JP3676841B2 - 新規リパーゼ、その製造法及びその用途 - Google Patents

新規リパーゼ、その製造法及びその用途 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、新規リパーゼ、その製造法及びその用途に関する。更には、シュードモナス属の生産する高度不飽和脂肪酸含有油脂に顕著に作用する新規リパーゼ、その製造法及びその用途に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来発見されているリパーゼは、エイコサペンタエン酸(以下、EPAという)、ドコサヘキサエン酸(以下、DHAという)、アラキドン酸等の高度不飽和脂肪酸(以下、PUFAという)含有トリグリセリドには、作用し難いと言われており、例えば、 Bottino等は、鯨油に含まれるEPAやDHAのエステルが膵臓リパーゼによる加水分解を受けがたい事を示し〔Lipids、第2巻、489-493頁(1967年)〕、そして、Jensen等も、二重結合位置の異なる15種のcis-オクタデセン酸を含む合成グリセリドに対する膵リパーゼの特異性を検討し、7−位以下に二重結合位置を持つcis-オクタデセン酸に難分解性を示すこと〔Lipids、第8巻、45-47頁(1973年)〕、且つ又、Geotrichum candidum 由来のリパーゼにおいても9−位の二重結合に難分解性を示すことを明らかにしている〔Lipids、第7巻、738-741頁(1972年)〕。
【0003】
このため、従来、微生物リパーゼのPUFA含有トリグリセリドに対する難分解性を利用して、魚油中のPUFAをグリセリン残基に残し、油脂中のPUFAを濃縮する方法が盛んになされている(特開昭61-15692号、特開昭61-15693号、特公平4-10519号、特公平5-33988号)。
【0004】
しかしながら、一方、従来の微生物リパーゼのPUFA含有油脂に対する作用が極めて低いにも係わらず、その微弱な作用を利用してPUFA含有油脂を直接的に改質しようとする試みもなされている。例えば、長田等は、4種類の微生物固定化リパーゼを用いてアシドリシスを行い、イワシ油の改質を検討し、Chromobacterium visucosumおよびMucor mieheiのリパーゼがPUFA含有油脂に対し、僅かではあるが活性を示すことを明らかにし、これらリパーゼを用いてPUFAを高濃度に含む遊離脂肪酸から、直接PUFAを高濃度に含むトリグリセリドを合成している〔油化学、第39巻、467-471頁(1990年)、日本水産学会誌、第57巻、119-125頁(1991年)〕。
【0005】
そして又、ドコサヘキサエン酸とグリセリンを基質とし、固定化リパーゼを用いてDHAトリグリセリドを合成する試みもなされている(特開平5-331105)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、既存のリパーゼのPUFA含有油脂に対する作用は、極めて微弱であり、そのため、魚油などのPUFA含有油脂の加水分解や改質、又長鎖或いは、高度不飽和脂肪酸を調製するに際して、そのエステル合成反応、エステル交換反応、アシドリシス、およびアルコリシス等を、既存のリパーゼを用いて効率的に行う事は極めて困難であり、PUFA含有油脂により高い活性を示す新たなリパーゼが求められていた。
【0007】
【課題を解決するための手段】
このような現状を鑑み、本発明者等は、PUFA含有油脂に対し高い活性を示す新規なリパーゼを生産する菌の探索を行い、目的とするリパーゼを生産する微生物を見いだすことに成功した。
【0008】
そして、得られたリパーゼは、PUFA含有油脂によく作用する基質特異性を有する新規リパーゼであることを知り、本発明を完成した。
【0009】
本発明の酵素生産菌は、新たに土壌から発見、分離されたものであり、その菌学的性質は、下記の通りである。
【0010】
(1) 形態
大きさ:0.5〜0.7×1.0〜3.0μm 桿菌
グラム染色性:陰性
運動性:多極鞭毛運動
胞子の有無:無
【0011】
(2) 各培地における生育状態
肉汁寒天平板培養:円形、光沢有り、凸状、柔らか、淡黄色〜淡褐色
肉汁ゼラチン穿刺培養:ゼラチンを液化する。
リトマス・ミルク培養:ペプトン化する。
【0012】
(3) 生理学的性質
酸素要求性:好気性
OF 型:酸化
カタラーゼ:陽性
オキシダーゼ:陽性
VP反応:陰性
インドールの生成:陰性
硝酸塩の還元性:陰性
脱窒反応:陰性
硫化水素の生成:陰性
ウレアーゼ:陽性
クエン酸分解:陽性
カゼイン分解:陽性
チロシン分解:陽性
デンプンの加水分解:陰性
DNA分解:陰性
アルギニン分解:陽性
エスクリン分解:陰性
糖類からの酸生成:D−キシロース、D−グルコース、D−フラクトース、D−ガラクトース、D−マンニットから酸を生成するが、乳糖、麦芽糖、白糖、サリシンからは酸を生成しない。
Figure 0003676841
生育温度の範囲:4〜37℃で生育(最適25〜33℃)
生育pHの範囲:pH4.6〜9.6(最適 pH6〜8.5)
生育食塩濃度:0〜5%
【0013】
