JP3784333B2 - 電子部品冷却装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子機器の収納ケースの内部に収納されて使用される電子部品冷却装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
特開平2−231940号公報及び特開平2−231941号公報には、軸流送風機を利用して軸線方向と直交する径方向に風を流す径流送風機と称される送風機が開示されている。そもそも軸流送風機は、モータの回転軸の軸線方向の一方の方向から空気を吸引して吸引した空気を軸線方向の他方の方向に流すように形成された複数枚のブレードを有するインペラがモータの回転軸に固定され、少なくともインペラがケーシングの周壁部によって画定された筒状のキャビティ内に配置された構造を有している。軸流送風機は、圧力は小さいが、風量が多いという特性を有している。そこで前述の径流送風機は、この特性を利用して、厚みが薄く、クロスフローファンやシロッコファンよりも風量が多く、シロッコファンよりも騒音が少ない径流送風機を得る目的で開発された。
【0003】
この従来の径流送風機は、インペラが収納されるキャビティの一端を閉塞壁部で閉じており、ケーシングの周壁部の一部を軸線方向にすべて除去して形成した側方吐出口を有している。この側方吐出口は、キャビティの一端から他端まで完全に延びている。即ちこの側方吐出口からはインペラのブレードが完全に露出している。
【0004】
また米国特許第5,288,203号、特開平7−111302号には、軸流送風機を用いてCPU等の電子素子が取付けられたヒートシンクを冷却する構造の電子部品冷却装置が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
軸流送風機を利用した前述の従来の径流送風機を用いて電子部品冷却装置を作って、実際に試験を行ったところ、側方吐出口から排気される風の量(送風量)が予想よりも少ないことが分かった。
【0006】
また従来の径流送風機を用いた電子部品冷却装置を厚みの薄い電子機器の収納ケースに収納すると、送風量が極端に低下するか、送風量が実質的にゼロになってしまうことが分かった。
【0007】
本発明の目的は、従来よりも送風量の多い電子部品冷却装置を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、厚みの薄い電子機器の収納ケースに収納しても確実に所定の送風量を確保することができる電子部品冷却装置を提供することにある。
【0009】
本発明の別の目的は、電子機器の収納ケース内のスペースが小さい場合でも発熱する電子装置を確実に冷却できる電子部品冷却装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の電子部品冷却装置は、ロータとステータとを有するモータと、モータの回転軸の軸線方向の一方の方向から空気を吸引する複数枚のブレードを有してロータに固定されたインペラと、インペラが収納されるキャビティを有するケーシングとを備えている。ケーシングはキャビティを画定するようにインペラを囲む第1の壁部と、インペラよりも軸線方向の他方の方向側に位置してインペラと対向し、他方の方向に向かって空気が流れるのを阻止する第2の壁部と、キャビティを通して吸引され第2の壁部に沿って流れる空気を吐出す吐出口とを備えている。
【0011】
本発明においては、吐出口から排気された空気の多くがキャビティの前記一方の方向に位置する開口部から直ちに吸引される空気回り込み現象の発生を抑制するようにインペラを全周にわたって囲む囲繞部分を第1の壁部が有していることを特徴とする。ここで第2の壁部に沿って流れる空気を吐出す吐出口は、回転軸の径方向の一方の方向に開口する一つの側方吐出口でもよく、また回転軸の径方向の複数の方向に開口する複数の側方吐出口でもよく、更に周方向全周にわたって開口する全方向吐出口でもよい。
【0012】
ケーシングの第2の壁部は、インペラよりも軸線方向の他方の方向側に位置してインペラと対向し、他方の方向に向かって空気が流れるのを阻止するものであれば何でもよい。典型的な第2の壁部は、第1の壁部を構成する材料と同じ材料で形成されて、第1の壁部と共に独立した1つのケーシングを構成する閉塞壁部(または底壁部)である。このような構成を採用する場合には、冷却されるべき電子装置は吐出口から吐出される空気によって冷却されるように冷却装置と並んで設けられる。この場合には、冷却装置と並んで設けられた1以上の電子部品または電子部品に対して設けられたヒートシンクに対して直接空気を吹き付ければよい。このようにすると、厚みの薄い収納ケースの中に電子部品冷却用送風機を配置しても、電子部品を確実に冷却することができる。またケーシングの第2の壁部を、電子装置が装着される熱伝導性に優れたヒートシンクによって構成してもよい。このようなヒートシンクには、吐出口に隣接して複数の放熱フィンを設けるのが好ましい。この場合、電子装置は第2の壁部(ヒートシンク)を介して間接的に冷却される。更にケーシングの第2の壁部を、冷却されるべき電子装置の被冷却壁部によって構成してもよい。このようにすると第2の壁部に沿って流れる風によって電子装置の被冷却壁部は直接冷却される。
【0013】
なお吐出口からの送風量を増やすためには、吐出口を該吐出口から排気された空気の多くがキャビティまたは筒状壁部の前記一方の方向に位置する開口部から直ちに吸引される空気循環現象が発生しないように形成することが必須である。ここで「空気循環現象」とは、前述の従来の送風機を試験した際に見出したものであって、学術用語ではなく、本願明細書において定義した用語である。発明者は、種々の試験を行った結果、前述の従来の送風機において、予想した送風量が得られない原因が、吐出口をキャビティの一端から他端まで完全に延ばしている点、即ち吐出口からインペラのブレードを完全に露出させている点にあることを突き止めた。吐出口からインペラのブレードを完全に露出させると、吐出口から出た風のうちキャビティの吸引開口部に近い位置から流出した風が、直ちにキャビティの吸引開口部に吸引されてしまうまたは回り込んでしまう現象、即ち空気回り込み現象または空気循環現象が発生する。この空気循環現象が発生すると、回り込んでいる空気の分だけ、送風量が少なくなるのである。本発明では、囲繞部分を残すことにより、この空気循環現象を大幅に減少させる。理想的には、空気循環現象が全く発生しないように側方吐出口を形成するのが好ましいが、多少の空気循環現象が発生しても、従来より送風量を増大できるのであれば、本発明の目的は達成される。
