JP3766304B2 - 加熱剥離型粘着シート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、室温付近では粘着力が強くて半導体ウエハ等のワークその他の被着体を強固に固定でき、かつ所望により短時間の加熱で粘着力を低下させて上記被着体を容易に剥離できる加熱剥離型粘着シートに関する。更に詳しくは、上記粘着力の温度による変化すなわち感温特性がリバーシブルであり、上記被着体の固定と剥離を繰返すことができる加熱剥離型粘着シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体ウエハを素子小片(チップ)に切断分離(ダイシング)する際のワーク支持台に半導体ウエハを固定するための粘着剤シートとして、特開昭60-196956 号公報には、基材フィルム表面に光照射により硬化して三次元網状化する性質の粘着層を積層したものが開示されている。この粘着剤シートは、その裏面側がワーク支持台上に真空吸着その他の任意の手段で固定され、表面側の粘着層でシリコン単結晶からなるウエハを粘着により固定し、このウエハ表面に集積回路を形成し、表面を研磨して所定の厚みとし、これをダイシングした後、光照射で粘着剤を硬化させ、粘着力を低下させてチップのピックアップを可能にする。
【0003】
また、特開平9-153471号公報には、粘着層として側鎖結晶性高分子を用い、温度変化により粘着力を下げてピックアップ性を向上させる方法が開示されている。また、特開平11-316820 号公報には、粘着層に熱膨張性の微小粒子を含有する熱膨張性粘着層を用い、加熱膨張により剥離性を付与する方法が開示され、また特開平10-25456号公報には、粘着層として加熱硬化性化合物および加熱重合開始剤を配合し、加熱により粘着力を低下させる方法が開示され、また特開平7-263351号公報には、融点が10℃以上で、かつ融点以上での粘着力が融点未満の3倍以上となる粘着剤を用い、冷却により粘着力を低下させる方法が開示されている。
【0004】
しかし、これらの粘着シートは、固定力が不足したり、チップのピックアップが困難であったり、また粘着剤でウエハの表面が汚染されたり、かつ粘着力の変化がリバーシブルでなく、粘着シートが使い捨てとなって経済的でない等の問題があった。そして、最近では、半導体集積回路の大容量化および高集積化や小型化が図られるのに伴い、チップ表面の汚染がなく、かつダイシングや研磨の際は強い粘着力でチップの飛散を防止し、次工程に移行する際は粘着力が低下してチップを容易にピックアップすることができ、しかも繰返し使用が可能で経済性に優れた粘着シートの開発が望まれるようになった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、室温付近では強い粘着力を発揮してウエハ等の被着体を強く固定でき、加熱したときは粘着力が低下して被着体を弱い力で容易に外すことができ、しかもこの温度による粘着特性の変化がリバーシブルであり、上記の固定と剥離を繰返しても粘着特性が変化せず、さらに被着体の剥離後に粘着剤の一部が被着体に移行して被着体を汚染することがほとんど無く、たとえば半導体ウエハのダイシング用やコンデンサー、LED等の電子部品の製造工程、組立て工程その他においてワークの仮固定に使用でき、またガラス板、金属板、プラスチック板等の表面保護シート用としても利用することができる加熱剥離型粘着シートを提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る加熱剥離型粘着シートは、基材シートの少なくとも片面に活性線硬化型の粘着剤が多数の点または線からなる模様状に積層され活性線で硬化されてポリ(メタ)アクリル酸エステルを主成分とするアクリル系(共)重合体からなる粘着剤層を形成しており、この模様状の粘着剤層は、その粘着力が常温で高く、加熱で低下する加熱剥離型であって、この粘着剤層の粘着力を、直径5.1 mm のステンレス鋼製円柱形プローブを用いてイマージョン速度30 mm /分、テスト速度600 mm /分、加圧50 gf 、ディスタンス5 mm の条件で測定したとき、上記粘着力が温度 25 ℃において 980 〜 5000mN / 20mm 2 、温度 80 ℃において 900mN / 20mm 2 以下であり、かつこの温度による粘着力の変化がリバーシブルであることを特徴とする。なお、上記粘着剤層の表面は、使用開始の直前まで剥離が容易なカバーシートで被覆されることが好ましい。
