JP3763759B2 - 車両検査装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばアライメント測定やヘッドライト試験時の車両のセンタリングに好適で、従来の複雑かつ高価で作動誤差や調整要素が多い機械式センタリング法を廃し、電気系統を駆使した電気式センタリング法によって、構成の簡潔化とセンタリング精度の向上を図り、しかも安価で当初の精度を長期に亘って維持でき、センタリングの合理化とその作動の安定化並びに小形軽量化を図れるとともに、多様なセンタリング法を得られるようにした車両検査装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば車両のホイ−ルアライメントやヘッドライトの機能を精度良く測定するには、車両の中心位置を測定基準位置に正確に合致させる必要があり、そのためのセンタリング装置として、従来より種々のものが提案されている。
【0003】
例えば特許第2622600号公報には、左右一対の長尺の移動台板を車両の進入方向に沿って配置し、該台板をパンタグラフ機構を介して、車幅方向へ近接離反動可能に設け、この一方の移動台板の端部に、車両の進入路を規制する第1のガイドロ−ラを略ハ字形状に配置している。
また、前記移動台板上に前後輪を載置可能な試験ユニットを含む支持台を設け、該支持台を別のパンタグラフ機構を介して、車幅方向ヘ近接離反動可能に設け、各支持台の前部に第2のガイドロ−ラを略ハ字形状に配置している。
【0004】
そして、前記第1および第2のガイドロ−ラによって、進入する車輪の位置を規制するとともに、前記パンタグラフ機構の作動によって、移動台板を介し各支持台の位置を近接離反動させ、車両が片側にずれたり斜めに進入した場合、車両を自動的に測定基準線に整合させるようにしている。
【0005】
しかし、この従来の装置は、試験ユニットと支持台と車輪とを一体に移動させる構成のものに限られ、それ以外の構成の装置には採用できない。
しかも、前記装置のセンタリングは、作動誤差の多いパンタグラフ機構によって行なっているため、調整要素が多くセンタリングの正確性や精度を得られず、またパンタグラフ機構の作動は経年的に低下し、センタリング精度が低下する等の問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこのような問題を解決し、例えばアライメント測定やヘッドライト試験時の車両のセンタリングに好適で、従来の複雑かつ高価で作動誤差や調整要素が多い機械式センタリング法を廃し、電気系統を駆使した電気式センタリング法によって、構成の簡潔化とセンタリング精度の向上を図り、しかも安価で当初の精度を長期に亘って維持でき、センタリングの合理化とその作動の安定化並びに小形軽量化を図れるとともに、多様なセンタリング法を得られるようにした車両検査装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
このため、請求項1の発明は、回転可能な一対の支持ロ−ラと、該支持ロ−ラ上に載置した車輪の側面に当接可能なセンタリングロ−ラを備えたセンタリング装置と、前記支持ロ−ラとセンタリング装置の作動を制御するとともに、左右のセンタリングロ−ラを各支持ロ−ラ側へ同期かつ等速度移動制御し、かつその原点からの移動距離を演算可能な制御装置を有する車両検査装置において、前記制御装置を介して、左右のセンタリングロ−ラの前記移動距離の和の1/2の真正なセンタリング位置と、該真正なセンタリング位置と前記センタリングロ−ラの各移動距離との差の補正距離とを、演算可能にするとともに、前記演算した真正なセンタリング位置と前記補正距離を基に、各センタリングロ−ラを前記移動位置から進退動可能にし、各センタリングロ−ラの位置を補正可能にして、各センタリングロ−ラを真正なセンタリング位置へ位置付け、センタリングの正確性と精度の向上を図り、アライメント測定時のセンタリングに好適にしている。
【0008】
