JP3763655B2 - 渦電流装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、渦電流装置に関する。
【0002】
該渦電流装置は、ステータ組立体と、該ステータ組立体に対して回転軸線回りに回転するロータ組立体とを備えて成り;これら二つの組立体のうちの一つは、前記回転軸線と平行な軸線を有するとともに該回転軸線を中心とする円に沿って等間隔で配置された複数の誘導コイルを備え、前記各コイルは、円柱状の極芯(pole core)を横切って巻回され、該極芯の一端部には、断面積がより大きい極片(pole shoe)が設けられており;前記二つの組立体のうちの他の一つは、ギャップを介して前記各極片に面する位置に少なくとも一つの電機子ディスクを備え;各極片は、これら極片を通過する電機子ディスクの移動方向に関して、回転軸線および対応するコイルの軸線を通る半径面の前方側の方が後方側よりも大きい面積を電機子ディスクに対して提供している。
【0003】
本発明は特に、これに限定するわけではないが、前記各誘導コイルが前記ステータ組立体の一部分を形成するとともに、前記電機子ディスクが前記ロータ組立体の一部分を形成する渦電流減速装置に関するものである。
【0004】
【従来の技術、及び、発明が解決しようとする課題】
前記極片は、以下の如き様々な機能を実現するものである。それは、
電機子に及ぼされる軸線方向に引きつける磁力を制限するように、各コイルと電機子との間に所定距離を確保することと;
電機子内での磁束の望ましい分布および渦電流の効果的な発生を確実にすることと;
さらに、各コイル及び/又は各極芯を定位置に保持するとともに防護する機械的な役割を有すること;
である。
【0005】
極芯の軸線を通過する半径面に対する後部の面積よりも大きい前部の面積を電機子ディスクに対して提供する極片を設ける利点は、仏国特許第2 574 228号公開公報または米国特許第4 668 886号公開公報で述べられている。この利点とは、前記半径面に関して対称に配置された極片とされた従来の形状に比べて、極片の後側でより少ない磁気飽和(magnetic saturation)により、より大きなブレーキトルクを得ることができるということである。
【0006】
本発明の目的は、電機子内に渦電流を発生させることにより、前記装置が発生しうるトルクをさらに増大させることである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
したがって、本発明は、前述した形式の装置において、電機子ディスクに平行な面内で各極片の各後縁部を略凸形状とすることを特徴とする。
【0008】
理想的には、各後縁部は、下方の極芯の円柱形状に沿って延在する扇形状とされる。これにより、磁気材料製の極片内の飽和が最小化され、故に電機子への磁束の通過をより確実にする。
【0009】
しかし、実際には、各極片の機械的な機能、およびこれら極片の取付上の拘束により、概して、極片は極芯の円柱形状の後部よりも張り出した(overhang)ものとなる。こうすることにより、極芯とコイルとの間の空間が極片によって適切な間隔で形成される。このように極片を突出させて設けることにより、より正確な位置決めおよびより確実な極片の保持を行うことができ、ギャップを小さく、しかも可能な限り一定の厚みのものとすることができる。さらに、極片がコイル及び/又は極芯を定位置に固定するために用いられるとき、この固定はさらに確実なものとされる。
【0010】
発明者は、極片の後縁部の各点と対応するコイルの軸線との間の距離が極芯の直径の70%よりも小さくされ、各極片が極芯の断面積よりも少なくとも60%大きい総面積を電機子に対して有するように前記張り出し部分が制限されているときに、トルクに顕著な改善が得られるという知見を得た。
【0011】
好適な実施形態において、各極片の後縁部は、電機子ディスクに平行な面内で、対応するコイルの軸線を中心とし、円柱状極芯の半径よりも僅かに大きい半径を有する円の円弧状の部分を有している。典型的には、極片の後縁部の円弧部の前記半径は、極芯の直径の55%を超えない程度とされ、かつこの円弧部は、少なくとも60゜の中心角を有するものとされる。
【0012】
