JP3781741B2 - デリック式荷役装置 - Google Patents

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Description

本発明は、デリック式荷役装置に関する。さらに詳しくは、貨物船その他種々の船舶、あるいは陸上に設置されたデリック式荷役装置であって、ブームの俯仰角度に関連して荷役作業範囲を制御する制御技術に関する。
貨物船のデリック式荷役装置は、甲板上に立設されたポストと、このポストの基部のグースネックボディーに旋回自在に取付けられたグースネックと、このグースネックに俯仰自在に取付けられたブームと、このブームの先端の滑車からワイヤロープで吊下げられたフックとから構成されている。また。ブームの先端には旋回・俯仰操作用のワイヤロープを連結し、これらのワイヤロープを旋回ウインチや俯仰ウインチに連結し、各ウインチを油圧モータで駆動することにより、ブームを旋回・俯仰させている。そして、フックも油圧モータ駆動のウインチで吊上げ吊下げするようになっている(特許文献1参照)。
前記デリック式荷役装置の構造を図3〜図5に基づき詳述する。図3(A)において、1はポストであり、その基部にグースネックボディー2が取付けられ、グースネック3はグースネックボディー2に旋回自在に取付けられている。また、ブーム4の基部はグースネック3に俯仰自在に支持されている。
図4〜図5に示すように、グースネックボディー2の支持孔2aには、グースネック3の旋回軸3aが挿入されており、この回り対偶でグースネック3は旋回自在となっている。グースネック3のフランジ部3b上にはアイピース3cが立設され、この両側にブーム4の基部に固定された2枚のヒールピース4aが位置しており、アイピース3cとヒールピース4a,4aに対し、水平なヒールピースピン3dが通されている。ブーム4はこのヒールピースピン3dで支持され、俯仰可能となっている。
図3に示すように、前記ブーム4の先端部には、旋回・俯仰用のロープ6,7が連結されており、それぞれの末端は旋回ウインチと俯仰ウインチに巻取られている。旋回ウインチは2本のロープのうち一方を繰出しながら他方を巻取る操作を行うもので、この旋回ウインチを正逆両方向に回転させると、ブーム4を右廻りあるいは左廻りに旋回させることができる。俯仰ウインチは2本のロープを共に繰出すか巻取るもので、ロープ6,7を共に繰出すとブーム4を俯伏させ、共に巻取るとブーム4を起立させることができる。
また、ブーム4の先端の滑車を介したロープ8によりフック5が吊下げられており、このロープ8の末端は吊上げウインチに巻取られている。この吊上げウインチを正逆回転させると、フックを上下することができる。
前記デリック式荷役装置において、ブーム4を35°以下に倒伏すると転倒モーメントが大きくなって使用上の制限が生じ、また70°以上に起立させると、旋回動作させたときブーム4を支持するアイピース3cとヒールピース4aに曲げが加わって、アイピース3cとヒールピース4aを破損してしまう。そこで、ブーム4の俯仰角度は35°〜70°が通常の使用可能範囲とされ、それ以外の俯仰角度、とくに70°以上では、使用禁止とされていた。この使用不能範囲を図4の(A),(B)に実線ハッチングで示す。
この使用不能範囲への進入防止は、デリック操作員が注意するだけでは効果が小さいので、ブーム4の俯仰角が70°に達したことを検知するセンサ10を取付け、センサ10がONすると警報器等を鳴動させるように構成していた。
しかし、それでも事故防止効果は完全でなく、しかも、図4(B)に示すような、使用不能範囲において、全てのクレーン動作を禁止してしまうので、荷役作業能率が低かった。例えば、ブーム4を旋回させないで、ロープ8を引込んで、荷物を引寄せる等の作業は、アイピース3cとヒールピース4aを損傷させるおそれはないのであるが、これも一律に禁止されていたのである。
特開昭53−109361号
本発明は上記事情に鑑み、デリック式荷役装置の損傷防止をより完全にすると共に、荷役作業の可能領域を広げることができるデリック式荷役装置を提供することを目的とする。
第1発明のデリック式荷役装置は、ポストのグースネックボディーに旋回自在に取付けられたグースネックと、該グースネックに俯仰自在に取付けられたブームと、該ブームから吊下げられたフックと、前記ブームを旋回させる油圧式旋回装置と、前記ブームを俯仰させる油圧式俯仰装置と、前記フックを上下させる油圧式吊上げ装置と、前記油圧式旋回装置と油圧源との間に介装された、前記油圧式旋回装置への作動油の給排を阻止し、前記油圧式俯仰装置と前記油圧式昇降装置への作動油の給排を許容する給排制御回路と、前記ブームの俯仰角が設定値以上になったことを検知して、前記給排制御回路を作動させる起動手段とを備えたことを特徴とする。