【0014】
本発明をインペラが収納される筒状壁部を備えた周壁部を有する電子部品冷却装置に適用する場合には、筒状壁部を含む周壁部に、軸線方向の他方の端部寄りの位置に筒状壁部の内部と連通して筒状壁部の内部に吸引された空気を回転軸の径方向に吐出す少なくとも1つの側方吐出口を形成すればよい。周壁部は、筒状壁部の外側に矩形状の枠体部を備えた構造とすることもできる。この場合には、筒状壁部の一部が枠体部の一部を構成してもよいのは勿論である。
【0015】
インペラに設ける複数枚のブレードは、本来は(主として)軸線方向に空気を流すものであっても、吸引した空気を径方向にできるだけ流すことができるように形成するのが好ましい。軸線方向に風を流す軸流送風機用のインペラであっても、インペラの回転により遠心力によって径方向に風が流れる。そこでできるだけ遠心力により径方向に流れる空気の量が多くなるように、ブレードを設計するのが好ましい。このようにして設計したインペラを用いると、既存の軸流送風機で用いるインペラを用いる場合よりも、送風量を大幅に増大できる。
【0016】
インペラとケーシングとの関係(基本形状、寸法、取り付け位置等)は、既存の送風機におけるそれらの関係と同じにしてもよい。したがって既存の送風機のインペラとケーシングについての設計を利用することも可能である。しかしなが既存の送風機におけるインペラとケーシングとの関係をそのままにして本発明を実現した冷却装置を、厚みの薄い収納ケースの内部に配置して使用した場合に、十分な送風量を得ることができなくなる事態が発生する場合があることが判った。即ち、冷却装置の前記軸線方向の一方の方向の端面(キャビティの一方の方向の開口部即ち吸引側開口部)と収納ケースの内壁面または収納ケースの内部に収納されている回路基板等の部材(以下対向部材と言う。)との間の距離がある程度短くなると、ほとんど送風量を得ることができなくなるのである。このような事態が発生すると、本発明の冷却装置を備えた電子機器の設計が非常に難しくなる問題が発生する。
【0017】
そこで本発明では、ケーシングの一方の方向の端部に一方の方向(ケーシングから離れる方向)に向かって延びるスペーサ手段を設ける。ケーシングの内部にモータを収納し、しかもケーシングの第1の壁部の前記一方の方向の端部に、周方向に間隔をあけて配置された複数本のウエブを介してモータのハウジングを支持する場合には、ケーシングまたはハウジングに前記一方の方向に向かって突出して回転軸の径方向からキャビティ内に空気を吸引することを許容する空間を形成するスペーサ手段を設ける。
【0018】
このスペーサ手段は、ケーシングの第1の壁部または周壁部の一部を延ばして構成してもよい(即ち筒状壁部の一部を軸線方向の一方の方向に延ばした構成にしてもよい)。しかしながらケーシングの前記一方の方向の端部または端面上に第1の壁部または周壁部とは別にスペーサ手段を設けてもよい。この場合に、スペーサ手段とケーシングとを一体的に形成してもよいのは勿論である。更に、スペーサ手段を、モータのハウジングを支持する複数のウエブ部の脚部によって構成してもよく、またこのハウジングによって構成してもよい。
【0019】
いずれにしてもスペーサ手段の軸線方向の長さは、スペーサ手段の一方の方向の端部または端面上にキャビティと全体的に対向する対向部材が配置された場合に、回転軸の径方向からキャビティ内に十分な空気を吸引できる吸引圧力を確立する寸法に定めればよい。この寸法は、別の言い方をすると、インペラが回転したときにスペーサ手段により形成した空間の中で風が流れる圧力差が発生する寸法である。このようなスペーサ手段を設けておけば、どのような厚みの収納ケース内に本発明の冷却装置を装着しても、スペーサ手段が吸引圧力を確立するために必要なスペースを確保するために、特別な設計をすることなく、簡単に冷却装置を電子機器の収納ケース内に組み込むことができる。
【0020】
ケーシングの輪郭の形状は任意である。ケーシングの輪郭形状が矩形をなしている場合に、前述のスペーサ手段をケーシングと別に設ける場合には、例えばスペーサ手段をほぼ矩形の輪郭の各角部に配置した4本のピラーから構成することができる。ケーシングの各角部に配置した4本のピラーは、確実に所定のスペースを確保する。またこれら4本のピラーに取付ねじを挿入するための貫通孔を形成すれば、冷却装置の取り付けが容易になる上、スペーサ手段を形成するためのスペースをケーシングに特に設ける必要がなく、ケーシングをコンパクトに形成できる。
【0021】
またケーシングの第2の壁部が、冷却されるべき電子装置の被冷却壁部によって構成される場合に、被冷却壁部と間隙を介して対向するケーシングの第3の壁部を被冷却壁部とほぼ全面的に対向するように大きくしてもよい。
【0022】
本発明の冷却装置を電子機器の収納ケース内に収納する場合の態様は種々考えられる。まずスペーサ手段をケーシングに設けない場合には、ケーシングのキャビティの一方の方向に位置する開口部と該開口部と対向する対向部材との間に吸引圧力を確立するのに十分なスペースをあけて、冷却装置を収納ケース内に収納する。
【0023】
またスペーサ手段を設ける場合には、電子装置の収納ケースの内壁面または収納ケースの内部に配置される回路基板の表面にスペーサ手段を当接させるようにして電子部品冷却用送風機を収納ケース内に配置する。
【0024】
また対向部材が第2の壁部を構成する被冷却壁部との間にダクトを形成するように配置されていもよい。この場合には、ダクトの内部の空気をインペラで積極的に攪拌して、被冷却壁部を冷却する。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1及び図2は、本発明の電子部品冷却装置の一実施例の斜視図及び断面図である。図2において矢印は風の流れる方向を示している。これらの図において、1は後に詳しく説明するケーシングであり、2はロータ21とステータ22とを有するモータである。モータ2としては、二相DCブラシレス直流モータが用いられている。図2に示すように、モータ2のステータ22は、鉄心23に励磁巻線24が巻装されて構成され、ケーシング1の後述する閉塞壁部12に設けられた筒状のボス部12aに固定されている。このボス部12aには、軸受ホルダ25が嵌合されており、軸受ホルダ25内には軸線方向に間隔をあけて一対の軸受26が収納されている。回転軸27の一端は一対の軸受26によって回転自在に支持され、回転軸27の他端はカップ状部材28の底壁部28aに形成された嵌合孔に嵌合されている。軸受ホルダ25には、駆動回路を構成する電子部品が装着された回路基板29も固定されている。カップ状部材28の周壁部28bの内周面上には、永久磁石PMからなる複数の磁極が固定されている。ロータ21は、回転軸27と、カップ状部材28と、永久磁石PMとから構成されている。
