JP3772339B2 - アクチュエータ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、ハウジングの長手両端部を端部材に結合し、ハウジング内側に設けた軸線方向の内室に内側移動体を軸線方向へ移動するように収容し、ハウジングに軸線方向全長に延びるスリットを設け、内側移動体と一体的な力伝達部材をスリットに貫通させてその力伝達部材にハウジング外側に位置する外側移動体を一体に設け、スリットを内側と外側から塞ぐ一対のシールバンドを力伝達部材の内外に長手方向に貫通させてそれらの長手両端部を端部材に取り付け、内側移動体により前後に区画される前後の内室に圧流体を給排 することで内側移動体が軸線方向移動して内側移動体の移動を外側移動体に伝達するようにしてあるアクチュエータに関する。
【0002】
【従来の技術】
こうしたアクチュエータは、内側移動体がピストン体であって、ピストン体を圧力空気などの流体圧力により移動させるようになっているロッドレスシリンダとよばれるものとして公知である。また、類似のものとしては、内側移動体をモータ駆動によるネジ送り機構で移動させるようにした電動式アクチュエータとして公知である。前者としては(1)ハウジングとしてのシリンダチューブ(シリンダバレル)内側に形成された1つのシリンダ室(内室)に、内側移動体としての1つのピストンを移動自在に案内させ、そのピストンと一体的な力伝達部材(ピストンヨーク)を、ハウジングに形成した1つの軸線方向スリットを通じてハウジング外側に露出させ、あるいは,その露出部分を外側移動体としたり、別部材の外側移動体に連結したりしたもの(例えば特公昭51−28793号や実開昭61−200908号など)、(2)ハウジングの軸線が曲線となっているもの(特開平8−261209号など)、(3)外側移動体がハウジングに平行に設けたガイドレールに案内されているもの(特開平9−210012号や特許2675720号)などがある。
【0003】
また、後者のものとしては、(4)例えば、アメリカ特許4566738号、実公平8―4995号に見られる。これによれば、上記ロッドレスシリンダと異なる点は、内側移動体が流体圧力で移動するものでなく、送りネジ機構でハウジング内側の内室に案内されている点であり、1つの内室に対して、ハウジングに設けたスリットが1つであること、内側移動体と一体の力伝達部材が前記スリットを通じてハウジング外側に内側移動体の移動を伝達するようになっている点は、上記ロッドレスシリンダと同じである。
(5)一方、ハウジングが互いに平行な2つ、または、3つのシリンダ室を有しており、各シリンダ室内に夫々ピストンが移動可能に嵌装され、各シリンダ室には夫々スリットが形成され、各ピストンと一体の各力伝達部材が対応するスリットを通じてハウジング外側に配置された共通の外側移動体に夫々連結されたものも知られている(アメリカ特許2200427号、特開昭60−172711号、イギリス特許470088号)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前記(1)(2)(4)の各形式では、1つの内室に対して、1つのスリットが対応し、そのスリットに対応して、内側移動体と一体の1つの力伝達部材が設けてあって、その1つの力伝達部材で外側移動体と内側移動体とを連結しているだけなので、外側移動体に曲げモーメントが作用すると、その曲げモーメントを1つの力伝達部材で負荷することになり、大きなモーメントに耐えることができない。また、外側移動体がストロークエンドなどで位置決め部材と当接して停止するときなどに生じる軸線方向荷重についても、1つの力伝達部材で負荷しているので、大きな荷重に耐えることができない。また、(2)のようにハウジング形状が曲線の場合、従来では、直線形状のハウジングを曲線に曲げ加工しており、加工に手間がかかる問題がある。
【0005】
(3)では、ハウジング外側に設けたガイドレールで外側移動体が案内されているので、外側移動体に作用する曲げモーメントに関しては、ガイドレールで負荷できるが、軸線方向の荷重に関しては、前述の(1)と同じ欠点を持つ。
