JP3763495B2 - ピリジニウム型イオン性化合物誘導体、その製造方法及び液晶物質 - Google Patents

ピリジニウム型イオン性化合物誘導体、その製造方法及び液晶物質 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なl,3−ジオキサン環の基本構造をもつピリジニウム型イオン性化合物誘導体、ピリジニウム型イオン性光学活性化合物誘導体及びその製造方法、更に言えば熱、電気光学効果を利用する液晶素子をはじめとする液晶表示材料として有用な液晶物質に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
液晶物質には、相転移を与える手段に基づいて、サーモトロピック液晶(温度転移型液晶)とリオトロピック液晶(濃度転移型液晶)に分類されるが、またこれらの液晶は分子配列的に見ると、スメクチック液晶、ネマチック液晶及びコレステリック液晶の三種類に分類される。
【0003】
現在、液晶ディスプレーなどの電子材料として実用に供されている液晶物質はサーモトロピック液晶であり、下記の一般式(V)
【0004】
【化14】
Figure 0003763495
(式中、Aはアルキル基を表わす)
で示されるシアノフェニルジオキサン系液晶化合物や、下記の一般式(VI)
【0005】
【化15】
Figure 0003763495
(式中、Bはアルキル基またはアラルキル基を表わす)
で示されるシアノフェニルシクロヘキサン系液晶化合物等が知られている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記のシアノフェニルジオキサン系液晶化合物やシアノフェニルシクロヘキサン系液晶化合物は、その一例として下記の化学式(C)に示す様に、分子末端にシアノ基を持ち、シアノ基による電子吸引性により、分子長軸方向の誘電率が大きくなっており、正の誘電率異方性を有する。
【0007】
【化16】
Figure 0003763495
【0008】
液晶化合物は、その液晶状態を示す温度範囲を−40℃〜+60℃程度を実用上必要としており、その実現のために、多くの液晶化合物、例えば10種類程度の液晶化合物の混合系の液晶組成物として実用化されている。この混合系の液晶化合物に電圧をかけて駆動させるために、その液晶組成物のおよそ20%程度の混合比で誘電率異方性が正の液晶化合物が含有されている。この誘電率異方性が正の液晶化合物として上記のシアノフェニル系液晶化合物が用いられている。
【0009】
この混合系の液晶組成物の駆動速度は誘電率異方性の大きさに比例するので、分子長軸方向の電荷の偏りの大きな化合物が望まれており、上記のシアノフェニル系液晶化合物よりも分子長軸方向の電荷の偏りの大きな液晶化合物が望まれている。
【0010】
本発明者は、叙上の点に鑑み鋭意研究を重ねたところ、イオン性のN が分子内に存在することにより、分子長軸方向の電荷の偏りが極めて大きくなることを知見し、電場などの外力により大きなトルクを持つことが可能な、新規な化合物である1,3−ジオキサン環の基本骨格構造を有するピリジニウム型イオン性化合物誘導体およびピリジニウム型イオン性光学活性化合物誘導体を合成し、本発明を完成した。
【0011】
本発明は、高機能性液晶材料として有望な新規化合物であるピリジニウム型イオン性化合物誘導体、ピリジニウム型イオン性光学活性化合物誘導体、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明が提供しようとする新規化合物は、下記の一般式(I)
【0013】
【化17】
Figure 0003763495
(式中、R1 、R2 は同種又は異種の炭素数1〜22のアルキル基、Xはハロゲン原子を表わす)
で示されるl,3−ジオキサン環の基本構造をもつピリジニウム型イオン性化合物誘導体に係るものである。
【0014】
また、本発明は、下記の第1工程乃至第4工程からなることを特徴とする上記の一般式(I)で示されるl,3−ジオキサン環の基本構造をもつピリジニウム型イオン性化合物誘導体の製造方法に係るものである。
【0015】
(a)式:R1 X(式中、R1 、Xは前記と同義である)で示される化合物と、式
【0016】
【化18】
Figure 0003763495
(式中、R3 は炭素数1〜3の低級アルキル基を表わす)で示される化合物を反応させて、一般式(II)
【0017】
【化19】
Figure 0003763495
(式中、R、R3 は前記と同義である)で示される化合物を合成する第1工程、
【0018】
(b)前記第1工程で得られた一般式(II)で示される化合物を還元して一般式(III)
【0019】
【化20】
Figure 0003763495
(式中、R1 は前記と同義である)で示される化合物を合成する第2工程、
【0020】
(c)前記第2工程で得られた一般式(III)で示される化合物とピリジン−4−アルデヒドとを反応させて、一般式(IV)
【0021】
【化21】
Figure 0003763495
(式中、R1 は前記と同義である)で示される化合物を合成する第3工程、
【0022】
(d)前記第3工程で得られた一般式(IV)で示される化合物と式:R2 X(式中、R2、Xは前記と同義である)で示される化合物とを反応させて、一般式(I)
【0023】
【化22】
Figure 0003763495