第2発明のデリック式荷役装置は、第1発明において、前記給排制御回路が、油圧源と前記油圧式旋回装置との間をつなぐ第1給排回路と、前記油圧源と前記油圧式俯仰装置との間をつなぐ第2給排回路と、前記油圧源と前記油圧式吊上げ装置との間をつなぐ第3給排回路と、前記油圧源に対し前記第1給排回路、前記第2給排回路、前記第3給排回路の全てに連通させる位置と、前記第1給排回路への給排を阻止し、前記第2給排回路と前記第3給排回路への給排を許容する位置との間で選択的に切換える切換弁とからなることを特徴とする。
第3発明のデリック式荷役装置は、第2発明において、前記起動手段が、前記ブームの俯仰角が75°以上80°以下を検知するセンサと、該スイッチの検知信号を受けて、前記切換弁の切換駆動を行うコントローラとからなることを特徴とする。
第1発明によれば、ブームの俯仰角が設定値以上になったとき、給排制御回路が起動して油圧式旋回装置の駆動を止める。これにより、ブームは旋回しないので損傷が防止される。そして、油圧式俯仰装置と油圧式吊上げ装置は動作可能であるので、ブームの俯仰とフックの吊上げあるいはそれらを組合わせた荷役を続行することができるので、荷役効率を高めることができる。
第2発明によれば、切換弁によって第1給排回路への連通を択一的に選択するので、油圧式の旋回、俯仰、吊上げ各装置を確実に動作停止させたり動作継続させることができる。
第3発明によれば、ブームの支持構造が破損しやすい俯仰角75°〜80°の領域で給排制御回路が起動するので、損傷防止効果が確実であり、かつ一部荷役可能領域も拡大することができる。
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る給排制御装置の回路図である。
図1において、SWは旋回ウインチ、M1は旋回ウインチ用の油圧モータであり、これらにより、特許請求の範囲にいう油圧式旋回装置が構成されている。TWは俯仰ウインチ、M2は俯仰ウインチ用の油圧モータであり、これらにより特許請求の範囲にいう油圧式俯仰装置が構成されている。CWは吊上げウインチ、M3は吊上げウインチ用の油圧モータであり、これらにより特許請求の範囲にいう油圧式吊上げ装置が構成されている。
Pは油圧源であるポンプである。11はポンプPから旋回用油圧モータM1への供給油路、12は同油圧モータM1の排出油路であり、これらの油路11,12で第1給排回路を構成している。13は前記排出油路に接続された俯仰用油圧モータM2への供給油路、14は同油圧モータM2の排出油路であり、これらの油路13,14で第2給排回路を構成している。15は前記排出油路14に接続された吊上げ用油圧モータM3への供給油路、16は同油圧モータの排出油路であり、これらの油路15,16で第3給排回路を構成している。なお、この油路16は前記ポンプPの吸入口に接続されて、油路11〜16は全体として閉回路となっている。
前記油路11,12には旋回操作弁V1が介装され、前記油路13,14には俯仰操作弁V2が介装され、前記油路15,16には吊上げ操作弁V3が介装されている。各操作弁V1,V2,V3は、いずれも手動操作型で、4ポート3位置の方向制御弁である。レバーを押し引きして得られる各操作弁V1〜V3の押し位置あるいは引き位置では、各モータM1〜M3は正転し、あるいは逆転する。中立位置では各モータM1〜M3への作動油供給が断たれるので、各モータM1〜M3は停止状態を保つ。そして、中立位置の弁内油路は、入側から出側へ連通している。つまり、操作弁V1では油路11,12が連通し、操作弁V2では油路13,14が連通し、操作弁V3では油路15,16が連通する。このため、直列に接続された3台の油圧モータM1〜M3のうち、前段側の油圧モータが停止状態(つまり操作弁が中立状態)でも、後段側の油圧モータを駆動させることができる。
もちろん、前段側の操作弁が駆動位置である押し位置あるいは引き位置にあるときは、当然に排出油路12,14から供給油路13,15を通じて後段側の操作弁経由で油圧モータに作動油が供給されるので、後段側の油圧モータを駆動することができる。
20は給排制御回路を構成する切換弁である。この切換弁20は、4ポート2位置の方向制御弁であり、ポンプPと旋回操作弁V1との間における油路11,12、つまり第1給排回路に介装されている。この切換弁20は、スプリング付勢された通常位置aでは、油路11,12がそれぞれ連通している。したがって、各モータM1〜M3を正逆回転させることができる。切換弁20をソレノイド駆動して切換位置bに変えたときは、内部のバイパス路21によって、油路11と油路12が連通される。また、油圧モータM1側の油路11,12は遮断される。このため、旋回モータM1は駆動停止状態となり、俯仰モータM2と吊上げモータM3のみが駆動可能となる。
10はブーム4の俯仰角を検出する俯仰角センサである。この俯仰角センサ10がブーム4の俯仰角が70°〜85°の間にあるとき検知信号を出力し、これに基づいて図示しないコントローラから前記切換弁20のソレノイド22へ駆動信号を出すようになっている。ここにいう俯仰角センサ10とコントローラで、特許請求の範囲にいう起動手段を構成している。
つぎに、本実施形態のデリック式荷役装置の荷役作業を説明する。
