JP3783007B2 - 吊り具および被刷部材の吊り上げ方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、吊り具、詳しくは、建築横梁、山留主材、切梁、腹起し、セグメントなどを吊り下げるための吊り具および被刷部材の吊り上げ方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
建築横梁、山留主材、切梁、腹起し、セグメントなどを吊り下げるための吊り具として、たとえば、吊り具を、吊り具本体と、吊り具本体に対して移動可能なスライド部材とにより構成し、吊り具本体の挿入部の先端部を、その中間部よりも太く形成し、挿入部を鋼板材の穴に挿入し、次いで、スライド部材を鋼板材の穴に挿入し、これにより、挿入部の太い先端部が鋼板材の穴から抜けないロック状態を形成させて、重量のある鋼板材の吊り作業を可能とし、また、取り外しは、スライド部材を、鋼板材の穴から引き抜いた後、挿入部を引き抜くことにより、挿入方向に対する裏側での作業を不要することができる、鋼板材吊り具が提案されている(たとえば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−240367号公報
【発明が解決しようとする課題】
しかるに、たとえば、山留主材などの鋼材は、前回使用した後、再度使用する前には、メンテナンスとして、防錆のために塗装するようにしている。しかし、このような塗装をすると、吊り具を挿入するための穴の周囲も塗装されるので、上記したような、穴寸法に合わせて用いる必要のある吊り具では、塗料の厚みに起因して穴が小径となるので、挿入部を円滑に穴に挿入することができず、その都度、穴の周囲の塗料を削るか、あるいは、強引にたたき込むなどの作業が必要となって、作業効率の著しい低下を生じている。
【0004】
また、スライド部材を、穴に対して円滑に挿入するには、スライド部材を、吊り具本体に対して安定してスライドさせる必要がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、その目的とするところは、挿入部およびスライド部材を、穴に対して円滑かつ安定して挿入することのできる、吊り具および被刷部材の吊り上げ方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、吊り具本体と、この吊り具本体に対して移動可能なスライド部材とを備え、前記吊り具本体は、吊り上げ装置により吊り上げるための吊り部と、前記吊り部から突出形成され、被吊り部材の穴に挿入するための挿入部とを有し、前記挿入部は、長手方向に延び、その先端部が、中間部よりも太く形成されており、前記スライド部材は、前記吊り具本体に、前記挿入部の長手方向に対してスライド可能に支持されており、前記挿入部を前記被吊り部材の穴に挿入するとともに、前記スライド部材を、前記挿入部に対して挿入方向にスライドさせて、前記被吊り部材の穴に挿入することにより、この挿入部とスライド部材とで、前記挿入部の先端部が前記被吊り部材の穴から抜けないロック状態として、吊り作業を可能とし、前記スライド部材を、前記挿入部に対して引き抜き方向にスライドさせることにより、前記被吊り部材の穴から前記スライド部材を引き抜いてロック解除状態とした後、前記挿入部を前記鋼板材の穴から引き抜くことにより、取り外すことができるように構成されており、前記挿入部の先端部には、前記挿入部を前記被吊り部材の穴に挿入したときに、前記穴の周囲の塗料を、前記挿入部を軸心として前記穴の円周方向に回転させるようにして、削るための突起が設けられており、前記先端部は、前記中間部に連続する後部と、前記後部から先端縁部に向かって次第に細くなる先細部とを備え、前記突起が、少なくとも前記先細部に設けられていることを特徴としている。
【0007】
このような構成によると、挿入部を被吊り部材の穴に挿入するとともに、スライド部材を被吊り部材の穴に挿入することにより、この挿入部とスライド部材とで、挿入部の先端部が被吊り部材の穴から抜けないロック状態とされる。つまり、挿入部の先端部は、その中間部よりも太く形成されているので、被吊り部材の穴にスライド部材が挿入されることにより、この挿入部の先端部が、その穴から抜けないようにされた状態においては、吊り具が、被吊り部材の穴から抜けることなく、確実に固定される。
【0008】
一方、スライド部材を、被吊り部材の穴から引き抜いてロック解除状態とした後には、被吊り部材の穴には、そのスライド部材が引き抜かれた分の隙間があるので、たとえ、挿入部の先端部が太く形成されていても、その挿入部を被吊り部材の穴から引き抜くことができ、吊り具を、被吊り部材の穴から容易に取り外すことができる。
【0009】
そして、この吊り具では、挿入部を被吊り部材の穴に挿入するときに、その穴の周囲がメンテナンス時に塗装され、挿入部よりその穴が小径となっていても、穴の周囲の塗料を突起によって削りつつ、挿入部を穴に挿入することができる。そのため、挿入部を穴に対して円滑に挿入することができる。より具体的には、まず、先細部が穴に挿入され、次いで、突起により穴の周囲の塗料が削られながら後部が挿入される。そのため、挿入部の穴に対する円滑な挿入を確保でき、作業効率の向上を図ることができる。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記突起は、前記先端部の先端縁部から前記中間部に向かう方向の途中に設けられていることを特徴としている。
【0011】
このような構成によると、突起が、先端部の先端縁部から中間部に向かう方向の途中に設けられているので、先に先端部の先端縁部を穴に挿入した後に、突起によって、その穴の周囲の塗料を削ることができる。そのため、より一層、挿入部の穴に対する円滑な挿入を確保することができる。
【0014】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記突起は、前記先端部の周面において、互いに対向する位置に複数設けられていることを特徴としている。
【0015】
このような構成によると、突起が先端部の周面において互いに対向する位置に複数設けられているので、効率よく穴の周囲の塗料を削ることができる。
【0016】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の発明において、前記吊り具本体は、前記スライド部材がスライド可能に摺動する本体側摺動面を有し、前記本体側摺動面は、前記スライド部材のスライド方向に沿って形成され、湾曲状に膨出する嵌合凸面と、前記嵌合凸面の両側に設けられる略平坦状のガイド面とを備えており、前記スライド部材は、前記吊り具本体にスライド可能に摺動する部材側摺動面を有し、前記部材側摺動面は、前記スライド部材のスライド方向に沿って形成され、湾曲状に窪む嵌合凹面と、前記嵌合凹面の両側に設けられる略平坦状のガイド面とを備えていることを特徴としている。
【0017】
このような構成によると、本体側摺動面の嵌合凸面に、部材側摺動面の嵌合凹面が嵌合し、本体側摺動面のガイド面と、部材側摺動面のガイド面とが対向する状態で、吊り具本体に対してスライド部材をスライドさせることができる。そのため、スライド部材を吊り具本体に対して安定してスライドさせて、穴に対してスライド部材を円滑かつ安定して挿入および引き抜きすることができる。
【0018】
また、請求項5に記載の発明は、吊り具本体と、この吊り具本体に対して移動可能なスライド部材とを備え、前記吊り具本体は、吊り上げ装置により吊り上げるための吊り部と、前記吊り部から突出形成され、被吊り部材の穴に挿入するための挿入部とを有し、前記挿入部は、長手方向に延び、その先端部が、中間部よりも太く形成されており、前記スライド部材は、前記吊り具本体に、前記挿入部の長手方向に対してスライド可能に支持されており、前記挿入部を前記被吊り部材の穴に挿入するとともに、前記スライド部材を、前記挿入部に対して挿入方向にスライドさせて、前記被吊り部材の穴に挿入することにより、この挿入部とスライド部材とで、前記挿入部の先端部が前記被吊り部材の穴から抜けないロック状態として、吊り作業を可能とし、前記スライド部材を、前記挿入部に対して引き抜き方向にスライドさせることにより、前記被吊り部材の穴から前記スライド部材を引き抜いてロック解除状態とした後、前記挿入部を前記鋼板材の穴から引き抜くことにより、取り外すことができるように構成されており、前記挿入部の先端部には、前記挿入部を前記被吊り部材の穴に挿入したときに、前記穴の周囲の塗料を削るための突起が設けられている吊り具を用いて、被吊り部材を吊り上げる方法であって、前記吊り具の前記挿入部を前記被吊り部材の穴に挿入するときに、その穴の周囲の塗料を、前記突起を前記挿入部を軸心として前記穴の円周方向に回転させるようにして削りつつ、前記挿入部を前記穴に挿入することを特徴としている。