【0007】
上記の基材シートは、活性線硬化型粘着剤層の支持体となるものであり、一般にはプラスチックシート(フィルムと呼ばれる範囲を含む)が用いられるが、紙、布、不織布、金属箔など、またはこれらとプラスチックとの積層体、プラスチックフィルムもしくはシート同士の積層体を用いることができる。なお、上記基材シートの厚さは、一般には 500μm以下が好ましく、特に好ましいのは1〜 300μm、さらに好ましいのは5〜 250μm程度であるが、これに限定されない。
【0008】
この発明では、上記基材シートの少なくとも片面に模様状の活性線硬化型粘着剤層が設けられる。すなわち、上記の粘着剤層は、加熱剥離型粘着シートの使用目的に応じて、基材シートの片面または両面に設けることができる。そして、片面に粘着剤層を設けた場合、他の面には後記するように自己粘着層その他の固定手段を設け、この他の固定手段で基材シートを任意の加工機械のワーク支持台上に固定し、上記の活性線硬化型粘着剤層上にウエハ等のワークを固定することができる。
【0009】
また、他の面に固定手段を設けない場合は、この他の面を加工機械のワーク支持台上に真空吸着その他の任意の手段で固定することができる。そして、両面に活性線硬化型粘着剤層を設けた場合は、片面をウエハ等のワークに固定し、他の面をワーク支持台に固定することができる。
【0010】
上記の活性線硬化型粘着剤は、基材シートに多数の点または線からなる模様状に積層され、この模様状の粘着剤層が活性線で硬化されることにより、その粘着力が常温で高く、加熱で低下する加熱剥離性を備えているため、上記模様状の粘着剤層をウエハ等の被着体に常温下で重ねて押圧すると、強い粘着力で固定される。そして、必要に応じて上記の粘着剤層を、例えばワーク支持台に組み込んだヒータ等によって所定温度(例えば、40〜100 ℃)に加熱すると、粘着力が低下し、上記の被着体が加熱剥離型粘着シートから容易に剥離される。
【0011】
上記基材シートの表面は、活性線硬化型粘着剤層との密着性を高めるために、紫外線、電子線、プラズマ、コロナ等の活性線処理を施すことができる。また、ポリエステル系、ポリウレタン系またはポリアクリル系等の易接着性樹脂によるアンカー処理等を施すことができる。
【0012】
この発明で用いる活性線硬化型粘着剤は、紫外線または電子線、α線、β線、γ線もしくはX線等の電離性放射線等の活性線で架橋、硬化する性質の粘着剤であり、硬化後も十分なゴム弾性を保持できるものが好ましく、特に硬化後の上記加熱剥離型粘着剤層は、ポリ(メタ)アクリル酸エステルを主成分とするアクリル系(共)重合体で構成されることが好ましい。
【0013】
また、活性線を照射する前の初期粘着力および凝集力を調整するため、有機多価イソシアネート化合物、有機多価エポキシ化合物、アミノ系樹脂、金属架橋剤等の架橋剤を配合して架橋することもできる。また、紫外線で硬化させる場合は、各種の光重合開始剤を配合してもよい。さらに、必要に応じて粘着付与性樹脂、変成用樹脂、可塑剤、着色剤、帯電防止剤等を配合することもできる。
【0014】
この発明において、上記の活性線硬化型粘着剤は、基材シート上に多数の点または線からなる模様状、好ましくは単位模様の繰返しからなる模様状に積層される。この積層には、好ましくはスクリーン印刷機等の印捺手段が用いられる。そして、この模様状に積層することによって、上記の粘着剤層における粘着力の温度依存性すなわち感温性が向上する。この模様状の積層によって粘着力の感温性が高まり、加熱時の剥離性が向上する理由は明確でないが、粘着剤自体の感温性に加えて、点や線に模様化された粘着剤層の熱変形による粘着力の低下が寄与するものと推定される。
