JP3778749B2 - 平版印刷版用仕上げ液 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルミニウム板を支持体とする銀錯塩拡散転写法を利用した平版印刷版の仕上げ液に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、平版印刷の分野において、アルミニウム板を支持体とした平版印刷版は、感光性樹脂を用いたPS版(プレセンシタイズド版)をはじめ各種印刷版が知られている。例えば、特開平7−20629号、同平7−271029号に記載のサーマルプレート、特開平7−314934号、同平8−48018号に記載のレーザーアブレーションを利用した平版印刷版、及び特開平5−265216、同平5−313206号、同平7−56345号、同平9−6005号に記載の銀錯塩拡散転写方式を利用した銀塩印刷版等が知られている。本発明は銀塩印刷版を対象とするものである。
【0003】
これらの印刷版は、主に樹脂層または物理現像銀で形成された画像部とアルミニウムの陽極酸化層で形成された非画像部によって構成されており、画像部がインキを選択的に受付け、非画像部が選択的に水を受け付けることによって印刷がなされる。従って、画像部と非画像部の親油性と親水性の差が大きいことが必要である。これらの平版印刷版は現像後、非画像部であるアルミニウム表面を露出させるために樹脂層またはハロゲン化銀乳剤層が除去され、その後仕上げ液が塗布される。
【0004】
銀塩印刷版は、高感度、高感色性と高い解像力、高いシャープネスを持った画像を形成することが可能であり、光による画像形成方法としては非常に有利な方法である。しかし金属銀によってなる銀画像部は、感光性樹脂によって形成されたPS版等の画像部に比べ、親油性が低い。従って、銀塩印刷版はPS版等に比べ、製版処理工程での高い親水性の付与は、画像部の親油性の低下を顕著に招く。従って、現像液は言うまでもなく、仕上げ液の機能もその両者間で大きく異なる。即ち、銀塩印刷版の処理液は、非画像部の親水性と画像部の親油性をバランスよく高めることが要求される。
【0005】
上記理由から、印刷時の非画像部のインキ汚れおよび画像部のインキ受理性は、仕上げ液の性能によって大きく左右される。
【0006】
本発明が対象とする銀塩印刷版は、粗面化され陽極酸化されたアルミニウム支持体上に物理現像核を担持し、更にその上にハロゲン化銀乳剤層を設けた構成になっており、一般的な製版方法は、露光後、現像処理、水洗処理(ウォッシュオフ:ハロゲン化銀乳剤層の除去)、仕上げ処理の工程からなっている。
【0007】
詳細には、現像処理によって物理現像核上に金属銀画像部が形成され、次の水洗処理によってハロゲン化銀乳剤層が除去されてアルミニウム支持体上に金属銀画像部(以降、銀画像部と称す)が露出する。同時に陽極酸化されたアルミニウム表面自身が非画像部として露出する。
【0008】
水洗処理後、版面の保護及び非画像部の親水性向上のため、通常、アラビアゴム、デキストリン、カルボキシメチルセルロース、ポリスチレンスルホン酸等の保護コロイドを含有する仕上げ液が塗布される。所謂、ガム引きと云われる処理が施される。この仕上げ液は、定着液やフィニッシング液とも称され、銀画像部を親油性にする化合物(例えば、メルカプト基またチオン基を有する含窒素複素環化合物)を含有することも一般的である。
【0009】
しかしながら、従来の仕上げ液では、非画像部のインキ汚れの問題と、画像部のインキ受理性を高いレベルで両立させることは困難であった。即ち、これまでの技術では、インキ汚れを解決するために非画像部の親水性を高めると画像部のインキ受理性の低下を招き、逆に画像部のインキ受理性を上げると非画像部の親水性の低下を引き起こした。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、非画像部のインキ汚れを改善しつつ、同時に画像部に高いインキ受理性を持たせるアルミニウム板を支持体とする銀錯塩拡散転写法を利用した平版印刷版の仕上げ液を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、分子量が700以下でかつプロピレンオキシ基を1から11の範囲で含む化合物を含有することを特徴とする仕上げ液によって達成された。
【0012】
特開平7−287399号公報には、アルミニウム板を支持体とする銀塩印刷版の仕上げ液にエチレンオキシ基またはプロピレンオキシ基を含む化合物を含有する仕上げ液についての記載がある。該公報にはエチレンオキシ基またはプロピレンオキシ基の数は12以上の時にインキ受理性向上効果の報告がなされている。しかしながらこれらの仕上げ液でも画像部のインキ受理性と非画像部の親水性の両立という面では未だ不十分であった。
【0013】