【0019】
このような方法によると、挿入部を被吊り部材の穴に挿入するとともに、スライド部材を被吊り部材の穴に挿入することにより、この挿入部とスライド部材とで、挿入部の先端部が被吊り部材の穴から抜けないロック状態とされる。つまり、挿入部の先端部は、その中間部よりも太く形成されているので、被吊り部材の穴にスライド部材が挿入されることにより、この挿入部の先端部が、その穴から抜けないようにされた状態においては、吊り具が、被吊り部材の穴から抜けることなく、確実に固定される。
【0020】
一方、スライド部材を、被吊り部材の穴から引き抜いてロック解除状態とした後には、被吊り部材の穴には、そのスライド部材が引き抜かれた分の隙間があるので、たとえ、挿入部の先端部が太く形成されていても、その挿入部を被吊り部材の穴から引き抜くことができ、吊り具を、被吊り部材の穴から容易に取り外すことができる。
【0021】
そして、この方法では、挿入部を被吊り部材の穴に挿入するときに、その穴の周囲がメンテナンス時に塗装され、挿入部よりその穴が小径となっていても、穴の周囲の塗料を突起によって削りつつ、挿入部を穴に挿入することができる。そのため、挿入部を穴に対して円滑に挿入することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の吊り具の一実施形態を示す正面図、図2は、その平面図、図3は、その側面図である。
【0023】
図1において、この吊り具1は、建築横梁、山留主材、切梁、腹起し、セグメントなど、吊り上げるための穴2を有する被吊り部材としての鋼板材3(たとえば、図9参照)を吊り上げるために用いられる。
【0024】
この吊り具1は、吊り具本体4と、この吊り具本体4に対して、図1の紙面上下方向(以下、上下方向とする。)にスライド可能なスライド部材5とを備えている。
【0025】
吊り具本体4は、チェーンブロックやクレーンなどの吊り上げ装置に連結するための吊り部6と、吊り部6から下方に向かって突出形成され、鋼板材3の穴2に挿入するための挿入部7とを一体的に備えている。
【0026】
吊り部6は、正面視略矩形状の厚板からなり、その略中央部に、吊り穴8が形成され、その側方一端部に、スライド部材5をスライド可能に支持するためのスライド支持部9が形成され、その側方他端部に、ストッパ支持部10が形成されている。
【0027】
吊り穴8は、吊り上げ装置からのシャックル、カップリングまたはワイヤーなどの引掛具11(図8参照)を挿通するために、吊り部6の厚さ方向を貫通する略円形状に形成されている。
【0028】
スライド支持部9は、図2および図4に示すように、吊り部6の側方一端部において、その上端部が吊り部6よりも上方に突出するように形成されており、スライド部材5がスライド可能に摺動する本体側摺動面12と、スライド部材5をスライド可能に保持する保持部13とを備えている。
【0029】
本体側摺動面12は、スライド部材5のスライド方向(上下方向)に沿って形成され、吊り部6の厚さ方向中央において湾曲状に膨出する嵌合凸面14と、嵌合凸面14の両側に設けられる平坦状の1対のガイド面15とを備えている。
【0030】
また、保持部13は、嵌合凸面14における上下方向途中において、側方に向かって略矩形状に膨出するように設けられている。この保持部13は、吊り部6の厚み方向において、後述するスライド部材5の案内長溝16の内寸幅と略同幅に形成されており、固定ねじ17を螺着させるための螺着孔18が形成されている。
【0031】
ストッパ支持部10は、図1に示すように、吊り部6の側方他端部において、上下方向に長く形成される略矩形状の上側支持部22と、その上側支持部22の下方において、上側支持部22と所定間隔を隔てて上下方向に短く形成される略矩形状の下側支持部23とを備えている。
【0032】
上側支持部22は、吊り穴8の側方に設けられ、ストッパボルト19のねじ軸部20の先端部が挿通される上側挿通孔24が、上下方向に沿って貫通状に形成されている。
【0033】
また、下側支持部23は、吊り部6の下端面28から上方に窪むように設けられ、ストッパボルト19のねじ軸部20の途中部が挿通される下側挿通孔25が、上下方向に沿って貫通状に形成されている。
【0034】
また、このストッパ支持部10には、ストッパボルト19が支持されている。ストッパボルト19は、六角状の頭部21と、ねじ山が形成されるねじ軸部20とが一体的に形成されるボルト部26と、ボルト部26とは別体で形成され、ねじ軸部20が螺着される六角状のナット部27とを備えている。
【0035】
そして、ナット部27が、上側支持部22と下側支持部23との間に介装された状態で、下側支持部23の下側挿通孔25に、ストッパボルト19のねじ軸部20を挿通して、その先端部からナット部27に螺着させ、さらに、上側支持部22の上側挿通孔24に、その先端部を挿通させるような状態で、ストッパボルト19が、ストッパ支持部10に支持されている。なお、ナット部27は、上側支持部22と下側支持部23との間に介装された状態では、上側支持部22と下側支持部23との間における吊り部6の側面に当接して、水平方向の回転が規制される。そのため、頭部21を回転させるのみで、ボルト部26をナット部27に対して螺進または螺退させることができ、これによって、頭部21の吊り部6からの突出位置(上下方向位置)の調整が可能とされている。また、頭部21が下側支持部23の下端面50と当接する位置まで螺進された状態では、頭部21の下面が、吊り部6の下端面28よりも上方に位置するように、設定されている。
【0036】
挿入部7は、吊り部6の側方一端部の下端面28から、下方に向かって上下方向(長手方向)に延び、その先端部29が、基端から先端部29に至るまでの中間部30よりも太く形成されている。
【0037】
中間部30は、断面略楕円形状をなし、本体側摺動面12と連続する外側外周面38が、本体側摺動面12の嵌合凸面14と面一となるように連続状に形成されており、また、外側外周面38の反対側の内側外周面39が、スライド部材5の外周面31とともに断面略円形状を形成し得るような、略円弧状に形成されている。
【0038】
また、先端部29は、中間部30に連続する後部32と、後部32から先端縁部33に向かって次第に細くなる先細部34とが一体的に形成されている。
【0039】
後部32は、略円柱状に形成されており、その外側外周面35が、中間部30の外側外周面38と面一となるように連続状に形成され、また、その内側外周面36が、中間部30の内側外周面39よりも、内側方向に膨出するように(すなわち、中間部30と先端部29とで鉤状となるように)形成されている。
【0040】
先細部34は、その先端縁部33が丸みのある、略円錐台形状をなし、後部32から先端縁部33に向かって次第に小径となるように形成されている。
【0041】
そして、この吊り具1では、先端部29に、挿入部7を鋼板材3の穴2に挿入したときに、その穴2の周囲の塗料P(図5参照)を削るための突起37が設けられている。この突起37は、先端部29の先端縁部33から中間部30に向かう方向の途中であって、より具体的には、先細部34の上端部に設けられている。この突起37は、図1および図3に示すように、先端部29の外周面において、円周方向に、互いに略180°離れた対向位置(正面位置および背面位置)に1対(2つ)として設けられている。各突起37は、図1に示すように、正面視において、上下方向に延びる細長楕円形状に形成されており、その上端部が、後部32の外周面(外側外周面35と内側外周面36との境界部分)と面一となるように連続状に形成され、その下端部が、先細部34の外周面から外側に膨出するように、先細部34における先端縁部33よりも上方に形成されている。言い換えると、各突起37は、図3に示すように、側面視において、後部32と面一となるように、上下方向において平坦状に形成されており、その上端部が後部32に連続し、その下端部が先細部34との間に段差が形成されるような、下方に向かって膨出する割合が大きくなる略三角形状に形成されている。