さらに、極片の後縁部は、電機子ディスクに平行な面内で丸みを帯びた複数の頂点を有する凸状多角形とすることもできる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の他の特徴点および有利点は、非制限的な実施形態について、添付図面を参照して以下の説明により明らかにされる。
図1は、軸線に関して半分割された本発明による渦電流減速装置の概略を示した図2の平面Pにおける断面図である。
図2は、図1のII方向である軸線方向に見た減速装置のステータを示し、下半分に電機子ディスクが示された図である。
図3および図4は、本発明の構成により可能とされた、ロータの速度および誘導コイルのアンペア回数の関数として表されたトルクの改善結果を示すグラフである。
図5は、極片の形状に関する可能な変形例を示した、図2と同様の図である。
図6および図7は、本発明による装置について使用可能な極片を備えたプレートを軸線方向に見た部分図である。
【0014】
本発明は、好適であるが非制限的な適用例としての渦電流減速装置に関して以下に説明される。この渦電流減速装置は、複数の誘導コイル2を備えたステータ1と、電機子ディスク4を有するロータ3とを具備している。
【0015】
ロータ3は、この減速装置が取り付けられた車両のトランスミッションシャフト7に挿入片6を用いて固定されている。このロータ3は、電機子ディスク4を挿入片6に連結する複数の屈曲アーム8を備えている。既知の方法により、電機子内に発生するジュール効果による散逸熱の除去を容易にする送風が生じるように、ディスク4の背部に複数の送風フィン9が設けられている。概して、ロータ3は、ステータ1の各側方に電機子ディスク4を備えている。
【0016】
ステータ1は、車両のシャシーあるいは車両のギアボックスのケーシングに適切な手段により固定された支持部材11を備えている。この支持部材11には、シャフト7およびロータ3を挿通させるための中央開口部が形成されている。この支持部材11は、本実施形態においては8個とされた誘導コイル2を保持している。これら8個のコイル2は、シャフト7およびロータ3の回転軸線Xに平行な軸線Yをそれぞれ有している。これら軸線Yは、回転軸線Xを中心とする円C上に45゜の等間隔で配置されている。誘導コイルの巻線は、各誘導コイルの極性が変化するように、一のコイルと該一のコイルに円C上において隣り合うコイルとでは異なった方向に巻かれている。
【0017】
各コイル2は、軸線Yを有する円柱状極芯12を横切る方向に巻回されている。この極芯12は、ディスク4の対向位置に前端部を有しており、該前端部には、極芯12の円形断面積よりも少なくとも60%だけ大きい断面積を有する極片13が設けられている。この極片13は、コイルの軸線Y上に位置するネジ14で螺結することにより極芯12に固定されている。
【0018】
図1および図2に示した実施形態において、極片13は、極芯12に対してコイル2を移動させないために設けられており、極片13とコイル2の前端部との間には、ワッシャー16が極芯12の前端部の周りに配置されている。
【0019】
磁束は、極片13を通過して図2の矢印Fの方向に移動する電機子ディスク4と極片13との間の微小厚さのギャップEを横切る。
【0020】
各極片13は、移動方向Fに関して、回転軸線Xおよび対応するコイル2の軸線Yを通る半径面Pの前方側の方が後方側よりも大きい面積を電機子ディスク4に対して提供していることが解る。換言すると、極片13の内縁部17および外縁部18は半径面Pに対して略直交しており、極片13の前縁部19は、該極片の後縁部20よりも半径面Pに対して離間した位置とされている。電機子反作用(armature reaction)の現象により、極片の後部に向けて磁力線が集中する傾向となるので、半径面Pに関する極片の非対称性が、該極片内における飽和、およびアンペア回数(ampere-turns)の非効率な消費を制限することになる。これにより、極片13の対称的な配置に比べて、得られるブレーキトルクが増大することになる。
【0021】
発明者は、極片の後縁部20を電機子ディスクと平行な面(図2の面)内で略凸状とすることにより、特に後縁部と極芯の軸線(the pole axes)Yとの間の距離dがいずれの場所でも極芯12の直径Dの70%よりも小さくされたときに、前記有利点をさらに強調できるとの知見を得た。
【0022】
