JP4007462B2 - ピリジニウム型イオン性化合物誘導体、その製造方法及び液晶物質 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なl,3−ジチアン環またはl,3−オキサチアン環の基本構造をもつピリジニウム型イオン性化合物誘導体、及びそれらの製造方法、更に言えば熱、電気光学効果を利用する液晶素子をはじめとする液晶表示材料として有用な液晶物質に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
液晶物質には、相転移を与える手段に基づいて、サーモトロピック液晶(温度転移型液晶)とリオトロピック液晶(濃度転移型液晶)に分類されるが、またこれらの液晶は分子配列的に見ると、スメクチック液晶、ネマチック液晶及びコレステリック液晶の三種類に分類される。
【0003】
現在、液晶ディスプレーなどの電子材料として実用に供されている液晶物質はサーモトロピック液晶であり、下記の式(12)
【0004】
【化17】
(式中、Aはアルキル基を表わす)
で示されるシアノフェニルジオキサン系液晶化合物や、下記の一般式(13)
【0005】
【化18】
(式中、Bはアルキル基またはアラルキル基を表わす)
で示されるシアノフェニルシクロヘキサン系液晶化合物等が知られている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記のシアノフェニルジオキサン系液晶化合物やシアノフェニルシクロヘキサン系液晶化合物は、その一例として下記の化学式(C)に示す様に、分子末端にシアノ基を持ち、シアノ基による電子吸引性により、分子長軸方向の誘電率が大きくなっており、正の誘電率異方性を有する。
【0007】
【化19】
【0008】
液晶化合物は、その液晶状態を示す温度範囲を−40℃〜+60℃程度を実用上必要としており、その実現のために、多くの液晶化合物、例えば10種類程度の液晶化合物の混合系の液晶組成物として実用化されている。この混合系の液晶化合物に電圧をかけて駆動させるために、その液晶組成物のおよそ20%程度の混合比で誘電率異方性が正の液晶化合物が含有されている。この誘電率異方性が正の液晶化合物として上記のシアノフェニル系液晶化合物が用いられている。
【0009】
この混合系の液晶組成物の駆動速度は誘電率異方性の大きさに比例するので、分子長軸方向の電荷の偏りの大きな化合物が望まれており、上記のシアノフェニル系液晶化合物よりも分子長軸方向の電荷の偏りの大きな液晶化合物が望まれている。
【0010】
本発明者は、叙上の点に鑑み鋭意研究を重ねたところ、イオン性のN+ が分子内に存在することにより、分子長軸方向の電荷の偏りが極めて大きくなることを知見し、電場などの外力により大きなトルクを持つことが可能な、新規な化合物であるl,3−ジチアン環またはl,3−オキサチアン環の基本骨格構造を有するピリジニウム型イオン性化合物誘導体を合成し、本発明を完成した。
【0011】
本発明は、高機能性液晶材料として有望な新規化合物であるピリジニウム型イオン性化合物誘導体、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明が提供しようとする第一の新規化合物は、下記の一般式(1)
【0013】
【化20】
【0014】
(式中、R1 は炭素数1〜22のアルキル基、R2 は炭素数1〜22のアルキル基又はアルケニル基、Xはハロゲン原子を表す)
で示されるl,3−ジチアン環の基本構造をもつピリジニウム型イオン性化合物誘導体に係るものである。
【0015】
また、本発明は、下記の第1工程乃至第6工程からなることを特徴とする上記の一般式(1)で示されるl,3−ジチアン環の基本構造をもつピリジニウム型イオン性化合物誘導体の製造方法に係るものである。
【0016】
(a)式:R1 X(式中、R1 、Xは前記と同義である)で示される化合物と、式(2)
【0017】
【化21】
(式中、R3 は炭素数1〜3の低級アルキル基を表わす)で示される化合物を反応させて、式(3)
【0018】
【化22】
(式中、R1 、R3 は前記と同義である)で示される化合物を合成する第1工程、
【0019】
(b)前記第1工程で得られた式(3)で示される化合物を還元して式(4)
【0020】
【化23】
(式中、R1 は前記と同義である)で示される化合物を合成する第2工程、
【0021】
(c)前記第2工程で得られた式(4)で示される化合物とハロゲン化リンと反応させて、式(5)
【0022】
【化24】
(式中、R1 、Xは前記と同義である)で示される化合物を合成する第3工程、
【0023】
(d)前記第3工程で得られた式(5)で示される化合物とチオ尿素と反応させて、式(6)
【0024】
【化25】
(式中R1 は前記と同義である)で示される化合物を合成する第4工程、
【0025】
(e)前記第4工程で得られた式(6)で示される化合物とピリジン−4−アルデヒドとを反応させて、式(7)
【0026】
【化26】
(式中、R1 は前記と同義である)で示される化合物を合成する第5工程、
【0027】
(f)前記第5工程で得られた式(7)で示される化合物と式:R2 X(式中、R2 、Xは前記と同義である)で示される化合物とを反応させて、一般式(1)
【0028】
【化27】
