JP3784686B2 - バイオリアクター - Google Patents

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  • Immobilizing And Processing Of Enzymes And Microorganisms (AREA)
  • Biological Treatment Of Waste Water (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、被処理液中の窒素成分を生物学的処理によって効率よく除去する為のバイオリアクターに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、被処理液中の窒素成分を生物学的処理によって除去する為のバイオリアクターは、各種型式のものが公知であるが、その代表例として、例えば、特開平8−224076号公報において開示されている高分子ゲル式のものが挙げられる。
【0003】
これは、被処理液中の窒素成分の除去に有効な微生物が固定化されたシート状の高分子ゲルの一面に被処理液を接触させると共に他面に脱窒処理に必要なエネルギー源としての電子供与体を接触させるものである。
【0004】
このバイオリアクターによると、高分子ゲルが、例えば、アンモニア酸化菌及び脱窒菌を包括したものである場合においては、被処理液中のアンモニアは、高分子ゲルの表面において亜硝酸に酸化され、次いで、それがゲル内部において還元(窒素ガスも含めて還元)される為に、被処理液中の窒素成分を効率的に除去することができる。
【0005】
しかし、その一方において、電子供与体として、液体(例えば、メタノールやエタノール等のアルコール溶液)又は気体(例えば、水素ガス等)を用いている為に、それらの循環供給制御が煩わしい欠点を有していた。
【0006】
すなわち、処理において、電子供与体を過剰に供給すると、高分子ゲルから漏れ出して水質を悪化させ、かつ逆にその供給量が不足すると、脱窒が十分に行われないようになって処理すべきアンモニアやその酸化物の亜硝酸及び硝酸が蓄積されるが、これらの物質は処理液排出先の様々な生物に対して有害である。
【0007】
また、例えば、電子供与体としてエタノール等の有機物を使用する場合においては、それの過剰供給は、それ自体BOD(生物化学的酸素要求量)の上昇による水質悪化を引き起こす。
【0008】
その為、液体や気体の電子供与体を使用する上述の従来方法においては、そのような事態を発生させないように電子供与体の供給量を制御しなければならないといった煩わしさを有していた。
【0009】
また、数か月〜数年間の長期間、バイオリアクターの安定運転を続ける為には、頻繁にエタノール溶液の交換や追加を行わなければならないといった操作上の煩わしさも有していたと共に、液体又は気体の電子供与体を循環供給する為の一連の装置の設置が必要とされて設備が複雑化するといった問題も有していたので、処理すべきアンモニアやその他の窒素化合物に対する電子供与体の供給量を、長期間に亘って厳しく制御しなければならないような場合においては適用が困難であった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述の欠点に鑑みて発明されたものであって、その目的は、生物学的処理に必要な電子供与体の供給を簡易化することによって処理対象物(例えば、アンモニアやその他の窒素化合物等)の濃度が幅広い被処理液に対応することができ、しかも、操作性の向上化及び長期間の連続運転化を図ることができる汎用性に富んだバイオリアクターを提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成する為に、本発明においては、生物学的処理によって被処理液中の特定成分を除去するのに有効な微生物が固定化されたシート状高分子ゲルの一面に前記被処理液を接触させると共に他面に前記生物学的処理に必要なエネルギー源としての電子供与体を接触させるバイオリアクターにおいて、前記電子供与体を固体型又はペースト型に設けている。
【0012】
なお、固体型の電子供与体は、シート状、粉末状又はペレット状のいずれの形態のものであってもよく、かつ、シート状固体型の電子供与体は、ポリ乳酸等の脂肪族ポリエステルのみで構成したものの他、多孔シート体に脂肪族ポリエステルを保持させて構成したものであってもよい。それに対し、粉末状又はペレット状固体型の電子供与体及びペースト型の電子供与体は、ポリ乳酸等の脂肪族ポリエステルのみで構成したものが用いられる。
