JP3785316B2 - プーリユニットの取付け構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、一方向クラッチを備えたプーリユニットにおいて、このプーリユニットを補機(特にオルタネータ)へ取付けるための取付け構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に自動車エンジンに付設される各種の補機は、自動車エンジンのクランクシャフトによりベルトを介して駆動される構造となっている。ここで補機のうち、例えばオルタネータの場合、クランクシャフトの回転数が低下すると発電能力も低下することになる。
【0003】
そこで、オルタネータに付設するプーリユニットに一方向クラッチを内臓させることで、クランクシャフトの回転数が低下した場合には、オルタネータのロータの回転数を慣性力により継続させて発電効率を維持するようにした技術がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで近年、各技術分野で装置全体の小型化が望まれている。しかし、上記プーリユニットでは一方向クラッチを内臓するため、軸心方向の幅がソリッドプーリに比べて大きくなる。したがって、このようなプーリユニットを例えばオルタネータに付設した場合、装置全体の軸心方向の幅が大きくなってしまっていた。
【0005】
そこで本発明は、上記課題を解決し得るプーリユニットの取付け構造の提供を目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1のプーリユニットの取付け構造は、エンジンからの駆動力が伝達される補機の駆動軸に連結する軸体部が設けられ、この軸体部に対して、一方向クラッチおよびその側方に配置した転がり軸受を介してプーリが相対回転可能に設けられたプーリユニットにおいて、このプーリユニットを、前記補機に対して取付けるための取付け構造であって、前記駆動軸の外周に配置される補機本体のプーリユニット側の端部における駆動軸周りの内周に挿入凹所が形成され、この挿入凹所は、軸心方向奥側に位置する小径凹部と、小径凹部より軸心方向外側に位置する大径凹部とが径方向に沿った段付き面を介して環状に設けられた構成となっており、前記プーリユニットは、補機本体側の端部が前記挿入凹所に対して挿入され、前記小径凹部、段付き面および大径凹部と、前記プーリユニットの補機本体側の端部との間に非接触密封用の微小隙間が形成されている。
【0007】
上記構成のように、補機本体のプーリユニット側端部の挿入凹所に、プーリユニットの補機本体側の端部が挿入されることにより、補機本体のプーリユニット側の端部と、プーリユニットの補機本体側の端部とが軸心方向で重なるから、装置全体の軸心方向の幅を小さくし、従来のこの種の取付け構造に比べて省スペース化を実現する。
【0008】
また、駆動軸の外周に配置される補機本体のプーリユニット側の端部の挿入凹所の小径凹部、段付き面および大径凹部とプーリユニットの補機本体側の端部との間に非接触密封用の微小間隙を形成するように、補機本体のプーリユニット側の端部の挿入凹所にプーリユニット側の端部が挿入される構成となっているから、プーリがエンジンからの駆動力によって回転した場合に、この微小間隙によってラビリンス作用が働き、外部からこの微小間隙に水やその他の異物が浸入するのを防止し、従って、プーリユニットあるいは補機の軸受の寿命が延長する。
【0009】
本発明の第2のプーリユニット取付け構造は、エンジンからの駆動力が伝達される補機の駆動軸に連結する軸体部が設けられ、この軸体部に対して、一方向クラッチおよびその側方に配置した転がり軸受を介してプーリが相対回転可能に設けられたプーリユニットにおいて、このプーリユニットを、前記補機に対して取付けるための取付け構造であって、前記駆動軸の外周に配置される補機本体のプーリユニット側の端部と、前記プーリユニットの補機本体側の端部とのうちの一方に、対向する端部に軸方向に向けて突出する環状の凸部が設けられ、前記補記本体のプーリユニット側の端部と前記プーリユニットの補機本体側の端部とのうちの他方に、前記凸部に嵌合する凹部が設けられ、前記凸部と凹部とは非接触密封用の微小間隙を介して嵌合するとともに、凸部および凹部の外周面は軸心方向に対して傾斜した傾斜面とされている。