【0015】
上記模様の形状は特に限定がなく、形状および大きさが任意の多数のドットを縦横に任意ピッチで配列したものでもよく、また縞模様や格子縞、ネット模様であってもよい。また、上記の粘着剤からなる単位模様に窪みを形成して吸盤効果を発現させることもできる。ただし、活性線硬化型粘着剤が積層された基材シート表面において、粘着剤の付着部面積は、該付着部面積および非付着部面積の合計面積の5〜90%であることが好ましい。この付着部面積比は、合計面積の5%未満でも、また90%を超えても粘着力の感温性が低下して加熱剥離性が悪化し、特に5%未満の場合は、更に固定力も不足する。
【0016】
ここで、上記の合計面積は、基材シートの外周の余白部分を除く基材シートの作用面積、換言すれば粘着剤層に固定される被着体の面積または単位模様の全面積をいう。すなわち、粘着剤層は、粘着剤の付着部面積が被着体面積の5〜90%となるように模様化されることが好ましく、特に好ましいのは7〜80%であり、最も好ましいのは10〜80%である。なお、粘着剤層の厚みは、特に限定されないが、1〜 200μmが好ましく、特に2〜 150μmが好ましく、5〜 100μmが最も好ましい。
【0017】
上記の積層で形成された粘着剤層は、前記の活性線で硬化されることが不可欠である。たとえば、半導体ウエハのダイシング用として公知の固定用シートのように、粘着剤層を未硬化のままで使用した場合は、ウエハ等の被着体が粘着剤で汚染され易く、かつ加熱時の粘着力低下すなわち粘着力の温度依存性が不十分となり、加熱時における被着体の剥離が困難になって不適当である。上記の粘着剤層を硬化するには、前記の紫外線または電子線、α線、β線、γ線もしくはX線等の電離性放射線その他の活性線を使用することができる。
【0018】
上記粘着剤層の粘着力は、25℃において980〜5000mN/20mm2であることが好ましい。特に好ましいは、1000〜4500mN/20mm2であり、最も好ましいのは1100〜4000mN/20mm2である。この25℃での粘着力が980mN/20mm2未満では、被着体の固定力が不足し、反対に5000mN/20mm2を超えると感温性が低下し、加熱剥離性が悪化する。一方、80℃での粘着力は、900mN/20mm2以下が好ましい。特に好ましいは、850mN/20mm2以下であり、最も好ましいのは800mN/20mm2以下である。この80℃での粘着力が900mN/20mm2を超えると、被着体の剥離が困難になる。なお、上記粘着力の大きさは、直径5.1 mm のステンレス鋼製円柱形プローブを用いてイマージョン速度30 mm /分、テスト速度600 mm /分、加圧50 gf 、ディスタンス5 mm の条件で測定されるが、目的に応じて粘着剤の組成、硬化度、印捺模様や粘着剤付着部の形状、密度および該付着部面積と被着体面積との比率等を変更することにより、任意に設定することができる。
【0019】
この発明の加熱剥離型粘着シートは、コンデンサーやLEDなど電子部品の製造工程、組立て工程およびコンパクトディスク等の平板に対する印刷工程等において任意の部材を被着体として一時的に固定する際に利用することができるが、特に半導体ウエハを被着体とした場合は、半導体ウエハのダイシングや研磨の際に半導体ウエハやチップを基材シートの片面に粘着剤層の粘着力で強く保持できる一方、ダイシング終了後にチップをピックアップする際は、加熱という簡単な操作で容易に粘着力を低下させることができる。そのため、常温下のダイシング中にチップが飛散することがなく、また加熱時の剥離力が小さいので、ピックアップする際に作業性が低下せず、かつ粘着剤層の一部がチップに移行してチップを汚染することもない。また、加熱による粘着力の低下は、リバーシブルな特性であるため、上記の作業に際して粘着シートの繰返し使用が可能になり、経済的にも有利である。
【0020】
