JP3764781B2 - 直線移動装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、リニアガイドに支持されたスライダーを、待機位置と所定の作業位置との間を移動させるようにした直線移動装置に関する。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】
例えば部品の精密位置決めを行うロボットや、電子部品の自動実装を行う実装機においては、近年の部品の小形化や実装密度の高密度化等に伴い、停止位置決めの精度をより向上させる必要が生じてきている。そして、それらロボットや実装機の主要機構部として、スライダーを直線的に移動させるようにした直線移動装置が採用されている。
【0003】
図7及び図8は、この種の直線移動装置の構成を示している。ここで、スライダー1は、リニアガイド2上に直線方向(図で左右方向)に移動自在に支持されている。また、リニアガイド2の近傍には、ねじシャフト3が左右方向に延びて設けられ、前記スライダー1に設けられたねじナット4がそのねじシャフト3に螺合している。このねじシャフト3は、基端側(図で左端側)が、ハウジング5に設けられた軸受6(例えば組合せアンギュラ玉軸受)に回転自在且つ軸方向移動不能に支持されていると共に、先端部(図で右端部)が、ハウジング7に設けられた軸受8(例えば深溝玉軸受)に回転自在且つ軸方向移動可能に支持されている。
【0004】
そして、駆動源となるモータ9は、カップリング10を介してねじシャフト3の基端部に接続されている。これにて、モータ9の駆動により、スライダー1を、リニアガイド2に案内させながら任意の位置に移動させることができ、例えば図にBで示す待機位置から、図にAで示す作業位置(実際に品物をピックアップしたり部品を実装したりする位置)に移動させるのである。
【0005】
しかしながら、上記従来のものでは、次のような不具合があった。即ち、スライダー1が、リニアガイド2上を高速度で短時間に何往復も動作すると、ねじシャフト3とねじナット4との間で発生する摩擦熱により、ねじシャフト3の温度が上昇する。このような温度上昇により、ねじシャフト3が熱膨張して伸び、スライダー1の作業位置における停止位置Aがずれてしまうことになる。このずれによって、停止位置決めの精度が低下してしまうのである。
【0006】
ちなみに、図9は、ねじシャフト3をモデル化したものであり、軸受6部分が固定端P1 に相当し、作業位置Aに対応するねじシャフト3の位置が点P3 に相当している。また、ねじシャフト3の固定端P1 から点P3 (作業位置A)までの初期長さをL2 とすると、ねじシャフト3の作業位置Aにおける伸び量(位置ずれ量)dL2 は、次の式で表される。
【0007】
dL2 =λ(t1 −t2 )・L2 …(1)
(但し、λ:ねじシャフトの熱的線膨張率、t1 :ねじシャフトの初期温度、t2 :ねじシャフトの発熱後の温度)
つまり、位置ずれ量dL2 は、ねじシャフト3の固定端P1 から作業位置に相当する点P3 までの距離L2 に比例するのに対し、図7に示すものでは軸受6から作業位置Aまでの距離L2 が長くなっているため、その分ずれ量も大きくなっていたのである。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、ねじシャフトの熱膨張に起因する停止位置決め精度の低下を防止することができる直線移動装置を提供するにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の直線移動装置は、スライダーを移動させるためのねじシャフトのうち、駆動機構に連結される一端側を回転自在且つ軸方向移動不能に支持する第1の軸受部と、そのねじシャフトの他端側を回転自在且つ軸方向移動可能に支持する第2の軸受部とを具備し、それら第1の軸受部を作業位置側、第2の軸受部を待機位置側に配置した構成に特徴を有する(請求項1の発明)。
【0010】
これによれば、ねじシャフトが発熱により熱膨張する際には、第1の軸受部部分が固定端となり、第2の軸受部部分においてはその伸び量が逃がされるようになる。そして、第1の軸受部つまり固定端が作業位置側に設けられているので、固定端から作業位置までの間の距離が短くなり、ねじシャフトの熱膨張時の作業位置における位置ずれ量を小さく抑えることができる。
【0011】