(式中、R1 、R2 は前記と同義である)で示されるl,3−ジチアン環の基本構造をもつピリジニウム型イオン性化合物誘導体を合成する第6工程。
【0029】
本発明が提供しようとする第二の新規化合物は、下記の一般式(8)
【0030】
【化28】
【0031】
(式中、R1 は炭素数1〜22のアルキル基、R2 は炭素数1〜22のアルキル基又はアルケニル基、Xはハロゲン原子を表す)
で示されるl,3−オキサチアン環の基本構造をもつピリジニウム型イオン性化合物誘導体に係るものである。
【0032】
また、本発明は、下記の第1工程乃至第6工程からなることを特徴とする上記の一般式(8)で示されるl,3−オキサチアン環の基本構造をもつピリジニウム型イオン性化合物誘導体の製造方法に係るものである。
【0033】
(a′)式:R1 X(式中、R1 、Xは前記と同義である)で示される化合物と、式(2)
【0034】
【化29】
(式中、R3 は炭素数1〜3の低級アルキル基を表わす)で示される化合物を反応させて、式(3)
【0035】
【化30】
(式中、R1 、R3 は前記と同義である)で示される化合物を合成する第1工程、
【0036】
(b′)前記第1工程で得られた式(3)で示される化合物を還元して式(4)
【0037】
【化31】
(式中、R1 は前記と同義である)で示される化合物を合成する第2工程、
【0038】
(c′)前記第2工程で得られた式(4)で示される化合物とハロゲン化リンと反応させて、式(9)
【0039】
【化32】
(式中、R1 、Xは前記と同義である)で示される化合物を合成する第3工程
【0040】
(d′)前記第3工程で得られた式(9)で示される化合物とチオ尿素と反応させて、式(10)
【0041】
【化33】
(式中R1 は前記と同義である)で示される化合物を合成する第4工程、
【0042】
(e′)前記第4工程で得られた式(10)で示される化合物とピリジン−4−アルデヒドとを反応させて、式(11)
【0043】
【化34】
(式中、R1 は前記と同義である)で示される化合物を合成する第5工程、
【0044】
(f′)前記第5工程で得られた式(11)で示される化合物と式:R2 X(式中、R2 、Xは前記と同義である)で示される化合物とを反応させて、一般式(8)
【0045】
【化35】
(式中、R1 、R2 は前記と同義である)で示されるl,3−オキサチアン環の基本構造をもつピリジニウム型イオン性化合物誘導体を合成する第6工程。
【0046】
さらに、本発明は、上記の一般式(1)で示されるl,3−ジチアン環の基本構造をもつピリジニウム型イオン性化合物誘導体、および一般式(8)で示されるl,3−オキサチアン環の基本構造をもつピリジニウム型イオン性化合物誘導体を有効成分とする液晶物質に係るものである。
【0047】
【発明の実施の形態】
本発明が提供しようとする新規化合物は、下記の一般式(1)
【0048】
【化36】
(式中、R1 、R2 、Xは前記と同義である)
で示されるl,3−ジチアン環の基本構造をもつピリジニウム型イオン性化合物誘導体(以下、「一般式(1)で示される化合物」と記す)、および下記の一般式(8)
【0049】
【化37】
(式中、R1 、R2 、Xは前記と同義である)
で示されるl,3−オキサチアン環の基本構造をもつピリジニウム型イオン性化合物誘導体(以下、「一般式(8)で示される化合物」と記す)であることを構成上の特徴とする。
【0050】
また、本発明は、上記一般式(1)および一般式(8)で示される化合物を構成上の特徴とした高機能性液晶物質を提供する。
【0051】
本発明に係る一般式(1)および一般式(8)で示される化合物はサーモトロピック液晶性を示し、かつ分子配列が垂直層状を形成して配向する新規なスメクチックA相液晶物質である。
【0052】
一般式(1)および一般式(8)で示される化合物において、R1 は炭素数1〜22のアルキル基、R2 は炭素数1〜22のアルキル基又はアルケニル基を表す。
【0053】
R1 及びR2 のアルキル基は、前記の通り炭素数1〜22のアルキル基であり、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基の如き低級アルキル基からオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ドコシル基等の炭素数が22までの範囲にある直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられる。これらは、同種又は異種であってよい。
【0054】
また、R2 がアルケニル基の場合、例えばアリル基、3−ブテニル基、4−ペンテニル基、5−ヘキセニル基、6−ヘプテニル基、7−オクテニル基、11−ドデニル基等が挙げられる。
【0055】
これらのうち、R1 が炭素数8〜12、好ましくは10〜11の直鎖状アルキル基、R2 はエチル基、アリル基等が工業的に好ましい。
【0056】
また、一般式(1)および一般式(8)において、XはCl、Br又はIのハロゲン原子であるが、好ましくはCl又はBr、特にBrが好ましい。
【0057】
上記一般式(1)および一般式(8)で示される化合物において、R1 又はR2 のアルキル基が大きくなると、分子配列の規則性が良好になるけれども液晶体における粘性が大きくなる傾向があり、またCl塩よりBr塩の方が安定な液晶状態を形成し易い。
