JP3778157B2 - カルシウム強化飲料用分散剤、これを用いてなるカルシウム分散スラリー及びカルシウム強化飲料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、カルボキシメチルセルロース(以下、「CMC」ともいう。)を含有してなるカルシウム強化飲料用分散剤(以下、単に「分散剤」ともいう。)に関し、詳しくは、例えば、牛乳などの飲料にカルシウムをさらに添加してカルシウム強化飲料(カルシウムが強化(増量)された飲料)を製造するに際し、液中でのカルシウムの分散安定性を良好にせしめる分散剤、これを用いたカルシウム分散スラリー及びカルシウム強化飲料に関するものである。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】
近年、カルシウム摂取量不足が高齢者の骨粗鬆症の増加や若年者の骨折多発化などの原因として問題視されており、このカルシウムの摂取量不足を解消するために、カルシウム強化食品が販売されるようになった。
【0003】
例えば、牛乳に添加するカルシウム強化剤としては、乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウムなどの水溶性の有機酸カルシウムや、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムなどの水不溶性カルシウムがあるが、カルシウム強化度や、牛乳中のタンパク質の安定性から、炭酸カルシウムのような水不溶性のカルシウムを用いるほうが良いとされ、応用例も増えている。
【0004】
しかしながら、炭酸カルシウムは比重が高いため、液中、短時間で沈殿し、すなわち懸濁安定性に問題があり、飲料にカルシウムを添加した後安定状態を保持することが困難であるという問題があった。
【0005】
この問題を解決する方法として、特開平5−319817号公報には、ショ糖脂肪酸エステルなどのHLBが10以上の親水性乳化剤を添加する方法が提案されている。また、特開平7−111879号公報には、スラリー状炭酸カルシウムにショ糖脂肪酸エステルを添加粉砕し、特定の粒径、幾何標準偏差を持つスラリーとする方法が提案されている。
【0006】
しかしながら、このように分散剤としてショ糖脂肪酸エステルを単独で使用する方法では、カルシウム、水及び分散剤からなるカルシウム分散スラリーの分散状態を長期間安定して持続させる効果が十分でなかった。
【0007】
これに対し、特開2002−223736号公報には、カルボキシメチルセルロース塩を含有してなり、スラリーの分散状態の長期安定性を従来のものより向上させたカルシウム強化飲料用分散剤が開示されている。しかし、この分散剤によってスラリーの完全な分散状態が維持されるのは2週間前後であり、その後は分離が生じ始めるため、分散状態の長期安定性をさらに向上させる分散剤が望まれている。
【0008】
【特許文献1】
特開平5−319817号公報
【0009】
【特許文献2】
特開平7−111879号公報
【0010】
【特許文献3】
特開2002−223736号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、カルシウム分散スラリーの分散状態をより長期間持続させることができるカルシウム強化飲料用分散剤を提供するところにある。
【0012】
本発明は、また、かかる分散剤を使用して得られる、保存性に優れるカルシウム分散スラリー、及びカルシウム強化飲料を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明のカルシウム強化飲料用分散剤は、上記課題を解決するために、25℃における2重量%水溶液の粘度が1000〜5000mpa・sであり、かつ、エーテル化度が0.3〜0.7のカルボキシメチルセルロースと、25℃における2重量%水溶液の粘度が0.5〜10mpa・sであり、かつ、エーテル化度が0.6〜1.0のカルボキシメチルセルロースとが、重量比で50〜90:50〜10の割合で配合されてなり、その配合後の、25℃における2重量%水溶液の粘度が500〜1000mpa・sであり、かつ、エーテル化度が0.5〜0.8であるカルボキシメチルセルロースを含有するものとする(請求項1)。
【0014】
本発明のカルシウム分散スラリーは、炭酸カルシウムと上記本発明のカルシウム強化飲料用分散剤と水とを、重量%で1〜50%:0.01〜10%:40〜98.99%(但し、合計で100重量%)の割合で含有するものとする(請求項2)。
【0015】
本発明のカルシウム強化飲料は、上記カルシウム強化飲料用分散剤を使用してカルシウムを強化したカルシウム強化飲料であって、飲料中に分散剤としてのカルボキシメチルセルロースを0.00002〜2重量%含有するものとする(請求項3)。
【0016】
なお、上記における「重量%」及び「重量比」は、水を含まないカルボキシメチルセルロース(すなわちCMC無水物)の重量を基準とした割合を示すものとし、以下同様とする。
【0017】
【発明の実施の形態】
[カルシウム強化飲料]
