JP3783430B2 - ハイブリッド車の故障診断装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハイブリッド車の故障診断装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、エンジン(例えば、ガソリンエンジン)を搭載した自動車においては、エンジンの排気ガスが排気通路を介して大気中の排出されるが、かかる排気ガスには、HC(炭化水素)、CO(一酸化炭素)、NOx(窒素酸化物)等の大気汚染物質が含まれている。そこで、排気通路には、普通、排気ガスを浄化する排気ガス浄化触媒を用いた触媒コンバータが介設される。そして、かかる排気ガス浄化触媒としては、従来より、HC、CO及びNOxを一括して浄化することができる三元触媒が広く用いられている。
【0003】
しかしながら、三元触媒等の排気ガス浄化触媒は、高温化、触媒毒による被毒等により劣化して触媒活性が低下することがある。そこで、近年、排気ガス浄化触媒の劣化の有無を判定(診断)する故障診断装置、例えば触媒コンバータの上流側と下流側にそれぞれO2センサ(酸素センサ)を設け、両O2センサの検出値から求められる反転比に基づいて排気ガス浄化触媒の劣化の有無を判定するようにした故障診断装置が提案されている(例えば、特開平6−280547号公報参照)。なお、ここで「反転比」とは、一定時間内における、上流側O2センサのリッチ・リーンの反転回数Aと、下流側O2センサのリッチ・リーンの反転回数Bとの比A/Bで定義される数値である。
【0004】
このように、反転比に基づいて排気ガス浄化触媒の劣化の有無を判定するようにした従来の故障診断装置では、普通、エンジンが故障診断に適した状態にあるとき、例えばエンジンの排気ガス量が中程度のとき(例えば、中回転・中負荷)において、反転比が所定のしきい値以下のときには、該排気ガス浄化触媒が劣化しているものと判定するようにしている。なお、反転比は、排気ガス浄化触媒の浄化率が低下するのに伴って徐々に小さくなる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年、地球温暖化の防止等の観点から、自動車のCO2排出量の削減が求められている。そこで、動力源として、エンジン(例えば、ガソリンエンジン)と電気モータとを用いて燃費性能を高めるようにしたハイブリッド車が注目を集めている。かかるハイブリッド車においては、エンジンは、自動車の運転状態に応じて間欠的に運転されるが、その運転は燃費性能を高めるために、可及的に熱効率が高くなるような領域、例えば低回転・高負荷領域で行われる。
【0006】
そして、かかるハイブリッド車においても、エンジンの排気ガスを浄化するために、普通のガソリンエンジン車と同様に、排気ガス浄化触媒を用いた触媒コンバータとその故障診断装置とが設けられることが多い。しかしながら、ハイブリッド車においては、前記のとおり、エンジンは、大半、低回転・高負荷領域で運転されるので、反転比による排気ガス浄化触媒の劣化の判定に適した運転状態、すなわち排気ガス量が中程度の状態となることが非常に少なく、なかなか故障診断を行うことができないといった問題がある。
【0007】
本発明は、上記従来の問題を解決するためになされたものであって、燃費性能を高めつつ、排気ガス浄化触媒の劣化を的確かつ容易に判定することができ、さらには種々の車両要求に容易に対応することができ、かつ駆動モータないしはバッテリの負担を軽減することができるハイブリッド車の故障診断装置を提供することを解決すべき課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するためになされた本発明にかかるハイブリッド車の故障診断装置は、(a)それぞれ駆動輪を駆動することができる、電動式の駆動モータと、排気通路に排気ガス浄化触媒(ないしは、排気ガス浄化触媒を用いた排気ガス浄化装置)を備えているエンジン(例えば、ガソリンエンジン)とが設けられ、車両運転状態(バッテリの充電状態を含む)に応じて駆動輪の駆動形態を変更しつつ走行するようになっているハイブリッド車の故障診断装置であって、(b)エンジンが排気ガス浄化触媒の劣化判定(劣化診断)に適した所定の可判定運転状態にあるときに、所定の状態値検出期間における排気ガス浄化触媒の劣化に関連する状態値(例えば、反転比)を検出し、該状態値に基づいて排気ガス浄化触媒の劣化を判定する触媒劣化判定手段と、(c)車両運転中に触媒劣化判定手段が排気ガス浄化触媒の劣化判定を実行できるよう、(スロットル開度、燃料供給量等を制御することにより)エンジンを可判定運転状態で継続運転させる劣化判定制御手段とが設けられ、(d)劣化判定制御手段が、エンジンを可判定運転状態で継続運転させているとき(劣化判定中)において、車両運転状態が高負荷状態となったときには、可判定運転状態での運転を抑制(高負荷状態が長引けば中止)するようになっていることを特徴とするものである。
本発明にかかるもう1つのハイブリッド車の故障診断装置は、上記(a)〜(c)に加えて、劣化判定制御手段が、エンジンを可判定運転状態で継続運転させているときにおいて、車両運転状態が頻繁に過渡運転となるとき(例えば、坂道などでの加減速)には、可判定運転状態での運転を中止するようになっていることを特徴とするものである。
【0009】
これらのハイブリッド車の故障診断装置によれば、基本的には燃費効率向上の観点から高負荷運転が行われ、排気ガス浄化触媒の劣化判定に適した中排気ガス量(例えば低回転・中負荷ないしは中回転・中負荷)となることが非常に少ないハイブリッド車においても、排気ガス浄化触媒の劣化を的確かつ容易に判定することができる。さらに、比較的判定に時間を要する触媒の劣化判定を抑制できるため、種々の車両要求に容易に対応することができ、かつ駆動モータないしはバッテリの負担を軽減することができる。
【0010】
上記ハイブリッド車の故障診断装置においては、制約が多い運転条件下で劣化判定(モニタ)を的確に実行することができるよう、劣化判定制御手段が、状態値検出期間よりも長い期間、エンジンを可判定運転状態で継続運転させるようになっているのが好ましい。
ここで、可判定運転状態としては、例えば、エンジンの排気ガス量が中程度となる運転領域(すなわち、低回転・中負荷ないしは中回転・中負荷領域)で運転されている状態、さらに排気ガス浄化触媒の温度(又は、該温度の指標となるもの)が所定の基準値以上であり、かつエンジンの空燃比(ないしは、燃料供給量)がフィードバック制御(例えば、O2フィードバック制御)されている状態などがあげられる。
【0011】