【0010】
本発明の第2のプーリユニット取付け構造は、凸部および凹部の外周面を軸心方向に対して傾斜した傾斜面とすることにより、確実に水やその他の異物が浸入するのを防止し、従って、プーリユニットあるいは補機の軸受の寿命が延長する。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて説明する。本発明の実施の形態に係るプーリユニット1は、エンジンの補機に付設されるもので、この補機と称されるものには、例えば自動車のオルタネータ2、エアコンディショナー用コンプレッサ、ウォーターポンプ、冷却ファンなどがある。そしてこの場合、特にオルタネータ2を具体例として説明することとする。
【0012】
まず、図1に基づいて本発明の実施の第一形態に係るプーリユニット1を説明すると、これは、エンジンの駆動部とオルタネータ2の発電用回転軸(駆動軸に相当する)3とを連結する部分に配置されるもので、このプーリユニット1は、オルタネータ本体4から側方に突出した発電用回転軸3の突出部に外嵌する中空の軸体部(以下「ロータ軸」という)5を有している。
【0013】
また、このロータ軸5に対し、公知の一方向クラッチ6およびその両側方、すなわちオルタネータ2側に配置した玉軸受7、すなわち深溝玉軸受およびこの玉軸受7の反対側に配置したころ軸受8(何れも転がり軸受の一例)を介して、エンジンからの動力が伝達される動力伝達用のベルト(Vリブドベルト)9を巻回するプーリ10を有している。そして、前記一方向クラッチ6により、前記プーリ10とロータ軸5とは互いに相対回転可能に構成されている。なお、前記プーリ10の外周面には、ベルト9内周面の凹凸が嵌合する波状の溝が形成されている。
【0014】
前記一方向クラッチ6は、プーリ10とロータ軸5とが対向する環状空間11の軸心方向中央位置に配置され、転動体としてのころ12の内輪軌道はロータ軸5の外周面で、外輪軌道はプーリ10の内周面とされる。また、一方向クラッチ6は、合成樹脂製の環状のころ保持器13、前記ころ12を、図示しない楔状空間の狭い側(ロック側)へ付勢する機能を有する楕円形のコイルばね14を有している。
【0015】
前記ころ軸受8は、ころ8aの内輪軌道をロータ軸5の外周面とし、外輪軌道をプーリ10の内周面とし、保持器15を有している。
【0016】
前記玉軸受7は玉16の内輪軌道をロータ軸5の外周面とし、外輪軌道をプーリ10の内周面とし、保持器17を有している。
【0017】
そして、ころ軸受8および玉軸受7のそれぞれの軸心方向26外側に、前記環状空間11をシールするシール部材18が装着され、これらシール部材18は、環状芯金19とその外側に被着した弾性体20からなり、この弾性体20のラジアル方向一端側がプーリ10の内径面に固着され、他端側がシールリップ21とされてロータ軸5の外周面に接触した構成となっている。
【0018】
前記ロータ軸5の中心孔22の自由端側に、ロータ軸5を回転させるための工具(例えば六角レンチ)が嵌合する操作溝23が形成され、また中心孔22の途中に、発電用回転軸3の途中に形成した雄ねじ部24が螺合する雌ねじ部25が形成されている。
【0019】
本発明の実施の第一形態では、前記オルタネータ本体4のプーリユニット1側の端部とプーリユニット1のオルタネータ本体4側の端部(以下双方ともに単に「端部」と称する)とが軸心方向26で重なるように、オルタネータ本体4の端部内周側に挿入凹所30が形成されている。この挿入凹所30は、奥側すなわちオルタネータ本体4の玉軸受40側の小径凹部27およびプーリユニット1側の大径凹部28が段付き面29を介して環状に成る。そして、プーリユニット1の端部がこの挿入凹所30に挿入されるよう構成されている。
