JPH0670764A - 新規モノグリセリドリパーゼ - Google Patents

新規モノグリセリドリパーゼ

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JPH0670764A
JPH0670764A JP4230490A JP23049092A JPH0670764A JP H0670764 A JPH0670764 A JP H0670764A JP 4230490 A JP4230490 A JP 4230490A JP 23049092 A JP23049092 A JP 23049092A JP H0670764 A JPH0670764 A JP H0670764A
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JP
Japan
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enzyme
monoglyceride
fatty acid
stable
pseudomonas
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JP4230490A
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Akira Ozaki
彰 尾崎
Atsushi Tanaka
淳 田中
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Daiwa Kasei KK
Original Assignee
Daiwa Kasei KK
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 Pseudomonas属に属する菌株から、モノグリ
セリドに対して基質特異性の高いモノグリセリドリパー
ゼを見い出した。この菌を培地中で培養し、おもに菌体
内に存在する酵素を採取する。この酵素を用いて、脂肪
酸または脂肪酸エステルとグリセロールとから高純度、
高品質のモノグリセリドを合成する。 【効果】 乳化剤として広く使用されているモノグリセ
リドの合成に、上記モノグリセリドリパーゼを用いるこ
とにより、高純度、高品質のモノグリセリドが得られ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、新規なモノグリセリド
リパーゼおよびその製造法、並びに、それを用いたモノ
グリセリドの製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】モノグリセリドリパーゼは、トリグリセ
リドおよびジグリセリドに比較して、モノグリセリドを
はるかに良く加水分解する(岩井美枝子、「リパー
ゼ」、幸書房、第10ー14頁、1991年)。食品、化粧品、
医薬品の乳化剤として広く使用されているモノグリセリ
ドを、上記モノグリセリドリパーゼの逆反応を利用し
て、脂肪酸とグリセリドとから合成することが提案され
ている(特開昭61-181390)。
【0003】このような用途に用いられるモノグリセリ
ドリパーゼには、モノグリセリドに対する基質特異性が
高いこと、すなわちモノグリセリド合成能が高いこと、
および、パルミチン酸やステアリン酸のような比較的融
点の高い脂肪酸を使用した場合において、融点付近ある
いはそれ以上の温度でも反応し得、効率よくモノグリセ
リドを合成し得るほどの耐熱性を有することが望まれ
る。
【0004】モノグリセリドリパーゼを使用したモノグ
リセリドの合成に関する従来技術としては、ペニシリウ
ムシクロピウム(Penicillium cyclopium)の産生する
酵素を使用した方法(特開昭61-181390)、およびペニ
シリウムカメンベルチ(Penicillium camembertii)の
産生する酵素を使用した方法(J. Ferment. Bioeng., 7
2, 162, (1991))が報告されている。しかし、両者の酵
素は耐熱性が不十分であり、パルミチン酸やステアリン
酸のような融点の高い脂肪酸からモノグリセリドを合成
するのには適していない。一方、耐熱性のモノグリセリ
ドリドリパーゼとして、バシラスステアロサーモフィラ
ス(Bacillus stearothermophilus)の産生する、熱安
定性の高い酵素(pH7.5で10分間保持した場合70℃まで
安定)が報告されている(特開昭63-245672)が、この
酵素をグリセリドの合成に用いた報告はなされていな
い。
【0005】現在、モノグリセリドは、油脂および脂肪