本発明の第2の直線移動装置は、作業位置側に設けられ、スライダーを移動させるためのねじシャフトのうち一端側を回転自在且つ軸方向移動不能に支持する第1の軸受部と、そのねじシャフトの他端側を回転自在且つ軸方向移動可能に支持する第2の軸受部と、前記ねじシャフトの熱膨張による伸び量を検出するセンサと、このセンサの検出値に基づいて駆動機構によるねじシャフトの回転量を補正する補正手段とを具備するところに特徴を有する(請求項2の発明)。
【0012】
これによれば、ねじシャフトが発熱により熱膨張する際には、第1の軸受部部分が固定端となり、第2の軸受部部分においてはその伸び量が逃がされるようになるのであるが、このとき、センサによりねじシャフトの熱膨張による伸び量が検出され、補正手段により、その伸び量に応じて駆動機構によるねじシャフトの回転量が補正される。従って、ねじシャフトの熱膨張時の作業位置における位置ずれを補正することができる。
【0013】
この場合、第1の軸受部を、作業位置側に設けることによって、上記第1の直線移動装置のようにねじシャフトの熱膨張時の作業位置における位置ずれ量自体を小さくしつつ、位置ずれを補正することができ、より効果的となる。
【0014】
本発明の第3の直線移動装置は、作業位置側に設けられ、スライダーを移動させるためのねじシャフトのうち一端側を回転自在且つ軸方向移動不能に支持する第1の軸受部と、そのねじシャフトの他端側を回転自在且つ軸方向移動可能に支持する第2の軸受部と、前記ねじシャフトの温度を検出する温度センサと、この温度センサの検出値に基づいて駆動機構によるねじシャフトの回転量を補正する補正手段とを具備するところに特徴を有する(請求項の発明)。
【0015】
これによれば、ねじシャフトが発熱により熱膨張する際には、やはり第1の軸受部部分が固定端となり、第2の軸受部部分においてはその伸び量が逃がされるようになる。ここで、ねじシャフトの熱膨張による伸び量は、ねじシャフトの温度の上昇度合に比例するので、温度センサの検出温度に基づいて、補正手段によりねじシャフトの回転量が補正されることによって、ねじシャフトの熱膨張時の作業位置における位置ずれを補正することができる。
【0016】
この場合、第1の軸受部を、作業位置側に設けることによって、やはりねじシャフトの熱膨張時の作業位置における位置ずれ量自体を小さくしつつ、位置ずれを補正することができ、より効果的となる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の第1の実施例(請求項1に対応)について、図1ないし図4を参照しながら説明する。図1は、本実施例に係る直線移動装置の全体構成を概略的に示している。ここで、スライダー11は、ベース12(図2,3参照)上に図で左右方向に延びて設けられたリニアガイド13上に直線方向に移動自在に支持され、図1に二点鎖線で示す待機位置Bと、実線で示す作業位置A(実際に品物をピックアップしたり部品を実装したりする位置)との間を移動されるようになっている。
【0018】
前記リニアガイド13の近傍には、ねじシャフト14が左右方向に延びて配置され、前記スライダー11の側面部に連結されたねじナット15がそのねじシャフト14に螺合している。このとき、前記ねじシャフト14は、基端側(図で右端側)が第1の軸受部16に支持されていると共に、先端部(図で左端部)が第2の軸受部17に支持されている。従って、第1の軸受部16は作業位置A側に配置され、第2の軸受部17は待機位置B側に配置されているのである。
【0019】
このうち第1の軸受部16は、図2に示すように、ハウジング18内に、例えば一対のアンギュラ玉軸受19,19を背面組合せ状態に配置し、その外輪部をベアリング押え20にて固定して構成されている。そして、前記ねじシャフト14は、基端側に設けられた径大な段付部14aを一面側の内輪部に接触させると共に、他面側の内輪部に圧接するようにベアリングナット21を締付けることにより、第1の軸受部16に対して回転自在且つ軸方向移動不能に取付けられている。
【0020】
一方、前記第2の軸受部17は、図3に示すように、ハウジング22内に、例えば深溝玉軸受23を配設して構成され、前記ねじシャフト14の先端部が、その深溝玉軸受23に支持されることにより、回転自在且つ軸方向移動可能に取付けられている。従って、後述するような、ねじシャフト14の熱膨張による伸びが発生した際には、ねじシャフト14の基端部における第1の軸受部16に支持された部分が固定端となり、ねじシャフト14の先端部が自由端となって図で右方に伸びる形態とされる。また、その伸びは、第2の軸受部17部分で逃がされるようになる。