請求項2の発明は、前記制御装置の演算前は、前記支持ロ−ラを静止可能にして、支持ロ−ラ上の車輪ないし車両の挙動を可及的に抑制して安定させ、前記演算に伴なう距離計測や信号の遣り取りを正確かつ能率良く行なうようにしている。
請求項3の発明は、前記センタリングロ−ラを回転可能に支持するロ−ラア−ムの中間部を連結板に回動可能に枢支し、該枢支部とセンタリングロ−ラの回転中心部とをオフセットして配置し、センタリングロ−ラと車輪との当接を正確かつ安定して検出するとともに、センタリングロ−ラを車輪を押し付ける従来の検出法のような車輪の変位を防止し、センタリングロ−ラの移動距離の正確な計測を実現可能にしている。
【0009】
請求項4の発明は、前記ロ−ラア−ムの基端部に該ア−ムの回動変位を検出可能な位置センサを配置し、該センサの検出信号を前記制御装置へ入力可能にし、センタリングロ−ラと車輪との当接を正確かつ速やかに検出し、その検出信号を前記制御装置へ入力し得るようにしている。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をアライメントテスタのセンタリング装置に適用した図示の実施形態について説明すると、図1乃至図11において1は車検場、自動車製造工場内の検査ライン、自動車整備工場等の床面で、その所定位置にピット2が設けられ、該ピット2内に車両検査装置3が設置されている。
【0014】
前記車両検査装置3は左右の架台4,4上に据え付けられ、該台4,4上に基台55,55が取り付けられている。前記基台55,55上にガイドレ−ル56とスライドガイド57を介して、ベ−スフレ−ム58が車両の進入方向に摺動可能に取り付けられ、後述の支持台を被検車両のホイ−ルベ−スに調整可能にしている。
【0015】
前記ベ−スフレ−ム58,58の前後に後述の基板を介して、一対の支持台5〜8が設置されている。
前記支持台5〜8は実質的に同一に構成され、その前後の一組は前記ベ−スフレ−ム58,58を介して、被検車両(図示略)のホイ−ルベ−スに調整可能にされ、それらの上部に一対の支持ロ−ラ9,9が回転可能に支持されている。
【0016】
前記支持ロ−ラ9,9は、被検車両(図示略)の前後輪10,11を載置かつ回転可能にされ、その上部周面は床面2と略同高位置に配置され、その少なくとも一方の支持ロ−ラ9を駆動回転可能にしている。
実施形態では、一方の支持ロ−ラ9に駆動用モ−タ(図示略)を内蔵し、該モ−タの作動時期を後述の制御装置で制御し、これをセンタリング開始当初は静止させている。
【0017】
前記支持台5〜8の外側にアライメントテスタ12,13が設置され、該テスタ12,13は実施形態の場合、複数の超音波センサ14を駆使して構成され、該センサ14から前後輪10,11の外側面に向けて、超音波を発射させている図中、15は超音波センサ14の同軸位置に配置した空気吹出管で、超音波の伝搬路の温度変化を抑制させている。
【0018】
前記支持台5〜8の外側にセンタリング装置16〜19が設けられ、該装置16〜19は実質的に同一に構成され、これらはセンタリング動作開始前、支持台5〜8の外側の所定位置に位置し、センタリング動作時は対応する支持台5〜8へ等速度で移動可能にされている。
【0019】
すなわち、前記センタリング装置16〜19は、支持台5〜8の基板20と略同高位置の取付板21上に架設され、該板21上に支持枠22を固定している。前記支持枠22の上端部にガイドレ−ル23が固定され、該レ−ル23にスライドガイド24が摺動自在に嵌合している。
前記スライドガイド24にガイドプレ−ト25が取り付けられ、該プレ−ト25の側端部にラック26が固定されている。
【0020】
一方、前記支持枠22の側端部に側板27が垂直に取り付けられ、該側板27の下端部にモ−タ28が取り付けられ、その駆動軸29が軸受30を介し上向きに配置されている。
前記モ−タ28は正逆転可能にされ、そのON.OFF作動および回転速度を後述の制御装置で制御している。
前記駆動軸29の上端部に前記ラック26と噛合可能なピニオン31が固定され、該ピニオン31は上部に薄厚のギア32を固定していて、該ギア32に大径の中間ギア33が噛合している。