上記ハイブリッド車の故障診断装置においては、燃費効率ないしは燃費性能が高められるよう、エンジンが、車両高負荷運転時(例えば、急加速時、高速走行時)又はバッテリ充電量減少時に運転されるようになっているのが好ましく、さらに該運転時に高効率(すなわち、低回転・高負荷)となるように制御されるようになっているのがより好ましい。
【0013】
上記ハイブリッド車の故障診断装置においては、車両運転中において車両高負荷運転状態となったときには、エンジンの高効率運転が開始され、車両高負荷運転状態が終了しても、排気ガス浄化触媒の温度が上記基準値以上となるまで高効率運転が継続され、この後エンジンが可判定運転状態で継続運転させられるようになっているのが好ましい。このようにすれば、ハイブリッド運転開始後、早期に劣化判定(モニタ)を完了することができる。
【0014】
上記ハイブリッド車の故障診断装置においては、エンジン出力を電力に変換することができるエンジンモータとバッテリとが設けられていて、エンジンモータが、劣化判定制御手段によってエンジンが可判定運転状態で継続運転させられているときに、エンジン出力を電力に変換して上記バッテリを充電するようになっているのが好ましい。このようにすれば、バッテリの充電が容易となる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明する。まず、本発明にかかる故障診断装置を備えたハイブリッド車の概略構成を説明する。
図1に示すように、ハイブリッド車Wには、その動力源として、エンジン1と駆動モータ2とが設けられている。ここで、エンジン1は、ガソリンを燃料として用いて駆動力(トルク)を生成するようになっている。また、駆動モータ2は、バッテリ3から供給される電力をエネルギ源として駆動力(トルク)を生成するようになっている。ここで、バッテリ3は、エンジン1により回転駆動されるエンジンモータ4によって適宜充電される。なお、エンジンモータ4は、エンジン1の起動時にはバッテリ3から通電されてエンジン1を起動(クランキング)する。
【0016】
ここで、駆動モータ2及びエンジンモータ4は、いずれも通電されたときには回転してトルクを出力する一方、力学的に回転駆動されたときには発電する直流モータであり、したがって両者は本質的には同一の機能を有している。ただ、駆動モータ2は、主としてバッテリ3からの通電により該ハイブリッド車Wの駆動トルクを出力するために用いられる一方、従として減速時に発電(回生)してバッテリ3を充電するためにも用いられ、他方エンジンモータ4は、主としてエンジン1により回転駆動されて発電しバッテリ3を充電するために用いられる一方、従としてバッテリ3から通電されてエンジン駆動用トルクを出力するためにも用いられるのに過ぎない。
【0017】
そして、このハイブリッド車Wにおいては、エンジン1の駆動力は、順に、トルクコンバータ5(T/C)と、クラッチ6と、自動変速機7(A/T)と、差動機構8(ディファレンシャル装置)とを介して左右の駆動輪9、10に伝達されるようになっている。なお、自動変速機7から差動機構8への駆動力の伝達は、ギヤトレイン11の一部を介して行われる。
【0018】
他方、駆動モータ2の駆動力は、ギヤトレイン11と、差動機構8とを介して駆動輪9、10に伝達されるようになっている。ここで、バッテリ3は、後で説明するように、エンジンモータ4又は駆動モータ2(回生時)によって充電される一方、駆動モータ2(場合によってはエンジンモータ4)に放電して該駆動モータ2を駆動するようになっているが、該電力制御(充電、放電の切り替えを含む)は、システムコントローラ14(コンピュータ)によって制御される電力コントローラ15によって行われるようになっている。
【0019】
ここで、エンジン1の排気ガスは、排気通路12を介して大気中に排出されるようになっている。そして、排気通路12には、後で詳しく説明するとおり、排気ガス中の大気汚染物質(例えば、HC、CO、NOx等)を浄化するために、排気ガス浄化触媒として三元触媒を用いた触媒コンバータ13(排気ガス浄化装置)が介設されている。
【0020】
また、システムコントローラ14は、ハイブリッド車Wの各種制御を行うようになっているが、このシステムコントローラ14には、アクセルペダル16の踏み込み量α(アクセル開度α)、ブレーキペダル17の踏み込みの有無、車速V、エンジン水温Tw、バッテリの充電状態ないしはバッテリ電圧、吸入空気量Qa、エンジン回転数Ne、スロットル開度Tv、排気ガス中のO2濃度(空燃比)等の各種制御情報が入力されるようになっている。
【0021】
次に、エンジン1ないしはその付属装置の具体的な構成を説明する。
図2に示すように、エンジン1に燃料燃焼用の空気を供給するために吸気通路20(吸気系統)が設けられ、この吸気通路20には、大気中から空気を取り入れるために共通吸気通路21が設けられている。この共通吸気通路21には、吸入空気(吸気通路20に導入された空気)の流れ方向(図2中では左向き)にみて、上流側から順に、吸入空気中のダスト等を除去するエアクリーナ22と、吸入空気量を検出するエアフローセンサ23と、吸入空気を絞るスロットル弁24とが設けられている。そして、共通吸気通路21の下流端は吸入空気の流れを安定させるサージタンク25(容積部)に接続されている。
【0022】
サージタンク25には、エンジン1の各気筒(図示せず)にそれぞれ吸入空気を供給する複数(1つのみ図示)の独立吸気通路26が接続され、各独立吸気通路26にはそれぞれ、吸入空気中に燃料を噴射(供給)する燃料噴射弁27が設けられている。また、エンジン1の排気ガスを排出する排気通路12には、触媒コンバータ13のやや上流側に配置される上流側O2センサ28(酸素センサ)と、触媒コンバータ13のやや下流側に配置される下流側O2センサ29(酸素センサ)とが設けられている。
【0023】
上流側O2センサ28及び下流側O2センサ29は、それぞれ、実空燃比(実際の空燃比)が理論空燃比(A/F=14.7、λ=1)よりもリッチであるかリーンであるかによって出力(電圧)が大きく変化するセンサであって、例えば0〜1Vの出力範囲において、しきい電圧VB(概ね0.4V)を境として出力電圧が大きく変化する。なお、出力電圧が高い方がリッチであり、低い方がリーンである。
【0024】
ここで、上流側O2センサ28は、主として、実空燃比が理論空燃比となるように燃料噴射弁27からの燃料噴射量をフィードバック制御(O2フィードバック制御)するために用いられる。また、両O2センサ28、29は、後で詳しく説明するように、反転比に基づいて三元触媒(排気ガス浄化触媒)の劣化判定を行うために用いられる。なお、各O2センサ28、29には、それぞれ、活性温度を確保するための電気ヒータが内蔵されている。
