JP3777829B2 - 熱現像感光材料の製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は熱現像感光材料の製造方法に関し、特に熱現像感光材料に用いられるハロゲン化銀乳剤の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、製版及び医療現場におけるフィルム処理工程は、露光後、自動現像機を用い、現像液→定着液→水洗または安定化液→乾燥の順で処理を行ういわゆるWET処理と呼ばれる工程が一般的である。しかし、この方式は液を使うことから作業性(重い、汚い、在庫管理)、環境(廃液の発生)の見地から改善を望まれていた。
【0003】
これらを改善するものとして乾式銀塩感材がある。代表的なものとしては、米国特許第3,457,075号に開示された有機銀塩を用い、熱による反応で画像を形成する熱現像感光材料がある。
【0004】
これらの熱現像感光材料は、有機銀塩、ハロゲン化銀及び還元剤を含有し、露光を受けたハロゲン化銀が触媒となって有機銀塩が還元剤により還元され銀画像が形成される。
【0005】
しかしながら、これらの熱現像感光材料は、カブリが高く、又感度が低いという問題があった。それらの要因を本発明者らが鋭意検討した結果、含有されるハロゲン化銀乳剤の製造方法により、特に含有するゼラチン量に大きく影響を受けることが明らかとなった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、高感度で低カブリの熱現像感光材料を提供することであり、更にはそれに用いられるハロゲン化銀乳剤を容易に調製する方法を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記課題は、以下の方法により解決することができた。
【0008】
1.ハロゲン化銀乳剤、有機銀塩を含有する熱現像感光材料の製造方法であって、該ハロゲン化銀乳剤を形成終了後、有機酸及び/または有機銀塩を含む母液に添加する前に、膜分離処理を施して該乳剤中に含有するゼラチンを減量することを特徴とする熱現像感光材料の製造方法。
【0009】
2.前記膜分離処理がクロスフロー型の限外濾過装置を用いることを特徴とする前記1項に記載の熱現像感光材料の製造方法。
【0010】
3.前記ハロゲン化銀乳剤の形成時に使用するゼラチンの平均分子量が50000以下であることを特徴とする前記1項または2項に記載の熱現像感光材料の製造方法。
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
熱現像感光材料には、ハロゲン化銀乳剤及び有機銀塩を含有し、そこに用いられるハロゲン化銀乳剤は、通常のハロゲン化銀感光材料に用いられるハロゲン化銀乳剤の製造方法と同様の方法により調製されたものが用いられてきた。
【0013】
即ち、ゼラチンバインダー水溶液中で、水溶性ハロゲン化合物と水溶性銀塩溶液を混合することによりハロゲン化銀乳剤が形成される。副生する塩を除去するために、ヌーデル水洗法や沈殿脱塩法が用いられる。このようにして得られたハロゲン化銀乳剤を有機酸及び/または有機銀塩を含む母液に添加する。
【0014】
ここでいう母液とは、有機酸をアルカリソープとし、更に水溶性銀塩を添加して有機銀塩とする反応過程の反応液をいい、ハロゲン化銀乳剤は反応過程の何れの位置で添加しても良い。このようにして得られた有機銀塩とハロゲン化銀乳剤を含有する分散物から副生する塩を除去した後、有機溶剤系の分散物とし、必要に応じて種々の添加剤が加えられて塗布液が調製され、支持体上に塗布することによって熱現像感光材料が形成される。
【0015】
発明者らが鋭意検討した結果、ハロゲン化銀乳剤を有機酸及び/または有機銀塩を含む母液に添加する際に、ハロゲン化銀乳剤調製時のゼラチンを膜分離処理を施して極力減量したハロゲン化銀乳剤を用いて熱現像感光材料とすることにより、熱現像感光材料のカブリが減少し、かつ感度が著しく向上することを見出したものである。
【0016】
これらの効果についての技術的理由は定かではないが、形成されたハロゲン化銀乳剤中のハロゲン化銀粒子の表面には、ゼラチンが保護コロイドとして吸着しているが、この量が多いと外気中の温湿度等の影響を受けやすくなり、また膜分離処理によるゼラチン量の減少方法を用いることにより、沈殿法等の脱塩法に較べ、ハロゲン化銀粒子表面への種々のダメージが少ないことによるものと推察している。又、膜分離処理はエネルギーが少なくて効率的にゼラチン量を減少させられる点で非常に有利である。
【0017】
使用するゼラチンの平均分子量は50000以下であることが好ましく、平均分子量3万以下が更に好ましく、平均分子量2万以下が最も好ましい。
【0018】
又、本発明の膜分離処理を施す前に酵素分解を行って平均分子量を下げることも好ましい態様の1つである。
【0019】
即ち、本発明における有利性は、膜分離法によりハロゲン化銀乳剤中に含有するゼラチン量を減少し、その結果添加されるゼラチン量を減することにより、熱現像感光材料の写真特性の向上を図ることができ、かつ低コストで容易に調製しうることができたものである。
【0020】
ハロゲン化銀乳剤を有機酸及び/または有機銀塩を含む母液が存在する反応容器に添加する形態は、少なくとも1度分離膜を通過する過程を含んでいれば、どのような形態でも適用することができる。その中でも特にクロスフロー方式の分離機構であることが好ましい。具体的な装置の形態としては、例えばハロゲン化銀乳剤を形成する反応容器の外部に限外濾過装置を有する外部循環ループを具備させた形態、または該反応容器から一方的に母液が存在する反応容器に添加ラインを設け、その途中に限外濾過装置を有する形態などが上げられるが、後者の形態の方がより好ましい。
【0021】
分離膜の分画分子量としては公知のあらゆるものを使用可能であるが、ハロゲン化銀乳剤形成時に使用したゼラチンの低分子量成分の多くが排出される分画分子量であることが好ましく、具体的には、100000以上であることが好ましく、150000以上であることが更に好ましい。しかし分画分子量の上限としては、ハロゲン化銀粒子が排出されない大きさであることが好ましい。
【0022】
本発明で好ましく使用されるクロスフロー型の限外濾過装置は、公知の種々の形態のものを使用することが可能で、公知の種々の形態で具備することが可能である。本発明ではその中でも、中空糸膜を内部に有する限外濾過装置を用いることが好ましい。本発明で好ましく使用される反応容器、及び限外濾過装置の上記以外の点については、上記特公昭59−43727号公報等を参考にすることができる。
【0023】
次に、限外濾過装置が反応容器に接続された外部循環経路中に具備する形態で結晶成長過程に並行して連続的に濃縮を行う場合の具体的な一例としての方法を、図1の概念図を用いて述べる。
【0024】
図1において、反応容器1には、最初に分散媒と共にハロゲン化銀粒子を含むハロゲン化銀乳剤2を含有している。該ハロゲン化銀乳剤を撹拌するための機構3は、回転可能な軸に分散翼が付設されたものとして図示されているが、この機構を任意の常用の形状とすることが可能である。注加ノズル位置は任意の位置に設置することが可能であるが、反応容器下部から液中添加される位置に設置することが好ましい。