【0021】
前記中間ギア33は、センタリング装置16〜19の移動距離の計測手段である、エンコ−ダ34の回動軸35に固定され、その回動角度相当分、エンコ−ダ34を作動可能にしている。
【0022】
前記エンコ−ダ34は、前記側板27の上部のブラケット36,36間に掛け渡した架板37に取り付けられ、後述のセンタリングロ−ラの移動距離を計測可能にされていて、前記センタリングロ−ラの移動変位分回転し、その回転信号を後述の制御装置へ入力可能にしている。
実施形態ではエンコ−ダ34は、センタリングロ−ラの1mmの移動変位に対し、約1°回動可能にされている。
【0023】
前記ガイドプレ−ト25に一対の脚片38が立設され、該脚片38に長尺のセンタリングプレ−ト39が水平に架設されている。
前記プレ−ト39の先端部にスペ−サ40が取り付けられ、該スペ−サ40の先端部に連結板41が固定され、該連結板41とスペ−サ40との間にピン42を介して、ロ−ラア−ム43の中間部が回動自在に連結されている。
【0024】
前記ピン42は、後述するセンタリングロ−ラの回転中心から車両の進入方向へオフセット(e)し、センタリングロ−ラが前後輪10,11に当接した際、ロ−ラア−ム43を図6上時計方向へ回動可能にしている。
【0025】
前記ロ−ラア−ム43の先端部に、センタリングロ−ラ44が回転自在に支持され、該ロ−ラ44は前記センタリングプレ−ト39と同動して、前後輪10,11の外側面下部に当接可能にされている。
前記スペ−サ40の一側に、ロ−ラア−ム43の基端部と対向して固定板45が取り付けられ、該固定板45にストッパ46とバネ受47が取り付けられている。
【0026】
このうち、前記ストッパ46はロ−ラア−ム43の基端部と当接して、前記ア−ム43の回動角度を規制し、また前記バネ受47にスプリング48が介挿されている。前記スプリング48の両端はロ−ラア−ム43と固定板45に着座し、その弾性によって、ロ−ラア−ム43を原位置へ復帰回動可能に付勢している。
【0027】
前記ストッパ46とバネ受47の間に、センタリングロ−ラ44と前後輪10,11との当接検出手段である近接スイッチ49が設けられ、またロ−ラア−ム43の基端部内面に、位置検出片としてボルト50の頭部が配置されている。
そして、ボルト50の位置近接時に近接スイッチ49が動作し、センタリングロ−ラ44と前後輪10,11との接触ないし当接を検出して、その信号を制御装置51であるシ−ケンサ等の演算器、または該演算器を内蔵したマイクロコンピュ−タへ入力可能にしている。
【0028】
前記制御装置51は、前記モ−タ28、エンコ−ダ34、支持ロ−ラ9の駆動用モ−タ、近接スイッチ49等からの信号を受け入れ、前後輪10,11が支持ロ−ラ9,9上に乗り込み後、センタリング制御を実行可能にしている。
【0029】
すなわち、制御装置51による制御動作は図10のようで、センタリング装置16〜19の互いに対をなす左右の各モ−タ28,28を、同期かつ等速度で駆動し、前記左右のセンタリングロ−ラ44,44を等速度で支持台5〜8方向へ移動可能にしている。
【0030】
そして、各センタリングロ−ラ44が支持ロ−ラ9,9上の前後輪10,11に接触ないし当接し、これを左右一対のセンタリング装置16〜19の近接スイッチ49が検出し、その検出信号が制御装置51に入力された際、対応するセンタリング装置16〜19のモ−タ28へ制御信号を出力し、当該モ−タ28の駆動を停止して、センタリングロ−ラ44の移動を停止するようにしている。
【0031】
次に、制御装置51は、各エンコ−ダ34からの入力信号に基いて、左右のセンタリングロ−ラ44の移動距離と、その和の1/2を演算する。
前記左右の移動距離の和の1/2は、センタリングロ−ラ44の原点位置から、センタリング時における左右の前後輪10,11の外側面までの、センタリングロ−ラ44の真正な移動距離に相当する。
【0032】
