JP3780878B2 - 自動車用内燃機関 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、自動車用の内燃機関、特に、そのシリンダブロック構造の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
周知のように、自動車用内燃機関のシリンダブロックは、アルミニウム合金や鋳鉄を用いて一体に鋳造されているが、このシリンダブロックの後端には、クランクシャフト後端のリングギアの外周側付近に達するように外側へ張り出したフランジ部が形成されており、ここに、変速機側のハウジングが連結されるようになっている。具体的には、例えばFR(フロントエンジン・リヤドライブ)型自動車では、内燃機関が車両にいわゆる縦置き(クランクシャフトが車両前後方向に沿う姿勢)に搭載されるようになっており、上記フランジ部に、縦置き用のトランスミッションが連結され、プロペラシャフトを介して後輪を駆動している。これに対し、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)型自動車では、一般に内燃機関が車両にいわゆる横置き(クランクシャフトが車両幅方向に沿う姿勢)に搭載されるようになっており、上記フランジ部にトランスアクスルが連結されている。このトランスアクスルは、駆動輪となるドライブシャフトを一体に備えた構成であって、クランクシャフトに接続される入力軸と平行にドライブシャフトが配置されている。なお、この横置き内燃機関用のトランスアクスルは、広義のトランスミッションに含まれるとも言えるが、本願明細書では、ドライブシャフトを備えた横置き用の変速機を特に「トランスアクスル」と呼び、縦置き内燃機関と組み合わされて直列に延びる変速機を特に「トランスミッション」と呼んで、両者を区別するものとする。また、四輪駆動(4WD)型自動車は、一般に上記のいずれかの形式を基本として、変形ないしは発展させたものとなっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来から、同一型式の内燃機関が、FR型自動車およびFF型自動車の双方に利用される場合がある。しかしながら、このような場合に、シリンダブロックの端部にトランスミッションないしはトランスアクスルが結合されるフランジ部を一体で備えている内燃機関では、シリンダブロックの基本的な構造は同一であるものの、上記フランジ部の形状は、縦置き用内燃機関と横置き用内燃機関とで、異なる形状となっていた。
【0004】
図8は、従来の内燃機関におけるそれぞれのフランジ部の形状を対比して示したものであり、同図(A)がトランスミッションに結合される縦置き用つまりFR型自動車用のフランジ部形状を示し、同図(B)がトランスアクスルが結合される横置き用つまりFF型自動車用のフランジ部形状を示している。
【0005】
(A)に示すように、FR型自動車用の内燃機関では、フランジ部の一側部に、スタータモータ51との干渉を回避するための凹部52が形成されており、これよりも下方の部分がアーム部53として側方へ延びた形状をなしている。これに対し、FF型自動車用のフランジ部は、(B)に示すように、ドライブシャフト54との干渉を避ける必要があることから、上記のアーム部53の位置付近が凹部55となっており、これよりも上方の位置に、スタータモータ51が貫通する円形の開口部56が形成されている。なお、いずれの場合も、スタータモータ51自体は、図示せぬトランスミッションないしはトランスアクスル側に固定されており、シリンダブロックの側方に延びている。
【0006】
このような形状の差異は、上述したトランスアクスルのドライブシャフト54との干渉を回避しつつ、それぞれの場合で、トランスミッションないしはトランスアクスルと結合するボルトが配置される結合点57を、可及的に外側に配置しようとしているためである。
【0007】