【0025】
反応容器内に含まれる物質の容量は、前記分散媒を含むハロゲン化銀乳剤の一部を送り循環ライン6(限外濾過装置7に至る)により図示されるようにして取り出すことによって調節することができる。限外濾過装置7は、排出ライン8により図示されるようにして分散媒の一部を分離することを通じて、受け取ったハロゲン化銀乳剤の容量を低下し、その間、保留物と呼ばれる残留ハロゲン化銀乳剤の内部においてハロゲン化銀粒子が保持される。この時、限外濾過装置内部にある分離膜の分画分子量、及び分散媒中に含まれるゼラチンの分子量によって、ゼラチンを排出することが可能である。このようにして容量の低下したハロゲン化銀乳剤、即ち、保留物を戻り循環ライン9により図示されるようにして反応容器に戻す。
【0026】
次に、限外濾過装置及びその操作方法について詳細に説明する。限外濾過装置は、ハロゲン化銀粒子の製造時に特別な利用性をもつ手段として従来から広く知られている。一般に膜が用いられ、これは不要の物質は通過させ、そしてハロゲン化銀粒子のような必要な物質は通過させないものである。この選択的な分離は、特定のサイズ以下の分子を全て選択的に通し、そしてこれより大きい分子が残留するように作られている、合成半透性膜に対し溶液を液圧で押し付けることにより、遂行される。
【0027】
限外濾過は、半透性限外濾過膜を横切って圧力差ができるように、反応容器内の分散液を該半透性限外濾過膜と接触させながら循環させることによって実施するのが好ましい。一般に、膜は特定の寸法以下の分子のみ透過することができ、かつそれより大きい分子及びハロゲン化銀粒子を分散液中に保持するような寸法の細孔を含む。
【0028】
限外濾過膜に接触する乳剤の圧力は、広範囲に変化させてよい。代表的には、本発明の実施については、限外濾過膜に接触する反応容器内の圧力は、好ましくは約100palg以上500palg以下で、代表的には約100palg(7.03kg/cm2)であり、滞留物の出口圧力は、好ましくは約5palg以上10palg以下で、代表的には約10palg(0.703kg/cm2)以下程度である。膜を横切る圧力差は代表的には約40〜60palg(2.81〜4.22kg/cm2)である。もちろん、反応容器及び限外濾過膜の構造、乳剤の粘度、滞留物の濃度及び所望の滞留物の純度に応じて、これらの範囲外の圧力で操作することは当業者が任意に設定してよいことである。
【0029】
限外濾過に使用する膜は、代表的には、極めて微細な多孔構造の極めて薄い壁をこれにより厚い多孔質構造上に支持して含む異方性膜である。有用な膜は、種々の高分子物質、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリカルボン酸ビニル、ポリ蟻酸ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリスルホン、ポリビニルエーテル、ポリアクリルアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリフルオロアルキレン(例えば、ポリテトラフルオロエチレン)、及びポリ弗化ビニリデン、ならびにセルロース系ポリマー、例えば、セルロース及びセルロースエステル、例えば、酢酸セルロース、酪酸セルロース及び酢酪酸セルロース製の中から選ばれた任意のものであることができる。
【0030】
本発明に用いられる有機銀塩を形成する有機酸としては、例えば没食子酸、シュウ酸、ベヘン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、オレイン酸、カプロン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マレイン酸、リノール酸等が挙げられるが、好ましくは脂肪族カルボン酸、例えばパルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸等であり、特に好ましくはベヘン酸である。
【0031】
水酸化アルカリ水溶液としては、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液が好ましく用いられる。
【0032】
本発明の有機銀塩分散物が含有する有機銀塩粒子は平均粒径が1μm以下で、かつ単分散であることが好ましい。有機銀塩の平均粒径とは、有機銀塩の粒子が例えば球状、棒状、或いは平板状の粒子の場合には、有機銀塩粒子の体積と同等の球を考えたときの直径をいう。平均粒径は好ましくは0.01〜0.8μm、特に0.05〜0.5μmが好ましい。ここでいう単分散とは、下記式で求められる単分散度が40以下をいう。更に好ましくは1〜30である。
【0033】
単分散度=(粒径の標準偏差)/(粒径の平均値)×100
有機銀塩粒子の形状の測定方法としては、有機銀塩分散物の透過型電子顕微鏡像より求めることができる。単分散性を測定する別の方法として、有機銀塩粒子の体積荷重平均直径の標準偏差を求める方法があり、この場合、体積荷重平均直径で割った値の百分率(変動係数)が、好ましくは100%以下、より好ましくは80%以下、さらに好ましくは50%以下である。
【0034】
測定方法としては、例えば溶液中に分散した有機銀塩粒子にレーザー光を照射し、その散乱光のゆらぎの時間変化に対する自己相関係数を求めることにより得られた粒子サイズ(体積荷重平均直径)から求めることができる。
【0035】
本発明で言う粗大粒子とは、形状の如何に拘わらず粒子内の最も離れた2点の距離が5μm以上のものを指す。
【0036】
本発明に用いられるハロゲン化銀粒子の平均粒子サイズは小さい方が好ましく、平均粒子サイズが0.1μm以下、より好ましくは0.01μm〜0.1μm、特に0.02μm〜0.08μmが好ましい。ここでいう粒子サイズとは、ハロゲン化銀粒子が立方体或いは八面体のいわゆる正常晶である場合には、ハロゲン化銀粒子の稜の長さをいう。又、正常晶でない場合、例えば球状、棒状、或いは平板状の粒子の場合には、ハロゲン化銀粒子の体積と同等な球を考えたときの直径をいう。またハロゲン化銀は単分散であることが好ましい。ここでいう単分散とは、下記式で求められる単分散度が40以下をいう。更に好ましくは30以下であり、特に好ましくは20%以下となる粒子である。
【0037】
単分散度=(粒径の標準偏差)/(粒径の平均値)×100
ハロゲン化銀粒子の形状については、特に制限はないが、ミラー指数〔100〕面の占める割合が高いことが好ましく、この割合が50%以上、更には70%以上、特に80%以上であることが好ましい。ミラー指数〔100〕面の比率は増感色素の吸着における〔111〕面と〔100〕面との吸着依存性を利用したT.Tani,J.Imaging Sci.,29,165(1985)により求めることができる。
【0038】
またもう一つの好ましいハロゲン化銀の形状は、平板粒子である。ここでいう平板粒子とは、投影面積の平方根を粒径rμmとして垂直方向の厚みhμmした場合のアスペクト比=r/hが3以上のものをいう。その中でも好ましくはアスペクト比が3以上50以下である。また粒径は0.1μm以下であることが好ましく、さらに0.01μm〜0.08μmが好ましい。これらは米国特許第5,264,337号、第5,314,798号、第5,320,958号等に記載されており、容易に目的の平板状粒子を得ることができる。