【0025】
以下、エンジン1の燃料噴射弁27に燃料(ガソリン)を供給するための燃料供給系統の構成を説明する。この燃料供給系統には、燃料を貯留する燃料タンク31が設けられ、この燃料タンク31内の燃料は、燃料ポンプ32によって、燃料供給通路33を介して燃料噴射弁27に供給されるようになっている。そして、燃料噴射弁27で噴射されなかった余剰の燃料は、燃料還流通路34を介して燃料タンク31に戻されるようになっている。なお、燃料供給通路33には燃料中の異物を除去する燃料フィルタ35が介設され、また燃料還流通路34には、吸気圧に応じて燃料の供給圧力を調整するプレッシャレギュレータ36が介設されている。
【0026】
以下、燃料タンク31内で発生した燃料ベーパ(蒸発燃料)を吸気通路20に回収して、燃料として活用するための蒸発燃料回収系統を説明する。この蒸発燃料回収系統(燃料タンク31を含む)には、燃料タンク31の上部空間部とサージタンク25(吸気通路20)とを連通するパージ通路37が設けられ、このパージ通路37には燃料ベーパを吸着するキャニスタ38が介設されている。ここで、燃料ベーパの流れ方向(図2中では概ね右向き)にみて、キャニスタ38より上流側のパージ通路37(以下、これを「上流側パージ通路37」という)には、燃料タンク31内の圧力(以下、これを「タンク内圧」という)を検出する圧力センサ39と、該上流側パージ通路37を開閉する制御弁40(PCTVバルブ)とが設けられている。なお、上流側パージ通路37の上流端近傍において燃料タンク31内には、転倒時等において上流側パージ通路37への液体燃料の流入を防止するためのロールオーバーバルブ41が設けられている。他方、キャニスタ38より下流側のパージ通路37(以下、これを「下流側パージ通路37」という)には、該下流側パージ通路37を開閉するパージ弁43(パージバルブ)が設けられている。
【0027】
また、キャニスタ38には、先端が大気に開放された大気開放通路44が設けられている。そして、この大気開放通路44には、キャニスタ側から先端側に向かって順に、該大気開放通路44を開閉する大気開放弁45(CDCVバルブ)と、該大気開放通路44を介してキャニスタ38に導入される空気に含まれるダストを除去するエアフィルタ46とが設けられている。
【0028】
ところで、ハイブリッド車Wには、前記のとおり、駆動源として、エンジン1と駆動モータ2とが設けられ、これらの駆動形態(稼働形態)は、該ハイブリッド車Wの運転状態に応じて好ましく変更されるようになっているが、以下該ハイブリッド車Wにおける具体的な駆動形態を、適宜図3〜図8を参照しつつ説明する。なお、以下に説明する駆動形態は単なる例示であって、本発明はかかる駆動形態に限定されるものでないのはもちろんである。
【0029】
(1)発進時
図3に示すように、発進時には原則的に、クラッチ6が解放されてエンジン1が停止する一方、バッテリ3から駆動モータ2に電力が供給され、該駆動モータ2が力行する。このとき、駆動輪9、10は、駆動モータ2のみによって駆動される。なお、エンジンモータ4は、エンジン1が停止し、かつバッテリ3から電力が供給されないので、何ら活動しない(停止する)。
【0030】
但し、図4に示すように、急発進時には、バッテリ3から駆動モータ2に電力が供給されて駆動モータ2が力行するとともに、クラッチ6が締結されかつエンジン1が起動されて高出力運転を行う。さらに、バッテリ3からエンジンモータ4にも電力が供給され、エンジンモータ4も力行する。かくして、駆動輪9、10は、エンジン1と、駆動モータ2と、エンジンモータ4とによって強力に駆動される。
【0031】
(2)エンジン起動時
図5に示すように、エンジン起動時には、クラッチ6が解放され、バッテリ3からエンジンモータ4に電力が供給され、エンジンモータ4が力行する。このとき、エンジンモータ4によってエンジン1が起動(クランキング)される。なお、駆動モータ2は停止している(但し、走行中にエンジン1が起動される場合は停止していない)。
【0032】
(3)減速時
図6に示すように、減速時には、エンジン1は停止し、クラッチ6が解放される。このとき、駆動モータ2が駆動輪9、10によって逆駆動され、駆動輪9、10の駆動力が駆動モータ2に回生される。かくして、駆動モータ2は発電し、この電力によりバッテリ3が充電される。
【0033】
(4)急加速時
急加速時には、前記の図4に示すように、バッテリ3から駆動モータ2に電力が供給されて駆動モータ2が力行するとともに、エンジン1が高出力運転を行う。このとき、バッテリ3からエンジンモータ4にも電力が供給され、エンジンモータ4も力行する。かくして、駆動輪9、10は、エンジン1と、駆動モータ2と、エンジンモータ4とによって強力に駆動される。
【0034】
(5)定常走行時
低負荷での定常走行時には、前記の図3に示すように、原則的には、クラッチ6が解放されてエンジン1が停止する一方、バッテリ3から駆動モータ2に電力が供給され、駆動モータ2が力行する。このとき、駆動輪9、10は、駆動モータ2のみによって駆動される。なお、エンジンモータ4は何ら活動しない。
但し、エンジン冷機時又はバッテリ充電量低下時には、クラッチ6が締結されてエンジン1は運転を行い、このときエンジンモータ4はエンジン1によって回転駆動されて発電し、この電力によりバッテリ3が充電される。
【0035】
図7に示すように、中負荷での定常走行時には、エンジン1が高効率運転を行い、バッテリ3から駆動モータ2へは電力が供給されない。このとき、駆動輪9、10は、エンジン1のみによって駆動され、駆動モータ2は無出力状態となる。なお、エンジンモータ4はエンジン1によって回転駆動されて発電し、この電力によりバッテリ3が充電される。
【0036】
高負荷での定常走行時には、前記の図4に示すように、バッテリ3から駆動モータ2に電力が供給されて駆動モータ2が力行するとともに、エンジン1が高出力運転を行う。このとき、バッテリ3からエンジンモータ4にも電力が供給され、エンジンモータ4も力行する(但し、運転状態により発電する場合もある)。かくして、駆動輪9、10は、エンジン1と、駆動モータ2と、エンジンモータ4とによって強力に駆動される。
【0037】
(6)停車時
停車時には、原則的には、クラッチ6が解放されてエンジン1は停止し、かつ駆動モータ2も停止する(バッテリ3から駆動モータ2に電力が供給されない)。なお、エンジンモータ4は、エンジン1が停止し、かつバッテリ3から電力が供給されないので、何ら活動しない(停止する)。
但し、図8に示すように、エンジン冷機時又はバッテリ充電量低下時には、エンジン1は運転を行い、このときエンジンモータ4はエンジン1によって回転駆動されて発電し、この電力によりバッテリ3が充電される。
