JP3774581B2 - 熱安定性酵素およびその製造方法 - Google Patents

熱安定性酵素およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は脂質分解酵素の熱安定性に係る。詳しくは脱イオン処理が施された酵素溶液に金属塩を添加することで酵素の熱安定化を図ると共に、安定的な酵素製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
酵素は温和な条件で触媒反応を行うことができ、また、化学反応と比較して基質特異性が高い等により、近年、食品工業、化学工業、医薬品工業等の分野で酵素の利用範囲が拡大してきている。一般に酵素は不安定なものであり、特に溶液中での酵素の安定性は低い。したがって、酵素の濃縮粉末化法としては、熱がかかりにくい凍結乾燥法、真空乾燥法等が主に利用されてきている。しかしながら、これらの乾燥法では、大量生産のための設備投資が莫大になったり、ユーテリテイー等のランニングコストが高くなってしまったりして、産業分野で利用するのは問題がある。
また、酵素の中でも、多くの油脂関連酵素は水溶液中で約35℃を超えると、熱変性が起こり始め、安定的な収率の高い酵素の工業生産は困難になる。したがって、低い温度域での酵素液の処理が必要となり、濃縮・粉末化法が上記の方法に限定されることになる。そこで、これまで酵素の水溶液中での熱安定性を向上させるため、安定化剤の添加等が試みられてきた。例えば、酵素溶液にアルブミン、カゼイン等の蛋白質、グルタミン酸ソーダ等のアミノ酸、メルカプトエタノール、システイン等の還元剤、グリセロール、ショ糖、ソルビトール等のポリオール類、デキストラン等の水溶性高分子物質等を酵素安定化剤として添加する方法などは一般的に検討されてきた。特開平6−284886公報には、酵素の溶液中での安定化方法として、リポプロテインリパーゼ溶液にマグネシウムイオンおよびカルシウムイオンを添加することが、また、特表平8−500013公報には、シュードモナス属リパーゼ水溶液中にリパーゼの量に対して少なくも化学理論的に当量の二価陽イオンを添加することが報告されている。しかしながら、これらの方法では、脂質分解酵素の水溶液中の熱安定性は37℃〜80℃程度が限界であり、融点が高い基質を用いる酵素合成等への応用は困難であった。また、代表的な乾燥法である噴霧乾燥による酵素の粉末化法においても、加熱濃縮を経て熱気流中で乾燥されるため、噴霧乾燥では酵素活性の低下が生じるという欠点を有していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、酵素の熱安定性を高め、高温での反応を行うことが可能な脂質関連酵素を提供するとともに、粉末化法においても、熱による失活が起こり難く、安定的に酵素粉末を生産ができる製造方法を提供することである。
【0004】
【発明が解決するための手段】
本発明者らは上記課題を達成するために、鋭意検討を重ねた結果、脂質分解酵素溶液を脱イオンした後、鉄塩およびカルシウム塩を添加することで、酵素の熱安定性が飛躍的に向上することを見出し、本発明を完成した。
すなわち、金属の含有量が0.5重量%以下である脂質分解酵素に、鉄塩およびカルシウム塩を添加することを特徴とする、熱安定性酵素に関する。上記脂質分解酵素は脱イオン処理が施されていることが好ましい。また、鉄塩が酵素の重量に対して0.01〜50重量%、カルシウム塩が酵素の重量に対して0.01〜70重量%であることが好ましい。
また本発明は、鉄塩およびカルシウム塩を含む脂質分解酵素溶液を噴霧乾燥して酵素粉末を得る酵素の製造法に関する。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下本発明を詳しく説明する。本発明は、脱イオンした脂質分解酵素溶液に、鉄塩およびカルシウム塩を添加することによる酵素の熱安定化方法と加熱乾燥方法による粉末化においても熱による酵素失活が起こり難くい酵素粉末生産ができる脂質分解酵素の製造方法である。
【0006】
本発明に用いる脂質分解酵素は特に限定されるものではないが、市販の酵素製剤、微生物培養液、植物抽出液、動物細胞抽出液、動物細胞抽出液等が利用でき、さらに、培養液、抽出液の濃縮液等も利用できる。
【0007】
