JP4013654B2 - ハイブリッド車両の排気浄化装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハイブリッド車両の排気浄化装置に関し、特に、冷態状態でHCを吸着すると共に温度が上昇すると吸着したHCを脱離するHCトラップ触媒を備えた排気浄化装置における脱離HCの浄化技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関(以下、エンジンという)の排気通路に介装される触媒の一種として、低温状態でHCを吸着し、温度が上昇するにつれ吸着したHCを脱離するHCトラップ触媒が知られている。HCトラップ触媒は、通常、三元触媒とともに排気通路に備えられ、エンジン始動直後のように三元触媒の温度が低く未だ活性化していない状態において、三元触媒で浄化されないHCが外部に排出されてしまうことを抑制している。
【0003】
HCトラップ触媒は、車両駆動源としてエンジンとモータとを有するハイブリッド車両にも用いられる。特開2000−8837号公報に開示されたハイブリッド車両は、その排気通路にHCトラップ触媒と三元触媒とを上流から順に設けている。そして、HCトラップ触媒のHC吸着量が所定量以上と判定される場合には、エンジンの停止条件が成立してもHCトラップ触媒からHCが脱離され、活性温度になった三元触媒によって浄化されるようになるまではエンジンの運転を延長することで、HCトラップ触媒のHC吸着量を確保するとともにHCの外部への排出を抑制している。
【0004】
この従来技術では、HCトラップ触媒から脱離されたHCの浄化を専ら三元触媒に依存しているが、より効果的にHCを浄化する他の方法としてHC脱離時に空燃比をリーン化させる手法も知られている。HCトラップ触媒からHCが脱離されるとき、そのうちの一部はHCトラップ触媒の貴金属により酸化される。ここでの酸化反応はHCトラップ触媒に供給される排ガス中に酸素が多く含まれるほど促進されるので、上記のようにHCトラップ触媒からのHC脱離時に空燃比をリーン化させることでHCの酸化を促進させ、HCが外部に排出されるのを抑制することができるのである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、エンジンの負荷がある程度以上大きくなるとリーン運転自体が困難になりHCトラップ触媒に十分な酸素供給ができなくなる。このため、エンジンの負荷が高い運転領域ではHCトラップ触媒における脱離HCの酸化浄化効率が低下し、HCの排出量が増加してしまう。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑み創案されたもので、要求負荷が比較的高い場合でもHCトラップ触媒に十分な酸素を供給してHCトラップ触媒における脱離HCの酸化浄化効率を向上させることを可能にした、ハイブリッド車両の排気浄化装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明のハイブリッド車両の排気浄化装置は、車両駆動源として内燃機関とモータとを有し、該内燃機関の燃料噴射モードに、空燃比をストイキオよりも希薄な空燃比とするリーンモードが含まれている、ハイブリッド車両において、上記内燃機関の排気通路に設けられ冷態状態でHCを吸着すると共に温度が上昇すると吸着したHCを脱離するHCトラップ触媒と、上記HCトラップ触媒がHCを脱離する状態にあることを検出する脱離状態検出手段と、上記モータに電力を供給する電力供給手段の給電能力を検出する給電能力検出手段と、をそなえ、脱離状態検出手段によりHCトラップ触媒がHCを脱離する状態にあることが検出される場合は、制御手段によって上記給電能力検出手段により検出される給電能力が高いほど上記内燃機関の出力負担を大きく減少させるとともに上記モータの出力負担を増大させ、上記内燃機関を上記リーンモードによりリーン運転させることを特徴としている。このようにHCトラップ触媒がHC脱離状態にあることが検出される場合に内燃機関の出力負担を減少させて内燃機関をリーン運転させることで、効率良くHCトラップ触媒へ酸素を供給することができ脱離HCの酸化浄化を促進することができる。また、同時にモータの出力負担を増大させることで、内燃機関の出力負担の減少を補償することができ良好な走行性能を維持することができる。
【0008】
特に、モータに電力を供給する電力供給手段の給電能力を検出する給電能力検出手段を備え、給電能力検出手段により検出される給電能力が高いほど内燃機関の出力負担を大きく減少させるように制御手段による制御を行うことにより、モータヘの給電能力が高いほど内燃機関の出力負担を大きく減少させることになるので、モータの発生可能な出力に応じて効率良く内燃機関の出力負担を減少させることができ、リーン運転領域を有効に拡大して効率良く排ガス性能を向上させることができる。