【0013】
かかる物質(ポリ乳酸等の脂肪族ポリエステル)を選択しているのは、それらは、加水分解によるエネルギー源供給の除放性が期待できると共にエネルギー源の供給速度を、それら自体の材質、分子量、形状などによって調節でき、しかも、それを分解する為の特別な微生物を必要としないという利点を有しているからである。
【0014】
一方、シート状の高分子ゲルに固定化された微生物は、被処理液が例えば、アンモニアやその他の窒素化合物を含有している場合においては、アンモニア酸化菌及び/又は脱窒菌が選択されるが、除去する成分が他の成分である場合には、それに適した他の菌が選択される。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明に係るバイオリアクターは、生物学的処理によって被処理液中の特定成分を除去するが、ここにおいていう生物学的処理は、好気性反応処理、嫌気性反応処理又はそれらの組み合わせに係る反応処理のいずれであってもよく、必要に応じて所定の反応処理が選択される。
【0016】
また、被処理液中から除去する特定成分についても、アンモニアやその他の窒素化合物、或るいはそれ以外の特定成分であってもよいが、一般には、アンモニアやその他の窒素化合物を対象とする。
【0017】
図1において、そのような例、すなわち、被処理液(例えば、アンモニア排水)の脱窒処理に用いられるバイオリアクターが示されている。同図において、バイオリアクター1は、密閉型反応容器2内に、流路部3を形成するように多孔板4とシート状の高分子ゲル5と電子供与体6とを一体化した形態に装着し、そして、供給管路7及び排出管路8の一端を流路部3に開口せしめている。なお、供給管路7及び排出管路8の他端は、貯水タンク9内へ導かれて開口せしめられている。
【0018】
その為、このバイオリアクター1によると、供給管路7に装着されているポンプ10を運転して貯水タンク9内の被処理液11を流路部3の下部に供給すると共に、流路部3の上部から排出管路8を経て排出して貯水タンク9へ戻すように被処理液11を循環させて脱窒することができる。
【0019】
上述のシート状の高分子ゲル5は、被処理液中の窒素成分の除去に有効な微生物、例えば、アンモニア酸化菌及び脱窒菌を担持している。一方、電子供与体6は、ポリ乳酸又はポリグリコール酸等の脂肪族ポリエステルのみで構成され、かつシート状に設けられている。なお、シート状の高分子ゲル5と電子供与体6とは、実質的に一体に設けられている。
【0020】
このように、本発明においては、電子供与体として、液体や気体を使用しないで固体型の電子供与体6を使用している。その為、被処理液中へ電子供与体を直接、添加しないで処理することができると共に処理中において、電子供与体を循環供給しなくてもよく、従って、それの供給制御の煩わしさを解消することができる。
【0021】
加えて、例えば、シート状の高分子ゲル5がアンモニア酸化菌及び脱窒菌を担持したものである場合においては、被処理液中のアンモニアは、高分子ゲル5の表面において亜硝酸に酸化され、次いで、それがゲル膜内部において還元(窒素ガスも含めて還元)される為に、被処理液中の窒素成分(アンモニア、硝酸及び亜硝酸)を効率的に除去することができる。
【0022】
かかる処理において、シート状の固体型電子供与体6は、微生物などによって徐々に低分子に分解されて資化される。この分解速度は、電子供与体の材質、分子量等によって調節することが可能であるから、様々な濃度の被処理液に適応可能であると共に、過剰な供給を防止することが可能である。
【0023】
また、あらかじめその適量を供給することで、一定期間に電子供与体の追加や交換をしなくても、アンモニアやその他の窒素化合物に対する連続処理が可能である。
【0024】
このようなことに基づいて、被処理液が、アンモニアやその他の窒素化合物含有液であっても良好に脱窒することができ、しかも、長期間に亘って電子供与体を供給制御装置などを用いずに供給しながら処理することができ、従って、例えば、飲料水用地下水の硝酸処理等に対して好適である。
【0025】
本発明において、電子供与体は、上述の固体型の電子供与体6に限定されず、ペースト型の電子供与体を設けてよい。また、固体型の電子供与体6については、シート状に設けられたものに限定されず、粉末状、ペレット状等に設けてもよい。
