JP3764367B2 - シート積層金属板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属板に意匠性が優れたシート状材料が積層された複合金属板に関し、詳細には、加工してもシート状材料が破断しない構成のシート積層金属板に関するものである。本発明のシート積層金属板は、住宅や構造物における内壁材、床材、天井材、内装材、パネル、ドアなどの建築材料や、各種家具材として、また家電製品の外装部材や容器、自動車や車両の内装材など、様々な分野に適用可能である。
【0002】
【従来の技術】
金属板に意匠性を付与する目的で、紙を金属板に貼った積層板が開発されている。金属板に紙を積層することにより、温かみのある感触を与えると共に、自由な意匠性を金属板に与えることができる。しかし、紙の延性が金属基材に比べて不足しているため、紙積層金属板を、紙を外側にして(金属板を内側にして)曲げ加工をすると、紙が金属板の伸びに追随できず、曲げ部分で破断してしまうという問題があった。紙積層金属板の曲げ加工性が悪いと用途展開に制限が加えられることから、加工性の改善が嘱望されていた。
【0003】
こうした紙積層金属板の加工性を改善する技術は、いくつか提案されている。例えば、特開平7−256822号には、金属板に接着剤を介して紙を貼りつけた紙ラミネート金属板の加工方法が開示されている。この発明の特徴は、折り曲げ加工を行う際に、加工部を水で濡らしてから折り曲げることにより、紙の亀裂の発生を防止するものである。しかし、曲げ加工の際に加工部を一々水で濡らすのは工程的に煩雑であり、生産性が悪くなる。また、紙が濡れてしまうと曲げ易くなる反面、紙の強度が低下するため、加工によって傷付いたり破れたりするという不都合が生じる。さらに、紙が濡れた状態のときは金属板との密着性が劣化するため、加工の度合いによっては紙が剥離してしまうという問題があった。
【0004】
上記の問題を解決すべく、特許2938862号に開示の技術では、化粧紙積層金属板の特定方向と、この方向の直交方向での、引張試験時の破断伸びを所定範囲とすることで、曲げ加工性の向上を図っている。この技術では、具体的には、化粧紙と金属板の間に、化粧紙の補強材となる紙や不織布などを設ける構成を採用している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記特許2938862号の技術は、金属板と化粧紙を、粘着剤層を介して積層しており、この粘着剤層が柔軟性を有する環境下(例えば20℃程度以上)においては、曲げ加工の際の化粧紙の破断は十分に防止できる。しかしながら、粘着剤の柔軟性が低下する低温環境下(例えば5℃程度以下)では、曲げ加工の際に、金属板に対する化粧紙の相対位置がずれ難いため、曲げ部で化粧紙が破断してしまう場合があった。
【0006】
化粧紙積層金属板の加工時期によっては、粘着剤の柔軟性が低下するような環境温度となることもあるため、例えば、冬季に加工する場合などでは、加工環境(特に温度)を適切に保たなければならない点に、未だ改善の余地を残していた。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、特に低温環境下でも、金属板に積層された化粧紙を含むシート状材料が、加工の際に破断することのないシート積層金属板を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成し得た本発明のシート積層金属板は、金属板の少なくとも片面に粘着剤層を介してシート状材料が積層されているシート積層金属板であって、前記シート状材料が、化粧紙と、厚みが20μm超の合成樹脂層が積層されてなり、且つ前記合成樹脂層側で、紙を介さずに前記金属板と積層されるものであるところに要旨を有する。
【0009】
上記合成樹脂層は、ポリエチレンテレフタレートを主成分とするものであることが好ましい。
【0010】