【0042】
スライド部材5は、図1ないし図3に示すように、上下方向に沿って延びる側面視略細長矩形状の平板状をなし、その上端部には、抵抗付与部40が形成されるとともに、幅方向中央(吊り部6の厚さ方向)において、上下方向に沿う側面視略矩形状の案内長溝16が形成されている。
【0043】
また、抵抗付与部40は、案内長溝16の上方において側方に向かって膨出する側面視略矩形状に形成されており、スライド支持部9の嵌合凸面14に、弾性的に当接する抵抗付与ねじ42が設けられている。この抵抗付与ねじ42は、その先端部52が嵌合凸面14に向かう方向において、突出または退避可能に構成されており、嵌合凸面14に対して弾性的に当接される。
【0044】
また、このスライド部材5は、図2に示すように、スライド支持部9の本体側摺動面12と摺動する裏面が、部材側摺動面43とされ、この部材側摺動面43は、スライド部材5の長手方向(上下方向)に沿って形成され、幅方向中央において湾曲状に窪む嵌合凹面44と、嵌合凹面44の両側に設けられる平坦状の1対(2つ)のガイド面45とを備えている。また、部材側摺動面43と反対側の表面、つまり、外周面31が、上記したように、中間部30の内側外周面39とともに断面略円形を形成し得る円弧状として形成されている。
【0045】
また、このスライド部材5は、図3に示すように、その下端部から上端部に向かって、長手方向(上下方向)に沿って、その厚みが、順次、厚くなるように形成されている。より具体的には、スライド部材5の外周面31の下端部には、複数の段部が形成されており、その先端から後端に向かって、それぞれ厚みが厚くなる、第1外周面46、第2外周面47、第3外周面48が形成されている。これによって、後述する吊り作業において、挿入部7の中間部30とスライド部材5とが重ね合わされたとき、たとえば、中間部30と第1外周面46とが重ね合わされた場合、中間部30と第2外周面47とが重ね合わされた場合、中間部30と第3外周面48とが重ね合わされた場合のそれぞれについて、順次、その径が太くなる。
【0046】
そして、このスライド部材5は、スライド支持部9の保持部13に、案内長溝16を嵌め込んで、本体側摺動面12の嵌合凸面14に、部材側摺動面43の嵌合凹面44を嵌合させて、本体側摺動面12のガイド面15と、部材側摺動面43のガイド面45とを対向させた状態で、保持部13の螺着孔18に対向するように、案内長溝16の幅よりも大径のワッシャ49をスライド部材5の外周面31に被覆して、そのワッシャ49を介して、螺着孔18に固定ねじ17を螺着させることにより、スライド支持部9に取り付けられる。
【0047】
このように取り付けられた状態で、スライド部材5は、図2および図3に示すように、本体側摺動面12の嵌合凸面14に部材側摺動面43の嵌合凹面44が嵌合されるとともに、本体側摺動面12のガイド面15に部材側摺動面43のガイド面45がガイドされ、また、保持部13に案内長溝16の幅方向内周面がガイドされる状態で、本体側摺動面12、中間部30の外側外周面38および後部32の外側外周面35と、部材側摺動面43とが摺動しつつ、上下方向にスライド移動可能とされる。
【0048】
次に、この吊り具1を用いて、鋼板材3を吊り上げる作業について説明する。
【0049】
まず、吊り具1を使用する前には、図5および図6に示すように、スライド部材5を吊り具本体4に対して上方に引き上げた状態で、抵抗付与ねじ42の先端部52を吊り部6のストッパ支持部10の上端面に当接させておくことにより、挿入部7とストパ部材5とが重なり合わないようにする。
【0050】
次いで、図5に示すように、この吊り具1の挿入部7を、鋼板材3の穴2に挿入する。このとき、鋼板材3が山留主材などの場合には、前回使用した後、再度使用する前にメンテナンスとして防錆のために塗装されている場合がある。しかし、そのような塗装がされていると、穴2の周囲も塗装されるので、塗料Pの厚みに起因して穴2が小径となるので、挿入部7を円滑に穴2に挿入することができない場合がある。
【0051】
しかし、この吊り具1では、挿入部7を鋼板材3の穴2に挿入するときには、塗料Pによりたとえ穴2が塞がれていても、穴2の周囲の塗料Pを突起37によって削りつつ、挿入部7を穴2に円滑に挿入することができる。
【0052】
より具体的には、まず、穴2に挿入部7の先細部34を挿入した後、突起部37を塗料Pに当接させた状態で、図5の矢印で示すように、挿入部7を軸心として、穴2の円周方向に回転させれば、塗料Pが突起部37によって削られるので、挿入部7を回転させながら押し下げていけば、塗料Pが突起部37により上側から下側に向かって掻き取られながら除去される。そうすると、突起部37に続く先端部29の後部32が穴2に円滑に挿入されるので、結果として、図6に示すように、挿入部7の先端部29を、円滑に穴2に挿通させることができる。
【0053】
次いで、図7に示すように、抵抗付与ねじ42の先端部52を、抵抗付与部40内に押し込むようにして、ストッパ部材5をスライド支持部9に対して押し下げ、保持部13に案内長溝16が案内されるような状態で、本体側摺動面12と部材側摺動面43とを摺動させながら、スライド部材5をスライド支持部9に対して挿入方向にスライドさせることによって、ストッパ部材5を鋼板材3の穴2に挿入する。そうすると、挿入部7とスライド部材5とで、挿入部7の先端部29が鋼板材3の穴2から抜けないロック状態が形成される。つまり、挿入部7の先端部29は、その中間部30よりも太く形成されているので、鋼板材3の穴2にスライド部材5が挿入されることにより、穴2が、その分、塞がり、挿入部7の先端部29の内側上面51が、穴2の裏側の外周面に引っ掛かる状態となる。その結果、吊り具1が、鋼板材3の穴2から抜けないようになり、吊り具1が鋼板材3に確実に固定される。
【0054】
また、この固定においては、そのときに固定する鋼板材3の穴2の径に対応させるべく、このスライド部材5を、穴2が塞がるまで挿入すればよい。すなわち、スライド部材5には、第1外周面46、第2外周面47、第3外周面48が形成されており、スライド部材5をいずれの位置まで挿入するかによって、中間部30とスライド部材5とが重ね合わされたときの径の太さを変化させることができる。そのため、スライド部材5を穴2が塞がるまで挿入すれば、そのまま、鋼板材3の穴2の径に対応した太さで挿入することができる。これによって、穴2に対して挿入部7をがたつかせることなく、良好に固定することができる。なお、図7においては、スライド部材5は、穴2に対して第3外周面48まで挿入されている。
【0055】
また、挿入部7に、それぞれ厚みが厚くなる、第1外周面46、第2外周面47、第3外周面48を形成しておくことによって、穴2の径がそれぞれ異なる鋼板材3(この場合には3種類)に対応させることができ、吊り具1の広汎な使用を確保することができる。
【0056】
そして、スライド部材5を穴2が塞がるまで挿入した後、必要により、たとえば、図8に示すように、ストッパボルト19を螺退させて、その頭部21を鋼板材3の表面に当接させる。
【0057】
すなわち、吊り具1鋼板材3に固定するときには、鋼板材3における穴2の上下の外周面を、吊り部6の下端面28と挿入部7の先端部29の内側上面51との間で挟むようにしているが、吊り部6の下端面28と先端部29の内側上面51との間が、鋼板材3に対して広い場合には、固定後に、がたつきを生じる場合がある。
【0058】
そのため、このストッパボルト19を、ストッパ支持部10に対して螺退および螺進させることにより鋼板材3の厚みに合わせて調節し、その鋼板材3における穴2の上側の外周面に当接させておくことにより、その鋼板材3における穴2の上下の外周面を、ストッパボルト19の頭部21と先端部29の内側上面51との間で挟むようにして固定することにより、種々の厚みの鋼板材3に対しても、安定して固定することができる。そのため、鋼板材3に対してがたつきなく固定することができるので、たとえば、吊り上げ作業中において、横引きになったとしても、安定した作業を確保することができる。
【0059】