酸エステルとグリセロールとを220℃以上の高温で反応
させて製造されている。この製造法には、反応温度が22
0℃以上という高温であるため着色物質やこげつき臭が
発生すること、および、生成したグリセリド中のモノグ
リセリド含有率は40〜60%であるため、合成後さらに分
子蒸留法によりモノグリセリド含有率を約90%にまで高
めなければならないことなどの問題点が存在している。
モノグリセリドリパーゼを用いたモノグリセリドの合成
法が開発されれば、これらの従来法の問題点は解決され
得る可能性がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記従来の
課題を解決するものであり、その目的とするところは、
新規なモノグリセリドリパーゼおよびその製造法、並び
にそれを用いたモノグリセリドの合成法を提供すること
にある。
【0007】
【課題を解決するための手段】発明者らは、Pseudomona
s属に属する菌株から、耐熱性に優れ、モノグリセリド
に対する基質特異性の高いモノグリセリドリパーゼを見
い出し、本発明を完成するに至った。
【0008】本発明のモノグリセリドリパーゼは、次の
性質を有する。
【0009】作用:モノグリセリドを加水分解するが
ジグリセリドおよびトリグリセリドはほとんど加水分解
しない。
【0010】至適pH:約8.0である。
【0011】安定pH範囲:40℃にて1時間保持した場
合、pH3〜10において安定である。
【0012】作用適温の範囲:至適温度は約70℃であ
る。
【0013】熱安定性:pH7.0にて30分間保持した場
合に、75℃まで安定である。
【0014】分子量:ゲル濾過クロマトグラフィーに
より測定した分子量は42,000である。
【0015】本発明のモノグリセリドリパーゼの製造法
は、上記モノグリセリドリパーゼを生産するPseudomona
s属の微生物を培地に培養し、培養物より該酵素を採取
する工程を包含する。
【0016】本発明のモノグリセリドリパーゼは、特
に、Pseudomonas sp. LP7315株(微工研菌寄第13111
号;FERM P-13111)により生産される。この菌株は、発
明者らが、滋賀県八日市市内の土壌から分離した菌であ
る。この菌学的性質を次に示す。
【0017】(1)形態および生理学的性質 本菌を培養した結果を表1〜表4に示す。特に、記載の
ない限り培養温度は30℃である。本菌の形態は、肉汁寒
天培地での培養により調べた。
【0018】
【表1】
【0019】
【表2】
【0020】
【表3】
【0021】
【表4】
【0022】表1〜表4の菌学的性質をもとに、Berge
y's Manual of Systematic Bacteriology 第1巻(Will
iams and Wilkins, Baltimore, 1984)を参照して、本
菌はPseudomonas属に属する菌株であることがわかっ
た。発明者は本菌株をPsudomonassp. LP7315 株と命名
した。本菌株は菌体内に黄色色素を蓄積する特徴を有す
る。上記Bergey's Manualによれば、Psudomonas属に属
する菌のうち黄色色素を生産する種はこれまでに17種
類知られている。それらの菌学的性質と本菌株との性質
の比較を表5に示す。
【0023】
【表5】
【0024】表5中の記号および略号の説明: +:90%以上の菌株が陽性を示す。−:90%以上の菌株が
陰性を示す。d:11〜89%の菌株が陽性を示す。w:弱い
陽性を示す。
【0025】LP:シュードモナスエスピーLP7315(Pseud
omonas sp. LP7315)、ME:シュードモナスメンドシナ
(Pseudomonas mendocina)、AL:シュードモナスアルカ
リゲネス(Pseudomonas alcaligenes)、PM:シュードモ
ナスシュードマレイ(Pseudomonas pseudomallei)、C
E:シュードモナスセパシア(Pseudomonas cepacia)、F
L:シュードモナスフラバ(Pseudomonas flava)、PF:シ
ュードモナスシュードフラバ(Pseudomonas psuedoflav
a)、PA:シュードモナスパレロニイ(Pseudomonas pall
eronii)、VE:シュードモナスベシキュラリス(Pseudom
onas vesicularis)、MA:シュードモナスマルトフィリ
ア(Pseudomonas maltophilia)、CA:シュードモナスカ
ルボキシドフラバ(Pseudomonas carboxydoflava)、P
I:シュードモナスピクトラム(Pseudomonas pictoru