【0026】
3はモータ2の回転軸27の軸線方向の一方の方向(以下吸引方向と言う。)から空気を吸引し、吸引した空気を主として軸線方向の他方の方向(以下吐出方向と言う。)に流すように形成された複数枚のブレード31を有してロータ21に固定されたインペラである。インペラ3は、ロータ21のカップ状部材28の周壁部28bに嵌合されたリング部30とブレード31とが一体に成形されて構成されている。なおインペラ3に設ける複数枚のブレード31は、吸引した空気を径方向にできるだけ流すことができるように形状及び取付角度が定められている。
【0027】
ケーシング1について具体的に説明すると、ケーシング1はポリブチレンテレフタレート等の合成樹脂を用いて一体に成形されている。そしてケーシング1は、モータ2及びインペラ3を収納する筒状のキャビティ4を内部に有している。またケーシング1はキャビティ4を画定または形成する周壁部11とキャビティ4の前述の軸線方向の他方の方向即ち吐出方向側に位置する端部を閉塞する閉塞壁部12とを有している。この例では、周壁部11がキャビティ4を画定するようにインペラ3を囲む第1の壁部を構成し、閉塞壁部12が他方の方向に向かって空気が流れるのを阻止する第2の壁部を構成している。
【0028】
周壁部11は、軸線方向から見た輪郭形状がほぼ矩形状をなすように構成された4つの側壁部11a〜11dから構成されている。本実施例においては、これら4つの側壁部11a〜11dによって、インペラの外周を囲む筒状壁部13と該筒状壁部の外側に位置する枠体部14とが形成されている。なお本実施例では、筒状壁部13の一部が枠体部14の一部を兼ねている。そして4つの側壁部11a〜11dのうちの1つの側壁部11aには、吸引方向側の端部寄りの位置にインペラ3を全周にわたって囲む囲繞部分15を残すようにして、吐出方向側の端部寄りの位置にキャビティ4の吸引側開口部41からキャビティ4の内部を通して吸引した空気を回転軸27の径方向に吐出す1つの側方吐出口5が形成されている。言い換えると、インペラ3が収納される筒状壁部13を含む周壁部11には、吐出方向の端部寄りの位置に筒状壁部13の内部と連通して筒状壁部13の内部に吸引された空気を回転軸27の径方向に吐出す側方吐出口5が形成されている。
【0029】
この例では、側方吐出口5からの送風量を増やすために、側方吐出口5から吐出された空気の多くがキャビティ4(または筒状壁部13)の吸引方向側に位置する吸引開口部41から直ちに吸引される空気循環現象が発生しないように側方吐出口5の形状及び寸法を定めている。具体的には、側方吐出口5からインペラ3のブレード31が完全に露出しないように、側壁部11aの壁部分の軸線方向の寸法L1が定められている。この寸法L1は、送風機の大きさや風量によっても異なってくるが、40mm×40mm×16mm(厚み)で、回転数が5,000rpmの送風機では、この寸法Lを約5mm以上にするのが好ましい。また側方吐出口5の軸線方向の寸法L2は、ブレード31が軸線方向の長さで3mm程度露出する寸法にするのが好ましい。
【0030】
また本実施例では、周壁部11の囲繞部分15の軸線方向の寸法L1を次のように定めている。即ち、網板や多孔板等の通気性を有する部材によってキャビティ4の吸引側開口部41が塞がれた場合でも、ブレード31の吸引方向側端部と吸引側開口部41との間の寸法L3が、キャビティ4内に十分な空気を吸引できる吸引圧力を確立する寸法になるように定められている。この寸法は、別の言い方をすると、インペラ3が回転したときに、ブレード31の吸引方向側端部と吸引側開口部41との間に形成されるスペースの中で風が流れる圧力差が発生する寸法である。寸法L1をこのように設定しておけば、例えば、電子機器の収納ケースの壁部に吸引側開口部41を密着させて取り付けた場合でも、収納ケースの壁部に網または複数の貫通孔等の通気部が形成されていれば、電子機器の収納ケースの内部に支障なく送風することができる。なおキャビティ4の吸引側開口部が閉塞されない状態で使用される場合には、寸法L3をブレード31の吸引方向側端部と吸引側開口部41との間に形成されるスペースの中で風が流れる圧力差が発生する寸法にする必要はない。
【0031】
普通の軸流送風機が軸線方向に風を送風する送風量を1とした場合に、本実施例の冷却装置で径方向に送風できる送風量は、0.33程度である。ちなみに径方向に送風することを目的にして作られたシロッコファンでの送風量は0.2程度であり、しかもシロッコファンではこの送風量を得るために本実施例の冷却装置よりも15%以上多くの電力を必要とする。
【0032】
なお図1において、ケーシング1の四隅に形成された貫通孔6…は取付用ネジを挿入するネジ挿入孔である。
【0033】
図3及び図4は、本発明の冷却装置の他の例の斜視図及び断面図である。図1及び図2に示した実施例と異なるのは、ケーシング1の吸引方向の端部または端面に吸引方向(ケーシング1から離れる方向)に向かって延びるスペーサ手段を設けている点である。その他の構成は、図1及び図2の例と実質的に同じであるため、図1及び図2に付した符号と同じ符号を付して説明を省略する。本実施例は、例えばマイクロコンピュータ等の電子機器の厚みの薄い収納ケースの内部に配置するのに好適な冷却装置である。収納ケースの厚みが薄くなると、どうしても送風機装置一方の方向の端面(キャビティ4の一方の方向の開口部即ち吸引側開口部41)と収納ケースの内壁面または収納ケースの内部に収納されている回路基板等の対向部材との間の距離が短くなる。この距離があまり短くなると、送風することができなくなる。送風機では、ブレードが回転して気圧を下げ、周囲の気圧の高い部分から気圧の低い部分に風を流す。ところが対向部材との間の距離が短くなると、気圧の高い部分と気圧の低い部分との分離ができなくなるために、風が流れなくなるものと推測される。即ち対向部材が、気圧の低い部分と気圧の高い部分(インペラの中央部分)との間の障壁になるために、風が移動しなくなるものと推測される。しかしながらこの種の冷却装置を電子機器に使用するユーザには、この距離をどの程度とれば良いかが分からない。そこで本実施例では、ケーシング1の吸引方向側の端部にケーシング1から離れる方向に向かって延びるスペーサ手段を構成する4本の突出部またはピラー7…を設けた。これら4本のピラー7…は、ケーシング1と一体に成形されており、それぞれの中心にはねじ挿入孔として用いる貫通孔6…が形成されている。
【0034】