【0058】
また、上記一般式(1)および一般式(8)で示される化合物において、R2 がアリル基の場合、Nに結合するため、液晶相が現れる温度が低く、室温で液晶となる。これは、CH=CHの部分が、sp2 混成により平面上に存在することにより、分子間の相互作用を多少弱めていることによると考えられる。
【0059】
本発明に係る一般式(1)で示される化合物としては、例えば
【0060】
【化38】
N−エチル−4−(5−デシル−1,3−ジチアン−2−イル)ピリジニウムブロマイド、
N−アリル−4−(5−デシル−1,3−ジチアン−2−イル)ピリジニウムブロマイド、
N−エチル−4−(5−デシル−1,3−オキサチアン−2−イル)ピリジニウムブロマイド、
N−エチル−4−(5−ウンデシル−1,3−オキサチアン−2−イル)ピリジニウムブロマイド、
N−アリル−4−(5−デシル−1,3−オキサチアン−2−イル)ピリジニウムブロマイド、
【0061】
【化39】
N−エチル−4−(5−デシル−1,3−ジチアン−2−イル)ピリジニウムクロライド、
N−アリル−4−(5−デシル−1,3−ジチアン−2−イル)ピリジニウムクロライド、
N−エチル−4−(5−デシル−1,3−オキサチアン−2−イル)ピリジニウムクロライド、
N−エチル−4−(5−ウンデシル−1,3−オキサチアン−2−イル)ピリジニウムクロライド、
N−アリル−4−(5−デシル−1,3−オキサチアン−2−イル)ピリジニウムクロライド等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0062】
本発明の上記一般式(1)および一般式(8)で示される化合物は、下記の化学式(D)および(E)に示す様に、分子内にN+ を有することにより、分子長軸方向の電荷の偏りが極めて大きくなり、それを電場などの外力により駆動させると大きなトルクを持つ可能性のある新規化合物である。また、本化合物は、短軸方向にも同様にN+とBr-との間で電荷の偏りが大きいために、さらに強いトルクが生じる。
【0063】
【化40】
【0064】
具体的には、この一般式(1)および一般式(8)で示される化合物の電荷の偏りが大きいことは、プロトンNMRスペクトルにより、通常のシアノフェニル系液晶化合物と比較して明らかである。即ち、上記の本発明の一般式(1)および一般式(8)で示される化合物(D)および化合物(E)のaの位置の水素原子のプロトンNMRスペクトルの吸収位置は、前述の化学式(C)に示すシアノフェニル系液晶化合物のa′の位置の水素原子のプロトンNMRスペクトルの吸収位置より大きく低磁場にあり、このことはN+ による非常に大きな電子吸引が原因となっていると考えられる。具体的には、
【0065】
【数1】
a′の水素原子の吸収=7.6ppm
aの水素原子の吸収 =8.3ppmと9.7ppm
bの水素原子の吸収 =8.1ppmと9.8ppm
である。
【0066】
即ち、本発明の一般式(1)および一般式(8)で示される化合物は、分子長軸方向に非常に大きな電荷の偏りを持っているので、電場などの外力が働いた場合非常に大きなトルクを持つことが可能であり、その高機能性材料として有用性は非常に大きいものがある。
【0067】
次に、本発明が提供しようとする上記の一般式(1)および一般式(8)で示される化合物の製造方法は、下記の第1工程乃至第6工程による反応により行なわれる。
【0068】
一般式(1)で示される化合物の製造方法
(a)第1工程
下記の反応式(イ)
【0069】
【化41】
(式中、R1 、Xは前記と同義である。R3 は炭素数1〜3の低級アルキル基を表わす)
で示される反応により、R1Xで示される化合物と、式(2)で示される化合物を反応させて、式(3)で示される低級ジアルキルマロネイト化合物(3)を合成する第1工程、
【0070】
(b)第2工程
下記の反応式(ロ)
【0071】
【化42】
(式中、R1 、R3 は前記と同義である。)
で示される反応により、前記第1工程で得られた低級ジアルキルマロネイト化合物(3)を還元して、式(4)で示される2−アルキル−1,3−プロパンジオール化合物(4)を合成する第2工程、
【0072】
(c)第3工程
下記の反応式(ハ)
【0073】
【化43】
(式中、R1 、Xは前記と同義である。)
で示される反応により、前記第2工程で得られた2−アルキル−1,3−プロパンジオール化合物(4)とハロゲン化リン(PX3 )と反応させて、式(5)で示される化合物を合成する第3工程、
【0074】
(d)第4工程
下記の反応式(ニ)
【0075】
【化44】
(式中、R1 、Xは前記と同義である。)
で示される反応式により、前記式(5)で示される化合物とチオ尿素と反応させて、式(6)で示される化合物を合成する第4工程
【0076】
(e)第5工程
下記の反応式(ホ)
【0077】
【化45】
(式中、R1 は前記と同義である。)
で示される反応式により、前記(6)で示される化合物とピリジン−4−アルデヒドと反応させて、式(7)で示される化合物を合成する第5工程
【0078】
(f)第6工程
下記の反応式(ヘ)
【0079】
【化46】
(式中、R1 、R2 、Xは前記と同義である。)
