JP4206694B2 - 内燃機関の排気浄化装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の排気浄化装置に関し、特に、冷態状態でHCを吸着すると共に温度が上昇すると吸着したHCを脱離するHCトラップ触媒を備えた排気浄化装置における脱離HCの浄化技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関(以下、エンジンという)の排気通路に介装される触媒の一種として、低温状態でHCを吸着するHCトラップ触媒が知られている。このHCトラップ触媒は、通常、三元触媒とともに排気通路に備えられ、エンジン始動直後のように三元触媒の温度が低く未だ活性化していない状態において、三元触媒で浄化されないHCが外部に排出されてしまうことを抑制している。ところが、このHCトラップ触媒は、温度が上昇するにつれ吸着したHCを脱離するという特徴も有している。
【0003】
HCトラップ触媒からHCが脱離されるとき、そのうちの一部はHCトラップ触媒の貴金属により酸化される。ここでの酸化反応はHCトラップ触媒に供給される排ガス中に酸素が多く含まれるほど促進され、HCの外部への排出が抑制される。そこで、特開2000−2132号公報に開示された排気浄化装置では、HCトラップ触媒からのHC脱離時に空燃比をリーン化させることでHCの酸化を促進させ、HCが外部に排出されるのを抑制している。また、負荷の増大に応じてリーン度合を小さくすることで、NOxの排出量の増大も抑制している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、エンジンの負荷がある程度以上大きくなるとリーン運転自体が困難になりHCトラップ触媒に十分な酸素供給ができなくなる。このため、上記の従来技術では、エンジンの負荷が比較的高い場合にはHCトラップ触媒における脱離HCの酸化浄化効率が低下し、HCの排出量が増加してしまう。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑み創案されたもので、内燃機関の負荷が比較的高い場合でもHCトラップ触媒に十分な酸素を供給してHCトラップ触媒における脱離HCの酸化浄化効率を向上させることを可能にした、内燃機関の排気浄化装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の内燃機関の排気浄化装置は、脱離状態検出手段によりHCトラップ触媒がHCを脱離する状態にあることが検出される場合は、制御手段によって内燃機関を所定行程数毎に燃料カット運転することを特徴としている。このようにHCトラップ触媒がHC脱離状態にあることが検出される場合に内燃機関を所定行程毎に燃料カット運転することで、比較的負荷が高い領域でもHC脱離状態にあるHCトラップ触媒に効率良く酸素を供給することができる。
【0007】
また、負荷検出手段によって内燃機関の負荷を検出し、検出される負荷の増加に応じて上記の所定行程数を多く設定する。これにより負荷の増加に応じて所定行程数が多く設定されることになるので、出力要求を満たしながらHCトラップ触媒ヘの酸素供給を図ることができ、ドライバビリティと排ガス性能を高次元で両立させることができる。
【0008】
さらに、内燃機関がリーン空燃比で運転可能な場合の制御手段の制御方法として、HC脱離状態にあることが検出される場合において、負荷検出手段によって内燃機関の負荷を検出し、内燃機関の負荷が所定値以上の時には内燃機関を所定行程毎に燃料カット運転し、負荷が上記の所定値に満たない場合は内燃機関をリーン空燃比で運転する。これにより負荷が比較的低い領域ではリーン空燃比で機関を運転するので効率良くHCトラップ触媒ヘ酸素を供給することができ、リーン空燃比での運転が困難となり易い負荷が比較的高い領域では所定行程毎に燃料カット運転することでHCトラップ触媒ヘの酸素供給を図るので比較的高負荷領域でも脱離HCの酸化浄化効率を向上させることができ、広範な負荷領域で脱離HCの酸化浄化を効率良く促進することができる。
