JP3784342B2 - 装飾品及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、陶磁器、ガラス等のセラミック製品や耐熱性金属製品、耐熱性鉱物から選ばれる耐熱性基体の周縁を簡便に且つ美麗なデザインで貴金属に留めた装飾品及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、各種の宝石や鉱物類などの装飾体を貴金属土台と組み合わせたペンダントヘッドやブローチなどが知られている。その作製においては、予め装飾体の寸法に合わせて貴金属土台を鋳造などにより製造しておき、製造した貴金属土台に装飾体を組み合わせ、係止爪を彫り起こして装飾体の周縁を留めるなどの手法が採られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記貴金属土台を掘り起こすなどの特殊技工は熟練した技術が必要であり、幾何学的な特定形状・寸法に装飾体を成形加工し、その寸法に合わせた貴金属土台を鋳造などにて量産する方法であって、到底カルチャー教室で適用できるような技術ではなかった。また、例えば鉱物原石等の幾何学的でない形状の装飾体を成形加工せずに使用したい場合には、特注品となるため膨大な費用がかかるものであった。
一方、既に市販されている貴金属粘土組成物は、任意形状に造形できることを最大の利点として近年宝飾品の分野で多用され、特にカルチャー教室等で利用されて普及してきている。この貴金属粘土組成物を用いて装飾体の周縁を留めることも行われ、シリンジ等の細径の押し出し具を用いる技法も適宜に用いられているが、所望の通りのデザインで周縁抑え部を形成することは困難であった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記に鑑み提案されたもので、貴金属粘土状組成物からなる裏側シート材の表面に耐熱性基体を載置し、少なくとも前記耐熱性基体の周縁を被覆するように貴金属粘土状組成物からなる表側シート材を重合させると共に、耐熱性基体が露出する開口部を形成し、表側シート材が乾燥したら開口部周縁を所望の形状に成形して焼成することにより裏側シート材、耐熱性基体、裏側シート材を一体化させてなる装飾品(第1発明)に関するものである。
【0005】
また、本発明は、上記装飾品(第1発明)の製造方法も提案するものであり、貴金属粘土状組成物からなる裏側シート材の表面に耐熱性基体を載置する第1工程と、前記第1工程によって載置した耐熱性基体の少なくとも周縁を被覆するように貴金属粘土状組成物からなる表側シート材を重合させると共に、耐熱性基体が露出する開口部を形成する第2工程と、前記第2工程によって重合させた表側シート材が乾燥したら開口部周縁を所望の形状に成形する第3工程と、第3工程によって所望の開口部周縁形状に成形した状態で焼成する第4工程と、を少なくとも有する。
【0006】
さらに、本発明は、貴金属粘土状組成物からなる裏側シート材の表面に耐熱性基体を載置し、少なくとも前記耐熱性基体の周縁を被覆するように貴金属粘土状組成物からなる表側シート材を重合させると共に、耐熱性基体が露出する開口部を形成し、表側シート材が乾燥する以前に開口部周縁を所望の形状に成形して乾燥、焼成して裏側シート材、耐熱性基体、裏側シート材を一体化させてなる装飾品(第2発明)を提案する。
【0007】