さらに、流体圧で動作する形式のアクチュエータ(1)〜(3)では、ハウジング自体の断面形状は、細いスリットに対して、ハウジング内側が広がって内室空間となっている特殊形状となっているために、内圧(流体圧)により生じる応力は、スリットと反対側の壁部分で最大となるため、その壁部分が危険断面となる。そのため、そのような応力計算に基づいて設計する必要があって、設計がわずらわしい問題がある。また、そのような力学的理由から、前記スリットと反対側の壁厚みが他の部分より厚くなる事態を避けることができず、必然的に壁厚さに偏りが生じ、押し出し、引き抜き等による成形をたやすく行なうことができず、ハウジング自体の歩留まりが高くなかった。
【0006】
また、前記(1)〜(4)では、ハウジングの壁の一部が切りかかれた特殊形状断面のために、従来、内室形状に僅かな設計変更を施した場合でも、所望の寸法、形状精度を得るために、製造過程においてはなんども成形型を修正しており、開発に要する時間、費用がかさむ問題もある。
(5)では、外側移動体は、複数の力伝達部材に連結されているために、外側移動体に加わる曲げモーメントや、軸線方向荷重については、これら複数の力伝達部材で負担されるので、前記(1)に比べてより大きな曲げモーメント、軸線方向荷重に耐えることができるが、流体圧作動による内側移動体の推力を同じにするとき、要するに、内側移動体の圧力を受ける面積を同じとした場合には、(5)では、複数のシリンダ室を1つのハウジングが備えているので、シリンダ室間のハウジング壁部分が存在することにより、ハウジング外形が大きくなる問題がある。
この発明の課題は、大きな軸線方向荷重に耐えることができ、かつ、ハウジング自体のサイズは大型化しない、スリットを有するアクチュエータを提供することを目的とする。また、本願の課題は、外部にガイドレールを有しない場合であっても、従来に比して、大きな曲げモーメントを受けることのできるアクチュエータを提供することにある。また、本願の他の目的は、ハウジングの製作コストを抑えることのできる上記アクチュエータを提供することにある。また、本願の更に別の課題は、ハウジングの断面形状を従来のように、狭いスリットがハウジング内部で内室に広がっているような特殊形状とせず、ハウジング内側の内室形状の変更に、容易に対処できるアクチュエータを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本願は上記課題解決のために、ハウジングの長手両端部を端部材に結合し、ハウジング内側に設けた軸線方向の内室に内側移動体を軸線方向へ移動するように収容し、ハウジングに軸線方向全長に延びるスリットを設け、内側移動体と一体的な力伝達部材をスリットに貫通させてその力伝達部材にハウジング外側に位置する外側移動体を一体に設け、スリットを内側と外側から塞ぐ一対のシールバンドを力伝達部材の内外に長手方向に貫通させてそれらの長手両端部を端部材に取り付け、内側移動体により前後に区画される前後の内室に圧流体を給排することで内側移動体が軸線方向移動して内側移動体の移動を外側移動体に伝達するようにしてあるアクチュエータにおいて、ハウジングに、一つの内室に対して軸線方向のスリットを複数設け、各スリットを貫通するように内側移動体と一体的な力伝達部材を夫々設けて各力伝達部材にハウジング外側に位置する外側移動体を一体に設け、各外側移動体をハウジング外側で一体に連結し、各スリットを内側と外側から塞ぐ一対のシールバンドを夫々力伝達部材の内外に長手方向に貫通させてそれらの長手両端部を端部材に取り付けて成ることを特徴とする(請求項1)。具体的には、ハウジングは、複数のハウジング要素から成り、各ハウジング要素は、同一寸法、同一断面形状を成していることを特徴とする。(請求項2)。これらの構成では、複数の力伝達部材により外側移動体に作用する軸線方向荷重を負荷でき、力伝達部材が1つである従来よりも、大きな軸線方向荷重を負荷できる。外側移動体が外側でガイドレールに案内されていない場合には、上記効果に加えて更に、曲げモーメントの負荷能力が高くなる。また、1つの内室に対して、複数のスリットを備えている構成であるから、内側移動体による推力を同じとするとき、ハウジングが複数の内室を備えている従来装置よりも、ハウジングを小型化できる。