で示される反応により、前記第5工程で得られた式(7)で示される化合物とハロゲン化化合物(R2X)と反応させて式(1)で表される化合物を合成する第6工程。
【0080】
一般式(8)で示される化合物の製造方法
(a′)第1工程
下記の反応式(イ)
【0081】
【化47】
(式中、R1、Xは前記と同義である。R3は炭素数1〜3の低級アルキル基を表わす)
で示される反応により、R1Xで示される化合物と、式(2)で示される化合物を反応させて、式(3)で示される低級ジアルキルマロネイト化合物(3)を合成する第1工程、
【0082】
(b′)第2工程
下記の反応式(ロ)
【0083】
【化48】
(式中、R1 、R3 は前記と同義である。)
で示される反応により、前記第1工程で得られた低級ジアルキルマロネイト化合物(3)を還元して、式(4)で示される2−アルキル−1,3−プロパンジオール化合物(4)を合成する第2工程、
【0084】
(c′)第3工程
下記の反応式(ハ′)
【0085】
【化49】
(式中、R1 、Xは前記と同義である。)
で示される反応により、前記第2工程で得られた2−アルキル−1,3−プロパンジオール化合物(4)とハロゲン化リン(PX3 )と反応させて、式(9)で示される化合物を合成する第3工程、
【0086】
(d′)第4工程
下記の反応式(ニ′)
【0087】
【化50】
(式中、R1 、Xは前記と同義である。)
で示される反応式により、前記式(9)で示される化合物とチオ尿素と反応させて、式(10)で示される化合物を合成する第4工程
【0088】
(e′)第5工程
下記の反応式(ホ′)
【0089】
【化51】
(式中、R1 は前記と同義である。)
で示される反応式により、前記(10)で示される化合物とピリジン−4−アルデヒドと反応させて、式(11)で示される化合物を合成する第5工程
【0090】
(f′)第6工程
下記の反応式(ヘ′)
【0091】
【化52】
(式中、R1 、R2 、Xは前記と同義である。)
で示される反応により、前記第5工程で得られた式(11)で示される化合物とハロゲン化化合物(R2X)と反応させて式(8)で表される化合物を合成する第6工程。
【0092】
以下に上記第1〜6工程について、さらに具体的に説明する。なお、一般式(1)および一般式(8)で示される化合物の製造方法は、いずれも下記に示す様な同様の方法で行なわれる。
【0093】
第1工程:
この第1工程は、上記の反応式(イ)に示すとおり、低級ジアルキル−2−アルキルマロネイトを合成する工程である。すなわち、ハロゲン化アルキルとマロン酸ジアルキルエステルを強塩基触媒の存在で反応させる。
【0094】
触媒としては、ナトリウム、カリウム又はリチウムの如きアルカリ金属のアルコラートが好ましい。
溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール等のアルコールなどが挙げられる。
【0095】
反応条件としては、反応温度は0〜100℃、好ましくは20〜50℃であり、反応時間は0.5〜50時間、好ましくは10〜20時間であり、還流することにより反応を行う。
反応後は、常法により中和、洗浄、抽出、及び脱水などの諸操作を経て中間体の低級ジアルキルマロネイト化合物(3)を得る。
【0096】
第2工程:
この第2工程は、上記の反応式(ロ)に示すとおり、2−アルキル−1,3−プロパンジオール化合物(4)の合成工程である。
すなわち、前記第1工程で得られた低級ジアルキルマロネイト化合物(3)を還元剤を含む溶媒中で還元処理を施し、2−アルキル1,3−プロパンジオール化合物(4)を合成する。
【0097】
還元剤としては、例えばAlH3 、LiAlH4 、LiAlH4 −AlCl3 、LiAlH(OCH3 )3 、NaH−LiAlH4 、NaBH4 、LiBH4 、BH3 等の如き金属水素化合物や、金属ナトリウム、カリウム、リチウム等のメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコラートが好ましい。
【0098】
また、溶媒としては、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール、ジフェニルエーテル、ジオキサン、トリオキサン、フラン、テトラヒドロフランの如きエーテル類や、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素がよい。
【0099】
反応条件としては、反応温度は0〜150℃、好ましくは20〜100℃であり、反応時間は0.5〜10時間、好ましくは2〜5時間であり、還流下で還元処理する。
還元剤は、その種類や反応条件によって変化するが、化合物(3)に対して等モル以上、好ましくは1.5〜3モルの範囲で用いるのが望ましい。
【0100】
反応終了後は、未反応の還元剤を酢酸エチル等のエステルにより分解し、還元剤より生じる金属はアンモニウム塩として水可溶性の塩としてエーテル層と分離する。その後、常法により、分離、精製及び脱水して化合物(4)を合成する。
【0101】
第3工程:
この第3工程は、上記の反応式(ハ)、(ハ′)で示すとおり、2−アルキル−1,3−ジハロゲン化プロパン(5)又は2−アルキル−3−ハロゲノ−1−プロパノール(9)の合成工程である。
