JP3785560B2 - 磁気テープカートリッジ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気テープカートリッジに関し、特にカートリッジケース内に磁気テープが巻装された単一のリールを回転可能に収容してなる磁気テープカートリッジにおいて、上記リールを不使用時に回転制止状態とするリール回転制止手段の構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、コンピュータ等の外部記憶装置に用いられる記録媒体として使用されている磁気テープカートリッジには、単一のリールに磁気テープを巻装し、このリールをカートリッジケース内に回転可能に収容したタイプのものが知られている。この磁気テープはコンピュータ等のデータ保存用として用いられ、重要な情報が記憶されているため、テープジャミング等のトラブルが発生しないように、また保管時等の不使用時には不用意に磁気テープが引き出されないように、上記リールの回転を拘束するリール回転制止手段が設置されている。
【0003】
上記リール回転制止手段は、リールの一部に係合してその回転を拘束する制止部材を備え、カートリッジを外部記憶装置等のドライブに装填した際には、上記制止部材をドライブ側回転駆動手段によるリールのチャッキング動作に応じて制止状態を解除するように設けている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかして、前述のリール回転制止手段の動作の信頼性向上、カートリッジケース内への塵埃の侵入防止等の要求から、このリール回転制止手段をリールの回転を拘束する制止部材と、この制止部材を制止方向に付勢する付勢部材と、ドライブ側回転駆動手段のチャッキング動作に応じて移動し前記制止部材を解除方向に移動させる解除部材とに分離した構造に設けることが考えられる。
【0005】
つまり、不使用状態においては、制止部材によってリールが不用意に回転しないように拘束して磁気テープの引き出しが行われないようにしているが、カートリッジをドライブに装填して回転駆動手段によってリールのチャッキングが行われると、その動作に連係して解除部材が移動して前記制止部材を解除作動する。この状態においてはリールは回転可能となり、磁気テープの引き出し及び巻き取りが行える。
【0006】
そして、上記のような機構において、前記解除部材を前記制止部材に当接する本体部と、前記リールに設けた挿通孔を通して先端が前記ドライブ側回転駆動手段の一部に当接可能な脚部とを備えた構成とし、ドライブ側回転駆動手段のチャッキング動作時に解除部材の脚部を押圧してこの解除部材を解除作動するように設けることが構造の簡素化を図ることなどで有利であるが、この解除部材は高剛性が要求され、例えば金属プレートの打ち抜き、曲げ加工で形成することが考えられるが、前記本体部と脚部を精度よく形成することが困難である。特に曲げ加工で形成する脚部の高さ、本体部に対する脚部の角度等の精度確保が難しく、脚部が挿通孔を摺動するについて傾いて片当たりが発生したりする。
【0007】
また、上記脚部の先端をドライブ側回転駆動手段の駆動ギヤに接触させるようにすると、金属製のギヤとの接触に伴う摩耗、当接時の引っ掛かりが発生する恐れもある。
【0008】
本発明は上記点に鑑みなされたもので、リール回転制止手段の解除部材の寸法精度を高めるようにした磁気テープカートリッジを提供せんとするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決した本発明の磁気テープカートリッジは、磁気テープを巻装した単一のリールをカートリッジケース内に回転可能に収容し、使用時に前記リールの回転を許容し、不使用時に前記リールの回転を拘束するリール回転制止手段を備えたものにおいて、前記リール回転制止手段は、前記リールに対して接離可能に移動してリールの回転を拘束する制止部材と、該制止部材を制止方向に付勢する付勢部材と、前記リールと一体に回転してドライブ側回転駆動手段のチャッキング動作に応じて移動し前記制止部材を解除方向に移動させる解除部材とを有し、前記解除部材は前記制止部材に当接する本体部と、前記リールに設けた挿通孔を通して先端が前記ドライブ側回転駆動手段の一部に当接可能な脚部とを備え、前記本体部を金属製とする一方、前記脚部を別体に形成し前記本体部に固着してなることを特徴とするものである。
【0010】
前記解除部材の脚部は、樹脂成形品又は金属加工品で形成するのが好適であるが、少なくとも先端部を金属製とするのが望ましい。その際、脚部の先端角部にはエッジが形成されないように設ける。
【0011】
【発明の効果】