脂質分解酵素としては、リパーゼ類、フォスフォリパーゼ類、エステラーゼ類等があげられる。リパーゼ類は、リポプロテインリパーゼ、モノアシルグリセロリパーゼ、ジアシルグリセロリパーゼ、トリアシルグリセロリパーゼ、ガラクトリパーゼ等があげられる。フォスフォリパーゼ類は、リゾフォスフォリパーゼ、フォスフォリパーゼA1,A2,B,C,D等があげられる。エステラーゼ類は、コリンエステラーゼ、コレステロールエステラーゼ、ペクチンエステラーゼ、トロピンエステラーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、アセチルエステラーゼ、カルボキシエステラーゼ、アリルエステラーゼ等があげられる。
【0008】
本発明で使用される微生物は、細菌、酵母、糸状菌、放線菌等特に限定されるものではないが、シュードモナス属(Psudomonas sp.)、アルカリゲネス属(Alcaligenes sp.)、アスロバクター属(Arthrobacter sp.)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus sp.)、トルロプシス属(Torulopsis sp.)、エスチエリシア属(Escherichia sp.)、マイコトルラ属(Micotorula sp.)、プロピオニバクテリウム属(Propionibacterum sp.)、クロモバクテリウム属(Chromobacterum sp.)、キサントモナス属(Xanthomonas sp.)、クロストリデイウム属(Clostridium sp.)、キャンデイダ属(Candida sp.)、ジオトリカム属(Geotrichum sp.)、サッカロマイコプシス属(Sacchromycopsis sp.)、ノカルデイア属(Nocardia sp.)、フザリウム属(Fuzarium sp.)、アスペルギルス属(Aspergillus sp.)、ペニシリウム属(Penicillum sp.)、ムコール属(Mucor sp.)、リゾプス属(Rhizopus sp)、フィコマイセス属(Phycomycese sp.)、プチニア属(Puccinia sp.)、バチルス属(Bacillus sp.)、ストレプトマイセス属(Streptmycese sp.)等があげられる。
【0009】
リパーゼ生産用培地としては、特に限定されるものではないが、好ましくは、大豆粉、ペプトン、コーン・ステープ・リカー、K2HPO4、(NH42SO4、MgSO4・7H2O等が使用できる。添加量については、大豆粉は0.1〜20重量%、好ましくは1.0〜10.0重量%である。ペプトンは0.1〜30重量%、好ましくは0.5〜10重量%である。コーン・ステープ・リカーは0.1〜30重量%、好ましくは0.5〜10.0重量%である。K2HPO4は0.01〜20重量%、好ましくは0.1〜5重量%である。(NH42SO4は0.01〜20重量%、好ましくは0.05〜5重量%である。MgSO4・7H2Oは0.01〜20重量%、好ましくは0.05〜5重量%である。培養条件については、培養温度は10〜40℃、好ましくは20〜35℃である。通気量は0.1〜2.0VVM、好ましくは0.1〜1.0VVMである。攪拌回転数は100〜800rpm、好ましくは200〜400rpmである。pHは3.0〜10.0、好ましくは4.0〜9.5である。
【0010】
酵素の抽出方法は特に限定されるものではないが、菌体外分泌酵素の場合は、菌体を遠心分離、膜濾過などで除去することが好ましい。遠心分離は200〜20,000×g、膜濾過はMF膜、フィルタープレスなどで圧力を3.0kg/m2以下にコントロールするのが好ましい。菌体内酵素の場合は、ホモジナイザー、ワーリングブレンダー、超音波破砕、フレンチプレス、ボールミル等で細胞破砕し、遠心分離、膜濾過などで細胞残さを除去することが好ましい。ホモジナイザーは500〜30,000rpm、好ましくは1,000〜15,000rpmである。ワーリングブレンダーは500〜5,000rpm、0.5〜10分、好ましくは100〜10,000rpm、1〜5分である。超音波破砕は1〜50KHz、好ましくは10〜20KHzである。ボールミルは直径0.1〜0.5mm程度のガラス製小球を用いるのが好ましい。
【0011】
本発明の金属とは、元素周期表における金属元素を言い、水素を除くI族、II族、ホウ素を除くIII族、炭素とケイ素を除くIV族、VIII族およびV,VI,VII族の各a亜族に属する元素である。このほかアンチモン、ビスマス、ポロニウム等もあげられる。