ピラー7…の軸線方向の長さ(突出寸法)は、ピラー7…の吸引方向側の端部または端面上にキャビティ4と全体的に対向する対向部材が配置された場合でも、キャビティ4内に十分な空気を吸引できる吸引圧力を確立する寸法に定めてある。この寸法は、別の言い方をすると、インペラが回転したときにピラー7…により形成したスペースの中で風が流れる圧力差が発生する寸法である。このようなピラー7…からなるスペーサ手段を設けておけば、どのような厚みの収納ケース内に本実施例の送風機を装着しても、ピラー7…が吸引圧力を確立するために必要なスペースを確保するため、特別な設計をすることなく、簡単に送風機を電子機器の収納ケース内に組み込むことができる。
【0035】
本実施例では、ケーシング1の各角部に配置した4本のピラー7…は、確実に所定のスペースを確保する。またこれら4本のピラー7…に取付ねじを挿入するための貫通孔6…を形成してあるため、冷却装置の取り付けが容易になる上、スペーサ手段を形成するためのスペースをケーシングに特に設ける必要がなく、ケーシングをコンパクトに形成できる。
【0036】
現在市販されているノートブックタイプのマイクロコンピュータの収納ケースの厚みは、ますます薄くなる傾向にある。そのため将来的には収納ケースの内部に収納する冷却装置の厚み(軸線方向の寸法)を20mm以下にすることが必要になると予想される。しかしながらクロスフローファンやシロッコファンでは、厚みを薄くしてもある程度の送風量を得ることは極めて困難である。本発明の冷却装置を用いればこれらの問題を解消することができる。
【0037】
図5は、図1及び2に示した本発明の実施例の冷却装置をノートブックタイプのマイクロコンピュータ(電子機器)の収納ケースに収納されたマイクロプロセッサを冷却するための電子部品冷装置として用いる場合の収納例を示す概略図である。図5において、Wは電子機器の収納ケースの壁部であり、MPUは回路基板CBに直接装着されたマイクロプロセッサである。本実施例では、回路基板CBの上にマイクロプロセッサMPUと隣接して冷却装置を装着している。この例では、冷却装置のケーシング1の閉塞壁部12が回路基板CBの上に置かれている。そして側方吐出口5が、マイクロプロセッサMPUに向かって開口している。このように冷却装置を配置すると、マイクロプロセッサMPUを直接的に冷却することができる。
【0038】
図6は、図1及び図2の実施例の冷却装置をマイクロプロセッサMPUを冷却するためのヒートシンクHに固定する実施例の概略構成を示している。図6において、SはマイクロプロセッサMPUを装着するソケットである。冷却装置はヒートシンクHに設けた取付け金具8に対してケーシング1に設けた貫通孔6を利用してねじ止めされている。この実施例では、側方吐出口5がマイクロプロセッサMPUを冷却するヒートシンクHに向かって開口している。このように冷却装置を配置すると、ヒートシンクHを冷却することにより間接的にマイクロプロセッサMPUを冷却することができる。
【0039】
図7は、図3及び図4に示した冷却装置のタイプの他の実施例の冷却装置をマイクロプロセッサMPUを冷却するために用いた例を示している。この冷却装置では、ケーシング1´の閉塞壁部12´の内壁面が側方吐出口5に向かって傾斜(閉塞壁部12´の厚みが側方吐出口5に向かうに従って薄くなるように傾斜)している。このようにすると閉塞壁部12´に当たった風をスムーズに側方吐出口5に導くことができる。本実施例では、送風機のケーシング1´に設けたスペーサ手段を構成するピラー7…を回路基板CBに当接させた状態で送風機を回路基板CBに固定している。送風機と対向する回路基板CBの部分の上にはトランジスタ等の電子部品EPが配置されている。本実施例によれば冷却装置が作動すると、これらトランジスタ等の電子部品EPとヒーシンクHの両方を同時に冷却することができる。
【0040】
図8は、図3及び図4に示した冷却装置のタイプの更に他の実施例の冷却装置をマイクロプロセッサMPUを冷却するために用いた例を示している。この送風機では、ケーシング1´´に二つの側方吐出口5a及び5bが形成されている。そしてこれら二つの側方吐出口5a及び5bは、回路基板CBの上に配置された二つのマイクロプロセッサMPUを冷却するための二つのヒートシンクHに向かって開口している。このようにケーシング1´´の複数の側壁部に複数の側方吐出口5a及び5bを形成すると、複数の電子部品を同時に冷却することが可能になる。
【0041】
図5〜図8の実施例では、冷却装置を回路基板CBに装着しているが、送風機を収納ケースの壁部Wに固定してもよい。
【0042】
また図5〜図8の実施例では、冷却装置を収納ケース内で直接電子部品に送風する目的で用いているが、収納ケースの外部に収納ケースの内部の空気を排出する目的や、収納ケースの外部の空気を収納ケースの内部に取り入れる目的で、本発明の送風機を用いてもよいのは勿論である。
【0043】
上記各例によれば、軸線方向の一方の方向の端部寄りの位置にインペラを全周にわたって囲む囲繞部分を残すように、ケーシングの周壁部の軸線方向の他方の端部寄りの位置に側方吐出口を形成するため、この囲繞部分が側方吐出口から排気された空気が直ちにキャビティまたは筒状壁部の吸引開口部に吸引されるのを阻止する。したがって空気循環現象が発生するのを抑制できて、ケーシングの周壁部に側方吐出口を形成する場合において、十分な送風量を得ることができる。またケーシングにスペーサ手段を設けると、厚みの薄い電子機器の収納ケース内に送風機を配置した場合でも、スペーサ手段が吸引圧力を確立するために必要なスペースを確保するため、特別な設計をすることなく、簡単に送風機を電子機器の収納ケース内に組み込むことができる利点がある。
【0044】
図9〜図11は、本発明の更に別の実施の形態の一例の平面図、断面図及び使用するヒートシンクの平面図を示している。図1〜図4に示した冷却装置とは、モータの取付構造と、ケーシングの構造と、スペーサ手段の構造が大きく異なる。その他の点は、図1〜図4に示した冷却装置とほぼ同様である。
【0045】
図10において、101は後に詳しく説明するケーシングであり、102はロータ121とステータ122とを有する二相DCブラシレス直流モータである。そして123は鉄心、124は励磁巻線、125はハウジング、125aはハウジングに設けられた軸受ホルダ、126は軸線方向に間隔をあけて配置された一対の軸受である。また127は回転軸であり、この回転軸127の他端はカップ状部材128の底壁部128aに形成された嵌合孔に嵌合されている。ハウジング125には、駆動回路を構成する電子部品が装着された回路基板129も固定されている。カップ状部材128の周壁部128bの内周面上には、永久磁石PMからなる複数の磁極が固定されている。ロータ121は、回転軸127と、カップ状部材128と、永久磁石PMとから構成されている。