また、ポリエチレングリコールを仕上げ液に用いるとインキ受理性を向上させることができることが知られているが、これでも仕上げ液の性能としては未だに不十分であった。ポリエチレングリコールは分子量の増加に伴ってインキ受理性向上の効果が低下するため、インキ受理性向上の観点からは分子量の比較的低い1000以下のポリエチレングリコールを用いることが望ましい。しかし、逆に、分子量を低下させていくとインキ受理性は向上するものの他の問題が生じてくる。即ち、版面がべとついたり、陽極酸化層の変質に起因する汚れを生じたりする。
【0014】
従って本発明者らは本目的を達成するために鋭意検討した結果、保護コロイドと、分子量が700以下でかつプロピレンオキシ基を1から11の範囲で含む化合物であって、該化合物がプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコールもしくはその末端がアルキル基に置換されたエーテル類、グリセリン骨格のポリプロピレングリコールエーテルの中から選ばれた化合物の少なくとも1つを含有することを特徴とする仕上げ液によって本目的は達成された。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の仕上げ液には分子量が700以下でかつプロピレンオキシ基を1から11の範囲で含む化合物を含有する。好ましくは、プロピレンオキシ基を1から10個有する化合物であり、より好ましくはプロピレンオキシ基を3から8個有する化合物である。分子構造としては、プロピレングリコールが直鎖状に連結したポリプロピレングリコール類もしくはその末端の水素原子をエーテルもしくはエステル結合で置換基(例えばアルキル基)の付いたもの、プロピレンオキシ基とエチレンオキシ基の共重合物(この場合、プロピレンオキシ基の個数が多い方が好ましい)、グリセリン骨格のポリプロピレングリコールエーテル、エチレンジアミン骨格のポリプロピレングリコール等を挙げることができる。これら化合物の例を以下に挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0016】
プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(平均分子量400、650)、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ポリプロピレングリコールグリセリンエーテル(平均分子量250、300)、等を挙げることができる。
【0017】
これらの化合物は、単独または組み合わせて用いることができる。またこれらの化合物は仕上げ液中に好ましくは合計で20g/リットル以上用い、より好ましくは30〜150g/リットルである。
【0018】
本発明の仕上げ液には、陽極酸化アルミニウム層に対する親水化剤を含むことが好ましい。親水化剤の例としてはリン酸、ポリリン酸、メタリン酸等のリン酸類またはその塩、フィチン酸等のホスホン酸類またはその塩、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸等のヒドロキシキシカルボン酸またはその塩を挙げることができる。これらの化合物は単独でも組み合わせて用いても良いが、特にリン酸またはその塩を用いることが好ましい。
【0019】
本発明の仕上げ液には、更に、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、プロピレンオキシ基とエチレンオキシ基を有するアミン化合物、プロピレンオキシ基とエチレンオキシ基を有する脂肪酸アミド化合物及びプロピレンオキシ基とエチレンオキシ基を有する4級アンモニウム化合物の中かの少なくとも1つの化合物を含有させるのが好ましい。
【0020】
本発明の仕上げ液には、前記化合物の他にアラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ソーダ、マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール、ヒドロキシメチルセルロース、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸のプロピレングリコールエステル、ヒドロキシエチル澱粉、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルアルコール等の保護コロイドを用いることができる。
【0021】
さらに本発明の仕上げ液には、防腐剤を含有させてもよいし、更にはタンパク質分解酵素を含有させても良い。
【0022】