【0039】
ハロゲン組成としては特に制限はなく、塩化銀、塩臭化銀、塩沃臭化銀、臭化銀、沃臭化銀、沃化銀のいずれであってもよい。本発明に用いられる写真乳剤は、P.Glafkides著Chimie et Physique Photographique(Paul Montel社刊、1967年)、G.F.Duffin著 Photographic Emulsion Chemistry(The Focal Press刊、1966年)、V.L.Zelikman et al著Making and Coating Photographic Emulsion(The Focal Press刊、1964年)等に記載された方法を用いて調製することができる。即ち、酸性法、中性法、アンモニア法等のいずれでもよく、又可溶性銀塩と可溶性ハロゲン塩を反応させる形成としては、片側混合法、同時混合法、それらの組合せ等のいずれを用いてもよい。
【0040】
本発明に用いられるハロゲン化銀には、元素周期律表の6族から10族に属する金属錯対又は錯体イオンを含有することが好ましい。上記の金属としては、W、Fe、Co、Ni、Cu、Ru、Rh、Pd、Re、Os、Ir、Pt、Auが好ましく、中でも印刷製版用感光材料に使用される場合はRh、Re、Ru、Ir、Osから選ばれることが好ましい。
【0041】
これらの金属は錯体の形でハロゲン化銀に導入できる。本発明においては、遷移金属錯体又は錯体イオンは、下記一般式で表される6配位が好ましい。
【0042】
一般式〔ML6〕m
式中、Mは元素周期表の6〜10族の元素から選ばれる遷移金属、Lは架橋配位子、mは0、−、2−又は3−を表す。Lで表される配位子の具体例としては、ハロゲン化物(弗化物、塩化物、臭化物及び沃化物)、シアン化物、シアナート、チオシアナート、セレノシアナート、テルロシアナート、アジド及びアコの各配位子、ニトロシル、チオニトロシル等が挙げられ、好ましくはアコ、ニトロシル及びチオニトロシル等である。アコ配位子が存在する場合には、配位子の一つ又は二つを占めることが好ましい。Lは同一でもよく、また異なっていてもよい。
【0043】
Mとして特に好ましい具体例は、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、レニウム(Re)及びオスミウム(Os)である。
【0044】
以下に遷移金属配位錯体イオンの具体例を示す。
【0045】
1:〔RhCl6〕3-
2:〔RuCl6〕3-
3:〔ReCl6〕3-
4:〔RuBr6〕3-
5:〔OsCl6〕3-
6:〔CrCl6〕3-
7:〔Ru(NO)Cl5〕2-
8:〔RuBr4(H2O)〕2-
9:〔Ru(NO)(H2O)Cl4〕-
10:〔RhCl5(H2O)〕2-
11:〔Re(NO)Cl5〕2-
12:〔Re(NO)CN5〕2-
13:〔Re(NO)ClCN4〕2-
14:〔Rh(NO)2Cl4〕-
15:〔Rh(NO)(H2O)Cl4〕-
16:〔Ru(NO)CN5〕2-
17:〔Fe(CN)6〕3-
18:〔Rh(NS)Cl5〕2-
19:〔Os(NO)Cl5〕2-
20:〔Cr(NO)Cl5〕2-
21:〔Re(NO)Cl5〕-
22:〔Os(NS)Cl4(TeCN)〕2-
23:〔Ru(NS)Cl5〕2-
24:〔Re(NS)Cl4(SeCN)〕2-
25:〔Os(NS)Cl(SCN)4〕2-
26:〔Ir(NO)Cl5〕2-
これらの金属錯体又は錯体イオンは一種類でもよいし、同種の金属及び異種の金属を二種以上併用してもよい。これらの金属のイオン又は錯体イオンの含有量としては、一般的にはハロゲン化銀1モル当たり1×10-9〜1×10-2モルが適当であり、好ましくは1×10-8〜1×10-4モルである。これらの金属錯体又は錯体イオンを提供する化合物は、ハロゲン化銀粒子形成時に添加し、ハロゲン化銀粒子中に組み込まれることが好ましく、ハロゲン化銀粒子の調製、つまり核形成、成長、物理熟成、化学増感の前後のどの段階で添加してもよいが、特に核形成、成長、物理熟成の段階で添加するのが好ましく、更には核形成、成長の段階で添加するのが好ましく、最も好ましくは核形成の段階で添加する。添加に際しては、数回に渡って分割して添加してもよく、ハロゲン化銀粒子中に均一に含有させることもできるし、特開昭63−29603号、特開平2−306236号、同3−167545号、同4−76534号、同6−110146号、同5−273683号等に記載されている様に粒子内に分布を持たせて含有させることもできる。好ましくは粒子内部に分布をもたせることができる。これらの金属化合物は、水或いは適当な有機溶媒(例えば、アルコール類、エーテル類、グリコール類、ケトン類、エステル類、アミド類)に溶解して添加することができるが、例えば金属化合物の粉末の水溶液もしくは金属化合物とNaCl、KClとを一緒に溶解した水溶液を、粒子形成中の水溶性銀塩溶液又は水溶性ハライド溶液中に添加しておく方法、或いは銀塩溶液とハライド溶液が同時に混合されるとき第3の水溶液として添加し、3液同時混合の方法でハロゲン化銀粒子を調製する方法、粒子形成中に必要量の金属化合物の水溶液を反応容器に投入する方法、或いはハロゲン化銀調製時に予め金属錯体又は錯体イオンをドープしてある別のハロゲン化銀粒子を添加して溶解させる方法等がある。特に、金属化合物の粉末の水溶液もしくは金属化合物とNaCl、KClとを一緒に溶解した水溶液を水溶性ハライド溶液に添加する方法が好ましい。粒子表面に添加する時には、粒子形成直後又は物理熟成時途中もしくは終了時又は化学熟成時に必要量の金属化合物の水溶液を反応容器に投入することもできる。
【0046】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様はこれに限定されない。
【0047】
実施例1
(ハロゲン化銀乳剤Aの調製)
水900ml中に平均分子量120000のオセインゼラチン7.5g及び臭化カリウム10mgを溶解して温度35℃、pHを3.0に合わせた後、硝酸銀74gを含む水溶液370mlと(98/2)のモル比の臭化カリウムと沃化カリウムを含む水溶液(前記硝酸銀に等モル量)及びK2〔Ir(NO)Cl5〕を銀1モル当たり1×10-4モルを、pAg7.7に保ちながらコントロールドダブルジェット法で10分間かけて添加した。その後4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデンを添加しNaOHでpHを5に調整して平均粒子サイズ0.06μm、粒子サイズの変動係数11%、〔100〕面比率87%の立方体沃臭化銀粒子を得た。この乳剤にゼラチン凝集剤を用いて凝集沈降させ脱塩処理を行い、その後フェノキシエタノール0.1gを加え、pH5.9、pAg7.5に調整した。更にチオ硫酸ナトリウム及び塩化金酸で最適に化学増感を施し、ハロゲン化銀乳剤Aを得た。
【0048】
(有機脂肪酸Na溶液の調製)
945mlの純水にベヘン酸32.4g、アラキジン酸9.9g、ステアリン酸5.6gを90℃で溶解した。次に高速で撹拌しながら1.5Mの水酸化ナトリウム水溶液98mlを添加した。次に濃硝酸0.93mlを加えた後、55℃に冷却して30分撹拌させて有機脂肪酸Na溶液を得た。
【0049】