上記の粘着シートは、基材シートの表裏両面に上記の粘着剤層を形成し、片面の粘着剤層によって半導体ウエハを固定し、他面の粘着剤層によってワーク支持台に固定してもよい。また、他面には粘着剤層を設けることなく、ワーク支持台に真空吸着によって固定することもできる。また、他面に柔軟性ポリマーからなる自己粘着層を形成し、その自己粘着力を利用してワーク支持台に固定することもできる。この自己粘着層を形成した場合は、ワーク支持台に粘着シートを貼着するときの施工性が良好となり、粘着シートと支持台との間に空気を噛込むことなく施工することができるので、貼着した粘着シート表面の平面性が向上し、かつ真空吸着に比して固定手段を簡略化することができる。
【0021】
本発明の加熱剥離型粘着シートの粘着特性は、シート表面の平面性で大きく影響され、平面性が悪化すると、粘着シートの面内の粘着特性の変動が大きくなる。したがって、上記の自己粘着層による貼着を利用することにより、反対側の粘着剤層における粘着特性の面内変動を押さえることができる。また、自己粘着層を用いた場合は、強い固定力を持つと同時に、良好な剥離性も得られ、例えば、活性線硬化型粘着剤層の粘着特性が低下して新たな粘着シートに張り替える必要が生じた場合に簡単に剥離して交換することができ、かつ支持台表面を自己粘着層の構成成分で汚染しない利点を備え、リペアー性に優れている。
【0022】
なお、上記シートの平面性により粘着特性の面内変動を押さえる手段として、本発明の基材シートとして、発泡体からなるプラスチックフィルムを用いることにより、シートにクッション性を付与して改善することもできる。
【0023】
上記の自己粘着層は、柔軟性ポリマーを積層し、その表面の平均表面粗度(Ra )を0.12μm以下、好ましくは0.08μm以下、特に好ましくは0.05μm以下に設定することによって形成される。この設定により、自己粘着層に実用的な固定力が発現するが、平均表面粗度(Ra )が0.12μmを超えると、自己粘着力が発現せず、自己粘着による固定が不可能になる。
【0024】
上記自己粘着層の表層のダイナミック硬度は、0.01〜20mN/μm2が好ましく、特に0.02〜10mN/μm2が好ましく、0.04〜5mN/μm2が最も好ましい。上記のダイナミック硬度が0.01mN/μm2未満では、剥離が困難になって前記のリペアー性が低下し、反対に20mN/μm2を超えると、固定力が不足する。
【0025】
上記の柔軟性ポリマーとしてはゴムおよび熱可塑性エラストマーが挙げられる。ゴムとしては、天然ゴムおよびシリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、ポリウレタンゴム等の合成ゴムが例示される。また、熱可塑エラストマーとしては、ポリエステル系、ポリアミド系およびポリオレフィン系のものが例示される。これらの柔軟性ポリマーは、単体で用いてもよく、2以上を混合して用いてもよい。
【0026】
上記自己粘着層の形成方法は、任意である。基材シートの片面に前記の活性線硬化型粘着剤層を形成した後、基材シートの他面に自己粘着層を形成してもよく、また基材シートの片面に自己粘着層を形成した後、他面に加熱剥離型粘着剤層を形成してもよい。また、本発明においては、粘着シートにあらかじめ通気孔を開けておき、半導体ウエハ等の被着体を固定する際、ワーク支持台側からの真空吸着等の補助手段を併用して被着体の固定力を高め、剥離時に該補助手段の停止により固定力の温度依存性を高めてピックアップを容易にすることもできる。
【0027】
【発明の実施の形態】
実施形態1
基材フィルムとして裏面がプラズマ処理された発泡タイプのポリエチレンテレフタレートフィルムを、また第1カバーフィルムとして片面が易剥離処理され、該処理面の平均表面粗度(Ra )が0.12μm以下、好ましくは0.08μm以下、特に好ましくは0.05μm以下のポリエチレンテレフタレートフィルムを、また第2カバーフィルムとして片面が易剥離処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムをそれぞれ用意する。
