JP3766564B2 - 汚泥の脱水方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は下水、し尿などの微生物処理で生じる有機性汚泥の脱水に用いる新規な高分子凝集剤を用いた汚泥の脱水方法に関する。さらに詳しくは、遠心脱水、ベルトプレス脱水において優れた脱水率を発揮する新規な高分子凝集剤を用いた汚泥の脱水方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、下水、し尿などの微生物処理で生じる有機性汚泥の脱水に対しては、ポリメタアクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、アクリルアミド−アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドコポリマー、ポリビニルアミジン等のカチオン性高分子凝集剤が広く使用されてきた。また、最近ではアクリルアミド−アクリル酸−アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドコポリマー等の両性高分子凝集剤が提案されている(特開昭63−260928号公報など)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の技術では遠心脱水、ベルトプレス脱水等において充分な脱水率が得られなかった。とくに最近は、汚泥中の有機物含量の増加、腐敗の進行が顕著に見られ、これとともに脱水率は悪化傾向にある。脱水率の低下は得られるケーキの含水率を上げ、したがってケーキ焼却時の燃料費を増加させる問題があった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者等はこうした下水、し尿などの微生物処理で生じる有機性汚泥の遠心脱水、ベルトプレス脱水において優れた脱水率を発揮する高分子凝集剤を見い出すべく鋭意検討した結果、本発明に到った。
すなわち本発明は、1級アミン塩基を有するラジカル重合性(メタ)アクリル系モノマー(m)を必須単位とするビニル系水溶性重合体(A)からなり、重合体(A)のpH4、7、10におけるコロイド当量値をそれぞれa、b、cとしたとき、b/a=0.1〜0.5およびc/a=0〜0.1である高分子凝集剤と、他のカチオン性ラジカル重合性ビニルモノマー(n)を必須単位とするビニル系水溶性重合体(B)からなる高分子凝集剤を併用して汚泥に添加してフロックを形成して固液分離を行うことを特徴とする汚泥の脱水方法である。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明における1級アミン塩基を有するラジカル重合性(メタ)アクリル系モノマー(m)としては、たとえば下記一般式(1)で示されるモノマーがあげられる。
CH2=CR−CO−X−Q−NH2・HZ (1)
[式中、RはHまたはCH3;XはOまたはNH;QはCH2CH2、CH2CH2CH2またはCH2CH(OH)CH2;ZはCl、Br、I、NO3、1/2SO4、CH3SO3、H2PO4またはCH3COOである]
具体例としては、アミノエチル(メタ)アクリレート塩酸塩、アミノエチル(メタ)アクリレート硫酸塩、アミノプロピル(メタ)アクリルアミド塩酸塩等があげられ、これらの1種以上が使用できる。
【0006】
これらの中で工業的製造の容易さから、式(1)でXがO、QがCH2CH2である化合物、すなわち、アミノエチル(メタ)アクリレート塩酸塩、アミノエチル(メタ)アクリレート硫酸塩等が好ましく、アミノエチル(メタ)アクリレート塩酸塩が更に好ましく、アミノエチルメタアクリレート塩酸塩が最も好ましい。
【0007】
本発明において、ビニル系水溶性重合体(A)は、モノマー(m)の単独重合体であっても、他の公知のビニルモノマーとの共重合体であってもよい。
その場合に使用される他のビニルモノマーの例としてはアクリルアミド、アクリロニトリル、ビニルピロリドンなどの非イオン性ビニルモノマー、アクリル酸(塩)、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸(塩)、イタコン酸(塩)などのアニオン性ビニルモノマー、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルアミノエチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルジアリルアンモニウムメチルサルフェート、ビニルピリジンなどのカチオン性ビニルモノマーなどがあげられ、これらの1種以上が使用できる。
【0008】