しかしながら、このように同一型式の内燃機関で、FR型自動車のように縦置きにする場合とFF型自動車のように横置きにする場合とで、仮に、スタータモータ51やドライブシャフト54をそれぞれ個別に逃げた凹部を共用のフランジ部に設けると、トランスミッションないしはトランスアクスルとの結合剛性が低下する。かといって上記従来のように縦置きの場合と横置きの場合とでフランジ部形状が異なるものとすると、シリンダブロックの鋳造の段階から別工程となってしまい、生産管理の煩雑化や、コストの上昇を招く、という不具合がある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る自動車用内燃機関は、シリンダブロックの一端にフランジ部を一体に備え、このフランジ部にトランスアクスルが結合された状態で車両に横置きに搭載される使用態様と、このフランジ部にトランスミッションが結合された状態で車両に縦置きに搭載される使用態様と、を有し、それぞれの態様で上記フランジ部の外縁形状が同一であることを特徴としている。
【0009】
より具体的には、上記トランスアクスルのドライブシャフトと干渉しないように上記フランジ部の外縁の一部に凹部が切欠形成されており、上記トランスミッションに結合した状態では、上記凹部によって、トランスミッション側に固定したスタータモータとの干渉が回避されるように構成されている。
【0010】
すなわち、同じ凹部が、横置き用としてはドライブシャフトとの干渉回避に利用され、縦置き用としてはスタータモータとの干渉回避に利用される。
【0011】
この請求項1の発明をさらに具体化した請求項2の発明は、上記トランスアクスルに結合された使用態様では、該トランスアクスルのフランジ部に端部を固定したスタータモータが、シリンダブロックと反対側に延びるように配置されており、上記トランスミッションに結合された使用態様では、該トランスミッションのフランジ部に端部を固定したスタータモータが、上記凹部を通してシリンダブロック側に延びるように配置されていることを特徴としている。
【0012】
車両に縦置きに搭載された態様では、トランスミッションがダッシュパネルの位置よりも後方つまり車室側へ延びている。そのため、仮に、スタータモータが、シリンダブロックと反対側つまりトランスミッション側へ延びるように配置されていると、ダッシュパネル付近におけるフロアのトンネル部の断面を大きくする必要が生じ、それだけ車室内の空間を狭めてしまう。上記のようにスタータモータがシリンダブロック側に延びるように配置してあれば、スタータモータがエンジンルーム内に位置することになり、車室内の空間を制約しない。
【0013】
【発明の効果】
この発明に係る自動車用内燃機関においては、縦置き用と横置き用とで、フランジ部の外縁形状を同一としたので、シリンダブロックを共用することが可能となり、生産管理の容易化、コストの低減が可能となる。
【0014】
特に、同じ凹部が、横置き用の場合のドライブシャフトとの干渉回避と、縦置き用の場合のスタータモータとの干渉回避とに利用されるので、トランスミッションないしはトランスアクスルとの結合点を可及的に外側に配置しつつ、それぞれの十分に実用的なレイアウトが可能となる。
【0015】
さらに請求項2の構成によれば、縦置き搭載において問題となるスタータモータによる車室内の空間を狭めることがなく、かつ同時に、横置き用として、ドライブシャフトとの干渉回避とスタータモータの配置とを両立させることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の好ましい実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0017】
図1は、車両に縦置きに搭載されるFR型自動車用の構成を示している。図示するように、内燃機関1は、直列4気筒機関であって、例えばアルミニウム合金もしくは鋳鉄によって一体に鋳造されたシリンダブロック2を主体とし、その後端に一体に形成されたフランジ部3に、トランスミッション4のハウジングが複数本のボルト6によって固定されている。具体的には、図示せぬトルクコンバータが収容されるベルマウス状部分の開口端に設けられたフランジ部7が、上記フランジ部3に結合されている。また、上記シリンダブロック2の下面には、オイルパン5が取り付けられている。
【0018】