上記のような本発明によれば、解除部材の本体部を金属製とする一方、前記脚部を別体に形成し前記本体部に固着したことにより、解除部材の寸法精度が向上すると共に剛性が向上してその撓み変形が低減し、脚部の挿通孔での摺動も確保でき、解除部材の移動が安定して行えることに伴って制止部材を所定の移動量で確実に解除作動させることができ、リール回転制止手段の動作信頼性を確保することができる。
【0012】
また、脚部の少なくとも先端部を金属製とすると、この脚部先端への押圧作動に対する耐久性が向上する。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面に示す実施の形態に基づいて本発明を詳細に説明する。図1はこの実施の形態における磁気テープカートリッジの不使用状態における断面図、図2は要部の分解斜視図、図3は使用状態における要部断面図、図4は組込み状態の解除部材の平面図である。
【0014】
磁気テープカートリッジ1は、単一のリール2に磁気テープ(図示省略)を巻装し、上ケース31と中心部に開口32aが設けられた下ケース32とがビス等により締結されてなるカートリッジケース3内に、上記リール2を回動可能に収容して構成されている。また、上記磁気テープカートリッジ1は、使用時に前記リール2の回転を許容し、不使用時に前記リール2の回転を拘束するリール回転制止手段10を備えている。
【0015】
前記リール2は、磁気テープが外周に巻回される有底円筒状のリールハブ21と、このリールハブ21の上下端外周からそれぞれ径方向に円盤状に張り出した下フランジ部22及び上フランジ部23とからなり、リールハブ21と下フランジ部22とが合成樹脂により一体成形され、上フランジ部23と例えば超音波溶着により結合されている。上記リールハブ21は中心側下部が底壁21aにより閉じられ、該底壁21aの下面外周部にはリール2を回転駆動するリールギヤ24が環状に刻設され、このリールギヤ24より内周側にはマグネット式吸引用の環状金属板によるリールプレート25が取り付けられる。そして、上記リール2のリールギヤ24及びリールプレート25がカートリッジケース3の底面の開口32aに臨むように配置されている。なお、リール2は後述の付勢部材5により下方に付勢される。
【0016】
また、ドライブ側回転駆動手段11は、回転シャフト12の上端面に円環状の駆動ギヤ13とマグネット(図示せず)を備え、そのチャッキング動作は図示せぬドライブ側のバケットに装填された磁気テープカートリッジ1が回転シャフト12に対して下降し、駆動ギヤ13が前記リールギヤ24に噛合すると共に、マグネットにより上記リールプレート25を吸引して噛合状態を保持する。
【0017】
次に、前記リール回転制止手段10の機構を説明する。このリール回転制止手段10は、前記リール2に対して接離可能に上下方向に移動する制止部材4と、該制止部材4を制止方向に付勢する付勢部材5と、前記制止部材4を解除方向に移動させる解除部材6とを有している。
【0018】
前記リール2の底壁21aには、前記リールギヤ24の部分を上下方向に貫通する3個の挿通孔26が円周上で等間隔に配設され、さらに、底壁21aの上面には上記挿通孔26と異なる位相位置に3組6個の係止突起27が円周上で等間隔に立設され、この係止突起27の先端部はギヤ歯形状に形成されている。なお、上記挿通孔26及び係止突起27は3個或いは3組以上配置してもよく、係止突起27の先端部は単一のギヤ歯形状としてもよい。図2に示すリール2は、底壁21aの部分のみ切除した状態で示している。
【0019】
前記制止部材4は、円盤部41が前記リール2のリールハブ21内にその底壁21aと対向して配置され、この円盤部41の下面外周部には円環状に制止用ギヤ42が刻設され、この制止用ギヤ42には前記係止突起27の先端部が噛合可能である。また、前記円盤部41の下面中心部は凸面状に突出形成され、後述の解除部材6の本体部61の上面中心部に圧接する。
【0020】
さらに、前記制止部材4の円盤部41の上面には突起部44が上方に延びて形成され、この突起部44には上下方向に延びる十字形状の係止溝45が設けられている。一方、カートリッジケース3の上ケース31の内面には上記係止溝45に挿入される回り止め突起33が立設されている。そして、係止溝45と回り止め突起33の係合で、制止部材4が回転しない状態で上下方向に移動可能に設置されている。なお、上記係止溝45は一文字状に設けてもよい。
【0021】
前記制止部材4の突起部44より外周側の円盤部41上面と上ケース31の回り止め突起33の外周側内面との間にはコイルスプリングによる付勢部材5が縮装されて、制止部材4を下方に制止用ギヤ42と係止突起27とが係合する制止方向に付勢している。
【0022】