これらの中で工業的観点から、アクリルアミドと(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドなどのカチオン性ビニルモノマーが好ましく、より好ましくは、アクリルアミドおよび(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドである。
【0009】
モノマー(m)と他のビニルモノマーを共重合する場合、モノマー(m)の共重合割合は目的に応じて自由に選びうるが、ポリマーの性能、特に高分子凝集剤として用いた時の脱水率の観点から、カチオン性ビニルモノマーの合計量に対するモノマー(m)の含量は、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上である。
また、非イオン性、アニオン性も含めた全ビニルモノマーの合計量に対するモノマー(m)の含量も、同じ理由で、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上である。
【0010】
本発明において、ビニル系水溶性重合体(A)がモノマー(m)を必須単位とすることから、(A)のpH4、7、10におけるコロイド当量値をそれぞれa、b、cとしたとき、bとa、cとaの比は、通常b/a=0.1〜0.5およびc/a=0〜0.1である。
【0011】
また、重合体(A)のpH4におけるコロイド当量値は、高分子凝集剤として用いた時の脱水性能から、5.0以上が好ましく、より好ましくは5.5〜13.0、さらに好ましくは6.0〜12.0である。モノマー(m)を必須単位とすることにより、pH4におけるコロイド当量値が5.0以上の重合体も容易に得ることができる。
【0012】
本発明において、コロイド当量値は以下に示すコロイド滴定法により求めることができる。
(1)試料50ppm水溶液の調整
試料0.2g(乾品換算したもの)を精秤し、三角フラスコにとり、イオン交換水100mlで溶解する。さらにこの溶液を10mlとりイオン交換水390mlを加え均一溶液として測定試料とする。
(2)コロイド当量値の測定
測定試料100mlをコニカルビーカーにとり攪拌しながら0.5%水酸化ナトリウム水溶液を徐々に加え測定pHに調整する。つぎにトルイジンブルー指示薬を2〜3滴加え、N/400ポリビニル硫酸カリウム(N/400PVSK)試薬で滴定する。滴定速度は2ml/分とし、測定試料が青から赤紫色に変色し、30秒以上保持する時点を終点とする。
(3)空試験
イオン交換水100mlで(2)と同様の操作をおこなう。
(4)計算法
コロイド当量値(meq/g)
=1/2×(試料の滴定量−空試験の滴定量)×(N/400PVSKの力価)
【0013】
本発明の高分子凝集剤の分子量は、固有粘度(1NーNaNO3 中、30℃で測定、単位:dl/g、以下同様)で通常2以上のものである。2未満では分子量が小さすぎて一般にはポリマーとして特性が出にくい。一般に凝集性能は分子量が高いものほど良好であるので、固有粘度は4以上が好ましく、より好ましくは5以上、特に好ましくは8以上である。
【0014】
本発明の高分子凝集剤製品形状は、粉末状、フィルム状、水溶液状、w/oエマルション状、懸濁液状等公知の任意形状でよい。
【0015】
本発明の高分子凝集剤は、公知の方法、たとえば水溶液重合、水と有機溶剤を用いた乳化重合、懸濁重合などにより製造できる。水溶液重合の場合、モノマー濃度が通常10〜80質量%となるようにモノマー水溶液として系内を不活性ガスで置換した後、公知の重合触媒(過硫酸塩たとえば過硫酸アンモニウムおよび過硫酸カリウム;有機過酸化物たとえばベンゾイルパーオキシド;アゾ系化合物たとえば2,2′−アゾビス−(アミジノプロパン)ハイドロクロライドおよびアゾビスシアノバレリン酸;およびレドックス触媒(過酸化物(H2O2、過硫酸カリウムなど)と還元剤(重亜硫酸ソーダ、硫酸第一鉄など)との組合せ)を加えて20〜100℃程度で数時間重合を行う。また、光増感剤を加えた後、紫外線等を照射してもよい。粉末化を行うには、このようにして得られた重合物を適宜細断して熱風乾燥、溶剤沈澱・乾燥し、粉砕すればよい。
【0016】
本発明の高分子凝集剤は、水中の懸濁粒子に高い吸着性を示して効果的な凝集性(フロック形成性)を示すので、公知の水系懸濁液の固液分離促進にとくに限定なく使用できるが、実用的価値の面から、下水、し尿などの微生物処理で生じる有機性汚泥(いわゆる生汚泥、余剰汚泥、混合生汚泥、消化汚泥、凝沈・浮上汚泥およびこれらの混合物)の脱水により有用である。これらのなかでも、同じ理由で、有機分含有量(VSS/SS)が70%以上の汚泥により有用である。