好ましくは、内燃機関の出力負担の減少量に応じてモータの出力負担を増大させるように制御手段による制御を行う。このような制御によれば車両全体の駆動力は一定になるので、安定した走行性能を維持しながらHCの排出を抑制することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。
図1〜図7は本発明の一実施形態としてのハイブリッド車両の排気浄化装置について示すものである。図1の全体構成図に示すように、本実施形態にかかるハイブリッド車両1は、パワープラント(車両駆動源)としてエンジン1とモータ40とを備えている。エンジン1は一般的な内燃機関として構成され、モータ40はバッテリ(電力供給手段)42から電力供給を受けるとモータとして作動し、回転駆動力を受けると発電機として作動しうるモータ兼発電機として構成されている。エンジン1の出力軸60は第1クラッチ62を介してモータ40の出力軸64に接続され、この出力軸64がトランスミッション50の入力軸となっている。これにより、エンジン1の回転,モータ40の回転の一方或いは双方を選択的にトランスミッション50に入力できるようになっている。トランスミッション50は、第2クラッチ66,デフギヤ68を介して左右の駆動輪70,70に連結されており、エンジン1及び/又はモータ40からトランスミッション50に入力された回転は、トランスミッション50により宜減速された後、第2クラッチ66及びデフギヤ68を介して左右の駆動輪70,70に伝達されるようになっている。
【0010】
図2はパワープラントとその制御系の構成を示す図である。図2に示すようにエンジン1の本体1aには吸気通路3と排気通路4とが接続されている。吸気通路3には、上流側から順にエアクリーナ5,電子制御式スロットル弁(ETV)6が設けられている。排気通路4には、排ガス浄化用の触媒8A,8B,8Cと図示しないマフラが設けられている。また、エンジン本体1a内には点火プラグ9と燃焼室2を臨んで配設された高圧噴射弁10とが備えられている。
【0011】
本実施形態のエンジン1は、希薄燃焼エンジンの一形態として知られている筒内噴射式エンジンとして構成され、高圧噴射弁10から燃焼室2内に直接燃料が噴射されるようになっている。エンジン1の燃料噴射の態様(燃料噴射モード)としては、吸気行程中に燃料噴射を行いO2センサからの信号を用いて空燃比がストイキオになるようにフィードバック制御するストイキオモード、ストイキオよりも過濃な空燃比(リッチ空燃比)となるようオープンループ制御するオープンループモード、吸気行程中に燃料噴射を行いストイキオよりも希薄な空燃比(リーン空燃比)となるようオープンループ制御する吸気リーンモード、及び、圧縮行程中に燃料噴射を行い吸気リーンモードよりもさらに希薄な空燃比となるようオープンループ制御する圧縮リーンモードの四つのモードが設けられている。図3はエンジン回転速度とエンジントルクとを軸とする二次元のエンジン制御マップであり、低回転速度低トルク側から高回転速度高トルク側に向けて略波紋状に4つのゾーンA〜Dに区画されている。燃料噴射の態様はゾーンA〜D毎に決められており、最も低回転速度低トルク側のゾーンAでは圧縮リーンモードによる燃料噴射が行われる。ゾーンAよりも高回転高トルク側のゾーンBでは吸気リーンモードによる燃料噴射が行われる。ゾーンBよりも高回転高トルク側のゾーンCではストイキオモードによる燃料噴射が行われる。ゾーンCよりもさらに高回転高トルク側のゾーンDではオープンループモードによる燃料噴射が行われる。
【0012】
触媒8A,8B,8Cとしては、NOx触媒8A,HCトラップ触媒8B及び近接触媒としての三元触媒8Cが備えられている。エキゾーストマニホールドの近傍(或いはエキゾーストマニホールドと一体)には三元触媒8Cが配置され、その下流にNOx触媒8AとHCトラップ触媒8Bとが配置されている。このような配置によれば、エンジン本体1aに近接して三元触媒8Cが配置されることで、三元触媒8Cを早期に昇温して活性化させることができ、三元触媒8Cが活性化するまでの間に発生するHCは、低温状態でHCを吸着するHCトラップ触媒8Bによって吸着することができる。また、リーン運転時に発生するNOxは、NOx触媒8Aによって浄化することができる。
【0013】