脱イオン処理とは、具体的には酵素の溶液から金属イオンを除去あるいは低減することで、結果として脂質分解酵素中の金属の含有量の低減が図られる。除去する金属の種類はいずれでもよく、低減する割合が問題となる。すなわち、脱イオン処理後の酵素に残存する金属は0.5重量%以下であり、好ましくは0.25重量%以下であり、特に好ましくは0.05重量%以下である。0.5重量%を越えて金属が存在すると、鉄塩およびカルシウム塩を添加しても熱安定性酵素を得ることはできない。
酵素の脱イオンの方法としては、特に限定されるものではないが、半透膜、異方性膜等の膜を用いた分子量分画による方法、EDTAによる金属塩の析出法、分子篩クロマトグラフィー法、電気透析法等があげられる。半透膜の材質としては、セロハン膜、コロジオン膜、セルロースアセテート膜等があげられる。また、異方性膜の材質としては、高分子電解質、ポリサッカライド、セルローストリアセテート、セルロースアセテート、セルロースナイトレート、ポリアクリルニトリル、ポリフッ化ビニリデンポリアミド、ポリフッ化ビニリデン系等があげられる。膜は平膜、中空繊維膜等があげられる。また、膜の分画分子量は、3,000〜100,000、好ましくは6,000〜50,000である。膜による濃縮脱イオンの場合、酵素溶液を緩衝液、蒸留水、イオン交換水、水道水等により、液量を1倍〜1,000倍、好ましくは2倍〜50倍まで希釈する。その希釈酵素溶液を膜により濃縮を行い、希釈酵素溶液重量あたり2倍〜1,000倍まで濃縮を行う。濃縮時の膜モジュール入口圧力は0.5〜2.0atm、出口圧力は0.1〜1.5atmが好ましい。分子篩クロマトグラフィーは、ゲルとしてSephadex G−25、ゲル粒度mediumあるいはcoarseが好ましい。また、カラムのベット体積の30重量%程度以下になるように酵素蛋白質量またはゲル量を調製することが好ましい。また、Sephadexなどのゲルのカルボキシ基などの解離基に蛋白質が吸着されないように、酵素溶液のイオン強度は0.02以上にするのが好ましい。電気透析法は、隔膜として、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜を交互に重ね合わせる方法が好ましい。EDTAの濃度は、0.01〜100mM、好ましくは0.1〜50mMである。
【0012】
酵素の安定化に使用する鉄塩としては、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、硝酸鉄、リン酸鉄、シュウ酸鉄、乳酸鉄、フマル酸鉄、クエン酸鉄のうち1種または2種以上であることが好ましい。カルシウム塩としては、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、硝酸カルシウム、酢酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、クエン酸カルシウム、アスコルビン酸カルシウム、安息香酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム、サリチル酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、酒石酸カルシウム、チオシアン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、ケイ酸カルシウムのうち1種または2種以上であることが好ましい。
【0013】
酵素に鉄塩およびカルシウム塩を添加する方法としては、酵素を水に溶解し酵素溶液とし、まず対象となる酵素を0〜25℃、好ましくは0〜5℃において、鉄塩の場合は、鉄塩を酵素の重量に対して0.01〜50重量%、好ましくは0.05〜30重量%を添加し、カルシウム塩の場合は、カルシウム塩を酵素の重量に対して0.01〜70重量%、好ましくは0.05〜50重量%を添加し、スターラー攪拌で1分〜48時間、好ましくは30分〜10時間攪拌を行う。
また、上記脱イオン化した酵素溶液に直接鉄塩およびカルシウム塩を加えることもできる。
【0014】