また、本発明は、上記装飾品(第2発明)の製造方法も提案するものであり、貴金属粘土状組成物からなる裏側シート材の表面に耐熱性基体を載置する第1工程と、前記第1工程によって載置した耐熱性基体の少なくとも周縁を被覆するように貴金属粘土状組成物からなる表側シート材を重合させると共に、耐熱性基体が露出する開口部を形成する第2工程と、前記第2工程によって重合させた表側シート材が乾燥する以前に開口部周縁を所望の形状に成形する第3工程と、第3工程によって所望の開口部周縁形状に成形した状態で乾燥、焼成する第4工程と、を少なくとも有する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明に用いる耐熱性基体は、陶磁器、ガラス等のセラミック製品、耐熱性金属製品、耐熱性鉱物から選ばれる任意の形状を有するものであって、焼成時の熱で変形等を生じないものであれば何等限定するものではないが、それ自体が装飾品としての装飾性、意匠性を有するものが好適に用いられる。
【0009】
本発明の第1発明と第2発明とは、表側シート材の開口部周縁を所望の形状に成形する処理加工(第3工程)を表側シート材の乾燥後に行うか、乾燥以前に行うかの点で相違し、それ以外の処理加工は共通である。
【0010】
本発明の装飾品の製造方法の第1工程は、上記耐熱性基体を貴金属粘土組成物からなる裏側シート材に載置するのであるが、ここで使用される裏側シート材は、作業台上で薄く展延してシート状としたものでも、予めシート状に成形して適宜にプラスティックフィルムなどで乾燥を防止するようにしておいたものでも良い。また、裏側シート材の形状は、少なくとも耐熱性基体の周縁裏面を支持する、即ち耐熱性基体の平面形状より大きな平面外郭形状を有するものであれば、板状でも、開口部を有する略ドーナツ形状でも良い。さらに、裏側シート材の厚みについても厚み0.3mm以上であれば特に限定するものではなく、耐熱性基体の大きさ等に応じて適宜の厚みとすれば良い。
【0011】
本発明の装飾品の製造方法の第2工程は、前記第1工程によって載置した耐熱性基体の少なくとも周縁を被覆するように貴金属粘土状組成物からなる表側シート材を重合させると共に、耐熱性基体が露出する開口部を形成する。ここで使用される表側シート材は、前記裏側シート材と同様に作製したものを用いることができる。また、この表側シート材の形状も、前記裏側シート材と同様であって、少なくとも耐熱性基体の周縁表面を被覆する、即ち耐熱性基体の平面形状より大きな平面外郭形状を有するものであれば、板状でも、開口部を有する略ドーナツ形状でも良い。尚、開口部を有しない板状の表側シート材を用いる場合、重合させた表側シート材が乾燥する以前に、耐熱性基体の周縁以外の大部分が露出するように表側シート材を切り抜いて開口部を開設すれば良いし、開口部を有する略ドーナツ状の表側シート材を用いる場合、重合させるだけで良い。ここで開口部とは、後の第3工程にて開口部周縁を所望の形状に成形するための補助作業であるから、特に精微に寸法取りする必要はない。また、開口部の周縁は耐熱性基体の表面に被覆しているのであるが、耐熱性基体の周縁のアウトラインと開口部(裏面)とを密着させずに焼成後の収縮を考慮して余裕を持たせて被覆するようにすることが好ましい。
【0012】
第1工程にて使用される裏側シート材及び第2工程にて使用される表側シート材を構成する貴金属粘土状組成物は、貴金属粉末を主成分とする粉末成分と水溶性セルロース類を主成分とする有機バインダーと水とからなり、特にその組成を限定するものではない。
第1発明では、表側シート材の乾燥後に開口部周縁を一部を削ったり、或いは一部を剥離除去したりして所望の形状に成形するので、使用する貴金属粘土状組成物としては、乾燥強度(硬度)が高く、耐熱性基体(表面)への密着性が高い性状を備えることが好ましく、以下の組成を有するものが好適に用いられる。
粉末成分としては、▲1▼Ag、Au、Pt、Pd等の純貴金属粉、或いはこれらの元素の一種以上を主成分とする貴金属合金粉から選ばれる貴金属粉末75〜99重量%と、▲2▼Bi粉末0.1〜10重量%と、▲3▼Se,Sb,In,Znから選ばれる一種以上0〜10重量%と、▲4▼炭酸リチウム、酸化亜鉛、炭酸ナトリウム塩、酸化バナジウムから選ばれる一種以上0.01〜5重量%を用いることが望ましい。