【0038】
前記のとおり、エンジン1には、燃料タンク31内で発生した燃料ベーパを吸気通路20に回収するために蒸発燃料回収系統が設けられているが、以下この蒸発燃料回収系統における燃料ベーパの回収手順の一例を説明する。
この蒸発燃料回収系統においては、通常時は、制御弁40と大気開放弁45とが開かれる一方、パージ弁43が閉じられる。このとき、燃料タンク31の上部空間部(以下、これを「タンク空間部」という)は、基本的には、上流側パージ通路37とキャニスタ38と大気開放通路44とを介して大気と連通する。かくして、燃料タンク31内の燃料が蒸発(気化)するなどしてタンク内圧が高まると、該圧力によりタンク空間部内の燃料ベーパを含む空気は、順に、上流側パージ通路37とキャニスタ38と大気開放通路44とを介して大気中に放出される。その際、燃料ベーパはキャニスタ38に吸着(捕集)されるので、結局大気中へは空気のみが放出される。
【0039】
そして、キャニスタ38に適度な量(例えば、飽和吸着量の70%程度)の燃料ベーパが吸着され、あるいは吸着されていると推測され、かつエンジン1が運転を行っているときには、制御弁40が閉じられる一方、パージ弁43と大気開放弁45とが開かれる。このとき、サージタンク25は、下流側パージ通路37とキャニスタ38と大気開放通路44とを介して大気と連通する。かくして、サージタンク25内の負圧によって、大気中の空気が、順に、大気開放通路44とキャニスタ38と下流側パージ通路37とを介してサージタンク25に吸入される。その際、キャニスタ38に吸着されている燃料ベーパがキャニスタ38から離脱してサージタンク25にパージされる。そして、サージタンク25内にパージされた燃料ベーパは、この後エンジン1で燃料として活用される。
【0040】
この蒸発燃料回収系統においては、ときには各種弁40、43、45の作動不良、あるいはパージ通路37等の破損などといった故障ないしは異常が生じることがある。そこで、このハイブリッド車Wでは、適宜蒸発燃料回収系統の故障診断を行うようになっている。この蒸発燃料回収系統の故障診断においては、吸気通路20(サージタンク25)内の負圧を蒸発燃料回収系統に導入し、該負圧導入による蒸発燃料回収系統内の圧力変化に基づいて、蒸発燃料回収系統の故障ないしは異常を判定するようにしている。
【0041】
図9に示すように、この蒸発燃料回収系統の故障診断は、パージ弁43と大気開放弁45とを開く一方、制御弁40を閉じて燃料ベーパのパージを行っているときに実施するようにしている。すなわち、まずパージ中において、適当な時点t1で、大気開放弁45を閉じる一方、制御弁40を開いて蒸発燃料回収系統の故障診断を開始する。なお、パージ弁43は開いたままにしておく。
【0042】
これにより、サージタンク25内の負圧が蒸発燃料回収系統に導入され、タンク内圧が次第に低下する(負圧が高くなる)。そして、タンク内圧が所定の基準圧力(例えば、−200mmAqゲージ(水柱))まで低下し(時点t2)、さらにタンク内圧が若干低下した時点t3でパージ弁43を閉じる。これにより、パージ弁43よりも燃料タンク側の蒸発燃料回収系統は、大気とは遮断されて密閉状態となる。この後、タンク空間部内への負圧の伝播の遅れ等に起因して、圧力センサ39によって検出されるタンク内圧は若干上昇する(戻る)。
【0043】
ここで、タンク内圧の上記上昇がほぼ終了した時点t4におけるタンク内圧を、第1タンク内圧値TP1として記憶する。そして、第1タンク内圧値TP1を検出した時点t4から所定の測定時間(例えば、30秒)を経過した時点t5におけるタンク内圧を、第2タンク内圧値TP2として記憶する。また、この時点t5で制御弁40を閉じ、次に大気開放弁45を開く。なお、パージ弁43は閉じたままにしておく。この後、適当な時間が経過した時点t6でパージ弁43を開き、キャニスタ38に吸着されている燃料ベーパのパージを再開する。
【0044】
このような過程において、まず蒸発燃料回収系統の故障診断開始後にタンク内圧が実質的に上記基準圧力(例えば、−200mmAqゲージ)まで低下するのに要した時間、すなわち時点t1から時点t4までの経過時間(t4−t1)に基づいて、パージ通路37の接続不良、大気開放弁45の開固着(開きぱなし)等に起因する重度の漏れ故障(ラージリーク)の有無が判定される。すなわち、時間(t4−t1)が、予め設定された基準時間(例えば、30秒)よりも長いときには、ラージリークがあるものと判定される。また、時点t1以後においてタンク内圧が基準圧力まで低下しないときにも、ラージリークがあるものと判定される。なお、上記時間(t4−t1)を、(t3−t1)あるいは(t2−t1)としてもよい。
【0045】
次に、第2タンク内圧値TP2と第1タンク内圧値TP1の差圧(TP2−TP1)、すなわち時点t4から時点t5までの期間(測定時間)におけるタンク内圧上昇度合いに基づいて、パージ通路37の軽微な破損等に起因する軽度の漏れ故障(スモールリーク)の有無が判定される。すなわち、差圧(TP2−TP1)が、予め設定されたしきい値よりも大きいとき、例えば第2タンク内圧値TP2がSP2よりも高いときには、パージ通路37内の負圧を適正に維持することができないスモールリークがあるものと判定される。
なお、時点t5から時点t6までの期間においてタンク内圧上昇度合いが所定の基準値より大きいときには、制御弁40が開固着(開きぱなし)しているものと判定される。
【0046】
ところで、前記のとおり、触媒コンバータ13内の三元触媒(排気ガス浄化触媒)は、高温化(熱劣化)、触媒毒による被毒等により劣化してその触媒活性が低下することがある。そこで、このハイブリッド車Wでは、三元触媒の劣化の有無ないしは劣化度合いを判定するための劣化診断(すなわち、故障診断)を行うようにしているが、以下この劣化診断の診断手法を説明する。
【0047】
この三元触媒の劣化診断においては、エンジン1が劣化診断に適した所定の運転状態(特許請求の範囲中の「可判定運転状態」に相当する)にあるとき、例えばエンジン1が中程度の排気ガス量(中排気ガス量)となるように運転され(すなわち、低回転・中負荷ないしは中回転・中負荷状態)、三元触媒の温度がその活性化温度以上であり、かつ空燃比(燃料噴射量)のO2フィードバック制御が行われているときに、上流側及び下流側の両O2センサ28、29によって検出される実空燃比(排気ガス中のO2濃度)の、一定期間(特許請求の範囲中の「状態値検出期間」に相当する)内における反転比(特許請求の範囲中の「状態値」に相当する)に基づいて、三元触媒の劣化の有無ないしは劣化度合いを判定するようにしている。なお、反転比とは、上記一定期間(以下、これを「反転比検出期間」という)内における、上流側O2センサ28のリッチ・リーンの反転回数Aと、下流側O2センサ29の反転回数Bとの比A/Bである。