すなわち、2−アルキル−1,3−プロパンジオール化合物(4)とハロゲン化リンとを溶媒存在下で反応する。
【0102】
化合物(4)とハロゲン化リンのモル比は、ハロゲン化リンのモル比を変えることにより、化合物(5)又は(9)を得ることができる。
溶媒としては、反応に不活性なものであれば特に限定されず、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、エーテル、石油エーテル、リグロイン等の炭化水素系溶媒等が挙げられる。
この時にピリジン等を添加して反応する。
【0103】
反応条件としては、温度は、通常20〜30℃、反応時間は0.5〜48時間、好ましくは10〜24時間である。
反応終了後は、常法により、分離、精製及び脱水処理を施して化合物(5)又は(9)を得る。
【0104】
第4工程:
この第4工程は、上記の反応式(ニ)又は(ニ′)で示すとおり、2−アルキル−1,3−プロパンジチオール(6)又は2−アルキル−3−メルカプト−1−プロパノール(10)の合成工程である。
すなわち、2−アルキル−1,3−ジハロゲン化プロパン(5)又は2−アルキル−3−ハロゲノ−1−プロパノール(9)とチオ尿素とを溶媒存在下で反応させる工程である。
【0105】
チオ尿素をトリエチレン等の溶媒に添加し、60〜70℃、窒素等の不活性ガス雰囲気下で溶解させ、次いで第3工程で得られた化合物(5)又は(9)を不活性ガス雰囲気下で、添加混合して反応する。反応温度は、通常70〜75℃、反応時間は、通常1〜24時間である。
反応終了後は、常法により、分離、精製及び脱水処理を施して化合物(6)又は(10)を得る。
【0106】
第5工程:
この第5工程は、上記の反応式(ホ)又は(ホ′)で示すとおり、4−(5−アルキル−1,3−ジチアン−2−イル)ピリジン(7)又は4−(5−アルキル−1,3−オキサチアン−2−イル)ピリジン(11)の合成工程である。
【0107】
すなわち、この工程では、前記第4工程で得られた2−アルキル−1,3−プロパンジチオール(6)又は2−アルキル−3−メルカプト−1−プロパノール(10)とピリジン−4−アルデヒドとをルイス酸の存在下で閉環反応処理をする。
【0108】
ルイス酸としては、p−トルエンスルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸等の芳香族スルホン酸、硫酸、塩酸、臭化水素酸、リン酸等の鉱酸等が挙げられる。
【0109】
化合物(6)又は(10)とピリジン−4−アルデヒドは、等モル付近の量的関係で反応させる。
溶媒としては、反応に不活性なものでれば特に制限されず、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、エーテル、石油エーテル、リグロイン等の炭化水素系溶媒等が挙げられる。
【0110】
反応条件としては、温度は使用する溶媒により異なるが還流する温度で行われ、反応時間は0.5〜20時間、好ましくは2〜10時間であり、還流しながら副生する水を共沸により除去しながら反応を進める。
反応終了後は、常法により、分離、精製及び脱水処理を施して化合物(7)又は(11)を得る。
【0111】
第6工程:
この第6工程は、上記の反応式(ヘ)、(ヘ′)で示すとおり、本発明に係る一般式(1)で示されるN−アルキル−4−(5−アルキル−1,3−ジチアン−2−イル)ピリジウムハロゲン(1)、又は一般式(8)で示されるN−アルキル−4−(5−アルキル−1,3−オキサチアン−2−イル)ピリジウムハロゲン(8)を合成する最終工程である。
【0112】
すなわち、この工程では、前記第5工程で得られた4−(5−アルキル−1,3−ジチアン−2−イル)ピリジン(7)又は4−(5−アルキル−1,3−オキサチアン−2−イル)ピリジン(11)とハロゲン化アルキルとの反応により、一般式(1)または一般式(8)で示される化合物のピリジニウムハライドを合成する。
【0113】
溶媒は、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチルニトリル等のニトリル化合物や、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコールの如き極性の大きな溶媒がよい。
【0114】
また、化合物(7)又は(11)に対してハロゲン化アルキルは、アルキル基の大きさや、Cl又はBrの違いによって、使用量は変化するけれども多くの場合、過剰に用い、好ましくは量論量よりも5〜20倍量が用いられる。
【0115】
この反応は窒素などによる不活性雰囲気で温度50〜150℃、好ましくは50〜100℃で、反応時間は1〜30時間、好ましくは5〜24時間で還流を施して反応させる。
反応終了後は、常法により、分離、精製及び乾燥して一般式(1)または一般式(8)で示される化合物の目的物質を得る。
【0116】
本発明に係る一般式(1)または一般式(8)で示される新規な液晶性化合物の構造的特徴は、極性部として1,3−ジチアン環または1,3−オキサチアン環に連絡したピリジン環を形成する正電荷を帯びた窒素原子、非極性部として二本のアルキル基を有していることである。
【0117】
かかる特徴的分子構造のゆえに、従来知られている1,3−ジオキサン環に連結するシアノフェニル系液晶性物質よりも液晶特性に優れたものとなっている。なお、かかる化合物は抗菌性を示し、層間移動触媒として作用するなど高機能性を有する。