また、上記制御手段は、上記の燃料カット運転を行う際には上記内燃機関をストイキオ空燃比で運転する。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。
図1〜図6は本発明の一実施形態としての内燃機関の排気浄化装置について示すものである。本実施形態にかかる内燃機関(以下、エンジン)は、希薄燃焼エンジンの一形態として知られている燃焼室内に燃料を直接噴射可能な筒内噴射式エンジンとして構成されている。この筒内噴射式エンジンでは、燃料噴射の態様(燃料噴射モード)として、吸気行程中に燃料噴射を行いO2センサからの信号を用いて空燃比がストイキオになるようにフィードバック制御するストイキオモード、吸気行程中に燃料噴射を行いストイキオよりも希薄な空燃比(リーン空燃比)となるようオープンループ制御する吸気リーンモード、圧縮行程中に燃料噴射を行い吸気リーンモードよりもさらに希薄な空燃比となるようオープンループ制御する圧縮リーンモード、そして、噴射燃料を二回分に分けて吸気行程中と圧縮行程中の2段階で燃料噴射を行いそれぞれリーン空燃比となるようオープンループ制御する二回噴射リーンモードの少なくとも四つのの燃料噴射モードが設けられている。
【0010】
図1の全体構成図に示すように、エンジン1の本体1aには吸気通路3と排気通路4とが接続されている。吸気通路3には、上流側から順にエアクリーナ5,電子制御式スロットル弁(ETV)6が設けられている。排気通路4には、排ガス浄化用の触媒8A,8B,8Cと図示しないマフラが設けられている。また、エンジン本体1a内には点火プラグ9と燃焼室2を臨んで配設された高圧噴射弁10とが備えられている。本実施形態のエンジン1では、高圧噴射弁10から燃焼室2内に直接燃料が噴射されるようになっている。
【0011】
触媒8A,8B,8Cとしては、NOx触媒8A,HCトラップ触媒8B及び近接触媒としての三元触媒8Cが備えられており、エキゾーストマニホールドの近傍(或いはエキゾーストマニホールドと一体)に三元触媒8Cが配置され、その下流にNOx触媒8AとHCトラップ触媒8Bとが配置されている。このような配置によれば、エンジン本体1aに近接して三元触媒8Cが配置されることで、三元触媒8Cを早期に昇温して活性化させることができ、三元触媒8Cが活性化するまでの間に発生するHCは、低温状態でHCを吸着するHCトラップ触媒8Bによって吸着することができる。また、リーン運転時に発生するNOxは、NOx触媒8Aによって浄化することができる。
【0012】
さらに、このエンジン1を制御するために、図示しない入出力装置,制御プログラムや制御マップ等の記憶に供される記憶装置(ROM,RAM等),中央処理装置(CPU)及びタイマカウンタ等を備えた電子制御装置(ECU)20と、種々のセンサ類とが設けられている。エンジン1に設けられるセンサ類として、吸気通路3側には、エアクリーナ5の配設部分に、吸入空気量を検出するエアフローセンサ30が設けられており、ETV6の配設部分には、ETV6の開度を検出するスロットル開度センサ31が設けられている。また、排気通路4側には、HCトラップ触媒8Bが保持されているベッド部の温度を検出する触媒温度センサ32が設けられている。さらに、その他のセンサとして、図示しないクランクシャフトの回転に同期して信号を出力するクランク角センサ33やエンジン1の冷却水温を検出する水温センサ34が設けられている。
【0013】
ECU20は、ドライバの要求に応じてエンジン1を運転したり燃料消費の抑制や排ガスの抑制等の目標に応じてエンジン1を運転するための様々な機能を有している。ECU20は、それら各機能を達成するための機能部の集合とも考えることができ、図1中に示す負荷検出部(負荷検出手段)21,HC脱離状態検出部(脱離状態検出手段)22,及び燃料噴射制御部(制御手段)23は何れもECU20が備える機能部のうちの一つである。これら機能部21,22,23は、特に、エンジン1の負荷が比較的高い場合でもHCトラップ触媒8Bに十分な酸素を供給してHCトラップ触媒8Bにおける脱離HCの酸化浄化効率を向上させることを目的として設けられている。
【0014】