図2に示した実施形態において、各極片13の後縁部20は、二つの側部に丸みを帯びた各頂点を有する凸状多角形とされ、これら二つの側部間の頂点は、各極芯の軸線Yを通過する円C上にほぼ配置されている。これは、仏国特許第2 574 228号公開公報に記載されているような台形の極片に比べて、極片の後縁部の材料、磁気誘導が比較的大きい材料、および磁気的な飽和が生じるおそれのある材料を取り除くことを意味する。
【0023】
図3および図4には、図2のような減速装置により得られたブレーキトルクの改善結果が示されている。図3は、約11000アンペア回数の誘電コイル2に対するロータ3の回転速度の関数としてブレーキトルクを示したものであり、図4は、670rpmのオーダーの回転速度に対するアンペア回数の関数としてブレーキトルクを示したものである。曲線AおよびA’は、図2に示したような形状の後縁部を有する極片に対応するものであり、曲線BおよびB’は、従来技術である直線状の後縁部を有する極片に対応するものである。1000rpm以下の速度および10000以上のアンペア回数に対して、10%のオーダーでトルクが増加していることに留意すべきである。これらの速度およびアンペア回数は、減速装置の通常の使用範囲に対応するものである。
【0024】
約1500rpm以上の速度では、トルクが減少することが図3から解る。この減少は、各極片の総面積が減少したことにより説明される。減速装置は通常低速で使用されるので、上記欠点はそれほど深刻なものではない。さらにこの欠点は、例えば図5に示すような極片の前縁部の形状を採用することにより緩和することができる。
【0025】
図5の実施形態において、各極片13の前縁部21は、後縁部20の凸形状に対応する略凹形状とされている。これにより、後縁部の面取りにより減少した極片の表面積を補うことができ、かつ、隣接する二つの極片間に実質的に一定な幅の間隙あるいは“窓部”を形成することができる。
【0026】
図6および図7には、本発明の他の実施形態が示されている。これらの図において、電機子の移動方向Fが図2および図5のそれと反対とされていることに留意されたい。これらの実施形態において、各極片13は、ステータ組立体の一部を形成する非磁性材料製の支持プレート22により支持されている。このプレート22は、ロータ3を挿通させるための中央孔部23が形成された略環形状とされている。このプレート22には、極芯12の直径よりも若干大きい直径を有する八つの円形孔部24が形成されている。各極片13は、前記八つの孔部24を覆うようにプレート22に溶接されている。この溶接は、例えば、適切なロボットを用いて、プレート22と極片13の幅小面との間の角度内に三つの溶接ビード26を形成することにより実施される(図6参照)。各極片13を溶接した後に、プレート22は、該プレート22の各孔部24内で極芯12の各前端部を係合するようにして複数のコイル2および複数の極芯12を設けたステータとされる。そして、組立体を固定するように、極片13に形成された複数の穴部27を介して、極芯12に形成された対応する各ネジ溝に図1のネジ14と同様の複数のネジを螺合することができる。
【0027】
図6の実施形態において、各極片13の後縁部28は、該極片の内縁部17と外縁部18との間の三つの側部28a,28b,28cに丸みを帯びた複数の頂点を有する凸状多角形とされている。これら三つの側部は、極片13により覆われるプレート22の孔部24に対する略接線とされ、信頼性のある方法で極片が孔部24を封鎖できるように狭い間隙が残されている。多角形状の各縁部28により、直線状の溶接ビード26を形成することができ、一般的な溶接ロボットを用いることにより、さらに信頼性を向上することができる。
【0028】
後縁部28の多角形状の中央部28bは、各極片を通過する電機子4の移動方向Fに対応する極片13の直線状の前縁部19と平行とされている。この構成により、極片の半径方向の幅の一部分にわたって一定幅Lの窓部を形成することができる。
【0029】