また、上記シート状材料は、20℃での切り欠き付き引張強度が39.5MPa以上であることが推奨される。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1にシート積層金属板を箱型に加工する場合の一例を示す。(a)がシート積層金属板をシート状材料面側から見た図である。この四隅を打抜いて(b)の形状にした後、シート状材料を外側にして(図の奥行き方向に)折曲げ加工を行い、(c)のように箱型とする。従来の化粧紙積層金属板では、例えば5℃以下のような低温環境下で折曲げ加工を行った場合、金属板と化粧紙の間に介在する粘着剤の柔軟性が低下するため、(b)の打抜き部分の打抜き方によっては、(c)に示すように、曲げ部において特に隅角端部から破断が生じ易い。従来のように、シート状材料(化粧紙)の引張伸びを所定値以上とするだけでは、こうした低温環境下での曲げ加工におけるシート状材料の曲げ部の隅角端部からの破断を抑制することは困難であった。
【0012】
低温環境下で曲げ加工した際に、シート状材料の曲げ部の上記隅角端部から発生・成長する破断は、シート状材料の該端部にかかる引裂き力によって生じるものと考えられる。本発明者らは、シート状材料を化粧紙と特定の合成樹脂層を積層した構成とすれば、シート状材料の引裂き強度を高めることが可能であり、上記の破断を防止し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
本発明のシート積層金属板の基材である金属板としては、鋼板、銅板、Al板、チタン板、各種合金板などが挙げられる。これらの金属板には、公知の防食用表面処理(めっきや化成処理など)を施しておいてもよい。また、金属板として金属箔を用いることも可能である。金属板の厚みは、用途に応じて適宜選択することができるが、実用上0.3〜3mm程度である。
【0014】
本発明のシート積層金属板に係るシート状材料は、化粧紙と、厚みが20μm超の合成樹脂層が積層されてなるものである。
【0015】
化粧紙は、紙を基材とし、意匠性を有しているもの(化粧されているもの)であれば、特に限定されず用いることができる。すなわち、紙自体が意匠性を有するように染色されているか、紙の表面に印刷などによって意匠性が付与されたものである。厚みや坪量は用途に応じて適宜選択されるが、通常、坪量15〜200g/m2のものが好ましく用いられる。厚みでいえば、好ましくは15μm以上、より好ましくは25μm以上であって、好ましくは75μm以下、より好ましくは50μm以下のものが望ましい。化粧紙の紙基材として、クルパック加工が施された紙(クルパック紙)を用いてもよい。クルパック加工とは、抄紙機上でまたは抄紙後に紙の横方向(抄造する場合の紙の進行方向に直交する方向)に沿った微細な皺を多数設け、縦方向(抄造する場合の紙の進行方向)に伸び易くする加工である。
【0016】
また、紙の表面に凹部および/または凸部を有し、この凹部および/または凸部に周囲とは異なる色が施されていることによって視認可能な模様が形成されているもの、模様に合致させて凹凸が付けられたより立体的な模様をもつ化粧紙も好ましい。特開昭47−32911号、特開昭48−674号、特開昭48−777号、特開昭63−77571号などに記載されたような方法で得られる立体的な木目調の化粧紙も、意匠性に優れており、好ましく用いることができる。
【0017】
紙基材の上に印刷インク層や樹脂層などを設けることによって模様が形成された化粧紙が得られる。公知の印刷インクや樹脂塗料(コーティング剤)を使用すればよい。また、多色印刷を施したり、印刷インク層や樹脂層を複数層設ける構成も可能である。防汚や保護のためには最表層に保護層が設けられていることが好ましい。印刷インク層、保護層共に、燃焼の際に有毒ガスが発生しないように、ポリ塩化ビニル樹脂系以外のものを用い、加工性を悪化させることのない程度の硬さを有する樹脂を用いることが好ましい。具体的には、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、スチレンブタジエン樹脂、酢酸ビニル樹脂などである。なお、本発明でいう「樹脂」とは、重合体・共重合体はもとより、必要に応じて、モノマー、プレポリマー、水、有機溶媒、硬化剤、硬化触媒、増粘剤、濡れ性改良剤、可塑剤、充填材などが混合されているものも含む趣旨である。後述の合成樹脂も同様である。
【0018】
上記シート状材料に係る合成樹脂層は、該シート状材料の引裂き強度を高め、シート積層金属板を低温環境下で曲げ加工した際の、最表面の化粧紙の破断を抑制する役割を担うものである。
【0019】