(式中、R1 、R2 は前記と同義である)で示されるl,3−ジオキサン環の基本構造をもつピリジニウム型イオン性化合物誘導体を合成する第4工程。
【0024】
さらに、本発明が提供しようとする新規化合物は、下記の一般式(XI)
【0025】
【化23】
Figure 0003763495
(式中、R1は同種又は異種の炭素数1〜22のアルキル基、Xはハロゲン原子を表わす。R4は下記の式(XII)で示される光学活性基を表わす。
【0026】
【化24】
Figure 0003763495
但し、Yは炭素数1〜4のアルキル基、mは0〜10の整数、nは1〜9の整数、*は不斉炭素原子を表わす。)
で示されるl,3−ジオキサン環の基本構造をもつピリジニウム型イオン性光学活性化合物誘導体に係るものである。
【0027】
また、本発明は、下記の第1工程乃至第4工程からなることを特徴とする上記のl,3−ジオキサン環の基本構造をもつピリジニウム型イオン性光学活性化合物誘導体の製造方法である。
(a)式:RX(式中、R、Xは前記と同義である)で示される化合物と、式
【0028】
【化25】
Figure 0003763495
(式中、Rは炭素数1〜3の低級アルキル基を表わす)で示される化合物を反応させて、一般式(II)
【0029】
【化26】
Figure 0003763495
(式中、R、Rは前記と同義である)で示される化合物を合成する第1工程、
(b)前記第1工程で得られた一般式(II)で示される化合物を還元して一般式(III)
【0030】
【化27】
Figure 0003763495
(式中、Rは前記と同義である)で示される化合物を合成する第2工程、
(c)前記第2工程で得られた一般式(III)で示される化合物とピリジン−4−アルデヒドとを反応させて、一般式(IV)
【0031】
【化28】
Figure 0003763495
(式中、Rは前記と同義である)で示される化合物を合成する第3工程、
(d′)前記第3工程で得られた一般式(IV)で示される化合物と式:R4X(式中、R4、Xは前記と同義である)で示される化合物とを反応させて、一般式(XI)
【0032】
【化29】
Figure 0003763495
(式中、R1、R4は前記と同義である)で示されるl,3−ジオキサン環の基本構造をもつピリジニウム型イオン性光学活性化合物誘導体を合成する第4工程。
【0033】
さらに、本発明は、上記の一般式(I)で示されるピリジニウム型イオン性化合物誘導体、および一般式(X)で示されるピリジニウム型イオン性光学活性化合物誘導体を有効成分とする液晶物質に係るものである。
【0034】
【発明の実施の形態】
本発明が提供しようとする新規化合物は、下記の一般式(I)
【0035】
【化30】
Figure 0003763495
(式中、R1 、R2 、Xは前記と同義である)
で示されるl,3−ジオキサン環の基本構造をもつピリジニウム型イオン性化合物誘導体(以下、「一般式(I)で示される化合物」と記す)であることを構成上の特徴とする。
【0036】
また、本発明は、上記一般式(I)で示される化合物を構成上の特徴とした高機能性液晶物質を提供する。
本発明に係る一般式(I)で示される化合物はサーモトロピック液晶性を示し、かつ分子配列が垂直層状を形成して配向する新規なスメクチックA相液晶物質である。
【0037】
一般式(I)で示される化合物において、R1 、R2 は前記の通り炭素数1〜22の同種又は異種のアルキル基であり、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基の如き低級アルキル基からオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ドコシル基等の炭素数が22までの範囲にある直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられる。これらのうち、R1 が炭素数8〜12、好ましくは9〜11の直鎖状アルキル基、R2 はエチル基が工業的に好ましい。
【0038】
また、一般式(I)において、XはCl、Br又はIのハロゲン原子であるが、好ましくはCl又はBr、特にBrが好ましい。
【0039】
上記一般式(I)で示される化合物において、R1 又はR2 のアルキル基が大きくなると、分子配列の規則性が良好になるけれども液晶体における粘性が大きくなる傾向があり、またCl塩よりBr塩の方が安定な液晶状態を形成し易い。
【0040】
本発明に係る一般的(I)で示される化合物としては、例えばN−エチル−4−(5−メチル−1,3−ジオキサ−2−イル)ピリジニウムブロマイド、N−エチル−4−(5−エチル−1,3−ジオキサ−2−イル)ピリジニウムブロマイド、N−エチル−4−(5−プロピル−1,3−ジオキサ−2−イル)ピリジニウムプロマイド、N−エチル−4−(5−ブチル−1,3−ジオキサ−2−イル)ピリジニウムブロマイド等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
また、本発明が提供しようとする他の新規化合物は、下記の一般式(XI)
【0042】
【化31】
Figure 0003763495
(式中、R1、R4、Xは前記と同義である)
で示されるl,3−ジオキサン環の基本構造をもつピリジニウム型イオン性光学活性化合物誘導体(以下、「一般式(XI)で示される化合物」と記す)であることを構成上の特徴とする。
【0043】
また、本発明は、上記一般式(XI)で示される化合物を構成上の特徴とした高機能性液晶物質を提供する。