図7の実施形態において、各極片13の後縁部29は、第一の直線部29aと、円弧部29bと、第二の直線部29cとから成り、内縁部17から外縁部18にかけて連続的に形成されている。両直線部29a,29bは、中央の円弧部29bの接線とされている。この円弧部29bは、極芯の軸線Yを中心とするとともに、該円弧部29bの半径Rは、円柱状極芯12の半径およびプレート22の孔部24の半径よりも(100%から110%の間で)僅かに大きくされている。この円弧は、少なくとも60゜の中心角αにわたって延在している(図においてαは約90゜)。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、軸線に関して半分割された本発明による渦電流減速装置の概略を示した図2の平面Pにおける断面図である。
【図2】 図1のII方向である軸線方向に見た減速装置のステータを示し、下半分に電機子ディスクが示された図である。
【図3】 本発明の構成により可能とされた、ロータの速度の関数として表されたトルクの改善結果を示すグラフである。
【図4】 本発明の構成により可能とされた、誘導コイルのアンペア回数の関数として表されたトルクの改善結果を示すグラフである。
【図5】 極片の形状に関する可能な変形例を示した、図2と同様の図である。
【図6】 本発明による装置について使用可能な極片を備えたプレートを軸線方向に見た部分図である。
【図7】 本発明による装置について使用可能な極片を備えたプレートを軸線方向に見た部分図である。
【符号の説明】
1 ステータ
3 ロータ
4 電機子ディスク
12 極芯
13 極片
20,28,29 後縁部
C 円
E ギャップ
F 移動方向
P 半径面

Claims (6)

  1. ステータ組立体(1)と、該ステータ組立体に対して回転軸線(X)回りに回転するロータ組立体(3)とを備えて成り、
    これら二つの組立体のうちの一つは、前記回転軸線と平行な軸線(Y)を有するとともに該回転軸線を中心とする円(C)に沿って等間隔で配置された複数の誘導コイルを備え、前記各コイルは、該コイルを通過して延在する円柱状極芯(12)を有し、これら極芯は、断面積が該極芯よりも大きい極片(13)が設けられた一端を有し、
    前記二つの組立体のうちの他の一つは、ギャップ(E)を介して前記各極片に面する位置に少なくとも一つの電機子ディスク(4)を備え、
    前記各極片は、これら極片を通過する前記電機子ディスクの移動方向(F)に関して、前記回転軸線および対応するコイルの軸線を通る半径面(P)の前方側の方が後方側よりも大きい面積を前記電機子ディスクに対して提供している渦電流装置において、
    前記各極片(13)は、前記電機子ディスク(4)に平行な面内で略凸状の後縁部(20;28;29)を有していることを特徴とする渦電流装置。
  2. 前記極片(13)の前記後縁部(20;28;29)の各点と対応する前記コイル(2)の前記軸線(Y)との距離(d)が、前記極芯(12)の直径(D)の70%よりも小さくされているとともに、
    前記各極片(13)は、前記極芯(12)の断面積よりも少なくとも60%大きい面積を前記電機子ディスク(4)に対して提供していることを特徴とする請求項1記載の渦電流装置。
  3. 前記各極片(13)の前記後縁部(29)は、前記電機子ディスク(4)に平行な面内で、対応する前記コイル(2)の前記軸線(Y)を中心とし、前記円柱状極芯(12)の半径よりも僅かに大きい半径(R)を有する円の円弧状の部分(29b)を有していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の渦電流装置。
  4. 前記各極片(13)の前記後縁部(20;28)は、前記電機子ディスク(4)に平行な面内で、丸みを帯びた複数の頂点を有する凸状多角形とされていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の渦電流装置。
  5. 前記各極片(13)の多角形とされた前記後縁部(28)は、
    これら極片を通過する電機子ディスク(4)の移動方向(F)に対応する前記極片(13)の直線状の前縁部(19)に実質的に平行な中央部(28b)を有していることを特徴とする請求項4記載の渦電流装置。
  6. 前記各極片(13)は、近接する二つの極片間の間隔が実質的に一定な幅となるように、前記極片の凸状の前記後縁部(20)に対応する略凹状の前縁部(21)を有していることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の渦電流装置。
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