シート状材料に化粧紙のみを用いた化粧紙積層金属板を、化粧紙を外側にして曲げ加工した場合、既述の通り、化粧紙は、その延性が金属に対して非常に小さく、また強度も小さいため、曲げ加工による金属板の伸びに追随することができずに破断してしまう。従来は、化粧紙の引張強度や引張伸びを高めると共に、化粧紙と金属板の間に介在する粘着剤が柔軟性を有する環境下で曲げ加工を行い、粘着剤による化粧紙/金属板の相対位置のずれを利用して、化粧紙の破断を防止していた。しかしながら、この方法では、粘着剤の柔軟性が低下するような低温環境下で曲げ加工を行うと、化粧紙/金属板の相対位置のずれが生じ難いため、曲げによって化粧紙にかかる応力、特に図1に示した加工のような場合には、曲げ部でのシート状材料端部にかかる引裂き力が、化粧紙の引裂き強度を超えてしまい、化粧紙が破断してしまう。従来の裏打ち樹脂層程度の厚み(例えば20μm以下程度)の樹脂層を設けたり、紙および/または不織布を積層して化粧紙を補強する方法では、化粧紙の引裂き強度を十分に高めることができなかったため、低温環境下での曲げ加工時に、このような化粧紙の破断を回避することが困難であった。
【0020】
そこで、本発明のシート積層金属板では、あまり伸びず、且つ曲げ加工によってシート状材料にかかる応力、特に上記の引裂き力に耐え得る(破断しない)素材と厚みの合成樹脂層を選択する。
【0021】
上記の合成樹脂層を採用すれば、シート状材料と金属板の間に介在する粘着剤の柔軟性が低下するような低温環境下でシート積層金属板を曲げ加工した場合、粘着剤層の柔軟性が低いために、金属板の伸びに基づいて発生する応力が高くなるが、その応力は合成樹脂層と化粧紙に分散されることにより化粧紙の伸びが抑制され、さらにシート状材料にかかる上記引裂き力の大部分を合成樹脂層が受け止め、化粧紙にかかる引裂き力の割合が減少するものと推測される。
【0022】
このように、本発明のシート積層金属板に係るシート状材料では、合成樹脂層が、いわば緩衝層としての作用を発揮することで、化粧紙の破断が防止されるものと考えられる。
【0023】
よって、合成樹脂層としては、弾性率が高く、あまり伸びない素材を主成分とすることが望ましい。合成樹脂としては、熱可塑性合成樹脂が好ましく、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン、ナイロン、ポリスチレン、ビニロン、ポリカーボネート、フッ素樹脂(ポリフッ化ビニリデンやポリテトラフルオロエチレンなど)、ポリエチレンなどがより好ましいものとして挙げられる。中でも、PETが特に好ましい。
【0024】
なお、例示の合成樹脂の中には、単に層を形成させるだけでは、シート状材料の引裂き強度を十分に高めることができない場合もある。よって、合成樹脂層としては、上記例示の合成樹脂を主成分とする延伸フィルム、さらに好ましくは二軸延伸フィルムを用いることが望ましい。合成樹脂層に用いる合成樹脂は、1種単独で用いる他、本発明の効果を損なわない範囲で2種以上を混合して用いてもよい。また、必要に応じて、酸化防止剤、帯電防止剤、抗菌剤などの各種添加剤を添加してもよい。
【0025】
他方、熱硬化性樹脂は、硬化が進むと硬く且つ脆くなる傾向があり、化粧紙に積層する樹脂層に採用すると、シート状材料の引裂き強度を十分に高めることができない場合があるため、好ましくない。
【0026】
合成樹脂層は、上記緩衝層としての作用を十分に確保する点から、その厚みが20μm超、好ましくは25μm以上、さらに好ましくは30μm超であることが推奨される。すなわち、合成樹脂層の厚みが上記範囲を下回る場合は、シート状材料が緩衝層としての作用を十分に発揮し得ない場合がある。他方、合成樹脂層があまり厚すぎると、緩衝層としての作用が飽和するばかりか、却って化粧紙表面に微小クラックが発生し易くなる傾向にあるため、その厚みは125μm以下とすることが好ましい。より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは75μm以下である。また、化粧紙を含めたシート状材料全体が厚すぎても、やはり化粧紙表面に微小クラックが発生し易くなる傾向にある。よって、シート状材料全体の厚みは150μm以下、より好ましくは105μm以下、さらに好ましくは80μm以下とすることが望ましい。
【0027】