また、前記解除部材6は、前記制止部材4とリールハブ21の底壁21aとの間に上下移動可能に介装され、略三角形状の板状本体部61の各頂点近傍下面には上下方向に延びる円柱状の脚部63が設けられている。上記本体部61は金属製である。
【0023】
また、上記脚部63は金属加工品又は樹脂成形品で形成され、図5に示すように、先端角部にはエッジが形成されないように面取り形状に設けられる。この脚部63の上端部には棒状ネジによる取付部63aが設けられ、該取付部63aが前記本体部61の各頂部に形成されたネジ孔61aに螺合されて固着されている。
【0024】
前記解除部材6の各脚部63は、前記リール2の底壁21aに開口された挿通孔26にそれぞれ出没移動可能に挿通され、その先端はリール2下面のリールギヤ24の歯部に臨んで位置する。その際、前記係止突起27は各脚部63の間で本体部61の外側に位置する。なお、上記脚部63は角柱状、楕円柱状等に形成してもよい。
【0025】
前記解除部材6の最下降位置(図1)では、脚部63の下端面はリールギヤ24の略歯先位置となり、上記リールギヤ24にドライブ側回転駆動手段11のチャッキング動作により駆動ギヤ13が噛合するのに応じて解除部材6が押圧され所定のストローク量で押し上げられるようになっている(図3)。また、この解除部材6は、脚部63の挿通孔26への嵌合によりリール2と一体に回転する。
【0026】
なお、前記リール2には、解除部材6の脚部63を挿通孔26に挿入する際に、解除部材6の一部を挿入方向に案内するガイド部材28が設置されている(図4参照)。前記ガイド部材28は、前記挿通孔26の近傍におけるリール2のリールハブ21の内壁に、前記解除部材6の略三角形状の本体部61の各頂部の両角部を案内する上下方向(脚部63の挿入方向)に延びる2つのガイドリブで形成されている。
【0027】
また、図6は前記解除部材6の脚部63の本体部61への固着構造の他の実施形態を示している。図6(A)では、樹脂製脚部63の上端部にはスナップ状の取付部63bが一体成形され、該取付部63bが前記本体部61の各頂部に形成された段付き取付孔61bに挿入係止されて固着される。また、図6(B)では、樹脂製脚部63の上端部には金属クリップ状の取付部63cがインサート成形で設けられ、該取付部63cが前記本体部61の各頂部に形成された取付孔61cに挿入係止されて固着される。
【0028】
その他、上記本体部61への脚部63の固着は、圧入、かしめ(熱、溶着)、焼きばめなどの公知の方法が採用可能である。なお、前記脚部63における取付部63a〜63cは、金属製脚部では切削加工で又は別部品を固着して形成し、樹脂製脚部では樹脂製取付部を一体成形で設けるか溶着等で固着し、又は、金属製取付部をインサート成形で設けるのが好適である。
【0029】
次に、図7は、樹脂製脚部63の場合に、その先端部の前記駆動ギヤ13との接触面に金属材63dを固着したものであり、金属製の駆動ギヤ13との接触における耐摩耗性を向上している。上記金属材63dは、金属板(金属箔)の貼着、インサート成形等により設けられる。
【0030】
前記リール回転制止手段10の作用を説明すれば、図1は磁気テープカートリッジ1の保管状態等の不使用時であり、この状態では、付勢部材5の付勢力によって制止部材4、解除部材6並びにリール2はカートリッジケース3の下ケース32側に移動しており、下ケース32中心部の開口32aはリール2によって閉塞される。解除部材6は下面がリールハブ21の底壁21a上面に当接した最下降状態にあり、その脚部63は先端部がリールギヤ24の歯先位置に一致するように突出しており、解除部材6の上面に当接している制止部材4も下降位置にあり、その制止用ギヤ42にリール2の係止突起27の先端部が係合してリール2の不使用時における回転が拘束され、磁気テープの引き出しを阻止する。
【0031】
一方、磁気テープカートリッジ1をドライブに装填した図3のカートリッジ使用時は、ドライブ側回転駆動手段11の回転シャフト12がリール2の底面に対して接近し、チャッキング動作によって駆動ギヤ13がリールギヤ24に噛合しリール2を若干上方に移動させて保持すると、上記駆動ギヤ13の歯先が解除部材6の脚部63の先端に当接してこれを押し上げる。これに伴い、解除部材6が付勢部材5の付勢力に抗して上方へ移動し、この解除部材6と一体に制止部材4も上方の解除方向へ移動する。これにより制止用ギヤ42と係止突起27の係合が解除され、リール2が回転自在とされる。そして、記録再生装置のドライブによって磁気テープが引き出され又は巻き取りが行われる。
【0032】