また、有機バインダーとしては、水を含めた含有量表示で、(1)澱粉1〜5重量%と、(2)カルボキシメチルセルロース0.5〜5重量%と、(3)デキストリン0.1〜2重量%と、(4)グリセリン0.1〜2重量%と、(5)アルギン酸ナトリウム0.1〜2重量%と、残部水を用いることが望ましい。
そして、前記粉末成分に対し、前記有機バインダー液を5〜10%加えることが望ましい。
【0013】
前記粉末成分のうち、▲1▼貴金属粉末は、平均粒径5〜50μmの粒子で、アトマイズ粉、還元粉など製造方法は特に指定はないが、粒子が球状に近い形状であることが好適に使用される。また金属種としては、適宜割合で酸化性金属を混合するようにしても良い。
【0014】
▲2▼Bi粉末は、焼結促進剤として用いられるものである。この含有量が粉末成分中0.1重量%に満たないと十分な焼結促進作用が表れず、10重量%を越えるとその分だけ貴金属粉末の含有量が低くなり美観を損なうことになる。
【0015】
▲3▼Se,Sb,In,Znについても▲2▼Bi粉末と同様に焼結促進剤として用いられる。
【0016】
▲4▼炭酸リチウム、酸化亜鉛、炭酸ナトリウム塩、酸化バナジウムは、高温でガラス質となって耐熱性基体表面への密着向上作用を果たすものである。尚、この密着向上作用は焼成後の貴金属焼結膜の密着性を指すものである。この含有量が粉末成分中0.01重量%に満たないと密着向上作用が表れず、5重量%を越えると表面への浮き出しが生じて焼成後の貴金属焼結膜の美観を損ねる。
【0017】
前記有機バインダーのうち、(1)澱粉は、乾燥後の表側シート材の強度(硬度)を向上する作用を果たし、乾燥後の表側シート材の開口部周縁を成形する際の作業性を向上するものである。この含有量が有機バインダー(水を含めた含有量表示で)中1重量%に満たないと十分な強化(硬化)作用が表れず、5重量%を越えると表(裏)側シート材にクラックが入りやすくなる。
【0018】
(2)カルボキシメチルセルロースは、生地割れを防止する可塑性を付与すると共に耐熱性基体の表面への密着性を向上する作用を果たし、前記(1)澱粉の強化(硬化)作用と相俟って表側シート材の開口部周縁を成形する際の作業性を向上するものである。尚、この密着向上作用は焼成前の表側シート材の密着性を指すものである。この含有量が有機バインダー(水を含めた含有量表示で)中0.5重量%に満たないと十分な密着向上作用が表れず、5重量%を越えるとそれ以上作用が向上しないし、収縮が大きくなる。
【0019】
(3)デキストリンは、(2)カルボキシメチルセルロースと同様に密着向上作用に寄与する。この含有量が有機バインダー(水を含めた含有量表示で)中0.1重量%に満たないと密着向上作用が表れず、2重量%を越えると乾燥時の強度が低くなる。
【0020】
(4)グリセリンは、表側シート材に適度な保水性を与え、表側シート材を重合させる際の作業性を向上するものである。この含有量が有機バインダー(水を含めた含有量表示で)中0.1重量%に満たないと十分な保水作用が表れず、2重量%を越えると表側シート材が固化しなくなる。
【0021】
(5)アルギン酸ナトリウムは、(4)グリセリンと同様に表側シート材に適度な保水性を与えるものであるが、(2)カルボキシメチルセルロースや(3)デキストリンなどと同様に密着向上作用にも寄与する。この含有量が有機バインダー(水を含めた含有量表示で)中0.1重量%に満たないと十分な保水性及び密着向上作用が表れず、2重量%を越えるとそれ以上作用が向上しないし、収縮が大きくなる。
【0022】
これに対し、第2発明では、表側シート材の乾燥以前に開口部周縁を所望の形状に成形するので、使用する貴金属粘土状組成物としては、十分な可塑性を備えるものが好ましく、以下の組成を有するものが好適に用いられる。