図2は、上記フランジ部3の形状を示している。図示するように、このフランジ部3は、その外縁が、クランクシャフト11を中心とした略円弧形をなすようにシリンダブロック2後端を部分的に外側へ拡大した形状をなしている。また、オイルパン5の後端にも、同様に、円弧形をなすフランジ部12が形成されており、シリンダブロック2のフランジ部3とオイルパン5のフランジ部12とを合わせると、トランスミッション4側のフランジ部7に対応した略円形を呈するようになっている。換言すれば、トランスミッション4側のフランジ部7は、シリンダブロック2のフランジ部3とオイルパン5のフランジ部12との双方に亘って固定されている。なお、図2に、トランスミッション4側のフランジ部7の形状を仮想線で示してあるが、その大部分は、上記フランジ部3,12の外形線と重なっているため、図面上は現れていない。
【0019】
シリンダブロック2は、いわゆるディープスカート型となっており、フランジ部3もクランクシャフト11中心よりも下方まで延びているが、図示するように、その下縁の一側部に、約45°の円弧をなす凹部8が切欠形成されている。また、これと組み合わされるように、オイルパン5のフランジ部12にも円弧形の凹部13が形成されている。これに対し、トランスミッション4側のフランジ部7は、これらの凹部8,13を覆うように外側へ延びており、ここに、スタータモータ14が取り付けられている。具体的には、スタータモータ14は、略円筒状のモータ部14aにソレノイド部14bが並んで設けられた形状をなし、かつ一端に、菱形ないしは小判型の取付フランジ14cを有している。そして、この取付フランジ14cが上記フランジ部7に一対のボルト15(図1参照)によって固定されている。取付状態においては、上記取付フランジ14cが凹部8および凹部13に入り込んだレイアウトとなり、ここからシリンダブロック2の側面に沿って、上記モータ部14aが延びている。このようにスタータモータ14がシリンダブロック2側に延びるように配置されていることから、車両搭載状態では、スタータモータ14がエンジンルーム内に位置し、従って、ダッシュパネル近傍のフロアトンネル部を拡大する必要がない。シリンダブロック2のフランジ部3およびオイルパン5のフランジ部12には、その全周に亘って、トランスミッション4側のフランジ部7とボルト結合するための複数のボルト孔9,16が配置されているが、特に、上記凹部8,13を挟んで、それぞれ頂部となる位置にボルト孔9,16が設けられており、トランスミッション4側のフランジ部7との結合面を可及的に外側に確保している。
【0020】
次に、図3は、車両に横置きに搭載されるFF型自動車用の構成を示している。内燃機関1は、図1、図2のものと基本的に同一のものであって、特にシリンダブロック2は後端のフランジ部3を含め、変わりがない。但し、シリンダブロック2の下面に取り付けられるオイルパン5の構成は、FR型自動車用とは多少異なっている。
【0021】
上記シリンダブロック2のフランジ部3には、前輪駆動用のドライブシャフト22を備えたトランスアクスル21のハウジングが複数本のボルト(図示せず)によって固定されている。具体的には、図示せぬトルクコンバータが収容されるベルマウス状部分の開口端に設けられたフランジ部23が、上記フランジ部3に結合されている。そして、トランスアクスル21のハウジングは、上記フランジ部23から側方(車両後方)へ膨らんでおり、ここから内燃機関1の気筒列方向と略平行にドライブシャフト22が延びている。
【0022】
図4は、上記フランジ部3の形状をオイルパン5のフランジ部24とともに示している。図示するように、シリンダブロック2のフランジ部3の形状はFR型自動車用のものと全く変わりがなく、前述したように、その外縁の一部に凹部8が切欠形成されている。そして、この凹部8を上記ドライブシャフト22が通過している。また、オイルパン5の後端のフランジ部24は、やはり基本的にシリンダブロック2のフランジ部3と合わせて略円形を呈するように形成されており、かつその一側部に、上記ドライブシャフト22との干渉を回避するための凹部25が形成されている。なお、符号26は、このオイルパン5のフランジ部24に設けられたボルト孔を示している。
【0023】