【0046】
103はモータ102の回転軸127の軸線方向の一方の方向(以下吸引方向と言う。)から空気を吸引する複数枚のブレード131を有してロータ121に固定されたインペラである。インペラ103は、ロータ121のカップ状部材128の周壁部128bに嵌合されたリング部130と複数のブレード131…とが一体に成形されて構成されている。なおモータ101のハウジング125は、周方向に120度間隔で配置された3本のウエブ108a〜108cを介してケーシング101に固定されている。特にウエブ108aには、コード接続用のコネクタ導体109が固定されている。各ウエブ108a〜108cは、軸線方向と平行に延びる脚部108dと径方向に延びる連結部108eとからそれぞれ構成されている。
【0047】
次にケーシング101について具体的に説明すると、ケーシング101はポリブチレンテレフタレート等の合成樹脂を用いて、ハウジング125及びウエブ108a〜108cと一体に成形された第1のケーシング半部111とヒートシンク112から構成された第2のケーシング半部とが組み合わせれて構成されている。ケーシング半部111は、インペラ103が収納されるキャビティ104の一部を画定するようにインペラ103の外周を囲む筒状壁部111aと筒状壁部111aの基部から該筒状壁部と直交する方向に延びるフランジ部111bとから構成されている。筒状壁部111aは、キャビティ104を画定する第1の壁部の一部を構成する囲繞部分に相当する。筒状壁部111aの軸線方向の一方の方向(吸引方向)側の端部には、一端がハウジング125に一体に固定されたウエブ108a〜108cの脚部108d…がそれぞれ一体に固定されている。この例では、これら脚部108d、連結部108eまたはハウジング125によって、スペーサ手段が構成されている。脚部108d…の軸線方向の突出寸法は、連結部108e及びハウジング125の上に、キャビティ104と全体的に対向する対向部材が配置された場合にできる空間(2つの脚部108dの間に形成される隙間または筒状壁部111aの端面と連結部108eとの間にできる隙間)G…から、キャビティ104内に十分な空気を吸引できる吸引圧力を確立できる寸法に定めれられている。即ちこの寸法は、インペラ103が回転したときに脚部108dにより形成した空間Gの中で風が流れる圧力差が発生する寸法である。
【0048】
フランジ部111bは、側方吐出口105に対応する部分が他の部分よりも長く延びている。そしてフランジ部111bには、4つの貫通孔H…が形成されていいる。4つの貫通孔H…のうち、対角に位置する2つの貫通孔Hにねじ110が螺合されて、第1のケーシング半部111がヒートシンク(第2のケーシング半部)112にねじ止めされている。
【0049】
図11に示すように、ヒートシンク112は、インペラ103と対向する第2の壁部を構成するベース112aと、このベース112aの表面上に一体に設けられてベース112aの3つの辺に沿って延びるリブ112bと、リブ112bが設けられていないベース112aの1つの辺に対応して設けられた複数の放熱フィン112c…とから構成される。ベ−ス112aは、輪郭形状が、第1のケーシング半部111のフランジ部111bの輪郭とほぼ同じ形状を有している。リブ112bは、第1のケーシング半部111のフランジ部111bが接触する平坦部112b1 と、平坦部112b1 からベース112aに向かって傾斜する傾斜部112b2 とから構成される。傾斜部112b2 は、図11で見て、馬蹄形状またはU字形を呈している。各放熱フィン112c…はベース112aの中心側からベース112aの1つの短辺に向かってほぼ放射状に延びている。各放熱フィン112c…は、ベース112aと直交するように起立してベース112aと一体に設けられており、ベース112aの1つの短辺(側方吐出口105)に向かうに従って厚み寸法が増加する。またリブ112bには、第1のケーシング半部111のフランジブ111bに設けた貫通孔H…と整合する4つのねじ孔SHが形成されている。ねじ110が螺合されていない貫通孔H…及びねじ孔SHは、冷却装置の取付けに利用される。
【0050】
この例では、キャビティ104のウエブ108a〜108c側の開口部から吸引した空気は、図10に示すように、ヒートシンク112のリブ112bによって囲まれたベース112aの表面に沿って流れ、各放熱フィン112cの間を通って側方吐出口105から吐出される。ヒートシンク112のベース112aの裏面には、ホルダを用いてCPUまたはMPU等の電子部品が装着される。
【0051】
この例では、スペーサ手段(108d,108c等)が設けられているため、電子機器の収納ケースの壁部等からなる対向部材がウエブ108a〜108c及びハウジング125の上に近接して配置されても、側方吐出口105から空気を吐出すことができて、電子部品の冷却を行うことができる。
【0052】
この例でも、側方吐出口105からの送風量を増やすために、側方吐出口105から吐出された空気の多くがキャビティ104(または筒状壁部111a)の吸引方向側に位置する吸引開口部から直ちに吸引される空気循環現象が発生しないように筒状壁部111aの軸線方向寸法または側方吐出口105の形状寸法を定めている。
【0053】
なおこの例では、モータ(回転軸127の軸線)はヒートシンク112の中央には配置されていない。モータ(回転軸127の軸線)は、ヒートシンク112の中央部からヒートシンク112の長手方向の一方の方向(側方突出口105から離れる方向)に偏って配置されている。この構成により、1つの側方突出口105から空気が吐出される場合に、冷却効率が高くなる。
【0054】
図12(A)及び(B)は、図9〜図11に示した例の変形例の断面図と使用するヒートシンクの平面図である。なおこれらの図において、図9〜図11に示した部材と同様の部材には、図9〜図11に示した符号に100を加えた数の符号を付してある。この例でも、1つの側方吐出口105´を有している。図9〜図11の例と異なるのは、インペラ103の周囲を囲むリブ112を用いずに、インペラ103の全周を放熱フィン212cで囲んでいる点である。なお側方吐出口105´側の1辺に位置する放熱フィン212cの通路212dは側方吐出口105´に向かって開口しているが、残りの3つの辺に位置する放熱フィン212cの間に形成される通路212d´は外側端部が閉じている。
【0055】