【0026】
更に、シート状固体型の電子供与体6は、ポリ乳酸等の脂肪族ポリエステルのみで構成したものに限定されず、多孔シート体に脂肪族ポリエステルを保持させて構成したものであってもよい。
【0027】
一方、粉末状又はペレット状固体型の電子供与体及びペースト型の電子供与体は、ポリ乳酸やポリグリコール酸等の脂肪族ポリエステルのみで構成したものが用いられる。
【0028】
なお、多孔シート体に脂肪族ポリエステルを保持させた電子供与体の前記多孔シート体は、柔軟なシート状高分子ゲル5の支持に貢献するから、設けるのが好ましい。
【0029】
これは、ポリ乳酸等の脂肪族ポリエステルは、自然環境下で加水分解により、徐々に分解され乳酸等のモノマーやオリゴマーを溶出する為に、従来のバイオリアクターにそのまま用いることが可能な除放性の電子供与体となり得るからである。
【0030】
このポリ乳酸は、図2に示すように、乳酸が脱水縮重合したものであって人工的に合成することができる。その分解は、酸素などの生化学的反応によってではなく、基本的には水の存在下での加水分解によって低分子化が起こる。
【0031】
そして、ポリ乳酸が低分子化されて水に溶解したものは、微生物によって資化されると考えられる。シート状高分子ゲル5に固定化する脱窒菌は、電子供与体としてポリ乳酸のモノマーである乳酸を利用して脱窒を行うことができる。
【0032】
多孔シート体に脂肪族ポリエステルを保持させた電子供与体6の一例として、例えば、ポリ乳酸1gを200℃で加熱溶融して、多孔シート体であるステンレス製の網(大きさが100mm×50mm、厚さが1mm)に保持させものが挙げられるが、それを氷上で急冷し、前記多孔シート体をシート状高分子ゲル5の支持体として微生物の固定化に利用した。
【0033】
その際、シート状高分子ゲル5に対して固定化する微生物として、アンモニア酸化菌(Nitorosomonsa europaeaIFO14298)及び脱窒菌(Paracoccus denitrificasJCM6892)を選択した。これらの細菌は、光硬化性樹脂PVA−SbQ(SPP−H−13、株式会社東洋合成工業)と共に懸濁し、ポリ乳酸を溶融した前記網(電子供与体)と一緒にメタロハライドランプによる光照射によってゲル化してシート状ゲルにした。
【0034】
また、それを用いて上述した図1のバイオリアクターで模擬排水を処理した。すなわち、多孔板4の有効面積は2.3×10−3で、被処理水11としては、20mg-N/Lのアンモニア含有の模擬排水200mlを用い、ペリスタルチックポンプ10によってバイオリアクター1に循環した。
【0035】
なお、エアーポンプ12を運転し、管路13を経て模擬排水に酸素を供給した。室温でバッチ処理を行い、かつ模擬排水は4〜12日に1回、新しいものと交換してテストを繰り返した。
【0036】
かかるバッチ処理の1回目の結果を図3に示す。これからして明らかのように、液中のアンモニア濃度は、処理時間の経過に伴って徐々に減少し、実験開始後、250時間経過後には、20mg-N/Lから2mg-N/L程度まで低下した。それに対して亜硝酸濃度は、実験開始後増加し、約50時間目に最大で16mg-N/Lにまで蓄積し、その後、徐々に減少した。
【0037】
アンモニア酸化速度及び総窒素濃度の減少速度である窒素除去速度は、それぞれ1.44g-N/d/m、0.13g-N/d/mであった。窒素除去速度は、アンモニア酸化速度に比して非常に低いものの、ポリ乳酸を電子供与体として用いても脱窒が可能であることが確認された。
【0038】
これらの反応速度は、窒素除去バイオリアクターの馴養後の速度に比べて非常に小さく、アンモニア酸化速度で1/5程度の大きさであった。これは、アンモニア酸化速度は、比処理水中のアンモニア濃度に依存することや、また、ゲル固定化直後でまだ十分に馴養ができていない為に反応速度が小さくなったものと考えられる。
【0039】
窒素除去速度についても、ポリ乳酸の分解は、主に生物非依存の加水分解によって低分子化し、低分子化したポリ乳酸を微生物が利用することから、馴養及び電子供与体の供給が十分に行われなかったことが考えられる。同じシート状高分子ゲル5及び電子供与体6を用いて、模擬排水のバッチ処理を繰り返した。
【0040】
バイオリアクターの脱窒活性は、上述と同様に確認された。総窒素濃度の減少速度である窒素除去速度に関しても、2回目のバッチ処理以降、その速度は安定し、0.25〜0.3g-N/d/m程度の活性にまで向上した(図4参照)。これは、馴養によってある程度まで活性が向上することがいえる。