m)、GE:シュードモナスゲリディコラ(Pseudomonas ge
lidicola)、ST:シュードモナスストラミネア(Pseudom
onas straminea)、BU:シュードモナスブタノボラ(Pse
udomonas butanovora)、PU:シュードモナスパウチモビ
リス(Pseudomonas paucimobilis)、EC:シュードモナ
スエチノイデス(Pseudomonas echinoides)およびHY:
シュードモナスハイドロジェノサーモフィラ(Pseudomo
nas hydrogenothermophila)である。PHB:ポリβーヒド
ロキシ酪酸である。
【0026】次に、本菌から本発明のモノグリセリドリ
パーゼを採取するための条件について説明する。
【0027】(培養条件)本菌の培養条件は特に限定さ
れない。通常の液体培地および固体培地を用いて培養が
なされる。炭素源としては、各種の油脂(大豆油および
オリーブ油など)、モノグリセリド、脂肪酸、糖類(ブ
ドウ糖など)が用いられる。窒素源としては、ペプト
ン、酵母エキス、大豆粉、コーン・スティープ・リカ
ー、カゼイン、肉エキス、アミノ酸などが用いられる。
これらの炭素源や窒素源の他に各種の塩、例えばマグネ
シウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩などが必要に応じ
て添加される。このような培地(pH6〜8)中で、培養温
度20℃〜35℃、好ましくは30℃で、24時間〜72時間、好
気的に攪拌または振盪しながら培養を行う。本発明のモ
ノグリセリドリパーゼは、主として菌体内に蓄積され
る。
【0028】(酵素の採取方法)上記培養液から本発明
の酵素を採取・精製するには既知の精製法が単独もしく
は併用して利用され得る。例えば、培養液を濾過または
遠心分離にかけて菌体を集め、この菌体を、超音波処理
およびフレンチプレス処理などの機械的破砕、リゾチー
ム処理などの酵素的破砕、あるいはトリトンX-100(登
録商標)などの界面活性剤による手段を適宜組み合わせ
て、本発明のモノグリセリドリパーゼ粗抽出液を得る。
次に、硫安などによる塩析;メタノール、エタノール、
アセトンなどの有機溶媒による沈澱法;限外濾過を行う
ことにより本酵素が得られる。この酵素は、ゲル濾過ク
ロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、そ
の他各種クロマトグラフィーを行うことにより精製され
る。精製法の一例を下記に示す。
【0029】(1)培養液を遠心分離して菌体を集め、リ
ゾチーム・リボヌクレアーゼ溶液に懸濁させて処理した
後、遠心分離して上清液を得る。(2)この上清のpHをpH5
に調製した後、沈澱を除く。(3)得られた液を硫酸アン
モニウム(40%〜50%飽和溶液)で塩析する。上記(1)〜
(3)の各工程における酵素の精製の度合を表6に示す。
【0030】
【表6】
【0031】表6における活性は、後述の活性測定法の
方法に準じて測定した値である。このように、粗抽出液
に比べ2.3倍に精製された部分精製酵素液が得られる。
【0032】(活性測定法)5%トリトンX-100で乳化し
た10%モノパルミチン(モノパルミトイルグリセロー
ル)乳化液5mlに、5%トリトンX-100ー100mMトリス-塩酸
緩衝液(pH8)4mlを加えたものを基質溶液として、これ
に本発明の酵素を含む試料液を1ml加え、55℃で30分間
反応させる。その後、アセトンーエタノール溶液(容量
比1:1)20mlを加えて反応を停止させる。この反応液
に指示薬として1%フェノールフタレイン溶液(溶媒:9
0%エタノール溶液)を2滴加えて、0.05Nの水酸化ナト
リウム溶液で滴定して遊離パルミチン酸を定量する。こ
の方法により、1分間に1μmolのパルミチン酸を遊離す
る酵素量を1単位とする。
【0033】(酵素の性質)以下に示す本発明の酵素の
各性質は、後述の実施例1で得られた部分精製酵素液を
用いて調べられた。
【0034】作用および基質特異性 モノオレイン(モノオレオイルグリセロール)、ジオレ
イン(ジオレオイルグリセロール)あるいはトリオレイ
ン(トリオレオイルグリセロール)に、本発明の酵素10
単位を加えて、40℃で作用させ、その生成物を経時的に
採取してジエチルエーテルで抽出し、薄層クロマトグラ
フィーで分析した。その結果、モノオレインを基質とす
る場合にはモノオレインの減少とオレイン酸の増加が認
められたが、これに比べて、ジオレインあるいはトリオ
レインを基質とした場合には、反応開始後24時間でも加
水分解物であるオレイン酸、モノオレインあるいはジオ