有機系バインダーとしては、水を含む含有量表示で、水溶性セルロース系樹脂0.022〜3.0重量%と澱粉0〜3.0重量%とフェニルプロパンを骨格とする構成単位体が縮合してなる網状高分子0〜0.5重量%を用いることが好ましい。
【0023】
水溶性セルロース系樹脂の配合は、生地割れを防止する効果及び粘土が手に付着することを防止する効果を果たし、その配合量が前記範囲より少ないと、十分な可塑性が得られず、前記範囲より多いと、乾燥時の変形が起こるため、亀裂やひび割れ等の損傷が生じてしまい、さらに粘土が手に付着し易くなると共に収縮率も増大してしまう。この水溶性セルロース系樹脂としては、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等が用いられる。
澱粉の配合は、前述のように乾燥時の強度を向上する効果を果たし、その配合量が前記範囲より多いと、乾燥時の変形が起こるため、亀裂やひび割れ等の損傷が生じてしまい、収縮率も増大してしまう。
フェニルプロパンを骨格とする構成単位体が縮合してなる網状高分子の配合は、保水性の向上及び粘土が手に付着することを防止する効果を果たし、その配合量が前記範囲より多いと、乾燥時の変形が起こるため、亀裂やひび割れ等の損傷が生じてしまい、収縮率も増大してしまう。
【0024】
さらに、貴金属粉末と有機系バインダーと共に混合される水は、必要量加えるものとし、水が少なすぎると、粘土として造形が困難なほど硬くなり、多すぎるとコシが弱く保形性が無くなり造形が困難になる。
【0025】
本発明では、貴金属粉末等の粉末を80〜93wt%を用い、且つ前述の有機系バインダー及び水を配合した粘土組成物を使用することにより、焼成した場合の収縮を適度に規制することができ、長さでおよそ7〜10%程度の収縮とすることができる。尚、焼成は、用いた貴金属粉末等の粉末の融点(mp)からそれより250℃低い温度範囲〔(mp−250℃)〜mp〕にて5〜90分加熱する。
【0026】
また、前記粘土組成物に添加する他の成分として、分子量10万〜数百万のポリエチレンオキサイドを0.1〜3wt%添加しても良い。このポリエチレンオキサイドは、エチレンオキサイドが開環重合して製造されるポリマーであり、その分子量は10万〜数百万に達するものであり、分子量200〜10000に過ぎないポリエチレングリコールとは異なる特性を有する化合物である。例えばこの分子量10万〜数百万のポリエチレンオキサイドは常温で白色粉末であるのに対し、分子量が1万以下のポリエチレングリコールは常温で液状又はワックス状であり、しかも分子量10万〜数百万のポリエチレンオキサイドは極めて低濃度でも強い曳糸性を示す。
この分子量10万〜数百万のポリエチレンオキサイドを有機系バインダとして用いた粘土組成物は、伸び特性が著しく向上し、例えば従来より有機系バインダとして用いられていたセルロース系樹脂では1割(10%オーダー)程度の伸びしか得られなかったのに対し、少なくとも2〜3倍(200〜300%)の伸びが得られることが見出された。尚、この伸び特性は、直径1mm、長さ4cmの棒状に成形したものを手に持って引き伸ばした場合の数値である。
但し、このポリエチレンオキサイドの配合量が0.1wt%に満たないと、組成物の伸びは向上するものの、バインダとしての作用が十分でなく、3wt%を越えると、収縮率が増大してしまう。
【0027】
本発明の装飾品の製造方法の第3工程は、第1発明では表側シート材を乾燥する工程と、乾燥後の表側シート材の開口部周縁を所望の形状に成形する工程からなり、第2発明では表側シート材が乾燥する以前に開口部周縁を所望の形状に成形する工程である。尚、表側シート材が乾燥する以前に開口部周縁を所望の形状に成形し、乾燥後の表側シート材の開口部周縁に更なる成形を行うようにしても良い。
【0028】