【0041】
しかし、反応速度が安定した後も、アンモニア酸化速度の方が窒素除去速度に比べて大きく、実験開始後、亜硝酸又は硝酸の蓄積が確認された。これは、ポリ乳酸の加水分解によって生じる乳酸やそのオリゴマーの発生量が律速となって脱窒が制限されていることが考えられる。
【0042】
亜硝酸などが蓄積しないように脱窒速度をアンモニア酸化速度と同程度にまで上げるためには、比較的分解され易い分子量のポリ乳酸やグリコール酸を含有している乳酸−グルコール酸共重合体など他の材質を用いる等の工夫をすればよい。
【0043】
同じシート状高分子ゲル5及び電子供与体6を用いて、模擬排水のバッチ処理を繰り返すことによって1か月以上、実験を続けた場合、窒素除去速度は、速度安定後は、その速度に大きな変化がなくて安定した脱窒が可能であった。これは、ポリ乳酸の低分子化の速度は非常に小さいものの、長期に安定して電子供与体の供給が可能であることを示している。
【0044】
本発明においては、上述のポリ乳酸等の脂肪族ポリエステル以外に、酸素の導入等でその一部を溶出させることができ、かつ溶出したものが微生物によって資化が可能であれば、セルロース等を用いてもよく、ゲルに固定化される微生物の種類、処理対象排水のアンモニア濃度条件等に応じて他の電子供与体を適宜に選択することができる。
【0045】
また、電子供与体と高分子ゲルとを一体化しないで分離して用いてもよく、これによって電子供与体の交換の容易化を図ることができる。なお、高分子ゲル又は電子供与体は、使い捨て型に設けてもよい。
【0046】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によると、生物学的処理に必要な電子供与体の供給を簡易化することによって処理対象物の濃度が幅広い被処理液に対応することができ、しかも、操作性の向上化及び長期間の連続運転化を図ることができる汎用性に富んだバイオリアクターを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】高分子ゲル式バイオリアクターによる処理態様を示す正面図である。
【図2】ポリ乳酸の分子式を示す図である。
【図3】処理時間と窒素濃度との関係を示す図である。
【図4】バッチ回数と窒素除去活性との関係を示す図である。
【符号の説明】
1:バイオリアクター
2:密閉型反応容器
3:流路部
4:多孔板
5:シート状の高分子ゲル
6:シート状の電子供与体(固体型の電子供与体)

Claims (9)

  1. 生物学的処理によって被処理液中の特定成分を除去するのに有効な微生物が固定化されたシート状高分子ゲルの一面に前記被処理液を接触させると共に他面に前記生物学的処理に必要なエネルギー源としての電子供与体を接触させるバイオリアクターにおいて、前記電子供与体を固体型に設けたことを特徴とするバイオリアクター。
  2. 前記電子供与体をシート状に設けたことを特徴とする請求項1に記載のバイオリアクター。
  3. 前記電子供与体を粉末状又はペレット状に設けたことを特徴とする請求項1に記載のバイオリアクター。
  4. 前記電子供与体を脂肪族ポリエステルのみで構成したことを特徴とする請求項2又は3に記載のバイオリアクター。
  5. 前記電子供与体を多孔シート体に脂肪族ポリエステルを保持させて構成したことを特徴とする請求項2に記載のバイオリアクター。
  6. 生物学的処理によって被処理液中の特定成分を除去するのに有効な微生物が固定化されたシート状高分子ゲルの一面に前記被処理液を接触させると共に他面に前記生物学的処理に必要なエネルギー源としての電子供与体を接触させるバイオリアクターにおいて、前記電子供与体をペースト型に設けたことを特徴とするバイオリアクター。
  7. 前記電子供与体を脂肪族ポリエステルのみで構成したことを特徴とする請求項6に記載のバイオリアクター。
  8. 前記脂肪族ポリエステルがポリ乳酸又はポリグリコール酸であることを特徴とする請求項4,5又は7に記載のバイオリアクター。
  9. 前記微生物がアンモニア酸化菌及び/又は脱窒菌であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載のバイオリアクター。
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