【0048】
図10に示すように、空燃比(燃料噴射量)のO2フィードバック制御が行われているときには、両O2センサ28、29の出力は、それぞれ、反転比検出期間内においてリッチ・リーンの反転を繰り返すが、三元触媒が正常であれば、上流側O2センサ28の反転回数Aがかなり多いので、反転比(A/B)は非常に大きな値となる。他方、三元触媒の劣化が進むにつれて、下流側O2センサ29の反転回数Bが多くなるので反転比(A/B)は次第に小さくなる。そこで、この実施の形態では、三元触媒の排気ガス浄化率が正常状態の60%(これに限定されるものではない)にまで低下した場合に相当する反転比をしきい値(以下、これを「劣化判定しきい値」という)とし、実際の反転比がこの劣化判定しきい値より大きければ三元触媒は正常状態であると判定し、劣化判定しきい値以下であれば劣化状態であると判定するようにしている。
【0049】
図11に示すように、反転比と、三元触媒の排気ガス浄化率との関係は、三元触媒(触媒コンバータ13)を通過する排気ガスの流量(排気ガス量)に応じてかなり異なったものとなる。なお、図11中では、Z1→Z2→Z3→Z4の順で、排気ガス量が多くなっている。したがって、排気ガス浄化率が同一であっても、排気ガス量が多いときほど反転比(A/B)が小さくなる。かくして、曲線Z3あるいは曲線Z4で示されるように、排気ガス量が比較的多い状態では、三元触媒の正常状態と劣化状態とを区別すべき排気ガス浄化率(例えば、60%)付近では、反転比の変化に対する排気ガス浄化率の変化が極めて大きく、劣化判定しきい値を設定するのが極めてむずかしくなる。また、曲線Z1で示されるように、排気ガス量が比較的少ない状態でも、三元触媒の正常状態と劣化状態とを区別すべき排気ガス浄化率(例えば、60%)付近では、反転比の変化に対する浄化率の変化が極めて大きく、劣化判定しきい値を設定するのが極めてむずかしくなる。
【0050】
これに対して、曲線Z2で示されるように、排気ガス量が中程度のときは、三元触媒の正常状態と劣化状態とを区別すべき排気ガス浄化率(例えば、60%)付近では、反転比の変化に対する排気ガス浄化率の変化が直線的でかつ緩やかであり、劣化判定しきい値を設定するのが極めて容易となる。このため、この実施の形態では、排気ガス量が中程度の状態に対応させて、劣化判定しきい値THBを設定している。したがって、排気ガス量が中程度のとき、すなわちエンジン1が中回転・中負荷のときでなければ、三元触媒の劣化判定を正確に行うことが困難である。
【0051】
ところで、このハイブリッド車Wでは、かかる三元触媒の劣化診断(故障診断)はシステムコントローラ14によって行われるが、以下、図12〜図15に示すフローチャートに従って、このシステムコントローラ14による具体的な劣化診断及びこれに付随する各種制御の制御手法を説明する。なお、システムコントローラ14は、特許請求の範囲に記載された「触媒劣化判定手段」と「劣化判定制御手段」とを含むハイブリッド車Wの総合的な制御装置である。
【0052】
まず、図12〜図13を参照しつつ、該劣化診断におけるメインルーチンである運転モード設定ルーチンの処理手順を説明する。
図12に示すように、この運転モード設定ルーチンでは、まずステップS1でハイブリッド車システムを始動するスタートスイッチがオンされたか否かが判定され、スタートスイッチがオンされていなければ(NO)、このステップS1が繰り返し実行される。すなわち、スタートスイッチがオンされるまで待機する。他方、ステップS1でスタートスイッチがオンされたと判定された場合は(YES)、ステップS2で、アクセル開度α、バッテリ充電状態ないしはバッテリ電圧、車速V、エンジン水温、吸入空気量等の各種制御情報が入力される。
【0053】
次に、ステップS3で、例えば図16に示すような基本運転モードマップを用いて、ハイブリッド車Wの基本運転モードが設定される。
図16に示すように、この基本運転モードマップでは、領域R1で示す低出力域(概ね、時速20〜30km/時以下)では、クラッチ6が開放されてエンジン1が停止され、駆動輪9、10は駆動モータ2のみによって駆動される。但し、バッテリ3の充電量が所定の基準値以下となったときには、エンジン1が運転される。そして、領域R2で示す中出力域では、クラッチ6が締結されてエンジン1が高効率モード(例えば、低回転・高負荷)で運転され、かつ駆動モータ2が通電され、駆動輪9、10はエンジン1及び駆動モータ2によって駆動される。領域R3で示す高出力域では、クラッチ6が締結されてエンジン1が高出力モード(例えば、高回転・高負荷)で運転され、かつ駆動モータ2が通電され、駆動輪9、10はエンジン1及び駆動モータ2によって強力に駆動される。
【0054】
ここで、エンジン1は、高効率となるよう、スロットル開度と燃料噴射量と自動変速機7の変速段とを制御することにより、低回転・高負荷域で運転されるようになっている。なお、スタートスイッチがオンされたときには、所定期間は必ずエンジン1を運転し、エンジン1の始動性を向上させるようにしてもよい。
【0055】
次に、ステップS4で、触媒モニタ(三元触媒の劣化診断プロセス)が終了しているか否かが判定される。そして、触媒モニタが終了していれば(YES)、ステップS5で、該ハイブリッド車Wが、現在設定されている運転モードで運転され、この後ステップS2に復帰して、この運転モード設定ルーチンが続行される。
【0056】
他方、ステップS4で、触媒モニタが終了していないと判定された場合は(NO)、ステップS6でエンジンオンモードであるか否か、すなわちエンジン1を運転すべきモードであるか否かが判定される。ここで、エンジンオンモードであれば(YES)、ステップS7で触媒モニタモードフラグFcatmが1であるか否かが判定される。この触媒モニタモードフラグFcatmは、エンジン1に触媒モニタモードが設定されているときには1がセットされるフラグである。つまり、触媒モニタモードフラグFcatmが1のときは、触媒モニタすなわち三元触媒の劣化診断プロセスが実行中であることを意味する。
【0057】
ステップS7で、Fcatm≠1であると判定された場合は(NO)、今回から触媒モニタが開始されたことになるので、ステップS8で、エンジン1に触媒温度上昇モードが設定される。なお、Fcatm=1であると判定された場合は(YES)、すでにエンジン1に触媒モニタモードが設定されているので、後で説明するステップS11にスキップする。