そして、このようにして固定した後には、吊り穴8に、吊り上げ装置からのシャックル、カップリングまたはワイヤーなどの引掛具11を挿通した後、図9に示すように吊り上げて、鋼板材3を異なる場所に移送する。なお、図9では、鋼板材3は、山留主材として例示されており、鋼板材3に穿孔される任意の穴2に、長手方向両端部において対角となるように吊り具1を固定して、吊り上げる状態が示されている。
【0060】
鋼板材3の吊り上げ作業が終了した後は、必要により、ストッパボルト19を螺進させた後、図10に示すように、スライド部材5をスライド支持部9に対して引き抜き方向にスライドさせることにより、鋼板材3の穴2から引き抜いてロック解除状態とする。そうすると、鋼板材3の穴2には、そのスライド部材5が引き抜かれた分の隙間ができるので、次いで、図11に示すように、挿入部7を、その先端部29とともに、鋼板材3の穴2から引き抜くことにより、吊り具1を、鋼板材3の穴2から容易に取り外すことができる。
【0061】
このような吊り具1では、挿入部7を鋼板材3の穴2に挿入するとともに、その挿入方向にスライド部材5をスライドさせることにより固定することができ、また、引き抜き方向にスライド部材5をスライドさせた後、挿入部7を鋼板材3の穴2から引き抜くことにより取り外すことができる。つまり、鋼板材3の穴2の裏側から作業することなく、固定および取り外しすることができるので、迅速に、正確かつ確実な作業を確保することができる。また、固定している状態では、吊り具本体4と一体的に形成される挿入部7の太い先端部29が、鋼板材3の穴2から抜けないようにされていることから、耐力が強く、重量のある鋼板材3であっても、良好に吊り上げることができる。
【0062】
そして、この吊り具1では、挿入部7を鋼板材3の穴2に挿入するときに、その穴2の周囲がメンテナンス時に塗装され、挿入部7よりその穴2が小径となっていても、穴2の周囲の塗料Pを突起37によって削りつつ、挿入部7を穴2に挿入することができる。そのため、挿入部7を穴2に対して円滑に挿入することができる。
【0063】
また、突起37は、先端部29の先端縁部33から中間部30に向かう方向の途中であって、より具体的には、先細部34の上端部に設けられている。そのため、先に先端部29の先端縁部33を穴2に挿入した後に、突起37によって、その穴2の周囲の塗料Pを削ることができる。そのため、より一層、挿入部7の穴2に対する円滑な挿入を確保することができる。
【0064】
とりわけ、この挿入部7では、まず、先細部34が穴2に挿入され、次いで、突起37により穴2の周囲の塗料Pが削られながら後部32が挿入されるので、挿入部7の穴2に対する円滑な挿入を確保でき、作業効率の向上を図ることができる。
【0065】
また、突起37は、先端部29の外周面において、円周方向に、互いに略180°離れた対向位置に1対として設けられているので、効率よく穴2の周囲の塗料Pを削ることができる。
【0066】
また、この吊り具1では、本体側摺動面12の嵌合凸面14に、部材側摺動面43の嵌合凹面44が嵌合し、本体側摺動面12のガイド面15と、部材側摺動面43のガイド面45とが対向する状態で、吊り具本体4に対してスライド部材5をスライドさせるので、スライド部材5を吊り具本体4に対して安定してスライドさせて、穴2に対してスライド部材5を円滑かつ安定して挿入および引き抜きすることができる。
【0067】
なお、この吊り具1では、スライド部材5に、第1外周面46、第2外周面47、第3外周面48を形成して、3種類の穴2に対応できるようにしているが、厚みの異なる外周面をそれ以上多くして、3種類以上の穴2に対応できるように構成してもよく、また、厚みの異なる外周面をそれ以下として、3種類未満の穴2に対応できるように構成してもよい。また、厚みの異なる外周面を多段で形成するのではなく、その先端部から後端部に向けて、長手方向に沿って、順次厚くなるようなテーパ状に形成してもよい。
【0068】
また、以上に述べた鋼板材3としては、より具体的には、建築横梁、山留主材、切梁、腹起し、セグメントなどが例示される。
【0069】
【発明の効果】
以上述べたように、請求項1に記載の発明によれば、挿入部を穴に対して円滑に挿入することができる。また、スライド部材を吊り具本体に対して安定してスライドさせて、穴に対してスライド部材を円滑かつ安定して挿入および引き抜きすることができる。
【0070】
請求項2に記載の発明によれば、より一層、挿入部の穴に対する円滑な挿入を確保することができる。
【0072】
請求項3に記載の発明によれば、効率よく穴の周囲の塗料を削ることができる。
【0073】
請求項4に記載の発明によれば、スライド部材を吊り具本体に対して安定してスライドさせて、穴に対してスライド部材を円滑かつ安定して挿入および引き抜きすることができる。
【0074】
請求項5に記載の発明によれば、スライド部材を吊り具本体に対して安定してスライドさせて、穴に対してスライド部材を円滑かつ安定して挿入および引き抜きすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の吊り具の一実施形態を示す正面図である。
【図2】図1に示す吊り具の平面図である。
【図3】図1に示す吊り具の側面図である。
【図4】図3に示す吊り具の側面図であって、スライド部材が装着されていない状態を示す。
【図5】図1に示す吊り具の使用状態(突起部で穴の周囲の塗料を削る状態)を示す説明図である。
【図6】図1に示す吊り具の使用状態(挿入部を穴に挿入した状態)を示す説明図である。
【図7】図1に示す吊り具の使用状態(挿入部およびスライド部材を穴に挿入した状態)を示す説明図である。
【図8】図1に示す吊り具の使用状態(ストッパボルトを鋼板材の表面に固定した状態)を示す説明図である。
【図9】図1に示す吊り具の使用状態(鋼板材の吊り上げ状態)を示す説明図である。
【図10】図1に示す吊り具の使用状態(スライド部材を穴から引き抜いた状態)を示す説明図である。
【図11】図1に示す吊り具の使用状態(吊り具を鋼板材から取り外した状態)を示す説明図である。
【符号の説明】
1 吊り具
2 穴
3 鋼板材
4 吊り具本体
5 スライド部材
6 吊り部
7 挿入部
12 本体側摺動面
14 嵌合凸面
15 ガイド面
29 先端部
30 中間部
32 後部
33 先端縁部
34 先細部
37 突起
43 部材側摺動面
44 嵌合凹面
45 ガイド面
【発明の属する技術分野】
本発明は、吊り具、詳しくは、建築横梁、山留主材、切梁、腹起し、セグメントなどを吊り下げるための吊り具および被刷部材の吊り上げ方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
建築横梁、山留主材、切梁、腹起し、セグメントなどを吊り下げるための吊り具として、たとえば、吊り具を、吊り具本体と、吊り具本体に対して移動可能なスライド部材とにより構成し、吊り具本体の挿入部の先端部を、その中間部よりも太く形成し、挿入部を鋼板材の穴に挿入し、次いで、スライド部材を鋼板材の穴に挿入し、これにより、挿入部の太い先端部が鋼板材の穴から抜けないロック状態を形成させて、重量のある鋼板材の吊り作業を可能とし、また、取り外しは、スライド部材を、鋼板材の穴から引き抜いた後、挿入部を引き抜くことにより、挿入方向に対する裏側での作業を不要することができる、鋼板材吊り具が提案されている(たとえば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−240367号公報
【発明が解決しようとする課題】
しかるに、たとえば、山留主材などの鋼材は、前回使用した後、再度使用する前には、メンテナンスとして、防錆のために塗装するようにしている。しかし、このような塗装をすると、吊り具を挿入するための穴の周囲も塗装されるので、上記したような、穴寸法に合わせて用いる必要のある吊り具では、塗料の厚みに起因して穴が小径となるので、挿入部を円滑に穴に挿入することができず、その都度、穴の周囲の塗料を削るか、あるいは、強引にたたき込むなどの作業が必要となって、作業効率の著しい低下を生じている。
【0004】