以上の菌学的性質について、Bergey's Mannual of Determinative Bacteriology、第8巻(1974年)及びBergey's Mannual of Systematic Bacteriology、第1巻(1984年)を参照し、本菌をシュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescns)に属する菌と同定し、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)3−80と命名した。尚、本菌は、FERM P-14166として、工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託されている。
【0014】
本菌を培養して、本発明の酵素を生産するには、窒素源として、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスティープリカーなど、通常、微生物の培養に使用される有機窒素源、或いは塩化アンモニウム、硫酸アモニウム、尿素、硝酸アンモニウムなどの無機窒素源が使用される。炭素源としては、ラード、バター、魚油、鯨油などの動物性油脂、オリーブ油、大豆油、米糠油、綿実油、ゴマ油などの植物性油脂、オレイン酸、パルミチン酸、リノレイン酸などの脂肪酸類及びフラクトース、グルコース、マンノース、ガラクトース、異性化糖、蔗糖、マルトース、キシロース、ソルビトール、マンニトール、グリセロール、澱粉など、種々の糖、糖アルコール及び澱粉やデキストリンなども使用することができる。
【0015】
以上の窒素源と炭素源のほか、補足する培地成分として、リン酸塩、マグネシウム塩、マンガン塩、バリウム塩などが添加される。培養はpH5〜9、温度25〜40℃で1〜4日間程度、通気攪拌等の好気的培養で行い、リパーゼを主に菌体外に生成蓄積せしめる。菌体外に蓄積したリパーゼは、培養後、遠心、濾過等により除菌し、除菌液を硫酸アンモニウム塩析、或いはアセトン、アルコール等を用いる有機溶媒沈澱などの種々の方法で処理することにより、培養液から取得することができる。
【0016】
更に高度に精製された酵素標品は、疎水性担体或いはイオン交換体によるクロマトグラフィーやゲルろ過による分子篩クロマトグラフィーを行うことにより得ることができる。
【0017】
一方、菌体内酵素は、菌体破砕後、遠心分離等で無細胞抽出液を調製し、同様の精製法で取得することができる。
【0018】
以下、こうして得られた本発明の酵素の理化学的性質について記載する。
【0019】
(a) 作用
本発明の酵素は、PUFA含有油脂によく作用し、PUFAを効率的に生成せしめる。
【0020】
(b)基質特異性
本発明の酵素を炭素数18の飽和及び不飽和脂肪酸含有油脂に作用させたとき、炭素鎖18-0の飽和脂肪酸よりも炭素鎖18-1,18-2及び18-3の各種不飽和脂肪酸含有トリグリセリドによく作用し(図1に示される。)、又、炭素数20及び炭素数22の各種不飽和脂肪酸含有トリグリセリドに対しても良く作用する。
【0021】
試験例1
トリオレイン 200mg、0.1M PIPES-NaOH緩衝液(pH7.0)2ml、100 mM CaCl2 0.1ml、本発明のリパーゼ 25単位を平底ガラス容器(3×6cm)に入れ、2cmの攪拌子で500rpmで攪拌し、37℃、20分間反応させ反応後油分をジエチルエーテルで抽出し分解物をイアトロスキャンTH10(ヤトロン社製)にて分析した。その結果、加水分解率16.8%で1,3−ジオレインは僅かであり(0.4 mol%)、1,2−ジオレインが多く(28.6 mol%)生成していた。
【0022】
(c) 至適pH
至適pHは、約7〜9付近に認められた〔基質オリーブ油を0.1Mの各緩衝液の下で、37℃、20分反応(図2に示される。)〕。尚、図中で黒丸は、Macllvaine緩衝液、黒四角は、Glycine-NaOH緩衝液、白三角は、Tris-HCl緩衝液をそれぞれ示す。
【0023】
(d) 至適温度
至適温度は、約50℃付近に認められた[基質オリーブ油を0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)の下で、20分反応(図3に示される。)]。
【0024】
(e) 温度安定性
60分間の処理で約40℃付近まで安定である。[0.1%トリトンX-100を含むPIPES-NaOH緩衝液(pH7.0)(図4に示される。)]
【0025】
(f) pH安定性
約pH6〜7付近で安定である。[0.1%トリトンX-100を含むブリットンロビンソンの広域緩衝液で30℃、24時間処理(図5に示される。)]
【0026】
(g) 分子量
約64,000(SDS電気泳動法)
【0027】
(h) 活性化
カルシウムにより活性化される。
【0028】
【表1】
Figure 0003676841
【0029】
(i) 金属塩(EDTAを含む)の影響
【0030】
【表2】
Figure 0003676841
【0031】
(j)等電点
アンホライン焦点電気泳動法で測定した結果、本酵素の等電点は、約4.7付近である。
【0032】
(k) 精製法
限外濾過濃縮、エタノール分画、硫安塩析、アセトン分画、DEAE-トヨパール 65M (東ソー社製)等によるイオン交換カラムクロマトグラフィー、ブチル−スーパロース、フェニル−スーパロース(ファルマシア製)等による疎水性カラムクロマトグラフィー、トヨパール HW-55(東ソー社製)等によるゲルろ過及びクロマトフォーカシング(ファルマシア社製)などを組み合わせることにより高度に精製することができる。
【0033】
(l) 活性測定法
JIS規格 K601-88に記載の工業用リパーゼの活性度測定方法、乳化剤添加法による測定方法(B法)に準じて行った。そして、オリーブ油基質(リン酸緩衝液、pH7.0)に酵素を37℃、20分間反応させた後、1分間に1μmolの脂肪酸を遊離する酵素量を1単位とした。