上記解除状態においては、解除部材6は先端の脚部63が駆動ギヤ13によって上向きに押圧される一方、制止部材4を介して付勢部材5の付勢力が下向きに作用し、本体部61の撓み変形が発生しやすいが、この本体部61を金属製としていることで撓み変形が小さくなり、脚部63も別部材で精度よく取り付けることができ挿通孔26に片当たりすることなく、その出没移動が直線的に安定して行え、制止部材4を所期のストローク量で移動させて制止用ギヤ41と係止突起27との係合を確実に解除できる。また、解除部材6の厚みを薄くすることが可能で、移動のストローク量を十分に確保でき、しかも、脚部63と駆動ギヤ13との当接がスムーズに行えエッジ部に引っ掛かることがない。
【0033】
なお、前記駆動ギヤ13は金属製で、その歯先が先鋭に形成されていると上記脚部63の先端との当接において、脚部63の摩耗により耐久性の点で不利となることから、図8及び図9に示すように、駆動ギヤ13の歯先エッジ部を曲面に形成するのが好ましい。
【0034】
図8及び図9は、駆動ギヤ13の金属加工がしやすい形状として、駆動ギヤ13の歯先部13aは、外周部では先端が平坦で内周側では先端が尖ると共に高さが低くなり、歯の側面角度が両側で異なり、歯溝部13bが広く形成されているが、図9(A)の形態では、先鋭となる内周側の歯先部13a先端をR面の面取りによる曲面に設けて、この駆動ギヤ13と噛合するリールギヤ24及び前記解除部材6の脚部63先端に対する当接におけるダメージを軽減している。
【0035】
同様に図9(B)の形態では、歯先部13aの外周側の平坦部先端についても内周側と同様にR面の面取りによる曲面に設けた例である。
【0036】
さらに、前記リール2に形成するリールギヤ24についても、上記の駆動ギヤ13と同様のギヤ形状の場合には、同様に歯先先端をR面の面取り形状による曲面に設けてもよい。
【0037】
また、図10及び図11は前記リールギヤ24のギヤ形状例を示すものであり、歯先部24aの頂部を内外周共に平坦な平面で形成し、先鋭部が形成されないようにしている。このリールギヤ24の歯の側面角度は両側で異なり、歯溝部24bが広く且つ深く形成され、歯先部24aの平坦面は内外周で略同じ幅に形成されている。これにより、樹脂成形品によるリールギヤ24の強度が増大し、金属製の駆動ギヤ13との噛合における歯欠けの発生を防止できる。なお、駆動ギヤ13についても、上記のような歯先部の頂部を平坦とした形状に設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一つの実施の形態による磁気テープカートリッジの不使用状態における断面正面図
【図2】図1の磁気テープカートリッジの要部の分解斜視図
【図3】図1の磁気テープカートリッジの使用状態における要部断面図
【図4】図3において解除部材の上面と制止部材の下面との間で切断した要部平面図
【図5】解除部材の脚部固着構造を示す要部断面側面図
【図6】他の実施の形態における解除部材の脚部固着構造を示す要部断面側面図
【図7】他の実施の形態における解除部材の脚部先端部を示す断面図
【図8】駆動ギヤの要部平面図
【図9】図8の歯先形状例をそれぞれ示す斜視図
【図10】リールギヤを示すリールの要部底面図
【図11】リールギヤを示すリールの要部断面正面図
【符号の説明】
1 磁気テープカートリッジ
2 リール
3 カートリッジケース
4 制止部材
5 付勢部材
6 解除部材
10 リール回転制止手段
11 ドライブ側回転駆動手段
12 回転シャフト
13 駆動ギヤ
21 リールハブ
24 リールギヤ
26 挿通孔
27 係止突起
42 制止用ギヤ
61 本体部
63 脚部
63a〜63c 取付部
Claims (2)
- 磁気テープを巻装した単一のリールをカートリッジケース内に回転可能に収容し、使用時に前記リールの回転を許容し、不使用時に前記リールの回転を拘束するリール回転制止手段を備えた磁気テープカートリッジにおいて、
前記リール回転制止手段は、前記リールに対して接離可能に移動してリールの回転を拘束する制止部材と、該制止部材を制止方向に付勢する付勢部材と、前記リールと一体に回転してドライブ側回転駆動手段のチャッキング動作に応じて移動し前記制止部材を解除方向に移動させる解除部材とを有し、
前記解除部材は前記制止部材に当接する本体部と、前記リールに設けた挿通孔を通して先端が前記ドライブ側回転駆動手段の一部に当接可能な脚部とを備え、前記本体部を金属製とする一方、前記脚部を別体に形成し前記本体部に固着してなることを特徴とする磁気テープカートリッジ。 - 前記解除部材の脚部の少なくとも先端部を金属製としたことを特徴とする請求項1に記載の磁気テープカートリッジ。
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