化粧紙と合成樹脂層を積層してなるシート状材料は、化粧紙の紙基材側(印刷インク層や保護層などの反対側)に、例えば、上記例示のような合成樹脂を主成分とするフィルムをラミネートすることによって得ることができる。ラミネートの方法は特に限定されず、例えば、公知の粘着剤を用いることができる。なお、本発明でいう粘着剤は、粘着剤と接着剤を含む概念である。
【0028】
粘着剤の具体例としては、ポリ酢酸ビニルや酢酸ビニル−エチレン共重合体(EVA)などのポリ酢酸ビニル系、ポリ(メタ)アクリル酸および/またはそのエステルや、これらとポリスチレン、ポリエステル、ポリ酢酸ビニルなどとの共重合体などのアクリル樹脂系、ポリウレタン樹脂系、ポリエステル樹脂系、ゴム系、ポリオレフィン系、SBSやSIBSなどのポリスチレン系、エポキシ樹脂系、フェノール樹脂系、その他公知の粘着剤が挙げられる。粘着剤を用いる場合の塗布量は、乾燥後の付着量として通常0.5〜40g/m2程度とすればよい。このような範囲であれば、十分な接着力を確保できると共に、コスト的な無駄も抑えることができる。これらの粘着剤は水分散型、水溶液型、溶剤型、無溶剤型など、いずれであってもよい。
【0029】
また、化粧紙−合成樹脂層間の密着性(接着性)が十分に確保できる場合は、上記の接着剤を使用せず、合成樹脂を主成分とするフィルムの一部(化粧紙との積層面)を溶融させてラミネートする方法も採用できる。この他、例えば延伸フィルムとしなくても、上記緩衝層としての作用を発揮し得る合成樹脂を主成分とする合成樹脂層の場合は、コーティングや溶融ラミネートを採用してもよい。
【0030】
なお、本発明に係るシート状材料は、後述する測定方法によって得られる20℃での切り欠き付き引張強度が39.5MPa以上であることが好ましい。
【0031】
上記の切り欠き付き引張強度は、以下の方法によって測定される値である。
(1)シート状材料を、JIS K 7113に規定の2号試験片に準拠し、平行部分の幅(JIS K 7113の2号試験片の「D」)を10mmとした形状に切り出し、試験片とする。なお、上記試験片は、シート状材料製造時の流れ方向(MD)とその直交方向(CD)に対して夫々平行に切り出し、両方向とも3試験片作成する。
(2)上記試験片の平行部分の中央部に、端部から幅方向に長さ1mmの切り込みを入れる。
(3)20℃、相対湿度65%の環境下で、引張速度を5mm/minとして引張試験を行い、3試験片での最大荷重の平均値を、有効試験片幅9mm[(平行部分の幅10mm)−(切り込み長さ1mm)]で換算し、MDに平行な試験片の平均値とCDに平行な試験片の平均値で、低い方の強度をシート状材料の切り欠き付き引張強度(MPa)とする。
【0032】
上記の測定方法で得られる切り欠き付き引張強度は、シート状材料の引裂き強度の指標となるものである。切り欠き付き引張強度が39.5MPa以上のシート状材料を用いたシート積層金属板であれば、例えば5℃以下といった低温環境下での曲げ加工において、上述のような曲げ部の上記隅角端部から発生・成長するシート状材料の破断が抑制されるため、極めて低温曲げ加工性に優れたものとなる。シート状材料の切り欠き付き引張強度のより好ましい下限は50.0MPaである。
【0033】
なお、上記測定方法(1)において、シート状材料のMDおよびCD夫々に平行に試験片を切り出すのは、以下の理由による。シート状材料が紙や樹脂シート(フィルム)の場合、製造方向(流れ方向)に繊維や樹脂分子が配向し易い。上記のような切り込みを入れた場合の引裂き強度(切り欠き付き引張強度)は、通常、繊維や樹脂分子の配向方向に平行に切り込みを入れた場合(CDに平行な試験片)よりも、同配向方向に垂直に入れた場合(MDに平行な試験片)の方が大きくなる。このような異方性が極端であると、シート状材料のCDに平行に加工した場合に破断し易くなる。よって、シート状材料のMD、CDに関わらず、より小さい方の切り欠き付き引張強度が所定値以上であれば、いずれの方向で曲げ加工してもシート状材料の破断を、より高いレベルで防止できるのである。
【0034】
本発明のシート積層金属板では、シート状材料は、粘着剤層を介して金属板に積層される。なお、積層する際は、意匠性の点から、上述の通り化粧紙を最表面側とする。
【0035】