その他の点は、図9及び図10に示した構造と同じである。この例で用いるヒートシンク212は、ベース212aの表面にインペラ103の下側半部の周囲を全体的に囲むように複数の放熱フィン212cを一体に設けている。放熱フィン212cによって囲まれた空間は、キャビティ104´の一部を構成している。この例でも、スペーサ手段(108d,108c等)が設けられているため、電子機器の収納ケースの壁部等からなる対向部材がウエブ108a〜108c及びハウジング125の上に近接して配置されても、吐出口105´から空気を吐出すことができて、電子部品の冷却を行うことができる。
【0056】
図13(A)及び(B)は、図9〜図11に示された構造と図12に示された構造の特徴を合わせ持つ実施例の断面図及び使用するヒートシンクの平面図を示している。なおこれらの図において、図9〜図11及び図12に示した部材と類似の部材には、図12に示した符号にダッシュを加えた数の符号を付してある。この例においては、ヒートシンク212´の構造とインペラ103の取付け位置が、先の例と相違する。まずヒートシンク212´の外周部には、側方開口部105´側の一辺を除いて、インペラ103の外周部を囲むようにリブ212´bが設けられている。そして放熱フィン212´cは、側方開口部105´側とこの側方開口部105´と隣接する1つの辺に沿って配置されている。これらの放熱フィン212´c…は、インペラ103が時計回り方向に回転した際に、インペラ103から吐出される空気の流れに沿って延びるように形状が定められている。すなわちインペラ103から吐出される空気の流れに対して大きな抵抗とならないように、放熱フィン212´c…の形状が定められている。また放熱フィン212´c1 及び212´c2 は、インペラ103から吐出された空気がリブ212´bの内面に沿って流れるように形状が定められている。この例では、インペラ103の中心(回転軸127の軸線)C1 が、ヒートシンク212´の中心C0 からヒートシンク212´の1つの角部側(側方吐出口105とは反対側に位置し且つインペラ103の回転方向とは逆の方向に位置する角部側)に偏って位置している。この例によると、図12の例よりも、放熱効率を高めることができる。
【0057】
図14(A)〜(C)は、本発明の他の実施例の平面図、側面図及び断面図を示している。なおこれらの図において、図9〜図11及び図12に示した部材と同様の部材には、図12に示した符号に100を加えた数の符号を付してある。この例では、ヒートシンクの4つの辺に向かってそれぞれ開口する4つの側方吐出口305が形成されている。そしてこの例では、第1のケーシング半部311及び第2のケーシング半部を構成するヒートシンク312の平面図で見た輪郭形状は、それぞれほぼ正方形をなしている。この例が、特に図9〜図13の例と異なるのは、スペーサ手段を構成する3つのウエブ308a〜308cの脚部308dどうしが、円弧状の補強用連結片310によって連結されている点である。このようにすると筒状壁部311aに周方向に延びる3つの窓部が形成されたように見える。これらの窓部が、図9及び図12の間隙Gと同じ機能を果たす。この例によると、第1のケーシング半部311の機械的強度が増加する。
【0058】
図15は、本発明の実施の形態の他の例を示す斜視図であり、図16は図15の冷却装置を電子機器の内部に収納した状態の主要部の断面図である。これらの図に示した冷却装置は、プラズマディスプレイ装置のように広い発熱面積を有する電子部品を冷却する用途に用いられるものである。そのため上記各例と異なって、この例では、電子部品の被冷却壁部(発熱部)413を冷却装置のケーシング401の一部として利用している。即ち、ケーシング401の壁部のうちインペラ403と対向し、キャビティ404を通して吸収した空気が軸線方向の他方の方向に向かって流れるのを阻止する第2の壁部として電子部品の被冷却壁部(発熱部)413を利用している。吸引した空気は、第2の壁部を構成する被冷却壁部(発熱部)413に沿って流れる。
【0059】
またケーシング401は、第1のケーシング部分411と第2のケーシング部分412とを備えている。第1のケーシング部分411は、インペラ403の軸線方向の一方の方向側の半部を全周にわたって囲む囲繞部分を構成する筒状壁部411aと、この筒状壁部411aの基部から径方向に延びるフランジ部411bとから構成される。フランジ部411bは、輪郭形状が矩形をなしている。そしてフランジ部411bの四隅には、取付用の貫通孔411c…が形成されている。モータ402のハウジング425は、3つのウエブ408…によって筒状壁部411aの軸線方向の一方の方向の端部に連結されている。この例でもウエブ408…の脚部408dが、筒状壁部411aの端部から前記一方の方向に向かって突出して回転軸の径方向からキャビティ404内に空気を吸引することを許容する空間Gを形成するスペーサ手段を構成している。第2のケーシング部分412は、第2の壁部を構成する被冷却壁部413と所定の間隙を介してほぼ全面的に対向する第3の壁部を構成する矩形状の平板部412aと、この平板部412aの2つの長辺に設けられて被冷却壁部413に向かって延びている一対の側壁部412b及び412cとから構成されている。図16に示すように、平板部412aのほぼ中央部には、第1のケーシング411の筒状壁部411aが嵌合される貫通孔412dが形成されている。また図15に示すように、平板部412aには、第1のケーシング部分411のフランジ部411bに設けた貫通孔411c…と整合する4つの取付用の貫通孔412e…が形成されている。第1のケーシング部分411と第2のケーシング部分412とは、整合した貫通孔411c及び貫通孔412eにねじが螺合されて固定される。
【0060】
この例では、第2のケーシング部分412の長手方向の両端に、2つの吐出口が形成されている。図16に示すように、この冷却装置が電子機器の被冷却壁部413をケーシングの一部として取り付けられ且つ電子機器の収納ケースまたは回路基板等からなる対向部材Wが、モータ402のハウジング425に近接して配置された場合には、ウエブ408の脚部408dの突出寸法に相当する高さ寸法を有する空間Gが吸引側に形成される。この例においても、ウエブ408の脚部408dの突出寸法またはハウジング425の突出寸法は、キャビティ404内に十分な空気を吸引できる吸引圧力を確立できる寸法、即ちインペラ403が回転したときに脚部408dにより形成した空間Gの中で風が流れる圧力差が発生する寸法に定められている。したがってこのような状態でも、空気は対向部材Wと第3の壁部を構成する平板部412aとの間に形成される通路を通してキャビティ404の内部に吸引され、平板部412aと第2の壁部を構成する被冷却壁部413との間に形成された通路を通って2つの突出口405から吐出される。