また、スライド部材を、穴に対して円滑に挿入するには、スライド部材を、吊り具本体に対して安定してスライドさせる必要がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、その目的とするところは、挿入部およびスライド部材を、穴に対して円滑かつ安定して挿入することのできる、吊り具および被刷部材の吊り上げ方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、吊り具本体と、この吊り具本体に対して移動可能なスライド部材とを備え、前記吊り具本体は、吊り上げ装置により吊り上げるための吊り部と、前記吊り部から突出形成され、被吊り部材の穴に挿入するための挿入部とを有し、前記挿入部は、長手方向に延び、その先端部が、中間部よりも太く形成されており、前記スライド部材は、前記吊り具本体に、前記挿入部の長手方向に対してスライド可能に支持されており、前記挿入部を前記被吊り部材の穴に挿入するとともに、前記スライド部材を、前記挿入部に対して挿入方向にスライドさせて、前記被吊り部材の穴に挿入することにより、この挿入部とスライド部材とで、前記挿入部の先端部が前記被吊り部材の穴から抜けないロック状態として、吊り作業を可能とし、前記スライド部材を、前記挿入部に対して引き抜き方向にスライドさせることにより、前記被吊り部材の穴から前記スライド部材を引き抜いてロック解除状態とした後、前記挿入部を前記鋼板材の穴から引き抜くことにより、取り外すことができるように構成されており、前記挿入部の先端部には、前記挿入部を前記被吊り部材の穴に挿入したときに、前記穴の周囲の塗料を、前記挿入部を軸心として前記穴の円周方向に回転させるようにして、削るための突起が設けられており、前記先端部は、前記中間部に連続する後部と、前記後部から先端縁部に向かって次第に細くなる先細部とを備え、前記突起が、少なくとも前記先細部に設けられていることを特徴としている。
【0007】
このような構成によると、挿入部を被吊り部材の穴に挿入するとともに、スライド部材を被吊り部材の穴に挿入することにより、この挿入部とスライド部材とで、挿入部の先端部が被吊り部材の穴から抜けないロック状態とされる。つまり、挿入部の先端部は、その中間部よりも太く形成されているので、被吊り部材の穴にスライド部材が挿入されることにより、この挿入部の先端部が、その穴から抜けないようにされた状態においては、吊り具が、被吊り部材の穴から抜けることなく、確実に固定される。
【0008】
一方、スライド部材を、被吊り部材の穴から引き抜いてロック解除状態とした後には、被吊り部材の穴には、そのスライド部材が引き抜かれた分の隙間があるので、たとえ、挿入部の先端部が太く形成されていても、その挿入部を被吊り部材の穴から引き抜くことができ、吊り具を、被吊り部材の穴から容易に取り外すことができる。
【0009】
そして、この吊り具では、挿入部を被吊り部材の穴に挿入するときに、その穴の周囲がメンテナンス時に塗装され、挿入部よりその穴が小径となっていても、穴の周囲の塗料を突起によって削りつつ、挿入部を穴に挿入することができる。そのため、挿入部を穴に対して円滑に挿入することができる。より具体的には、まず、先細部が穴に挿入され、次いで、突起により穴の周囲の塗料が削られながら後部が挿入される。そのため、挿入部の穴に対する円滑な挿入を確保でき、作業効率の向上を図ることができる。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記突起は、前記先端部の先端縁部から前記中間部に向かう方向の途中に設けられていることを特徴としている。
【0011】
このような構成によると、突起が、先端部の先端縁部から中間部に向かう方向の途中に設けられているので、先に先端部の先端縁部を穴に挿入した後に、突起によって、その穴の周囲の塗料を削ることができる。そのため、より一層、挿入部の穴に対する円滑な挿入を確保することができる。
【0014】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記突起は、前記先端部の周面において、互いに対向する位置に複数設けられていることを特徴としている。
【0015】
このような構成によると、突起が先端部の周面において互いに対向する位置に複数設けられているので、効率よく穴の周囲の塗料を削ることができる。
【0016】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の発明において、前記吊り具本体は、前記スライド部材がスライド可能に摺動する本体側摺動面を有し、前記本体側摺動面は、前記スライド部材のスライド方向に沿って形成され、湾曲状に膨出する嵌合凸面と、前記嵌合凸面の両側に設けられる略平坦状のガイド面とを備えており、前記スライド部材は、前記吊り具本体にスライド可能に摺動する部材側摺動面を有し、前記部材側摺動面は、前記スライド部材のスライド方向に沿って形成され、湾曲状に窪む嵌合凹面と、前記嵌合凹面の両側に設けられる略平坦状のガイド面とを備えていることを特徴としている。
【0017】
このような構成によると、本体側摺動面の嵌合凸面に、部材側摺動面の嵌合凹面が嵌合し、本体側摺動面のガイド面と、部材側摺動面のガイド面とが対向する状態で、吊り具本体に対してスライド部材をスライドさせることができる。そのため、スライド部材を吊り具本体に対して安定してスライドさせて、穴に対してスライド部材を円滑かつ安定して挿入および引き抜きすることができる。
【0018】
また、請求項5に記載の発明は、吊り具本体と、この吊り具本体に対して移動可能なスライド部材とを備え、前記吊り具本体は、吊り上げ装置により吊り上げるための吊り部と、前記吊り部から突出形成され、被吊り部材の穴に挿入するための挿入部とを有し、前記挿入部は、長手方向に延び、その先端部が、中間部よりも太く形成されており、前記スライド部材は、前記吊り具本体に、前記挿入部の長手方向に対してスライド可能に支持されており、前記挿入部を前記被吊り部材の穴に挿入するとともに、前記スライド部材を、前記挿入部に対して挿入方向にスライドさせて、前記被吊り部材の穴に挿入することにより、この挿入部とスライド部材とで、前記挿入部の先端部が前記被吊り部材の穴から抜けないロック状態として、吊り作業を可能とし、前記スライド部材を、前記挿入部に対して引き抜き方向にスライドさせることにより、前記被吊り部材の穴から前記スライド部材を引き抜いてロック解除状態とした後、前記挿入部を前記鋼板材の穴から引き抜くことにより、取り外すことができるように構成されており、前記挿入部の先端部には、前記挿入部を前記被吊り部材の穴に挿入したときに、前記穴の周囲の塗料を削るための突起が設けられている吊り具を用いて、被吊り部材を吊り上げる方法であって、前記吊り具の前記挿入部を前記被吊り部材の穴に挿入するときに、その穴の周囲の塗料を、前記突起を前記挿入部を軸心として前記穴の円周方向に回転させるようにして削りつつ、前記挿入部を前記穴に挿入することを特徴としている。
【0019】
このような方法によると、挿入部を被吊り部材の穴に挿入するとともに、スライド部材を被吊り部材の穴に挿入することにより、この挿入部とスライド部材とで、挿入部の先端部が被吊り部材の穴から抜けないロック状態とされる。つまり、挿入部の先端部は、その中間部よりも太く形成されているので、被吊り部材の穴にスライド部材が挿入されることにより、この挿入部の先端部が、その穴から抜けないようにされた状態においては、吊り具が、被吊り部材の穴から抜けることなく、確実に固定される。
【0020】
一方、スライド部材を、被吊り部材の穴から引き抜いてロック解除状態とした後には、被吊り部材の穴には、そのスライド部材が引き抜かれた分の隙間があるので、たとえ、挿入部の先端部が太く形成されていても、その挿入部を被吊り部材の穴から引き抜くことができ、吊り具を、被吊り部材の穴から容易に取り外すことができる。
【0021】
そして、この方法では、挿入部を被吊り部材の穴に挿入するときに、その穴の周囲がメンテナンス時に塗装され、挿入部よりその穴が小径となっていても、穴の周囲の塗料を突起によって削りつつ、挿入部を穴に挿入することができる。そのため、挿入部を穴に対して円滑に挿入することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の吊り具の一実施形態を示す正面図、図2は、その平面図、図3は、その側面図である。
【0023】
図1において、この吊り具1は、建築横梁、山留主材、切梁、腹起し、セグメントなど、吊り上げるための穴2を有する被吊り部材としての鋼板材3(たとえば、図9参照)を吊り上げるために用いられる。