ただし、化粧紙と合成樹脂層を積層してなるシート状材料では、紙を介して金属板と積層されると、積層した紙の厚み、および該紙の積層に用いる粘着剤の厚みにより、金属板表面からシート状材料最表層の化粧紙までの距離が増大する。よって、このようなシート積層金属板では、金属板を内側にして曲げ加工を行った場合、シート状材料最表層の化粧紙表面に微小クラックが発生し易くなり、さらには該クラックが成長して化粧紙の破断が生じる場合もあるため、好ましくない。
【0036】
シート状材料を金属板に積層するための粘着剤の種類は、特に限定されない。また、用途や使用環境などに応じて、適宜、接着剤を選択してもよい。例えば曲げ加工後、高温雰囲気下での使用が予定されている場合は、接着剤を用いることが推奨される。通常は、接着後に硬化してしまう接着剤ではなく、曲げ加工が行い易いため、粘着剤を用いるが、本発明の構成を採用すれば、接着剤を用いてもシート状材料の破断は防止できる。
【0037】
粘着剤(既述の通り、粘着剤と接着剤を含む)の具体例としては、化粧紙と合成樹脂層との積層において例示したものが挙げられる。粘着剤の塗布量は、乾燥後の塗布量として通常4〜100g/m2である。100g/m2を超えると、シート状材料を積層する際に皺が入ることがある上に、コスト的に無駄である。4g/m2未満では十分な接着力が得られない場合がある。
【0038】
粘着剤は、金属板に直接塗布するか、粘着剤のフィルムを金属板にラミネートすることにより金属板上に供給できる。塗布する場合の塗布方法は特に限定されず、ロールコーティング、スプレーコーティング、ノズルコーティング、ディップコーティング法などが採用できる。
【0039】
粘着剤を塗布した後は、シート状材料をラミネートする。無溶剤型以外の粘着剤を用いるときは、塗布後に熱風乾燥炉を通過させるなどの方法で、溶媒あるいは分散媒の一部または全部を揮発させた後、シート状材料を積層することが好ましい。また、粘着剤が乾燥(溶媒の揮発)あるいは硬化してしまう前に、シート状材料をラミネートすることもできる。シート状材料をラミネートした後は、熱風乾燥炉を通過させるなどの方法で、粘着剤が完全に乾燥・硬化するように加熱することが好ましい。
【0040】
本発明のシート積層金属板は以上のように構成されており、加工性に優れているので、例えば、間仕切りユニット、内壁材、天井材、床材、ドア、サッシの枠材などの建築分野、蝶番やヒンジ、鍵などの金属製の金物類、机、椅子、ロッカー、キャビネット、スタンド、本棚、書庫、パーティション、ベッドなどの家具用途、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、クーラー、照明器具などの家電製品の外装部材、容器、自動車や車両の内装材などに適用可能である。
【0041】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施することは全て本発明の技術的範囲に包含される。
【0042】
表2に示す各種金属板にクロメート処理(Cr:30mg/m2)を施した後、ロールコート法でアクリル系粘着剤を乾燥後に50g/m2となるように塗布した(アクリル系粘着剤の存在は表では省略した)。これに表2に示す各種シート状材料を積層してシート積層金属板を作製した。なお、金属板は、全て厚みが0.6mmのものを用いた。
【0043】
シート状材料のうち、化粧紙と合成樹脂層を積層してなるものは、表2に示す厚みの合成樹脂フィルムに、ウレタン系接着剤を塗布・乾燥した後、化粧紙を意匠面の反対側で重ねながら、圧着ロールで、表面にタックがある状態でロールラミネートして得た。接着剤の塗布量は、乾燥後で9g/m2となるようにした(ウレタン系接着剤の存在は表2では省略した)。
【0044】
上記の積層に用いた化粧紙は、表面に木目調の凹凸が形成されており、坪量が23g/m2、30g/m2、60g/m2、90g/m2および120g/m2のものである。これらの化粧紙について、JIS K 7113に規定の2号試験片に準拠し、平行部分の幅(JIS K 7113の2号試験片の「D」)を10mmとした形状の試験片を、MDおよびCDに対し、夫々平行に切り出して作成し、温度20℃,相対湿度65%の環境下で、引張速度を5mm/minとして引張試験を行い(各方向共n=3)、引張強度の平均値を求めた。本実施例で使用した化粧紙の上記引張強度を表1に示す。なお、表1において、「MD」はMDに平行な方向の引張強度を、「CD」はCDに平行な方向の引張強度を示す。