このハイブリッド車Wでは、前記のとおり、排気ガス量が中程度であり、三元触媒の温度(触媒温度)がその活性化温度以上であり、かつ空燃比のO2フィードバック制御が行われているときに三元触媒の劣化判定を行うようにしている。そこで、このように触媒モニタが開始されたときには、まずステップS8でエンジン1に、低回転・高負荷で運転する触媒温度上昇モードを設定して、触媒温度を高めるようにしている。
【0058】
なお、このようにエンジン1が触媒温度上昇モードで運転される場合でも、ハイブリッド車Wの運転状態が図16中の領域R1にあり、したがって本来的にはエンジン1が駆動輪9、10を駆動する必要がないとき(後で説明するステップS14経由でこのステップS8が実行された場合等)には、クラッチ6を解放(オフ)してエンジン1の駆動力が駆動輪9、10に伝達されないようにする。
【0059】
次に、ステップS9で、触媒温度上昇モードフラグFcatupに1がセットされる。この触媒温度上昇モードフラグFcatupは、エンジン1に触媒温度上昇モニタモードが設定されているときには1がセットされるフラグである。続いて、ステップS10で、触媒温度が推定され、この推定された触媒温度が所定値以上であるか否かが判定される。この所定値は、三元触媒の活性化温度付近に設定される。ここで、触媒温度の推定は、例えば、スタートスイッチがオンされた後で最初にエンジン1が始動されたときのエンジン水温と、その後のエンジン運転時間の積算値あるいは吸入空気量の積算値とに基づいて、よく知られた方法で行われる。具体的には、例えば、上記エンジン水温の一次関数(正の相関)である値aと、エンジン運転時間又は吸入空気量の積算値の一次関数(正の相関)である値bの和(a+b)等で触媒温度を推定することができる。なお、温度センサを用いて触媒温度を実測してもよい。
【0060】
ステップS10で、触媒温度が所定値未満であると判定された場合は(NO)、まだ三元触媒の劣化判定を実施できる状態ではないので、ステップS5で、該ハイブリッド車Wが、現在設定されている運転モードで運転され、この後ステップS2に復帰して、該運転モード設定ルーチンが続行される。
【0061】
他方、ステップS10で、触媒温度が所定値以上であると判定された場合は(YES)、ステップS11で該ハイブリッド車Wが車両高負荷運転モードであるか否か、すなわち図16中の領域R3に対応する運転状態であるか否かが判定される。ここで、車両高負荷運転モードでなければ(NO)、ステップS16で、エンジン1に触媒モニタモードが設定され、続いてステップS17で触媒モニタモードフラグFcatmに1がセットされる。
【0062】
この触媒モニタモードでは、エンジン1は、三元触媒の劣化判定に適した中程度の排気ガス量となる低回転・中負荷領域(ないしは、中回転・中負荷領域)で運転される。そして、このようにエンジン1が触媒モニタモードで運転される場合でも、ハイブリッド車Wの基本運転状態が図16中の領域R1にあり、したがって本来的にはエンジン1が駆動輪9、10を駆動する必要がないとき(後で説明するステップS14〜S15を経由してこのステップS16が実行された場合等)には、クラッチ6を解放(オフ)してエンジン1の駆動力が駆動輪9、10に伝達されないようにする。なお、ハイブリッド車Wが低速(例えば、10km/h以下)で走行している場合は、クラッチ6を締結(オン)し、自動変速機7を好ましく制御しつつ、てエンジン1と駆動モータ2とで駆動輪9、10を駆動するようにしてもよい。この後、ステップS5で、該ハイブリッド車Wが、現在設定されている運転モードで運転され、この後ステップS2に復帰して、該運転モード設定ルーチンが続行される。
【0063】
他方、ステップS11で車両高負荷運転モードであると判定された場合は(YES)、ステップS12で、車両高負荷運転カウンタThが1だけインクリメントされる(Th←Th+1)。この車両高負荷運転カウンタThは、ハイブリッド車Wの基本運転状態が図16中の領域R3で示される車両高負荷状態にある時間の継続時間をカウントするためのカウンタである。この運転モード設定ルーチンでは、車両高負荷運転モードの継続時間が基準値Th0以上となったときには、触媒モニタモードの実行に起因する燃費性能の低下を防止するために、強制的に触媒モニタモードを中止するようにしている。
【0064】
次に、ステップS13で、車両高負荷運転カウンタThのカウント値が、基準値Th0以上であるか否かが判定され、Th≧Th0であれば(YES)、触媒モニタモードの実行が中止され、ステップS5で該ハイブリッド車Wが、現在設定されている運転モードで運転され、この後ステップS2に復帰して、該運転モード設定ルーチンが続行される。
他方、ステップS13でTh<Th0であると判定された場合は(NO)、ステップS16で触媒モニタモードの実行が継続される。
【0065】
ところで、前記のステップS6で、エンジンオンモードでないと判定された場合は(NO)、ステップS14で、触媒温度上昇モードフラグFcatupが1であるか否かが判定され、Fcatup=1であれば(YES)、触媒モニタを継続するために(途中で放棄しないよう)、ステップS8にスキップして該触媒モニタが続行される。つまり、基本的にはエンジン1の運転を停止すべき状態にあるが、触媒モニタを継続するために、触媒モニタモードでのエンジン1の運転が継続される。これにより、触媒モニタの精度が高められる。
【0066】
他方、ステップS14で、Fcatup≠1であると判定された場合は(NO)、ステップS15で触媒モニタモードフラグFcatmが1であるか否かが判定される。ここで、Fcatm=1であれば(YES)、触媒モニタがまだ終了していないので、ステップS11にスキップして触媒モニタが続行される。これにより、エンジン1側のトルク要求と触媒モニタ側の要求とを両立させて燃費性能の向上を図ることができる。他方、Fcatm≠1であれば(NO)、すでに触媒モニタが終了しているので、ステップS5で該ハイブリッド車Wが、現在設定されている運転モードで運転され、この後ステップS2に復帰して、該運転モード設定ルーチンが続行される。
【0067】
図17に、この運転モード設定ルーチンが実行された場合における、車速(車両負荷)及びエンジン負荷の時間に対する変化特性の一例を示す。なお、触媒モニタに要する時間は、2〜3分である。
図17において、グラフH1(実線)は車速を示し、H2(破線)は車両高負荷状態が比較的長く継続された場合の車速を示している。そして、グラフH3(実線)及びグラフH4(破線)は、それぞれ、時刻t40で触媒モニタが開始された場合におけるグラフH1及びグラフH2に対応するエンジン負荷を示している。なお、グラフH4では、時刻t40で、触媒モニタの開始後、所定時間Th0経過後に触媒モニタを中止して高負荷運転に設定される。