【0008】
外側移動体はハウジングを取り囲む形状であると好ましい(請求項3)。これによれば、取り囲む外周面を搬送対象保持部とできて、アクチュエータの使用態様を多様化できる。また、軸線が直線のハウジングの左右両側にスリットを夫々設け、夫々のスリットを貫通する力伝達部材に外側移動体を設け、左右一対の外側移動体の上方延設部分の上端面をハウジングの上壁面より外側位置に達するように設け、それらの左右一対の外側移動体の 上端面間にワークテーブルを固着して成ることを特徴とする。(請求項4)。
【0009】
また、本願では、外側移動体の移動を阻害すること無く、ハウジング内側から作用する流体圧によるハウジングの外方への変形を抑える変形防止機構を備え、その変形防止機構は、ハウジング外側に長手方向へ移動可能に設けた押え枠に、ハウジングが広がる部分を抑えつつハウジング軸線に沿って押え枠を移動可能とする押え部分を備えている(請求項5)。これによれば、ハウジングが軸線方向に長尺となったとき、流体圧によるハウジングの外側への変形を防止でき、スリットの開きを防止して、シールバンドによるスリット封緘作用が確実に維持される。
変形防止機構は、ハウジングのスリットの巾方向両側となる位置に夫々ローラ転動面をハウジング全長に亘って形成し、押え枠に押え部分として、スリットの巾方向両側のローラ転動面を転動する押えローラを夫々備えている(請求項6)。また、外側移動体を挟んで軸線方向両側に押え枠を配置し、外側移動体の移動に伴って、移動方向側の押え枠と外側移動体との軸線方向間隔が縮まり、移動方向と逆側の押え枠と外側移動体との軸線方向間隔が伸びるように構成されている(請求項7)。一層具体的には、外側移動体を挟んで軸線方向両側に夫々複数の押え枠を配置し、外側移動体とこれに隣り合う押え枠間、及び隣り合う押え枠間を一定長さの可撓性牽引索で連結してある(請求項8)。
【0010】
また、具体的には、ハウジングは、断面において複数に分割されたハウジング要素から成り、各ハウジング要素は、内室内面の一部を形成する内室形成面と、隣り合うハウジング要素のスリット形成面との間にスリットを形成するスリット形成面を備えている。これによれば、各ハウジング要素は、断面形状において、従来のように狭いスリットの内側が大きく広がった内室となるような特殊形状とならないために、成形が容易である。特に、軸線が曲線の場合であっても、例えば2つに分割しておく場合には、単純なダイカスト成形でハウジングが製作できる。
【0011】
ハウジング要素は、押出し、引き抜きによる型材から成るとより安価に製造できて好ましい。また、ハウジング要素は、同一断面形状であると、成形型で成形するときに、型種類が増えず好ましい。具体的には、分割されたハウジング要素は、軸線方向端部を端部連結部材で連結して互いに結合されている。
【0012】
また、ハウジング内側に設けた軸線方向の内室に内側移動体を軸線方向に移動するように収容し、ハウジングに設けたスリットを通じて、内側移動体と一体的な力伝達部材により、ハウジング外側でガイドレールに案内されている外側移動体に内側移動体の移動を伝達するようにしてあるアクチュエータにおいて、ハウジングは、一つの内室に対して複数の軸線方向のスリットを有している。ハウジングは、断面において複数に分割されたハウジング要素から成り、各ハウジング要素は、内室内面の一部を形成する内室形成面と、隣り合うハウジング要素のスリット形成面との間にスリットを形成するスリット形成面を備え、1つのハウジング要素は、ガイドレールを一体的に備えている。これらの構成では、外側移動体に作用する曲げモーメントはガイドレールで負荷され、外側移動体に加わる軸線方向荷重は、複数個所の力伝達部材で負荷できる。
【0013】
【発明の実施の形態】