第1発明の第3工程における表側シート材を乾燥する工程では、常温放置することにより乾燥するようにしても良いが、100℃前後で強制乾燥することが望ましい。
また、乾燥後の表側シート材の開口部周縁を所望の形状に成形する工程では、特に限定するものではないが、表側シート材の開口部周縁に任意のフレームデザインの表示部を形成し、前記表示部に沿い治具などを使用して開口部周縁の一部を削ったり一部を剥離除去するなどして開口部周縁を所望の形状に成形すれば良い。表示部を形成するには、例えば鉛筆、ペン、マジック等の筆記具を用いて文字、図形、絵柄などを任意に描いても良いし、開口部周縁上にカーボン紙を沿わせた上に、予め作製されたフレームデザインが記載された原稿紙などを重ねて載置し、その原稿紙に記載されたフレームデザインに沿ってペン先等を用いて開口部周縁上に複写(転写)するようにしても良い。形成された表示部に沿って開口部周縁を成形するにはキサゲ、彫刻刀などを用いるようにしても良いし、耐熱性基体自体を削るものではないため、針や竹串等を用いるようにしても良い。削り取った開口部周縁は粉末状となっているが、大部分が貴金属粉末であるため、再利用しても良い。
第1発明の第3工程は、上述のように実施され、裏側シート材と耐熱性基体と表側シート材とが一体化し、表側シート材の開口部周縁を所望の形状に成形した状態が得られる。
【0029】
また、第2発明の第3工程において表側シート材が乾燥する以前の可塑性を有する状態で開口部周縁を所望の形状に成形することは、通常の粘土造形の手法として容易に実施できる。特に前記ポリエチレンオキサイドを有機系バインダとして用いた場合には、引き伸ばし成形も容易である。
【0030】
本発明の装飾品の製造方法の第4工程は、焼成工程であって、用いた貴金属粉末等の粉末の融点(mp)からそれより250℃低い温度範囲〔(mp−250℃)〜mp〕にて5〜90分加熱すれば良い。
【0031】
こうして得られる装飾品は、耐熱性基体の露出部分の周縁に所望形状のフレームが形成されたものとなる。
特に第1発明の装飾品及び製造方法は、乾燥して適度に硬質な開口部周縁を削るなどして成形加工するので、可塑性を有する状態で成形加工する第2発明に比べて例えば先鋭部分を有するようなフレームデザインに加工する場合に好適である。
また、第2発明の装飾品及び製造方法は、乾燥以前の可塑性を有する開口部周縁を曲げたり引き伸ばしたりして成形加工するので、乾燥固化した状態で成形する第1発明に比べて例えば大胆なデザインを有するようなフレームデザインに加工する場合に好適である。
さらに、前述のように表側シート材が乾燥する以前に開口部周縁を所望の形状に成形し、乾燥後の表側シート材の開口部周縁に更なる成形を行うようにしても良いので、例えば表側シート材が乾燥する以前に上述の第2発明に準じて大胆なデザインを有するようなフレームデザインに加工し、表側シート材が乾燥した後に上述の第1発明に準じて先鋭部分を有するようなフレームデザインを追加するようにしても良いし、乾燥中に変形等が生じた場合には補修を行うようにしても良い。
【0032】
幾何学形状を有する耐熱性基体ばかりでなく、鉱物原石等の幾何学的でない形状を有する耐熱性基体を成形加工せずに使用したい場合にも容易に且つ任意のフレームデザインを施すことができる。
また、部分的に傷が付いた耐熱性基体を用い、当該傷部分を覆うようにフレームデザインを施すこともできる。
さらに、裏側シート材も、前述の表側シート材と同様の成形加工を行うことができ、例えば表裏両面のフレームデザインを変更して異なる2つの装飾性を有する装飾品とすることも可能である。例えば乾燥以前に表側シート材の開口部周縁を所望の形状に成形し、乾燥後にそれを裏返して乾燥固化した裏側シート材の開口部周縁を別の所望の形状に成形するようにしても良い。この場合、表側シート材としては、前記第2発明に好適に使用される貴金属粘土状組成物を用いることが好ましく、裏側シート材としては、前記第1発明に好適に使用される貴金属粘土状組成物を用いることが好ましい。
