子井戸間の結合による新たな準位の形成が抑制される。そのため、各活性層18、22、26の発光スペクトルがそれぞれ本来の単層発光スペクトルに保たれることから、発光ダイオード10の利得のスペクトルは、上記のような個々の活性層18、22、26の単層発光スペクトルから容易に予測されるそれらが単純に重ね合わされて合成されたものとなる。したがって、所望の発光スペクトルを合成する複数の単層発光スペクトルにそれぞれ対応する複数の活性層18、22、26を設けることにより、その所望の利得スペクトル(発光スペクトル)を有する発光ダイオード10を得ることができる。すなわち、活性層18、22、26の組成および厚さは、図2に実線で示される発光スペクトルが得られるように設定されているのである。なお、本実施例においては、活性層18、22、26がGaAsから構成され、バリア層16、20、24、28がAl0.3Ga0.7Asから構成されていることから、光共振器内における電子のコヒーレント長は50(nm)程度である。
【0026】
なお、井戸数2の場合にも、発光ダイオード10と同様に活性層相互の間隔が電子のコヒーレント長よりも長くされている場合には、2つの単層発光スペクトルが重ね合わされたスペクトルの光が射出されることから、図2および表1から明らかなように、発光ダイオード10程ではないが、Δλ2 =14(nm)程度の比較的広い利得幅が得られて、温度幅も53 (℃) 程度と広くなる。
【0027】
しかも、本実施例においては、活性層18、22、26相互の間隔d12、d23は、光共振器の共振波長の1/2 程度の長さに設定されている。このため、図1に示されるように、発光層を構成する全ての量子井戸(活性層18、22、26)が定在波40の腹に位置させられることとなって、一層高い発光出力が得られる。
【0028】
また、本実施例においては、上記の活性層18、22、26相互の間隔d12、d23は、光共振器中におけるキャリアの拡散長(本実施例においては0.5[μm]程度)よりも短くされているものである。そのため、バリアを越えたキャリアが拡散によって別の量子井戸に到達し得ることから、全ての量子井戸(活性層18、22、26)にキャリアが注入されて、一層高い発光出力が得られる。
【0029】
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の説明において、前述の実施例と共通する部分は省略する。
【0030】
図3は、他の実施例の面発光素子の要部である光共振器54の構成を示す図である。図において、光共振器54は、図示しない基板上に、基板側反射層56、第1バリア層58、第1活性層60、第2バリア層62、第2活性層64、第3バリア層66、第3活性層68、第4バリア層70、第4活性層72、第5バリア層74、放射面側反射層76が順次結晶成長させられて構成されている。この放射面側反射層76の上側には、例えば、前述の発光ダイオード10等と同様なクラッド層32や電流阻止層34等が設けられる。
【0031】
上記の基板側反射層56は、例えば厚さが70(nm)程度のn-AlAs単結晶および厚さが60(nm)程度のn-Al0.2Ga0.8As単結晶が交互に例えば30組積層されたものであるが、図においては、第1バリア層58側の1組のみを示している。また、放射面側反射層76は、それぞれ厚さが70(nm)、60(nm)程度のp-AlAs単結晶およびp-Al0.2Ga0.8As単結晶が交互に例えば10組積層されたものであり、基板側反射層56と同様に第5バリア層74側の1組のみを示している。これらは、前述の実施例の基板側反射層14および放射面側反射層30と同様に、 1/4波長の厚さの半導体層が積層されたDBRである。
【0032】
また、第1バリア層58は、例えば、厚さが50(nm)程度のi-Al0.3 Ga0.7 As単結晶から成る化合物半導体である。また、第1活性層60および第2活性層64は、例えば厚さが11.1(nm)程度のi-GaAs単結晶から成る化合物半導体であり、第3活性層68および第4活性層72は、例えば厚さが8.5(nm) 程度のi-GaAs単結晶から成る化合物半導体である。本実施例においては、これら活性層60、64、68、72が発光層を構成する。これら第1活性層60乃至第4活性層72は、何れも所謂量子井戸であり、それぞれの発光のピーク波長(単層ピーク波長)は、854(nm) 程度、854(nm) 程度、844(nm) 程度、844(nm) 程度となることから、これらが合成されて得られる光共振器54の発光スペクトルの合成ピーク波長は、846(nm) 程度である。
【0033】