【0020】
前記オルタネータ本体4の玉軸受40は、オルタネータ本体4に嵌着する外輪部材41、発電用回転軸3に嵌着する内輪部材42、転動体としての玉43、その保持器44、両側のシール部材45から構成される。
【0021】
そして、前記ロータ軸5の端面がオルタネータ本体4の玉軸受7の内輪42側面に当接し、プーリ10の端部は、前記段付き面29に沿う段付きの相対形状に形成されて、プーリユニット1の端部とオルタネータ本体4の端部との間に、段付き面29に沿う非接触密封用(シールラビリンス用)の微小間隙31が設けられている。
【0022】
上記構成のプーリユニット1では、プーリ10とロータ軸5との回転速度差に応じて一方向クラッチ6がロック状態またはフリー状態となり、プーリ10からロータ軸5へ動力が伝達されたり、あるいは動力が遮断されたりする。なお、一方向クラッチ6がフリー状態になったときはロータ軸5が自身の回転慣性力により回転を継続する。
【0023】
ところで、上記構成のプーリユニット1を発電用回転軸3に取付けるには、雌ねじ部25が雄ねじ部24に当たるまでプーリユニット1を発電用回転軸3に押込む。そして、ロータ軸5の操作溝23に工具を嵌入してこれを回転させる。そうすると、ロータ軸5がナットの機能をはたしてプーリユニット1自身がオルタネータ本体4側へ移動する。そして、プーリユニット1の端部とオルタネータ本体4の端部との間の微小間隙31を確保するように、かつロータ軸5がオルタネータ2の玉軸受7の内輪42に所定の圧力で圧接するまで、工具でロータ軸5を回転させる。
【0024】
このようにしてプーリユニット1をオルタネータ2を取付けることで、プーリユニット1の端部がオルタネータ本体4の端部すなわち挿入凹所30で、軸心方向26に重なる(オーバーラップする)。
【0025】
そして、オルタネータ本体4の端部に段付き面29を有する挿入凹所30を設け、プーリユニット1の端部を、この段付き面29を有する挿入凹所30に沿う形状に形成することで双方の間に非接触密封用の微小間隙31を設けたことにより、プーリ10がベルト9の回転に伴なって回転した場合に、この微小間隙31によってラビリンス作用が働き、外部からこの微小間隙31に水やその他の異物が浸入するのを防止することができる。これによって、プーリユニット1あるいはオルタネータ2の玉軸受7の寿命を延長させることができる。
【0026】
また、オルタネータ本体4の端部に挿入凹所30を形成し、プーリユニット1の端部をこの挿入凹所30に挿入されるようにしてオルタネータ2に取付けるので、プーリユニット1が玉軸受7、その反対側に配置したころ軸受8および一方向クラッチ6を有してソリッドプーリに比べて軸心方向26に長い場合であっても、装置全体の長さをその分だけ軸心方向26に短くでき、従って、従来のこの種の取付け構造に比べて省スペース化を実現することができる。
【0027】
なお、本発明の実施の第一形態では、前述のようにプーリユニット1の端部がオルタネータ本体4の端部に重なる理由から、プーリ10は比較的径が小さい場合を例としている。
【0028】
図2に基づいて本発明の実施の第二形態を説明する。本発明の実施の第二形態に係るプーリユニット1の取付け構造は、プーリ10の径が比較的大きい場合に有用で、オルタネータ本体4の端部に、プーリ10の端部(端面)に軸心方向26に向けて突出する環状の凸部35が形成され、プーリユニット1の端部(この場合プーリ10そのもの端面)に、前記凸部35に非接触密封用の微小間隙31を介して嵌合する凹部36が形成されている。
【0029】
そして、前記凸部35および凹部36の外周面は軸心方向26に対してプーリユニット1側に傾斜した傾斜面とされ、凸部35および凹部36の内周面は、軸心方向26に対して外側に傾斜した傾斜面とされている。
【0030】
