JP3781497B2 - 梁の架設方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、建築物を施工する際における梁の架設方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
周知のように、鉄骨造や鉄筋コンクリート造あるいは鉄骨鉄筋コンクリート造の建築物の最も基本的な架構形式は、柱間に大梁を架設し、大梁間に小梁を架設し、それら大梁および小梁上に床スラブを設けるというものであるが、建築物の規模や形態に応じて種々の特殊な架構形式が採用される。
【0003】
たとえば、大スパンを必要とする大規模建築物における架構形式の一つに、大梁間に多数の小梁をほぼ隙間なく密に並べた状態で架設することにより、それら多数の小梁を実質的に床を兼ねるものとする形式のものが検討されている。その場合、多数の小梁を密に並べて架設するのみで同時に床がほぼ完成し、後はその上部に仕上程度のコンクリートを打設することのみで良いから、通常のように床スラブを形成するための手間つまり床配筋や床型枠の組立、その支保工、床コンクリートの打設等の作業を大幅に軽減できるものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記の場合における小梁は、大梁間に架設されるものであるから構造的には小梁に分類されるものではあるが、如何に小梁であるいえども大スパンが要求され、かつ実質的に床スラブの機能を併せ持つものであることが要求されるから、そのような小梁としては高剛性のプレキャストコンクリート梁を採用することが好適であるとされ、またそれにプレストレスを導入することも検討されている。このため、そのようなプレキャストコンクリート梁は必然的に大スパン大重量のものとならざるを得ず、しかもその所要本数は通常の場合に比して格段に多数となる。
【0005】
そして、そのような架構形式の建築物を通常の工法で施工しようとすれば、多数の大スパン大重量の小梁を1本ずつ揚重して大梁間に架設することになるが、そのようなことは揚重作業の手間やそれに要する費用の点で殆ど非現実的なものである。また、それら多数の小梁をそれぞれ架設するべき位置に揚重して導くためには、その揚重作業のための作業スペースをそれぞれの小梁の架設位置の周囲に確保する必要があるが、そのようなスペースを確保し得ない場合が多々ある。以上のことから、上記のような架構を実現するためには何等かの合理的な工法の開発が不可欠であるとされていた。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記事情に鑑み、本発明は、大梁を先行施工してそれら大梁の間に多数の小梁をほぼ密に並べた状態で架設するに際し、(a)架設するべき小梁の両端部に前記大梁上を移動可能な移動台車をそれぞれ装着する工程、(b)前記移動台車を装着した小梁を揚重して該小梁の両端部をそれぞれ前記移動台車を介して大梁の長さ方向に移動可能な状態で該大梁の一端側上面に支持せしめる工程、(c)前記(b)工程を繰り返して所望本数の小梁を大梁の一端側上面に支持せしめるとともに、それら小梁をほぼ密に並べた状態で連結して梁群となす工程、(d)前記梁群を一括して大梁の他端側へ移動させることにより各小梁をそれぞれ最終的に架設するべき位置の直上位置に導く工程、(e)前記梁群のうちのいずれかの小梁の両端部をその下方からジャッキにより支持するとともに、該小梁を梁群から切り離しかつ該小梁から前記移動台車を撤去する工程、(f)前記ジャッキを作動せしめて該ジャッキが支持する小梁を最終的に架設するべき位置まで降下させ、該小梁の両端部をそれぞれ前記大梁の側部に対して接合する工程、(g)前記(e)工程および前記(f)工程を前記梁群の全ての小梁に対して繰り返す工程を順次実施するようにしたものである。本発明は前記小梁が長尺大重量のプレキャストコンクリート梁である場合に特に好適である。また、前記一連の工程を大梁の両端側からその中心側に向けて実施することも可能である。
【0007】