負荷検出部21は、エンジン1が出力している軸トルク(エンジントルク)を算出することでエンジン1の負荷を検出する機能を有している。エンジントルクは、エンジン回転速度とスロットル開度とから推定することができる。負荷検出部21は、クランク角センサ33からの信号を用いてエンジン回転速度を検出するとともに、スロットル開度センサ31からの信号を用いてスロットル開度を検出し、これらエンジン回転速度とスロットッル開度とからエンジントルクを算出している。
【0015】
HC脱離状態検出部22は、HCトラップ触媒8Bが吸着したHCを脱離する状態にあるか否かを検出する機能を有している。HCトラップ触媒8Bは、低温状態ではHCを吸着するが、温度が上昇して所定温度(HC脱離温度)に達すると吸着したHCを脱離し始める特性を有している。HC脱離状態検出部22は、触媒温度センサ34で検出されたベッド部温度からHCトラップ触媒8Bの温度を推定し、HCトラップ触媒8Bの推定温度とHC脱離温度とを比較することでHCトラップ触媒8BがHC脱離状態にあることを検出している。また、HCトラップ触媒8Bに吸着されたHCは、その吸着量にもよるが、ある一定の温度(HC脱離終了温度)に達したときにはHCトラップ触媒8Bから略完全に脱離される。HC脱離状態検出部22は、HCトラップ触媒8Bの推定温度とHC脱離終了温度とを比較することでHCトラップ触媒8BからのHCの脱離が終了したことも検出している。
【0016】
燃料噴射制御部23は、負荷検出部21で検出されたエンジン1の負荷と、HC脱離状態検出部22で検出されたHCトラップ触媒8BからのHCの脱離の状態とに応じて、高圧噴射弁10からの燃料噴射の態様を制御する機能を有している。図2は、エンジン回転速度とエンジントルクとを軸とする二次元マップであり、低回転速度低トルク側から高回転速度高トルク側に向けて略波紋状に5つのゾーンA〜Eに区画されている。燃料噴射の態様はゾーンA〜E毎に決められており、燃料噴射制御部23は、最も低回転速度低トルク側のゾーンAでは前述の圧縮リーンモードによる燃料噴射を行う。また、ゾーンAよりも高トルク側のゾーンBでは前述の二回噴射リーンモードによる燃料噴射を行い、ゾーンBよりも高回転高トルク側のゾーンCでは前述の吸気リーンモードによる燃料噴射を行う。また、ゾーンCよりもさらに高回転高トルク側のゾーンD及びゾーンEでは前述のストイキオモードによる燃料噴射を行い、特にゾーンCに隣接するゾーンDでは、HC脱離状態検出部22によりHCトラップ触媒8BがHC脱離状態であると検出されたときには所定行程数毎に燃料カットを行う。
【0017】
HCトラップ触媒8BからHCが脱離されるとき、そのうちの一部はHCトラップ触媒8Bの貴金属により酸化され、この酸化反応はHCトラップ触媒8Bに供給される排ガス中に酸素が多く含まれるほど促進される。したがって、ゾーンA,ゾーンB,ゾーンCでのリーン運転によれば、HCトラップ触媒8Bの周囲雰囲気を酸素過剰雰囲気とすることができるので、HCトラップ触媒8CがHC脱離状態であるときには、HCトラップ触媒8Cにおける脱離HCの酸化浄化効率を向上させることができる。また、ゾーンDでの燃料カット運転によれば、吸入空気がそのままHCトラップ触媒8Cに供給されるので、これによってもHCトラップ触媒8Bに十分な酸素を供給することができ、HCトラップ触媒8Cにおける脱離HCの酸化浄化効率を向上させることができる。特に、この燃料カット運転は、リーン運転が不可能な高負荷領域で行われるので、HCトラップ触媒8Bへの酸素供給をリーン運転でのみ行っていた従来の技術に比較して、HCトラップ触媒8Bに十分な酸素を供給できる領域を拡大することができ、HCの排出量を低減することができる。なお、燃料カットは出力の低下を招くので、燃料カットを実施する周期(行程数)は、HCが酸化浄化されるのに必要な酸素をHCトラップ触媒8Cに供給できる範囲内でできるだけ大きく設定するのが好ましい。
【0018】