アクチュエータとして、流体圧作動のスリット式ロッドレスシリンダ1に本願発明を適用した場合について説明する。ハウジング(シリンダチューブ)2は、断面において、複数の(ここでは2つの)ハウジング要素3、3から成る。ハウジング要素3は同一寸法、断面形状を成し、各ハウジング要素3の内側面は、後述する内室の内面の半分を構成する内室形成面4になっており、内室形成面4の両端に連なる面が、スリット形成面5に形成されている。ハウジング要素3,3は、スリット形成面5相互の間隔Lが所定の大きさとなるように、夫々向かい合わせに並設され、長手の両端部が端部連結部材としての端部材6、6に結合されている。端部材6、6とハウジング要素3,3の端面との間は、端部材6に設けたハウジング要素の長手方向の位置決めピン7でハウジング要素3,3を長手と直交する方向に位置決めした状態で、端部材6の軸線方向外側から、固定ネジ8で両者を一体結合している。図2で上下に対向するスリット形成面5の間には、ハウジング2の軸線方向全長に延びるスリット9が一対形成され、また、上下のハウジング要素3の内室形成面4により、この実施形態では、内室として断面が非円形(長円形)のシリンダ室10を形成している。
【0014】
各ハウジング要素3,3は、アルミニウムあるいはアルミニウム合金を押出し、もしくは、引き抜き成形した型材で構成されているが、図2から明らかなように、各ハウジング要素3,3の断面形状は、従来のスリットを1つ有するハウジングのように、狭いスリットからハウジング内側で大きく広がる内室となっている形状でなく、内室形成面4が大きく窪んでいる形状であり、断面でみた場合には、内圧が加わったときの危険断面がなく、その意味において内圧による力学的考察に従来ほど注意を払う必要がなく、必然的に肉圧を厚くしなければならない壁部は存在しないので、肉圧をおおむね一様とすることもでき、ハウジング要素自体の設計が容易となり、しかも、押し出し、引き抜き成形が極めてやりやすい形状である。したがって、この実施形態では、長円形の内室で説明しているが、これを円形としたり、あるいは、楕円形としたりするような場合であっても、内室の形状、精度を従来に比して比較的容易に実現することができ、製作コストを抑えることが可能である。
【0015】
上記シリンダ室10は、ピストン部分11の長手両端に、ピストンパッキン12を備えたピストンエンド13を有する内側移動体としてのピストン14により前,後シリンダ室10a,10bに区画されている。ピストン部分11には、前記左右一対のスリット9を夫々貫通する一対の力伝達部材(ピストンヨーク)15、15が一体成形されている。各力伝達部材15は、ハウジング2の外側において上下に拡がり、ピストンマウント16となっている。ピストンマウント16の上方延設部分17は、その先端面(上端面)17aが上側のハウジング要素3の上壁面3aより外側位置に達しており、左右の上方延設部分17の先端面17a間には、ワークテーブル18が固着されるようになっている。ピストンマウント16のハウジング要素3に向く面には、力伝達部材15を取り囲んでスクレーパ19が取付けてあると共に、ハウジング要素3の側面3bを摺接するスライド部材20が配設してある。ピストンマウント16は外シールバンドカバー21を備えて外側移動体22となっている。力伝達部材15の上下面には、対向するスリット形成面5と摺接する摺接ピース23が取付けてある。
【0016】
左右一対のスリット9を内側と外側から塞ぐ各一対の内外シールバンド30,31は、前記力伝達部材15の内外を長手方行に貫通してその両端が各端部材6に達している。内外シールバンド30,31は、厚みの薄い可撓性バンドであり、例えばスチールバンドなどの磁性材料から成る。内外シールバンド30,31は周知のように、スリット9の幅より大きな幅を有している。シールバンド30,31の長手両端は、取付ピン32をピン孔33に嵌め込んで端部材(エンドキャップ)6に取り付けられている。もちろん、このような可撓性シールバンドとして、従来公知の合成樹脂材料から成るシール帯、金属ストリップと合成樹脂材料との複合体から成るシール帯などであってもよい。
【0017】
これらの内外シールバンド30,31を吸着するための磁石35が、上下の各スリット9の巾方向両側に長手に沿って配置されている。ピストン14を通過している部分を除いて、内シールバンド30は、前記磁石35の磁気吸着力とシリンダ室10に加わる流体圧力によりスリット9を内側から塞いで流体漏れを防ぎ、また、外シールバンド31は前記磁気吸着力によりスリット9を外側から塞ぐいで、外部からの塵埃などの侵入を防止している。