ブーム4が、俯仰角度30°〜70°内にあるときは、図1に示すように、切換弁20がスプリング付勢の通常位置aにあるので、ポンプPが吐出した作動油が油圧モータM1,M2,M3の順に給排されていく。このため、操作弁V1,V2,V3を手動操作することにより、旋回ウインチSW、俯仰ウインチTW、吊上げウインチCWの全てを自在に駆動することができる。したがって、完全な荷役作業が可能である。
ブーム4が俯仰角度を大きくして、70°を超えると、センサ10が検知してコントローラよりソレノイド駆動信号を出力する。この結果、ソレノイド22によって切換弁20が切換位置bに代るので、ポンプPが吐出した油路11内の作動油は、切換弁20内のバイパス路21を経由して油路13に供給される。この油路13の作動油は、さらに油路14,15,16に流れるので、俯仰用モータM2と吊上げ用モータM3を駆動させることができる。しかし、切換弁20から旋回用モータM1側へは給油が遮断されるので、旋回用モータM1が動くことはない。
この結果、旋回ウインチSWは停止、俯仰ウインチTWと吊上げウインチCWは動作不能となるので、ブーム4の旋回は不能に拘束された状態で、ブーム4の俯仰動作とフック5の吊上げ吊下げのみが可能となる。
したがって、本実施形態のデリック式荷役装置においては、図2の(A),(B)に示す鎖線ハッチング領域、つまりブーム4の俯仰角度70°〜85°の範囲では、ブーム4は旋回しないので、アイピースやヒールピース等のブーム支持部材を破壊することはない。そして、ブーム4の俯仰動作とフック5の上げ下げは続行して動作させうるので、荷物の引き込み等の荷役が可能となる。つまり、図2の(B)にハッチングで示す一部可動範囲において、旋回以外の荷役動作が可能となり、荷役効率を向上させることができる。
つぎに、本発明の他の実施形態を説明する。
前記各実施形態では、油圧モータ駆動のウインチを用いたが、ウインチを用いる代わりに、油圧シリンダ等の種々のアクチュエータで、ブームの駆動やフックの上げ下げをさせるものにも、本発明を適用できる。特許請求の範囲にいう油圧式旋回装置、油圧式俯仰装置、油圧式吊上げ装置は、ウインチ以外のアクチュエータを用いたものを含む趣旨である。
前記実施形態では、一部荷役を行わせる範囲をブーム4の俯仰角70°〜85°に設定したが、この範囲はブーム4の支持構造に合わせて適宜変更してよいものである。
前記実施形態では、給排制御回路を切換弁20を用いた構成としたが、これ以外にも旋回動作を不能にし、俯仰動作と吊上げ動作を許容することができれば、どのような構成の給排制御回路を用いてもよい。
本発明は、貨物船などの舶用だけでなく、陸上その他で用いられるデリック式荷役装置に利用することができる。
本発明の一実施形態に係る給排制御装置の回路図である。 本発明の一実施形態に係るデリック式荷役装置の説明図である。 従来のデリック式荷役装置の説明図である。 従来のデリック式荷役装置におけるグースネック部の側面図である。 同グースネック部の正面図である。
符号の説明
1 ポスト
2 グースネックボディー
3 グースネック
4 ブーム
10 俯仰角センサ
20 切換弁
SW 旋回ウインチ
TW 俯仰ウインチ
CW 吊上げウインチ
M1 旋回ウインチ用の油圧モータ
M2 俯仰ウインチ用の油圧モータ
M3 吊上げウインチ用の油圧モータ
V1 旋回操作弁
V2 俯仰操作弁
V3 吊上げ操作弁

Claims (3)

  1. ポストのグースネックボディーに旋回自在に取付けられたグースネックと、
    該グースネックに俯仰自在に取付けられたブームと、
    該ブームから吊下げられたフックと、
    前記ブームを旋回させる油圧式旋回装置と、
    前記ブームを俯仰させる油圧式俯仰装置と、
    前記フックを上下させる油圧式吊上げ装置と、
    前記油圧式旋回装置と油圧源との間に介装された、前記油圧式旋回装置への作動油の給排を阻止し、前記油圧式俯仰装置と前記油圧式昇降装置への作動油の給排を許容する給排制御回路と、前記ブームの俯仰角が設定値以上になったことを検知して、前記給排制御回路を作動させる起動手段とを備えた
    ことを特徴とするデリック式荷役装置。
  2. 前記給排制御回路が、
    油圧源と前記油圧式旋回装置との間をつなぐ第1給排回路と、前記油圧源と前記油圧式俯仰装置との間をつなぐ第2給排回路と、前記油圧源と前記油圧式吊上げ装置との間をつなぐ第3給排回路と、
    前記油圧源に対し前記第1給排回路、前記第2給排回路、前記第3給排回路の全てに連通させる位置と、前記第1給排回路への給排を阻止し、前記第2給排回路と前記第3給排回路への給排を許容する位置との間で選択的に切換える切換弁とからなる
    ことを特徴とする請求項1記載のデリック式荷役装置。
  3. 前記起動手段が、前記ブームの俯仰角が75°以上80°以下を検知するセンサと、
    該スイッチの検知信号を受けて、前記切換弁の切換駆動を行うコントローラとからなる
    ことを特徴とする請求項2記載のデリック式荷役装置。
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