この後、前記制御装置51は前記演算したセンタリングロ−ラ44の真正な移動距離から、前記ロ−ラ44の現状の移動距離の差を演算し、この差をセンタリング補正距離として、各モ−タ28へ補正信号を出力し、各モ−タ28を正逆転させて、各センタリングロ−ラ44を現位置から進退可能にしている。
その際、制御装置51は支持ロ−ラ9の駆動用モ−タ(図示略)に駆動信号を出力し、支持ロ−ラ9,9およびその上に収容した前後輪10,11を回転させて、車両の挙動を促すようにしている。
【0033】
そして、各センタリングロ−ラ44の補正移動後、制御装置51はエンコ−ダ34の入力信号に基いて、各センタリングロ−ラ44の移動距離の当否をチェックし、前記補正距離の移動を確認したところで、各モ−タ28の駆動を停止し、各支持ロ−ラ9の駆動用モ−タ(図示略)の駆動を停止する。
【0034】
この状況の下で前後輪10,11のアライメントを測定し、測定後、各モ−タ28を逆転駆動し、各センタリングロ−ラ44を若干後退させて、要アライメント調整の前後輪10,11のアライメント調整を実行させるようにしている。
アライメント調整後、各センタリングロ−ラ44を前進し、再度センタリングしてアライメントを測定し、その良好状態を確認後、各センタリングロ−ラ44を原位置へ復帰させるようにしている。
【0035】
この他、図中52はピット2の開口部を閉塞する左右のカバ−プレ−ト、53は前記カバ−プレ−ト52の車両の進入側端部に設置した進入ガイド、54は取付板21に立設した支柱で、アライメントテスタ12,13の筐体を設置可能にしている。
図中、59は支持枠22の適所に取り付けた近接スイッチ、60はその検出片であるL形金具で、前記ガイドプレ−ト25の外側端部に取り付けられ、前記金具60の原位置、つまりセンタリングロ−ラ44の原位置復帰を検出可能にしている。
【0036】
このように構成した車両検査装置は、左右の支持台5〜8とアライメントテスタ12,13が定位置に設置され、各センタリング装置16〜19だけが相対動可能にされている。
したがって、左右の支持台とアライメントテスタが互いに近接離反動する従来のものに比べて、パンタグラフ等の近接離反機構を要せず、その分構成が簡単になり、これを安価に製作できるとともに、車両の進入を容易かつ安定して行なえる。
【0037】
また、本発明はセンタリング動作をモ−タ28、エンコ−ダ34、近接スイッチ49、制御装置51等の電気系統を駆使して行ない、従来のようにパンタグラフ等の機械系統を駆使したセンタリング法を廃しているから、構成が簡潔でパンタグラフ機構のような作動誤差がなく、前記センタリングを容易かつ速やかに、しかも正確に行なえる。
【0038】
しかも、本発明のセンタリング法は、前記電気系統による演算によって、不定のセンタリング位置を求め、これに対応して各部の作動を制御しているから、支持ロ−ラ9,9上の前後輪10,11の状況に応じて、センタリング位置とセンタリング動作の自由度を得られ、また被検車両のホイ−ルベ−ス以外の情報を不要にして、センタリング作業の容易化を図れる。
【0039】
前記車両検査装置は、センタリング動作前はセンタリング装置16〜19が支持台5〜8の外側の定位置に静止し、各モ−タ28と支持ロ−ラ9に内蔵した駆動用モ−タ(図示略)が、それぞれ駆動を停止している。
したがって、センタリング装置16〜19の各センタリングロ−ラ44は、図5のように対応する支持台5〜8の支持ロ−ラ9から離間し、かつその最外側に位置して、被検車両の導入路を開放している。
その際、センタリング装置16〜19の各ラック26は、図5のように最外側に位置している。
【0040】
このような状況の下で被検車両を図1の矢視方向から移動し、その前後輪10,11を各支持台5〜8の支持ロ−ラ9,9上に乗り込ませ、これを静止させて、制御装置51によるセンタリング制御を開始する。
【0041】
前記センタリング制御は、先ず各センタリング装置16〜19のモ−タ28をONし、各モ−タ28を一斉に駆動させる。