本発明の仕上げ液は、銀画像部を親油性にする化合物(親油化剤)を含有させることが好ましい。親油化剤としては、フォーカル・プレス、ロンドン ニューヨーク(1972年)発行、アンドレ ロット及びエディス ワイデ著、「フォトグラフィック・シルバー・ハライド・ディヒュージョン・プロセシズ」、105、106ページに記載されている化合物が挙げられる。例えばメルカプト基またはチオン基を有する化合物、4級アンモニウム化合物等があり、本発明においてはメルカプト基またはチオン基を有する化合物が好ましく用いられる。特に好ましくは、メルカプト基またはチオン基を有する含窒素複素環化合物であり、特公昭48−29723号、特開昭58−127928号に記載されている。以下にその具体例を挙げるが、これらに限定されることはない。
【0023】
2−メルカプト−4−フェニルイミダゾール、2−メルカプト−1−ベンジルイミダゾール、2−メルカプト−ベンズイミダゾール、1−エチル−2−メルカプト−ベンズイミダゾール、2−メルカプト−1−ブチル−ベンズイミダゾール、1,3−ジエチル−ベンゾイミダゾリン−2−チオン、1,3−ジベンジル−イミダゾリジン−2−チオン、2,2´−ジメルカプト−1,1´−デカメチレン−ジイミダゾリン、2−メルカプト−4−フェニルチアゾール、2−メルカプト−ベンゾチアゾール、2−メルカプトナフトチアゾール、3−エチル−ベンゾチアゾリン−2−チオン、3−ドデシル−ベンゾチアゾリン−2−チオン、2−メルカプト−4,5−ジフェニルオキサゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、3−ペンチル−ベンゾオキサゾリン−2−チオン、1−フェニル−3−メチルピラゾリン−5−チオン、3−メルカプト−4−アリル−5−ペンタデシル−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−5−ノニル−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−4−アセタミド−5−ヘプチル−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−4−アミノ−5−ヘプタデシル−1,2,4−トリアゾール、2−メルカプト−5−フェニル−1,3,4−チアジアゾール、2−メルカプト−5−フェニル−1,3,4−チアジアゾール、2−メルカプト−5−n−ヘプチル−オキサチアゾール、2−メルカプト−5−nヘプチル−オキサジアゾール、2−メルカプト−5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール、2−ヘプタデシル−5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール、5−メルカプト−1−フェニル−テトラゾール、2−メルカプト−5−ニトロピリジン、1−メチル−キノリン−2(1H)−チオン、3−メルカプト−4−メチル−6−フェニル−ピリダジン、2−メルカプト−5,6−ジフェニル−ピラジン、2−メルカプト−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−アミノ−4−メルカプト−6−ベンジル−1,3,5−トリアジン、1,5−ジメルカプト−3,7−ジフェニル−S−トリアゾリノ〔1,2−a〕−S−トリアゾリン等が挙げられる。
【0024】
仕上げ液への親油化剤の添加量は、0.01〜10g/リットル程度が適当である。上記メルカプト基またはチオン基を有する化合物はアルカリ溶液には溶解するが、中性から弱酸性の仕上げ液には溶解しないため、有機溶剤、アミン化合物(例えばアミノアルコール)、ポリエチレングリコール、第4級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤等の溶解助剤を用いて添加することができる。
【0025】
銀塩印刷版の製版に用いられる現像液には、現像主薬、例えばポリヒドロキシベンゼン類、3-ピラゾリジノン類、アルカリ性物質、例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、第3燐酸ナトリウム、あるいはアミン化合物、保恒剤、例えば亜硫酸ナトリウム、粘稠剤、例えばカルボキシメチルセルロース、カブリ防止剤、例えば臭化カリウム、現像変成剤、例えばポリオキシアルキレン化合物、ハロゲン化銀溶剤、例えばチオ硫酸塩、チオシアン酸塩、環状イミド、チオサリチル酸、メソイオン性化合物等の添加剤を含ませることができる。上記親油化剤を含有させてもよい。現像液のpHは通常10〜14、好ましくは12〜14である。
【0026】
銀塩印刷版の製版に用いられる水洗液には、pHを4〜8、好ましくは4.5〜7の範囲に緩衝させる緩衝剤、例えば燐酸塩緩衝剤、クエン酸塩緩衝剤またはそれらの混合物を含有することができる。また、防腐剤を含有させてもよい。水洗液中には更に上記タンパク質分解酵素及び親油化剤を含有させることが好ましい。
【0027】
上記水洗液はアルミニウム支持体上のハロゲン化銀乳剤層を完全に除去するために用いるもので、通常、25〜35℃の水洗液をジェット方式で吹き付ける方法、または水洗液を吹き付けながらスクラブローラで乳剤層を剥離する方法が採用されている。また、水洗工程は、水洗液を循環させて再利用するクローズドタイプが一般に用いられている。