【0061】
この例によれば、1つの送風装置を用いて広い面積の被冷却壁部に沿って空気を流すことができる。なお図15の冷却装置では、2つの吐出口405を備えているが、図17に示すように、第2のケーシング412´の長手方向の一方の端部にだけ、吐出口405´を設けるようにしてもよい。この場合には、送風装置を吐出口405´とは反対側に位置する端部に近付けて配置する。このようにすると、1つの吐出口405´だけであっても、インペラ403によって吸引された空気は、被冷却壁部413の表面全体に沿って流れる。
【0062】
上記例では、対向部材Wがモータ403のハウジング425及びウエブ408と接触する状態になっているが、寸法の余裕があれば、対向部材Wとこれらの部材との間に空間を形成してもよいのは勿論である。なお上記例では、第2のケーシング部分412によってダクト構造体が構成されている。
【0063】
図18は、図15及び図17に示した冷却装置の変形例を示している。この例は、第1のケーシング部分511のフランジ部511bの四隅に筒状の4本のピラー511d…を一体に設けた点が、図15及び図17に示した冷却装置と相違する。各ピラー511d…には、貫通孔511c…が形成されている。貫通孔511c…と第2のケーシング部分512に設けた4つの貫通孔512d…とにねじが螺入されて、第1のケーシング部分511は第2のケーシング部分512に対して固定される。この例では、4本のピラー511d…が、被冷却壁部513と第3の壁部を構成する平板部512aとの間の空間寸法を維持するスペーサとして機能する。したがって対向部材Wがモータ502のハウジング525またはウエブ506に強く押し付けられた場合でも、平板部512が湾曲し、インペラ503が非冷却部513に接触するようになるのを防止できる。
【0064】
図19は、本発明の冷却装置の他の実施の形態の例を示す断面図であり、図20はこの例で用いる送風装置の平面図である。この冷却装置も、図15〜図18に示した冷却装置と同様に、ケーシング601の第2の壁部が、電子部品の被冷却壁部613によって構成されるものである。但し、この冷却装置は、図15〜図18に示した冷却装置とは、第2のケーシング部分(412、512)に相当するものが無い点で大きく相違する。この冷却装置は、対向壁部Wと被冷却壁部613との間に形成されたダクトDの内部で空気を攪拌する。ケーシング601は、インペラ603の軸線方向の一方の方向側の半部を全周にわたって囲む囲繞部分(第1の壁部)を構成する筒状壁部611a、輪郭形状が矩形をなすフランジ部611b及びフランジ部611bの四隅に一体に設けられて内部に貫通孔611cを有する4本のピラー611dからなるケーシング部分611と被冷却壁部613の一部とによって構成されている。この冷却装置では、吐出口605がインペラ603の周囲に360度開口している(即ちインペラ603の下側半部の径方向全体にわたって開口している)。そして筒状壁部611aの軸線方向寸法は、吐出口605から排気された空気の多くがキャビティ604の一方の方向(吸引方向)に位置する開口部から直に吸引される空気回り込み現象の発生を抑制できる寸法を有している。したがって図19に矢印で示すように、吐出口605から吐出された空気は、ある程度ダクト7の内部を被冷却壁部613に沿って流れた後、再度吸引される。したがってダクトD内のある程度広範囲において、空気が循環する。ピラー611は、対向部材W及びケーシング部分611の取付けに利用されるとともに、被冷却壁部613と対向部材Wとの間の空間を維持するスペーサとして機能する。この例では、ピラー611…及びウエブ608の脚部608dが、回転軸の径方向からキャビティ604内に空気を吸引することを許容する空間Gを形成するスペーサ手段を構成している。
【0065】
上記各例では、ウエブの脚部、モータのハウジングまたはケーシングに設けたピラー等により、スペーサ手段を構成しているが、ウエブ及びモータのハウジングの上に更にスペーサ手段を構成する突起等を一体に形成してよい。このようにするウエブ及びモータのハウジングの表面とケーシングの筒状壁部の端面を面一に形成する場合にも、回転軸の径方向からキャビティ内に空気を吸引することを許容する空間を形成することができる。
【0066】
以上の通り、本発明によれば、従来の径流送風機を用いた電子部品冷却装置よりも送風量の多い電子部品冷却装置を提供することができる。また厚みの薄い電子機器の収納ケースに収納しても確実に所定の送風量を確保することできる。
【0067】
以下、本願明細書に記載した複数の発明のうちいくつかの発明の構成要件を記載する。
【0068】
(1) 面状の発熱部(413,513,613)を有する電子部品の前記発熱部に沿って空気を流して前記発熱部を冷却する電子部品冷却装置であって、
前記発熱部との間に間隙をあけて配置される壁部412aと前記発熱部413に沿って流れる前記空気を排出する排気口405とを有するダクト構造体412と、
前記ダクト構造体の前記壁部412aに設けられて、前記発熱部に向かって空気を吸引し、前記発熱部に沿って空気を流す送風装置を備えている電子部品冷却装置。
【0069】
(2) 前記送風装置は、ロータとステータとを有するモータと、前記モータの回転軸の軸線方向の一方の方向から空気を吸引する複数枚のブレードを有して前記ロータに固定されたインペラと、前記モータ及びインペラ403が収納されるキャビティを有するケーシング401とを備え、
前記ケーシング401は前記キャビティを画定するように前記インペラを囲む第1の壁部411aを有し、
前記第1の壁部の前記一方の方向の端部には、周方向に間隔をあけて配置された複数本のウエブ408を介して前記モータのハウジング425が支持され、
前記複数本のウエブ408または前記ハウジング425は、前記一方の方向の端部側に前記キャビティと全体的に対向する対向部材が配置されたときに、前記キャビティ408内に十分な空気を吸引できる吸引圧力を確立するように前記第1の壁部の端部から前記一方の方向に突出していることを特徴とする上記(1)に記載の電子部品冷却装置。
【0070】
(3) ロータとステータとを有するモータと、
前記モータの回転軸の軸線方向の一方の方向から空気を吸引し吸引した空気を主として前記軸線方向の他方の方向に流すように形成された複数枚のブレードを有して前記ロータに固定されたインペラ3と、
前記モータ及び前記インペラが収納されるキャビティ4を有するケーシング1とを備えた送風装置であって、