【0024】
この吊り具1は、吊り具本体4と、この吊り具本体4に対して、図1の紙面上下方向(以下、上下方向とする。)にスライド可能なスライド部材5とを備えている。
【0025】
吊り具本体4は、チェーンブロックやクレーンなどの吊り上げ装置に連結するための吊り部6と、吊り部6から下方に向かって突出形成され、鋼板材3の穴2に挿入するための挿入部7とを一体的に備えている。
【0026】
吊り部6は、正面視略矩形状の厚板からなり、その略中央部に、吊り穴8が形成され、その側方一端部に、スライド部材5をスライド可能に支持するためのスライド支持部9が形成され、その側方他端部に、ストッパ支持部10が形成されている。
【0027】
吊り穴8は、吊り上げ装置からのシャックル、カップリングまたはワイヤーなどの引掛具11(図8参照)を挿通するために、吊り部6の厚さ方向を貫通する略円形状に形成されている。
【0028】
スライド支持部9は、図2および図4に示すように、吊り部6の側方一端部において、その上端部が吊り部6よりも上方に突出するように形成されており、スライド部材5がスライド可能に摺動する本体側摺動面12と、スライド部材5をスライド可能に保持する保持部13とを備えている。
【0029】
本体側摺動面12は、スライド部材5のスライド方向(上下方向)に沿って形成され、吊り部6の厚さ方向中央において湾曲状に膨出する嵌合凸面14と、嵌合凸面14の両側に設けられる平坦状の1対のガイド面15とを備えている。
【0030】
また、保持部13は、嵌合凸面14における上下方向途中において、側方に向かって略矩形状に膨出するように設けられている。この保持部13は、吊り部6の厚み方向において、後述するスライド部材5の案内長溝16の内寸幅と略同幅に形成されており、固定ねじ17を螺着させるための螺着孔18が形成されている。
【0031】
ストッパ支持部10は、図1に示すように、吊り部6の側方他端部において、上下方向に長く形成される略矩形状の上側支持部22と、その上側支持部22の下方において、上側支持部22と所定間隔を隔てて上下方向に短く形成される略矩形状の下側支持部23とを備えている。
【0032】
上側支持部22は、吊り穴8の側方に設けられ、ストッパボルト19のねじ軸部20の先端部が挿通される上側挿通孔24が、上下方向に沿って貫通状に形成されている。
【0033】
また、下側支持部23は、吊り部6の下端面28から上方に窪むように設けられ、ストッパボルト19のねじ軸部20の途中部が挿通される下側挿通孔25が、上下方向に沿って貫通状に形成されている。
【0034】
また、このストッパ支持部10には、ストッパボルト19が支持されている。ストッパボルト19は、六角状の頭部21と、ねじ山が形成されるねじ軸部20とが一体的に形成されるボルト部26と、ボルト部26とは別体で形成され、ねじ軸部20が螺着される六角状のナット部27とを備えている。
【0035】
そして、ナット部27が、上側支持部22と下側支持部23との間に介装された状態で、下側支持部23の下側挿通孔25に、ストッパボルト19のねじ軸部20を挿通して、その先端部からナット部27に螺着させ、さらに、上側支持部22の上側挿通孔24に、その先端部を挿通させるような状態で、ストッパボルト19が、ストッパ支持部10に支持されている。なお、ナット部27は、上側支持部22と下側支持部23との間に介装された状態では、上側支持部22と下側支持部23との間における吊り部6の側面に当接して、水平方向の回転が規制される。そのため、頭部21を回転させるのみで、ボルト部26をナット部27に対して螺進または螺退させることができ、これによって、頭部21の吊り部6からの突出位置(上下方向位置)の調整が可能とされている。また、頭部21が下側支持部23の下端面50と当接する位置まで螺進された状態では、頭部21の下面が、吊り部6の下端面28よりも上方に位置するように、設定されている。
【0036】
挿入部7は、吊り部6の側方一端部の下端面28から、下方に向かって上下方向(長手方向)に延び、その先端部29が、基端から先端部29に至るまでの中間部30よりも太く形成されている。
【0037】
中間部30は、断面略楕円形状をなし、本体側摺動面12と連続する外側外周面38が、本体側摺動面12の嵌合凸面14と面一となるように連続状に形成されており、また、外側外周面38の反対側の内側外周面39が、スライド部材5の外周面31とともに断面略円形状を形成し得るような、略円弧状に形成されている。
【0038】
また、先端部29は、中間部30に連続する後部32と、後部32から先端縁部33に向かって次第に細くなる先細部34とが一体的に形成されている。
【0039】
後部32は、略円柱状に形成されており、その外側外周面35が、中間部30の外側外周面38と面一となるように連続状に形成され、また、その内側外周面36が、中間部30の内側外周面39よりも、内側方向に膨出するように(すなわち、中間部30と先端部29とで鉤状となるように)形成されている。
【0040】
先細部34は、その先端縁部33が丸みのある、略円錐台形状をなし、後部32から先端縁部33に向かって次第に小径となるように形成されている。
【0041】
そして、この吊り具1では、先端部29に、挿入部7を鋼板材3の穴2に挿入したときに、その穴2の周囲の塗料P(図5参照)を削るための突起37が設けられている。この突起37は、先端部29の先端縁部33から中間部30に向かう方向の途中であって、より具体的には、先細部34の上端部に設けられている。この突起37は、図1および図3に示すように、先端部29の外周面において、円周方向に、互いに略180°離れた対向位置(正面位置および背面位置)に1対(2つ)として設けられている。各突起37は、図1に示すように、正面視において、上下方向に延びる細長楕円形状に形成されており、その上端部が、後部32の外周面(外側外周面35と内側外周面36との境界部分)と面一となるように連続状に形成され、その下端部が、先細部34の外周面から外側に膨出するように、先細部34における先端縁部33よりも上方に形成されている。言い換えると、各突起37は、図3に示すように、側面視において、後部32と面一となるように、上下方向において平坦状に形成されており、その上端部が後部32に連続し、その下端部が先細部34との間に段差が形成されるような、下方に向かって膨出する割合が大きくなる略三角形状に形成されている。
【0042】
スライド部材5は、図1ないし図3に示すように、上下方向に沿って延びる側面視略細長矩形状の平板状をなし、その上端部には、抵抗付与部40が形成されるとともに、幅方向中央(吊り部6の厚さ方向)において、上下方向に沿う側面視略矩形状の案内長溝16が形成されている。
【0043】
また、抵抗付与部40は、案内長溝16の上方において側方に向かって膨出する側面視略矩形状に形成されており、スライド支持部9の嵌合凸面14に、弾性的に当接する抵抗付与ねじ42が設けられている。この抵抗付与ねじ42は、その先端部52が嵌合凸面14に向かう方向において、突出または退避可能に構成されており、嵌合凸面14に対して弾性的に当接される。
【0044】
また、このスライド部材5は、図2に示すように、スライド支持部9の本体側摺動面12と摺動する裏面が、部材側摺動面43とされ、この部材側摺動面43は、スライド部材5の長手方向(上下方向)に沿って形成され、幅方向中央において湾曲状に窪む嵌合凹面44と、嵌合凹面44の両側に設けられる平坦状の1対(2つ)のガイド面45とを備えている。また、部材側摺動面43と反対側の表面、つまり、外周面31が、上記したように、中間部30の内側外周面39とともに断面略円形を形成し得る円弧状として形成されている。
【0045】
また、このスライド部材5は、図3に示すように、その下端部から上端部に向かって、長手方向(上下方向)に沿って、その厚みが、順次、厚くなるように形成されている。より具体的には、スライド部材5の外周面31の下端部には、複数の段部が形成されており、その先端から後端に向かって、それぞれ厚みが厚くなる、第1外周面46、第2外周面47、第3外周面48が形成されている。これによって、後述する吊り作業において、挿入部7の中間部30とスライド部材5とが重ね合わされたとき、たとえば、中間部30と第1外周面46とが重ね合わされた場合、中間部30と第2外周面47とが重ね合わされた場合、中間部30と第3外周面48とが重ね合わされた場合のそれぞれについて、順次、その径が太くなる。