このエンジン1とモータ40とを制御するために、図示しない入出力装置,制御プログラムや制御マップ等の記憶に供される記憶装置(ROM,RAM等),中央処理装置(CPU)及びタイマカウンタ等を備えた電子制御装置(ECU)20と、種々のセンサ類とが設けられている。エンジン1に設けられるセンサ類として、吸気通路3側には、エアクリーナ5の配設部分に吸入空気量を検出するエアフローセンサ30が設けられており、ETV6の配設部分にはETV6の開度を検出するスロットル開度センサ31が設けられている。また、排気通路4側には、HCトラップ触媒8Bが保持されているベッド部の温度を検出する触媒温度センサ32が設けられている。さらに、その他のセンサとして、図示しないクランクシャフトの回転に同期して信号を出力するクランク角センサ33、エンジン1の冷却水温を検出する水温センサ34、及び、ドライバによるアクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセル開度センサ35が設けられている。また、バッテリ42には、充電量(SOC)を検出する充電量センサ(給電能力検出手段)36が設けられている。
【0014】
ECU20は、ドライバの要求に応じてエンジン1及びモータ40を運転したり燃料消費の抑制や排ガスの抑制等の目標に応じてエンジン1及びモータ40を運転するための様々な機能を有している。ECU20は、それら各機能を達成するための機能部の集合とも考えることができ、図2中に示す要求負荷検出部21,HC脱離状態検出部(脱離状態検出手段)22,エンジン制御部(制御手段)23,及びモータ制御部(制御手段)24は何れもECU20が備える機能部のうちの一つである。これら機能部21,22,23,24は、特に、要求負荷が比較的高い場合でもHCトラップ触媒8Bに十分な酸素を供給してHCトラップ触媒8Bにおける脱離HCの酸化浄化効率を向上させることを目的として設けられている。
【0015】
要求負荷検出部21は、ドライバからのパワープラントへの要求負荷を検出する機能を有している。パワープラントへの要求負荷は、アクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度)とエンジン回転速度とから要求トルクとして算出することができる。要求負荷検出部21は、クランク角センサ33からの信号を用いてエンジン回転速度を検出するとともに、アクセル開度センサ35からの信号を用いてアクセル開度を検出し、これらエンジン回転速度とアクセル開度とからパワープラントへの要求トルクを算出している。
【0016】
HC脱離状態検出部22は、HCトラップ触媒8Bが吸着したHCを脱離する状態にあるか否かを検出する機能を有している。HCトラップ触媒8Bは、低温状態ではHCを吸着するが、温度が上昇して所定温度(HC脱離温度)に達すると吸着したHCを脱離し始める特性を有している。HC脱離状態検出部22は、触媒温度センサ34で検出されたベッド部温度からHCトラップ触媒8Bの温度を推定し、HCトラップ触媒8Bの推定温度とHC脱離温度とを比較することでHCトラップ触媒8BがHC脱離状態にあることを検出している。また、HCトラップ触媒8Bに吸着されたHCは、その吸着量にもよるが、ある一定の温度(HC脱離終了温度)に達したときにはHCトラップ触媒8Bから略完全に脱離される。HC脱離状態検出部22は、HCトラップ触媒8Bの推定温度とHC脱離終了温度とを比較することでHCトラップ触媒8BからのHCの脱離が終了したことも検出している。
【0017】
エンジン制御部23は、高圧噴射弁10からの燃料噴射量や噴射時期、及び点火プラグ9の点火時期を制御する機能を有している。エンジン制御部23には、図4に示すエンジン制御マップと前述した図3に示すエンジン制御マップとが記憶されている。図4に示すマップはパワープラント要求トルクと充電量(SOC)から出力すべきエンジントルクを決定するためのマップであり、マップにはパワープラント要求トルクとエンジントルクとの関係を示す特性線が複数本設けられている。これらの特性線は二つのグループに分けられ、図中に破線で示す特性線の第1グループは通常運転時のパワープラント要求トルクとエンジントルクとの関係を示し、図中に実線で示す特性線の第2グループは後述する酸素供給制御時のパワープラント要求トルクとエンジントルクとの関係を示している。第2グループの特性線(実線)は、同一パワープラント要求トルクにおいて第1グループの特性線(破線)よりもエンジントルクが小さくなるように設定されている。また、各グループを構成する各特性線はそれぞれ大きさの異なるSOCに対応して設けられており、大きいSOCに対応する特性線ほど同一パワープラント要求トルクにおいてエンジントルクが小さくなるような設定になっている。エンジン制御部23は、要求負荷検出部21で検出されたパワープラント要求トルク、HC脱離状態検出部22で検出されたHCトラップ触媒8BからのHCの脱離の状態、及びSOC検出センサ36で検出されたSOCを図4に示すマップに照合してエンジントルクを決定し、エンジントルクとエンジン回転速度とを図3に示すマップに照合して燃料噴射モードを決定し、決定した燃料噴射モードに応じて高圧噴射弁10や点火プラグ9を制御している。