酵素の粉末化方法は、特に限定されるものではないが、通常酵素溶液を濃縮した後、乾燥して酵素粉末を得る。濃縮法としては、エバポレーター、フラッシュエバポレーター、UF膜濃縮、MF膜濃縮、無機塩類による塩析、溶剤による沈殿法、イオン交換セルロース等による吸着法、吸水性ゲルによる吸水法等の全ての方法が利用可能である。好ましくはUF膜濃縮、エバポレーターが良い。UF膜濃縮用モジュールとしては、分画分子量3,000〜100,000好ましくは6,000〜50,000の平膜または中空糸膜,材質はポリアクリルニトリル系、ポリスルフォン系などが好ましい。エバポレーターとしては、加熱温度90℃以下、減圧量40cmHg以下、好ましくは加熱温度80℃以下、減圧量60cmHg以下である。
【0015】
乾燥法としては、減圧乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥などがあげられるが、噴霧乾燥が好ましい。噴霧乾燥機としては、ノズル向流式、デイスク向流式、ノズル並流式、デイスク並流式等があげられる。好ましくはデイスク並流式が良く、アトマイザー回転数は4,000〜20,000rpm、加熱は入口温度100〜200℃、出口温度60〜100℃で制御する。
【0016】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はそれらによって限定されるものではない。
実施例および比較例で得られた酵素の熱安定性と残存活性の評価方法を以下に示す。
[熱安定性]
酵素粉末の場合は10重量%の溶液とし、酵素液の場合は、そのまま90℃恒温槽に入れ、10分、20分、30分経過時にサンプリングを行い、それぞれの酵素液の残存活性を測定し、熱処理していないサンプルと比較を行った。
[残存活性]
残存活性は、リパーゼの場合、オリーブ油75mL、2%ポリビニルアルコール225mLをホモジナイザー(日本精機製)の容器に入れ、10℃に氷冷しながら15,000rpm、10分乳化したオリーブ油乳化液5mLにリン酸緩衝液pH7.0を4mL加えて試験管に入れ、酵素液1mLを添加し、37℃、10分反応後、2NHCLで反応停止させ、加水分解したフリーの脂肪酸をフェノールフタレインを発色液として、2N NaOHで滴定を行う。その滴定量を比較して残存活性を算出した。フォスフォリパーゼの場合、1mLのレシチン乳化液、0.05mLの0.1MCaCL2・2H2O溶液、0.1mLのクエン酸緩衝液(pH5.5)、0.15mLの7.5%TritonX−100溶液に0.1mLの酵素液を加えて、37℃、10分反応を行い、沸騰水に入れて反応停止し、その反応液に4mLの0.1Mトリス塩酸緩衝液(pH8.0)、4UのCholine oxidase、4UのPeroxtdase、2mgの4−aminoantipyrine、1mgのphenol、20mgのTritonX−100を添加し、37℃、20分さらに反応を行い、この反応液の500nmの吸光度を測定して算出した。酵素1Uは、1分間に1μmolのコリンを生成する酵素量とした。
【0017】
実施例1
アルカリゲネス スピーシーズIFO14130(Alcaligenes sp.)50L発酵槽(仕込み30L)で25℃、0、5VVM、培地1で36時間培養を行い、26Lの培養液を得た。その培養液を遠心分離(4000×g、15分)した上澄みを水道水で260Lに希釈し、その希釈液を限外ろ過膜(分画分子量;3,000、材質;ポリアクリルニトリル系)を用いて、入り口2.8atm、出口1.0atmに調製して、金属が酵素に対して0.05重量%になるまで脱イオンを行った。さらに、乳酸カルシウムを酵素重量あたり20重量%、硫酸第一鉄7水和物を10重量%添加し、5℃に氷冷しながらスターラー攪拌を30分行い、混合した。この混合液を噴霧乾燥(入口温度:190℃、出口温度:95℃)してリパーゼ粉末432gを得た。その混合液および粉末について熱安定性を測定した。結果を表1に示す。なお、乳酸カルシウムと硫酸第一鉄7水和物を添加しない脱イオン酵素溶液を噴霧乾燥したリパーゼ粉末326g(対照1)を得、また、限外ろ過前の希釈液(リパーゼに対して金属が2.3重量%含有)に上記と同量の乳酸カルシウムと硫酸第一鉄7水和物を添加し、同様に処理した混合液を噴霧乾燥したリパーゼ粉末318g(対照2)を得た。
【0018】
実施例2
実施例1と同様にして培養し、脱イオンした酵素水溶液24Lに塩化第一鉄を酵素重量あたり20重量%添加し、実施例1と同様な方法で混合した混合液とそれを噴霧乾燥したリパーゼ粉末410gを得た。その混合液および粉末について熱安定性を測定した。結果を表1に示す。
【0019】
比較例1