【0034】
更に、本発明の酵素と既存の各種リパーゼとの基質特異性について、以下に述べるガスクロマトグラフィーを用いる基質特異性分析法に基づき、比較試験を行った。
【0035】
基質特異性分析法:
リパーゼの脂肪酸に対する特異性は、基質油脂にリパーゼを添加し、反応させた後、n-ヘキサン:エタノール:3N硫酸混合液を加え反応を停止させ、反応液中の油分をn-ヘキサンにて抽出し、遊離した脂肪酸を分離してメチルエステル化し、その脂肪酸組成をガスクロマトグラフィーにて分析する方法で行った。
【0036】
加水分解率は、アセトン:エタノール混合液を加え反応を停止させ、アルカリ溶液にて滴定する方法で求めた。
【0037】
即ち、酵素反応は、2連で行い、いずれも内径3cm、容量50mlのガラス製ふた付き容器に0.1M PIPER-NaOH緩衝液1mlと基質油200 mg、100 mM CaCl2 10μl、直径2mmのガラスビーズ30個をいれ、ふたをし、37℃で5分間振盪(振幅3cmで1分間に150回)した後、酵素液100μlを加えて、更に1時間振盪した。
【0038】
一方は、アセトン:エタノール混合液(1:1、V/V)5mlを添加し、反応を停止し、フェノールフタレイン溶液2滴を加え、0.1N 水酸化カリウム−エタノール標準液にて滴定し、紅色になる点より分解率を求めた。
【0039】
また、他の一方は、遊離した脂肪酸組成の分析の為に用いた。反応液に5mlのn-ヘキサン:エタノール:3N硫酸混合液(400:200:1,V/V)を加え反応を停止した。そして油分の存在するヘキサン層を分取後、水1mlと1N水酸化カリウム溶液400μlを加え、アルカリ性にし、水層を分取した。次に、水層に対し、1N塩酸を800μlを加え、酸性にし、n-ヘキサン4mlを加え、酵素反応で遊離した脂肪酸をn-ヘキサン層に抽出した。この遊離脂肪酸画分に三フッ化ほう素メタノール溶液メタノール錯体を加えてメチルエステル化した後、ガスクロマトグラフィーにて脂肪酸の分析を行った。
【0040】
各種基質油脂より酵素反応により遊離された脂肪酸量は、下記の計算式により求めた。
【0041】
ガスクロマトグラフィーの条件は、次の通りである。
装置:島津GC-9Aガスクロマトグラフィー;カラム:AdavanceDS 60-80 mesh Chromosorb W,2m×3mmガラスカラム;カラム温度:190−220℃;注入温度:240℃;検出器:FID;キャリヤーガス:N2 50 ml/min
【0042】
【数1】
Figure 0003676841
【0043】
尚、数式1中の記号及び数値は、次のことを意味する。
H:総加水分解率(%)
a:試料溶液の滴定に要したN/10水酸化カリウム−エタノール標準液量(ml)
b:空試験に要したN/10水酸化カリウム−エタノール標準液量(ml)
f:0.1N水酸化カリウム−エタノール標準液のファクター
0.1:0.1N水酸化カリウム−エタノール標準液濃度
0.2:基質油の量(g)
S:ケン化価
56.11:水酸化カリウムの分子量
【0044】
任意の一脂肪酸の加水分解のされ易さを示す値F及び任意の一脂肪酸の加水分解率Hiは、それぞれ次の数式2及び数式3で求められる。
【0045】
【数2】
Figure 0003676841
【0046】
【数3】
Figure 0003676841
【0047】
尚、数式2又は数式3中の記号は、次のことを意味する
fi:リパーゼの加水分解後遊離した任意の一脂肪酸のモル分率
f0i:任意の一脂肪酸の未分解油脂中のモル分率
H:総加水分解率(%)
【0048】
試験例2
イカ油〔DHA(22-6) 17.7%, EPA(20-5) 15.8%含有、理研ビタミン社製〕、タラ肝油(EPA 12.12%,アラキドン酸(20-4) 8.96%含有、理研ビタミン社製)、アラキドン酸含有油脂(アラキドン酸 25.41%,EPA 4.05%含有、サントリー社製)、ジホモ−γ−リノレン酸含有油脂(ジホモ−γ−リノレン酸(20-3,n-6系PUFA) 23.2%,γ−リノレン酸(18-3,n-6系PUFA) 9.86%含有、サントリー社製)、及びミード酸含有油脂(ミード酸(20-3,n-9系PUFA)12.24%、サントリー社製)のそれぞれに、本発明の酵素、クロモバクテリウム由来のリパーゼ(Chromobacterium viscosum, 旭化成社製)、リゾプス由来のリパーゼ(Rhizopus delemar, 生化学工業社製)、カンジダ由来のリパーゼ(Candida cylindracea, シグマ社製)、アスペルギルス由来のリパーゼ(Aspergillus niger, 商品名:リパーゼ−AP,天野製薬社製)及びシュードモナス由来のリパーゼ(Pseudomonas sp.,商品名:リパーゼ−AK,天野製薬社製)の各種市販リパーゼを加水分解率が5から10%になるように添加し、基質特異性分析法に述べた条件と同一の条件で反応後、遊離する脂肪酸の組成を上記基質特異性分析法にて分析し、得られた各脂肪酸の遊離率を、添加したリパーゼ1単位当たりの分解率(Hi/U)として図6〜図10に示した。
【0049】
尚、図6は、基質がイカ油の場合であり、図7は、基質がタラ肝油の場合であり、図8は、基質がアラキドン酸含有油脂の場合であり、図9は、基質がジホモ−γ−リノレン酸含有油脂の場合であり、図10は、基質がミード酸含有油脂の場合である。
【0050】