【0018】
モータ制御部24は、バッテリ42からモータ40に供給される電力を制御する機能を有している。本実施形態のようなハイブリッド車両では、モータ40から出力されるモータトルクは出力軸64においてエンジン1から出力されるエンジントルクと合算され、その合計トルクがパワープラント全体のトルクとして出力される。したがって、エンジントルクがパワープラント要求トルクに満たない場合には、その不足トルクはモータトルクによって補償することができる。モータ制御部24は、合計トルクがパワープラント要求トルクに一致するように、パワープラント要求トルクとエンジントルクとの差から出力すべきモータトルク(要求モータトルク)を決定し、要求モータトルクに応じてバッテリ42からモータ40に供給される電力を制御している。
【0019】
以下、図5,図6に示すフローチャートを用いて、ECU20によるエンジン1及びモータ40の制御の内容について具体的に説明する。なお、図5で示されるフロー(ステップA10〜A70)は、HCトラップ触媒8Bに酸素を供給してHCトラップ触媒8Bから脱離されるHCを酸化浄化するための制御(酸素供給制御)を実施するか否か判定するためのフローである。図6で示されるフロー(ステップB10〜B70)は、酸素供給制御を実施する場合のエンジン1,モータ40間のトルク配分を決定するためのフローである。コントローラ20は、これら2つのフローを並列的に、且つそれぞれエンジン1の一行程を一周期として処理している。
【0020】
図5に示すフローでは、ECU20のHC脱離状態検出部22は、まず、エンジン1の始動時の冷却水温が所定温度以下であり、且つ、エンジン1の始動後所定時間以内であるか否か判定する(ステップA10)。この判定は、冷却水温が高い場合には始動時のHCトラップ触媒8Bの温度も高いのでHCが吸着されていないと予想され、始動後時間が経過している場合には既にHCトラップ触媒8Bの温度が高くなっていて既にHCが脱離されていると予想されるからである。ステップA10の条件が成立した場合には、HC脱離状態検出部22は、触媒温度センサ32からの検出信号に基づきHCトラップ触媒8Bの温度(HCT温度)を推定する(ステップA20)。そして、酸素供給フラグがセットされているか否か判定し(ステップA30)、酸素供給フラグがセットされている場合にはステップA40の判定に進み、酸素供給フラグがセットされていない場合にはステップA60の判定に進む。酸素供給フラグはHCトラップ触媒8BがHC脱離状態にある場合にHC脱離状態検出部22によりセットされ、このフラグがセットされることによりエンジン制御部24による酸素供給制御が実施される。酸素供給フラグは、ステップA40の判定においてHCトラップ触媒8Bの温度がHC脱離温度よりも大きいときにステップA50でセットされ、ステップA60の判定においてHCトラップ触媒8Bの温度がHC脱離終了温度以上のとき、及び、ステップA10の条件が不成立の場合にステップA70でクリアされる。
【0021】
図6に示すフローでは、ECU20は、まず、エンジン回転速度情報とアクセル開度情報とを取得し(ステップB10)、さらにSOC情報を取得する(ステップB20)。ECU20の要求負荷検出部21は、エンジン回転速度とアクセル開度とからパワープラント要求トルク(TTQ)を決定する(ステップB30)。ECU20のエンジン制御部24は、酸素供給フラグがセットされているか否か判定し(ステップB40)、酸素供給フラグがセットされている場合にはステップB50の処理に進み、酸素供給フラグがセットされていない場合にはステップB60の処理に進む。ステップB50に進んだ場合には、エンジン制御部24は、図3に示すマップにおける第2グループの特性線(実線)に基づきパワープラント要求トルク,エンジン回転速度,及びSOCに応じたエンジントルク(TQE)を決定する。ステップB60に進んだ場合には、エンジン制御部24は、図3に示すマップにおける第1グループの特性線(破線)に基づき、パワープラント要求トルク,エンジン回転速度,及びSOCに応じたエンジントルク(TQE)を決定する。エンジン1に出力させるエンジントルクがエンジン制御部24により決定されると、ECU20のモータ制御部25は、パワープラント要求トルクとエンジントルクとの差からモータ40に出力させるモータトルク(TQM)を決定する(ステップB70)。