なお、言うまでもないことではあるが、本発明において架設対象の梁を「小梁」と称しているのは、構造的には大梁間に架設されるものは小梁と称することが一般的であるからであって、小梁と称しているといえども断面寸法や長さ寸法の大小あるいは軽重について何等限定するものではない。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明方法の一実施形態を図面を参照して説明する。本実施形態の方法は、図1〜図3に示すように先行施工した左右の桁行方向の大梁1の間に多数の小梁2を密に並べた状態で架設する際に適用されるものである。符号3はスパン方向の大梁、4は柱であり、本例では1スパン当たり(つまり2本の大梁1,1と2本の大梁3,3とにより囲まれる範囲に)9本の小梁2を架設するものとし、その架設をスパンごとに順次行うようにしている。
【0009】
まず、図8を参照して本方法により架設する小梁2の形態について説明する。この小梁2はプレキャストコンクリート製かつプレストレスが導入される長尺大重量(たとえば全長19m程度、自重28ton程度)のもので、(a)に示すようにその両端が先行施工されている左右の大梁1の側部に形成されている段部1aにより支持されることでそれら大梁1,1間に架設され、そこに接合されるものである。この小梁2の横断面形状は、両端部を除く中間部においては(d)に示すように上下のフランジ部2a,2bとウエブ部2cを有する略I形断面をなし、両端部においては(b)に示すように梁成寸法の小さい単なる平板状とされ、それらの間においては両端から梁成寸法が漸次大きくなるとともに(c)に示すように下部にウエブ部2cが突出するものとされている。符号2dは内部に埋め込まれている鉄筋、2eは同じくPC鋼材である。符号5はこの小梁2上に後打ちされる床コンクリートである。
【0010】
上記の小梁2を架設するための作業手順を図1〜図7を参照して詳細に説明する。まず、小梁2を架設するべき対象の躯体すなわち柱4および大梁1,3を先行施工するとともに、この建築物の妻側には小梁2の架設対象範囲に隣接する位置に作業構台6となる床面を先行施工しておく。これらの躯体の構造形式や工法は適宜で良い。そして、図2に示すように左右の大梁1の上面には作業構台6から連続させてレール7を敷設しておく。また、小梁架設対象範囲の下方の床面上には後述するジャッキ装置11を走行レール12により桁行方向に走行可能に配置しておく。
【0011】
(a)移動台車取付工程
架設するべき小梁2の両端部に、大梁1上面に敷設した上記のレール7上を移動可能な移動台車8をそれぞれ装着する。移動台車8は図4、図5に示されるように、ローラ8aを備えた基台8bの上面に鋼材からなるブラケット8cおよび2本の縦材8dを固定し、ブラケット8cにより小梁2下面を支持するとともに縦材8dに小梁2の端面をボルト締結することにより、その小梁2に対して装着されるものである。なお、この工程は次の揚重工程に先立って現場にて行うことでも良いが、PC工場で小梁2を製作した際にそこで移動台車8を取り付けておき、その状態で現場に搬入することでも良い。
【0012】
(b)揚重工程
移動台車8を装着した小梁2を上記の作業構台6上に揚重してその両端部の移動台車8をレール7上に載せることにより、その小梁2の両端部を移動台車8を介してレール7に沿って移動可能に支持する。
【0013】
(c)連結工程
上記の(b)工程を繰り返して1スパン分の9本の小梁2を作業構台6上に揚重して密に並べ、その状態で各小梁2の移動台車8どうしを適宜連結して9本の小梁からなる梁群20となす。なお、本方法においては作業構台6から最遠方のスパンに対して最初に架設を行い、そこから順次手前側のスパンに対して小梁の架設を行うものとする。
【0014】
(d)牽引工程
図4に示すように、上記で連結した梁群20の前部に鋼棒9を連結し、牽引ジャッキ10を用いて梁群20を一括して牽引し、それを架設するべきスパンまで(上記のように最初は最遠方のスパンまで)移動させる。牽引ジャッキ10は大梁1から反力を取って牽引するが、牽引ジャッキ10にローラ10aを備えておいて牽引ストロークが大きい場合には牽引ジャッキ10を適宜前方に盛替えながら牽引を行えば良い。牽引ジャッキ10としては図示されているようなセンターホールジャッキが好適に使用可能である。