レイン(基質がトリオレインの場合)は全く検出され
ず、48時間後にようやくジオレインが基質の場合にはオ
レイン酸が、あるいはトリオレインが基質の場合にはジ
オレインとオレイン酸がそれぞれ微量検出された。
【0035】このことにより、本発明の酵素はモノグリ
セリドを速やかに加水分解するが、ジグリセリドおよび
トリグリセリドはほとんど分解しないことが判った。
【0036】さらに、モノグリセリドの合成に本発明の
酵素を用いてその作用を調べた。パルミチン酸とグリセ
ロールとの混合物に、65℃で本発明の酵素を作用させ、
グリセリド生成物をクロロホルムで抽出し、イアトロス
キャン(登録商標、ヤトロン社)を用いて、後述の定量
法に基づいて定量した。その結果、生成物はモノパルミ
チンがほとんどであり、ジパルミチン(ジパルミトイル
グリセロール)は10%以下、さらにトリパルミチン(ト
リパルミトイルグリセロール)は全く検出されなかっ
た。
【0037】これらの結果から、本発明の酵素はきわめ
てモノグリセリドに特異性が高いことが判った。
【0038】至適pH 本酵素を用いpH4〜11の条件下で、活性測定法の方法に
準じて、55℃で30分間酵素反応を行った。使用した緩衝
液は、pH4〜6の範囲は100mM 酢酸緩衝液、pH7は100mM
リン酸緩衝液、pH8〜9の範囲は100mM トリスー塩酸緩衝
液、そしてpH10〜11の範囲は100mM グリシンーNaO
H緩衝液である。酵素の相対活性を図1に示す。図1か
ら至適pHは約8.0であることがわかる。
【0039】安定pH範囲 本酵素を図2に示す各種pH条件下、40℃で1時間保持し
た後、残存活性を測定した。その結果を図2に示す。使
用した緩衝液は、pH2〜3の範囲は200mM 酢酸ナトリウム
ー塩酸緩衝液、pH4〜6の範囲は50mM 酢酸緩衝液、pH7は5
0mM リン酸緩衝液、pH8〜9の範囲は50mM トリスー塩酸緩
衝液、pH10〜11の範囲は50mM グリシンーNaOH緩衝液、pH
12では200mM グリシンーNaOH緩衝液である。図2から安
定pH範囲は40℃でpH3〜10であることがわかる。
【0040】作用適温の範囲 本酵素を40〜85℃の温度において、活性測定法の方法に
に準じて酵素反応を行い、相対活性を測定した。その結
果を図3に示す。図3から至適温度は約70℃であること
がわかる。
【0041】熱安定性 本酵素を16.7mMのリン酸緩衝液(pH7)に溶解し、40〜9
5℃の範囲の温度条件下で30分間保持した後、残存活性
を測定した。その結果を図4に示す。図4から本酵素は
pH7で30分間保持した場合に75℃まで安定であることが
わかる。
【0042】分子量 本酵素を次のようにゲル濾過クロマトグラフィーにかけ
て、その溶出位置から分子量を求めた。まず、本酵素12
0単位を、1mlの0.1M トリスー塩酸緩衝液(pH9.0)-2%ド
デシル硫酸ナトリウム(SDS)溶液に溶解させたものを
試料とし、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)〈カラ
ム:TSKゲルG3000SWXL(東ソー)、緩衝液:0.1Mリン酸
緩衝液(pH6.8)-0.1% SDS-0.1M NaCl、流速:1ml/min、
検出:280nm、試料負荷量:5μl〉に供した。試料を負荷
後、5〜11.46分の溶出液を、1フラクションあたり10滴
ずつ分取し、各フラクションのモノグリセリドリパーゼ
活性を測定して本酵素の溶出時間を求めた。その結果、
本酵素は7.70分に溶出されることがわかった(図5)。
【0043】同じ条件で、分子量測定用キット(ファル
マシア製)を分析し、分子量と溶出時間との関係を求
め、本酵素の分子量を42,000と算出した(図6参照)。
【0044】(モノグリセリドの製造法)次に、上記の
性質を有する本発明の酵素を用いたグリセリドの合成法
について説明する。
【0045】本発明において、グリセリド合成の原料と
して用いられる脂肪酸または脂肪酸エステルは、炭素数
4〜22の飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸、およびそれら
のメチル、エチル、プロピル、ブチル、ベンジル、アミ
ルあるはビニルエステル、ならびにそれらの混合物であ
り得る。あるいは、油脂の加水分解物を用いることもで
きる。これらの脂肪酸または脂肪酸エステルとグリセロ
ールとの混合物に、本発明の酵素を加えて、水分含有率
約30%以下、温度20〜85℃の条件下で、必要に応じて適
当な攪拌器により攪拌しながら、1時間〜7日間反応さ
せる。本酵素の使用量は、原料の脂肪酸または脂肪酸エ