【0022】
上記のような方法でエンジン1,モータ40間のトルク配分を決定することにより、HCトラップ触媒8BがHC脱離状態にあることが検出される場合には、通常時よりもエンジン1のトルク負担を減少させてエンジン1をリーン運転させることができる。例えば通常ではストイキオモードで運転される場合でも、モータ40のアシストによりエンジン1のトルク負担を減少させることで、吸気リーンモードや圧縮リーンモードでの運転も可能になる。エンジン1のリーン運転により効率良くHCトラップ触媒8Bヘ酸素を供給することができので、HCトラップ触媒8Bでの脱離HCの酸化浄化を促進してHCの排出を抑制することができる。また、エンジン1のトルク負担の減少は、モータ40のトルク負担をエンジン1のトルク負担の減少量に応じて増大させることで補償されるので、車両全体の駆動力を一定にして良好な走行性能をそのまま維持することができる。さらに、エンジン1のトルク負担をSOCが大きいほど減少させることにより、モータ40の発生可能なトルクに応じて効率良くエンジン1のトルク負担を減少させることができ、エンジン1のリーン運転領域を有効に拡大することができる。
【0023】
以上の図5,図6のフローで示す制御による作用効果を具体的に示したのが図7である。図7(a),図7(b),図7(c),図7(d)は、エンジン1を冷態状態から始動した後に図7(e)に示すようにアクセル開度を変化させたときのHCトラップ触媒8Bの温度、HC排出量、パワープラント出力トルク、エンジン回転速度の時間変化を示している。特に図7(b)は、破線が三元触媒8Cの出口におけるHC排出量を示し、二点鎖線と実線とがHCトラップ触媒8B出口におけるHC排出量を示している。このうち二点鎖線で示すHC排出量の時間変化はモータ40によるアシストがない場合であり、実線で示すHC排出量の時間変化が上記制御方法(モータ40によるアシスト有り)によるものである。また、図7(b)には、モータ40によるアシストが有る場合と無い場合の、HCトラップ触媒8Bの温度がHC脱離温度を超えてからHC脱離終了温度を超えるまでの間の燃料噴射制御の内容を併せて示している。
【0024】
エンジン1の始動直後、エンジン1からは比較的多量のHCが排出される。しかしながら、始動直後は三元触媒8Cは活性化温度に達していないので、図7(b)の破線に示すように、HCは三元触媒8Cで浄化されずに三元触媒8Cを通過し、下流のHCトラップ触媒8Bに流れる。HCトラップ触媒8Bは低温状態でHCを吸収するので、図7(b)の実線に示すように、三元触媒8Cを通過したHCの多くを吸収して外部へ排出されるHCを低減する。
【0025】
HCトラップ触媒8Bに吸収されたHCは、図7(a)に示すようにHCトラップ触媒8Bの温度が上昇してHC脱離温度を超えたところから、HCトラップ触媒8Bから脱離し始める。HCトラップ触媒8Bから脱離するHCの一部はHCトラップ触媒8Bの貴金属により酸化されるので、エンジン1のリーン運転によりHCトラップ触媒8Bに酸素を供給すれば、HCの酸化を促進してHCの排出を抑制することができる。ところが、図7(e)に示すようにアクセル操作が行われて図7(c)に示すように大きなトルクが要求された場合には、このトルクをエンジン1のみが負担するのであればエンジン1はリーン運転できない。この場合には十分な酸素をHCトラップ触媒8Bに供給することができず、図7(b)の二点鎖線に示すように多量のHCがHCトラップ触媒8Bから放出されてしまう。これに対して本実施形態の制御方法では、図7(c)中に太実線で示すようにエンジン1のトルク負担を減少させ、その減少分を図7(c)中に斜線領域で示すようにモータ40のモータトルクで補償することで、エンジン1のリーン運転領域を拡大することができ、HCトラップ触媒8Bに十分な酸素を供給することができる。したがって、本実施形態の制御方法によれば、HCトラップ触媒8Bにおける脱離HCの酸化浄化効率を向上させることができ、図7(b)の実線に示すように、HCトラップ触媒8Bから外部へのHCの排出量を低減することができる。
【0026】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施しうるものである。例えば、上述の実施形態ではパワープラント要求トルクとエンジントルクとの関係を示す特性線を異なるSOCについて複数設定しているが、特性線は一つのみとしてSOCに応じた係数を掛けることでSOCに応じたパワープラント要求トルクとエンジントルクとの関係を導出するようにしてもよい。
【0027】