【0018】
ハウジング要素3,3が、断面において、危険断面が無く成形などで有利であることに代えて、この発明では、ストロークが長くなると、ハウジング要素3,3が両端で結合されていることによるハウジング要素3,3の長手中間部分の外側への変形が予想される。即ちハウジング要素3,3が図4のように長手中間部において、外側にたわむと、対向するスリット形成面5の間隔が広くなって、シールバンド30,31による封緘効果が十分発揮されない不都合が予想される。ストロークが短い場合、このような事態を心配することはない。しかし、本願ではそのような事態にも対処した変形防止機構50を備えている。変形防止機構50において、ハウジング要素3,3の側面3bには、スリット9の巾方向両側(図2では、スリット9の上下)となる位置に、ハウジング2の全長に渡ってローラ転動面51を形成している。外側移動体22の移動方向には、外側移動体22を挟んで前後の端部材6,6との間に複数(ここでは各2つ)の押え枠52が設けられる。押え枠52は、図2から明らかなように、ハウジング2の下面側を除いてハウジング2を囲む門型形状を成しており、前記ローラ転動面51を転動する押え部分としての押えローラ53を備えている。
【0019】
外側移動体22とこれに隣り合う押え枠52の間、及び、押え枠52とこれに隣り合う押え枠52の間、押え枠52と端部材6,6との間は、一定長さの可撓性牽引索54で結合してある。可撓性牽引索54の長さは、外側移動体22が一方のストローク端に位置したとき(図1の状態)、他方の端部材6とこれに隣り合った押え枠52、その押え枠52と隣り合った押え枠52、その押え枠52と外側移動体22との間の各間隔が同じとなるような長さに設定してある。
【0020】
このようなロッドレスシリンダ1では、端部材6に設けた給排ポート55からの流体が、ストローク端でピストンエンド13の端面と衝接する内部ダンパ56の給排孔57を介して、対応するシリンダ室10a,10bに給排され、内外シールバンド30,31が夫々対応するスリット9を塞ぎつつ、ピストンマウント16が移動する。ピストンマウント16の移動に伴って、移動方向前方に位置する押え枠52は、ピストンマウント16に押されて可撓性牽引索54を屈曲させつつ移動し、また、移動方向と反対側の押え枠52は、可撓性牽引索54によって引っ張られて、内圧が作用して外側へ変形しようとするハウジング要素3,3の長手中間部を押えローラ53が外側から押さえつつ移動するので、ハウジング要素3,3が長手中間部で内圧により変形することが防止され、スリット9の広がりを抑制し、シールバンド30,31による封緘作用の低下を防止する。移動中に、ピストンヨーク15に対してこれを曲げるような曲げモーメントM1が作用した場合、この実施形態では、その曲げモーメントM1を左右一対のピストンヨーク15で受けることができるので、大きな曲げモーメントに耐えることができる。また、外側移動体22の移動方向から軸線方向荷重F1が作用した場合においては、やはり、2個所のピストンヨーク15でこれを受けることが出来、より大きな軸線方向荷重に耐えることができる。そして、このように軸線、及び、曲げモーメントに対して大きな負荷に耐えられる構成であっても、本願では、1つの内室(シリンダ室10)に対して複数のスリット9,9を設けるようにしたので、流体によるシリンダ推力を同じにした場合には、従来のものと比べて、ハウジングサイズを小さくコンパクトにできる。なお、58は端部材6に設けたロッドレスシリンダ取付け用の貫通孔である。
【0021】
図5には、一対のスリット9を長円形の長径上に位置したものを示す。これ以後の説明では、前記と同一部分には同一番号を付して詳細な説明は省略する。この実施形態では、ピストン14の短径軸上にピストン位置検知用の永久磁石60が配置され、その磁界を検知するピストン位置検知センサを収容するセンサ溝61が、ハウジング要素の外面に長手全長にわたって形成されている。また、アクチュエータ取付け用のT溝62も、ハウジング要素3,3の外面に形成されている。この実施形態は、短いストロークを想定しており、第1の実施形態のような変形防止機構は備えていない。