図6〜図10で明らかなように、イカ油、タラ肝油、アラキドン酸含有油脂、ジホモ−γ−リノレン酸含有油脂、ミード酸含有油脂の場合の何れの基質においても、本発明の酵素は、既存のリパーゼと比較して、EPA、DHA、アラキドン酸等のPUFAにおけるHi/U値が著しく大きく、不飽和脂肪酸を含有する油脂の不飽和脂肪酸部分に極めて速やかに作用することが明らかとなった。
【0051】
試験例3
大豆油〔パルミチン酸(18-0) 4.1%, オレイン酸(18-1) 23.8%,リノール酸(18-2) 53.9%, α−リノレン酸(18-3,n-3系PUFA) 7.4%含有、和光純薬工業社製〕に、本発明の酵素、クロモバクテリウム由来のリパーゼ(Chromobacterium viscosum,旭化成社製)、リゾプス由来のリパーゼ(Rhizopus delemar,生化学工業社製)、カンジダ由来のリパーゼ(Candida cylindracea,シグマ社製)、アスペルギルス由来のリパーゼ(Aspergillus niger,商品名:リパーゼ−AP,天野製薬社製)及びシュードモナス由来のリパーゼ(Pseudomonas sp.,商品名:リパーゼ−AK,天野製薬社製)の各種市販リパーゼを加水分解率が5から10%になるように添加し、基質特異性分析法に述べた条件と同一の条件で反応後、遊離する脂肪酸の組成を上記基質特異性分析法にて分析し、パルミチン酸(18-0)のF値を100とする相対値で示した。その結果は図11に示される。
【0052】
図11から明らかなように、大豆油を基質とし、生成する脂肪酸の各成分のF値において、本発明の酵素で処理した場合は、α−リノレン酸、リノール酸等の不飽和脂肪酸の値が飽和脂肪酸のパルミチン酸の値よりはるかに大きく、一方、既存のリパーゼで処理した場合には、飽和脂肪酸のパルミチン酸の値が、α−リノレン酸、リノール酸等の不飽和脂肪酸の値と同等若しくはより大きいことが分かる。
【0053】
即ち、上記試験例2及び3の結果から明らかなように、本発明の酵素は、既存の他のリパーゼとは、作用及び基質特異性において明らかに異なっている事が分かる。
【0054】
それ故、本発明者が自然界からのスクリーニングにより得たシュードモナス・フルオッレセンス(Pseudomonas fluorescens)3-80 FERM P-14166の生産するリパーゼは、新規リパーゼといえるものである。
【0055】
試験例4
更に、本発明者等は、PUFA含有油脂のイカ油を基質とし、本発明の酵素と同様にPUFAに強く作用するところの基質特異性を有するリパーゼを、シュードモナスに属するタイプカルチャーからスクリーニングした。
【0056】
【表3】
Figure 0003676841
【0057】
その結果、表3に示すシュードモナス・オバリス(Pseudomonas ovalis)、シュードモナス・アウレオファシエンス(Pseudomonas aureofaciens)、シュードモナス・クロロラフィス(Pseudomonas chlororaphis)等のシュードモナスに属する広範囲の菌株がシュードモナス・フルオッレセンス(Pseudomonas fluorescens)3-80(FERM P-14166)と同様にPUFAに強く作用する特徴を有する酵素を産生することを明かにした。
【0058】
本発明の酵素をPUFA含有油脂に作用させる場合の作用条件は、本発明の酵素が、その活性を維持できる条件で有れば特に限定されないが、本発明の酵素は、低加水分解条件下においてもよくPUFAを遊離することを特徴としている。従って、本発明においては、本発明の酵素をPUFA含有油脂に作用させることによって、夾雑物の少ないPUFAを高純度に取得することができる。尚、試験例5で明らかなように、本発明の酵素は、高加水分解率においても、市販の酵素〔例えば、シュードモナス由来のリパーゼ(Pseudomonas sp.,商品名:リパーゼ−AK,天野製薬社製)〕と同等、又はそれ以上にPUFAを遊離することができる。
【0059】
試験例5
ミード酸含有油脂(ミード酸(20-3,n-9系PUFA)12.24%、サントリー社製)及びイカ油〔DHA(22-6) 17.7%, EPA(20-5) 15.8%含有、理研ビタミン社製〕を本発明の酵素及び市販のリパーゼの一例としてシュードモナス由来のリパーゼ(Pseudomonas sp., 商品名:リパーゼ−AK,天野製薬社製)でそれぞれ加水分解し、反応液を経時的にサンプリングし、油脂組成と遊離した脂肪酸画分中のミード酸、EPA及びDHAの含量を分析した。即ち、ミード酸含有油脂及びイカ油3g、0.1M PIPES-NaOH緩衝液(pH7.0)3ml、100 mM塩化カルシウム0.5 ml、リパーゼ3000 U、ガラスビーズ30個(直径5mm)を100 ml容三角フラスコに入れ、窒素ガスで置換後密栓して、30℃で振盪し(150ストローク/min、ピッチ3cm)反応させ、各時間の反応液の油分をクロロホルム−メタノール(2:1,V/V)にて抽出し、油脂成分をイヤトロスキャンTH-10にて定量し、一方、抽出した油分をシリカゲル薄層クロマトグラフィー(20cm×20cm、展開溶媒n-ヘキサン:ジエチルエーテル:ギ酸=70:30:1,V/V)にて展開し、遊離脂肪酸画分をかきとり、10%塩酸メタノールにてメチルエステル化してミード酸、EPA及びDHAの含量をガスクロマトグラフィーにより定量した。遊離されたPUFA量は、加水分解前油脂中に含有された各PUFA量に対する割合で示した。その結果、図12〜図14より明らかなように、本発明の酵素は、低加水分解率において、ミード酸、EPA及びDHA等のPUFAを良く遊離し、高加水分解率においても市販のリパーゼと同等、又は、それ以上にPUFAを遊離できる。