(有機脂肪酸銀とハロゲン化銀乳剤Aを含む感光性乳剤1の調製)
上記の有機脂肪酸Na溶液に上記ハロゲン化銀乳剤Aを15.1g添加し水酸化ナトリウム溶液でpH8.1に調整した後に、1Mの硝酸銀溶液147mlを7分間かけて加え、更に20分撹拌し限外濾過により水溶性塩類を除去した。次にこの水系混合物に撹拌しながらポリ酢酸ビニルの酢酸n−ブチル溶液(1.2wt%)100gを徐々に添加して静置し分散物のフロックを形成後、水を取り除き、更に2回の水洗と水の除去を行った。ポリビニルブチラール(平均分子量3000)の2.5wt%のメチルエチルケトン溶液60gを撹拌しながら加えた後、更にポリビニルブチラール(平均分子量4000)60g及びメチルエチルケトンを添加して混合した後に、4000psiで分散させ、感光性乳剤1を得た。
【0050】
(感光性乳剤2の調製)
図1に示す反応容器を用いてハロゲン化銀乳剤Aを上述した調製方法で調製した後、該ハロゲン化銀乳剤を有機脂肪酸Na溶液を含む母液に添加する前に、限外濾過装置を20分間稼動させた。この時使用した分離膜の分画分子量は110000であった。その際、排出される分散媒と同量の水を添加しながら行った。この変更点以外の工程は上記感光性乳剤1の調製と同様に行い、感光性乳剤2を得た。
【0051】
(感光性乳剤3の調製)
ハロゲン化銀乳剤Aを調製する際のゼラチンを、オセインゼラチンではなく平均分子量46000の低分子量ゼラチンに変更した以外は上記感光性乳剤2の調製と同様に行い、感光性乳剤3を得た。
【0052】
(感光性乳剤4の調製)
ハロゲン化銀乳剤Aを調製する際のゼラチンを、オセインゼラチンではなく平均分子量25000の低分子量ゼラチンに変更した以外は上記感光性乳剤2の調製と同様に行い、感光性乳剤4を得た。
【0053】
(感光性乳剤5の調製)
ハロゲン化銀乳剤Aを調製する際のゼラチンを、オセインゼラチンではなく平均分子量18000の低分子量ゼラチンに変更した以外は上記感光性乳剤2の調製と同様に行い、感光性乳剤5を得た。
【0054】
(感光性乳剤6の調製)
ハロゲン化銀乳剤調製後、プロテアーゼの0.1%水溶液200mlを添加し、45℃で15分間撹拌させた後に限外濾過装置を稼動させた。この変更点以外の工程は上記感光性乳剤5の調製と同様に行い、感光性乳剤6を得た。
【0055】
(感光性乳剤7の調製)
ハロゲン化銀乳剤を形成する反応容器は感光性乳剤1を調製する際に用いたものを使用し、有機脂肪酸Na溶液を含む母液への添加ライン中に、分画分子量110000の分離膜を有する限外濾過装置を具備する態様で調製を行った。添加直後に、排出される分散媒と同量の水を母液中へ添加した。更にハロゲン化銀乳剤を調製する際のゼラチンをオセインゼラチンではなく平均分子量18000の低分子量ゼラチンに変更した。この変更点以外の工程は上記感光性乳剤1の調製と同様に行い、感光性乳剤7を得た。
【0056】
〈PET下引済み写真用支持体の作製〉
市販の2軸延伸熱固定済みの厚さ100μmのPETフィルムの両面に8W/m2・分のコロナ放電処理を施し、一方の面に下記下引塗布液a−1を乾燥膜厚0.8μmになるように塗設し乾燥させて下引層A−1とし、また反対側の面に下記帯電防止加工下引塗布液b−1を乾燥膜厚0.8μmになるように塗設し乾燥させて帯電防止加工下引層B−1とした。
【0057】
引き続き、下引層A−1及び下引層B−1の上表面に、8W/m2・分のコロナ放電を施し、下引層A−1の上には、下記下引上層塗布液a−2を乾燥膜厚0.1μmになる様に下引層A−2として、下引層B−1の上には下記下引上層塗布液b−2を乾燥膜厚0.8μmになる様に帯電防止機能をもつ下引上層B−2として塗設した。
【0058】
《下引上層塗布液a−2》
ゼラチン 0.4g/m2になる重量
(C−1) 0.2g
(C−2) 0.2g
(C−3) 0.1g
シリカ粒子(平均粒径3μm) 0.1g
水で1lに仕上げる
《下引上層塗布液b−2》
(C−4) 60g
(C−5)を成分とするラテックス液(固形分20%) 80g
硫酸アンモニウム 0.5g
(C−6) 12g
ポリエチレングリコール(重量平均分子量600) 6g
水で1lに仕上げる
【0059】
【化1】
【0060】
【化2】
【0061】
(支持体の熱処理)
上記の下引済み支持体の下引乾燥工程において、支持体を140℃で加熱し、その後徐々に冷却した。
【0062】
《感光材料の作製》
前記支持体上に以下の各層を順次形成し、試料1を作製した。尚、乾燥は各々60℃,15分間で行った。更に、感光性乳剤1をそれぞれ感光性乳剤2〜7に変更して、試料2〜7を作製した。
【0063】
バック面側塗布:以下の組成の液を塗布した。
【0064】
【0065】
【化3】
【0066】
感光層面側塗布
感光層1:以下の組成の液を塗布銀量が2.1g/m2になる様に塗布した。
【0067】
【0068】
【化4】
【0069】
【化5】
【0070】
表面保護層:以下の組成の液を感光層の上に塗布した。
【0071】
《露光及び現像処理》
上記で作製した熱現像感光材料に810nmの半導体レーザーを有するイメージャーで露光した。その後ヒートドラムを有する自動現像機を用いて、110℃で15秒熱現像処理した。その際、露光及び現像は23℃、50%RHに調湿した部屋で行った。
【0072】
《性能評価》
820nmダイオードを備えたレーザー感光計で感光材料を露光した後、写真材料を120℃で15秒間処理(現像)し、得られた画像の評価を濃度計により行った。測定の結果は、Dmin、感度(Dminより1.0高い濃度を与える露光量の比の逆数)で評価し、感度は試料No.1の感度を100として相対感度で、Dminは光学濃度計の測定値で表1に示した。
【0073】
【表1】
【0074】
表1より、ハロゲン化銀乳剤添加前に限外濾過処理を施した試料2は、カブリはほぼ変わらずに感度が高くなった。ハロゲン化銀乳剤調製時に低分子量ゼラチンを使用した試料3〜5は、高感度で低カブリとなり、分子量が低くなるほど感度の向上も確認された。また、限外濾過処理前に酵素分解を行った試料6は、試料5より更に感度が高くなることが確認された。非循環型で直接母液に添加した試料7は、感度も高く、最も低カブリであった。
【0075】
【発明の効果】
含有するゼラチンを膜分離法により減量したハロゲン化銀剤を用いることにより、高感度で低カブリの熱現像感光材料を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に用いられる反応容器と外部に限外濾過装置及びその間を循環するラインを有する膜分離装置の概念図。
【符号の説明】
1 反応容器
2 ハロゲン化銀乳剤
3 撹拌機構
4 第1注下ノズル
5 第2注下ノズル
6 送り循環ライン
7 限外濾過ユニット
8 排水ライン
9 戻り循環ライン
【発明の属する技術分野】
本発明は熱現像感光材料の製造方法に関し、特に熱現像感光材料に用いられるハロゲン化銀乳剤の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、製版及び医療現場におけるフィルム処理工程は、露光後、自動現像機を用い、現像液→定着液→水洗または安定化液→乾燥の順で処理を行ういわゆるWET処理と呼ばれる工程が一般的である。しかし、この方式は液を使うことから作業性(重い、汚い、在庫管理)、環境(廃液の発生)の見地から改善を望まれていた。