【0015】
(e)ジャッキダウン準備工程
上記の梁群20のうちのいずれかの小梁2の両端部の直下にジャッキ装置11を位置せしめ、その小梁2をジャッキ装置11により下方から支持する。そして、その小梁2を梁群20から切り離すとともに、その小梁2から移動台車8を撤去する。ジャッキ装置11は図6および図7に示すように駆動ローラ11aによりレール12に沿って自走する走行台車11bの上部に4台のジャッキ11cを備え、それらジャッキ11cの上端に固定された支持台11dにより小梁2の両端部を支持してそれを昇降させることができるものである。符号11eは小梁2の転倒を防止するためにその前後を支持する転倒防止ジャッキ、11fはジャッキ11cを作動させる際に走行台車11bを固定するアウトリガーである。
【0016】
(f)ジャッキダウン工程
小梁2を支持した左右のジャッキ装置11の各ジャッキ11cを同期させて作動させることにより、図6、図7に示すように小梁2を徐々に降下させ、小梁2の両端を大梁1の段部1aに係止する。これにより小梁2は最終的に架設するべき位置に配置されたから、そこで大梁1に対する接合作業を行う。
【0017】
(g)そして、梁群20の全ての小梁2に対して上記の(e)工程および(f)工程を繰り返し、それら全ての小梁2を架設するべきスパン内に架設する。
【0018】
上記のようにして作業構台6から最遠方のスパンに対して全ての小梁2を架設したら、引き続き、あるいは上記と同時並行作業により、手前側に隣接するスパンに対する小梁2の架設を同様にして行うべく上記各工程を繰り返し、以上を作業構台6に隣接するスパンまで繰り返すことで全てのスパンに対して小梁2を架設する。それら小梁2は全体として実質的に床を構成するものとなるから、その上部に床仕上コンクリート5を打設する。
【0019】
上記方法によれば、1スパン分9本の小梁2を連結して梁群20とし、それを一括して大梁1上を移動させて架設位置に導き、そこで各小梁2を順次ジャッキ装置11によりジャッキダウンして最終的に架設するべき位置に降下させるものであるから、多数の小梁2の架設作業を効率的にしかも安全、容易に行うことが可能であり、特に、長尺大重量の小梁2を1本ずつ直接的に架設位置まで揚重する場合に比して揚重作業に要する手間と費用を大幅に削減することができる。また、上記方法では建築物の一方の妻側からのみ小梁2を揚重し、そこから一方向にスライドさせることで架設位置に導くから、揚重のための作業スペースは作業構台6の周囲にのみ確保すれば良く、建築物全体の周囲に十分なスペースが確保することができない場合にも適用が可能となる。
【0020】
また、上記方法において用いる牽引ジャッキ10は梁群20を牽引させることができるものであれば良く、またジャッキ装置11は1本の小梁2を支持し得るものであれば良いから、いずれもさほどの大型機である必要はないし、何等特殊な機能を必要とするものではないから、建築工事において広く用いられている安価な汎用品を用いることで十分であり、さらに小梁2に装着して用いる移動台車8は鋼材により安価に製作できるのみならず転用が可能なものであるから、これらを用いるために必要となる設備費や運転費はわずかで済む。
【0021】
なお、既に述べたが、本発明方法における架設対象の小梁2の形態や規模は任意であって上記実施形態のものに何等限定されるものではなく、1スパンに架設する小梁2の本数も適宜である。本発明方法は上記実施形態のように長尺大重量の多数のプレキャストコンクリート梁を密に並べた状態に架設する架構を施工する際に適用することが現実的であり、最も効果的ではあるが、場合によってはプレキャストコンクリート梁のみならずたとえば鉄骨梁に適用することを妨げるものではない。また、上記実施形態のように各小梁2が隙間なく密に並べられる場合のみならず、それらの間に多少の間隔が確保されるような場合であっても、通常の架構に比較して多数の小梁が並べられて架設される限りにおいては同様に適用できかつ同様の効果が得られるから、そのような場合に適用することを妨げるものではない。しかし、大梁に対して小梁を1スパン当たり1〜2本しか架設されない通常の架構の場合、つまり多数の小梁が並べられて架設される状況ではない場合に本発明を適用することは無意味である。