【0060】
それ故、本発明は、本発明の酵素をPUFA含有油脂に作用させることにより、PUFA含有油脂からアラキドン酸、ミード酸、EPA及びDHA等のPUFAを夾雑物を少なく、高純度に取得する方法、或いは、本発明の酵素及び市販のリパーゼをPUFA含有油脂に作用させることによって、PUFAを取得する方法を提供するものである。
更に又、本発明は、本発明の酵素と市販のリパーゼとを組み合わせて使用することによって、PUFA含有油脂から複数のPUFAをより効率良く分別取得する方法をも提供するものである。
【0061】
試験例6
次に、本発明者等は、本発明の酵素及び市販の3種リパーゼ〔クロモバクテリウム由来のリパーゼ(C. viscosum.,商品名:リパーゼ−TOYO,旭化成社製)、カンジダ由来のリパーゼ(Candida cylindracea,シグマ社製)〕及び〔シュードモナス由来のリパーゼ(Pseudomonas sp.,商品名:リパーゼ−AK,天野製薬社製)を用い、グリセリンとオレイン酸、EPA、DHAの各遊離脂肪酸とでグリセリド合成を行ない、各種リパーゼのグリセリド合成能を比較した。尚、用いた遊離脂肪酸のうちEPAとDHA(何れもNIPPON CHEMICAL FEED Co.,Ltd.社製)は、各エチルエステルから定法(脂質分析法入門、157頁、藤野安彦著、学会出版センター社出版)に従い調製したものを用いて行った。即ち、グリセロール4g、各脂肪酸0.3g、100 mM 塩化カルシウム0.1 ml、0.1M PIPES-NaOH緩衝液(pH7.0)に溶解した各酵素1ml(500 u)、直径2 cmのスターラーバーを30ml容サンプル瓶(内径2.5cm、高さ5.5cm)に入れ、窒素ガスにて空気を置換後密栓し、30℃にて1時間攪拌し(500ppm)反応を行ない、反応後アセトン−エタノール混液(1:1)を10ml加え反応を停止し、フェノールフタレン溶液を加え、0.1Nエタノール性水酸化カリウム溶液にて滴定した。そして、オレイン酸に対する合成率を100%とした相対活性で、各酵素のそれぞれの遊離脂肪酸に対する合成率を求めた。その結果は、表4に示される。
【0062】
【表4】
Figure 0003676841
【0063】
表4より明らかなように、本発明の酵素は、市販の各リパーゼに比較し、EPA、DHA、アラキドン酸、ミード酸等の高度不飽和遊離脂肪酸の合成能が高いことが分かる。
【0064】
試験例7
なお更に、本発明者等は、本発明の酵素を用い、トリオレインと各遊離脂肪酸とでアシドリシス反応を行い、トリオレインへの各遊離脂肪酸の取り込み量の検討をも試みた。即ち、トリオレイン100μmole、遊離脂肪酸100μmole、固定化リパーゼ(精製した本発明の酵素を2,000 U/mlになるように10mMリン酸緩衝液(pH7.0)にて希釈し、この酵素液2mlにセライト545 2gを用いてスラリー状にし、室温にて20時間真空乾燥して調製した)100mg、n-ヘキサン3ml、水5μlを30ml容サプル瓶(内径2.5cm、高さ5.5cm)に入れ、窒素ガスにて空気を置換後密栓し、20℃にて振盪して(振幅3cm、150ストローク)反応を行った。用いた遊離脂肪酸は、DHA、EPA(何れもNIPPON CHEMICAL FEED Co.,Ltd.社製)、アラキドン酸、ジホモ−γ−リノレン酸、ミード酸(何れもサントリ−社製)の各エチルエステルから定法(脂質分析法入門、157頁、藤野安彦著、学会出版センター社出版)に従い調製したものを用いて行った。反応後、反応液の300μlを取りシリカゲル薄層クロマトグラフィー(20cm×20cm、展開溶媒n-ヘキサン:ジエチルエーテル:ギ酸=70:30:1V/V)にて展開し、トリグリセリド画分をかきとり10%塩酸−メタノールにてメチルエステル化してトリグリセリド画分中の各脂肪酸の含量をガスクロマトグラフィーにより定量し、トリオレインへの各脂肪酸の取り込み量(mol%)を検討した。その結果は、図15に示される。
図15から明らかなように、本発明の酵素は、何れの高度不飽和脂肪酸をも効率よく取り込むことが分かる。
【0065】
以下、実施例により本発明の内容を更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例により何等限定されるものではない。
【0066】
【実施例】
実施例1
ポリペプトン1.0%、酵母エキス0.3%、デキストリン1.0%、グリセロール0.2%、K2HPO4 0.2%、MgSO4・7H2O 0.05%、アデカノールLG126 0.05%からなる前培養培地(pH7.0)80mlにシュードモナス・フルオッレセンス(Pseudomonas fluorescens)3-80(FERM P-14166)を接種し、28℃で17時間シェカー培養して種培養を調製した。次に、あらかじめ常法により殺菌した、肉エキス2.0%、酵母エキス0.3%、グリセロール0.2%、K2HPO4 0.2%、MgSO4・7H2O 0.05%、タラ肝油1.0%、アデカノールLG126 0.05%からなる本培養培地(pH7.0)3Lに上記種培養 80mlを接種し、28℃で2日間通気攪拌(0.75VVm,500rpm)培養した。培養後、遠心分離し、リパーゼ活性として、10.0u/mlの除菌液2.8Lを得た。
【0067】