【0118】
また、本発明に係る製造方法は6つの工程を経ることにより、工業的に高純度、高収率で上記一般式(1)または一般式(8)で示される化合物を有利に得ることができる。
【0119】
【実施例】
以下、実施例により本発明につき具体的に説明するが、これらに限定されるものではない。
【0120】
実施例1,2
第1工程
下記の反応により、ジエチル−2−デシルマロネイトを合成した。
【0121】
【化53】
【0122】
500ml三角フラスコに150mlのエタノールを入れ、金属ナトリウム(0.3mol)を溶解後、ジエチルマロン酸(0.3mol)を加え、冷却後、デシルブロマイド(0.3mol)を加える。エチレングリコール浴中30℃で18時間還流する。溶媒を減圧除去後、ジエチルエーテル(300ml)を加え分液漏斗を用いて冷希塩酸300ml(30ml/300ml)、続いて冷蒸留水100mlで洗浄する。エーテル層を得た後、水層はジエチルエーテル100mlを加えて再抽出する。分液によって得たジエチルエーテル溶液は無水硫酸ナトリウムで約1日脱水する。ろ過し、ジエチルエーテルを減圧除去後、残渣を減圧蒸留してジエチル−2−デシルマロネイトを得た。
【0123】
このときのデシルブロマイドを用いた浴温及び留出温度等について下記の表1に示す。
【0124】
【表1】
【0125】
第2工程
下記の反応により、2−デシル−1,3−プロパンジオールを合成した。
【0126】
【化54】
【0127】
500mlの三つ口丸底フラスコに100mlのジエチルエーテルを入れ、リチウムアルミニウムハイドライドを(2倍量mol数)入れ、氷冷しながら第1工程で得られたジエチル−2−デシルマロネイト(0.23mol)をジエチルエーテル100mlに溶解し滴下漏斗でゆっくり滴下する。その後、エチレングリコール浴中で40℃で、4時間還流する。反応後、氷冷下で酢酸エチル(0.3mol)をジエチルエーテル100mlに溶解させ、滴下漏斗でゆっくりと滴下する。次に飽和アンモニウム水溶液50mlを、滴下漏斗で一滴ずつゆっくりと加える。その後、フラスコをジエチルエーテルで満たし、室温で3時間撹拌する。ろ過し、残渣を300mlのジエチルエーテルに溶かし24時間撹拌する。合わせたジエチルエーテルに無水硫酸ナトリウムを加え約1日脱水した後、ジエチルエーテルを減圧除去し、残渣として2−デシル−1,3−プロパンジオールを得た。この結果を表2に示す。
【0128】
【表2】
【0129】
第3工程
下記の反応により、2−デシル−1,3−ジブロモプロパンを合成した。
【0130】
【化55】
【0131】
500mlの三口丸底フラスコに、2−デシル−1,3−プロパンジオール43.3g(0.2mol)を脱水精製したベンゼン200mlに溶解し、ピリジン0.79g(0.01mol)を加え、次に三臭化りん54.1g(0.2mol)をベンゼンに溶解した溶液を20〜30℃を保ちながら24時間で滴下反応させた。
【0132】
反応後、反応液を氷水300ml中に注ぎ込み、ジエチルエーテル300mlで2回抽出した。得られた有機層は、無水硫酸ナトリウムで一昼夜脱水し、これを吸引濾過した後に、エバポレーターで溶媒を濃縮除去することにより、無色透明な油状物(2−デシル−1,3−ジブロモプロパン)40.0gを得た。2−デシル−1,3−プロパンジオールからの収率は、58.4%であった。
【0133】
第4工程
下記の反応により、2−デシル−1,3−プロパンジチオールを合成した。
【0134】
【化56】
【0135】
300mlの三口丸底フラスコに、チオ尿素28.9g(0.2mol)をトリエチレングリコール50mlに添加し、窒素気流下で60〜70℃で溶解させ、2−デシル−1,3−ジブロモプロパン34.2g(0.1mol)を、窒素気流下で加えて70〜75℃で18時間撹拌した。その後、テトラエチレンペンタミン9.5g(0.05mol)添加して70〜75℃で2時間撹拌した。
【0136】
反応後、反応液をよく氷冷し、冷希塩酸水溶液(濃塩酸25mlを300mlの純水に溶解した水溶液)および300mlのジエチルエーテルでよく抽出洗浄し、得られたエーテル層を無水硫酸ナトリウムで一昼夜脱水した。これを吸引濾過した後、エバポレーターで溶媒を濃縮除去し、残さをカラムクロマトグラフィー(ワコーゲルC−300、展開溶媒ヘキサン)で精製し、黄色透明な油状物(2−デシル−1,3−プロパンジチオール)14.1gを得た。2−デシル−1,3−ジブロモプロパンからの収率は、56.9%であった。
【0137】
第5工程
下記の反応により、4−(5−デシル−1,3−ジチアン−2−イル)ピリジンを合成した。
【0138】
【化57】
【0139】
100mlの二つ口丸底フラスコに、2−デシル−1,3−プロパンジチール12.4g(0.05mol)、ピリジン−4−アルデヒド5.35g(0.05mol)を脱水精製したベンゼンに溶解させ、p−トルエンスルホン酸を用いてpHを1以下にした後、ディーン−スターク−トラップ(Dean−Stark−Trap)を用いて18時間還流させ、脱水反応させた。
【0140】