本発明でいう「カルシウム強化飲料」には、牛乳、ヨーグルト等のもともとカルシウムを含有している飲料に対して有機酸カルシウムまたは無機塩形態のカルシウムをさらに添加したもののほか、本来カルシウムを全く含まないか、あるいは含んでもごく僅かな飲料(清涼飲料、果実飲料など)に対してカルシウムを添加したものも含まれる。
【0018】
カルシウム源としては炭酸カルシウムが代表的であるので、以下では、この炭酸カルシウムを用いるものとして説明するが、これに限定されるものではなく、炭酸カルシウム以外では、例えばリン酸カルシウムが使用可能である。
【0019】
本発明において添加されるスラリー状炭酸カルシウムを得る方法としては、例えば、消石灰水懸濁液に炭酸ガスを導通して得る方法、卵殻または珊瑚もしくは貝殻を洗浄精製した後、焼成またはそのまま湿式粉砕によりスラリー状とする方法などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
[カルボキシメチルセルロース]
本発明において使用するカルボキシメチルセルロースは、上記のように、25℃における2重量%水溶液の粘度が1000〜5000mpa・sであり、かつ、エーテル化度が0.3〜0.7のカルボキシメチルセルロースと、25℃における2重量%水溶液の粘度が0.5〜10mpa・sであり、かつ、エーテル化度が0.6〜1.0のカルボキシメチルセルロースとが、重量比で50〜90:50〜10の割合で配合され、その配合後の、25℃における2重量%水溶液の粘度が500〜1000mpa・sであり、かつ、エーテル化度が0.5〜0.8であるものである。なお、カルボキシメチルセルロースとしては、例えばナトリウム塩が使用できるが、これに限定されない。
【0021】
このような特定の2種のCMCを組み合わせて使用することにより、カルシウム分散スラリーの低粘度化、平均粒子径の微細化が図られるのみならず、スラリーの粘度及び分散状態の長期安定性をより向上させることができる。
【0022】
[カルシウム強化飲料用分散剤の調製等]
本発明の分散剤は上記の条件を満たす2種のCMCを所定の割合で配合し、混合することにより得られる。また、得られた分散剤を水に溶解させて分散剤水溶液を調製し、次に、スラリー状炭酸カルシウムに添加し、ホモジナイザー等の分散装置で分散させることにより炭酸カルシウム分散スラリーを得ることが出来る。上記分散剤水溶液を得るには、例えば、分散剤を水道水に添加し、70℃で加熱溶解させた後、25℃まで冷却すればよい。
【0023】
本発明の分散剤が添加された炭酸カルシウム分散スラリーにおける各成分の割合(重量%)は、CaCO3:分散剤:水=1〜50%:0.01〜10%:40〜98.99%(但し、合計で100%)であることが好ましく、3〜20%:0.02〜5%:75〜96.98%であることがさらに好ましい。
【0024】
炭酸カルシウムに対する分散剤の添加量は、固形分重量比で分散剤/炭酸カルシウム=0.01〜6の範囲内になるよう選択するのが望ましい。0.01未満の場合、分散安定性が低下するという問題が生じる可能性があり、6を超える場合、CMC特有の味やにおいが著しくなるという問題が生じる可能性がある。
【0025】
なお、分散スラリー粘度を抑制するため、コハク酸モノグリセリド、クエン酸モノグリセリド、レシチンなどのイオン性の乳化剤を併用したり、モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステルなどの乳化剤を併用することもできる。
【0026】
本発明の分散剤は、混合攪拌槽、ラインミキサーなどによって、スラリー状炭酸カルシウムと混合することができる。そして、この混合物を粉砕して、炭酸カルシウム粒子の平均粒径が1.0μm以下のスラリーを調製する。平均粒径が1.0μmを超えると、分散安定性が低下するという問題が生じる可能性がある。なお、粉砕は、ロールミル、ボールミル、コボールミル、ビーズミルなどの公知の粉砕機を使用して行うことができる。
【0027】
このようにして得られたカルシウム分散スラリーを乾燥粉末化してカルシウム含有粉末を調製してもよい。カルシウム分散スラリーを乾燥粉末化することにより、長期保存時のスラリー腐敗を回避できるだけでなく、各方面の使用先に輸送する際の充填容器費、冷蔵設備費、冷蔵費、輸送費などの流通コストを減少させることができる。
【0028】
カルシウム分散スラリーの乾燥に用いられる乾燥機については特に制限はなく、公知の方法が使用できるが、各種添加剤の変質等の悪影響を与えないように極めて短時間に乾燥できるものが望ましい。この観点から乾燥機としては、スプレードライヤー、スラリードライヤーなどの液滴噴霧型乾燥機を用いるのが望ましく、凍結乾燥などの手法を用いることもできる。
【0029】
カルシウム分散スラリーの粉末化にあたっては、糖類化合物などの皮膜形成剤を併用することもできる。皮膜形成剤としては、果糖、ブドウ糖などの単糖類、ショ糖、乳糖などの二糖類、デキストリンなどの多糖類、及び、ソルビットなどの糖アルコールなどが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよいし、2種以上混合してもよい。
【0030】