このようにすると、モ−タ28の出力軸29に固定したピニオン31が回転し、該ピニオン31と噛合するラック26が支持台5〜8側へ移動し、これに前記ラック26を固定したガイドプレ−ト25が同動する。
【0042】
このため、ガイドプレ−ト25の先端部に取り付けた各センタリングロ−ラ44が、前後輪10,11方向へ一斉に等速度で移動し、それらが所定距離移動したところで、前後輪10,11の外側面下部に当接する。
この場合、各センタリングロ−ラ44の当接時期は、被検車両の停止状態や、支持ロ−ラ9,9上の前後輪10,11の乗り込み姿勢によって相違し、左右のセンタリングロ−ラ44,44の間に多少の時間差を生ずる。
【0043】
一方、前記センタリングロ−ラ44が前後輪10,11に当接すると、そのロ−ラア−ム43がスプリング48の弾性に抗してピン42を支点に回動し、例えば図6では前記ア−ム43が矢視方向に回動し、前記ア−ム43の基端部に取り付けたボルト頭部50が、近接スイッチ49の検出部に接近する。
【0044】
この場合、センタリングロ−ラ44の回転中心は、図6のようにピン42よりも後方、つまり被検車両の後部方向へオフセットeしているから、前記ロ−ラア−ム43の矢視方向の回動が促され、近接スイッチ49の検出動作の正確性と安定化を図れる。
また、センタリングロ−ラ44を車輪10,11に単に押し付ける検出法に比べ、車輪10,11の移動変位を防止し、センタリングロ−ラ44の移動距離を正確に計測できるとともに、センタリングロ−ラ移動用の駆動力を軽減し、モ−タ28の小能力化とその小形軽量化を図れる。
【0045】
そして、前記ボルト頭部50が所定距離接近すると、この状況を近接スイッチ49が検出し、つまりセンタリングロ−ラ44が前後輪10,11に当接した状況を検出し、その信号を制御装置51へ入力する。
この場合、左右のセンタリングロ−ラ44の当接時期は、前述のように多少相違するから、対応する左右の近接スイッチ49,49の検出信号は、前後して制御装置51へ入力される。
【0046】
制御装置51は近接スイッチ49の入力信号によって、当該センタリング装置16〜19のモ−タ28をOFFし、センタリングロ−ラ44の移動を停止して、該ロ−ラ44と前後輪10,11との当接状態を保持する。
そして、前後輪10,11に対応する左右の近接スイッチ49の信号入力を条件に、制御装置51は各エンコ−ダ34からの入力信号に基いて、各センタリングロ−ラ44の原点位置からの移動距離FL,FR,RL,RRを演算する。
【0047】
制御装置51は前記移動距離FL,FR,RL,RRを基に、各センタリングロ−ラ44の真正なセンタリング位置、つまり真正な移動位置を演算する。
前記センタリング位置は、センタリングロ−ラ44の原点位置から、該ロ−ラ44がセンタリング時に左右の前後輪10,11の外側面に当接するまでの真正な移動距離に相当し、前後輪10,11に対応する各移動距離FL,FR,RL,RRの和の1/2で求められる。
すなわち、左右の前輪10,10のセンタリング位置は(FL+FR)/2、左右の後輪11,11のセンタリング位置は(RL+RR)/2として演算される。
【0048】
次に制御装置51は、前記センタリング位置と各センタリングロ−ラ44の移動距離FL,FR,RL,RRに基いて、左右の前後輪10,11に対する各センタリングロ−ラ44の補正距離ΔF,ΔRを演算する。
前記補正距離は、前記演算したセンタリング位置と、現状のセンタリングロ−ラ44の移動距離との差で求められる。
【0049】
すなわち、左側の前輪10に対する補正距離ΔFLは、ΔFL=(FL+FR)/2−FL=(FR−FL)/2、右側の前輪10に対する補正距離ΔFRは、ΔFR=(FL+FR)/2−FR=(FL−FR)/2=−(FR−FL)/2として求められ、これらはΔFL=−ΔFRの関係にある。
したがって、図11の実施形態ではFL<FRであるから、左側の前輪10に対するセンタリングロ−ラ44を+ΔFL、つまりΔFL分前進させ、右側の前輪10に対するセンタリングロ−ラ44を−ΔFL、つまりΔFL分後退させる。
【0050】