実施例1と同様にして培養し、脱イオンした酵素水溶液25Lに塩化銅を酵素重量あたり30重量%、硫酸マグネシウムを20重量%添加し、実施例1と同様な方法で混合した混合液とそれを噴霧乾燥したリパーゼ粉末415gを得た。その混合液および粉末について熱安定性を測定した。結果を表1に示す。
【0020】
比較例2
実施例1と同様にして培養した培養上澄み液26Lに塩化亜鉛を酵素重量あたり10重量%、塩化マンガンを30重量%添加し、実施例1と同様に混合した混合液とそれを噴霧乾燥したリパーゼ粉末421gを得た。その混合液および粉末について熱安定性を測定した。結果を表1に示す。
【0021】
【表1】
Figure 0003774581
【0022】
実施例3
ペニシリウム シクロピウムATCC−34613株(Penicillium cychlopium)を30L発酵槽で培地2を用い、250rpm、48時間、通気量1VVMで培養を行った。この培養液を圧搾ろ過により除菌を行った上澄み液18Lをイオン交換水で200Lに希釈した。その希釈液を限外ろ過膜(分画分子量;10,000、材質;セルロースアセテート)により金属が酵素に対して0.1重量%になるまで脱イオンした。さらに、硫酸カルシウムを酵素重量あたり50重量%、塩化第一鉄を30重量%添加し、実施例1と同様な方法で混合して、混合液を得た。その混合液について熱安定性を測定した。
【0023】
実施例4
実施例3と同様にして培養した培養上澄み液をSephadex G−25ゲル粒度mediumを用いて、分子篩クロマトグラフィーにより金属が酵素に対して0.25重量%になるまで脱イオンを行った。こさらに、リン酸カルシウムを酵素重量あたり20重量%、クエン酸鉄を10重量%添加し、実施例3と同様に混合した混合液を得た。その混合液について熱安定性を測定した。結果を表2に示す。
【0024】
実施例5
実施例3と同様にして培養した培養上澄み液を半透膜(分画分子量;10,000、セルロースアセテート膜)を用い、入り口1.5atm、出口1.0atmに調製して、金属が酵素に対して0.3重量%になるまで脱イオンを行った。さらに、酢酸カルシウムを酵素重量あたり50重量%、硝酸鉄を20重量%添加し、実施例3と同様に混合した混合液を得た。その混合液について熱安定性を測定した。結果を表2に示す。
【0025】
【表2】
Figure 0003774581
【0026】
実施例6
アスペルギルス ニガー NRRL−337株(Aspergillus niger)を500L発酵槽(仕込み300L)で、25℃、1VVM、攪拌回転数300rpm、培地2で48時間培養行った。この培養液を圧搾ろ過でろ過し、除菌した上澄み液を251L回収した。上澄み液は蒸留水で1,000Lに希釈した。その希釈液をUF膜モジュール(分画分子量;3,000、材質;ポリアクリルニトリル系、中空糸膜)により、30Lまで濃縮した。さらに230Lの水道水により希釈を行った後、さらに同様な方法で金属が酵素に対して0.4重量%になるまで脱イオンを行い、35Lまで濃縮を行った。さらに、クエン酸カルシウムを酵素重量あたり40重量%、シュウ酸鉄10重量%を実施例と同様な方法で混合した。その混合濃縮液を噴霧乾燥(入り口温度:195℃、出口温度:95℃、蒸発量:10L/hr)し、4.8kgのリパーゼ粉末を得た。この粉末の活性回収率は76.9%であった。このリパーゼ粉末の熱安定性試験の結果を表3に示す。
【0027】
比較例3
実施例6と同様に混合濃縮液を得た。この混合濃縮液に対し−20℃のアセトンを等量(1:1)を添加し、スターラーで2時間攪拌を行い、沈殿物をろ紙(A型)で吸引ろ過し、沈殿物を回収後、真空乾燥(70cmHg以上)を行い、2.0kgのリパーゼ粉末を得た。この活性回収率は30.6%であった。このリパーゼ粉末の熱安定性試験の結果を表3に示す。
【0028】
【表3】
Figure 0003774581
【0029】
実施例7
キャンデイダ シリンドラッセ NRRL Y−1469株(Canida sylindracea)を50L発酵槽(仕込み30L)で25℃、1VVM、培地3、攪拌回転数350rpmで24時間培養を行った。その培養液を遠心分離(3,000×g,15分)し、上澄み液26Lを得た。上澄み液は、限外ろ過膜により200Lリン酸緩衝液(pH7.0)で希釈後、金属が酵素に対して0.05重量%になるまで脱イオンを行い、エバポレーター(加熱温度80℃、減圧度60cmHg)で濃縮を行い、3.2Lの濃縮液を得た。さらに、濃縮液に安息香酸カルシウムを酵素重量あたり1重量%、乳酸鉄を2重量%添加し実施例1と同様な方法で混合した。この混合濃縮液を噴霧乾燥(入口温度:195℃、出口温度:90℃、蒸発量:9L/hr)し、430gのリパーゼ粉末を得た。この混合濃縮液と粉末の熱安定性試験の結果を表4に示す。