なお、この実施の第二形態では、実施の第一形態のように、プーリユニット1の端部がオルタネータ本体4の端部すなわち挿入凹所30で、軸心方向26に重ねて軸心方向26の幅を小さくする構成は設けていないが、オルタネータ本体4の端部とプーリユニット1の端部双方の間に非接触密封用の微小間隙31を設け、凸部35および凹部36の外周面は軸心方向26に対して傾斜した傾斜面とし、凸部35および凹部36の内周面は、軸心方向26に対して外側に傾斜した傾斜面としたので、プーリ10が回転した場合に、この微小間隙31によってラビリンス作用が働き、外部からこの微小間隙31に水やその他の異物が浸入するのを確実に防止することができる。これによって、プーリユニット1あるいはオルタネータ2の玉軸受7の寿命を延長させることができる。他の構成は上記実施の第一形態と同様である。
【0032】
【発明の効果】
以上の説明から明らかな通り、本発明は、補機本体のプーリユニット側の端部に凹所を設け、プーリ−ユニットの補機本体側の端部をこの凹所に挿入するようにして補機にプーリ−ユニットを取付けて、補機本体とプーリユニットとを軸心方向に重ねるので、プーリユニットに一方向クラッチおよびその側方に配置した転がり軸受を有していても、軸心方向に重なった分だけ全体の幅を小さくでき、装置の省スペース化を実現できる。
【0033】
また、補機本体のプーリユニット側の端部とプーリユニットの補機本体側の端部とを非接触密封用の微小間隙を介して軸心方向で重なるよう構成していることにより、プーリがエンジンからの駆動力によって回転した場合に、この微小間隙によってラビリンス作用が働き、外部からこの微小間隙に水やその他の異物が浸入するのを防止することができ、特に軸受の寿命を延長させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の第一形態を示すプーリユニットの取付け構造の詳細断面図である。
【図2】本発明の実施の第二形態を示すプーリユニットの取付け構造の詳細断面図である。
【符号の説明】
1 プーリユニット
2 オルタネータ
3 発電用回転軸
4 オルタネータ本体
5 ロータ軸
6 一方向クラッチ
10 プーリ
18 シール部材
23 操作溝
26 軸心方向
29 段付き面
31 微小間隙

Claims (2)

  1. エンジンからの駆動力が伝達される補機の駆動軸に連結する軸体部が設けられ、この軸体部に対して、一方向クラッチおよびその側方に配置した転がり軸受を介してプーリが相対回転可能に設けられたプーリユニットにおいて、このプーリユニットを、前記補機に対して取付けるための取付け構造であって、
    前記駆動軸の外周に配置される補機本体のプーリユニット側の端部における駆動軸周りの内周に挿入凹所が形成され、この挿入凹所は、軸心方向奥側に位置する小径凹部と、小径凹部より軸心方向外側に位置する大径凹部とが径方向に沿った段付き面を介して環状に設けられた構成となっており、
    前記プーリユニットは、補機本体側の端部が前記挿入凹所に対して挿入され、前記小径凹部、段付き面および大径凹部と、前記プーリユニットの補機本体側の端部との間に非接触密封用の微小隙間が形成されていることを特徴とするプーリユニットの取付け構造。
  2. エンジンからの駆動力が伝達される補機の駆動軸に連結する軸体部が設けられ、この軸体部に対して、一方向クラッチおよびその側方に配置した転がり軸受を介してプーリが相対回転可能に設けられたプーリユニットにおいて、このプーリユニットを、前記補機に対して取付けるための取付け構造であって、
    前記駆動軸の外周に配置される補機本体のプーリユニット側の端部と、前記プーリユニットの補機本体側の端部とのうちの一方に、対向する端部に軸方向に向けて突出する環状の凸部が設けられ、前記補記本体のプーリユニット側の端部と前記プーリユニットの補機本体側の端部とのうちの他方に、前記凸部に嵌合する凹部が設けられ、前記凸部と凹部とは非接触密封用の微小間隙を介して嵌合するとともに、凸部および凹部の外周面は軸心方向に対して傾斜した傾斜面とされていることを特徴とするプーリユニットの取付け構造。
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