同様に、左側の後輪11に対する補正距離ΔRLは、ΔRL=(RL+RR)/2−RL=(RR−RL)/2、右側の後輪11に対する補正距離ΔRRは、ΔRR=(RL+RR)/2−RR=(RL−RR)/2=−(RR−RL)/2として求められ、これらはΔRL=−ΔRRの関係にある。
したがって、図11の実施形態ではRL<RRであるから、左側の後輪11に対するセンタリングロ−ラ44を+ΔRL、つまりΔRL分前進させ、右側の後輪11に対するセンタリングロ−ラ44を−ΔRR、つまりΔRR分後退させる。
【0051】
前記補正距離信号は、制御装置51から各センタリングロ−ラ44のモ−タ28へ出力され、それらのモ−タ28を一斉に正逆転して、各センタリングロ−ラ44を現位置から進退動させる。
また、制御装置51はこれと前後して、各支持ロ−ラ9の駆動用モ−タ(図示略)へ駆動信号を出力し、それらのモ−タを駆動して、駆動側の支持ロ−ラ9を回転し、支持ロ−ラ9,9上の前後輪10,11を回転させる。
【0052】
したがって、図11では左側の前輪10に対するセンタリングロ−ラ44がΔFL分前進し、該前輪10を同方向へ押し動かすとともに、右側の前輪10に対するセンタリングロ−ラ44がΔFL分後退する。
また、左側の後輪11に対するセンタリングロ−ラ44をΔRL分前進させ、該後輪11を同方向へ押し動かすとともに、右側の後輪11に対するセンタリングロ−ラ44がΔRR分後退させる。
【0053】
この場合、前述のように支持ロ−ラ9を回転駆動し、前後輪10,11を回転させているから、センタリングロ−ラ44の前進による押圧力によって、前後輪10,11が支持ロ−ラ9の軸方向へ容易に移動し、つまり車両の挙動を促して、前後輪10,11ないし被検車両の乗り込み姿勢を修正し、正確なセンタリングを形成させる。
【0054】
前記センタリングロ−ラ44の補正距離の当否は、エンコ−ダ34から制御装置51へ入力される距離信号によってチェックされ、所定の補正距離を確認したところで、各モ−タ28の駆動を個別に停止し、また各支持ロ−ラ9の駆動用モ−タ(図示略)の駆動を停止して、前記センタリングを完了する。
【0055】
したがって、前記センタリング時には前後輪10,11が静止し、その外側面下部にセンタリングロ−ラ44が当接して、センタリング状態の安定性を維持する。
【0056】
このような状況の下で、前後輪10,11を静止若しくは回転させ、アライメントテスタ12,13によってアライメントを測定し、測定後、各モ−タ28を逆転駆動し、各センタリングロ−ラ44を若干後退させて、要アライメント調整の前後輪10,11のアライメント調整を実行する。
【0057】
前記調整後、各センタリングロ−ラ44を前進し、再度センタリングしてアライメントを測定し、その良好状態を確認後、各センタリングロ−ラ44を原位置へ復帰させる。
【0058】
このように、この実施形態では、センタリング開始当初は支持ロ−ラ9,9の回転を停止し、該ロ−ラ9,9上の前後輪10,11の挙動を拘束して、前後輪10,11ないし被検車両を安定させ、センタリングロ−ラ44の移動距離を正確かつ速やかに計測する。
そして、センタリングロ−ラ44の位置を補正する際、支持ロ−ラ9,9を回転させて、該ロ−ラ9,9上の前後輪10,11を挙動させ、前記挙動を可及的に抑制したから、前記位置調整を容易かつ速やかに行なえる。
【0059】
図12および図13は制御装置51によるセンタリング制御の他の形態を示し、前述の実施形態と対応する構成部分には同一の符号および名称を用いている。このうち、図12は本発明の第2の実施形態を示し、この実施形態では支持ロ−ラ9,9をセンタリング開始当初から回転し、該ロ−ラ9,9上の前後輪10,11の挙動を促すようにしている。
【0060】
そのようにすることで、前述のようにセンタリング制御途中で支持ロ−ラ9,9を回転させる複雑な制御を廃し、前記制御系を簡潔にして、センタリングを円滑かつ速やかに行なうとともに、センタリングロ−ラ44の推力を軽減し、その推力源であるモ−タ28の小形かつ小能力化を促すようにしている。
【0061】