【0030】
実施例8
ストレプトマイセス スピーシーズIFO3110株(Streptmyces sp.)を50L発酵槽(仕込み30L)で、25℃、1VVM、300rpm、培地4で48時間培養を行った。培養液を遠心分離(6,000×g、10分)を行い、26Lの上澄み液を得た。上澄み液は、300Lリン酸緩衝液(pH7.0)で希釈を行い、限外ろ過膜(分画分子量;3,000、材質;ポリアクリルニトリル)により、金属が酵素に対して0.02重量%になるまで脱イオンを行った後、エバポレーター(加熱温度80℃、減圧度60cmHg)で濃縮を行い、3.2Lの濃縮液を得た。さらに、濃縮液に酵素重量あたり0.1重量%のアスコルビン酸カルシウム、0.1重量%の塩化第一鉄を添加し実施例1と同様な方法で混合した。この混合濃縮液を噴霧乾燥(入口温度:195℃、出口温度:95℃、蒸発量:10L/hr)し、510gのフォスフォリパーゼ粉末を得た。この混合濃縮液と粉末の熱安定性の結果を表4に示す。
【0031】
実施例9
キサントモナス キャンペストリスNRRL−B1459株(Xanthomonas campestris)を20L発酵槽で、30℃、250rpm、通気量1VVM、培地1で48時間培養を行った。この培養液を遠心分離(6,000×g、15分)した上澄み液を200Lトリス緩衝液(pH8.0)で希釈を行った。この希釈液を限外ろ過膜(分画分子量;10,000、材質;セルロースナイトレート)により、金属が酵素に対して0.01重量%になるまで脱イオンを行った。さらに、4℃に氷冷しながらこの脱イオン溶液に酵素重量あたり0.05重量%の硫酸カルシウムと0.05重量%の硝酸鉄を添加し、4℃に氷冷しながらスターラーで24時間攪拌を行い、混合した。この混合液を噴霧乾燥(入り口温度:191℃、出口温度:95℃、水蒸発量5L/hr)して、エステラーゼ粉末酵素850gを得た。この混合濃縮液と粉末の熱安定性試験の結果を表4に示す。
【0032】
【表4】
Figure 0003774581
【0033】
実施例10
市販リパーゼのリパーゼOF(名糖産業製)、パラターゼ(ノボ・ノルデスク製)、リパーゼD(天野製薬製)を10重量%に水道水で溶解し、それぞれの酵素溶解液5Lをそれぞれ100Lリン酸緩衝液(pH7.5)で希釈を行った。この希釈液を限外ろ過膜(分画分子量;10,000、材質;セルロースアセテート)を用いて、金属が酵素に対して0.01重量%になるまで脱イオンを行った。この脱イオン酵素溶液に、酵素重量あたり30重量%の硝酸カルシウム、10重量%の塩化第一鉄を4℃に保ちながら、スターラーで24時間攪拌を行って混合した。それぞれの混合液を無添加脱イオン酵素液を対照として熱安定性試験を行った。結果を表5に示す。
【0034】
【表5】
Figure 0003774581
【0035】
培地1
Figure 0003774581
【0036】
培地2
Figure 0003774581
【0037】
培地3
Figure 0003774581
【0038】
培地4
Figure 0003774581
【0039】
【発明の効果】
本発明によれば、脱イオンを行った脂質分解酵素溶液に、鉄塩およびカルシウム塩を添加することにより、酵素の熱安定性が向上し、また、高温で十分な酵素活性が得られ安定であるため、融点が高い基質を用いる酵素合成が可能になる。さらに、脂質分解酵素の製造においても、加熱を経る濃縮、粉末化方法利用でき、効率的な酵素粉末の製造法が可能になるため極めて有用である。

Claims (5)

  1. 金属の含有量が0.5重量%以下である脂質分解酵素に、鉄塩およびカルシウム塩を添加することを特徴とする熱安定性酵素。
  2. 脂質分解酵素が脱イオン処理を施されている請求項1記載の熱安定性酵素。
  3. 酵素の重量に対して、鉄塩が0.01〜50重量%、カルシウム塩が0.01〜70重量%である請求項1の熱安定性酵素。
  4. 鉄塩およびカルシウム塩を含む酵素溶液を乾燥して酵素粉末を得る請求項1〜3いずれか1項記載の酵素の製造方法。
  5. 乾燥が噴霧乾燥法である請求項4記載の酵素の製造方法。
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