上記のようにして調製したカルシウム分散スラリーやカルシウム含有粉末は、飲料または水に添加して分散させることにより、カルシウム強化飲料とすることができる。このカルシウム分散スラリーは水中における分散性が極めて良好であり、また、カルシウム含有粉末も水中における再分散性が極めて良好である。従って、両者とも、特殊な分散機や攪拌機などを用いずとも、通常用いられる攪拌混合槽を用いて、容易に飲料または水中に分散させることができる。
【0031】
カルシウム分散スラリーやカルシウム含有粉末を添加する飲料の例としては、前述したように、牛乳、加工乳、還元乳、乳飲料の他、清涼飲料、果実飲料などを挙げることができる。
【0032】
スラリー添加量は、飲料100g当りのカルシウム増加量が100〜500mgとなるように選択することが望ましい。カルシウム強化飲料中の分散剤の含有量は、カルボキシメチルセルロースの含量として、通常、0.00002〜2重量%であり、好ましくは0.00005〜1重量%である。0.00002重量%未満の場合、分散安定性が低下するという問題が生じる可能性があり、2重量%を超える場合、分散剤特有のにおいを感じ、また経済的不利を招くという問題が生じる可能性がある。
【0033】
上記のようにして得られたカルシウム強化飲料は、クラリファイヤーなどを用いて異物の除去を行ったり、高温・高圧化にて殺菌処理を行っても良い。
【0034】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0035】
[実施例1]
カルボキシメチルセルロースとして、25℃における2重量%水溶液の粘度が1200mpa・sでエーテル化度0.45のカルボキシメチルセルロース(CMC A)と、25℃における2重量%水溶液の粘度が3.2mpa・sでエーテル化度0.75のカルボキシメチルセルロース(CMC B)とを、重量比で60/40の割合で配合し、カルシウム強化飲料用分散剤を得た。これを水道水に加え、70℃に加熱して完全に溶解させてから、室温まで冷却することにより分散剤水溶液を調製した。この分散剤は、25℃における2重量%水溶液の粘度が770mpa・sであり、エーテル化度が0.57であった。
【0036】
平均粒径が0.3μm以下のスラリー状炭酸カルシウムに、上記分散剤水溶液及び水を添加し、炭酸カルシウム固形分濃度/分散剤濃度=15.0%/0.7%に調整した後、超音波ホモジナイザー(日本精機(株)製、US−600T、最大出力600W)を用いて分散処理を行い、炭酸カルシウム分散スラリーを得た。
【0037】
[実施例2〜4,比較例1〜4]
分散剤として表1に示したCMCからなるものをそれぞれ使用した以外は実施例1と同様にして、炭酸カルシウム分散スラリーを得た。
【0038】
実施例1〜4、及び比較例1〜4で調製した炭酸カルシウム分散スラリーを5℃で保存し、1週間後、2週間後、3週間後の粒度分布(平均粒子径)と粘度を測定し、分散状態を観察した。結果を表1に併記する。
【0039】
なお、平均粒子径(μm)は、島津製作所製レーザ回折式粒度分布測定装置SALD−2000を用い、吸光度が0.050±0.003になる様に分散液を希釈し、測定を行った。
【0040】
粘度(mpa・s)は、東京計器製造所製のB型粘度計(ロータ−No.1、60rpm×60秒)を用いて測定した。なお、カルボキシメチルセルロースの粘度は全て2重量%水溶液の粘度を示す。
【0041】
分散状態は、分離がほとんど確認できないものを「○」、若干離水が認められるものを「△」、離水が認められるものを「×」と評価した。
【0042】
【表1】
【0043】
【発明の効果】
本発明のカルシウム強化飲料用分散剤によれば、特定の2種のCMCを併用したことにより、通常の冷蔵条件で静置しておいても、微細な平均粒子径、低粘度が維持され、分離・沈殿が生じないといった分散安定性の長期持続性が従来よりさらに向上したカルシウム分散スラリーが得られる。
【0044】
上記分散剤を用いたカルシウム強化飲料は、カルシウムの分散安定性がより向上し、保存性に優れたものとなる。
Claims (3)
- 25℃における2重量%水溶液の粘度が1000〜5000mpa・sであり、かつ、エーテル化度が0.3〜0.7のカルボキシメチルセルロースと、25℃における2重量%水溶液の粘度が0.5〜10mpa・sであり、かつ、エーテル化度が0.6〜1.0のカルボキシメチルセルロースとが、重量比で50〜90:50〜10の割合で配合されてなり、
その配合後の、25℃における2重量%水溶液の粘度が500〜1000mpa・sであり、かつ、エーテル化度が0.5〜0.8であるカルボキシメチルセルロースを含有する
ことを特徴とするカルシウム強化飲料用分散剤。 - 炭酸カルシウムと請求項1に記載のカルシウム強化飲料用分散剤と水とを、重量%で1〜50%:0.01〜10%:40〜98.99%(但し、合計で100重量%)の割合で含有するカルシウム分散スラリー。
- 請求項1に記載のカルシウム強化飲料用分散剤を使用してカルシウムを強化したカルシウム強化飲料であって、飲料中に分散剤としてのカルボキシメチルセルロースを0.00002〜2重量%含有するカルシウム強化飲料。
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