【0028】
上記基材フィルムの裏面(プラズマ処理面)にシリコーンゴムやエチレンプロピレンジエンゴム等のゴムおよび熱可塑性エラストマー等の柔軟性ポリマーからなる未架橋の薄膜を積層し、この薄膜表面に上記第1カバーフィルムの易剥離処理面を重ねてローラで圧着し、薄膜表面に第1カバーフィルムにおける易剥離処理面の表面形状を転写する。得られた積層体を電子線照射装置に導入し、基材フィルム側から電子線照射を行って柔軟性ポリマーを架橋させ、表層のダイナミック硬度が0.01〜20mN/μm2、好ましくは0.02〜10mN/μm2、特に好ましくは0.04〜5mN/μm2であって、平均表面粗度(Ra)が0.12μm以下、好ましくは0.08μm以下、特に好ましくは0.05μm以下の自己粘着層に形成し、同時に自己粘着層を基材フィルムと接着する。
【0029】
次いで、上記基材フィルムの表面に紫外線硬化型粘着剤を多数個のドットまたは線からなる模様状にスクリーン印刷法で印捺する。ただし、粘着剤の付着部面積と該付着部面積および非付着部面積の合計面積との比率は、5〜90%、好ましくは7〜80%、特に好ましくは10〜80%に設定される。
【0030】
そして、印刷面に紫外線を照射し、上記の印刷された模様状の粘着剤層を硬化させ、粘着力が25℃においては 980〜5000mN/20mm2 、好ましくは1000〜4500mN/20mm2 、特に好ましくは1100〜4000mN/20mm2 であって、80℃においては 900mN/20mm2 以下、好ましくは 850mN/20mm2 以下、特に好ましくは 800mN/20mm2 以下の加熱剥離型粘着剤層を形成し、その上に前記の第2カバーフィルムの易剥離処理面を重ねて上記の加熱剥離型粘着剤層をカバーし、加熱剥離型粘着シート複合体を得る。
【0031】
得られた加熱剥離型粘着シート複合体は、半導体ウエハの研磨やダイシング用に好適であり、常温下で上記複合体の第1カバーフィルムを剥離し、現われた自己粘着層を加工機のワーク支持台に重ねて加熱剥離型粘着シートを固定し、次いで第2カバーフィルムを剥離し、現われた加熱剥離型粘着剤層に半導体ウエハを重ねて押圧すると、半導体ウエハが固定される。
【0032】
このとき、ワーク支持台に自己粘着層を介して基材シートが固定され、この基材シートに加熱剥離型粘着剤層を介して半導体ウエハが固定され、いずれの固定力も強固であるため、半導体ウエハの研磨やダイシングは支障なく行われる。ダイシングが終了した場合は、上記の加熱剥離型粘着剤層を、あらかじめワーク支持台に組み込まれているヒータ等によって温度40〜100 ℃に加熱すると、加熱剥離型粘着剤層の粘着力が低下するため、チップのピックアップを容易に行うことができ、しかもピックアップの際に上記粘着剤の移行によるチップ裏面の汚染が生じない。
【0033】
そして、上記の加熱剥離型粘着剤層の温度が常温に戻ると、その粘着力は再び元通り高くなり、加熱すると再び低下し、その粘着力の感温性がリバーシブルであり、しかも上記のとおりチップの汚染がないため、加熱剥離型粘着シートの繰返し利用が可能である。また、ワーク支持台に対する固定を自己粘着層で行うので、剥離も容易であり、剥離によってワーク支持台を汚染することもなく、リペアー性も良好である。
【0034】
実施形態2
上記の実施形態1において、基材フィルム裏面のプラズマ処理、第1カバーフィルムの使用、柔軟性ポリマーからなる未架橋の薄膜の積層、電子線照射および自己粘着層の形成を省略し、その他は実施形態1と同様にして上記基材フィルムの表面に紫外線硬化型粘着剤を多数個のドットまたは線からなる模様状にスクリーン印刷法で印刷し、この印刷面に紫外線を照射して加熱剥離型粘着剤層を形成し、その上に前記の第2カバーフィルムの易剥離処理面を重ねて上記の粘着剤層を被覆し、加熱剥離型粘着シート複合体を得る。
【0035】
