JP3769779B2 - 極低炭素Cr含有鋼の溶製方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、真空脱ガス装置を用いた極低炭素Cr含有鋼の溶製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ステンレス鋼に代表されるCr含有鋼は、普通鋼に比べて脱炭速度が遅く、また、Crの酸化を抑制しながら脱炭する必要があり、高度の精錬技術が要求される。従って、Cr含有鋼、とくに極低炭素域のCr含有鋼の溶製には、VOD 法やRH法のように減圧槽内で脱炭を行うことが通例である。
【0003】
例えば、VOD 法による極低炭素Cr含有鋼の溶製は、まず、C:0.5 wt%前後まで予備脱炭されたCr含有溶鋼を底吹きガス攪拌装置を有する取鍋に受け、VOD 真空タンク内に装入して内部を減圧する。次に、減圧下でArガスを底吹きして鋼浴を攪拌させながら、上吹きランスから酸素を鋼浴表面に吹き付けて脱炭を進行させる。その際、Crの酸化を抑制するために、脱炭の進行に伴い送酸量を減少し、真空度を高めていく。そして、C濃度が50ppm 前後まで脱炭が進行した後は、上吹き酸素を止め、底吹きガス攪拌のみで目標組成まで脱炭を行う。
この従前の手法においては、Crの酸化を極力抑えつつ極低炭素濃度域まで脱炭するのに長時間を要し、生産性が低いところに問題点があった。
【0004】
そこで、このようなVOD 法の脱炭速度を速くする方法が検討されている。
例えば、特公昭56-35727号公報には、底吹きArガス流量を増やして鋼浴を強攪拌させることが提案されている。この方法によって、VOD 法における脱炭処理時間は確かに短縮されるが、Crを含有しない極低炭素鋼の脱炭処理時間に比べると、その処理時間は未だ長いため、耐火物コストや用役コストが嵩むという問題点が残った。
【0005】
また、特開平5-247520号公報には、水素を添加することによって、Crの酸化を抑制してCrロスを低減させるとともに、脱炭反応速度の増大をはかることが提案されている。すなわち、溶鋼温度およびCr濃度を変数として求まる臨界酸素濃度を基準にして、水素の添加開始時期を規定し、上吹き酸素ガスを停止した後に水素を添加する方法である。従って、送酸を停止して水素添加に切り換えることによって、Crロスの低減を実現した上で脱炭時間の短縮をも期待できるのであるが、脱炭処理時間の大部分を占める送酸時の脱炭時間を短縮するには到っていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
この発明の目的は、Cr含有鋼を真空脱ガス装置を用いて極低炭素域まで脱炭するに際し、脱炭処理時間を可能な限り短縮する手法を提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この発明は、真空脱炭処理にてCr含有鋼を極低炭素域まで脱炭するに当たり、上吹きランスによる酸素吹錬にて炭素濃度が1000ppm に達する脱炭が進行したのち、少なくとも酸素吹錬を終了するまでは、溶鋼中に水素ガスを吹き込むことを特徴とする極低炭素Cr含有鋼の脱炭方法である。
【0008】
ここで、水素ガス量を8Nl/min ・t 以上とすることが、脱炭時間の大幅な短縮を実現するのに有利である。また、真空脱炭処理には、VOD 法、RH法またはDH法を用いることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
さて、例えばVOD 法に従う、減圧下でのCr含有鋼の脱炭処理において、上吹きランスからの送酸にて脱炭を行う場合、脱炭初期の高炭素濃度域での脱炭速度は、酸素ガスの送酸速度に依存する。これは、脱炭反応に必要な酸素の供給速度が反応を律速するためである。次に、脱炭が進行して極低炭素濃度になると、反応界面への炭素の移動が脱炭反応を律速するようになる。
【0010】
そして、この極低炭素濃度域でもランスからの送酸を続けると、鋼中の酸素レベルが高くなり、Crの酸化ロスが増大するため、通常は、極低炭素濃度域の所定炭素濃度以下では送酸を停止し、鋼中の溶存酸素のみで脱炭を行っている。
【0011】
また、この送酸を停止した以降の時期において、脱炭速度を上昇させるため、従来技術として上述したように、炉底から不活性ガスを吹込み強攪拌下で脱炭速度を上げたり、水素ガスを吹込むことによりCrの酸化を防止するとともに鋼中の溶存酸素に加えて溶存水素によっても脱炭反応を促進することが提案されてきた。これらの提案によって脱炭処理時間の短縮が達成されるが、さらなる脱炭処理時間の短縮をはかるのは難しい。
【0012】
そこで、発明者らは、脱炭処理の大部分を占める送酸時の脱炭時間そのものを短縮することが極めて有効である、との認識から、脱炭挙動をより詳細に調査することによって以下の知見を得た。
まず、送酸時の脱炭反応における、酸素供給律速から物質(炭素)移動律速へ移行するときのC濃度は1000ppm 前後であることを突き止めた。すなわち、物質移動律速へ移行するときのC濃度は、従来、Cr酸化の抑制を理由に送酸を停止していたC濃度域よりも高い領域にあることが新たに判明した。
【0013】
また、送酸時の脱炭速度を速めるには、(a) 反応律速である時期(C濃度が1000ppm をこえる時期)では送酸速度をできる限り高めること、次に、(b) 物質移動律速の時期(C濃度が1000ppm 以下である時期)では気液界面積の増大、脱炭反応の反応サイトの増大、鋼浴の攪拌強化などで脱炭反応を促進すること、そして(c) 送酸によるCr酸化を抑制できれば、物質移動律速の時期においても送酸を停止する必要がないこと、を解明するに到った。