本発明に係る一般式(XI)で示される化合物は光学活性液晶性化合物であり、該光学活性液晶性化合物は、スメクティック液晶分子に光学活性な不斉炭素原子(カイラル基)を導入したもので、カイラルスメクティック液晶と呼ばれる。
【0044】
その特徴は、強誘電性を有する。強誘電性は、高速応答性、電圧を取り除いても液晶分子の配列状態が保持されているというメモリ特性、分子の向きが二つの安定な状態となる双安定性を持つなどの非常に優れた性質を持っている。
【0045】
一般式(XI)で示される化合物において、R、Xは前記の一般式(I)で示されたものと同じものである。
【0046】
4は下記の式(XII)で示される光学活性基を表わす。
【0047】
【化32】
Figure 0003763495
上記の下記の式(XII)において、Yは炭素数1〜4、好ましくは炭素数 1〜2のアルキル基を表わす。
【0048】
mは0〜10、好ましくは1〜5の整数、nは1〜9、好ましくは1〜5の整数を表わす。*は不斉炭素原子を表わす。
【0049】
4の式(XII)で示される光学活性基の具体例を示すと、下記の基が挙げられる。
【0050】
【化33】
Figure 0003763495
【0051】
上記一般式(XI)で示される化合物において、R又はR4のアルキル基が大きくなると、分子配列の規則性が良好になるけれども液晶体における粘性が大きくなる傾向があり、またCl塩よりBr塩の方が安定な液晶状態を形成し易い。
【0052】
本発明に係る一般的(XI)で示される化合物としては、例えばN−(S)−(+)−2−メチルブチル−4−(5−デシル−1,3−ジオキサ−2−イル)ピリジウムブロマイド、N−(S)−(+)−2−メチルブチル−4−(5−オクタデシル−1,3−ジオキサ−2−イル)ピリジウムブロマイド等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0053】
本発明の上記一般式(I)および(XI)で示される化合物は、下記の化学式(D)および(E)に示す様に、分子内にNを有することにより、分子長軸方向の電荷の偏りが極めて大きくなり、それを電場などの外力により駆動させると大きなトルクを持つ可能性のある新規化合物である。
【0054】
【化34】
Figure 0003763495
【0055】
具体的には、この一般式(I)で示される化合物の電荷の偏りが大きいことは、プロトンNMRスペクトルにより、通常のシアノフェニル系液晶化合物と比較して明らかである。即ち、上記の本発明の一般式(I)で示される化合物(D)のaの位置の水素原子のプロトンNMRスペクトルの吸収位置は、前述の化学式(C)に示すシアノフェニル系液晶化合物のa′の位置の水素原子のプロトンNMRスペクトルの吸収位置より大きく低磁場にあり、このことはN による非常に大きな電子吸引が原因となっていると考えられる。具体的には、
【0056】
【数1】
a′の水素原子の吸収 =7.6ppm
aの水素原子の吸収 =8.2ppmと9.9ppm
である。
【0057】
即ち、本発明の一般式(I)で示される化合物は、分子長軸方向に非常に大きな電荷の偏りを持っているので、電場などの外力が働いた場合非常に大きなトルクを持つことが可能であり、その高機能性材料として有用性は非常に大きいものがある。
【0058】
次に、本発明が提供しようとする上記の一般式(I)で示される化合物の製造方法は、下記の第1工程乃至第4工程による反応により行なわれる。
(1)第1工程
下記の反応式(1)
【0059】
【化35】
Figure 0003763495
(式中、R1 、Xは前記と同義である。R3 は炭素数1〜3の低級アルキル基を表わす)
で示される反応により、一般式(II)で示される低級ジアルキルマロネイト化合物(II)を合成する第1工程、
【0060】
(2)第2工程
下記の反応式(2)
【0061】
【化36】
Figure 0003763495
(式中、R1 、R3 は前記と同義である。)
で示される反応により、前記第1工程で得られた低級ジアルキルマロネイト化合物(II)を還元して、一般式(III)で示される2−アルキル−1,3−プロパンジオール化合物(III)を合成する第2工程、
【0062】
(3)第3工程
下記の反応式(3)
【0063】
【化37】
Figure 0003763495
(式中、R1 は前記と同義である。)
で示される反応により、前記第2工程で得られた2−アルキル−1,3−プロパンジオール化合物(III)とピリジン−4−アルデヒドと反応させて、一般式(IV)で示される4−(5−アルキル−1,3−ジオキサ−2−イル)ピリジン化合物(IV)を合成する第3工程、
【0064】
(4)第4工程
下記の反応式(4)
【0065】
【化38】
Figure 0003763495
(式中、R1 、R、Xは前記と同義である。)
で示される反応により、前記第3工程で得られた4−(5−アルキル−1,3−ジオキサ−2−イル)ピリジン化合物(IV)と式:R2 Xで示されるハロゲン化合物と反応させて、一般式(I)で示される化合物を合成する第4工程。
【0066】
以下に上記の第1〜第4工程についてさらに具体的に説明する。
【0067】
第1工程:
この第1工程は、上記の反応式(1)に示すとおり、低級ジアルキル−2−アルキルマロネイトを合成する工程である。すなわち、ハロゲン化アルキルとマロン酸ジアルキルエステルを強塩基触媒の存在で反応させる。
【0068】
