JP3780156B2 - ロッカーアーム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、オーバーヘッドカム型式のエンジンに使用されるロッカーアームに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図4は自動車などに使用されるオーバーヘッドカム型式のエンジンにおける開弁機構の一例を示し、図5は図4のV−V方向から見た平面図、図6は要部の詳細を示す斜視図であり、図4中1はシリンダ、2は燃焼室、3はピストン、4は吸気用のバルブ、5は吸気流路を夫々示し、吸気行程でカムシャフト6に装備した吸気用のカム7によりロッカーアーム8の基端がローラ9を介し押し上げられてロッカーシャフト10を中心に傾動し、その傾動したロッカーアーム8の先端によりクロスヘッド11を介し両方のバルブ4が押し下げられて開作動され、吸気流路5から空気が燃焼室2へと吸入されるようになっている。
【0003】
ここで、図4に示す例においては、ロッカーアーム8の先端に、クロスヘッド11の頂部までの間隔を調整するためのアジャストスクリュー12が装備されており、該アジャストスクリュー12の下端部には、クロスヘッド11の頂部に対し常に水平状態で当接し得るようチップ13が揺動自在に装備されている。
【0004】
尚、シリンダ1の頂部には、図示とは異なる位相断面に排気用のバルブ4も備えられており、この排気用のバルブ4が前述した吸気用のバルブ4の場合と同様の開弁機構により排気行程で開作動され、燃焼室2から排気流路14へと排気ガスが掃気されるようになっている。
【0005】
そして、吸気や排気の開弁動作を担うロッカーアーム8は、ロッカーシャフト10の軸心部分に穿設されている油通路15からローラ9の回動部分についての潤滑が強制給油により行われるようになっており、より具体的には、ロッカーシャフト10の油通路15から連絡通路16を介しブッシュ17内周面の溝へと潤滑油18が導かれ、この潤滑油18がブッシュ17内周面の溝から更に油孔を通し外周面側に導かれてロッカーアーム8自体に穿設した油通路19に導入され、次いで、該油通路19を通しローラピン20の一端部へと導かれた潤滑油18がローラピン20内部に穿設された油通路21(図6参照)を通してローラ9の内周面に摺接するローラピン20の中間部に流出するようにしてある。
【0006】
ここで、補足して説明しておくと、ブッシュ17はロッカーアーム8と一体的に傾動するようになっており、ブッシュ17の内周面に形成された溝は、ロッカーアーム8の傾動によるロッカーシャフト10側の連絡通路16との相対位置変化に対応できるようにしたものであり、また、ローラピン20は、ロッカーアーム8の基端側に二股状(図5及び図6参照)に形成された一対のブラケット部22の嵌合孔23に対し圧入されて両端部を嵌合固定されるようになっており、前記ロッカーアーム8に穿設された油通路19は、一方のブラケット部22の内部を通してローラピン20の一端部へ到り、ここから該ローラピン20の内部の油通路21に連通するようになっている。
【0007】
尚、ロッカーアーム8の内部には、クロスヘッド11の摺動部分などに対して潤滑を行うための先端側へ向かう別の油通路も存在するが、本発明で対象としているローラピン20への強制給油とは直接関連しないので、その図示及び説明については割愛することとする。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、斯かる従来構造においては、ロッカーアーム8の一方のブラケット部22の嵌合孔23からロッカーシャフト10へと到る比較的長いスパンで微少な径の油通路19を穿孔加工しなければならないが、ロッカーアーム8のようなスチール系の部材に対し細いドリルで比較的長いスパンの孔を開ける作業では、ドリルが直ぐに折れてしまって量産するのに多大な手間とコストを要するという問題があり、また、ローラピン20の内部に同様の微少な径の油通路21を穿孔加工しなければならないことにも多大な手間とコストを要していた。
【0009】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、従来より穿孔加工に要する手間とコストを大幅に低減し得るロッカーアームを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、基端側に一対のブラケット部を有し且つ両ブラケット部間に渡されたローラピンにローラを転動自在に備え、該ローラに対し摺接し且つその摺接面が下向きに転動するように回転するカムにより前記ローラを介し基端側を押し上げられてロッカーシャフトを中心に傾動し、その傾動時に先端側がバルブを押し下げて該バルブを開作動させるようにしたロッカーアームにおいて、