ステルの1モルあたり、20〜100,000単位であることが
好ましく、またグリセロールの量は、脂肪酸または脂肪
酸エステルに対して、モル比で0.2〜200であることが好
ましい。反応におけるpH条件は、本酵素が有効に作用す
るpH範囲であればよい。
【0046】生成したグリセリドは、反応生成物中に残
存するグリセロール、脂肪酸または脂肪酸エステル、水
分などを、有機溶剤抽出、遠心分離、脱酸、真空乾燥な
どの手段で除去することによって精製し得る。得られた
グリセリド中のモノグリセリド含有率は充分に高いの
で、分子蒸留などの手段によりさらにモノグリセリド含
有率を高める操作は必要としない。さらに、上記反応に
おける未反応の原料は繰り返しグリセリド合成に使用し
得る。
【0047】
【作用】本発明のモノグリセリドリパーゼは、作用適温
の範囲が従来のモノグリセリドリパーゼよりも高温であ
る。そのため、これを使用してモノグリセリドの合成を
行うとき、反応温度を55〜85℃といった、酵素反応とし
てはかなり高温に設定することができる。そのため、原
料にパルミチン酸(融点63℃)やステアリン酸(融点70
℃)などの高融点の脂肪酸やそのエステルを使用した場
合でも、それらの原料あるいは生成物の融点付近やそれ
以上の温度で反応させることにより、反応を円滑かつ速
やかに進行させることができる。
【0048】
【実施例】以下に本発明を実施例につき説明する。な
お、グリセリド合成反応物はイアトロスキャンにより分
析し、原料の脂肪酸および脂肪酸エステルがグリセリド
の合成に使用された割合(以下、消費率という)、なら
びに、生成グリセリド中のモノグリセリド、ジグリセリ
ドおよびトリグリセリドの含有率は、下記の式(I)〜(I
V)により計算した。
【0049】
【数1】
【0050】〔実施例1〕 部分精製酵素液の調製 Pseudomonas sp. LP7315株を、蒸留モノグリセリド1%、
ペプトン1%、肉エキス0.5%、K2HPO4 0.1%、MgSO4・7H2O
0.02%を含有する培地(pH7)100mlを入れた振盪フラス
コ47個に植菌し、30℃で2日間往復振盪培養を行った。
培養終了後、培養液を10,000rpmで10分間遠心分離して
菌体を集めた。得られた菌体を、25mM トリスー塩酸緩衝
液で1回洗浄した後、同じ緩衝液に懸濁した。この懸濁
液にリゾチーム(卵白起源、シグマ社製)435mgと、リ
ボヌクレアーゼA(ウシ膵臓起源、シグマ社製)145mgと
を加えて37℃、20時間処理した。処理液を10,000rpmで1
5分間遠心分離して沈澱を除き、菌体からの抽出酵素液
を得た。次にこの酵素液に、1M 酢酸緩衝液(pH4)を加
えてpH5に調整し、生じた沈澱を10,000rpmで10分間遠心
分離して除き、この上清に硫酸アンモニウムを40%飽和
になるまで加え、10,000rpmで10分間遠心分離して沈澱
を除いた。さらに、この上清に硫酸アンモニウムを50%
飽和になるまで加え、10,000rpmで10分間遠心分離して
沈澱を回収した。得られた沈澱を水に溶解し、水に対し
て1日間透析して部分精製酵素液(131単位/ml)212ml
を得た(収率61%)。
【0051】〔実施例2〕 粉末酵素剤の調製 実施例1で得た部分精製酵素液を凍結乾燥して、4700単
位/gの粉末酵素剤を6.26g得た。
【0052】〔実施例3〕 原料の種類および反応温度のモノグリセリド合成に及ぼ
す影響 オレイン酸、オレイン酸メチル、パルミチン酸またはパ
ルミチン酸メチル25mgとグリセロール1gとの混合物
に、本酵素5.5単位を含む酵素液0.3ml を加え、マグネ
ティックスターラーで攪拌しながら40℃または65℃で反
応させた。その結果を表7に示す。
【0053】
【表7】
【0054】〔実施例4〕 モノパルミチン合成反応における、原料のパルミチン酸
に対するグリセロールモル比の影響 原料のグリセロール1gに対して、パルミチン酸を0.025
g、0.1g、0.4g、1.6gまたは2.78g加える。得られた混合
物に、表8に記載の酵素量を含む酵素液0.25mlを加え
て、マグネティックスターラーで攪拌しながら、65℃で
反応させた。その結果を表8に示す。
【0055】
【表8】
【0056】〔実施例5〕 モノパルミチン合成反応における、生成グリセリド含有
率の経時変化 原料のグリセロール0.5gおよびパルミチン酸0.8gに、本
酵素79単位を含む酵素液0.125mlを加えて、マグネティ
ックスターラーで攪拌しながら65℃で、種々の時間の間
反応させた。その結果を表9に示す。
【0057】
【表9】
【0058】
【発明の効果】本発明によれば、このように、新規なモ