触媒としては、ナトリウム、カリウム又はリチウムの如きアルカリ金属のアルコラートが好ましい。
溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール等のアルコールなどが挙げられる。
【0069】
反応条件としては、反応温度は0〜100℃、好ましくは20〜50℃であり、反応時間は0.5〜50時間、好ましくは10〜20時間であり、還流することにより反応を行う。
反応後は、常法により中和、洗浄、抽出、及び脱水などの諸操作を経て中間体の低級ジアルキルマロネイト化合物(II)を得る。
【0070】
第2工程:
この第2工程は、上記の反応式(2)に示すとおり、2−アルキル−1,3−プロパンジオール化合物(III)の合成工程である。
すなわち、前記第1工程で得られた低級ジアルキルマロネイト化合物(II)を還元剤を含む溶媒中で還元処理を施し、2−アルキル1,3−プロパンジオール化合物(III)を合成する。
【0071】
還元剤としては、例えばAlH3 、LiAlH4 、LiAlH4 −AlCl3 、LiAlH(OCH3 3 、NaH−LiAlH4 、NaBH4 、LiBH4 、BH3 等の如き金属水素化合物や、金属ナトリウム、カリウム、リチウム等のメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコラートが好ましい。
【0072】
また、溶媒としては、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール、ジフェニルエーテル、ジオキサン、トリオキサン、フラン、テトラヒドロフランの如きエーテル類や、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素がよい。
【0073】
反応条件としては、反応温度は0〜150℃、好ましくは20〜100℃であり、反応時間は0.5〜10時間、好ましくは2〜5時間であり、還流下で還元処理する。
還元剤は、その種類や反応条件によって変化するが、化合物(II)に対して等モル以上、好ましくは1.5〜3モルの範囲で用いるのが望ましい。
【0074】
反応終了後は、未反応の還元剤を酢酸エチル等のエステルにより分解し、還元剤より生じる金属はアンモニウム塩として水可溶性の塩としてエーテル層と分離する。その後、常法により、分離、精製及び脱水して化合物(III)を合成する。
【0075】
第3工程:
この第3工程は、上記の反応式(3)で示すとおり、4−(5−アルキル−1,3−ジオキサ−2−イル)ピリジン化合物(IV)の合成工程である。
すなわち、2−アルキル−1,3−プロパンジオール化合物(III)とピリジン−4−アルデヒドとをルイス酸の存在下で閉環反応処理する。
【0076】
ルイス酸としては、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸等の芳香族スルホン酸、硫酸、塩酸、臭化水素酸、リン酸等の鉱酸等が挙げられる。
化合物(III)とピリジン−4−アルデヒドは、等モル付近の量的関係で反応させる。
【0077】
溶媒としては、反応に不活性なものであれば特に限定されず、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、エーテル、石油エーテル、リグロイン等の炭化水素系溶媒等が挙げられる。
反応条件としては、温度は使用する溶媒により異なるが還流する温度で行なわれ、反応時間は0.5〜20時間、好ましくは2〜10時間であり、還流しながら副生する水を共沸により除去しながら反応を進める。
反応終了後は、常法により、分離、精製及び脱水処理を施して化合物(IV)を得る。
【0078】
第4工程:
この第4工程は、上記の反応式(4)で示すとおり、本発明に係る一般式(I)で示されるN−アルキル−4−(5−アルキル−1,3−ジオキサ−2−イル)ピリジニウムハライド(I)を合成する最終工程である。
【0079】
すなわち、この工程では、前記第3工程で得られた4−(5−アルキル−1,3−ジオキサ−2−イル)ピリジン化合物(IV)とハロゲン化アルキルとの反応により、一般式(I)で示される化合物のピリジニウムハライドを合成する。
【0080】
溶媒は、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチルニトリル等のニトリル化合物や、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコールの如き極性の大きな溶媒がよい。
【0081】
また、化合物(IV)に対してハロゲン化アルキルは、アルキル基の大きさや、Cl又はBrの違いによって、使用量は変化するけれども多くの場合、過剰に用い、好ましくは量論量よりも5〜20倍量が用いられる。
【0082】
この反応は窒素などによる不活性雰囲気で温度50〜150℃、好ましくは50〜100℃で、反応時間は1〜30時間、好ましくは5〜24時間で還流を施して反応させる。
反応終了後は、常法により、分離、精製及び乾燥して一般式(I)で示される化合物の目的物質を得る。
【0083】
本発明に係る一般式(I)で示される新規な液晶性化合物の構造的特徴は、極性部として1,3−ジオキサン環に連絡したピリジン環を形成する正電荷を帯びた窒素原子、非極性部として二本のアルキル基を有していることである。
かかる特徴的分子構造のゆえに、従来知られている1,3−ジオキサン環に連結するシアノフェニル系液晶性物質よりも液晶特性に優れたものとなっている。