ロッカーシャフトの軸心部分の油通路から潤滑油を導いて両ブラケット部間のローラ外周面と対峙する位置に流出させるようにロッカーアーム内部に穿設された油通路と、該油通路を通しローラ外周面に給油された潤滑油をローラの回転により招き入れて油溜まりを形成し得るようにロッカーアームの基端側寄りの上面部に凹設された窪み部とを備えたことを特徴とするものである。
【0011】
従って、本発明では、主としてエンジン回転数が比較的低い運転領域でカムによりローラが回転すると、両ブラケット部間に流出した潤滑油がローラの回転によりロッカーアームの上面部に汲み上げられて潤滑油が窪み部に溜まり、ここに油溜まりが形成されるので、該油溜まりからローラと各ブラケット部との間の隙間を通し潤滑油が滲み入ってローラとローラピンとの間が確実に潤滑されることになる。
【0012】
即ち、従来の如きローラとローラピンとの間に強制給油する方式では、アイドリングを長時間継続するような場合に潤滑油の供給量が不足する虞れがあるが、窪み部に形成した油溜まりから潤滑油を滲み込ませてローラとローラピンとの間を潤滑させるようにすれば、潤滑油の供給量が不足する虞れがなくなる。
【0013】
一方、エンジン回転数が比較的高い運転領域では、ロッカーアームの傾動が激しすぎて窪み部に油溜まりが形成され難くなるが、このようにエンジン回転数が上昇してくると、潤滑油のスプラッシュ(飛散油)が大幅に増加された状態となるので、このスプラッシュによりローラとローラピンとの間が確実に潤滑されることになる。
【0014】
また、このようにエンジン回転数が比較的高い運転領域にあっては、ローラとカムとの摺接面が高温になり易くなるが、両ブラケット部間から流出したばかりの未だ昇温していない新たな潤滑油をローラ外周面に対し直接的に強制給油させる方式を採用しているので、ローラとカムとの摺接面が確実に冷却されることになる。
【0015】
そして、本発明においては、ロッカーアームの基端側に備えたローラとローラピンとの間を潤滑するための油通路を穿設するに際し、従来の如き一方のブラケット部の内部を通して油通路を穿設する場合よりもロッカーアーム内部の油通路のスパンが著しく短縮されることになり、しかも、ローラピンの内部には油通路を穿設する必要がなくなるので、穿孔加工に要する手間とコストが従来より大幅に低減されることになる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0017】
図1〜図3は本発明を実施する形態の一例を示すもので、図4〜図6と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。
【0018】
本形態例においては、先に図4〜図6で示したものと略同様に構成されたロッカーアーム8に関し、ロッカーシャフト10の軸心部分の油通路15から潤滑油18を導いて両ブラケット部22間のローラ9外周面と対峙する位置に流出し得るよう油通路24を穿設し、該油通路24を通しローラ9外周面に給油された潤滑油18をローラ9の回転により招き入れて油溜まり25を形成し得るようロッカーアーム8の基端側寄りの上面部に窪み部26を凹設してある。
【0019】
即ち、ここに図示しているロッカーアーム8では、ローラ9に対する摺接面が下向きに転動するように回転するカム7により前記ローラ9を介し基端側が押し上げられるようになっており、前記両ブラケット部22間に開口する油通路24の給油口24aが、上向きに移動しているローラ9の外周面と対峙するようになっているので、前記給油口24aから流出した潤滑油18は、ローラ9の外周面に給油されると直ちに上方に導かれてロッカーアーム8上面の窪み部26へ招き入れられるようになっている。
【0020】
而して、このようにロッカーアーム8を構成すれば、主としてエンジン回転数が比較的低い運転領域でカム7によりローラ9が回転した場合に、両ブラケット部22間に流出した潤滑油18がローラ9の回転によりロッカーアーム8の上面部に汲み上げられて潤滑油18が窪み部26に溜まり、ここに油溜まり25が形成されるので、該油溜まり25からローラ9と各ブラケット部22との間の隙間を通し潤滑油18が滲み入ってローラ9とローラピン20との間が確実に潤滑される。
【0021】
即ち、従来の如きローラ9とローラピン20との間に強制給油する方式では、アイドリングを長時間継続するような場合に潤滑油18の供給量が不足する虞れがあるが、窪み部26に形成した油溜まり25から潤滑油18を滲み込ませてローラ9とローラピン20との間を潤滑させるようにすれば、潤滑油18の供給量が不足する虞れがなくなるのである。
【0022】
例えば、自動車エンジンの場合には、高速道路のサービスエリアなどにてクーラやヒータなどをつけて仮眠や休憩をとるようなケースでアイドリングが長時間継続することがあり得るが、そのようなエンジン回転数の低いアイドリング状態では、強制給油による潤滑油18の供給量が少ない状態のままエンジンが長時間回転し続けることで潤滑不足が起こり易くなるので、寧ろ窪み部26に形成した油溜まり25から潤滑油18を滲み込ませてローラ9とローラピン20との間を間接的に潤滑させる方式とした方がより確実なのである。