【0022】
また、上記実施形態では梁群20を牽引して架設位置に導くようにしたが、梁群20を後方から押出すようにしても同様である。さらに、上記では移動台車8を小梁2の端面にボルト締結するものとしたが、小梁2の端部を載置してそれを下方から支持する形態のものでも良い。さらに、上記実施例のように一方の妻側からのみ架設を行うのみならず、両妻側から中央側に向けて対称的にかつ同時に架設を行えば工期を半減させることが可能である。その他、本発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜の設計的変更を自由に行い得ることは言うまでもない。
【0023】
【発明の効果】
以上のように、本発明は、架設対象の小梁の両端部に移動台車を装着し、それら小梁を架設するべき大梁の一端側上面に揚重してそこで連結して梁群としたうえで、それを一括して大梁に沿って移動させて架設位置に導き、そこで各小梁をジャッキダウンして大梁に対して接合するものであるから、多数の小梁の架設作業を効率的にしかも安全、容易に行うことが可能であり、特に、長尺大重量の小梁を1本ずつ直接的に架設位置まで揚重する場合に比して揚重作業に要する手間と費用を大幅に削減することができ、特にプレキャストコンクリート梁のような大重量とならざるを得ない小梁を架設する場合に適用して好適である。また、小梁の架設を妻側からのみ行い得るから建築物の周囲に十分なる作業スペースが確保し得ない場合にも適用可能であるし、上記一連の架設工程を両妻側から同時に行うこととすれば作業効率をより改善することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明方法の一実施形態を示す立面図である。
【図2】 同、平面図である。
【図3】 同、正面図である。
【図4】 同、要部拡大側面図である。
【図5】 同、要部拡大正面図である。
【図6】 同、ジャッキ装置の側面図である。
【図7】 同、ジャッキ装置の正面図である。
【図8】 本方法により架設する小梁の一例を示す図である。
【符号の説明】
1 大梁
2 小梁(プレキャストコンクリート梁)
6 作業構台
7 レール
8 移動台車
10 牽引ジャッキ
11 ジャッキ装置
20 梁群

Claims (3)

  1. 大梁を先行施工し、該大梁の間に多数の小梁をほぼ密に並べた状態で架設するに際し、
    (a)架設するべき小梁の両端部に前記大梁上を移動可能な移動台車をそれぞれ装着する工程、
    (b)前記移動台車を装着した小梁を揚重して該小梁の両端部をそれぞれ前記移動台車を介して大梁の長さ方向に移動可能な状態で該大梁の一端側上面に支持せしめる工程、
    (c)前記(b)工程を繰り返して所望本数の小梁を大梁の一端側上面に支持せしめるとともに、それら小梁をほぼ密に並べた状態で連結して梁群となす工程、
    (d)前記梁群を一括して大梁の他端側へ移動させることにより各小梁をそれぞれ最終的に架設するべき位置の直上位置に導く工程、
    (e)前記梁群のうちのいずれかの小梁の両端部をその下方からジャッキにより支持するとともに、該小梁を梁群から切り離しかつ該小梁から前記移動台車を撤去する工程、
    (f)前記ジャッキを作動せしめて該ジャッキが支持する小梁を最終的に架設するべき位置まで降下させ、該小梁の両端部をそれぞれ前記大梁の側部に対して接合する工程、
    (g) 前記(e)工程および前記(f)工程を前記梁群の全ての小梁に対して繰り返す工程
    を順次実施することを特徴とする梁の架設方法。
  2. 前記小梁は長尺大重量のプレキャストコンクリート梁であることを特徴とする請求項1記載の梁の架設方法。
  3. 前記一連の工程を大梁の両端側からその中心側に向けて実施することを特徴とする請求項1または2記載の梁の架設方法。
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