図13は本発明の第3の実施形態を示し、この実施形態では前述の実施形態と同様に、センタリング開始当初から支持ロ−ラ9,9を回転し、該ロ−ラ9,9上の前後輪10,11の挙動を促すようにしている。
そして、センタリング制御中、終始、左右一対のセンタリングロ−ラ44,44の同期作動、つまり対応する前記ロ−ラ44の駆動源であるモ−タ28のON.OFF時期と、その回転速度ないし回転数の一致を図り、左右一対のセンタリングロ−ラ44,44の等速移動と等距離移動を確保させている。
【0062】
すなわち、センタリング制御中、各モ−タ28から駆動時期とその回転速度ないし回転数の信号、およびエンコ−ダ34からセンタリングロ−ラ44,44の移動距離信号を制御装置51へ入力する。
そして、例えば支持ロ−ラ9,9上の被検車両の停止位置によって、一方のセンタリングロ−ラ44が車輪10に当接すると、当該モ−タ28の回転速度が低下し、他方のモ−タ28の回転速度との間に速度差を生じ、当該信号が制御装置51へ入力される。
【0063】
このため、制御装置51は前記速度低下ないし速度差信号入力によって、一方または双方のモ−タ28の回転速度ないし回転数を加減制御する。
すなわち、制御装置51は減速側のモ−タ28の回転速度を増速させ、若しくは他方のモ−タ28の回転速度を減速させて、双方のモ−タ28の等速度状態を回復し、前記速度差を修復して、左右のセンタリングロ−ラ44,44の等速移動と、等距離移動を速やかに回復させる。
【0064】
したがって、左右のセンタリングロ−ラ44,44が車輪10,10側へ等距離移動し、この後前記他方のロ−ラ44が車輪10に当接する。
すなわち、左右のセンタリングロ−ラ44,44が前後して車輪10,10に当接し、双方の当接状況が対応する近接スイッチ49,49で検出されると、その信号が制御装置51へ入力される。
この結果、前記制御装置51はモ−タ28,28の駆動を停止し、センタリングロ−ラ44,44の移動を停止させて、センタリングを完了する。
【0065】
この場合、前記センタリング中は支持ロ−ラ9,9が回転し続け、車輪10,10の挙動を促すから、前記ロ−ラ9,9上の車輪10の位置および姿勢が容易かつ速やかに修正され、センタリング終了時は車輪10,10がアライメントテスタ12,13に正対する。
【0066】
このように前記実施形態では、センタリング中、左右一対のセンタリングロ−ラ44,44の等速移動ないし等距離移動をフィ−ドバック制御し、左右の車輪10,10ないし被検車両を正確かつ速やかにセンタリングする。
したがって、左右の車輪10,10の位置を前述のように補正する必要がなく、図13のように非常に簡潔なセンタリング法で所期の目的を達成できる。
【0067】
なお、前述の実施形態は何れもセンタリング装置16〜19を車輪10の外側に配置し、センタリングロ−ラ44を車輪10の外側面に接近させて当接しているが、これに限らずセンタリング装置16〜19を車輪10の内側、つまり左右の車輪10,10間に配置し、各センタリングロ−ラ44を車輪10の内側面に接近して当接させても良い。
そのようにすることで、車輪10の外側にセンタリング装置16〜19の設置スペ−スを確保する必要がなく、その分この種装置の小形化を図れる。
【0068】
【発明の効果】
以上のように、請求項1の発明は、前記制御装置を介して、左右のセンタリングロ−ラの前記移動距離の和の1/2の真正なセンタリング位置と、該真正なセンタリング位置と前記センタリングロ−ラの各移動距離との差の補正距離とを、演算可能にするとともに、前記演算した真正なセンタリング位置と前記補正距離を基に、各センタリングロ−ラを前記移動位置から進退動可能にし、各センタリングロ−ラの位置を補正可能にしたから、各センタリングロ−ラを真正なセンタリング位置へ位置付け、センタリングの正確性と精度の向上を図れ、アライメント測定時のセンタリングに好適な効果がある。
【0069】