【0003】
これらを改善するものとして乾式銀塩感材がある。代表的なものとしては、米国特許第3,457,075号に開示された有機銀塩を用い、熱による反応で画像を形成する熱現像感光材料がある。
【0004】
これらの熱現像感光材料は、有機銀塩、ハロゲン化銀及び還元剤を含有し、露光を受けたハロゲン化銀が触媒となって有機銀塩が還元剤により還元され銀画像が形成される。
【0005】
しかしながら、これらの熱現像感光材料は、カブリが高く、又感度が低いという問題があった。それらの要因を本発明者らが鋭意検討した結果、含有されるハロゲン化銀乳剤の製造方法により、特に含有するゼラチン量に大きく影響を受けることが明らかとなった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、高感度で低カブリの熱現像感光材料を提供することであり、更にはそれに用いられるハロゲン化銀乳剤を容易に調製する方法を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記課題は、以下の方法により解決することができた。
【0008】
1.ハロゲン化銀乳剤、有機銀塩を含有する熱現像感光材料の製造方法であって、該ハロゲン化銀乳剤を形成終了後、有機酸及び/または有機銀塩を含む母液に添加する前に、膜分離処理を施して該乳剤中に含有するゼラチンを減量することを特徴とする熱現像感光材料の製造方法。
【0009】
2.前記膜分離処理がクロスフロー型の限外濾過装置を用いることを特徴とする前記1項に記載の熱現像感光材料の製造方法。
【0010】
3.前記ハロゲン化銀乳剤の形成時に使用するゼラチンの平均分子量が50000以下であることを特徴とする前記1項または2項に記載の熱現像感光材料の製造方法。
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
熱現像感光材料には、ハロゲン化銀乳剤及び有機銀塩を含有し、そこに用いられるハロゲン化銀乳剤は、通常のハロゲン化銀感光材料に用いられるハロゲン化銀乳剤の製造方法と同様の方法により調製されたものが用いられてきた。
【0013】
即ち、ゼラチンバインダー水溶液中で、水溶性ハロゲン化合物と水溶性銀塩溶液を混合することによりハロゲン化銀乳剤が形成される。副生する塩を除去するために、ヌーデル水洗法や沈殿脱塩法が用いられる。このようにして得られたハロゲン化銀乳剤を有機酸及び/または有機銀塩を含む母液に添加する。
【0014】
ここでいう母液とは、有機酸をアルカリソープとし、更に水溶性銀塩を添加して有機銀塩とする反応過程の反応液をいい、ハロゲン化銀乳剤は反応過程の何れの位置で添加しても良い。このようにして得られた有機銀塩とハロゲン化銀乳剤を含有する分散物から副生する塩を除去した後、有機溶剤系の分散物とし、必要に応じて種々の添加剤が加えられて塗布液が調製され、支持体上に塗布することによって熱現像感光材料が形成される。
【0015】
発明者らが鋭意検討した結果、ハロゲン化銀乳剤を有機酸及び/または有機銀塩を含む母液に添加する際に、ハロゲン化銀乳剤調製時のゼラチンを膜分離処理を施して極力減量したハロゲン化銀乳剤を用いて熱現像感光材料とすることにより、熱現像感光材料のカブリが減少し、かつ感度が著しく向上することを見出したものである。
【0016】
これらの効果についての技術的理由は定かではないが、形成されたハロゲン化銀乳剤中のハロゲン化銀粒子の表面には、ゼラチンが保護コロイドとして吸着しているが、この量が多いと外気中の温湿度等の影響を受けやすくなり、また膜分離処理によるゼラチン量の減少方法を用いることにより、沈殿法等の脱塩法に較べ、ハロゲン化銀粒子表面への種々のダメージが少ないことによるものと推察している。又、膜分離処理はエネルギーが少なくて効率的にゼラチン量を減少させられる点で非常に有利である。
【0017】
使用するゼラチンの平均分子量は50000以下であることが好ましく、平均分子量3万以下が更に好ましく、平均分子量2万以下が最も好ましい。
【0018】
又、本発明の膜分離処理を施す前に酵素分解を行って平均分子量を下げることも好ましい態様の1つである。
【0019】
即ち、本発明における有利性は、膜分離法によりハロゲン化銀乳剤中に含有するゼラチン量を減少し、その結果添加されるゼラチン量を減することにより、熱現像感光材料の写真特性の向上を図ることができ、かつ低コストで容易に調製しうることができたものである。
【0020】
ハロゲン化銀乳剤を有機酸及び/または有機銀塩を含む母液が存在する反応容器に添加する形態は、少なくとも1度分離膜を通過する過程を含んでいれば、どのような形態でも適用することができる。その中でも特にクロスフロー方式の分離機構であることが好ましい。具体的な装置の形態としては、例えばハロゲン化銀乳剤を形成する反応容器の外部に限外濾過装置を有する外部循環ループを具備させた形態、または該反応容器から一方的に母液が存在する反応容器に添加ラインを設け、その途中に限外濾過装置を有する形態などが上げられるが、後者の形態の方がより好ましい。
【0021】
分離膜の分画分子量としては公知のあらゆるものを使用可能であるが、ハロゲン化銀乳剤形成時に使用したゼラチンの低分子量成分の多くが排出される分画分子量であることが好ましく、具体的には、100000以上であることが好ましく、150000以上であることが更に好ましい。しかし分画分子量の上限としては、ハロゲン化銀粒子が排出されない大きさであることが好ましい。
【0022】
本発明で好ましく使用されるクロスフロー型の限外濾過装置は、公知の種々の形態のものを使用することが可能で、公知の種々の形態で具備することが可能である。本発明ではその中でも、中空糸膜を内部に有する限外濾過装置を用いることが好ましい。本発明で好ましく使用される反応容器、及び限外濾過装置の上記以外の点については、上記特公昭59−43727号公報等を参考にすることができる。
【0023】
次に、限外濾過装置が反応容器に接続された外部循環経路中に具備する形態で結晶成長過程に並行して連続的に濃縮を行う場合の具体的な一例としての方法を、図1の概念図を用いて述べる。
【0024】
図1において、反応容器1には、最初に分散媒と共にハロゲン化銀粒子を含むハロゲン化銀乳剤2を含有している。該ハロゲン化銀乳剤を撹拌するための機構3は、回転可能な軸に分散翼が付設されたものとして図示されているが、この機構を任意の常用の形状とすることが可能である。注加ノズル位置は任意の位置に設置することが可能であるが、反応容器下部から液中添加される位置に設置することが好ましい。
【0025】
反応容器内に含まれる物質の容量は、前記分散媒を含むハロゲン化銀乳剤の一部を送り循環ライン6(限外濾過装置7に至る)により図示されるようにして取り出すことによって調節することができる。限外濾過装置7は、排出ライン8により図示されるようにして分散媒の一部を分離することを通じて、受け取ったハロゲン化銀乳剤の容量を低下し、その間、保留物と呼ばれる残留ハロゲン化銀乳剤の内部においてハロゲン化銀粒子が保持される。この時、限外濾過装置内部にある分離膜の分画分子量、及び分散媒中に含まれるゼラチンの分子量によって、ゼラチンを排出することが可能である。このようにして容量の低下したハロゲン化銀乳剤、即ち、保留物を戻り循環ライン9により図示されるようにして反応容器に戻す。