そして、このFF型自動車用の構成では、スタータモータ14がトランスアクスル21のフランジ部23の上部に取り付けられている。具体的には、前述したように菱形ないしは小判型をなす取付フランジ14cが一対のボルト(図示せず)によってフランジ部23に固定されており、特に、前述したFR型自動車の場合とは逆向きに、つまりフランジ部23からシリンダブロック2とは反対側へ延びるように配置されている。横置きに搭載されるFF型自動車の場合には、この位置は、エンジンルーム内であり、FR型自動車のようにフロアトンネル部による制約を受けることがない。なお、上記スタータモータ14の具体的な形状は、前述したFR型自動車用の場合のスタータモータ14とは若干異なっているが、その基本的な構成は特に変わりがない。
【0024】
図5および図6は、FF型自動車用の構成におけるスタータモータ14の異なるレイアウトの例を示している。この実施例では、トランスアクスル21のフランジ部23の側部、特に、ドライブシャフト22の位置と反対側となる箇所が、部分的に外側へ張り出しており、この位置に、スタータモータ14が配置されている。つまり、クランクシャフト11を挟んで、ドライブシャフト22とスタータモータ14とが略対称位置に配置されている。なお、上記スタータモータ14は、やはりフランジ部23からシリンダブロック2とは反対側に延びるように配置されている。
【0025】
さらに、図7は、横置き型のFF型レイアウトを発展させた4WD型自動車用の構成例を示している。この4WD型自動車用の構成では、トランスアクスル21の側部に、さらに、後輪へ出力を伝達するトランスファ31が設けられている。図示するように、シリンダブロック2のフランジ部3およびオイルパン5のフランジ部24の形状は、前述したFF型自動車用の構成と変わりがなく、凹部8および凹部25によって、トランスファ31と干渉しないようになっている。ドライブシャフト22は、このトランスファ31を貫通して、クランクシャフト11と略平行に延びている。また、スタータモータ14は、前述したFF型自動車用の構成と同様に、トランスアクスル21のフランジ部23の上部もしくはドライブシャフト22と反対側の側部に配置される。
【図面の簡単な説明】
【図1】FR型自動車用の内燃機関およびトランスミッションの構成を示す斜視図。
【図2】このFR型自動車用の場合のフランジ部の形状を示す正面図。
【図3】FF型自動車用の内燃機関およびトランスアクスルの構成を示す斜視図。
【図4】このFF型自動車用の場合のフランジ部の形状を示す正面図。
【図5】FF型自動車用のスタータモータ位置を変更した実施例を示す斜視図。
【図6】この実施例のフランジ部の形状を示す正面図。
【図7】4WD型自動車用のフランジ部の形状を示す正面図。
【図8】従来のFR型自動車用のフランジ部の形状(A)とFF型自動車用のフランジ部の形状(B)とを対比して示す説明図。
【符号の説明】
1…内燃機関
2…シリンダブロック
3…フランジ部
4…トランスミッション
5…オイルパン
14…スタータモータ
21…トランスアクスル
22…ドライブシャフト
Claims (2)
- シリンダブロックの一端にフランジ部を一体に備え、このフランジ部にトランスアクスルが結合された状態で車両に横置きに搭載される使用態様と、このフランジ部にトランスミッションが結合された状態で車両に縦置きに搭載される使用態様と、を有し、それぞれの態様で上記フランジ部の外縁形状が同一である自動車用内燃機関であって、
上記トランスアクスルのドライブシャフトと干渉しないように上記フランジ部の外縁の一部に凹部が切欠形成されており、上記トランスミッションに結合した状態では、上記凹部によって、トランスミッション側に固定したスタータモータとの干渉が回避されるように構成されていることを特徴とする自動車用内燃機関。 - 上記トランスアクスルに結合された使用態様では、該トランスアクスルのフランジ部に端部を固定したスタータモータが、シリンダブロックと反対側に延びるように配置されており、上記トランスミッションに結合された使用態様では、該トランスミッションのフランジ部に端部を固定したスタータモータが、上記凹部を通してシリンダブロック側に延びるように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の自動車用内燃機関。
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