請求項2の発明は、請求項2の発明は、前記制御装置の演算前は、前記支持ロ−ラを静止可能にしたから、支持ロ−ラ上の車輪ないし車両の挙動を可及的に抑制して安定させ、前記演算に伴なう距離計測や信号の遣り取りを正確かつ能率良く行なうことができる。
請求項3の発明は、前記センタリングロ−ラを回転可能に支持するロ−ラア−ムの中間部を連結板に回動可能に枢支し、該枢支部とセンタリングロ−ラの回転中心部とをオフセットして配置したから、センタリングロ−ラと車輪との当接を正確かつ安定して検出するとともに、センタリングロ−ラを車輪を押し付ける従来の検出法のような車輪の変位を防止し、センタリングロ−ラの移動距離の正確な計測を実現することができる。
【0070】
請求項4の発明は、前記ロ−ラア−ムの基端部に該ア−ムの回動変位を検出可能な位置センサを配置し、該センサの検出信号を前記制御装置へ入力可能にしたから、センタリングロ−ラと車輪との当接を正確かつ速やかに検出し、その検出信号を前記制御装置へ入力することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明をアライメントテスタに適用した際の車両のセンタリング状況を示す説明図である。
【図2】図1のA−A線に沿う拡大断面図である。
【図3】図1のB−B線に沿う拡大断面図である。
【図4】本発明の要部を拡大して示す平面図で、センタリング装置のセンタリング前の状況を示している。
【図5】本発明の要部を拡大して示す平面図で、センタリング装置のセンタリング前の状況を図4の矢視方向から示している。
【図6】図4の要部を拡大して示す平面図で、センタリングロ−ラの取り付け状況を示している。
【図7】図4の要部を拡大して示す平面図で、センタリング装置の駆動用モ−タに連係する歯車機構を拡大して示している。
【図8】本発明の要部を拡大して示す平面図で、図5に示すセンタリング装置のセンタリング時の状況を示している。
【図9】図4の側面図で、一部を省略して図示している。
【図10】本発明に適用した制御装置によるセンタリング制御の一例を示す制御フロ−である。
【図11】図10に示したセンタリング制御によるセンタリング状況を示す説明図である
【図12】本発明の第2の実施形態に係る制御装置のセンタリング制御を示す制御フロ−である。
【図13】本発明の第3の実施形態に係る制御装置のセンタリング制御を示す制御フロ−である。
【符号の説明】
9 支持ロ−ラ
10 車輪(前輪)
11 車輪(後輪)
16〜19 センタリング装置
34 計測手段(エンコ−ダ)
39 センタリングプレ−ト
43 ロ−ラア−ム
44 センタリングロ−ラ
49 当接検出手段(近接スイッチ)
51 制御装置
Claims (4)
- 回転可能な一対の支持ロ−ラと、該支持ロ−ラ上に載置した車輪の側面に当接可能なセンタリングロ−ラを備えたセンタリング装置と、前記支持ロ−ラとセンタリング装置の作動を制御するとともに、左右のセンタリングロ−ラを各支持ロ−ラ側へ同期かつ等速度移動制御し、かつその原点からの移動距離を演算可能な制御装置を有する車両検査装置において、前記制御装置を介して、左右のセンタリングロ−ラの前記移動距離の和の1/2の真正なセンタリング位置と、該真正なセンタリング位置と前記センタリングロ−ラの各移動距離との差の補正距離とを、演算可能にするとともに、前記演算した真正なセンタリング位置と前記補正距離を基に、各センタリングロ−ラを前記移動位置から進退動可能にし、各センタリングロ−ラの位置を補正可能にしたことを特徴とする車両検査装置。
- 前記制御装置の演算前は、前記支持ロ−ラを静止可能にした請求項1記載の車両検査装置。
- 前記センタリングロ−ラを回転可能に支持するロ−ラア−ムの中間部を連結板に回動可能に枢支し、該枢支部とセンタリングロ−ラの回転中心部とをオフセットして配置した請求項1記載の車両検査装置。
- 前記ロ−ラア−ムの基端部に該ア−ムの回動変位を検出可能な位置センサを配置し、該センサの検出信号を前記制御装置へ入力可能にした請求項3記載の車両検査装置。
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