また、グラフH5(実線)及びグラフH6(破線)は、それぞれ、触媒モニタが行われていない場合における、グラフH1及びグラフH2に対応するエンジン負荷を示している。なお、触媒モニタは、時刻t30で終了している。
【0068】
以下、図14〜図15を参照しつつ、エンジン1の燃料噴射と三元触媒の劣化判定とを制御するエンジン制御ルーチンの処理手順を説明する。なお、このエンジン制御ルーチンは、所定のクランク角となる毎に実行される。
図14〜図15に示すように、このエンジン制御ルーチンでは、まずステップS21で、吸入空気量Qa、エンジン水温Tw等の各種データ(制御情報)が入力される。
【0069】
次に、ステップS22で現在の運転モードが読み込まれ、続いてステップS23でエンジンオン(エンジン1が運転中)であるか否かが判定される。そして、ステップS23でエンジンオンであると判定された場合は(YES)、ステップS24で、高効率モードが設定されているか否か、すなわちステップS22で読み込まれた運転モードが高効率モードであるか否かが判定される。なお、ステップS23で、エンジンオンでないと判定された場合は(NO)、エンジン1を運転ないしは制御する必要がないので、後で説明するステップS29にスキップする。
【0070】
ステップS24で高効率モードが設定されていないと判定された場合(NO)、すなわち触媒モニタモードが設定されている場合は、ステップS30で触媒モニタモード用のスロットル開度と燃料噴射量とが設定される。すなわち、低回転・中負荷となるようにスロットル開度と燃料噴射量とが設定される。なお、この場合の空燃比は理論空燃比とされ、上流側O2センサ28の出力値と理論空燃比に相当する値との差に基づくフィードバック補正値と、エンジン負荷とエンジン回転数とから求まる基本噴射量とにより、燃料噴射量が設定される。
【0071】
そして、ステップS31でスロットル弁24が駆動され、続いてステップS32で噴射時期であるか否かが判定される。ここで、噴射時期でなければ(NO)、噴射時期となるまでこのステップS32が繰り返し実行され(噴射時期となるまで待機し)、噴射時期となったときに(YES)、ステップS33で燃料噴射弁27から燃料が噴射される。
【0072】
次にステップS34で、触媒モニタ条件が成立しているか否かが判定される。ここで、触媒モニタ条件としては、例えば、両O2センサ28、29が活性化されていること、エンジン水温Twが所定値以上であること、蒸発燃料回収系統に故障がないことなどがあげられる。そして、触媒モニタ条件が成立していれば(YES)、ステップS35で上流側O2センサ28の反転比検出期間内におけるリッチ・リーンの反転回数Aがカウントされ、続いてステップS36で下流側O2センサ29の反転比検出期間内におけるリッチ・リーンの反転回数Bがカウントされる。そして、ステップS37で、上流側O2センサ28の反転回数Aが所定の基準値A0以上であるか否かが判定される。なお、基準値A0は、例えば、カウント時間が反転比検出期間に一致するような値に設定される。このステップS37でA<A0であると判定された場合は(NO)、まだ反転比を算出することができないので、今回のルーチンを終了する。
【0073】
他方、ステップS37でA≧A0であると判定された場合は(YES)、反転比を算出することが可能な状態となっているので、ステップS38で反転比HR(=A/B)が算出される。続いて、ステップS39で、反転比HRが所定値(劣化判定しきい値)以上であるか否かが判定される。ここで、反転比HRが所定値以上であれば、ステップS40で、三元触媒が正常であると判定される。他方、ステップS39で、反転比HRが所定値未満であると判定された場合は(NO)、ステップS41で三元触媒が異常であると判定され、ワーニング(警報)が出力される。この後、判定終了フラグFmfに1がセットされ、今回のルーチンを終了する。なお、判定終了フラグFmfは、触媒モニタが終了したときに1がセットされるフラグである。
【0074】
ところで、前記のステップS24で、高効率モードが設定されていると判定された場合(YES)、すなわち基本運転モード又は触媒温度上昇モードが設定されている場合は、ステップS25でエンジン1に高効率モードが設定される。すなわち、低回転・高負荷となるようにスロットル開度と燃料噴射量とが設定される。なお、この場合の空燃比は理論空燃比とされ、ステップS30の場合と同様に、フィードバック補正値と基本噴射量とにより、燃料噴射量が設定される。
【0075】
そして、ステップS26でスロットル弁24が駆動され、続いてステップS27で噴射時期であるか否かが判定される。ここで、噴射時期でなければ(NO)、噴射時期となるまでこのステップS27が繰り返し実行され(噴射時期となるまで待機し)、噴射時期となったときに(YES)、ステップS28で燃料噴射弁27から燃料が噴射される。
【0076】
次に、ステップS29で、上流側O2センサ28及び下流側O2センサ29の、反転比検出期間内におけるリッチ・リーンの反転回数のカウント値A及びBがそれぞれ0にリセットされ、今回のルーチンは終了する。
【0077】
この実施の形態では、図14中のステップS24で触媒モニタ中に高効率モードが設定されたときには触媒モニタを直ちに中止するようにしているが、触媒モニタ中に高効率モードが設定されたときに触媒モニタを一時停止して、そのときの反転回数A、Bを記憶しておき、その後触媒の温度変化が小さい所定の短い時間で高効率モードが解除されたときには、直ちに中負荷にして触媒モニタを継続するようにしてもよい。このようにすれば、触媒モニタを確実に実行することができる。
【0078】
なお、この実施の形態のハイブリッド車Wはクラッチ6を有し、車両走行状態に応じてクラッチ6を接続・解放(遮断)制御するようにしているが、このようにせず、エンジン1と駆動モータ2とを直結するか、あるいは変速機を介して直結するように構成したハイブリッド車においても、この実施の形態の故障診断装置は適応可能である。
【0079】
以上、この故障診断手法によれば、ハイブリッド車Wないしはエンジン1の燃費性能を大幅に高めつつ、三元触媒(排気ガス浄化触媒)の劣化ないしは異常を的確かつ容易に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態にかかるハイブリッド車の概略構成を示す模式図である。
【図2】 図1に示すハイブリッド車のエンジン及びその燃料系統のシステム構成図である。
【図3】 図1に示すハイブリッド車の発進時又は低負荷定常走行時における駆動形態を示す模式図である。
【図4】 図1に示すハイブリッド車の急発進時、急加速時又は高負荷定常走行時における駆動形態を示す模式図である。
