JP3777582B2 - 熱電池 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、発熱剤を内蔵し、電池使用時に発熱剤に点火することにより、電池内部を高温に加熱して電池を活性化させる熱電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱電池とは溶融塩を電解質とする電池であり、保存中は電解質が非電導性の固体塩であるために電池として不活性状態にあるが、内蔵されている発熱剤を燃焼させて電池内部を高温に加熱すると、電解質が溶融して導電性を示すようになり、電池が活性化される。保存中は自己放電がほとんどなく、長期間の保存が可能であり、必要なときは瞬時に活性化させることができる貯蔵型電池の一種である。また、低温から高温までの広範囲な環境温度下でも使用が可能な高エネルギー密度の電池である。そして、不活性状態の熱電池は内部抵抗が高いために、負荷を端子に接続した状態で機器に組み込むことが可能である。捏電池はこのような多くの特徴を備えているために、ミサイル、ロケット等の飛しょう体用電源や各種緊急用電源として欠かせないものとなっている。
【0003】
従来、この種の熱電池の活物質として、負極にカルシウムを、正極にクロム酸カルシウムを用いた系が用いられてきたが、さらに高容量、高出力として負極にリチウムもしくはリチウム合金を、正極に硫化物を用いた熱電池が開発されている。
【0004】
負極のリチウムは軽量で高い起電力が得られる優れた金属であるが、融点が179℃と低く、熱電池の作動温度で溶融するために、鉄やニッケルの多孔体に含浸保持させたり、金属粉と混合して流動性をなくしたりしたものが使用されている。またリチウムは合金を作りやすいので、ホウ素、アルミニウム、珪素等との合金して負極に使用することも可能である。
【0005】
正極活物質に使う硫化物としては耐熱性の高い二硫化鉄がもっぱら使用されているが、ニッケル、クロム、コバルト、銅等の硫化物や、これらの金属を含むシュブレル相の硫化物も使用可能である。
【0006】
電解質としては、LiClが59mol%とKClが41mol%であるLiCl−KCl共晶塩が一般に用いられている。この共晶塩は比較的に安価で、融点が352℃と低く、常温での絶縁抵抗が高いという特徴がある。電解質は負極のリチウムと反応しない酸化マグネシウム等の絶縁体粉末に含浸させたものが使用される。熱電池作動時には、電解質は、イオンの伝導体と同時に、酸化マグネシウム等の絶縁粉末層により正極と負極のセパレータとしても作用している。
【0007】
発熱剤としては、鉄粉と過塩素酸カリウムの混合物を成形したものが素電池(以下単にセルという)と交互に積層して用いられている。発熱剤は電池活性化時に点火されることにより、酸化還元反応を起こして発熱し、電池内を作動温度まで加熱する。この発熱剤には鉄が発熱反応に必要な量よりも過剰に含まれており、発熱反応後も導電性が高く、隣接するセル間の接続体としても作用している。鉄粉と過塩素酸カリウムの発熱剤以外としては、ジルコニウムとクロム酸バリウムの混合物を無機繊維に付着させたものも発熱剤として使用されている。しかし、この発熱剤は導電性が低いためにセル間の接続用の金属板が必要である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
近年、更に高容量、高出力の熱電池が要求されるようになり、従来のLiCl−KCl共晶塩の電解質では要求を満たすことができなくなった。そこで、本発明者らは、LiBr−LiCl−LiF電解質に着目し、鋭意研究した。
【0009】
この電解質は、完全溶融状態にあるときは、内部抵抗が低く、優れた特性を示す。これは、リチウムイオンの拡散速度が速いため、濃度勾配が生じにくく、大電流放電が可能になることによるものと思われる。しかながら、LiCl−KClの融点が352℃であるのに対し、これは430℃と高温であるため、活性化後、電解質が完全溶融状態に到達するまでに時間がかかり、放電初期には電池内部抵抗が他の電解質に比べて大きいという問題がある。この影響は環境温度が低いほど大きい。また、この電解質は絶縁抵抗が小さく、必ずしも保存特性がよくないという問題もある。
【0010】
この発明は、上記のような従来の熱電池の課題を解決し、高容量、高出力で、かつ放電電圧立ち上がり性能がよく、また保存性能もよい熱電池を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
そこで、正極活物質とLiBr−LiCl−LiF電解質と負極活物質と発熱剤とを備えた熱電池において、電解質にKBr−LiBr−LiCl電解質またはLiBr−KBr−LiF電解質を30〜70wt%混合することを特徴とする本発明により、上記課題を解決するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