【0046】
そして、このスライド部材5は、スライド支持部9の保持部13に、案内長溝16を嵌め込んで、本体側摺動面12の嵌合凸面14に、部材側摺動面43の嵌合凹面44を嵌合させて、本体側摺動面12のガイド面15と、部材側摺動面43のガイド面45とを対向させた状態で、保持部13の螺着孔18に対向するように、案内長溝16の幅よりも大径のワッシャ49をスライド部材5の外周面31に被覆して、そのワッシャ49を介して、螺着孔18に固定ねじ17を螺着させることにより、スライド支持部9に取り付けられる。
【0047】
このように取り付けられた状態で、スライド部材5は、図2および図3に示すように、本体側摺動面12の嵌合凸面14に部材側摺動面43の嵌合凹面44が嵌合されるとともに、本体側摺動面12のガイド面15に部材側摺動面43のガイド面45がガイドされ、また、保持部13に案内長溝16の幅方向内周面がガイドされる状態で、本体側摺動面12、中間部30の外側外周面38および後部32の外側外周面35と、部材側摺動面43とが摺動しつつ、上下方向にスライド移動可能とされる。
【0048】
次に、この吊り具1を用いて、鋼板材3を吊り上げる作業について説明する。
【0049】
まず、吊り具1を使用する前には、図5および図6に示すように、スライド部材5を吊り具本体4に対して上方に引き上げた状態で、抵抗付与ねじ42の先端部52を吊り部6のストッパ支持部10の上端面に当接させておくことにより、挿入部7とストパ部材5とが重なり合わないようにする。
【0050】
次いで、図5に示すように、この吊り具1の挿入部7を、鋼板材3の穴2に挿入する。このとき、鋼板材3が山留主材などの場合には、前回使用した後、再度使用する前にメンテナンスとして防錆のために塗装されている場合がある。しかし、そのような塗装がされていると、穴2の周囲も塗装されるので、塗料Pの厚みに起因して穴2が小径となるので、挿入部7を円滑に穴2に挿入することができない場合がある。
【0051】
しかし、この吊り具1では、挿入部7を鋼板材3の穴2に挿入するときには、塗料Pによりたとえ穴2が塞がれていても、穴2の周囲の塗料Pを突起37によって削りつつ、挿入部7を穴2に円滑に挿入することができる。
【0052】
より具体的には、まず、穴2に挿入部7の先細部34を挿入した後、突起部37を塗料Pに当接させた状態で、図5の矢印で示すように、挿入部7を軸心として、穴2の円周方向に回転させれば、塗料Pが突起部37によって削られるので、挿入部7を回転させながら押し下げていけば、塗料Pが突起部37により上側から下側に向かって掻き取られながら除去される。そうすると、突起部37に続く先端部29の後部32が穴2に円滑に挿入されるので、結果として、図6に示すように、挿入部7の先端部29を、円滑に穴2に挿通させることができる。
【0053】
次いで、図7に示すように、抵抗付与ねじ42の先端部52を、抵抗付与部40内に押し込むようにして、ストッパ部材5をスライド支持部9に対して押し下げ、保持部13に案内長溝16が案内されるような状態で、本体側摺動面12と部材側摺動面43とを摺動させながら、スライド部材5をスライド支持部9に対して挿入方向にスライドさせることによって、ストッパ部材5を鋼板材3の穴2に挿入する。そうすると、挿入部7とスライド部材5とで、挿入部7の先端部29が鋼板材3の穴2から抜けないロック状態が形成される。つまり、挿入部7の先端部29は、その中間部30よりも太く形成されているので、鋼板材3の穴2にスライド部材5が挿入されることにより、穴2が、その分、塞がり、挿入部7の先端部29の内側上面51が、穴2の裏側の外周面に引っ掛かる状態となる。その結果、吊り具1が、鋼板材3の穴2から抜けないようになり、吊り具1が鋼板材3に確実に固定される。
【0054】
また、この固定においては、そのときに固定する鋼板材3の穴2の径に対応させるべく、このスライド部材5を、穴2が塞がるまで挿入すればよい。すなわち、スライド部材5には、第1外周面46、第2外周面47、第3外周面48が形成されており、スライド部材5をいずれの位置まで挿入するかによって、中間部30とスライド部材5とが重ね合わされたときの径の太さを変化させることができる。そのため、スライド部材5を穴2が塞がるまで挿入すれば、そのまま、鋼板材3の穴2の径に対応した太さで挿入することができる。これによって、穴2に対して挿入部7をがたつかせることなく、良好に固定することができる。なお、図7においては、スライド部材5は、穴2に対して第3外周面48まで挿入されている。
【0055】
また、挿入部7に、それぞれ厚みが厚くなる、第1外周面46、第2外周面47、第3外周面48を形成しておくことによって、穴2の径がそれぞれ異なる鋼板材3(この場合には3種類)に対応させることができ、吊り具1の広汎な使用を確保することができる。
【0056】
そして、スライド部材5を穴2が塞がるまで挿入した後、必要により、たとえば、図8に示すように、ストッパボルト19を螺退させて、その頭部21を鋼板材3の表面に当接させる。
【0057】
すなわち、吊り具1鋼板材3に固定するときには、鋼板材3における穴2の上下の外周面を、吊り部6の下端面28と挿入部7の先端部29の内側上面51との間で挟むようにしているが、吊り部6の下端面28と先端部29の内側上面51との間が、鋼板材3に対して広い場合には、固定後に、がたつきを生じる場合がある。
【0058】
そのため、このストッパボルト19を、ストッパ支持部10に対して螺退および螺進させることにより鋼板材3の厚みに合わせて調節し、その鋼板材3における穴2の上側の外周面に当接させておくことにより、その鋼板材3における穴2の上下の外周面を、ストッパボルト19の頭部21と先端部29の内側上面51との間で挟むようにして固定することにより、種々の厚みの鋼板材3に対しても、安定して固定することができる。そのため、鋼板材3に対してがたつきなく固定することができるので、たとえば、吊り上げ作業中において、横引きになったとしても、安定した作業を確保することができる。
【0059】
そして、このようにして固定した後には、吊り穴8に、吊り上げ装置からのシャックル、カップリングまたはワイヤーなどの引掛具11を挿通した後、図9に示すように吊り上げて、鋼板材3を異なる場所に移送する。なお、図9では、鋼板材3は、山留主材として例示されており、鋼板材3に穿孔される任意の穴2に、長手方向両端部において対角となるように吊り具1を固定して、吊り上げる状態が示されている。
【0060】
鋼板材3の吊り上げ作業が終了した後は、必要により、ストッパボルト19を螺進させた後、図10に示すように、スライド部材5をスライド支持部9に対して引き抜き方向にスライドさせることにより、鋼板材3の穴2から引き抜いてロック解除状態とする。そうすると、鋼板材3の穴2には、そのスライド部材5が引き抜かれた分の隙間ができるので、次いで、図11に示すように、挿入部7を、その先端部29とともに、鋼板材3の穴2から引き抜くことにより、吊り具1を、鋼板材3の穴2から容易に取り外すことができる。
【0061】
このような吊り具1では、挿入部7を鋼板材3の穴2に挿入するとともに、その挿入方向にスライド部材5をスライドさせることにより固定することができ、また、引き抜き方向にスライド部材5をスライドさせた後、挿入部7を鋼板材3の穴2から引き抜くことにより取り外すことができる。つまり、鋼板材3の穴2の裏側から作業することなく、固定および取り外しすることができるので、迅速に、正確かつ確実な作業を確保することができる。また、固定している状態では、吊り具本体4と一体的に形成される挿入部7の太い先端部29が、鋼板材3の穴2から抜けないようにされていることから、耐力が強く、重量のある鋼板材3であっても、良好に吊り上げることができる。
【0062】
そして、この吊り具1では、挿入部7を鋼板材3の穴2に挿入するときに、その穴2の周囲がメンテナンス時に塗装され、挿入部7よりその穴2が小径となっていても、穴2の周囲の塗料Pを突起37によって削りつつ、挿入部7を穴2に挿入することができる。そのため、挿入部7を穴2に対して円滑に挿入することができる。
【0063】