次に、この除菌液を限外濾過(分画分子量6000)により濃縮し、アルコールを加えて有機溶媒沈澱させ、この沈澱を10mM Tris-HCl 緩衝液(pH7.5)に溶解し、同緩衝液で透析後、同緩衝液で平衡化したDEAE-トヨパールカラムに供した。吸着した酵素は、食塩濃度を上昇させる直線的濃度勾配法にて溶出し、活性画分を限外濾過により濃縮した。この濃縮液を0.2M食塩を含む50mMリン酸緩衝液(pH7.0)で平衡化したトヨパールHW-50カラムに供し、ゲル濾過を行った。
【0068】
次に、この酵素液に0.5Mまで硫酸アンモニウムを添加し、0.5M 硫酸アンモニウムを含む50 mM リン酸緩衝液(pH7.0)で平衡化したフェニル−スパーロースカラム(FPLC)に供し、硫酸アンモニウムの濃度を直線的に下降させる濃度勾配法にて溶出させた。さらに得られた酵素活性画分を5mMリン酸緩衝液(pH7.0)で透析し、同緩衝液で平衡化したヒドロキシアパタイトカラムに供した。リン酸濃度を0.5M まで直線濃度勾配法で上昇させ、目的酵素を溶出し、脱塩濃縮した。そして濃縮した酵素をクロマトフォーカシングにて分画し、精製酵素標品を得た。
【0069】
実施例2
肉エキス2%、酵母エキス0.5%、グリセロール1.2%、K2HPO4 0.2%、MgSO4・7H2O 0.05%、アデカノールLG126 0.05%からなる液体培地(pH7.0)3Lを5Lジャーファーメンターに入れ、121℃、30分間加圧滅菌した後、予め同培地で18時間振盪培養したシュードモナス・フルオッレセンス(Pseudomonas fluorescens)3-80(FERM P-14166)の前培養液を接種し、28℃、16時間(0.75VVm,500rpm)通気培養した。培養液を遠心分離した上清のリパーゼ活性は40u/mlであった。
【0070】
得られた培養液液の遠心上清を限外ろ過(分画分子量6000)により濃縮し、0.5Mになるように硫酸アンモニウムを加え0.5M硫酸アンモニウムを含む20mMリン酸緩衝液(pH7.0)にて平衡化したブチル−トヨパール ゲル200mlを加え、未吸着画分を除去し、同緩衝液でゲルを洗浄後、10%ショ糖、0.1%トリトンX-100を含む10mMリン酸緩衝液にてリパーゼを溶出した。得られたリパーゼ画分を限外濃縮後、10%ショ糖、0.1%トリトンX-100を含む10mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.5)に対し、透析し、同緩衝液で平衡化したDEAE−トヨパール(2×17cm)に注入した。カラムを同緩衝液で洗浄後、0.5M塩化ナトリウムを含む同緩衝液の直線的濃度勾配法にて溶出し、リパーゼ画分を限外ろ過により濃縮した。
【0071】
この濃縮液を0.2M食塩、10%ショ糖を含む50mMリン酸緩衝液(pH7.0)で平衡化したSuperdex200HR10/30カラム(ファルマシア製FPLC使用)によりゲルろ過を行い、活性画分を限外ろ過により濃縮して精製リパーゼを得た。こうして得られた精製リパーゼの比活性は9844単位/mg、SDS電気泳動法において単一バンドを示し、その分子量は約64,000であった。
【0072】
実施例3
実施例1と同じ前培養培地80 ml にシュードモナス・オバリス(Pseudomonas ovalis )No.111 AKU 820 を接種し、28℃で18 時間シェカー培養して種培養を調製した。次に、あらかじめ常法により殺菌した、ポリペプトン 0.5%、酵母エキス0.5%、グリセロール1.0%、K2HPO4 0.2%、MgSO4・7H2O 0.05%、アデカノールLG126 0.05%からなる本培養培地(pH7.0)3Lに上記種培養 80mlを接種し、28℃で24時間通気攪拌(0.75VVm,500rpm)培養した。培養後、遠心分離し、リパーゼ活性として4.5u/mlの除菌液2.8Lを得た。次に、この除菌液を実施例1と同様の精製方法を行って、精製酵素標品を得た。
【0073】
実施例4
実施例1と同じ前培養培地80 mlにシュードモナス・オウレオファシエンス(Pseudomonas aureofaciens )IFO 3521 を接種し、28℃で18時間シェカー培養して種培養を調製し、その種培養液80mlを実施例2記載の本培養培地3Lに接種し、28℃で24時間通気攪拌(0.75VVm,500rpm)培養した。培養後、遠心分離し、リパーゼ活性として9.8u/mlの除菌液2.8Lを得た。次に、この除菌液を実施例1と同様の精製方法を行って、精製酵素標品を得た。
【0074】
実施例5
実施例1と同じ前培養培地80mlにシュードモナス・クロロラフィス(Pseudomonas chlororaphis )IFO 3904 を接種し、28℃で18時間シェカー培養して種培養を調製し、この種培養液80mlを実施例1記載の本培養培地3Lに接種し、28℃で2日間通気攪拌(0.75VVm,500rpm)培養した。培養後、遠心分離し、リパーゼ活性として6.2u/mlの除菌液 2.8Lを得た。次に、この除菌液を実施例1と同様の精製方法を行って、精製酵素標品を得た。
【0075】
実施例6
精製イカ油〔DHA(22-6) 17.7%, EPA(20-5) 15.8%含有、理研ビタミン社製〕、30 g、0.1M PIPES-NaOH緩衝液(pH7.0)30 ml、100 mM 塩化カルシウム5 ml、実施例2に準じて得られた本発明の酵素30,000 Uを200 ml容メジューム瓶に入れ窒素ガスで置換後密栓して、30℃で1時間攪拌し(500rpm)反応させ(加水分解率は24.4%)、反応後、森岡等の方法〔油化学、36巻816−820(1987)〕により反応液からリパーゼ反応で遊離した脂肪酸を抽出し、溶媒を除去後、常法に従い尿素付加法及びそれに続く低温分別法〔何れの方法も、W.W.Christie,"Lipid Analysis",Pergamon Press,146-147頁(1973)に記載されている。〕を行うことにより濃縮 EPA(液中含量56.6%)1.1 gを得た。