【0017】
本発明の高分子凝集剤は、単独でも使用できるが、目的に応じて、たとえば他のカチオン性ラジカル重合性ビニルモノマー(n)を必須単位とする、カチオン性または両性のビニル系水溶性重合体(B)からなる高分子凝集剤と併用してもよい。
モノマー(n)としては、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルアミノエチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルジアリルアンモニウムメチルサルフェート、ビニルピリジンなどが挙げられる。
(B)の具体例としては、ポリメタアクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、アクリルアミド−アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドコポリマー、ポリビニルアミジン等のカチオン性ビニル系水溶性重合体、アクリルアミド−アクリル酸−アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドコポリマー等の両性ビニル系水溶性重合体があげられるが、中でも、両性ビニル系水溶性重合体および、pH4におけるコロイド等量値が4.0以上であるカチオン性ビニル系水溶性重合体が好ましく、ポリメタアクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドが特に好ましい。
【0018】
また、本発明の高分子凝集剤を添加され形成されたフロック状の汚泥の脱水方法としては、公知の遠心脱水、ベルトプレス脱水、フィルタープレス脱水、キャピラリー脱水等がとれるが、効果の点から遠心脱水、ベルトプレス脱水がより好ましい。
【0019】
本発明の高分子凝集剤は、0.1質量%濃度の水溶液とした時の水溶液pHが、好ましくは4.0以下、特に好ましくは3.0以下である。水溶液pHが4.0を上回ると十分な脱水性能が得られないことがある。
【0020】
0.1質量%水溶液とした時の水溶液pHを4.0以下とするために、本発明の高分子凝集剤は酸性物質を併用してもよい。酸性物質としては公知の無機もしくは有機の酸性物質が使用でき、具体例としては硫酸、塩酸、リン酸などの鉱酸;酸性リン酸ソーダ、酸性ぼう硝、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、重硫酸アンモニウム、スルファミン酸などの無機固体酸性物質;シュウ酸などの有機酸があげられるが、効果および経済性から無機固体酸性物質が好ましく、中でもスルファミン酸、酸性ぼう硝が特に好ましい。
【0021】
本発明の高分子凝集剤は、通常0.1質量%程度の濃度の水溶液にして使用されるが、その際、使用目的に応じて、前記の酸性物質のほか、増粘剤、加重剤、分散剤、防腐剤および無機塩などを併用することができる。
【0022】
【実施例】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1〜4、比較例1〜3
表1に示す組成のモノマーを重合させて得た高分子凝集剤をそれぞれイオン交換水に溶解してpH4、7、10におけるコロイド当量値を測定した。
【0023】
【表1】
【0024】
実施例5〜8、比較例4〜6
表2に示す組成のモノマーを重合させて得た高分子凝集剤をそれぞれイオン交換水にとかして0.1%水溶液とし、K市下水処理場余剰汚泥(pH6.9、TS(総固形分)2.3%、有機分81%)にポリマーとして0.85%/TSずつ添加して小型ベルトプレス脱水機を用いて脱水試験を行い、得られた脱水ケーキの含水率を測定した。試験結果を表2に示すが、本発明の高分子凝集剤(実施例5〜8)は、比較例4〜6に比べて、高い脱水性(低いケーキ含水率)を示した。
【0025】
【表2】
【0026】
【発明の効果】
本発明の高分子凝集剤は下水、し尿などの微生物処理で生じる有機性汚泥に対し優れた脱水効果を有する。とくに従来脱水が困難であった有機分含有量(VSS/SS)の高い汚泥に対し際だった効果を発揮することから、高分子凝集剤として極めて有用である。
【発明の属する技術分野】