【0084】
なお、かかる化合物は抗菌性を示し、層間移動触媒として作用するなど高機能性を有する。
また、本発明に係る製造方法は4つの工程を経ることにより、工業的に高純度、高収率で上記一般式(I)で示される化合物を有利に得ることができる。
【0085】
次に、本発明が提供しようとする上記の一般式(XI)で示されるl,3−ジオキサン環の基本構造をもつピリジニウム型イオン性光学活性化合物誘導体の製造方法は、前述の第1工程乃至第4工程による反応により行なわれる。
【0086】
第1工程乃至第3工程は、上記の一般式(I)で示される化合物の製造方法と同様の反応により行なわれ、前記の一般式(IV)で示される4−(5−アルキル−1,3−ジオキサ−2−イル)ピリジン化合物(IV)を合成する。
【0087】
次に、第4工程により、下記の反応式(5)
【0088】
【化39】
Figure 0003763495
(式中、R1、R4、Xは前記と同義である)
で示される反応により、前記第3工程で得られた4−(5−アルキル−1,3−ジオキサ−2−イル)ピリジン化合物(IV)と式:R4Xで示される光学活性ハロゲン化アルキルと反応させて、一般式(XI)で示される光学活性化合物を合成する。
【0089】
上記の反応式(5)で示される反応に用いられる、R4Xで示される光学活性ハロゲン化アルキルの具体例としては、下記の化合物が挙げられる。
(S)−(+)−ブチルクロライド
(S)−(+)−ブチルブロマイド
(S)−(−)−ブチルクロライド
(S)−(−)−ブチルブロマイド
(S)−(+)−2−メチル−1−ブチルクロライド
(S)−(+)−2−メチル−1−ブチルブロマイド
(S)−(−)−2−メチル−1−ブチルクロライド
(S)−(−)−2−メチル−1−ブチルブロマイド
【0090】
(S)−(+)−5−メチル−1−ヘプチルクロライド
(S)−(+)−5−メチル−1−ヘプチルブロマイド
(S)−(−)−5−メチル−1−ヘプチルクロライド
(S)−(−)−5−メチル−1−ヘプチルブロマイド
(S)−(+)−4−メチル−1−ヘキシルブロマイド
(S)−(+)−3−メチル−1−ペンチルブロマイド
(S)−(+)−6−メチル−1−オクチルブロマイド
(S)−(+)−2−メチル−1−ペンチルブロマイド
(S)−(−)−2−メチル−1−ペンチルブロマイド
【0091】
本発明に係る一般式(XI)で示される新規な液晶性化合物の構造的特徴は、光学活性液晶性化合物であり、極性部として1,3−ジオキサン環に連絡したピリジン環を形成する正電荷を帯びた窒素原子、非極性部として二本のアルキル基を有していることである。
かかる特徴的分子構造のゆえに、本発明の光学活性液晶性化合物は、スメクティック液晶分子に光学活性な不斉炭素原子(カイラル基)を導入したカイラルスメクティック相を示す液晶であり、強誘電性を有するために、高速応答性、電圧を取り除いても液晶分子の配列状態が保持されているというメモリ特性、分子の向きが二つの安定な状態となる双安定性を持つなどの非常に優れた性質を持っている。
【0092】
【実施例】
以下、実施例により本発明につき具体的に説明するが、これらに限定されるものではない。
【0093】
実施例1,2
第1工程
下記の反応により、ジエチル−2−アルキルマロネイトを合成した。
【0094】
【化40】
Figure 0003763495
(式中、RはC7 15またはC1021を示す)
【0095】
500ml三角フラスコに150mlのエタノールを入れ、金属ナトリウム(0.3mol)を溶解後、ジエチルマロン酸(0.3mol)を加え、冷却後、アルキルブロマイド(0.3mol)を加える。エチレングリコール浴中30℃で18時間還流する。溶媒を減圧除去後、ジエチルエーテル(300ml)を加え分液漏斗を用いて冷希塩酸300ml(30ml/300ml)、続いて冷蒸留水100mlで洗浄する。エーテル層を得た後、水層はジエチルエーテル100mlを加えて再抽出する。分液によって得たジエチルエーテル溶液は無水硫酸ナトリウムで約1日脱水する。ろ過し、ジエチルエーテルを減圧除去後、残渣を減圧蒸留して化合物(II′)を得た。
【0096】
このときの2種のアルキルブロマイド(R=C7 15、R=C1021)を用いた浴温及び留出温度等について下記の表1に示す。
【0097】
【表1】
Figure 0003763495
【0098】
第2工程
下記の反応により、2−アルキル1,3−プロパンジオールを合成した。
【0099】
【化41】
Figure 0003763495
(式中、RはC7 15またはC1021を示す)
【0100】
500mlの三つ口丸底フラスコに100mlのジエチルエーテルを入れ、リチウムアルミニウムハイドライドを(2倍量mol数)入れ、氷冷しながら第1工程で得られた化合物(II′)(0.23mol)をジエチルエーテル100mlに溶解し滴下漏斗でゆっくり滴下する。その後、エチレングリコール浴中で40℃で、4時間還流する。反応後、氷冷下で酢酸エチル(0.3mol)をジエチルエーテル100mlに溶解させ、滴下漏斗でゆっくりと滴下する。次に飽和アンモニウム水溶液50mlを、滴下漏斗で一滴ずつゆっくりと加える。その後、フラスコをジエチルエーテルで満たし、室温で3時間撹拌する。ろ過し、残渣を300mlのジエチルエーテルに溶かし24時間撹拌する。合わせたジエチルエーテルに無水硫酸ナトリウムを加え約1日脱水した後、ジエチルエーテルを減圧除去し、残渣として化合物(III′)を得た。この結果を表2に示す。