【0026】
次に、限外濾過装置及びその操作方法について詳細に説明する。限外濾過装置は、ハロゲン化銀粒子の製造時に特別な利用性をもつ手段として従来から広く知られている。一般に膜が用いられ、これは不要の物質は通過させ、そしてハロゲン化銀粒子のような必要な物質は通過させないものである。この選択的な分離は、特定のサイズ以下の分子を全て選択的に通し、そしてこれより大きい分子が残留するように作られている、合成半透性膜に対し溶液を液圧で押し付けることにより、遂行される。
【0027】
限外濾過は、半透性限外濾過膜を横切って圧力差ができるように、反応容器内の分散液を該半透性限外濾過膜と接触させながら循環させることによって実施するのが好ましい。一般に、膜は特定の寸法以下の分子のみ透過することができ、かつそれより大きい分子及びハロゲン化銀粒子を分散液中に保持するような寸法の細孔を含む。
【0028】
限外濾過膜に接触する乳剤の圧力は、広範囲に変化させてよい。代表的には、本発明の実施については、限外濾過膜に接触する反応容器内の圧力は、好ましくは約100palg以上500palg以下で、代表的には約100palg(7.03kg/cm2)であり、滞留物の出口圧力は、好ましくは約5palg以上10palg以下で、代表的には約10palg(0.703kg/cm2)以下程度である。膜を横切る圧力差は代表的には約40〜60palg(2.81〜4.22kg/cm2)である。もちろん、反応容器及び限外濾過膜の構造、乳剤の粘度、滞留物の濃度及び所望の滞留物の純度に応じて、これらの範囲外の圧力で操作することは当業者が任意に設定してよいことである。
【0029】
限外濾過に使用する膜は、代表的には、極めて微細な多孔構造の極めて薄い壁をこれにより厚い多孔質構造上に支持して含む異方性膜である。有用な膜は、種々の高分子物質、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリカルボン酸ビニル、ポリ蟻酸ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリスルホン、ポリビニルエーテル、ポリアクリルアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリフルオロアルキレン(例えば、ポリテトラフルオロエチレン)、及びポリ弗化ビニリデン、ならびにセルロース系ポリマー、例えば、セルロース及びセルロースエステル、例えば、酢酸セルロース、酪酸セルロース及び酢酪酸セルロース製の中から選ばれた任意のものであることができる。
【0030】
本発明に用いられる有機銀塩を形成する有機酸としては、例えば没食子酸、シュウ酸、ベヘン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、オレイン酸、カプロン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マレイン酸、リノール酸等が挙げられるが、好ましくは脂肪族カルボン酸、例えばパルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸等であり、特に好ましくはベヘン酸である。
【0031】
水酸化アルカリ水溶液としては、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液が好ましく用いられる。
【0032】
本発明の有機銀塩分散物が含有する有機銀塩粒子は平均粒径が1μm以下で、かつ単分散であることが好ましい。有機銀塩の平均粒径とは、有機銀塩の粒子が例えば球状、棒状、或いは平板状の粒子の場合には、有機銀塩粒子の体積と同等の球を考えたときの直径をいう。平均粒径は好ましくは0.01〜0.8μm、特に0.05〜0.5μmが好ましい。ここでいう単分散とは、下記式で求められる単分散度が40以下をいう。更に好ましくは1〜30である。
【0033】
単分散度=(粒径の標準偏差)/(粒径の平均値)×100
有機銀塩粒子の形状の測定方法としては、有機銀塩分散物の透過型電子顕微鏡像より求めることができる。単分散性を測定する別の方法として、有機銀塩粒子の体積荷重平均直径の標準偏差を求める方法があり、この場合、体積荷重平均直径で割った値の百分率(変動係数)が、好ましくは100%以下、より好ましくは80%以下、さらに好ましくは50%以下である。
【0034】
測定方法としては、例えば溶液中に分散した有機銀塩粒子にレーザー光を照射し、その散乱光のゆらぎの時間変化に対する自己相関係数を求めることにより得られた粒子サイズ(体積荷重平均直径)から求めることができる。
【0035】
本発明で言う粗大粒子とは、形状の如何に拘わらず粒子内の最も離れた2点の距離が5μm以上のものを指す。
【0036】
本発明に用いられるハロゲン化銀粒子の平均粒子サイズは小さい方が好ましく、平均粒子サイズが0.1μm以下、より好ましくは0.01μm〜0.1μm、特に0.02μm〜0.08μmが好ましい。ここでいう粒子サイズとは、ハロゲン化銀粒子が立方体或いは八面体のいわゆる正常晶である場合には、ハロゲン化銀粒子の稜の長さをいう。又、正常晶でない場合、例えば球状、棒状、或いは平板状の粒子の場合には、ハロゲン化銀粒子の体積と同等な球を考えたときの直径をいう。またハロゲン化銀は単分散であることが好ましい。ここでいう単分散とは、下記式で求められる単分散度が40以下をいう。更に好ましくは30以下であり、特に好ましくは20%以下となる粒子である。
【0037】
単分散度=(粒径の標準偏差)/(粒径の平均値)×100
ハロゲン化銀粒子の形状については、特に制限はないが、ミラー指数〔100〕面の占める割合が高いことが好ましく、この割合が50%以上、更には70%以上、特に80%以上であることが好ましい。ミラー指数〔100〕面の比率は増感色素の吸着における〔111〕面と〔100〕面との吸着依存性を利用したT.Tani,J.Imaging Sci.,29,165(1985)により求めることができる。
【0038】
またもう一つの好ましいハロゲン化銀の形状は、平板粒子である。ここでいう平板粒子とは、投影面積の平方根を粒径rμmとして垂直方向の厚みhμmした場合のアスペクト比=r/hが3以上のものをいう。その中でも好ましくはアスペクト比が3以上50以下である。また粒径は0.1μm以下であることが好ましく、さらに0.01μm〜0.08μmが好ましい。これらは米国特許第5,264,337号、第5,314,798号、第5,320,958号等に記載されており、容易に目的の平板状粒子を得ることができる。
【0039】
ハロゲン組成としては特に制限はなく、塩化銀、塩臭化銀、塩沃臭化銀、臭化銀、沃臭化銀、沃化銀のいずれであってもよい。本発明に用いられる写真乳剤は、P.Glafkides著Chimie et Physique Photographique(Paul Montel社刊、1967年)、G.F.Duffin著 Photographic Emulsion Chemistry(The Focal Press刊、1966年)、V.L.Zelikman et al著Making and Coating Photographic Emulsion(The Focal Press刊、1964年)等に記載された方法を用いて調製することができる。即ち、酸性法、中性法、アンモニア法等のいずれでもよく、又可溶性銀塩と可溶性ハロゲン塩を反応させる形成としては、片側混合法、同時混合法、それらの組合せ等のいずれを用いてもよい。