【0045】
【表1】
【0046】
上記のウレタン系接着剤としては、主剤:大日本インキ化学工業株式会社製の接着加工用ウレタン樹脂「TYFORCE AD−865HV」と、架橋剤:同社の「CRISBON−NX」とを、固形分比で100:3(質量比)で混合したものを用いた。
【0047】
また、合成樹脂層がPETフィルムの場合は、ユニチカ株式会社製のポリエステルフィルム「EMBLBT Sグレード」を使用した。
【0048】
シート状材料およびシート積層金属板について、下記の評価を行い、その結果を表2に示した。
【0049】
[シート状材料の切り欠き付き引張強度]
JIS K 7113に規定の2号試験片に準拠し、平行部分の幅(JIS K 7113の2号試験片の「D」)を10mmとした形状の試験片を、化粧紙のMDおよびCDに対し、夫々平行に切り出して作製した。この試験片の平行部分の中央部に、端部より幅方向に長さ1mmの切り込みを入れ、温度20℃,相対湿度65%の環境下で、引張速度を5mm/minとして引張試験を行った(各方向共n=3)。3試験片での最大荷重の平均値を、有効試験片幅9mm[(平行部分の幅10mm)−(切り込み長さ1mm)]で換算し、MDに平行な方向の平均値と、CDに平行な方向の平均値のうち、低い方の強度をシート状材料の切り欠き付き引張強度(MPa)とした。
【0050】
[低温曲げ加工試験]
シート積層金属板を50mm×100mmのサイズに切断し、温度5±1℃,相対湿度50±5%に保った恒温恒湿試験機中で2hr保管した。その後、同環境下でプレスブレーキ(曲げ加工機)を用い、シート状材料を外側にして90°曲げ加工試験を行った。この試験では、シート状材料の化粧紙のMDおよびCDに、夫々平行にシート積層金属板を切断して行ったものを試験試料とした。なお、曲げ加工条件は、曲げ内径:1mm、プレス速度:50〜100mm/minとした。
【0051】
本試験後の評価は、曲げ部分近傍の化粧紙面(シート状材料最表面)の破断あるいはクラックの発生状況、および剥離状況を目視で判定して行った。シート状材料の化粧紙のMDおよびCDについて、結果の劣っていた方向をシート積層金属板の低温曲げ加工性とした。評価基準は以下の通りである。
◎:クラックの発生が全くないもの、
○:クラックが僅かに発生したもの、
△:著しくクラックが発生したもの、
×:破断が発生したもの。
【0052】
なお、表2において、PEはポリエチレンを、紙は、化粧紙ではない普通の紙を意味する。また、「シート状材料の構成」の欄において、化粧紙および紙の後の括弧内の数値は、坪量(g/m2)を、合成樹脂層(PET、PE)の後の括弧内の数値は、層の厚み(μm)を意味する。
【0053】
【表2】
【0054】
【発明の効果】
本発明は、シート状材料を、化粧紙と合成樹脂層を積層した構造とし、好ましくは、該シート状材料の切り欠き付き引張強度を特定範囲とすることで、従来の技術では困難であった低温環境下での加工を可能としたものである。従って、加工によりシート状材料(化粧紙)が破断することがないので、種々の形態に加工でき、金属板のままや、塗装金属板を用いていた分野は勿論、合板などの木材や樹脂材料が使用されていた分野にも適用することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 シート積層金属板を低温環境下で曲げ加工した際に発生するシート状材料の破断の説明図である。
Claims (3)
- 金属板の少なくとも片面に粘着剤層を介してシート状材料が積層されているシート積層金属板であって、
前記シート状材料が、化粧紙と、厚みが20μm超の合成樹脂層が積層されてなり、且つ前記合成樹脂層側で、紙を介さずに前記金属板と積層されるものであることを特徴とするシート積層金属板。 - 前記合成樹脂層は、ポリエチレンテレフタレートを主成分とするものである請求項1に記載のシート積層金属板。
- 前記シート状材料は、20℃での切り欠き付き引張強度が39.5MPa以上である請求項1または2に記載のシート積層金属板。
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