【0101】
【表2】
Figure 0003763495
【0102】
第3工程
下記の反応により、4−(5−アルキル−1,3−ジオキサ−2−イル)ピリジンを合成した。
【0103】
【化42】
Figure 0003763495
(式中、RはC7 15またはC1021を示す)
【0104】
反応装置として、ディーン−スターク−トラップ(Dean−Stark−Trap)を用いた。
100ml三角フラスコでベンゼン60mlに第2工程で得られた化合物(III′)(0.03mol)を入れて、それぞれにつき以下の実験を行った。
【0105】
すなわち、上記のような各フラスコにピリジン−4−アルデヒド(等mol数)を溶解し、p−トルエンスルホン酸を10g加えpH1以下にする。pHを確認後シリコーン浴中で135℃〜140℃で5時間還流する。冷却後、ジエチルエーテル(300ml)に溶解し炭酸ナトリウム(30g/300ml)水溶液で洗浄し水溶液が塩基性であることを確かめた後、蒸留水(100ml)で洗浄、ジエチルエーテル層を得る。その後無水硫酸ナトリウムで約1日脱水する。ろ過し、ジエチルエーテルを減圧除去し残渣を得る。シリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィーで、初めにヘキサン300mlを流し、ベンゼン300mlを流して分離した。目的物はベンゼン溶媒中に溶出した。これを溶媒除去した後、特級ヘキサンで3〜4回再結晶し精製し化合物(IV′)を得た。この結果を表3に示す。
【0106】
【表3】
Figure 0003763495
【0107】
第4工程
下記の反応により、N−アルキル−4−(5−アルキル−1,3−ジオキサ−2−イル)ピリジニウムブロマイドを合成した。
【0108】
【化43】
Figure 0003763495
(式中、RはC7 15またはC1021、R’はC2 5 Rを示す)
【0109】
200ml三つ口丸底フラスコ中で特級アセトニトリル30mlに第3工程で得られた2種の化合物(IV′)をそれぞれ0.0017molと、エチルブロマイドを10倍mol溶解させ、窒素気流下でシリコーン浴中で100℃で24時間還流する。アセトニトリルを減圧除去し、ヘキサン30ml、ジエチルエーテル30mlの混合溶液で再沈澱させ約一日攪拌洗浄し、不溶物を得た後、真空乾燥し化合物(I′)を得た。
得られた結果につき表4に示す。
【0110】
【表4】
Figure 0003763495
【0111】
実施例3,4
第1工程〜第3工程
実施例1の出発原料のRBr(RはC7 15)の代わりに、Ra Br(Ra はC9 19またはC1123を示す)のそれぞれ2種の化合物を用いて、実施例1の第1工程〜第3工程と同様の方法で合成を行ない、下記の式で示される4−(5−アルキル−1,3−ジオキサ−2−イル)ピリジン化合物(VII)を合成した。
【0112】
【化44】
Figure 0003763495
(式中、Ra はC9 19またはC1123を示す)
化合物(VII)の収量、収率、性状、m.p.等の結果を表5に示す。
【0113】
【表5】
Figure 0003763495
【0114】
第4工程
下記の反応により、N−アルキル−4−(5−アルキル−1,3−ジオキサ−2−イル)ピリジニウムブロマイドを合成した。
【0115】
【化45】
Figure 0003763495
(式中、Ra はC9 19またはC1123、R’はC2 5 Rを示す)
【0116】
200ml三つ口丸底フラスコ中で特級アセトニトリル30mlに第3工程で得られた2種の化合物(VII)をそれぞれ0.0017molと、エチルブロマイドを10倍mol溶解させ、窒素気流下でシリコーン浴中で100℃で24時間還流する。アセトニトリルを減圧除去し、ヘキサン30ml、ジエチルエーテル30mlの混合溶液で再沈澱させ約一日攪拌洗浄し、不溶物を得た後、真空乾燥し化合物(I′)を得た。
得られた結果につき表6に示す。
【0117】
【表6】
Figure 0003763495
【0118】
次に、実施例1〜実施例4で得られた一般式(I)で示される化合物の1 H−NMR(CDCl3 、δ)およびFT−IR(CHCl3 、cm-1)を下記に示す。
【0119】
(実施例1)
【0120】
【化46】
Figure 0003763495
【0121】
1 H−NMR(CDCl 3 、δ);
0.85〜1.83(m、19H、(a)+(g)+(h))、3.37〜4.38(m、4H、(f))、5.07(q、2H、Jab=6.70Hz、(b))、5.48(s、1H、(e))、8.08(d、2H、Jcd=6.40Hz、(c))、9.75(d、2H、Jcd=6.40Hz、(d))
FT−IR(CHCl 3 、cm -1 );
2920、2840(C−H伸縮振動)、1650(C=C、C=N伸縮振動)、1085(C−O−C伸縮振動)、890(ピリジン環C−H面外変角振動)
【0122】
(実施例2)
【0123】
【化47】
Figure 0003763495
【0124】
1 H−NMR(CDCl 3 、δ);
0.87〜1.85(m、25H、(a)+(g)+(h))、3.38〜4.40(m、4H、(f))、5.12(q、2H、Jab=6.70Hz、(b))、5.58(s、1H、(e))、8.12(d、2H、Jcd=6.40Hz、(c))、9.78(d、2H、Jcd=6.40Hz、(d))