【0076】
そして、未分解グリセリドを含むヘキサン層にエタノールを等量加え、ヘキサン層を取る操作を数回繰り返すことによって、未分解のジグリセリド及びモノグリセリドを除去した。こうして得られたトリグリセリド10.6 gに0.1M PIPES-NaOH緩衝液(pH7.0)30 ml、100 mM 塩化カルシウム5 ml、市販のシュードモナス由来のリパーゼ(Pseudomonas sp.,商品名:リパーゼ−AK,天野製薬社製)10,000 Uを200 ml容メジューム瓶に入れ窒素ガスで置換後密栓して、30℃で5時間攪拌し(500rpm)反応させ(加水分解率は57.8%)、反応後、森岡等の方法〔油化学、36巻816−820(1987)〕により反応液からリパーゼ反応で遊離した脂肪酸を抽出し、溶媒を除去後、常法に従い尿素付加法及びそれに続く低温分別法〔何れの方法も、W.W.Christie,"Lipid Analysis",Pergamon Press,146-147頁(1973)に記載されている。〕を行うことにより濃縮 DHA(液中含量61.5%)0.96 gを得た。
【0077】
実施例7
グリセロール4g、EPA 0.3g、100 mM 塩化カルシウム0.1 ml、0.1M PIPES-NaOH緩衝液(pH7.0)に溶解した実施例2に準じて得られた本発明の酵素1ml(500 u)、直径2 cmのスターラーバーを30ml容サンプル瓶(内径2.5cm、高さ5.5cm)に入れ、窒素ガスにて空気を置換後密栓し、30℃にて1時間攪拌し(500ppm)反応を行った。反応後アセトン−エタノール混液(1:1)を10ml加え反応を停止し、フェノールフタレン溶液を加え、0.1Nエタノール性水酸化カリウム溶液にて滴定し、本発明の酵素のオレイン酸に対する合成率を100%とし、EPAに対する合成率を求めたところ104.2%であった。
【0078】
実施例8
グリセロール4g、DHA 0.3g、100 mM 塩化カルシウム0.1 ml、0.1M PIPES-NaOH緩衝液(pH7.0)30 ml、に溶解した実施例1に準じて得られた本発明の酵素1ml(500 u)、直径2 cmのスターラーバーを30ml容サンプル瓶(内径2.5cm、高さ5.5cm)に入れ、窒素ガスにて空気を置換後密栓し、30℃にて1時間攪拌し(500ppm)反応を行った。反応後アセトン−エタノール混液(1:1)を10ml加え反応を停止し、フェノールフタレン溶液を加え、0.1Nエタノール性水酸化カリウム溶液にて滴定し、本発明の酵素のオレイン酸に対する合成率を100%とし、DHAに対する合成率を求めたところ57.4%であった。
【0079】
実施例9
まず、精製した本酵素及び市販の3種リパーゼ〔クロモバクテリウム由来のリパーゼ(C. viscosum.,商品名:リパーゼ−TOYO,旭化成社製)、カンジダ由来のリパーゼ(Candida cylindracea,シグマ社製)〕及び〔シュードモナス由来のリパーゼ(Pseudomonas sp.,商品名:リパーゼ−AK,天野製薬社製)を5,000 U/mlになるように10 mMリン酸緩衝液(pH7.0)にて希釈又は溶解し、この酵素液2mlにセライト545 2gを加え乳鉢を用いてスラリー状にし、室温にて20時間真空乾燥し各固定化リパーゼを調製した。次いで、トリオレイン271.2μmole、遊離脂肪酸271.2μmole、固定化リパーゼ100mg、n-ヘキサン4.56ml、あらかじめ求めた各酵素の最適水分量である水、それぞれ5μl,10μl,5μl,10μlを30ml容サンプル瓶(内径2.5cm、高さ5.5cm)に入れ、窒素ガスにて空気を置換後密栓し、10℃,30℃にて24時間振盪して(振幅3cm、150ストローク)反応を行った。用いた遊離脂肪酸は、DHA、EPA(何れもNIPPON CHEMICAL FEED Co.,Ltd.社製)エチルエステルから定法(脂質分析法入門、157頁、藤野安彦著、学会出版センター社出版)に従い調製したものを用いて行った。反応後、反応液の300μlを取りシリカゲル薄層クロマトグラフィー(20cm×20cm、展開溶媒n-ヘキサン:ジエチルエーテル:ギ酸=70:30:1V/V)にて展開し、トリグリセリド画分をかきとり10%塩酸−メタノールにてメチルエステル化してトリグリセリド画分中の各脂肪酸の含量をガスクロマトグラフィーにより定量し、トリオレインへの各脂肪酸の取り込み量(mol%)を検討した。その結果、10℃及び30℃反応でのEPAの取り込みは図16に、そして10℃反応でのDHAの取り込みは図17にそれぞれ示される。
【0080】
図16及び図17から明らかなように、本発明の酵素の場合、市販の酵素がほとんど作用しないか、或いは僅かにしか作用しない低温度においても非常に速やかにEPAやDHA等のPUFAとアシドリシス反応を行うことができる。従って、本発明の酵素は高温度下で酸化されやすい特徴を有するPUFAを含有するトリグリセリドをアシドリシス反応で合成する場合極めて有利である。
【0081】
【発明の効果】