このように、ECU20は、リーン運転できない高負荷時にはエンジン1を所定行程数毎に燃料カット運転することで上記目的の達成を図っている。以下、図3,図4,図5に示すフローチャートを用いて、ECU20が上記目的の達成のために行う制御の内容について具体的に説明する。なお、図3で示されるフロー(ステップA10〜A70)は、HCトラップ触媒8Bに酸素を供給してHCトラップ触媒8Bから脱離されるHCを酸化浄化するための制御(酸素供給制御)を実施するか否か判定する判定フローである。図4で示されるフロー(ステップB10〜B130)は、酸素供給制御を実施する場合に具体的にどのような燃料噴射の態様を用いるかを判定し実行する実行フローである。また、図5で示されるフロー(ステップC10〜C80)は、酸素供給制御のための燃料噴射の態様として燃料カットを行う場合の詳細な実行フローである。ECU20は、これら3つのフローを並列的に、且つそれぞれエンジン1の一行程を一周期として処理している。
【0019】
図3に示す判定フローでは、ECU20のHC脱離状態検出部22は、まず、エンジン1の始動時の冷却水温が所定温度以下であり、且つ、エンジン1の始動後所定時間以内であるか否か判定する(ステップA10)。この判定は、冷却水温が高い場合には始動時のHCトラップ触媒8Bの温度も高いのでHCが吸着されていないと予想され、始動後時間が経過している場合には既にHCトラップ触媒8Bの温度が高くなっていて既にHCが脱離されていると予想されるからである。ステップA10の条件が成立した場合には、HC脱離状態検出部22は、触媒温度センサ32からの検出信号に基づきHCトラップ触媒8Bの温度(HCT温度)を推定する(ステップA20)。そして、酸素供給フラグがセットされているか否か判定し(ステップA30)、酸素供給フラグがセットされている場合にはステップA40の判定に進み、酸素供給フラグがセットされていない場合にはステップA60の判定に進む。酸素供給フラグはHCトラップ触媒8BがHC脱離状態にある場合にHC脱離状態検出部22によりセットされ、このフラグがセットされることにより燃料噴射制御部23による後述の酸素供給制御が実施される。酸素供給フラグは、ステップA40の判定においてHCトラップ触媒8Bの温度がHC脱離温度よりも大きいときにステップA50でセットされ、ステップA60の判定においてHCトラップ触媒8Bの温度がHC脱離終了温度以上のとき、及び、ステップA10の条件が不成立の場合にステップA70でクリアされる
図4に示す実行フローでは、ECU20の燃料噴射制御部23は、まず、エンジン回転速度情報とエンジントルク情報とを取得する(ステップB10)。そして、酸素供給フラグがセットされているか否か判定し(ステップB20)、酸素供給フラグがセットされている場合にはステップB30の処理に進み、酸素供給フラグがセットされていない場合にはステップB130の処理に進む。ステップB130に進んだ場合には、燃料噴射制御部23は、エンジン回転速度とエンジントルクに応じた通常の燃料噴射制御を行う。ステップB30に進んだ場合には、燃料噴射制御部23は、図2に示すマップにステップB10で取得したエンジン回転速度とエンジントルクを照合することで、燃料噴射の態様を決めるためのゾーンを判定する。燃料噴射制御部23は、まず、判定したゾーンが図2に示すゾーンAか否か判定し(ステップB40)、ゾーンAの場合には圧縮リーンモードによる燃料噴射を行う(ステップB50)。ゾーンAでない場合には次に図2に示すゾーンBか否か判定し(ステップB60)、ゾーンBの場合には吸気リーンモードによる燃料噴射を行う(ステップB70)。ゾーンBでもない場合には次に図2に示すゾーンCか否か判定し(ステップB80)、ゾーンCの場合には二回噴射リーンモードによる燃料噴射を行う(ステップB90)。ゾーンCでもない場合にはさらに図2に示すゾーンDか否か判定し(ステップB100)、ゾーンDの場合には所定行程数毎に燃料カットを行う(ステップB110)。そして、ゾーンDでもない場合には、図2に示すゾーンEに対応するストイキオモードによる燃料噴射を行う(ステップB120)。
【0020】