FT−IR(CHCl 3 、cm -1 );
2925、2870(C−H伸縮振動)、1655(C=C、C=N伸縮振動)、1095(C−O−C伸縮振動)、890(ピリジン環C−H面外変角振動)
【0125】
(実施例3)
【0126】
【化48】
Figure 0003763495
【0127】
H−NMR(CDCl 、δ);
0.91〜1.89(m、23H、(a)+(g)+(h))、3.48〜4.53(m、4H、(f))、5.24(q、2H、Jab=6.70Hz、(b))、5.53(s、1H、(e))、8.33(d、2H、Jcd=6.40Hz、(c))、9.94(d、2H、Jcd=6.40Hz、(d))
FT−IR(CHCl 、cm −1 );
2950、2875(C−H伸縮振動)、1660(C=C、C=N伸縮振動)、1100(C−O−C伸縮振動)、900(ピリジン環C−H面外変角振動)
【0128】
(実施例4)
【0129】
【化49】
Figure 0003763495
【0130】
1 H−NMR(CDCl 3 、δ);
0.96〜1.93(m、27H、(a)+(g)+(h))、3.47〜4.49(m、4H、(f))、5.22(q、2H、Jab=6.70Hz、(b))、5.72(s、1H、(e))、8.28(d、2H、Jcd=6.40Hz、(c))、9.91(d、2H、Jcd=6.40Hz、(d))
FT−IR(CHCl 3 、cm -1 );
2920、2850(C−H伸縮振動)、1642(C=C、C=N伸縮振動)、1080(C−O−C伸縮振動)、880(ピリジン環C−H面外変角振動)
【0131】
次に、実施例1〜実施例4で得られた一般式(I)で示される化合物の相転移温度の測定結果を下記の表7に示す。
【0132】
【表7】
Figure 0003763495
【0133】
表7において、実施例1のR=n−C715の化合物はスメクチックA液晶相を示さないが、これはスメクチック液晶相を示すためにはアルキル基の長さがある程度以上長いことが必要であるためである。しかし、この化合物を混合液晶系に混合して用いる場合には、その化合物が液晶相を単独で持たない場合でも分子の形状が同様の場合には混合系ではスメクチック液晶相を示すことができ液晶材料として使用可能である。
【0134】
実施例5
第1工程〜第3工程
実施例2と同様にして、4−(5−デシル−1,3−ジオキサ−2−イル)ピリジン化合物を合成した。
【0135】
第4工程
100mlの褐色アンプルビンに、第3工程で得られた4−(5−デシル−1,3−ジオキサ−2−イル)ピリジン0.46g(1.51mモル)と、(S)−(+)−1−プロモ−2−メチルブタン2.27g(15mモル)を特級アセトニトリル30mlに溶解させた溶液を仕込み、常法に従って真空と窒素置換を3回繰り返して空気を追い出した後に封管した。60℃の恒温オーブン中で、3日間加熱反応させた。アンプルを冷却後開封し、アセトニトリルを減圧除去し、ヘキサン30ml、ジエチルエーテル30mlの混合溶液で再沈殿させ約1日撹拌洗浄し、不溶物を得た後、真空乾燥し、融点51℃の白色結晶を0.69g得た。分析の結果、生成物は、N−(S)−(+)−2−メチルブチル−4−(5−デシル−1,3−ジオキサ−2−イル)ピリジウムブロマイドで、収率は100%であった。
【0136】
【化50】
Figure 0003763495
【0137】
H−NMR(CDCl 、δ);
0.81〜1.74(m、31H、(a)+(g)+(h))、3.43〜4.44(m、4H、(f))、4.94(q、2H、Jab=6.70Hz、(b))、5.66(s、1H、(e))、8.19(d、2H、Jcd=6.40Hz、(c))、9.69(d、2H、Jcd=6.40Hz、(d))
FT−IR(CHCl 、cm −1 );
2930、2850(C−H伸縮振動)、2250(ピリジウム)、1648(C=C、C=N伸縮振動)、1090(C−O−C伸縮振動)、880(ピリジン環C−H面外変角振動)
【0138】
実施例6
第1工程〜第3工程
実施例1の出発原料のRBr(RはC15)の代わりに、C1837Brを用いて、実施例1の第1工程〜第3工程と同様の方法を行い、4−(5−オクタデシル−1,3−ジオキサ−2−イル)ピリジン化合物を合成した。収量は4.6g、収率は65%、性状は白色結晶、融点は88℃であった。
【0139】
第4工程
実施例5と同様にして、N−(S)−(+)−2−メチルブチル−4−(5−オクタデシル−1,3−ジオキサ−2−イル)ピリジウムブロマイドを合成した。収量は0.86g、収率は100%、性状は白色結晶、融点は65℃であった。
【0140】
【化51】
Figure 0003763495
【0141】
H−NMR(CDCl 、δ);
0.88〜1.79(m、47H、(a)+(g)+(h))、3.43〜4.45(m、4H、(f))、4.95(q、2H、Jab=6.70Hz、(b))、5.64(s、1H、(e))、8.17(d、2H、Jcd=6.40Hz、(c))、9.55(d、2H、Jcd=6.40Hz、(d))
FT−IR(CHCl 、cm −1 );
2940、2870(C−H伸縮振動)、2280(ピリジウム)、1658(C=C、C=N伸縮振動)、1110(C−O−C伸縮振動)、895(ピリジン環C−H面外変角振動)
【0142】
次に、実施例5および実施例6で得られた一般式(XI)で示される化合物の相転移温度の測定結果を下記の表8に示す。
【0143】
【表8】