本発明の酵素は、既存のリパーゼに比して PUFAに高い活性を示す。それ故、魚油などのPUFA含有トリグリセリドの油脂の加水分解や改質、又長鎖或いは、高度不飽和脂肪酸を調製するに際して、そのエステル合成反応、エステル交換反応、アシドリシス、およびアルコリシス等をより効率的に行うために有利に使用されうる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の酵素の基質特異性を示す。
【図2】本発明の酵素の至適pHを示す。
【図3】本発明の酵素の至適温度を示す。
【図4】本発明の酵素の温度安定性を示す。
【図5】本発明の酵素のpH安定性を示す。
【図6】本発明の酵素と既存のリパーゼとをイカ油に作用させた場合の酵素1単位当たりの脂肪酸エステルの分解率を示す。
【図7】本発明の酵素と既存のリパーゼとをタラ肝油に作用させた場合の酵素1単位当たりの脂肪酸エステルの分解率を示す。
【図8】本発明の酵素と既存のリパーゼとを高アラキドン酸含有油脂に作用させた場合の酵素1単位当たりの脂肪酸エステルの分解率を示す。
【図9】本発明の酵素と既存のリパーゼとをジホモ−γ−リノレン酸含有油脂に作用させた場合の酵素1単位当たりの脂肪酸エステルの分解率を示す。
【図10】本発明の酵素と既存のリパーゼとをミード酸含有油脂に作用させた場合の酵素1単位当たりの脂肪酸エステルの分解率を示す。
【図11】本発明の酵素と既存のリパーゼとを大豆油に作用させた場合の脂肪酸に対する特異性を示す。
【図12】本発明の酵素と既存のリパーゼとをミード酸含有油脂に作用させた場合の加水分解率と遊離ミード酸量との関係を示す。
【符号の説明】
図中の黒丸は、本発明の酵素を用いた場合であり、白四角は市販のシュードモナス由来のリパーゼ(Pseudomonas sp.,商品名リパーゼ−AK,天野製薬社製)を用いた場合である。
【図13】本発明の酵素と既存のリパーゼとをイカ油に作用させた場合の加水分解率と遊離EPA量との関係を示す。
【符号の説明】
図中の黒丸は、本発明の酵素を用いた場合であり、白四角は市販のシュードモナス由来のリパーゼ(Pseudomonas sp.,商品名リパーゼ−AK,天野製薬社製)を用いた場合である。
【図14】本発明の酵素と既存のリパーゼとをイカ油に作用させた場合の加水分解率と遊離DHA量との関係を示す。
【符号の説明】
図中の黒丸は、本発明の酵素を用いた場合であり、白四角はシュードモナス由来のリパーゼ(Pseudomonas sp.,商品名リパーゼ−AK,天野製薬社製)を用いた場合である。
【図15】本発明の酵素を用いたアシドリシス反応による、トリオレインへの各脂肪酸の取り込み量を示すものである。
【図16】本発明の酵素と市販の酵素を比較して用いた場合のアシドリシス反応による、トリオレインへのEPAの取り込みを示すものである。
【図17】本発明の酵素及び市販の酵素を比較して用いた場合のアシドリシス反応による、トリオレインへのDHAの取り込みを示すものである。

Claims (7)

  1. 下記の理化学的性質を有する新規リパーゼ。
    (a) 作用:高度不飽和脂肪酸含有油脂によく作用し、高度不飽和脂肪酸を効率的に生成する。
    (b)基質特異性:炭素数18の飽和及び不飽和脂肪酸含有油脂に作用させたとき、炭素鎖18-0の飽和脂肪酸よりも炭素鎖18-1,18-2及び18-3の各種不飽和脂肪酸含有トリグリセリドに良く作用し、又、炭素数20及び炭素数22の各種不飽和脂肪酸含有トリグリセリドに対しても良く作用する。
    (c) 至適pH:7 9
    (d) 至適温度:50 ℃であり、 45 ℃〜 55 ℃において 70% 以上の相対活性を有する。
    (e) 温度安定性: 60 分間の処理において 40 ℃以下では、残存活性が 95 %以上である。
    (f) pH 安定性: pH6 7 で安定である。
    (g) 分子量: 64,000 SDS 電気泳動法)
    (h) 活性化:カルシウムにより活性化される。
    (i) 金属塩の影響: Cu イオン、 Ni イオン及び Co イオンにより阻害され、 Mg イオンによって相対活性が 97 %である。
    (j) 等電点:4.7
  2. 請求項1記載の新規リパーゼ生産能を有するシュードモナス属菌を培養して、該リパーゼを生産し、これを採取することを特徴とする新規リパーゼの製造法。
  3. 高度不飽和脂肪酸含有油脂に請求項1記載の新規リパーゼを作用させて高度不飽和脂肪酸を遊離させ、これを抽出、回収せしめることを特徴とする高不飽和脂肪酸高度含有油脂からの高度不飽和脂肪酸の取得方法。
  4. 高度不飽和脂肪酸含有油脂に請求項1記載の新規リパーゼと市販のリパーゼとを組み合わせることにより、種々の高度不飽和脂肪酸を分別し、抽出し、回収せしめることを特徴とする高不飽和脂肪酸高度含有油脂からの高度不飽和脂肪酸の分別取得方法。
  5. グリセロールと高度不飽和脂肪酸とを請求項1記載の新規リパーゼ存在下で反応させて高度不飽和脂肪酸のグリセロールエステルを生成せしめることを特徴とする高度不飽和脂肪酸含有グリセリドの合成法。
  6. トリグリセリドと遊離の高度不飽和脂肪酸とにおいて、請求項1記載の新規リパーゼを用いるアシドリス反応によって、トリグリセリド中に高度不飽和脂肪酸を取り込ましめること特徴とする高度不飽和脂肪酸含有グリセリドの生成法。
  7. トリグリセリドと遊離の高度不飽和脂肪酸とにおいて、請求項1記載の新規リパーゼを用いるアシドリス反応を20℃以下で行うことによって、トリグリセリド中に高度不飽和脂肪酸を取り込ましめること特徴とする高度不飽和脂肪酸含有グリセリドの生成法。
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