【0022】
次に、スリット9を3つ備える場合について説明する。内室形状は円形とし、また、ハウジング外形形状も円形とする。図6において、ハウジング2Aは、円周方向に3等分されており、各ハウジング要素3Aは、夫々同一断面形状を成し、内室形成面4と、内室形成面の両端に連続するスリット形成面5とを有している。前記実施形態と同様に、3つのハウジング要素3Aは、スリット形成面5が互いに所定の間隔を保って対向するように配置され、各ハウジング要素3Aの長手端面が、前記実施形態と同様に位置決めピン7と結合ボルト8により端部材6A,6Aに位置決め、結合されて、隣合うハウジング要素3Aの対向するスリット形成面5間に3つのスリット9が形成される。また、3つの内室形成面4により、円形の内室(シリンダ室)10が形成されている。ピストン14からは、ピストンヨーク15が放射状に前記3つのスリット9,9,9を通って半径方向外方へ延び、ハウジング2A外側でハウジング2Aの周囲全体を取り囲む6角形状の外側移動体22となっている。各スリット9に対応して、内外シールバンド30,31が、夫々ピストンヨーク15の内外を長手に貫通して対応するスリット9を塞いでいることは、前記実施形態と同じである。外側移動体22の6つの外周面は、搬送物取付け用のテーブル面65となっている。
【0023】
さらにスリットが4つの場合について説明する。図7において、外形が矩形のハウジング2Bは、 直交する縦、横軸により4つのハウジング要素3Bに分割されている。4つのハウジング要素3Bは、夫々同一断面形状を成し、これまでの実施形態と同様に、夫々内室形成面4と2つのスリット形成面5とを備えている。ハウジング要素3Bが端部材6Bにより互いに結合され、隣り合うハウジング要素3Bのスリット形成面4により4つのスリット9が形成され、各ハウジング要素3Bの内室内面4により円形のシリンダ室10が形成されている。4つのスリット9を通って、ピストン14から4つのピストンヨーク15が外方に延び、ハウジング3B外側でハウジング3B全周を囲繞する外側移動体22となっている。外側移動体22の外面は、すべて搬送物取付け用のテーブル面65として機能する。4つのスリット9が夫々内外シールバンド30,31で封緘されることは、言うまでもない。
【0024】
図8では、ハウジング軸線が屈曲している場合について説明する。(a)は(b)の側面図である。これまでのものは、ハウジング軸線が直線であったが、ハウジング2Cの軸線が円弧を描いている場合、ハウジング2Cが分割されていると、その成形が極めて行いやすい。図8のような曲がりハウジング2Cの場合、曲がっている軸線を含む平面でハウジング2Cを分割すれば、上下のハウジング要素3Cは、同一断面で、同一寸法形状となる。このようなハウジング要素3Cは、例えばダイカスト鋳造の手法で容易に製造でき、従来のように、直線状態のハウジングの軸線を曲げるといった、極めて手間のかかる製造手法によらずとも、軸線の曲がったハウジングが得られる。
【0025】
更に、図9は、外側移動体22がハウジング2Dの外側で別途設けたガイドレール70によって案内されているものである。ベース71は、下側のハウジング要素3Dの左右側面から側方に一体成形されている。そのハウジング要素3Dの上側に、ベース71の下面と平行な直径上に2つのスリット9,9を形成するように、もう一つのハウジング要素3D1が配置され、端部結合部材6Dで連結している。左右一対のスリット9を対応するピストンヨーク15が貫通し、ハウジング2の外側でピストンマウント16となっている。ピストンマウント16は、ハウジング2Dの、巾方向両側に配置したリニアガイド(ガイドレール)70に案内されているスライドテーブル18の下面に結合してある。この構成では、外部のガイドレール60が曲げモーメントを負荷する一方、スライドテーブルに移動方向から作用する軸線方向荷重は、やはり、2つのピストンヨーク15が負荷するので、1つのピストンヨークで軸線方向を負荷している従来に比べ、大きな軸線方向荷重に耐えることができる。