また、HCトラップ触媒8Bの温度を推定する方法として、上述の実施形態ではHCトラップ触媒8Bを支持するベッド部の温度を検出しているが、排気通路4に温度センサを設けて排気通路4内の排ガス温度を検出し、排ガス温度からHCトラップ触媒8Bの温度を推定してもよい。さらに、運転開始からのエンジントルクやエンジ回転速度の履歴に基づいてHCトラップ触媒8Bの温度を推定してもよい。
【0028】
また、上述の実施形態では本発明を筒内噴射式エンジンを備えたハイブリッド車両に適用しているが、本発明は、一般的な希薄燃焼エンジンを備えたハイブリッド車両にも広く適用することができる。また、本発明が適用されるハイブリッド車両の駆動系の構成は図1に示す構成に限定されるものではなく、エンジンとモータとの双方を駆動源として用いることが可能な、いわゆるパラレル式のハイブリッド車両であればよい。
【0029】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明のハイブリッド車両の排気浄化装置によれば、HCトラップ触媒がHCを脱離する状態にあることが検出される場合は、モータヘの給電能力が高いほど内燃機関の出力負担を大きく減少させるとともに内燃機関をリーン運転させるので、モータの発生可能な出力に応じて効率良く内燃機関の出力負担を減少させることができ、リーン運転領域を有効に拡大できるため、リーン運転によりHC脱離状態にあるHCトラップ触媒に効率良く酸素を供給することができ、HCトラップ触媒における脱離HCの酸化浄化効率を向上させて外部へのHCの排出を抑制することができる。また、同時にモータの出力負担を増大させることで内燃機関の出力負担の減少をモータの出力により補償することができるので、良好な走行性能を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態にかかるハイブリッド車両の全体構成を示す概略図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかるハイブリッド車両のパワープラントとその制御系の構成を示す概略図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかる制御マップであり、エンジン回転速度とエンジントルクとに応じて燃料噴射モードを決定するためのマップである。
【図4】本発明の一実施形態にかかる制御マップであり、パワープラント要求トルクとSOCとに応じてエンジントルクを決定するためのマップである。
【図5】本発明の一実施形態にかかる酸素供給制御の実施の可否を判定するためのフローチャートである。
【図6】本発明の一実施形態にかかる酸素供給制御を実施する場合のエンジン,モータ間のトルク配分を決定するためのフローチャートである。
【図7】本発明の一実施形態にかかる酸素供給制御の作用効果を示すタイムチャートであり、(a)はエンジン始動後のHCトラップ触媒の温度の時間変化を示す図、(b)はHC排出量の時間変化を示す図、(c)はエンジントルクの時間変化を示す図、(d)はエンジン回転速度の時間変化を示す図、(e)はアクセル開度の時間変化を示す図である。
【符号の説明】
1 エンジン
1a エンジン本体
3 吸気通路
4 排気通路
6 ETV
8A NOx触媒
8B HCトラップ触媒
8C 三元触媒
9 点火プラグ
10 高圧噴射弁
20 ECU
21 負荷検出部
22 HC脱離状態検出部
23 エンジン制御部
24 モータ制御部
30 エアフローセンサ
31 スロットル開度センサ
32 触媒温度センサ
33 クランク角センサ
35 アクセル開度センサ
36 充電量センサ
40 モータ
42 バッテリ
50 トランスミッション
Claims (1)
- 車両駆動源として内燃機関とモータとを有し、該内燃機関の燃料噴射モードに、空燃比をストイキオよりも希薄な空燃比とするリーンモードが含まれている、ハイブリッド車両において、
上記内燃機関の排気通路に設けられ冷態状態でHCを吸着すると共に温度が上昇すると吸着したHCを脱離するHCトラップ触媒と、
上記HCトラップ触媒がHCを脱離する状態にあることを検出する脱離状態検出手段と、
上記モータに電力を供給する電力供給手段の給電能力を検出する給電能力検出手段と、
上記脱離状態検出手段により上記HCトラップ触媒がHC脱離状態にあることが検出される場合は上記給電能力検出手段により検出される給電能力が高いほど上記内燃機関の出力負担を大きく減少させるとともに上記モータの出力負担を増大させ、上記内燃機関を上記リーンモードによりリーン運転させる制御手段と
を備えたことを特徴とする、ハイブリッド車両の排気浄化装置。
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