【図5】 図1に示すハイブリッド車のエンジン起動時における駆動形態を示す模式図である。
【図6】 図1に示すハイブリッド車の減速時における駆動形態を示す模式図である。
【図7】 図1に示すハイブリッド車の中負荷定常走行時における駆動形態を示す模式図である。
【図8】 図1に示すハイブリッド車の停車充電時における駆動形態を示す模式図である。
【図9】 蒸発燃料回収系統の故障診断時における各種状態を示すタイムチャートである。
【図10】 O2センサの出力反転の様子を示す図である。
【図11】 出力反転回数比と浄化率との関係の、排気ガス量に対する依存性を示す図である。
【図12】 排気ガス浄化触媒の故障診断にかかる運転モード設定ルーチンのフローチャートの前半部である。
【図13】 排気ガス浄化触媒の故障診断にかかる運転モード設定ルーチンのフローチャートの後半部である。
【図14】 エンジン制御ルーチンのフローチャートの前半部である。
【図15】 エンジン制御ルーチンのフローチャートの後半部である。
【図16】 基本運転モードの、車速及びアクセル開度に対する特性を示す図である。
【図17】 触媒モニタを行った場合における車速及びエンジン負荷の時間に対する変化特性を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
W…ハイブリッド車、1…エンジン、2…駆動モータ、3…バッテリ、4…エンジンモータ、5…トルクコンバータ、6…クラッチ、7…自動変速機、8…差動機構、9…左側の駆動輪、10…右側の駆動輪、11…ギヤトレイン、12…排気通路、13…触媒コンバータ、14…システムコントローラ、15…電力コントローラ、16…アクセルペダル、17…ブレーキペダル、20…吸気通路、21…共通吸気通路、22…エアクリーナ、23…エアフローセンサ、24…スロットル弁、25…サージタンク、26…独立吸気通路、27…燃料噴射弁、28…上流側O2センサ、29…下流側O2センサ、31…燃料タンク、32…燃料ポンプ、33…燃料供給通路、34…燃料還流通路、35…燃料フィルタ、36…プレッシャレギュレータ、37…パージ通路、38…キャニスタ、39…圧力センサ、40…制御弁、41…ロールオーバーバルブ、43…パージ弁、44…大気開放通路、45…大気開放弁、46…エアフィルタ。
Claims (9)
- それぞれ駆動輪を駆動することができる、電動式の駆動モータと、排気通路に排気ガス浄化触媒を備えているエンジンとが設けられ、車両運転状態に応じて駆動輪の駆動形態を変更しつつ走行するようになっているハイブリッド車の故障診断装置であって、
上記エンジンが排気ガス浄化触媒の劣化判定に適した所定の可判定運転状態にあるときに、所定の状態値検出期間における排気ガス浄化触媒の劣化に関連する状態値を検出し、該状態値に基づいて排気ガス浄化触媒の劣化を判定する触媒劣化判定手段と、
車両運転中に上記触媒劣化判定手段が排気ガス浄化触媒の劣化判定を実行できるよう、上記エンジンを可判定運転状態で継続運転させる劣化判定制御手段とが設けられ、
上記劣化判定制御手段が、上記エンジンを可判定運転状態で継続運転させているときにおいて、車両運転状態が高負荷状態となったときには、可判定運転状態での運転を抑制するようになっていることを特徴とするハイブリッド車の故障診断装置。 - それぞれ駆動輪を駆動することができる、電動式の駆動モータと、排気通路に排気ガス浄化触媒を備えているエンジンとが設けられ、車両運転状態に応じて駆動輪の駆動形態を変更しつつ走行するようになっているハイブリッド車の故障診断装置であって、
上記エンジンが排気ガス浄化触媒の劣化判定に適した所定の可判定運転状態にあるときに、所定の状態値検出期間における排気ガス浄化触媒の劣化に関連する状態値を検出し、該状態値に基づいて排気ガス浄化触媒の劣化を判定する触媒劣化判定手段と、
車両運転中に上記触媒劣化判定手段が排気ガス浄化触媒の劣化判定を実行できるよう、上記エンジンを可判定運転状態で継続運転させる劣化判定制御手段とが設けられ、
上記劣化判定制御手段が、上記エンジンを可判定運転状態で継続運転させているときにおいて、車両運転状態が頻繁に過渡運転となるときには、可判定運転状態での運転を中止するようになっていることを特徴とするハイブリッド車の故障診断装置。 - 上記劣化判定制御手段が、上記状態値検出期間よりも長い期間、上記エンジンを可判定運転状態で継続運転させるようになっていることを特徴とする請求項1又は2に記載のハイブリッド車の故障診断装置。
- 上記可判定運転状態が、上記エンジンの排気ガス量が中程度となる運転領域で運転されている状態であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のハイブリッド車の故障診断装置。
- 上記可判定運転状態が、上記排気ガス浄化触媒の温度が所定の基準値以上であり、かつ上記エンジンの空燃比がフィードバック制御されている状態であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のハイブリッド車の故障診断装置。
- 上記エンジンが、車両高負荷運転時又はバッテリ充電量減少時に運転されるようになっていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載のハイブリッド車の故障診断装置。
- 上記エンジンが、運転時に高効率となるように制御されるようになっていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載のハイブリッド車の故障診断装置。
- 車両運転中において車両高負荷運転状態となったときには、上記エンジンの高効率運転が開始され、
上記車両高負荷運転状態が終了しても、排気ガス浄化触媒の温度が上記基準値以上となるまで高効率運転が継続され、この後上記エンジンが可判定運転状態で継続運転させられるようになっていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載のハイブリッド車の故障診断装置。 - エンジン出力を電力に変換することができるエンジンモータとバッテリとが設けられていて、
上記エンジンモータが、上記劣化判定制御手段によって上記エンジンが可判定運転状態で継続運転させられているときに、エンジン出力を電力に変換して上記バッテリを充電するようになっていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載のハイブリッド車の故障診断装置。
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