この加熱剥離型粘着シート複合体は、その基材フィルムの裏面をワーク支持台上に重ね、真空吸着によって固定すると、それ以外は前記の実施形態1と同様にして半導体ウエハの研磨やダイシングに使用し、同様の繰返し利用が可能である。また、ワーク支持台に対する固定を真空吸着で行うので、剥離も容易であり、剥離によってワーク支持台を汚染することもなく、リペアー性も良好である。
【0036】
【実施例】
紫外線硬化型粘着剤を用いて種々の粘着シートを試作し、その性能を比較した。なお、以下の記載で「部」は重量部を示す。また、粘着力、表面ダイナミック硬度および平均表面粗度は、下記にしたがって測定した。
【0037】
1.粘着力
レスカ社製タッキング試験機TAC−II型を用いて下記条件で測定した。
制御方式:コントロールロード、イマージョン速度:30mm/分、テスト速度: 600mm/分、加圧:50gf、加圧時間:30秒、ディスタンス:5mm、プローブ:円柱形φ5.1 ステンレス製、測定温度:25℃および80℃
【0038】
本測定に関しては、測定プローブと試料の平行出しが測定値に大きく影響するので、測定前に平行出しを行い、かつ測定時に加熱プレートの上に極薄ゴムシート(クレハエラストマー社製「ぺらぺら君SR60NJK 0.2 t」)を敷き、その上に試料をセットして行った。
【0039】
2.表層ダイナミック硬度
ダイナミック硬度計(島津製作所製「島津ダイナミック超微小硬度計DUH202 型」)を用い、試験モード:3(軟質材料試験)、圧子の種類: 115、試験荷重:1.97mN、負荷速度:0.142 mN/秒、保持時間:5秒の条件で測定した。試料はスライドガラス上にエポキシ接着剤で固定し、測定台にセットした。本測定法で評価されるダイナミック硬度は、試料の表面からの深さによって異なる測定値が得られる。この発明では、表面から3μmの測定値を表層硬度とした。
【0040】
3.平均表面粗度(Ra )
小坂研究所製SE 200型表面粗さ計を用い、縦倍率:1000、横倍率:20、カットオフ:0.08mm、測定長:8mm、測定速度:0.1mm /分の条件で測定した。
【0041】
実施例1
市販の高透明度型シリコーンゴム組成物(ゴム硬度:10度)を、2本ロールを用いて 100℃で混練し、厚み3mmのゴムシートを成形した。得られた未架橋のゴムシートを切断して1cm角の細片とし、この細片をトルエンに対する重量比率が23%となるように秤量し、トルエンと共に真空脱泡装置付き攪拌機に投入し攪拌して上記細片をトルエンに溶解し、得られた溶液にペンタエリスリトールテトラアクリレートを、シリコーンゴム組成物 100部に対して2部の割合で添加し、均一に攪拌した後、真空脱泡装置を駆動し、脱泡した。
【0042】
一方、基材フィルムとして、片面がプラズマ処理された発泡タイプのポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み: 100μm)を、また第1カバーフィルムとして、片面が易剥離処理され、かつその処理表面の平均表面粗度(Ra )が0.04μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み:38μm)を、また第2カバーフィルムとして、片面が易剥離処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み:12.5μm)それぞれ用意した。
【0043】
上記の基材フィルムおよびシリコーンゴム溶液をロールコーターに供給し、基材フィルムのプラズマ処理面にシリコーンゴム溶液を乾燥後厚みが 100μmとなるように塗布し、オーブンに導入、乾燥し、そのゴム層表面に上記の第1カバーフィルムの易剥離処理面を重ね、圧着ローラで連続的に押さえて積層した。次いで、得られた積層体を電子線照射装置に導入し、基材フィルム側から 750KV、15Mrad の電子線照射を行って基材フィルム、ゴムフィルムおよび第1カバーフィルムからなる総厚み238 μmの積層体を得、これをロール状に巻取った。
【0044】