【0040】
本発明に用いられるハロゲン化銀には、元素周期律表の6族から10族に属する金属錯対又は錯体イオンを含有することが好ましい。上記の金属としては、W、Fe、Co、Ni、Cu、Ru、Rh、Pd、Re、Os、Ir、Pt、Auが好ましく、中でも印刷製版用感光材料に使用される場合はRh、Re、Ru、Ir、Osから選ばれることが好ましい。
【0041】
これらの金属は錯体の形でハロゲン化銀に導入できる。本発明においては、遷移金属錯体又は錯体イオンは、下記一般式で表される6配位が好ましい。
【0042】
一般式〔ML6〕m
式中、Mは元素周期表の6〜10族の元素から選ばれる遷移金属、Lは架橋配位子、mは0、−、2−又は3−を表す。Lで表される配位子の具体例としては、ハロゲン化物(弗化物、塩化物、臭化物及び沃化物)、シアン化物、シアナート、チオシアナート、セレノシアナート、テルロシアナート、アジド及びアコの各配位子、ニトロシル、チオニトロシル等が挙げられ、好ましくはアコ、ニトロシル及びチオニトロシル等である。アコ配位子が存在する場合には、配位子の一つ又は二つを占めることが好ましい。Lは同一でもよく、また異なっていてもよい。
【0043】
Mとして特に好ましい具体例は、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、レニウム(Re)及びオスミウム(Os)である。
【0044】
以下に遷移金属配位錯体イオンの具体例を示す。
【0045】
1:〔RhCl6〕3-
2:〔RuCl6〕3-
3:〔ReCl6〕3-
4:〔RuBr6〕3-
5:〔OsCl6〕3-
6:〔CrCl6〕3-
7:〔Ru(NO)Cl5〕2-
8:〔RuBr4(H2O)〕2-
9:〔Ru(NO)(H2O)Cl4〕-
10:〔RhCl5(H2O)〕2-
11:〔Re(NO)Cl5〕2-
12:〔Re(NO)CN5〕2-
13:〔Re(NO)ClCN4〕2-
14:〔Rh(NO)2Cl4〕-
15:〔Rh(NO)(H2O)Cl4〕-
16:〔Ru(NO)CN5〕2-
17:〔Fe(CN)6〕3-
18:〔Rh(NS)Cl5〕2-
19:〔Os(NO)Cl5〕2-
20:〔Cr(NO)Cl5〕2-
21:〔Re(NO)Cl5〕-
22:〔Os(NS)Cl4(TeCN)〕2-
23:〔Ru(NS)Cl5〕2-
24:〔Re(NS)Cl4(SeCN)〕2-
25:〔Os(NS)Cl(SCN)4〕2-
26:〔Ir(NO)Cl5〕2-
これらの金属錯体又は錯体イオンは一種類でもよいし、同種の金属及び異種の金属を二種以上併用してもよい。これらの金属のイオン又は錯体イオンの含有量としては、一般的にはハロゲン化銀1モル当たり1×10-9〜1×10-2モルが適当であり、好ましくは1×10-8〜1×10-4モルである。これらの金属錯体又は錯体イオンを提供する化合物は、ハロゲン化銀粒子形成時に添加し、ハロゲン化銀粒子中に組み込まれることが好ましく、ハロゲン化銀粒子の調製、つまり核形成、成長、物理熟成、化学増感の前後のどの段階で添加してもよいが、特に核形成、成長、物理熟成の段階で添加するのが好ましく、更には核形成、成長の段階で添加するのが好ましく、最も好ましくは核形成の段階で添加する。添加に際しては、数回に渡って分割して添加してもよく、ハロゲン化銀粒子中に均一に含有させることもできるし、特開昭63−29603号、特開平2−306236号、同3−167545号、同4−76534号、同6−110146号、同5−273683号等に記載されている様に粒子内に分布を持たせて含有させることもできる。好ましくは粒子内部に分布をもたせることができる。これらの金属化合物は、水或いは適当な有機溶媒(例えば、アルコール類、エーテル類、グリコール類、ケトン類、エステル類、アミド類)に溶解して添加することができるが、例えば金属化合物の粉末の水溶液もしくは金属化合物とNaCl、KClとを一緒に溶解した水溶液を、粒子形成中の水溶性銀塩溶液又は水溶性ハライド溶液中に添加しておく方法、或いは銀塩溶液とハライド溶液が同時に混合されるとき第3の水溶液として添加し、3液同時混合の方法でハロゲン化銀粒子を調製する方法、粒子形成中に必要量の金属化合物の水溶液を反応容器に投入する方法、或いはハロゲン化銀調製時に予め金属錯体又は錯体イオンをドープしてある別のハロゲン化銀粒子を添加して溶解させる方法等がある。特に、金属化合物の粉末の水溶液もしくは金属化合物とNaCl、KClとを一緒に溶解した水溶液を水溶性ハライド溶液に添加する方法が好ましい。粒子表面に添加する時には、粒子形成直後又は物理熟成時途中もしくは終了時又は化学熟成時に必要量の金属化合物の水溶液を反応容器に投入することもできる。
【0046】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様はこれに限定されない。
【0047】
実施例1
(ハロゲン化銀乳剤Aの調製)
水900ml中に平均分子量120000のオセインゼラチン7.5g及び臭化カリウム10mgを溶解して温度35℃、pHを3.0に合わせた後、硝酸銀74gを含む水溶液370mlと(98/2)のモル比の臭化カリウムと沃化カリウムを含む水溶液(前記硝酸銀に等モル量)及びK2〔Ir(NO)Cl5〕を銀1モル当たり1×10-4モルを、pAg7.7に保ちながらコントロールドダブルジェット法で10分間かけて添加した。その後4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデンを添加しNaOHでpHを5に調整して平均粒子サイズ0.06μm、粒子サイズの変動係数11%、〔100〕面比率87%の立方体沃臭化銀粒子を得た。この乳剤にゼラチン凝集剤を用いて凝集沈降させ脱塩処理を行い、その後フェノキシエタノール0.1gを加え、pH5.9、pAg7.5に調整した。更にチオ硫酸ナトリウム及び塩化金酸で最適に化学増感を施し、ハロゲン化銀乳剤Aを得た。
【0048】
(有機脂肪酸Na溶液の調製)
945mlの純水にベヘン酸32.4g、アラキジン酸9.9g、ステアリン酸5.6gを90℃で溶解した。次に高速で撹拌しながら1.5Mの水酸化ナトリウム水溶液98mlを添加した。次に濃硝酸0.93mlを加えた後、55℃に冷却して30分撹拌させて有機脂肪酸Na溶液を得た。
【0049】
(有機脂肪酸銀とハロゲン化銀乳剤Aを含む感光性乳剤1の調製)
上記の有機脂肪酸Na溶液に上記ハロゲン化銀乳剤Aを15.1g添加し水酸化ナトリウム溶液でpH8.1に調整した後に、1Mの硝酸銀溶液147mlを7分間かけて加え、更に20分撹拌し限外濾過により水溶性塩類を除去した。次にこの水系混合物に撹拌しながらポリ酢酸ビニルの酢酸n−ブチル溶液(1.2wt%)100gを徐々に添加して静置し分散物のフロックを形成後、水を取り除き、更に2回の水洗と水の除去を行った。ポリビニルブチラール(平均分子量3000)の2.5wt%のメチルエチルケトン溶液60gを撹拌しながら加えた後、更にポリビニルブチラール(平均分子量4000)60g及びメチルエチルケトンを添加して混合した後に、4000psiで分散させ、感光性乳剤1を得た。