上記のステップB110での処理の詳細は図5に示すフローにより示される。ECU20の燃料噴射制御部23は、まず、酸素供給フラグがセットされているか否か判定し(ステップC10)、酸素供給フラグがセットされている場合にはさらにエンジン1の運転ゾーンが図2に示すゾーンDか否か判定する(ステップC20)。酸素供給フラグがセットされており運転ゾーンがゾーンDの場合には、燃料カットカウンタをデクリメントする(ステップC30)。この燃料カットカウンタは、燃料カットのための行程数を計算するためのカウンタであり、燃料カットの周期がその初期値にセットされている。燃料噴射制御部23は、燃料カットカウンタが0になったか否か判定し(ステップC40)、燃料カットカウンタが0になるまではエンジン回転速度とエンジントルクに応じた通常の燃料噴射制御を行う(ステップC80)。そして、燃料カットカウンタが0になったら、燃料噴射制御部23は、燃料カットカウンタに所定値(燃料カット周期の行程数)をセットして燃料カットカウンタをリセットし(ステップC50)、高圧噴射弁10からの燃料噴射のパルス幅を0に設定する(ステップC60)。なお、酸素供給フラグがセットされていない場合や運転ゾーンがゾーンDでない場合、或いは、燃料カットカウンタのデクリメント中に酸素供給フラグがクリアされたり運転ゾーンがゾーンDから外れた場合には、燃料カットカウンタに所定値をセットしてリセットし(ステップC70)、エンジン回転速度とエンジントルクに応じた通常の燃料噴射制御を行う(ステップC80)。
【0021】
以上の図3〜図5のフローで示す制御による作用効果を具体的に示したのが図6である。図6(a),図6(b),図6(c),図6(d)は、エンジン1を冷態状態から始動した後に図6(e)に示すようにアクセル開度を変化させたときのHCトラップ触媒8Bの温度、HC排出量、エンジントルク、エンジン回転速度の時間変化を示している。特に図6(b)は、破線が三元触媒8Cの出口におけるHC排出量を示し、二点鎖線と実線とがHCトラップ触媒8B出口におけるHC排出量を示している。このうち二点鎖線で示すHC排出量の時間変化は従来技術によるものであり、実線で示すHC排出量の時間変化が上記制御方法によるものである。また、図6(b)には、上記制御方法による場合の、HCトラップ触媒8Bの温度がHC脱離温度を超えてからHC脱離終了温度を超えるまでの間の燃料噴射制御の内容を併せて示している。
【0022】
エンジン1の始動直後、エンジン1からは比較的多量のHCが排出される。しかしながら、始動直後は三元触媒8Cは活性化温度に達していないので、図6(b)の破線に示すように、HCは三元触媒8Cで浄化されずに三元触媒8Cを通過し、下流のHCトラップ触媒8Bに流れる。HCトラップ触媒8Bは低温状態でHCを吸収するので、図6(b)の実線に示すように、三元触媒8Cを通過したHCの多くを吸収して外部へ排出されるHCを低減する。
【0023】
HCトラップ触媒8Bに吸収されたHCは、図6(a)に示すようにHCトラップ触媒8Bの温度が上昇してHC脱離温度を超えたところから、HCトラップ触媒8Bから脱離し始める。HCトラップ触媒8Bから脱離するHCの一部はHCトラップ触媒8Bの貴金属により酸化されるので、エンジン1のリーン運転によりHCトラップ触媒8Bに酸素を供給すれば、HCの酸化を促進してHCの排出を抑制することができる。ところが、このとき図6(e)に示すようにアクセル操作が行われ、図6(c)に示すように大きなエンジントルクが要求された場合には、エンジン1はリーン運転できない。このため、従来の制御方法では十分な酸素をHCトラップ触媒8Bに供給することができず、図6(b)の二点鎖線に示すように多量のHCがHCトラップ触媒8Bから放出されてしまう。これに対して本実施形態の制御方法では、リーン運転できない高負荷時でも所定周期毎の燃料カットにより排気ガス中に多量の酸素を残存させることができ、HCトラップ触媒8Bに十分な酸素を供給することができる。したがって、本実施形態の制御方法によれば、HCトラップ触媒8Bにおける脱離HCの酸化浄化効率を向上させることができ、図6(b)の実線に示すように、HCトラップ触媒8Bから外部へのHCの排出量を低減することができる。