また、第2バリア層62および第4バリア層70は、例えば、厚さがそれぞれ10(nm)程度のi-Al0.3Ga0.7As単結晶から成る化合物半導体であり、第3バリア層66は、例えば厚さが100(nm) 程度のi-Al0.3Ga0.7As単結晶から成る化合物半導体であり、第5バリア層74は、第1バリア層58と同様に例えば厚さが50(nm)程度のi-Al0.3Ga0.7As単結晶から成る化合物半導体である。したがって、光共振器長が真空中の長さに換算した値で846(nm) 程度、すなわち合成ピーク波長程度となることから、活性層60、64、68、72で発生した光は反射層56および76の間で繰り返し反射されて、定在波78を形成する。このとき、第2バリア層62および第4バリア層70の厚さが10(nm)程度と電子のコヒーレント長よりも短いことから、活性層60と64、活性層68と72はそれぞれ結合させれて、活性層グループ1(活性層60、64)と活性層グループ2(活性層68、72)を構成しているが、第1バリア層58および第5バリア層74の厚さが合成ピーク波長の1/4 波長程度の長さとされていると共に、活性層グループ1と活性層グループ2との間隔dが1/2 波長程度の長さにされていることから、第1活性層60乃至第4活性層72は、何れも定在波78の腹の近傍に位置する。なお、上記のそれぞれの値から明らかなように、本実施例においては、活性層グループ相互の間隔dがキャリアの拡散長と略同程度で、且つ電子のコヒーレント長よりも長くなっている。
【0034】
したがって、本実施例においても、前述の実施例と同様に、活性層グループ1、活性層グループ2を構成する量子井戸間の結合が抑制されて、それらの準位延いては発光スペクトルが単層で発光層を構成する場合と同様に保たれることから、所望の合成スペクトルを有する光共振器54を容易に得ることができる。
【0035】
以上、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明したが、本発明は更に別の態様でも実施される。
【0036】
例えば、実施例においては、量子井戸から成る3つの活性層18乃至26或いは4つの活性層60乃至72によって発光層が構成される場合について説明したが、量子井戸から成る活性層の数は2つ以上の範囲で、所望の利得スペクトルすなわち発光スペクトルに応じて適宜変更される。
【0037】
また、実施例においては、本発明が発光ダイオード10に適用された場合について説明したが、例えばVCSEL等の他の面発光素子の光共振器にも本発明は同様に適用される。
【0038】
また、活性層相互の間隔は、実施例で示されるような共振波長の1/2 波長程度の長さに限られず、電子のコヒーレント長よりも長い範囲で適宜変更される。但し、可及的に高い発光効率を得るためには、キャリアの拡散長よりも短くされることが好ましく、共振波長の1/2 波長程度とされることが一層好ましい。
【0039】
また、実施例においては、活性層18等がGaAsから構成されたAlGaAs系の発光ダイオード10に本発明が適用された場合について説明したが、各半導体層が GaAsP単結晶や InGaAsP単結晶等の化合物半導体から構成される場合にも、本発明は同様に適用される。
【0040】
また、実施例においては、半導体多層膜反射層から成る基板側反射層14、56および放射面側反射層30、76によって一対の反射層を構成したが、誘電体薄膜や金属薄膜等から一対の反射層を構成してもよい。
【0041】
また、実施例においては、表面44の中央部に設けられた光取出部48のみから光を取り出す点光源用の発光ダイオード10に本発明が適用された場合を説明したが、表面44の略全面から光を取り出す全面発光型の発光ダイオード等にも本発明は同様に適用される。
【0042】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の面発光素子の一実施例である発光ダイオードの構成を示す図である。
【図2】図2の発光ダイオードの利得スペクトルを井戸数が異なる他の発光ダイオードと比較して示す図である。
【図3】本発明の他の実施例の面発光素子の要部である光共振器の構成を示す図である。
【符号の説明】
10:発光ダイオード(面発光素子)
{14:基板側反射層、30:放射面側反射層}(一対の反射層)
{18:第1活性層、22:第2活性層、26:第3活性層}(複数の量子井戸から成る発光層)

Claims (3)

  1. バリヤ層によって隔てられ、発光スペクトルのピーク波長が相互に異なる複数の量子井戸から成る発光層と、該発光層を挟んで設けられて該発光層で発生した光を反射させる光共振器を構成する一対の反射層とを含む複数の半導体層が積層されて成り、該発光層で発生した光を該複数の半導体層の表面から取り出す形式の面発光素子であって、
    前記複数の量子井戸が、前記光共振器中における電子のコヒーレント長よりも長い所定間隔を相互に隔てて設けられていることを特徴とする面発光素子。
  2. 前記所定間隔は、前記光共振器の共振波長の1/2 程度の長さに設定されているものである請求項1の面発光素子。
  3. 前記所定間隔は、前記光共振器中におけるキャリアの拡散長よりも短くされているものである請求項1の面発光素子。
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