上記積層体の基材フィルム表面に、ウレタン系アクリレートオリゴマー34部、エーテル系アクリレート60部、光開始剤5部および多価イソシアネート1部からなる紫外線硬化型粘着剤を用い、スクリーン印刷法で多数個のドット(直径:1.3 mm)を縦横等間隔の規則的な配列パターンでに印刷した。厚みは、25μm、ドット部/非ドット部の面積比は、37/63に設定した。この印刷体に高圧水銀ランプを用い、照射線量1200mJ/cm2 の紫外線を照射し、上記の印刷されたドット状粘着剤を硬化させ、この硬化後の印刷面に前記第2カバーフィルムの易剥離処理面を重ねて印刷面をカバーし、加熱剥離型粘着シート複合体を得た。
【0045】
得られた実施例1の加熱剥離型粘着シート複合体において、ドット印刷部表面の25℃での粘着力は1500mN/20mm2 であり、80℃での粘着力は 200mN/20mm2 であり、優れた加熱剥離性を有していた。また、印刷面の反対側は、平均表面粗度(Ra )が0.04μm、表層ダイナミック硬度が0.09mN/μm2で、優れた自己粘着性を有しており、平滑なアルミニウム板表面に貼着した場合、空気を噛込むことなく極めて容易に貼着することができ、アルミニウム板に粘着シートを強固に固定することができ、かつ剥離も容易であり、リペアー性に優れていた。
【0046】
また、上記の加熱剥離型粘着シート複合体を、半導体ウエハのダイシング工程でウエハの固定用シートとして用いたところ、ウエハを強い固定力で保持することができ、ダイシング中に飛散したチップは皆無であった。次いで、チップを粘着した状態でウエハをワーク支持台のヒータで40〜100 ℃に加熱したところ、チップの全数を容易にピックアップすることができた。そして、同じ粘着シートで同じ作業を5回繰り返したが、粘着力の性能低下はなく、リサイクル性に優れていた。
【0047】
比較例1
上記の実施例1において、そのドット印刷面に対する紫外線硬化作業を省略し、その他は実施例1と同様にして比較例1の粘着シート複合体を得た。この比較例1のドット印刷部の粘着力は、25℃で6000mN/20mm2 、80℃で4500mN/20mm2 であり、加熱剥離性が劣っていた。この粘着シート複合体を、実施例1と同様に、半導体ウエハのダイシング工程におけるウエハの固定用に使用したところ、ウエハの固定力は強く、チップの飛散もなく、問題がなかったが、加熱剥離性が劣るため、チップのピックアップが不可能であった。
【0048】
比較例2
前記の実施例1において、紫外線硬化型粘着剤の印刷を、パターン印刷に変えて全面均一なベタ印刷に変更する以外は、実施例1と同様にして比較例2の粘着シート複合体を得た。上記粘着剤の印刷面の粘着力は、25℃で5500mN/20mm2 、80℃で2500mN/20mm2 となり、加熱剥離性が劣っていた。そして、半導体ウエハの固定に用いたところ、ダイシング時の固定力は強く、チップの飛散もなく、問題がなかったが、加熱剥離性が劣るため、ダイシング後のチップのピックアップが不可能であった。
【0049】
実施例2
前記の実施例1において、粘着剤印刷時のドット径を2.0mm とし、ドット部と非ドット部の面積比を60/40に設定し、かつ紫外線照射量を2000mJ/cm2 とする以外は実施例1と同様にして実施例2の加熱剥離型粘着シート複合体を得た。その印刷面の粘着力は、25℃で1800mN/20mm2 となり、80℃で 300mN/20mm2 となり、優れた加熱剥離性を有していた。そして、半導体ウエハの固定に用いたところ、実施例1と同様に実用性に優れていた。
【0050】
実施例3
前記の実施例1において、粘着剤印刷時のドットのピッチを広げ、ドット部と非ドット部の面積比を25/75に設定し、かつ紫外線照射量を 800mJ/cm2 とする以外は実施例1と同様にして実施例3の加熱剥離型粘着シート複合体を得た。その印刷面の粘着力は、25℃で1200mN/20mm2 、80℃で 150mN/20mm2 となり、優れた加熱剥離性を有していた。そして、半導体ウエハの固定に用いたところ、実施例1と同様に実用性に優れていた。
【0051】
実施例4