【0023】
一方、エンジン回転数が比較的高い運転領域では、ロッカーアーム8の傾動が激しすぎて窪み部26に油溜まり25が形成され難くなるが、このようにエンジン回転数が上昇してくると、潤滑油18のスプラッシュ(飛散油)が大幅に増加された状態となるので、このスプラッシュによりローラ9とローラピン20との間が確実に潤滑されることになる。
【0024】
また、このようにエンジン回転数が比較的高い運転領域にあっては、ローラ9とカム7との摺接面が高温になり易くなるが、両ブラケット部22間から流出したばかりの未だ昇温していない新たな潤滑油18をローラ9外周面に対し直接的に強制給油させる方式を採用しているので、ローラ9とカム7との摺接面が確実に冷却されることになる。
【0025】
そして、本形態例においては、従来の如き一方のブラケット部22の内部を通して油通路24を穿設する場合よりもロッカーアーム8内部の油通路24のスパンが著しく短縮されることになり、しかも、ローラピン20の内部には油通路24を穿設する必要がなくなる。
【0026】
従って、上記形態例によれば、ロッカーアーム8の基端側に備えたローラ9とローラピン20との間を潤滑するための油通路24を穿設するに際し、従来の如き一方のブラケット部22の内部を通して油通路を穿設する場合よりもロッカーアーム8内部の油通路24のスパンを著しく短縮することができ、しかも、ローラピン20内部の油通路を不要とすることもできるので、その穿孔加工に要する手間とコストを従来より大幅に低減することができ、しかも、従来の強制給油方式では潤滑油18の供給量が不足しがちとなるアイドリングの長時間継続時においても油溜まり25から間接的に潤滑油18を給油してローラ9とローラピン20との間を確実に潤滑することができ、更には、ローラ9とカム7との摺接面が高温化し易くなるエンジン回転数の比較的高い運転領域においても潤滑油18をローラ9外周面に対し直接的に強制給油してローラ9とカム7との摺接面を確実に冷却することができる。
【0027】
尚、本発明のロッカーアームは、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0028】
【発明の効果】
上記した本発明のロッカーアームによれば、下記の如き種々の優れた効果を奏し得る。
【0029】
(I)ロッカーアームの基端側に備えたローラとローラピンとの間を潤滑するための油通路を穿設するに際し、従来の如き一方のブラケット部の内部を通して油通路を穿設する場合よりもロッカーアーム内部の油通路のスパンを著しく短縮することができ、しかも、ローラピン内部の油通路を不要とすることもできるので、穿孔加工に要する手間とコストを従来より大幅に低減することができる。
【0030】
(II)従来の強制給油方式では潤滑油の供給量が不足しがちとなるアイドリングの長時間継続時においても、油溜まりから間接的に潤滑油を給油することができて、ローラとローラピンとの間を確実に潤滑することができる。
【0031】
(III)ローラとカムとの摺接面が高温化し易くなるエンジン回転数の比較的高い運転領域においても、潤滑油をローラ外周面に対し直接的に強制給油することができて、ローラとカムとの摺接面を確実に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を実施する形態の一例を一部を切り欠いて示す概略図である。
【図2】図1のII−II方向から見たロッカーアームの平面図である。
【図3】図1のロッカーアームの基端側の詳細な構造を示す斜視図である。
【図4】従来例を示す概略図である。
【図5】図4のV−V方向から見たロッカーアームの平面図である。
【図6】図4のロッカーアームの基端側の詳細な構造を示す斜視図である。
【符号の説明】
4 バルブ
7 カム
8 ロッカーアーム
9 ローラ
10 ロッカーシャフト
18 潤滑油
20 ローラピン
22 ブラケット部
24 油通路
25 油溜まり
26 窪み部

Claims (1)

  1. 基端側に一対のブラケット部を有し且つ両ブラケット部間に渡されたローラピンにローラを転動自在に備え、該ローラに対し摺接し且つその摺接面が下向きに転動するように回転するカムにより前記ローラを介し基端側を押し上げられてロッカーシャフトを中心に傾動し、その傾動時に先端側がバルブを押し下げて該バルブを開作動させるようにしたロッカーアームにおいて、
    ロッカーシャフトの軸心部分の油通路から潤滑油を導いて両ブラケット部間のローラ外周面と対峙する位置に流出させるようにロッカーアーム内部に穿設された油通路と、該油通路を通しローラ外周面に給油された潤滑油をローラの回転により招き入れて油溜まりを形成し得るようにロッカーアームの基端側寄りの上面部に凹設された窪み部とを備えたことを特徴とするロッカーアーム。
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