【0014】
さらに、上記(b) を実現する具体的手段について、実験による検討を行ったところ、図1に実験結果を示すように、溶鋼中に水素ガスを吹き込むことが特に有効であることが新たに判明した。また、水素ガスの吹き込みは、Cr酸化の抑制にも有効であった。なお、図1に結果を示した実験は、約70tの17wt%Cr鋼を装入した、取鍋において、送酸:0.17Nm3/ min・tで真空脱炭処理を行う際に、C濃度が1000ppm 以下の段階にて、水素ガスを溶鋼中に36Nl/min ・t で吹き込む操業と、水素ガスの吹き込みを行わない操業とを比較したものである。
【0015】
ここに、物質移動律速である、C濃度が1000ppm 以下である時期に、溶鋼中への水素ガスの吹き込みを行うと、吹き込まれた水素ガスはその性質から溶鋼中に容易に溶解し、浴表面近傍で再度水素ガスからなる無数の微細気泡となり、脱炭反応サイトである気液界面積を飛躍的に増大することになる。
【0016】
この浴表面近傍で生成する無数の微細気泡中では、CO分圧が零であるため、気泡内にCOガスが生成するように脱炭反応が起こる。すなわち、低炭素域でも、微細かつ内部のCO分圧が零である水素ガス気泡が浴表面近傍に存在するため,脱炭反応経路として、従来とは異なった経路が形成されることになり、脱炭反応が促進されるのである。
【0017】
なお、反応容器底部に吹き込まれた水素ガスは溶鋼静圧下で一旦溶鋼中に溶解するが、この溶解水素は浴表面近傍で溶鋼静圧が低下することから、再度水素ガス気泡となり、浴表面近傍で無数の微細気泡が生成することになる。
【0018】
そして、溶解水素が気泡になるとき溶鋼の攪拌力として働き、攪拌が生じると酸化Crが溶鋼中のCによって還元されるため、結果としてCrの酸化を抑制できる効果をも期待できる。
【0019】
また、溶鋼中に吹き込む水素ガスの流量は、溶鋼トン当たりの溶解量、溶解した水素が浴表面で再度水素気泡となってガス化する速度、溶鋼流動および水素ガス吹込み位置での溶鋼静圧等によって異なるが、種々の実験や検討から、少なくとも8Nl/min ・t 以上必要なことが判明した。なぜなら、この流量に満たないと、脱炭速度の格段の向上が望めないからである。
なお、真空脱炭処理としては、VOD 法に限らずRH法やDH法でも良く、また他の真空脱炭処理方法でも同様の効果が得られた。
【0020】
【実施例】
表1に示す、真空脱炭処理前の化学組成を有する溶鋼を、表1に示す条件に従って脱炭処理した。
すなわち、各々の実施例および比較例は、転炉で粗脱炭した、約70tの17wt%Cr鋼を取鍋に受け、表1に示した条件でVOD 法またはRH法にて真空脱炭処理を行ったものであり、その処理温度はVOD 法で1700±20℃、RH法で1650±25℃の範囲で、真空度はいずれも0.5 〜30Torrとした。また、送酸は、0.17Nm3/ min・tの条件で、炭素濃度50ppm 前後まで行った。
【0021】
発明例1〜3は、VOD 法に則る処理にこの発明を適用した例であり、C濃度が1000ppm 以下となった時期から水素ガスの吹き込みを開始し、C濃度が10ppm 前後の極低炭素域まで水素ガスの吹き込みを続行した。水素ガスの流量は、それぞれ52,33,9Nl/minであった。これらの水素ガス流量は、溶鋼の化学組成分析結果および真空系からの排ガス分析結果から予測された炭酸ガス発生速度との比が0.1 以上となる値である。
【0022】
一方、比較例1〜3は同じくVOD 法に則る処理であるが、比較例1は水素ガスを吹き込まなかった例であり、比較例2および比較例3は水素ガス吹き込み開始の時期がこの発明に従う時期よりC濃度の高い、1130および2490ppm とした場合である。さらに、比較例2は、水素ガス流量が少なく、炭酸ガス発生量と水素ガス吹き込み流量との比は0.08〜0.01である。
【0023】
同表に、各処理における、C濃度が1000〜50ppm 間の平均の脱炭速度定数Kcを示すように、この発明に従う発明例におけるKcは、比較例に比べて約2倍に向上していることがわかる。
【0024】
次に、発明例4〜6は、この発明をRH法に適用した例である。RH法の場合についてもVOD 法の場合と同様に、この発明に従う発明例は、水素流量が0の比較例4、また水素ガス吹き込み開始の時期のC濃度の高い比較例5に比べ、Kcが約2倍に向上している。
【0025】
【表1】
【0026】
【発明の効果】
この発明によれば、極低炭素域における脱短速度が向上し、従来に比較して極めて短時間で極低炭素のCr含有鋼を溶製することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】真空脱炭処理における送酸中の水素ガス吹き込みの効果を示す図である。
Claims (3)
- 真空脱炭処理にてCr含有鋼を極低炭素域まで脱炭するに当たり、上吹きランスによる酸素吹錬にて炭素濃度が1000ppm に達する脱炭が進行したのち、少なくとも酸素吹錬を終了するまでは、溶鋼中に水素ガスを吹き込むことを特徴とする極低炭素Cr含有鋼の脱炭方法。
- 水素ガス量を8Nl/min ・t 以上とする請求項1記載の脱炭方法。
- 真空脱炭処理は、VOD 法、RH法またはDH法に従って行う請求項1または2記載の脱炭方法。
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JP18914795A JP3769779B2 (ja) | 1995-07-25 | 1995-07-25 | 極低炭素Cr含有鋼の溶製方法 |
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