【0021】
そして、図1に示すように、前記ねじシャフト14の基端部には、カップリング24を介して駆動機構を構成するモータ25に連結されている。これにて、モータ25の駆動によって、ねじシャフト14が回転駆動されてねじナット15が移動し、スライダー11がリニアガイド13上を左右方向に直線移動するのである。このとき、図示はしないが、前記モータ25は、マイコン等からなる制御装置により通電制御され、もって、スライダー11は例えば待機位置Bから所定の作業位置Aに移動して停止され、作業完了後再び待機位置Bに戻るといった動作を繰返すようになっている。
【0022】
次に、上記構成の作用について、図4も参照しながら述べる。スライダー11が、リニアガイド13上を高速度で短時間に何往復も動作すると、ねじシャフト14とねじナット15との間で発生する摩擦熱により、ねじシャフト14の温度が上昇する。このような温度上昇により、ねじシャフト14が熱膨張して伸び、スライダー13の作業位置Aにおける停止位置がずれてしまう事情があるが、本実施例の直線移動装置1においては、第1の軸受部16を作業位置A側に配置したことにより、その位置ずれ量を極く僅かなもので済ませることができる。
【0023】
即ち、図4はねじシャフト14のモデル図を示しており、図中、上段が熱膨張前のねじシャフト14を示し、下段が熱膨張後のねじシャフト14を示している。ここで、固定端P1 はねじシャフト14の第1の軸受部16に支持された部分に相当し、点P2 は、作業位置Aに対応する位置を示している。ねじシャフト14の固定端P1 から点P2 までの長さがL1 である。また、点P3 は従来例における作業位置Aに対応する位置を示しており、ねじシャフト3の固定端P1 から点P3 までの長さがL2 である。
【0024】
熱膨張によってねじシャフト14が図で右方に伸びると、図の下段に示すように、点P2 が点P4 に移動し、点P3 が点P5 に移動することになる。これにて、本実施例における作業位置Aの位置ずれ量をdL1 、従来例における作業位置Aの位置ずれ量をdL2 とすると、これらdL1 、dL2 は、次式で表されるようになる。
【0025】
dL1 =λ(t1 −t2 )・L1 …(2)
dL2 =λ(t1 −t2 )・L2 …(1)
(但し、λ:ねじシャフトの熱的線膨張率、t1 :ねじシャフトの初期温度、t2 :ねじシャフトの発熱後の温度)
このとき、本実施例における固定端P1 から点P2 までの長さL1 は、従来例の固定端P1 から点P3 までの長さL2 に対して、L1 <<L2 であるから、dL1 <<dL2 となる。この結果、従来例のものに比べて、熱膨張に起因する位置ずれ量を極めて小さくすることができるのである。
【0026】
このように本実施例によれば、熱膨張時の固定端となる第1の軸受部16を作業位置A側に、自由端となる第2の軸受部17を待機位置B側に配置したことにより、従来のものに比べて、ねじシャフト14の熱膨張時の作業位置Aにおける位置ずれ量を極めて小さく抑えることができ、ねじシャフト14の熱膨張に起因する停止位置決め精度の低下を防止することができるという優れた実用的効果を得ることができるものである。
【0027】
図5は、本発明の第2の実施例(請求項2に対応)を示すものである。この実施例が上記第1の実施例と異なるところは、ねじシャフト14の熱膨張による伸び量を検出するためのセンサ31(ギャップセンサ31)を設けると共に、そのギャップセンサ31の検出に基づいて、制御装置によりモータ25への通電量を制御し、もってねじシャフト14の回転量を補正するようにした点にある。従って、前記制御装置が本発明にいう補正手段として機能する。
【0028】
かかる構成においては、熱膨張に起因するねじシャフト14全体の実際の伸び量がギャップセンサ31により検出され、その検出に基づいて、制御装置は作業位置Aの位置ずれ量dL1 を算出する。そして、その位置ずれ量dL1 を補正するようにモータ25への通電を制御し、スライダー11を所定の作業位置Aに停止させるのである。従って、熱膨張に起因する位置ずれ量を零とすることができ、高精度でスライダー11の停止位置決めを行うことができるものである。
【0029】