前記ケーシングは前記キャビティを画定する周壁部と前記キャビティの前記他方の方向に位置する端部を閉塞する閉塞壁部12とを有しており、
前記周壁部14には、前記軸線方向の一方の方向の端部寄りの位置に前記インペラを全周にわたって囲む囲繞部分15を残すようにして、前記軸線方向の他方の端部寄りの位置に前記キャビティ4を通して吸引した空気を前記回転軸の径方向に吐出す少なくとも1つの側方吐出口5が形成されていることを特徴とする送風装置。
【0071】
(4) 前記インペラ3の前記複数枚のブレード31は、前記吸引した空気を前記径方向にできるだけ流すことができるように形成されている上記(3)に記載の送風装置。
【0072】
(5) ノートブック型マイクロコンピュータの収納ケースの内部に配置されたマイクロプロセッサの冷却のために前記収納ケース内に配置される電子部品冷却装置であって、
ロータとステータとを有するDCブラシレス・モータと、
前記モータの回転軸の軸線方向の一方の方向から空気を吸引し、吸引した空気を主として前記軸線方向の他方の方向に流すように形成された複数枚のブレードを有して前記ロータに固定されたインペラと、
前記モータ及び前記インペラが収納される筒状壁部を有するケーシングとを具備し、
前記ケーシングは前記インペラの外周を囲む前記筒状壁部を含む周壁部と前記筒状壁部の前記他方の方向に位置する端部を閉塞する閉塞壁部とを有しており、前記筒状壁部を含む周壁部には、前記軸線方向の他方の端部寄りの位置に前記筒状壁部の内部と連通して前記筒状壁部の内部に吸引された空気を前記回転軸の径方向に吐出す少なくとも1つの側方吐出口が形成されていることを特徴とする電子部品冷却装置。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子部品冷却装置の実施の形態の一例の斜視図である。
【図2】図1の冷却装置の断面図である。
【図3】本発明の電子部品冷却装置の他の例の斜視図である。
【図4】図2の装置の断面図である。
【図5】図1及び2に示した本発明の電子部品冷却装置を電子機器の収納ケースに収納された電子部品を冷却する際の取付態様を示す概略図である。
【図6】図1及び図2の電子部品冷却装置を用いてマイクロプロセッサを冷却するためのヒートシンクに固定した実施例の概略図である。
【図7】図3及び図4に示した電子部品冷却装置の他のタイプの電子部品冷却装置でマイクロプロセッサMPUを冷却する場合の実施例の概略図である。
【図8】図3及び図4に示した電子部品冷却装置の他のタイプの電子部品冷却装置でマイクロプロセッサMPUを冷却する場合の実施例の概略図である。
【図9】本発明の電子部品冷却装置の更に別の実施の形態の一例の平面図である。
【図10】図9の装置の断面図である。
【図11】図9の装置で使用するヒートシンクの平面図である。
【図12】(A)及び(B)は、本発明の電子部品冷却装置の更に別の実施の形態の断面図と使用するヒートシンクの平面図である。
【図13】(A)及び(B)は、図9〜図11に示した例の変形例の断面図と使用するヒートシンクの平面図である。
【図14】(A)〜(C)は、本発明の電子部品冷却装置の更に別の実施の形態の平面図、側面図及び断面図である。
【図15】本発明の電子部品冷却装置の他の実施の形態の斜視図である。
【図16】図15の冷却装置を電子機器の内部に収納した状態の主要部の断面図である。
【図17】本発明の電子部品冷却装置の更に他の実施の形態の斜視図である。
【図18】図15及び図17に示した冷却装置の変形例を示す断面図である。
【図19】本発明の電子部品冷却装置の他の実施の形態の例を示す断面図である。
【図20】図19の例で用いる送風装置の平面図である。
【符号の説明】
1,101,401,501,601 ケーシング
11 周壁部
12 閉塞壁部
13,111a,311a,411a,511a,611a 筒状壁部
2,102,302,402,502,602 モータ
21,121 ロータ
22,122 ステータ
3,103,303,403,503,603 インペラ
31,131,331,431,531,631 ブレード
4,104,304,404,504,604 キャビティ
5,105 側方吐出口
6 貫通孔
7 ピラー
8 取付金具
108a〜108c,308,408,508,608 ウエブ
413,513,613 被冷却壁部(第2の壁部)
W 対向壁部

Claims (2)

  1. ロータとステータとを有するモータと、
    前記モータの回転軸の軸線方向の一方の方向から空気を吸引する複数枚のブレードを有して前記ロータに固定されたインペラと、
    前記モータ及び前記インペラが収納されるキャビティを有するケーシングとを備え、
    前記ケーシングは前記キャビティを画定するように前記インペラを囲む第1の壁部と、前記インペラよりも前記軸線方向の他方の方向側に位置して前記インペラと対向し、前記他方の方向に向かって前記空気が流れるのを阻止する第2の壁部と、前記キャビティを通して吸引され前記第2の壁部に沿って流れる空気を吐出す吐出口とを備えており、
    前記ケーシングは、前記第1の壁部の一部を含む第1のケーシング部分及び前記第1の壁部の残部及び前記第2の壁部を含む第2のケーシング部分が組み合わされて構成され、
    前記第1のケーシング部分は、前記吐出口から排気された空気の多くが前記キャビティの前記一方の方向に位置する開口部から直ちに吸引される空気回り込み現象の発生を抑制するように前記インペラを全周にわたって囲む囲繞部分を有しており、
    前記第2のケーシング部分が前記吐出口に隣接して複数の放熱フィンを備えたヒートシンクからなり、
    前記第1の壁部の前記一方の方向の端部には、周方向に間隔をあけて配置された複数本のウエブを介して前記モータのハウジングが支持されており、
    前記第1のケーシング部分または前記ハウジングには、前記一方の方向に向かって突出して前記回転軸の径方向から前記キャビティ内に空気を吸引することを許容する空間を形成するスペーサ手段が設けられ、
    前記スペーサ手段は、前記複数のウエブ部の脚部によって構成され、
    前記複数の脚部どうしが補強用連結片によって連結されていないことを特徴とする電子部品冷却装置。
  2. 前記スペーサ手段の前記軸線方向の長さは、前記スペーサ手段の前記一方の方向の端部上に前記キャビティと全体的に対向する対向部材が配置されたときに、前記キャビティ内に十分な空気を吸引できる吸引圧力を確立できる寸法に定められている請求項1に記載の電子部品冷却装置。
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