前記の実施例2において、粘着剤印刷時のドット頂部に同心円状の窪みをつけてドットを吸盤形に成形し、その他は実施例2と同様にして実施例4の加熱剥離型粘着シート複合体を得た。印刷面の粘着力は、25℃で2500mN/20mm2 、80℃で 150mN/20mm2 であり、優れた加熱剥離性を示した。そして、半導体ウエハの固定に用いたところ、実施例2と同様に高い実用性を備えていた。
【0052】
実施例5
前記の実施例1における粘着剤の印刷パターンを一辺長が2mmのダイヤ柄とし、粘着剤部と非粘着剤部の面積比を45/55とし、紫外線照射量を1500mJ/cm2 とする以外は実施例1と同様にして実施例5の加熱剥離型粘着シート複合体を得た。その印刷面の粘着力は、25℃で1700mN/20mm2 、80℃で 400mN/20mm2 であり、優れた加熱剥離性を有し、半導体ウエハの固定に用いたところ、実施例1と同様に実用的であった。
【0053】
実施例6
前記の実施例1において、自己粘着層のゴム成分をシリコーンゴムからEPDMに切り替える以外は、実施例1と同様にして実施例6の加熱剥離型粘着シート複合体を得た。この実施例6の自己粘着層は、平均表面粗度(Ra )が0.06μm、表層ダイナミック硬度が 3.5mN/μm2であり、優れた自己粘着性を有し、平滑なアルミニウム板表面に貼着した場合、空気を噛込むことなく極めて容易に貼着することができ、アルミニウム板に粘着シートを強固に固定することができ、かつ剥離も容易でリペアー性に優れ、実施例1と同様の実用性を備えていた。
【0054】
【発明の効果】
上記のとおり、請求項1に係る発明は、加熱剥離型粘着シートを、常温下では粘着剤層の粘着力によって任意の被着体に固定し、被着体を被覆することができ、かつ加熱によって被着体から容易に剥離することができ、その際に被着体の表面を汚染することがなく、しかも上記の固定および剥離を繰返すことができ、ワークの仮固定やガラス板の表面保護用に用いるのに好適である。
【0055】
特に請求項2に係る発明は、粘着剤層の感温性に優れ、取扱いが容易である。また、請求項3に係る発明は、自己粘着層をワーク支持台に、粘着剤層をワークに向けてワーク支持台とワークとの間に挟むことにより、ワーク支持台にワークを固定することができ、かつ繰返し使用が可能であると共にリペア性にも優れる。また、請求項4に係る発明は、半導体ウエハの研磨やダイシングに際し、半導体ウエハを強固に固定してチップの飛散を防止することができ、かつダイシング後におけるチップのピックアップが容易である。
Claims (4)
- 基材シートの少なくとも片面に活性線硬化型の粘着剤が多数の点または線からなる模様状に積層され活性線で硬化されてポリ(メタ)アクリル酸エステルを主成分とするアクリル系(共)重合体からなる粘着剤層を形成しており、この模様状の粘着剤層は、その粘着力が常温で高く、加熱で低下する加熱剥離型であって、この粘着剤層の粘着力を、直径5.1 mm のステンレス鋼製円柱形プローブを用いてイマージョン速度30 mm /分、テスト速度600 mm /分、加圧50 gf 、ディスタンス5 mm の条件で測定したとき、上記粘着力が温度 25 ℃において 980 〜 5000mN / 20mm 2 、温度 80 ℃において 900mN / 20mm 2 以下であり、かつこの温度による粘着力の変化がリバーシブルであることを特徴とする加熱剥離型粘着シート。
- 基材シートにおける粘着剤の付着部の面積が付着部および非付着部の合計面積の5〜90%である請求項1に記載の加熱剥離型粘着シート。
- 加熱剥離型粘着剤層が基材シートの片面のみに積層され、基材シートの他面にゴムや熱可塑性エラストマーからなる自己粘着層が形成され、該自己粘着層表面のダイナミック硬度が 0.01 〜5 mN /μ m 2 であり、かつ平均表面粗度(Ra)が 0.12 μm以下である請求項1または2に記載の加熱剥離型粘着シート。
- 基材シートの片面の加熱剥離型粘着剤層が半導体ウエハの固定用である請求項3に記載の加熱剥離型粘着シート。
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