本発明は下水、し尿などの微生物処理で生じる有機性汚泥の脱水に用いる新規な高分子凝集剤を用いた汚泥の脱水方法に関する。さらに詳しくは、遠心脱水、ベルトプレス脱水において優れた脱水率を発揮する新規な高分子凝集剤を用いた汚泥の脱水方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、下水、し尿などの微生物処理で生じる有機性汚泥の脱水に対しては、ポリメタアクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、アクリルアミド−アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドコポリマー、ポリビニルアミジン等のカチオン性高分子凝集剤が広く使用されてきた。また、最近ではアクリルアミド−アクリル酸−アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドコポリマー等の両性高分子凝集剤が提案されている(特開昭63−260928号公報など)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の技術では遠心脱水、ベルトプレス脱水等において充分な脱水率が得られなかった。とくに最近は、汚泥中の有機物含量の増加、腐敗の進行が顕著に見られ、これとともに脱水率は悪化傾向にある。脱水率の低下は得られるケーキの含水率を上げ、したがってケーキ焼却時の燃料費を増加させる問題があった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者等はこうした下水、し尿などの微生物処理で生じる有機性汚泥の遠心脱水、ベルトプレス脱水において優れた脱水率を発揮する高分子凝集剤を見い出すべく鋭意検討した結果、本発明に到った。
すなわち本発明は、1級アミン塩基を有するラジカル重合性(メタ)アクリル系モノマー(m)を必須単位とするビニル系水溶性重合体(A)からなり、重合体(A)のpH4、7、10におけるコロイド当量値をそれぞれa、b、cとしたとき、b/a=0.1〜0.5およびc/a=0〜0.1である高分子凝集剤と、他のカチオン性ラジカル重合性ビニルモノマー(n)を必須単位とするビニル系水溶性重合体(B)からなる高分子凝集剤を併用して汚泥に添加してフロックを形成して固液分離を行うことを特徴とする汚泥の脱水方法である。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明における1級アミン塩基を有するラジカル重合性(メタ)アクリル系モノマー(m)としては、たとえば下記一般式(1)で示されるモノマーがあげられる。
CH2=CR−CO−X−Q−NH2・HZ (1)
[式中、RはHまたはCH3;XはOまたはNH;QはCH2CH2、CH2CH2CH2またはCH2CH(OH)CH2;ZはCl、Br、I、NO3、1/2SO4、CH3SO3、H2PO4またはCH3COOである]
具体例としては、アミノエチル(メタ)アクリレート塩酸塩、アミノエチル(メタ)アクリレート硫酸塩、アミノプロピル(メタ)アクリルアミド塩酸塩等があげられ、これらの1種以上が使用できる。
【0006】
これらの中で工業的製造の容易さから、式(1)でXがO、QがCH2CH2である化合物、すなわち、アミノエチル(メタ)アクリレート塩酸塩、アミノエチル(メタ)アクリレート硫酸塩等が好ましく、アミノエチル(メタ)アクリレート塩酸塩が更に好ましく、アミノエチルメタアクリレート塩酸塩が最も好ましい。
【0007】
本発明において、ビニル系水溶性重合体(A)は、モノマー(m)の単独重合体であっても、他の公知のビニルモノマーとの共重合体であってもよい。
その場合に使用される他のビニルモノマーの例としてはアクリルアミド、アクリロニトリル、ビニルピロリドンなどの非イオン性ビニルモノマー、アクリル酸(塩)、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸(塩)、イタコン酸(塩)などのアニオン性ビニルモノマー、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルアミノエチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルジアリルアンモニウムメチルサルフェート、ビニルピリジンなどのカチオン性ビニルモノマーなどがあげられ、これらの1種以上が使用できる。
【0008】
これらの中で工業的観点から、アクリルアミドと(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドなどのカチオン性ビニルモノマーが好ましく、より好ましくは、アクリルアミドおよび(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドである。
【0009】
モノマー(m)と他のビニルモノマーを共重合する場合、モノマー(m)の共重合割合は目的に応じて自由に選びうるが、ポリマーの性能、特に高分子凝集剤として用いた時の脱水率の観点から、カチオン性ビニルモノマーの合計量に対するモノマー(m)の含量は、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上である。