【0050】
(感光性乳剤2の調製)
図1に示す反応容器を用いてハロゲン化銀乳剤Aを上述した調製方法で調製した後、該ハロゲン化銀乳剤を有機脂肪酸Na溶液を含む母液に添加する前に、限外濾過装置を20分間稼動させた。この時使用した分離膜の分画分子量は110000であった。その際、排出される分散媒と同量の水を添加しながら行った。この変更点以外の工程は上記感光性乳剤1の調製と同様に行い、感光性乳剤2を得た。
【0051】
(感光性乳剤3の調製)
ハロゲン化銀乳剤Aを調製する際のゼラチンを、オセインゼラチンではなく平均分子量46000の低分子量ゼラチンに変更した以外は上記感光性乳剤2の調製と同様に行い、感光性乳剤3を得た。
【0052】
(感光性乳剤4の調製)
ハロゲン化銀乳剤Aを調製する際のゼラチンを、オセインゼラチンではなく平均分子量25000の低分子量ゼラチンに変更した以外は上記感光性乳剤2の調製と同様に行い、感光性乳剤4を得た。
【0053】
(感光性乳剤5の調製)
ハロゲン化銀乳剤Aを調製する際のゼラチンを、オセインゼラチンではなく平均分子量18000の低分子量ゼラチンに変更した以外は上記感光性乳剤2の調製と同様に行い、感光性乳剤5を得た。
【0054】
(感光性乳剤6の調製)
ハロゲン化銀乳剤調製後、プロテアーゼの0.1%水溶液200mlを添加し、45℃で15分間撹拌させた後に限外濾過装置を稼動させた。この変更点以外の工程は上記感光性乳剤5の調製と同様に行い、感光性乳剤6を得た。
【0055】
(感光性乳剤7の調製)
ハロゲン化銀乳剤を形成する反応容器は感光性乳剤1を調製する際に用いたものを使用し、有機脂肪酸Na溶液を含む母液への添加ライン中に、分画分子量110000の分離膜を有する限外濾過装置を具備する態様で調製を行った。添加直後に、排出される分散媒と同量の水を母液中へ添加した。更にハロゲン化銀乳剤を調製する際のゼラチンをオセインゼラチンではなく平均分子量18000の低分子量ゼラチンに変更した。この変更点以外の工程は上記感光性乳剤1の調製と同様に行い、感光性乳剤7を得た。
【0056】
〈PET下引済み写真用支持体の作製〉
市販の2軸延伸熱固定済みの厚さ100μmのPETフィルムの両面に8W/m2・分のコロナ放電処理を施し、一方の面に下記下引塗布液a−1を乾燥膜厚0.8μmになるように塗設し乾燥させて下引層A−1とし、また反対側の面に下記帯電防止加工下引塗布液b−1を乾燥膜厚0.8μmになるように塗設し乾燥させて帯電防止加工下引層B−1とした。
【0057】
引き続き、下引層A−1及び下引層B−1の上表面に、8W/m2・分のコロナ放電を施し、下引層A−1の上には、下記下引上層塗布液a−2を乾燥膜厚0.1μmになる様に下引層A−2として、下引層B−1の上には下記下引上層塗布液b−2を乾燥膜厚0.8μmになる様に帯電防止機能をもつ下引上層B−2として塗設した。
【0058】
《下引上層塗布液a−2》
ゼラチン 0.4g/m2になる重量
(C−1) 0.2g
(C−2) 0.2g
(C−3) 0.1g
シリカ粒子(平均粒径3μm) 0.1g
水で1lに仕上げる
《下引上層塗布液b−2》
(C−4) 60g
(C−5)を成分とするラテックス液(固形分20%) 80g
硫酸アンモニウム 0.5g
(C−6) 12g
ポリエチレングリコール(重量平均分子量600) 6g
水で1lに仕上げる
【0059】
【化1】
【0060】
【化2】
【0061】
(支持体の熱処理)
上記の下引済み支持体の下引乾燥工程において、支持体を140℃で加熱し、その後徐々に冷却した。
【0062】
《感光材料の作製》
前記支持体上に以下の各層を順次形成し、試料1を作製した。尚、乾燥は各々60℃,15分間で行った。更に、感光性乳剤1をそれぞれ感光性乳剤2〜7に変更して、試料2〜7を作製した。
【0063】
バック面側塗布:以下の組成の液を塗布した。
【0064】
【0065】
【化3】
【0066】
感光層面側塗布
感光層1:以下の組成の液を塗布銀量が2.1g/m2になる様に塗布した。
【0067】
【0068】
【化4】
【0069】
【化5】
【0070】
表面保護層:以下の組成の液を感光層の上に塗布した。
【0071】
《露光及び現像処理》
上記で作製した熱現像感光材料に810nmの半導体レーザーを有するイメージャーで露光した。その後ヒートドラムを有する自動現像機を用いて、110℃で15秒熱現像処理した。その際、露光及び現像は23℃、50%RHに調湿した部屋で行った。
【0072】
《性能評価》
820nmダイオードを備えたレーザー感光計で感光材料を露光した後、写真材料を120℃で15秒間処理(現像)し、得られた画像の評価を濃度計により行った。測定の結果は、Dmin、感度(Dminより1.0高い濃度を与える露光量の比の逆数)で評価し、感度は試料No.1の感度を100として相対感度で、Dminは光学濃度計の測定値で表1に示した。
【0073】
【表1】
【0074】
表1より、ハロゲン化銀乳剤添加前に限外濾過処理を施した試料2は、カブリはほぼ変わらずに感度が高くなった。ハロゲン化銀乳剤調製時に低分子量ゼラチンを使用した試料3〜5は、高感度で低カブリとなり、分子量が低くなるほど感度の向上も確認された。また、限外濾過処理前に酵素分解を行った試料6は、試料5より更に感度が高くなることが確認された。非循環型で直接母液に添加した試料7は、感度も高く、最も低カブリであった。
【0075】
【発明の効果】
含有するゼラチンを膜分離法により減量したハロゲン化銀剤を用いることにより、高感度で低カブリの熱現像感光材料を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に用いられる反応容器と外部に限外濾過装置及びその間を循環するラインを有する膜分離装置の概念図。
【符号の説明】
1 反応容器
2 ハロゲン化銀乳剤
3 撹拌機構
4 第1注下ノズル
5 第2注下ノズル
6 送り循環ライン
7 限外濾過ユニット
8 排水ライン
9 戻り循環ライン
Claims (3)
- ハロゲン化銀乳剤、有機銀塩を含有する熱現像感光材料の製造方法であって、ハロゲン化銀乳剤を形成終了後、有機酸及び/または有機銀塩を含む母液に添加する前に、膜分離処理を施して該乳剤中に含有するゼラチンを減量することを特徴とする熱現像感光材料の製造方法。
- 前記膜分離処理がクロスフロー型の限外濾過装置を用いることを特徴とする請求項1に記載の熱現像感光材料の製造方法。
- 前記ハロゲン化銀乳剤の形成時に使用するゼラチンの平均分子量が50000以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱現像感光材料の製造方法。
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- 1998-10-12 JP JP28939698A patent/JP3777829B2/ja not_active Expired - Fee Related
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