Figure 0003763495
【0144】
表8において、実施例5及び6は、スメクティック液晶分子に光学活性な不斉炭素原子(カイラル基)を導入したもので、カイラルスメクティック液晶相を示すことができ、液晶材料として使用可能である。
【0145】
【発明の効果】
以上説明した様に、本発明により、新規なピリジニウム型イオン性化合物誘導体が提供でき、この化合物はスメクチックA相の液晶性を示すサーモトロピック液晶物質として有用性が期待できるものである。
【0146】
また、本発明により、新規なピリジニウム型イオン性光学活性化合物誘導体が提供でき、この化合物はスメクティック液晶分子に光学活性なカイラル基を導入したカイラルスメクティック相の液晶性を示すサーモトロピック液晶物質として強誘電性を有し有用性が期待できるものである。
また、本発明に係る製造方法によれば、このピリジニウム型イオン性化合物誘導体およびピリジニウム型イオン性光学活性化合物誘導体を工業的に有利に得ることができる。

Claims (7)

  1. 下記の一般式(I)
    Figure 0003763495
    (式中、R1 、R2 は同種又は異種の炭素数1〜22のアルキル基、Xはハロゲン原子を表わす)
    で示されるl,3−ジオキサン環の基本構造をもつピリジニウム型イオン性化合物誘導体。
  2. 一般式(1)において、R1 は炭素数9〜11のアルキル基、R2 はエチル基、Xはブロム原子である請求項1記載のピリジニウム型イオン性化合物誘導体。
  3. 下記の第1工程乃至第4工程からなることを特徴とする請求項1記載のl,3−ジオキサン環の基本構造をもつピリジニウム型イオン性化合物誘導体の製造方法。
    (a)式:R1 X(式中、R1 、Xは前記と同義である)で示される化合物と、式
    Figure 0003763495
    (式中、R3 は炭素数1〜3の低級アルキル基を表わす)で示される化合物を反応させて、一般式(II)
    Figure 0003763495
    (式中、R、R3 は前記と同義である)で示される化合物を合成する第1工程、
    (b)前記第1工程で得られた一般式(II)で示される化合物を還元して一般式(III)
    Figure 0003763495
    (式中、R1 は前記と同義である)で示される化合物を合成する第2工程、
    (c)前記第2工程で得られた一般式(III)で示される化合物とピリジン−4−アルデヒドとを反応させて、一般式(IV)
    Figure 0003763495
    (式中、R1 は前記と同義である)で示される化合物を合成する第3工程、
    (d)前記第3工程で得られた一般式(IV)で示される化合物と式:R2 X(式中、R2、Xは前記と同義である)で示される化合物とを反応させて、一般式(I)
    Figure 0003763495
    (式中、R1 、R2 は前記と同義である)で示されるl,3−ジオキサン環の基本構造をもつピリジニウム型イオン性化合物誘導体を合成する第4工程。
  4. 請求項1又は2記載のピリジニウム型イオン性化合物誘導体を有効成分とする液晶物質。
  5. 下記の一般式(XI)
    Figure 0003763495
    (式中、R1は同種又は異種の炭素数1〜22のアルキル基、Xはハロゲン原子を表わす。R4は下記の式(XII)で示される光学活性基を表わす。
    Figure 0003763495
    但し、Yは炭素数1〜4のアルキル基、mは0〜10の整数、nは1〜9の整数、*は不斉炭素原子を表わす。)
    で示されるl,3−ジオキサン環の基本構造をもつピリジニウム型イオン性光学活性化合物誘導体。
  6. 下記の第1工程乃至第4工程からなることを特徴とする請求項5記載のl,3−ジオキサン環の基本構造をもつピリジニウム型イオン性光学活性化合物誘導体の製造方法。
    (a)式:RX(式中、R、Xは前記と同義である)で示される化合物と、式
    Figure 0003763495
    (式中、Rは炭素数1〜3の低級アルキル基を表わす)で示される化合物を反応させて、一般式(II)
    Figure 0003763495
    (式中、R、Rは前記と同義である)で示される化合物を合成する第1工程、
    (b)前記第1工程で得られた一般式(II)で示される化合物を還元して一般式(III)
    Figure 0003763495
    (式中、Rは前記と同義である)で示される化合物を合成する第2工程、
    (c)前記第2工程で得られた一般式(III)で示される化合物とピリジン−4−アルデヒドとを反応させて、一般式(IV)
    Figure 0003763495
    (式中、Rは前記と同義である)で示される化合物を合成する第3工程、
    (d′)前記第3工程で得られた一般式(IV)で示される化合物と式:R4X(式中、R4、Xは前記と同義である)で示される化合物とを反応させて、一般式(XI)
    Figure 0003763495
    (式中、R1、R4は前記と同義である)で示されるl,3−ジオキサン環の基本構造をもつピリジニウム型イオン性光学活性化合物誘導体を合成する第4工程。
  7. 請求項5記載のピリジニウム型イオン性光学活性化合物誘導体を有効成分とする液晶物質。
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