【0026】
更に、図10では、ハウジング2E外側のガイドレール70が1つの場合である。レール70が固着されるベース71Aが、下側のハウジング要素3Eの一方の側壁から側方に延びている。ハウジング要素は、直交する縦軸、横軸で区画される1/4部分3E1と残り3/4部分3Eとから構成されている。したがって、2つのスリット9は、直交する2方向に存在し、各スリット9を通ってピストンヨーク15が外方に延び、ガイドレール70に案内されるスライドテーブル18と結合している。
【0027】
また、図11は、外側移動体22が、ハウジング要素3F、3Fの変形防止機能をそなえているものである。2つのハウジング要素3F、3Fが対向して2つのスリット9,9を有するハウジング2Fを構成し、スリット9,9を挟んでスリット9,9の巾方向両側にガイドレールとしてのV溝75が形成してある。外側移動体22には、それらのV溝75に嵌まり込んで摺動する変形防止(スリットの広がり防止)のための押え部材76が備えてある。
【0028】
これまでのものでは、断面形状において、分割されたハウジング要素を端部材を介して結合させることで複数のスリットを形成してきたが、本願では、複数のスリットを形成する場合においてはこれに限らない。即ち、図12に示すように、パイプ形状のハウジング2Gに対向する2つのスリット9,9を軸線方向に削設し、長手の一端部は一定長さだけスリット9,9を形成しないようにして複数のスリットを形成してもよい。
【0029】
【発明の効果】
以上のように本願発明では、複数の力伝達部材により外側移動体に作用する軸線方向荷重を負荷でき、力伝達部材が1つである従来よりも、大きな軸線方向荷重を負荷できる。外側移動体が外側でガイドレールに案内されていない場合には、上記効果に加えて更に、曲げモーメントの負荷能力が高くなる。
【0030】
また、流体圧作動のアクチュエータにおいて、1つの内室に対して、複数のスリットを備えている構成であるから、内側移動体による推力を同じとするとき、ハウジングが複数の内室を備えている従来よりも、ハウジングを小型化できる。
【0031】
また、ハウジングが複数のハウジング要素から成り、各ハウジング要素が、同一寸法、同一断面形状を成しているので、ハウジング要素自体の設計が容易となり、しかも、押し出し、引き抜き成形が極めてやりやすい。
また、外側移動体はハウジングを取り囲む形状としたので、取り囲む外周面を搬送対象保持部とできて、アクチュエータの使用態様を多様化できる利点がある。
また、圧流体作動による場合、外側移動体の移動を阻害すること無く、ハウジング内側から作用する流体圧によるハウジングの外方への変形を抑える変形防止機構を備え、その変形防止機構は、ハウジング外側に長手方向へ移動可能に設けた押え枠に、ハウジングが広がる部分を抑えつつハウジング軸線に沿って押え枠を移動可能とする押え部分を備えているので、複数スリットを設けてハウジングが軸線方向に長尺となったときでも、流体圧によるハウジングの外側への変形を防止でき、スリットの開きを防止して、シールバンドによるスリット封緘作用が確実に維持される。
【0032】
また、変形防止機構は、ハウジングのスリットの巾方向両側となる位置に夫々ローラ転動面をハウジング全長に亘って形成し、押え枠に押え部分として、スリットの巾方向両側のローラ転動面を転動する押えローラを夫々備えているので、内圧が作用して外側へ変形しようとするハウジングの長手中間部を押えローラが外側から押さえつつ移動してハウジングが長手中間部で内圧により変形することを防止でき、スリットの広がりを抑制し、シ ールバンドによる封緘作用の低下を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本願発明に係るアクチュエータの側面図である。
【図2】 図1のII−II線拡大断面図である。
【図3】 図1のIII−III線拡大断面図である。
【図4】 ハウジング要素の変形に関する説明図である。
【図5】 第2の実施形態である。
【図6】 第3の実施形態であり、図2に相当する断面図である。