還流後、ジエチルエーテル300mlに溶解させ、冷却した炭酸水素ナトリウム水溶液(炭酸水素ナトリウム25gを純水300mlに溶解させた)で洗浄した。得られたエーテル層をエバポレーターで溶媒を濃縮除去し、さらに、ヘキサンで再結精製を3〜5回行い、トランス異性体である融点78℃の白色結晶(4−(5−デシル−1,3−ジチアン−2−イル)ピリジン)7.20gを得た。2−デシル−1,3−プロパンジチールからの収率は、42.5%であった。
【0141】
第6工程
下記の反応により、N−アルキル−4−(5−デシル−1,3−ジチアン−2−イル)ピリジウムブロマイドを合成した。
【0142】
【化58】
(式中、Rは−C2 H5 、−CH2 CH=CH2 を示す。)
【0143】
200mlの三口丸底フラスコに、第5工程で得られた4−(5−デシル−1,3−ジチアン−2−イル)ピリジン3.39g(0.01mol)とエチルブロマイド、アリルブロマイドをそれぞれ10倍モルを、特級アセトニトリル20mlに溶解させ、窒素気流下で24時間還流させた。
【0144】
還流後、エバポレーターで溶媒を濃縮除去し、残さを少量のクロロホルムに溶解後、多量のヘキサン溶媒中で再沈殿させた。目的物は2〜3回の再沈殿及び少量のアセトニトリルまたはクロロホルムで再結精製し、N−アルキル−4−(5−デシル−1,3−ジチアン−2−イル)ピリジウムブロマイドを得た。
【0145】
得られた結果につき表3に示す。
【0146】
【表3】
【0147】
次に、実施例1で得られた化合物の1 H−NMR(CDCl3 、δ)、FT−IR(CHCl3 、cm-1)を下記に示す。
【0148】
実施例1の化合物
【0149】
【化59】
【0150】
1 H−NMR(CDCl 3 、δ);
0.80〜2.24(m、25H、(a)+(g)+(h))、2.69〜2.96(m、4H、(f))、5.13(q、2H、Jab=6.5Hz、(b))、5.55(s、1H、(e))、8.26(d、2H、Jcd=6.3Hz、(c))、9.74(d、2H、Jcd=6.3Hz、(d))
FT−IR(CHCl 3 、cm -1 );
2910、2840(C−H伸縮振動)、2240(ピリジウム)、1634(C=C、C=N伸縮振動)、882(ピリジン環C−H面外変角振動)
【0151】
実施例3〜5
第1工程〜第2工程
実施例1と同様にして、下記の構造式に示す2−アルキル−1,3−プロパンジオール(2−デシル−1,3−プロパンジオール、2−ウンデシル−1,3−プロパンジオール)を合成した。
【0152】
【化60】
(式中、Rは−C10H21または−C11H23を示す。)
【0153】
第3工程
下記の反応により、2−アルキル−3−ブロモ−1−プロパノールを合成した。
【0154】
【化61】
(式中、Rは−C10H21または−C11H23を示す。)
【0155】
500mlの三口丸底フラスコに、第2工程で得られた2−アルキル−1,3−プロパンジオールをそれぞれ0.2molづつ、脱水精製したベンゼン150mlに溶解し、ピリジン0.79g(0.01mol)を加え、次に三臭化りん27.1g(0.1mol)をベンゼンに溶解した溶液を20〜30℃を保ちながら24時間で滴下反応させた。
【0156】
反応後、反応液を氷水300ml中に注ぎ込み、ジエチルエーテル300mlで2回抽出した。得られた有機層は、無水硫酸ナトリウムで一昼夜脱水し、これを吸引濾過した後に、エバポレーターで溶媒を濃縮除去することにより目的物の2−アルキル−3−ブロモ−1−プロパノールを得た。この結果を表4に示す。
【0157】
【表4】
【0158】
第4工程
下記の反応により、2−アルキル−3−メルカプト−1−プロパノールを合成した。
【0159】
【化62】
(式中、Rは、−C10H21または−C11H23を示す。)
【0160】
300mlの三口丸底フラスコに、チオ尿素28.9g(0.2mol)をトリエチレングリコール50mlに添加し、窒素気流下で60〜70℃で溶解させ、第3工程で得られた2−アルキル−3−ブロモ−1−プロパノールをそれぞれ0.1モルづつ、窒素気流下で加えて70〜75℃で18時間撹拌した。その後、テトラエチレンペンタミン9.5g(0.05mol)添加して70〜75℃で2時間撹拌した。
【0161】
反応後、反応液をよく氷冷し、冷希塩酸水溶液(濃塩酸25mlを300mlの純水に溶解した水溶液)および300mlのジエチルエーテルでよく抽出洗浄し、得られたエーテル層を無水硫酸ナトリウムで一昼夜脱水した。これを吸引濾過した後、エバポレーターで溶媒を濃縮除去し、残さをカラムクロマトグラフィー(ワコーゲルC−300、展開溶媒ヘキサン)で精製し、2−アルキル−3−メルカプト−1−プロパノールを得た。この結果を表5に示す。
【0162】
【表5】
【0163】
第5工程
下記の反応により、4−(5−アルキル−1,3−オキサチアン−2−イル)ピリジンを合成した。
【0164】
【化63】
(式中、Rは、−C10H21または−C11H23を示す。)
【0165】
200mlの二つ口丸底フラスコに、第4工程で得られた2−アルキル−3−メルカプト−1−プロパノールをそれぞれ0.1モルづつ、ピリジン−4−アルデヒド10.7g(0.1mol)を脱水精製したベンゼンに溶解させ、p−トルエンスルホン酸を用いてpHを1以下にした後、Dean−Stark−Trapを用いて18時間還流させ、脱水反応させた。
【0166】