LiClが59mol%、KClが41mol%である電解質の融点は352℃、KBrが38mol%、LiBrが37mol%、LiClが35molで4ある電解質の融点は310℃、LiBrが63.5mol%、KBrが34mol%、LiFが2.5mol%である電解質の融点は280℃であり、いずれもLiBrが47mol%、LiClが31mol%、LiFが22mol%である電解質に比べて、溶融温度は低い。
【0013】
そこで、KBr−LiBr−LiClまたはLiBr−KBr−LiF電解質をLiBr−LiCl−LiF電解質に30〜70wt%混合したものを電解質として用いることにより、LiBr−LiCl−LiF電解質の長所を生かしたまま、融点を下げることができるので、活性化時の電圧立ち上がり特性がよく、高容量、高出力の熱電池を提供することができる。また、KBr−LiBr−LiClまたはLiBr−KBr−LiF電解質は、LiBr−LiCl−LiF電解質に比べて絶縁抵抗が大きいので、これらを混合することにより、LiBr−LiCl−LiF電解質のみの場合に比べて、電解質全体の絶縁抵抗を大きくすることができるので、保存特性も改善された熱電池を提供することができる。
【0014】
【実施例】
以下、本発明を実施例を用いて説明する。
【0015】
図1は一般的な熱電池に用いるセル4の断面図である。この図において、1は正極、2は負極、3は電解質である。
【0016】
図2は一般的な熱電池の断面図である。この図において、4は図1に示すセルであり、発熱剤14とともに積層されている。7は積層体の中心の開孔部に充填された導火薬である。8は点火玉であり、点火用端子9に点火電流が流れると瞬時に点火する。この結果、導火薬7が火炎を発して燃焼し、発熱剤14に着火し電池内部が高温になり、セル4の電解質が溶融して導電性を有するようになる。このようにして熱電池の起電力が発生する。尚、5、6は電池内部の接続線、10、11は出力端子、13は熱電池内部を断熱保温するための断熱材、12はステンレス製の電池容器である。
【0017】
電解質構成が電池特性に及ぼす影響を調べるため、FeS70%とLiCl−KCl30%との混合物よりなる0.5gの正極と、LiAl合金粉末0.3gの負極と、各種電解質とでセル(直径44mm)を製作し、5セルを直列に接続して、熱電池構成した(尚、図2の例は4セル)。電解質構成と、それを用いた電池記号A、CおよびDを表1に示す。
【0018】
【表1】
Figure 0003777582
尚、表1中の0、10、30、50、70及び90は、LiBrが47mol%、LiClが31mol%、LiFが22mol%の電解質を(ア)とし、KBr−LiBr−LiCl電解質またはLiBr−KBr−LiF電解質を(イ)としたときの、(イ)の重量%を現している。
【0019】
これらの熱電池を、−30℃の温度槽内において活性化し、15Aで放電試験を行った。このときの試験結果を、活性化後、最高電圧に達するまでの時間「電圧立上り時間」、そのときの「最高電圧」、放電終期の電圧がセル当り1.4Vになるまでの時間「放電時間」として表2に示す。
【0020】
【表2】
Figure 0003777582
これより、KBr−LiBr−LiCl電解質またはLiBr−KBr−LiF電解質が30wt%以下の場合には、電圧立上り特性が悪く、30wt%以上加えると立上り特性は著しく性能が改善されることが分かる。しかし、KBr−LiBr−LiCl電解質またはLiBr−KBr−LiF電解質はLiBr−LiCl−LiF電解質に比べ導電性が劣るため、70wt%以上加えるとハイレート放電特性が低下するので好ましくない。従って、30〜70wt%の範囲で混合するのが好適である。
【0021】
電解質の絶縁抵抗について一例を示せば、熱電池Aの場合が50Mオームであるにの対し、C3が140Mオームであったことからわかるように、混合電解質とすることにより、いずれも絶縁抵抗が増大し、保存特性は確実に改善された。
【0022】
【発明の効果】
以上、述べた通り、本発明は、正極活物質とLiBr−LiCl−LiF電解質と負極活物質と発熱剤とを備えた熱電池において、電解質にKBr−LiBr−LiCl電解質またはLiBr−KBr−LiF電解質を30〜70wt%混合することを特徴とするものである。
【0023】
これにより、高容量、高出力で、かつ放電電圧立ち上がり性能のよいとともに、保存性能もよい熱電池を提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】熱電池のセルを示す図である。
【図2】熱電池の断面を示す図である。

Claims (1)

  1. 正極活物質と、LiBr−LiCl−LiF電解質と、負極活物質と、発熱剤とを備えた熱電池において、前記電解質にKBr−LiBr−LiCl電解質またはLiBr−KBr−LiF電解質が30〜70wt%混合されていることを特徴とする熱電池。
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