また、非イオン性、アニオン性も含めた全ビニルモノマーの合計量に対するモノマー(m)の含量も、同じ理由で、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上である。
【0010】
本発明において、ビニル系水溶性重合体(A)がモノマー(m)を必須単位とすることから、(A)のpH4、7、10におけるコロイド当量値をそれぞれa、b、cとしたとき、bとa、cとaの比は、通常b/a=0.1〜0.5およびc/a=0〜0.1である。
【0011】
また、重合体(A)のpH4におけるコロイド当量値は、高分子凝集剤として用いた時の脱水性能から、5.0以上が好ましく、より好ましくは5.5〜13.0、さらに好ましくは6.0〜12.0である。モノマー(m)を必須単位とすることにより、pH4におけるコロイド当量値が5.0以上の重合体も容易に得ることができる。
【0012】
本発明において、コロイド当量値は以下に示すコロイド滴定法により求めることができる。
(1)試料50ppm水溶液の調整
試料0.2g(乾品換算したもの)を精秤し、三角フラスコにとり、イオン交換水100mlで溶解する。さらにこの溶液を10mlとりイオン交換水390mlを加え均一溶液として測定試料とする。
(2)コロイド当量値の測定
測定試料100mlをコニカルビーカーにとり攪拌しながら0.5%水酸化ナトリウム水溶液を徐々に加え測定pHに調整する。つぎにトルイジンブルー指示薬を2〜3滴加え、N/400ポリビニル硫酸カリウム(N/400PVSK)試薬で滴定する。滴定速度は2ml/分とし、測定試料が青から赤紫色に変色し、30秒以上保持する時点を終点とする。
(3)空試験
イオン交換水100mlで(2)と同様の操作をおこなう。
(4)計算法
コロイド当量値(meq/g)
=1/2×(試料の滴定量−空試験の滴定量)×(N/400PVSKの力価)
【0013】
本発明の高分子凝集剤の分子量は、固有粘度(1NーNaNO3 中、30℃で測定、単位:dl/g、以下同様)で通常2以上のものである。2未満では分子量が小さすぎて一般にはポリマーとして特性が出にくい。一般に凝集性能は分子量が高いものほど良好であるので、固有粘度は4以上が好ましく、より好ましくは5以上、特に好ましくは8以上である。
【0014】
本発明の高分子凝集剤製品形状は、粉末状、フィルム状、水溶液状、w/oエマルション状、懸濁液状等公知の任意形状でよい。
【0015】
本発明の高分子凝集剤は、公知の方法、たとえば水溶液重合、水と有機溶剤を用いた乳化重合、懸濁重合などにより製造できる。水溶液重合の場合、モノマー濃度が通常10〜80質量%となるようにモノマー水溶液として系内を不活性ガスで置換した後、公知の重合触媒(過硫酸塩たとえば過硫酸アンモニウムおよび過硫酸カリウム;有機過酸化物たとえばベンゾイルパーオキシド;アゾ系化合物たとえば2,2′−アゾビス−(アミジノプロパン)ハイドロクロライドおよびアゾビスシアノバレリン酸;およびレドックス触媒(過酸化物(H2O2、過硫酸カリウムなど)と還元剤(重亜硫酸ソーダ、硫酸第一鉄など)との組合せ)を加えて20〜100℃程度で数時間重合を行う。また、光増感剤を加えた後、紫外線等を照射してもよい。粉末化を行うには、このようにして得られた重合物を適宜細断して熱風乾燥、溶剤沈澱・乾燥し、粉砕すればよい。
【0016】
本発明の高分子凝集剤は、水中の懸濁粒子に高い吸着性を示して効果的な凝集性(フロック形成性)を示すので、公知の水系懸濁液の固液分離促進にとくに限定なく使用できるが、実用的価値の面から、下水、し尿などの微生物処理で生じる有機性汚泥(いわゆる生汚泥、余剰汚泥、混合生汚泥、消化汚泥、凝沈・浮上汚泥およびこれらの混合物)の脱水により有用である。これらのなかでも、同じ理由で、有機分含有量(VSS/SS)が70%以上の汚泥により有用である。
【0017】
本発明の高分子凝集剤は、単独でも使用できるが、目的に応じて、たとえば他のカチオン性ラジカル重合性ビニルモノマー(n)を必須単位とする、カチオン性または両性のビニル系水溶性重合体(B)からなる高分子凝集剤と併用してもよい。
モノマー(n)としては、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルアミノエチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルジアリルアンモニウムメチルサルフェート、ビニルピリジンなどが挙げられる。