【0033】
また、前記のように表裏両面に任意のフレームデザインを付与する態様においては、少なくとも一方は装飾性を向上するフレームとするが、他方は例えば厚肉の円環状の開口部周縁とすると共に雌ネジを形成してステッキ等の取付部として用いるようにしても良い。
【0034】
【実施例】
以下に本発明の実施例を示す。
【0035】
[実施例1]
粉末成分として、平均粒径20μmの純Ag粉末99wt%、Bi粉末0.9wt%、炭酸リチウム0.1wt%を用いた。
有機バインダー液として、澱粉2wt%、カルボキシメチルセルロース1wt%、デキストリン1wt%、アルギン酸ナトリウム0.5wt%、グリセリン0.1wt%、水95.4wt%を用いた。
上記粉末成分と上記有機バインダー液が10:0.5となるように混合して銀粘土状組成物を調製した。そして、以下の手順にて装飾品(ペンダントヘッド)を作製した。
【0036】
図1の(a)に示すように、1mmのプラゲージ1を使って前記銀粘土状組成物を展延した。
同図(b)に示すように、型紙を使ってカッター2で裏側シート材3を切り取った。
同図(c)に示すように、白磁メタル(=耐熱性基体)4を、裏側シート材3の中央に載置した。
同図(d)に示すように、前記(a)〜(b)のように作製した表側シート材5を白磁メタル4に被せるように重合した。
同図(e)に示すように、重合した表側シート材5が柔らかいうちに、カッター6で白磁メタル4の真上の表側シート材5を四角く切り抜いて開口部7を形成した。その際、右側の断面図に示すように、白磁メタル4のアウトラインと開口部7の裏面とは密着させずに焼成後の収縮を考慮して僅かな余裕を持たせるようにした。
その後、100℃の乾燥機へ30分入れ、乾燥させた。
同図(f)に示すように、表側シート材5の開口部周縁にフレームデザインを下書きし、網目ヤスリ8(=治具)で削り出しをした。
その後、この白磁メタル4を電気炉へ投入し、800℃×30分の条件にて焼成した。
得られた装飾品は、図示しないが白磁メタルの周縁に銀の精微なデザインを有する美麗なフレームが形成されており、ステンブラシで磨いても銀のフレームは白磁メタルから剥がれることなく密着していた。
【0037】
[実施例2]
有機バインダー液として、メチルセルロース2wt%、デキストリン1wt%、グリセリン0.1wt%、水96.9wt%を用いた。
それ以外の組成は前記実施例1と全く同様にして銀粘土状組成物を調製してその後の処理も全く同様に行った。但し、この場合には表側シート材の開口部周縁の一部を剥離除去する作業において、フレームデザイン以外の部分まで剥離することがあった。
その後、この白磁メタルを電気炉へ投入し、800℃×30分の条件にて焼成した。
得られた装飾品は、白磁メタルの周縁に銀のフレームが形成されており、ステンブラシで磨いても銀のフレームは白磁メタルから剥がれることなく密着していた。
【0038】
[実施例3]
平均粒径20μmの純Ag粉末92wt%、メチルセルロース0.4wt%、デンプン0.4wt%、ポリエチレンオキサイド(明成化学工業(株)製『アルコックスE−160』分子量360〜400万)0.2wt%、水7.0wt%を混練して銀粘土状組成物を調製した。
次に、前記図1の(a)〜(e)と同様の手順により、裏側シート材及び表側シート材を作成し、円盤状の白磁メタル(=耐熱性基体)を挟み込み、中央に小さな開口部を形成した。
そして、重合した表側シート材が柔らかいうちに、カッターで白磁メタルの真上の表側シート材5を大胆にデザインカットしたり形状を伸ばしたり整えたりして草模様状の開口部周縁を成形した。
その後、100℃の乾燥機へ30分入れて乾燥させ、更に電気炉へ投入して800℃×30分の条件にて焼成した。