図6は、本発明の第3の実施例(請求項に対応)を示すものであり、この実施例では、上記第2の実施例におけるギャップセンサ31に代えて、ねじシャフト14の温度を検出するための例えば非接触式の温度センサ32を設けるようにしている。そして、制御装置は、常温時(低温時)のねじシャフト14の初期温度t1 と、からねじシャフト14の発熱後の温度t2 との差から、作業位置Aの位置ずれ量dL1 を算出する。そして、その位置ずれ量dL1 を補正するようにモータ25への通電を制御し、スライダー11を所定の作業位置Aに停止させるのである。
【0030】
この場合、熱膨張によるねじシャフト14の伸び量を直接検出するものではないが、ねじシャフト14の伸び量(位置ずれ量dL1 )は、温度センサ32により検出された温度と既知のλの値とから、上記(2)式を用いて容易に求めることができる。従って、本実施例においても、熱膨張に起因する位置ずれ量を零とすることができ、高精度でスライダー11の停止位置決めを行うことができるものである。
【0031】
【発明の効果】
以上の説明にて明らかなように、本発明の直線移動装置によれば、ねじシャフトとねじナットとによりスライダーを待機位置と所定の作業位置との間を直線移動させるものにあって、ねじシャフトの熱膨張に起因する停止位置決め精度の低下を防止することができるという優れた実用的効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例を示すもので、直線移動装置の全体構成を示す平面図
【図2】第1の軸受部部分を示す縦断正面図
【図3】第2の軸受部部分を示す縦断正面図
【図4】ねじシャフトの熱膨張の様子を示すモデル図
【図5】本発明の第2の実施例を示すもので、全体構成を一部を縦断して示す背面図
【図6】本発明の第3の実施例を示す図5相当図
【図7】従来例を示す図1相当図
【図8】全体構成を一部を縦断して示す正面図
【図9】図4相当図
【符号の説明】
図面中、11はスライダー、13はリニアガイド、14はねじシャフト、15はねじナット、16は第1の軸受部、17は第2の軸受部、25はモータ(駆動機構)、31はギャップセンサ(センサ)、32は温度センサを示す。

Claims (3)

  1. リニアガイドに支持されたスライダーを、待機位置と所定の作業位置との間を移動させるようにしたものであって、
    前記リニアガイドに沿って延びるように配置されたねじシャフトと、
    前記スライダーに連結され前記ねじシャフトに螺合するねじナットと、
    前記ねじシャフトを回転駆動するための駆動機構と、
    前記ねじシャフトのうち前記駆動機構に連結される一端側を回転自在且つ軸方向移動不能に支持する第1の軸受部と、
    前記ねじシャフトの他端側を回転自在且つ軸方向移動可能に支持する第2の軸受部とを具備し、
    前記第1の軸受部を作業位置側、前記第2の軸受部を待機位置側に配置したことを特徴とする直線移動装置。
  2. リニアガイドに支持されたスライダーを、待機位置と所定の作業位置との間を移動させるようにしたものであって、
    前記リニアガイドに沿って延びるように配置されたねじシャフトと、
    前記スライダーに連結され前記ねじシャフトに螺合するねじナットと、
    前記ねじシャフトを回転駆動するための駆動機構と、
    前記作業位置側に設けられ、前記ねじシャフトのうち一端側を回転自在且つ軸方向移動不能に支持する第1の軸受部と、
    前記ねじシャフトの他端側を回転自在且つ軸方向移動可能に支持する第2の軸受部と、
    前記ねじシャフトの熱膨張による伸び量を検出するセンサと、
    このセンサの検出値に基づいて前記駆動機構による前記ねじシャフトの回転量を補正する補正手段とを具備することを特徴とする直線移動装置。
  3. リニアガイドに支持されたスライダーを、待機位置と所定の作業位置との間を移動させるようにしたものであって、
    前記リニアガイドに沿って延びるように配置されたねじシャフトと、
    前記スライダーに連結され前記ねじシャフトに螺合するねじナットと、
    前記ねじシャフトを回転駆動するための駆動機構と、
    前記作業位置側に設けられ、前記ねじシャフトのうち一端側を回転自在且つ軸方向移動不能に支持する第1の軸受部と、
    前記ねじシャフトの他端側を回転自在且つ軸方向移動可能に支持する第2の軸受部と、
    前記ねじシャフトの温度を検出する温度センサと、
    この温度センサの検出値に基づいて前記駆動機構による前記ねじシャフトの回転量を補正する補正手段とを具備することを特徴とする直線移動装置。
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