また、突起37は、先端部29の先端縁部33から中間部30に向かう方向の途中であって、より具体的には、先細部34の上端部に設けられている。そのため、先に先端部29の先端縁部33を穴2に挿入した後に、突起37によって、その穴2の周囲の塗料Pを削ることができる。そのため、より一層、挿入部7の穴2に対する円滑な挿入を確保することができる。
【0064】
とりわけ、この挿入部7では、まず、先細部34が穴2に挿入され、次いで、突起37により穴2の周囲の塗料Pが削られながら後部32が挿入されるので、挿入部7の穴2に対する円滑な挿入を確保でき、作業効率の向上を図ることができる。
【0065】
また、突起37は、先端部29の外周面において、円周方向に、互いに略180°離れた対向位置に1対として設けられているので、効率よく穴2の周囲の塗料Pを削ることができる。
【0066】
また、この吊り具1では、本体側摺動面12の嵌合凸面14に、部材側摺動面43の嵌合凹面44が嵌合し、本体側摺動面12のガイド面15と、部材側摺動面43のガイド面45とが対向する状態で、吊り具本体4に対してスライド部材5をスライドさせるので、スライド部材5を吊り具本体4に対して安定してスライドさせて、穴2に対してスライド部材5を円滑かつ安定して挿入および引き抜きすることができる。
【0067】
なお、この吊り具1では、スライド部材5に、第1外周面46、第2外周面47、第3外周面48を形成して、3種類の穴2に対応できるようにしているが、厚みの異なる外周面をそれ以上多くして、3種類以上の穴2に対応できるように構成してもよく、また、厚みの異なる外周面をそれ以下として、3種類未満の穴2に対応できるように構成してもよい。また、厚みの異なる外周面を多段で形成するのではなく、その先端部から後端部に向けて、長手方向に沿って、順次厚くなるようなテーパ状に形成してもよい。
【0068】
また、以上に述べた鋼板材3としては、より具体的には、建築横梁、山留主材、切梁、腹起し、セグメントなどが例示される。
【0069】
【発明の効果】
以上述べたように、請求項1に記載の発明によれば、挿入部を穴に対して円滑に挿入することができる。また、スライド部材を吊り具本体に対して安定してスライドさせて、穴に対してスライド部材を円滑かつ安定して挿入および引き抜きすることができる。
【0070】
請求項2に記載の発明によれば、より一層、挿入部の穴に対する円滑な挿入を確保することができる。
【0072】
請求項3に記載の発明によれば、効率よく穴の周囲の塗料を削ることができる。
【0073】
請求項4に記載の発明によれば、スライド部材を吊り具本体に対して安定してスライドさせて、穴に対してスライド部材を円滑かつ安定して挿入および引き抜きすることができる。
【0074】
請求項5に記載の発明によれば、スライド部材を吊り具本体に対して安定してスライドさせて、穴に対してスライド部材を円滑かつ安定して挿入および引き抜きすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の吊り具の一実施形態を示す正面図である。
【図2】図1に示す吊り具の平面図である。
【図3】図1に示す吊り具の側面図である。
【図4】図3に示す吊り具の側面図であって、スライド部材が装着されていない状態を示す。
【図5】図1に示す吊り具の使用状態(突起部で穴の周囲の塗料を削る状態)を示す説明図である。
【図6】図1に示す吊り具の使用状態(挿入部を穴に挿入した状態)を示す説明図である。
【図7】図1に示す吊り具の使用状態(挿入部およびスライド部材を穴に挿入した状態)を示す説明図である。
【図8】図1に示す吊り具の使用状態(ストッパボルトを鋼板材の表面に固定した状態)を示す説明図である。
【図9】図1に示す吊り具の使用状態(鋼板材の吊り上げ状態)を示す説明図である。
【図10】図1に示す吊り具の使用状態(スライド部材を穴から引き抜いた状態)を示す説明図である。
【図11】図1に示す吊り具の使用状態(吊り具を鋼板材から取り外した状態)を示す説明図である。
【符号の説明】
1 吊り具
2 穴
3 鋼板材
4 吊り具本体
5 スライド部材
6 吊り部
7 挿入部
12 本体側摺動面
14 嵌合凸面
15 ガイド面
29 先端部
30 中間部
32 後部
33 先端縁部
34 先細部
37 突起
43 部材側摺動面
44 嵌合凹面
45 ガイド面
Claims (5)
- 吊り具本体と、この吊り具本体に対して移動可能なスライド部材とを備え、
前記吊り具本体は、吊り上げ装置により吊り上げるための吊り部と、前記吊り部から突出形成され、被吊り部材の穴に挿入するための挿入部とを有し、前記挿入部は、長手方向に延び、その先端部が、中間部よりも太く形成されており、
前記スライド部材は、前記吊り具本体に、前記挿入部の長手方向に対してスライド可能に支持されており、前記挿入部を前記被吊り部材の穴に挿入するとともに、前記スライド部材を、前記挿入部に対して挿入方向にスライドさせて、前記被吊り部材の穴に挿入することにより、この挿入部とスライド部材とで、前記挿入部の先端部が前記被吊り部材の穴から抜けないロック状態として、吊り作業を可能とし、前記スライド部材を、前記挿入部に対して引き抜き方向にスライドさせることにより、前記被吊り部材の穴から前記スライド部材を引き抜いてロック解除状態とした後、前記挿入部を前記鋼板材の穴から引き抜くことにより、取り外すことができるように構成されており、
前記挿入部の先端部には、前記挿入部を前記被吊り部材の穴に挿入したときに、前記穴の周囲の塗料を、前記挿入部を軸心として前記穴の円周方向に回転させるようにして、削るための突起が設けられており、
前記先端部は、前記中間部に連続する後部と、前記後部から先端縁部に向かって次第に細くなる先細部とを備え、
前記突起が、少なくとも前記先細部に設けられていることを特徴とする、吊り具。 - 前記突起は、前記先端部の先端縁部から前記中間部に向かう方向の途中に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の吊り具。
- 前記突起は、前記先端部の周面において、互いに対向する位置に複数設けられていることを特徴とする、請求項1または2に記載の吊り具。
- 前記吊り具本体は、前記スライド部材がスライド可能に摺動する本体側摺動面を有し、
前記本体側摺動面は、前記スライド部材のスライド方向に沿って形成され、湾曲状に膨出する嵌合凸面と、前記嵌合凸面の両側に設けられる略平坦状のガイド面とを備えており、
前記スライド部材は、前記吊り具本体にスライド可能に摺動する部材側摺動面を有し、
前記部材側摺動面は、前記スライド部材のスライド方向に沿って形成され、湾曲状に窪む嵌合凹面と、前記嵌合凹面の両側に設けられる略平坦状のガイド面とを備えていることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の吊り具。 - 吊り具本体と、この吊り具本体に対して移動可能なスライド部材とを備え、前記吊り具本体は、吊り上げ装置により吊り上げるための吊り部と、前記吊り部から突出形成され、被吊り部材の穴に挿入するための挿入部とを有し、前記挿入部は、長手方向に延び、その先端部が、中間部よりも太く形成されており、前記スライド部材は、前記吊り具本体に、前記挿入部の長手方向に対してスライド可能に支持されており、前記挿入部を前記被吊り部材の穴に挿入するとともに、前記スライド部材を、前記挿入部に対して挿入方向にスライドさせて、前記被吊り部材の穴に挿入することにより、この挿入部とスライド部材とで、前記挿入部の先端部が前記被吊り部材の穴から抜けないロック状態として、吊り作業を可能とし、前記スライド部材を、前記挿入部に対して引き抜き方向にスライドさせることにより、前記被吊り部材の穴から前記スライド部材を引き抜いてロック解除状態とした後、前記挿入部を前記鋼板材の穴から引き抜くことにより、取り外すことができるように構成されており、前記挿入部の先端部には、前記挿入部を前記被吊り部材の穴に挿入したときに、前記穴の周囲の塗料を削るための突起が設けられている吊り具を用いて、被吊り部材を吊り上げる方法であって、
前記吊り具の前記挿入部を前記被吊り部材の穴に挿入するときに、その穴の周囲の塗料を、前記突起を前記挿入部を軸心として前記穴の円周方向に回転させるようにして削りつつ、前記挿入部を前記穴に挿入することを特徴とする、被吊り部材の吊り上げ方法。
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