【0028】
銀塩印刷版は、前記したようにアルミニウム支持体上に物理現像核及びハロゲン化銀乳剤層を有する。ハロゲン化銀乳剤は、一般に用いられる塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀、塩臭化銀、塩ヨウ臭化銀、ヨウ臭化銀等から選択されるが、塩化銀主体(塩化銀50モル%以上のものを意味する)が好ましい。また乳剤のタイプとしてはネガ型、ポジ型のいずれでもよい。これらのハロゲン化銀乳剤は必要に応じて化学増感あるいはスペクトル増感することができる。
【0029】
ハロゲン化銀乳剤層の親水性コロイドとしてはゼラチンを用いることがハロゲン化銀粒子を作成する際に好ましい。ゼラチンには酸処理ゼラチン、アルカリ処理ゼラチン等各種ゼラチンを用いることができる。また、それらの修飾ゼラチン(例えばフタル化ゼラチン、アミド化ゼラチンなど)も用いることができる。また、更にポリビニルピロリドン、各種でんぷん、アルブミン、ポリビニルアルコール、アラビアガム、ヒドロキシエチルセルロース、等の親水性高分子化合物を含有させることができる。用いられる親水性コロイドとしては、現像後の剥離性を容易にするために実質的に硬膜剤を含まない親水性コロイド層を用いることが望ましい。
【0030】
本発明の平版印刷版の乳剤層には、必要に応じてアニオン、カチオン、ベタイン、ノニオン系の各種界面活性剤、カルボキシメチルセルロース等の増粘剤、消泡剤等の塗布助剤、エチレンジアミンテトラアセテート等のキレート剤、ハイドロキノン、ポリヒドロキシベンゼン類、3−ピラゾリジノン類等の現像主薬を含有させてもよい。
【0031】
本発明に用いられるアルミニウム支持体は粗面化され陽極酸化されたアルミニウム板であり、好ましくは米国特許第5,427,889号公報に記載されているものが用いられる。
【0032】
本発明で用いられる物理現像核層の物理現像核としては、公知の銀錯塩拡散転写法に用いられるものでよく、例えば金、銀等のコロイド、パラジウム、亜鉛等の水溶性塩と硫化物を混合した金属硫化物などが使用できる。保護コロイドとして各種親水性コロイドを用いることもできる。これらの詳細及び製法については、例えば、特公昭48−30562号、特開昭48−55402号、同53−21602号、フォーカル・プレス、ロンドン ニューヨーク(1972年)発行、アンドレ ロット及びエディス ワイデ著、「フォトグラフィック・シルバー・ハライド・ディヒュージョン・プロセシズ」を参照し得る。
【0033】
本発明において、物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層の間に、特開平3−116151号公報記載の水膨潤性中間層、同平4−282295号公報に記載の疎水性重合体ビーズを含有する中間層を設けてもよい。
【0034】
【実施例】
以下、本発明を実施例にて詳細に説明する。
アルミニウム支持体の電解粗面化処理及び陽極酸化は米国特許第5,427,889号公報に記載の方法に従って、平均直径約5μmのプラート上に直径0.03〜0.30μmのピットを100μm2当たり約5,600個有し、かつこれらのピットの平均直径が0.08μmである厚さ0.30mmのアルミニウム板を得た。このアルミ板は粗面化処理後に陽極酸化したものであり、平均粗さ(Ra)は0.5〜0.6μmであった。陽極酸化膜量は2.1g/m2であった。
【0035】
このアルミニウム支持体に硫化パラジウム核液を塗布し、その後乾燥した。物理現像核層に含まれる核量は3mg/m2であった。
【0036】
ハロゲン化銀乳剤の調製は、保護コロイドとしてアルカリ処理ゼラチンを用い、コントロールダブルジェット法で平均粒径0.2μmの、ヘキサクロロイリジウム(IV)酸カリウムを銀1モル当たり0.006ミリモルドープさせた臭化銀15モル%、ヨウ化銀0.4モル%の塩ヨウ臭化銀乳剤を調製した。その後、この乳剤をフロキュレーションさせ、洗浄した。さらにこの乳剤に硫黄金増感を施した後、安定剤を添加し、赤色領域に分光感度を持つ増感色素を銀1g当たり3mg用いて分光増感した。
【0037】
このようにして作成したハロゲン化銀乳剤に界面活性剤を加えて塗布液を作成した。この乳剤層塗布液を前記物理現像核が塗布されたアルミニウム支持体上に銀量が2g/m2、ゼラチン量が2.5g/m2になるように塗布乾燥して平版印刷材料試料を得た。
【0038】