【0024】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施しうるものである。例えば、図2に示すマップにおいて、燃料カットを行うゾーンDを低回転速度低トルク側から高回転速度高トルク側に向けて波紋状に複数のゾーンに分け、ゾーン毎に燃料カットを行う行程数を設定してもよい。この場合、低回転速度低トルク側のゾーンほど行程数を小さく設定し、高回転速度高トルク側のゾーンほど行程数を大きく設定する。これにより負荷の増加に応じて所定行程数が多く設定されることになるので、出力要求を満たしながらHCトラップ触媒8Bヘの酸素供給を図ることができ、ドライバビリティと排ガス性能を高次元で両立させることが可能になる。
【0025】
また、HCトラップ触媒8Bの温度を推定する方法として、上述の実施形態ではHCトラップ触媒8Bを支持するベッド部の温度を検出しているが、排気通路4に温度センサを設けて排気通路4内の排ガス温度を検出し、排ガス温度からHCトラップ触媒8Bの温度を推定してもよい。さらに、運転開始からのエンジントルクやエンジ回転速度の履歴に基づいてHCトラップ触媒8Bの温度を推定してもよい。
【0026】
また、上述の実施形態では本発明を筒内噴射式エンジンに適用しているが、本発明は、一般的な希薄燃焼エンジンにも広く適用することができ、さらに、少なくとも所定行程数毎に燃料カット運転が可能なエンジンであれば適用することができる。
【0027】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の内燃機関の排気浄化装置によれば、HCトラップ触媒がHCを脱離する状態にある場合は、所定行程毎に内燃機関の燃料カット運転が行われるので、リーン運転は困難な比較的負荷が高い領域でもHC脱離状態にあるHCトラップ触媒に効率良く酸素を供給することができ、HCトラップ触媒における脱離HCの酸化浄化効率を向上させて外部へのHCの排出を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態にかかる内燃機関の全体構成を示す概略図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる制御マップであり、エンジン回転速度とエンジントルクとに応じて燃料噴射モードを決定するためのマップである。
【図3】本発明の一実施形態にかかる酸素供給制御の実施の可否を判定するためのフローチャートである。
【図4】本発明の一実施形態にかかる酸素供給制御を実施する場合の燃料噴射の態様を判定するためのフローチャートである。
【図5】本発明の一実施形態にかかる酸素供給制御のための燃料噴射の態様として燃料カットを行う場合のフローチャートである。
【図6】本発明の一実施形態にかかる酸素供給制御の作用効果を示すタイムチャートであり、(a)はエンジン始動後のHCトラップ触媒の温度の時間変化を示す図、(b)はHC排出量の時間変化を示す図、(c)はエンジントルクの時間変化を示す図、(d)はエンジン回転速度の時間変化を示す図、(e)はアクセル開度の時間変化を示す図である。
【符号の説明】
1 エンジン
1a エンジン本体
3 吸気通路
4 排気通路
6 ETV
8A NOx触媒
8B HCトラップ触媒
8C 三元触媒
9 点火プラグ
10 高圧噴射弁
20 ECU
21 負荷検出部
22 HC脱離状態検出部
23 燃料噴射制御部
30 エアフローセンサ
31 スロットル開度センサ
32 触媒温度センサ
33 クランク角センサ

Claims (1)

  1. 内燃機関の排気通路に設けられ冷態状態でHCを吸着すると共に温度が上昇すると吸着したHCを脱離するHCトラップ触媒と、
    上記HCトラップ触媒がHCを脱離する状態にあることを検出する脱離状態検出手段と、
    上記内燃機関の負荷を検出する負荷検出手段と、
    上記脱離状態検出手段により上記HCトラップ触媒がHC脱離状態にあることが検出される場合に、上記負荷が所定値に満たない時は上記内燃機関をリーン空燃比で運転し、上記負荷が所定値以上の時には上記内燃機関をストイキオ空燃比で運転すると共に所定行程数毎に燃料カット運転する制御手段と
    を備え
    上記制御手段は、上記負荷検出手段により検出される負荷の増加に応じて上記所定行程数を多くするように構成されていることを特徴とする、内燃機関の排気浄化装置。
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