還流後、ジエチルエーテル300mlに溶解させ、冷却した炭酸水素ナトリウム水溶液(炭酸水素ナトリウム25gを純水300mlに溶解させた)で洗浄した。得られたエーテル層をエバポレーターで溶媒を濃縮除去し、さらに、ヘキサンで再結精製を3〜5回行い、トランス異性体を得た。得られた4−(5−アルキル−1,3−オキサチアン−2−イル)ピリジンの結果を表6に示す。
【0167】
【表6】
【0168】
第6工程
下記の反応により、N−アルキル−4−(5−アルキル−1,3−オキサチアン−2−イル)ピリジウムブロマイドを合成した。
【0169】
【化64】
(式中、Rは−C10H21または−C11H23、R′は−C2 H5 または−CH2 CH=CH2 を示す。)
【0170】
200mlの三口丸底フラスコに、第5工程で得られた4−(5−アルキル−1,3−オキサチアン−2−イル)ピリジンそれぞれ0.01モルづつ、とエチルブロマイド、アリルブロマイドをそれぞれ10倍モルを、特級アセトニトリル20mlに溶解させ、窒素気流下で24時間還流させた。
【0171】
還流後、エバポレーターで溶媒を濃縮除去し、残さを少量のクロロホルムに溶解後、多量のヘキサン溶媒中で再沈殿させた。目的物は2〜3回の再沈殿及び少量のアセトニトリルまたはクロロホルムで再結精製した。得られたN−アルキル−4−(5−アルキル−1,3−オキサチアン−2−イル)ピリジウムブロマイドの結果を表7に示す。
【0172】
【表7】
【0173】
次に、実施例4で得られた化合物の1 H−NMR(CDCl3 、δ)、FT−IR(CHCl3 、cm-1)を下記に示す。
【0174】
実施例4の化合物
【0175】
【化65】
【0176】
1 H−NMR(CDCl 3 、δ);
0.79〜2.29(m、27H、(a)+(g)+(h))、2.86〜3.03(m、2H、(f))、3.28〜3.67(m、1H、(I))、4.14〜4.42(m、1H、(j))、5.12(q、2H、Jab=6.7Hz、(b))、6.18(s、1H、(e))、8.14(d、2H、Jcd=6.4Hz、(c))、9.77(d、2H、Jcd=6.4Hz、(d))
FT−IR(CHCl 3 、cm -1 );
2945、2880(C−H伸縮振動)、2276(ピリジウム)、1654(C=C、C=N伸縮振動)、1090(C−O−C伸縮振動)、910(ピリジン環C−H面外変角振動)
【0177】
次に、実施例1〜実施例5で得られた化合物の相転移温度の測定結果を下記の表8および表9に示す。
【0178】
【表8】
【0179】
【表9】
【0180】
【発明の効果】
以上説明した様に、本発明により、新規なピリジニウム型イオン性化合物誘導体が提供でき、この化合物はスメクチックA相の液晶性を示すサーモトロピック液晶物質として有用性が期待できるものである。
また、本発明に係る製造方法によれば、このピリジニウム型イオン性化合物誘導体を工業的に有利に得ることができる。
Claims (8)
- 一般式(1)において、R1 は炭素数9〜11のアルキル基、R2 はエチル基又はアリル基、Xはブロム原子である請求項1記載のピリジニウム型イオン性化合物誘導体。
- 下記の第1工程乃至第6工程からなることを特徴とする請求項1記載のl,3−ジチアン環の基本構造をもつピリジニウム型イオン性化合物誘導体の製造方法。
(a)式:R1 X(式中、R1 、Xは前記と同義である)で示される化合物と、式(2)
(b)前記第1工程で得られた式(3)で示される化合物を還元して式(4)
(c)前記第2工程で得られた式(4)で示される化合物とハロゲン化リンと反応させて、式(5)
(d)前記第3工程で得られた式(5)で示される化合物とチオ尿素と反応させて、式(6)
(e)前記第4工程で得られた式(6)で示される化合物とピリジン−4−アルデヒドとを反応させて、式(7)
(f)前記第5工程で得られた式(7)で示される化合物と式:R2 X(式中、R2 、Xは前記と同義である)で示される化合物とを反応させて、一般式(1)
- 請求項1又は2記載のピリジニウム型イオン性化合物誘導体を有効成分とする液晶物質。
- 一般式(8)において、R1 は炭素数9〜11のアルキル基、R2 はエチル基又はアリル基、Xはブロム原子である請求項5記載のピリジニウム型イオン性化合物誘導体。
- 下記の第1工程乃至第6工程からなることを特徴とする請求項5記載のl,3−オキサチアン環の基本構造をもつピリジニウム型イオン性化合物誘導体の製造方法。
(a′)式:R1 X(式中、R1 、Xは前記と同義である)で示される化合物と、式(2)
(b′)前記第1工程で得られた式(3)で示される化合物を還元して式(4)
(c′)前記第2工程で得られた式(4)で示される化合物とハロゲン化リンと反応させて、式(9)
(d′)前記第3工程で得られた式(9)で示される化合物とチオ尿素と反応させて、式(10)
(e′)前記第4工程で得られた式(10)で示される化合物とピリジン−4−アルデヒドとを反応させて、式(11)
(f′)前記第5工程で得られた式(11)で示される化合物と式:R2 X(式中、R2 、Xは前記と同義である)で示される化合物とを反応させて、一般式(8)
- 請求項5又は6記載のピリジニウム型イオン性化合物誘導体を有効成分とする液晶物質。
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