上記平版印刷材料を633nmの赤色LDレーザーを光源とする出力機で画像出力し、次に製版用プロセッサー(デュポン社製SLT−85N自動現像機)で処理して平版印刷版を作成した。製版用プロセッサーは、現像処理工程(21℃、15秒間浸漬)、水洗処理工程(35℃の水洗液を10秒間シャワー噴射しながらスクラブローラで乳剤層をウオッシュオフする)、仕上げ処理工程(21℃、5秒間シャワー)及び乾燥工程から構成されている。水洗処理工程は、貯留タンクに貯留された30リットルの水洗液をポンプで循環させて、平版印刷版にシャワー噴射した後、濾過フィルターで濾過して貯留タンクに回収し再使用するクローズドタイプになっている。
【0039】
用いた現像液、水洗液及び仕上げ液の組成は次の通りである。
<現像液>
水酸化ナトリウム 20g
ハイドロキノン 20g
1−フェニル−3ピラゾリジノン 2g
無水亜硫酸ナトリウム 80g
N-メチルエタノールアミン 6g
チオ硫酸ナトリウム(5水塩) 8g
エチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩 5g
脱イオン水で1000mlとする。
pH(25℃)=13.4
【0040】
<水洗液>
2−メルカプト−5−nヘプチル−オキサジアゾール 0.5g
トリエタノールアミン 13g
重亜硫酸ナトリウム 10g
リン酸二水素カリウム 40g
タンパク質分解酵素 1g
水を加えて全量を1000ccに調整する。pHは6.0に調整した。
タンパク質分解酵素として、ビオプラーゼAL−15(細菌プロティナーゼ、長瀬産業(株)製)を用いた。
【0041】
<仕上げ液A>
アラビアゴム 10g
リン酸二水素ナトリウム 20g
硝酸ナトリウム 20g
トリエタノールアミン 5g
2ーメルカプト-5ーnヘプチルオキサジアゾール 0.5g
脱イオン水で1000mlとする。
水酸化ナトリウムにてpHは6.5に調整した。
【0042】
<仕上げ液B>
仕上げ液Aにポリエチレングリコール(平均分子量300)を50g加えた。
<仕上げ液C>
仕上げ液Aにポリエチレングリコール(平均分子量1500)を50g加えた。
<仕上げ液D>
仕上げ液Aにプロピレングリコールを50g加えた。
<仕上げ液E>
仕上げ液Aにジプロピレングリコールを50g加えた。
<仕上げ液F>
仕上げ液Aにトリプロピレングリコールを50g加えた。
<仕上げ液G>
仕上げ液Aにポリプロピレングリコール(平均分子量400)を50g加えた。
<仕上げ液H>
仕上げ液Aにポリプロピレングリコール(平均分子量650)を50g加えた。
<仕上げ液I>
仕上げ液Aにポリプロピレングリコール(平均分子量1000)を50g加えた。
<仕上げ液J>
仕上げ液Aにポリプロピレングリコールグリセリンエーテル(平均分子量300)を50g加えた。
<仕上げ液K>
仕上げ液Aにプロピレングリコールモノブチルエーテルを50g加えた。
【0043】
上記記載の方法で作成された平版印刷版を、印刷機スプリント26(小森コーポレーション社製オフセット印刷機の商標)、インキ(東洋インキ(株)社製のTOYOハイエコー紅MZ)及び給湿液(日研化学研究所(株)社製のアストロマーク3)を使用して印刷した。画像部の親油性の評価として、刷り出しから何枚でインキが正常に乗るかをインキ乗り枚数として表した。また、非画像部の親水性の評価として、水を送らずに印刷を行い印刷版を全面インキで覆った後水を送り、非画像部が何枚でインキが取れるかをインキ脱離枚数で表した。さらに、非画像部の親水性の別の評価として100枚印刷後、版を印刷機に装着したまま停機をし、1時間後に印刷したときに汚れが発生するかどうかで評価した。評価の結果を表1に示す。
【0044】
【表1】
Figure 0003778749
【0045】
表1の結果から明らかなように、本発明の仕上げ液で処理をした版は、インキ乗り枚数、脱離枚数とも50枚以下で、しかも印刷機停機後の汚れの発生もない。一方、比較の仕上げ液では、インキ乗り、インキ脱離、停機後の汚れの全てを満足する事ができない。
【0046】
【発明の効果】
分子量が700以下でかつプロピレンオキシ基を1から11の範囲で含む化合物を含有することを特徴とする仕上げ液によって、非画像部のインキ汚れを改善しつつ、同時に画像部に高いインキ受理性を持たせるアルミニウム板を支持体とする銀錯塩拡散転写法を利用した平版印刷版の仕上げ液を達成することができた。

Claims (1)

  1. 粗面化され陽極酸化されたアルミニウム支持体上に物理現像核を担持し、更にその上にハロゲン化銀乳剤層を設けた銀錯塩拡散転写法を利用した平版印刷版の仕上げ液であって、該仕上げ液が保護コロイドと、分子量が700以下でかつプロピレンオキシ基を1から11の範囲で含む化合物であって、該化合物がプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコールもしくはその末端がアルキル基に置換されたエーテル類、グリセリン骨格のポリプロピレングリコールエーテルの中から選ばれた化合物の少なくとも1つを含有することを特徴とする仕上げ液。
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