ノグリセリドリパーゼおよびその製造法、並びにそれを
用いたモノグリセリドの合成法が提供される。このグリ
セリドリパーゼは、モノグリセリドを速やかに加水分解
するが、ジグリセリドおよびトリグリセリドはほとんど
加水分解しない。このような基質特異性、ならびに至適
温度70℃、熱安定性75℃という耐熱性に優れた特性を利
用して、高温でのモノグリセリド合成がなされ得る。従
って、モノグリセリド製造の原料として、パルミチン酸
やステアリン酸などの高融点の脂肪酸を使用しても、そ
の融点付近あるいはそれ以上の温度で反応させることに
より、モノグリセリドを高純度、高品質で得ることがで
きる。さらに、本酵素は微生物によって生産されるた
め、簡単な工程で多量に安価に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本酵素を用いてpH4〜11の条件で、活性測定法
の方法に準じて酵素反応を行ったときの、酵素の相対活
性を示す。
【図2】本酵素をpH2〜12の条件下、40℃で1時間保持し
た後の残存活性を示す。
【図3】本酵素を40〜85℃の温度において、活性測定法
の方法に準じて酵素反応を行なったときの相対活性を示
す。
【図4】本酵素を16.7mMのリン酸緩衝液(pH7)に溶解
し、40〜95℃の範囲の温度条件下で30分間保持した後の
残存活性を示す。
【図5】本酵素120単位を、1mlの0.1M トリスー塩酸緩衝
液(pH9.0)ー2%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)溶液に
溶解させたものを試料とし、高速液体クロマトグラフィ
ー(HPLC)供して、試料を負荷後、5〜11.46分の溶出液
を、1フラクションあたり10滴ずつ分取し、各フラクシ
ョンのモノグリセリドリパーゼ活性を測定して本酵素の
溶出時間を求めた結果を示す。
【図6】図5と同じ条件で、分子量測定用キット(ファ
ルマシア製)を分析し、分子量と溶出時間との関係を求
め、得られた結果を片対数グラフにプロットしたものを
示す。図中、Xは本酵素、Aはフォスフォリラーゼ(ウサ
ギ筋肉)、Bはアルブミン(ウシ血清)、Cはオボアルブ
ミン(ニワトリ卵白)、Dはカルボニックアンヒドロラ
ーゼ(ウシ赤血球)、Eはトリプシンインヒビター(大
豆)およびFはαーラクトアルブミン(牛乳)を示す。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】下記の性質を有するモノグリセリドリパー
    ゼ: 作用:モノグリセリドを加水分解するが、ジグリセリ
    ドおよびトリグリセリドをほとんど加水分解しない; 至適pH:約8.0である; 安定pH範囲:40℃にて1時間保持した場合、pH3〜10に
    おいて安定である; 作用適温の範囲:至適温度は約70℃である; 熱安定性:pH7.0にて30分間保持した場合に、75℃ま
    で安定である; 分子量:ゲル濾過クロマトグラフィーにより測定した
    分子量は42,000である。
  2. 【請求項2】Pseudomonas属に属し、請求項1に記載の
    モノグリセリドリパーゼを生産する微生物を培地に培養
    し、培養物より該酵素を採取する工程を包含する、モノ
    グリセリドリパーゼの製造法。
  3. 【請求項3】請求項1に記載のモノグリセリドリパーゼ
    の存在下に、脂肪酸または脂肪酸エステルとグリセロー
    ルとを、該脂肪酸または脂肪酸エステルの融点付近ある
    いはそれ以上の温度で反応させる工程を包含する、トリ
    グリセリドを全く含まず、およびジグリセリドを全くも
    しくはわずかしか含まないモノグリセリドの製造法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2020080851A (ja) * 2018-11-27 2020-06-04 台湾中油股▲ふん▼有限公司CPC Corporation,Taiwan 米ぬかリパーゼの調製方法
CN112574975A (zh) * 2020-09-30 2021-03-30 华南理工大学 甘油酯脂肪酶突变体g28c-p206c及其编码基因与应用

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CN112574975B (zh) * 2020-09-30 2022-04-01 华南理工大学 甘油酯脂肪酶突变体g28c-p206c及其编码基因与应用

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