得られた装飾品は、図2に示すように白磁メタル4の周縁に銀の大胆なデザインを有する美麗なフレーム5が形成されており、ステンブラシで磨いても銀のフレームは白磁メタルから剥がれることなく密着していた。
【0039】
以上本発明の実施例を示したが、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の構成を変更しない限りどのようにでも実施することができる。
【0040】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の装飾品及びその製造方法は、耐熱性基体の周縁に所望の形状のフレームが形成されたものとなり、焼成時の熱に対する耐性を有するものであればその形状を限定しないので、鉱物原石、パワーストーン等の幾何学的でない形状を有する装飾体でも容易に且つ任意のフレームデザインを施すことができる。
【0041】
また、表側シート材が乾燥して適度に硬質な開口部周縁を削るなどして所望の形状に加工する場合、粘土状組成物の状態で成形する場合に比べて簡易に精微なフレーム形状を加工できる。これに対し、表側シート材が乾燥する以前に開口部周縁を曲げるなどして所望の形状に加工する場合、乾燥固化物の状態で成形する場合に比べて造形デザインを自由に行うことができ、大胆なフレーム形状を加工できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1,2にて実施した装飾品の製造方法を示す工程図である。
【図2】実施例3にて製造した装飾品を示す平面図である。
【符号の説明】
3 裏側シート材
4 白磁メタル(耐熱性基体)
5 表側シート材
7 開口部
8 網目ヤスリ(治具)
Claims (4)
- 貴金属粘土状組成物からなる裏側シート材の表面に耐熱性基体を載置し、少なくとも前記耐熱性基体の周縁を被覆するように且つ耐熱性基体が露出する開口部が形成されるように貴金属粘土状組成物からなる表側シート材を重合させ、表側シート材が乾燥したら開口部周縁を所望の形状に成形して焼成することにより裏側シート材、耐熱性基体、裏側シート材を一体化させてなる装飾品。
- 貴金属粘土状組成物からなる裏側シート材の表面に耐熱性基体を載置し、少なくとも前記耐熱性基体の周縁を被覆するように且つ耐熱性基体が露出する開口部が形成されるように貴金属粘土状組成物からなる表側シート材を重合させ、表側シート材が乾燥する以前に開口部周縁を所望の形状に成形して乾燥、焼成して裏側シート材、耐熱性基体、裏側シート材を一体化させてなる装飾品。
- 貴金属粘土状組成物からなる裏側シート材の表面に耐熱性基体を載置する第1工程と、前記第1工程によって載置した耐熱性基体の少なくとも周縁を被覆するように開口部を有する貴金属粘土状組成物からなる表側シート材を重合させるか、開口部を有しない表側シート材を重合させて開口部を開設させる第2工程と、前記第2工程によって重合させた表側シート材が乾燥したら開口部周縁を所望の形状に成形する第3工程と、第3工程によって所望の開口部周縁形状に成形した状態で焼成する第4工程と、を少なくとも有する装飾品の製造方法。
- 貴金属粘土状組成物からなる裏側シート材の表面に耐熱性基体を載置する第1工程と、前記第1工程によって載置した耐熱性基体の少なくとも周縁を被覆するように開口部を有する貴金属粘土状組成物からなる表側シート材を重合させるか、開口部を有しない表側シート材を重合させて開口部を開設させる第2工程と、前記第2工程によって重合させた表側シート材が乾燥する以前に開口部周縁を所望の形状に成形する第3工程と、第3工程によって所望の開口部周縁形状に成形した状態で乾燥、焼成する第4工程と、を少なくとも有する装飾品の製造方法。
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