【図7】 第4の実施形態であり、図2に相当する断面図である。
【図8】 第5の実施形態であり、軸線が屈曲しているハウジングを示している。
【図9】 第6の実施形態であり、外部に2本のガイドレールを有する横断面図である。
【図10】 第7の実施形態であり、外部に1本のガイドレールを有する横断面図である。
【図11】 第8の実施形態であり、外側移動体が変形防止機構を備えているものである。
【図12】 1つの内室に対して複数のスリットを持つ、他のハウジング形態である。
【符号の説明】
1 ロッドレスシリンダ(アクチュエータ)
2,2A、2B、2C、2D、2E、2F、2G ハウジング
3,3A,3B,3C,3D,3D1、3E,3E1,3F ハウジング要素
4 内室形成面
5 スリット形成面
6 端部材(端部連結部材)
9 スリット
10 シリンダ室(内室)
14 ピストン(内側移動体)
15 力伝達部材
22 外側移動体
30 内シールバンド
31 外シールバンド
52 押え枠
53 転動ローラ
54 可撓性牽引索
70 ガイドレール
Claims (8)
- ハウジングの長手両端部を端部材に結合し、ハウジング内側に設けた軸線方向の内室に内側移動体を軸線方向へ移動するように収容し、ハウジングに軸線方向全長に延びるスリットを設け、内側移動体と一体的な力伝達部材をスリットに貫通させてその力伝達部材にハウジング外側に位置する外側移動体を一体に設け、スリットを内側と外側から塞ぐ一対のシールバンドを力伝達部材の内外に長手方向に貫通させてそれらの長手両端部を端部材に取り付け、内側移動体により前後に区画される前後の内室に圧流体を給排することで内側移動体が軸線方向移動して内側移動体の移動を外側移動体に伝達するようにしてあるアクチュエータにおいて、ハウジングに、一つの内室に対して軸線方向のスリットを複数設け、各スリットを貫通するように内側移動体と一体的な力伝達部材を夫々設けて各力伝達部材にハウジング外側に位置する外側移動体を一体に設け、各外側移動体をハウジング外側で一体に連結し、各スリットを内側と外側から塞ぐ一対のシールバンドを夫々力伝達部材の内外に長手方向に貫通させてそれらの長手両端部を端部材に取り付けて成ることを特徴とするアクチュエータ。
- ハウジングは、複数のハウジング要素から成り、各ハウジング要素は、同一寸法、同一断面形状を成している請求項1記載のアクチュエータ。
- 外側移動体はハウジングを取り囲む形状である請求項1または2に記載のアクチュエータ。
- 軸線が直線のハウジングの左右両側にスリットを夫々設け、夫々のスリットを貫通する力伝達部材に外側移動体を設け、左右一対の外側移動体の上方延設部分の上端面をハウジングの上壁面より外側位置に達するように設け、それらの左右一対の外側移動体の上端面間にワークテーブルを固着して成る請求項1または2に記載のアクチュエータ。
- 外側移動体の移動を阻害すること無く、ハウジング内側から作用する流体圧によるハウジングの外方への変形を抑える変形防止機構を備え、その変形防止機構は、ハウジング外側に長手方向へ移動可能に設けた押え枠に、ハウジングが広がる部分を抑えつつハウジング軸線に沿って押え枠を移動可能とする押え部分を備えている請求項1乃至4の何れか1項に記載のアクチュエータ。
- 変形防止機構は、ハウジングのスリットの巾方向両側となる位置に夫々ローラ転動面をハウジング全長に亘って形成し、押え枠に押え部分として、スリットの巾方向両側のローラ転動面を転動する押えローラを夫々備えている請求項5記載のアクチュエータ。
- 外側移動体を挟んで軸線方向両側に押え枠を配置し、外側移動体の移動に伴って、移動方向側の押え枠と外側移動体との軸線方向間隔が縮まり、移動方向と逆側の押え枠と外側移動体との軸線方向間隔が伸びるように構成されている請求項6記載のアクチュエータ。
- 外側移動体を挟んで軸線方向両側に夫々複数の押え枠を配置し、外側移動体とこれに隣り合う押え枠間、及び隣り合う押え枠間を一定長さの可撓性牽引索で連結してある請求項7記載のアクチュエータ。
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