(B)の具体例としては、ポリメタアクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、アクリルアミド−アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドコポリマー、ポリビニルアミジン等のカチオン性ビニル系水溶性重合体、アクリルアミド−アクリル酸−アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドコポリマー等の両性ビニル系水溶性重合体があげられるが、中でも、両性ビニル系水溶性重合体および、pH4におけるコロイド等量値が4.0以上であるカチオン性ビニル系水溶性重合体が好ましく、ポリメタアクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドが特に好ましい。
【0018】
また、本発明の高分子凝集剤を添加され形成されたフロック状の汚泥の脱水方法としては、公知の遠心脱水、ベルトプレス脱水、フィルタープレス脱水、キャピラリー脱水等がとれるが、効果の点から遠心脱水、ベルトプレス脱水がより好ましい。
【0019】
本発明の高分子凝集剤は、0.1質量%濃度の水溶液とした時の水溶液pHが、好ましくは4.0以下、特に好ましくは3.0以下である。水溶液pHが4.0を上回ると十分な脱水性能が得られないことがある。
【0020】
0.1質量%水溶液とした時の水溶液pHを4.0以下とするために、本発明の高分子凝集剤は酸性物質を併用してもよい。酸性物質としては公知の無機もしくは有機の酸性物質が使用でき、具体例としては硫酸、塩酸、リン酸などの鉱酸;酸性リン酸ソーダ、酸性ぼう硝、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、重硫酸アンモニウム、スルファミン酸などの無機固体酸性物質;シュウ酸などの有機酸があげられるが、効果および経済性から無機固体酸性物質が好ましく、中でもスルファミン酸、酸性ぼう硝が特に好ましい。
【0021】
本発明の高分子凝集剤は、通常0.1質量%程度の濃度の水溶液にして使用されるが、その際、使用目的に応じて、前記の酸性物質のほか、増粘剤、加重剤、分散剤、防腐剤および無機塩などを併用することができる。
【0022】
【実施例】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1〜4、比較例1〜3
表1に示す組成のモノマーを重合させて得た高分子凝集剤をそれぞれイオン交換水に溶解してpH4、7、10におけるコロイド当量値を測定した。
【0023】
【表1】
【0024】
実施例5〜8、比較例4〜6
表2に示す組成のモノマーを重合させて得た高分子凝集剤をそれぞれイオン交換水にとかして0.1%水溶液とし、K市下水処理場余剰汚泥(pH6.9、TS(総固形分)2.3%、有機分81%)にポリマーとして0.85%/TSずつ添加して小型ベルトプレス脱水機を用いて脱水試験を行い、得られた脱水ケーキの含水率を測定した。試験結果を表2に示すが、本発明の高分子凝集剤(実施例5〜8)は、比較例4〜6に比べて、高い脱水性(低いケーキ含水率)を示した。
【0025】
【表2】
【0026】
【発明の効果】
本発明の高分子凝集剤は下水、し尿などの微生物処理で生じる有機性汚泥に対し優れた脱水効果を有する。とくに従来脱水が困難であった有機分含有量(VSS/SS)の高い汚泥に対し際だった効果を発揮することから、高分子凝集剤として極めて有用である。
Claims (3)
- 1級アミン塩基を有するラジカル重合性(メタ)アクリル系モノマー(m)を必須単位とするビニル系水溶性重合体(A)からなり、重合体(A)のpH4、7、10におけるコロイド当量値をそれぞれa、b、cとしたとき、b/a=0.1〜0.5およびc/a=0〜0.1である高分子凝集剤と、他のカチオン性ラジカル重合性ビニルモノマー(n)を必須単位とするビニル系水溶性重合体(B)からなる高分子凝集剤を併用して汚泥に添加してフロックを形成して固液分離を行うことを特徴とする汚泥の脱水方法。
- 該モノマー(m)が下記一般式(1)で示されるモノマーである請求項1記載の汚泥の脱水方法。
CH2=CR−CO−X−Q−NH2・HZ (1)
[式中、RはHまたはCH3;XはOまたはNH;QはCH2CH2、CH2CH2CH2またはCH2CH(OH)CH2;ZはCl、Br、I、NO3、1/2SO4、CH3SO3、H2PO4またはCH3COOである] - ZがClである請求項2記載の汚泥の脱水方法。
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