JP3762474B2 - ポリ塩素化アルカンの製造方法 - Google Patents

ポリ塩素化アルカンの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリ塩素化アルカンの製造方法、詳しくはオレフィンとトリクロロメチル基を有する化合物とをアミンの存在下に反応させる、一般式
X−(A)n−Cl
(但し、Aはオレフィンに基づく単量体単位であり、Xはトリクロロメチル基を有する化合物のトリクロロメチル基から塩素原子を一個除いた残基であり、nは1〜10の整数である)
で示されるポリ塩素化アルカンの製造方法において、反応後使用したアミンを回収する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
オレフィンとトリクロロメチル基を有する化合物とをアミンの存在下に反応させると、重合度が1〜10程度のポリ塩素化アルカンが得られることが知られている。
【0003】
これらのポリ塩素化アルカンは、各種誘導体の製造原料として重要な化合物である。例えば、塩化ビニリデンと四塩化炭素を反応させて得られる重合度が1の1,1,1,3,3,3−ヘキサクロロプロパンや塩化ビニルと四塩化炭素を反応させて得られる重合度が1の1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンは代替フロンの製造原料として重要な化合物である。
【0004】
従来、アミンの存在下にオレフィンとトリクロロメチル基を有する化合物とを反応させるポリ塩素化アルカンの製造法としては、例えば、ジャーナルオブモレキュラーキャタリシス(Journal of Molecular Catalysis)77号51〜60頁1992年に、各種オレフィンと四塩化炭素とを塩化第一銅およびn−ブチルアミン存在下で反応させ、得られた反応液を10%塩酸水で洗浄してn−ブチルアミンを水相に除去後、有機相を減圧下に蒸留することによってポリ塩素化アルカンを得る方法が開示されている。しかしながら、この刊行物には、目的物を分離した後の水相からアミンを回収することは何ら記載されていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記、従来技術において、アミンは比較的多量に使用されており、さらに、使用するアミンが比較的高価であるため、該方法を工業的に実施するためには反応後、使用したアミンを収率よく回収することが望まれる。
【0006】
その場合、上記目的物を分離した後に得られる水相において、アミンは塩酸塩として存在しているので、該アミンを回収しようとすれば、上記水相にアルカリを加えてアミンを遊離させることが必要になる。ところが、上記水相は、塩酸塩を形成する酸分の他、酸洗浄に使用した塩酸分も多量に含まれているため、かかるアミンの遊離操作は多量のアルカリが必要となり処理量の増大による操作性の低下から、回収できないアミンのロス量が増えたりする。また、時間的ロスも多くなる。従って、上記方法によりポリ塩素化アルカンを合成後、得られた水相からアミンを回収することは、今一歩効率的に実施することはできなかった。
【0007】
また、一方で本発明者らが、上記反応後、得られた反応液を酸洗浄することなく蒸留して、該液中に遊離しているであろうアミンの回収を試みたところ、アミンはほとんど留出せず回収はできなかった。
【0008】
以上の背景にあって本発明は、上記オレフィンとトリクロロメチル基を有する化合物とを、アミンの存在下に反応させるポリ塩素化アルカンの製造において、反応後使用したアミンを簡便な方法で高収率に回収し、該製造方法を工業的に満足できる方法で実施することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題に鑑み鋭意検討を続けてきた。その結果、反応が終了した後の反応液中には、遊離したアミンはほとんど存在せず、反応に使用したアミンのほぼ全てはこの段階で既にアミン塩酸塩となって存在していることがわかった。これは本発明者らが初めて見いだした知見である。この知見により、反応液は酸洗浄せずとも、使用したアミンはアミン塩酸塩として目的物であるポリ塩素化アルカンと容易に分離でき、それにより、該アミン塩酸塩をアミンに遊離させる操作を簡略化させることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
即ち、本発明は、オレフィンとトリクロロメチル基を有する化合物とをアミンの存在下に反応させて、一般式
X−(A)n−Cl
(但し、Aはオレフィンに基づく単量体単位であり、Xはトリクロロメチル基を有する化合物のトリクロロメチル基から塩素原子を一個除いた残基であり、nは1〜10の整数である)
で示されるポリ塩素化アルカンを含む反応液を得、次いで、この反応液を酸洗浄することなく該反応液から上記ポリ塩素化アルカンを分離した後、アミン塩酸塩を含む残物にアルカリを加えてアミンを遊離させ、該遊離したアミンを回収することを特徴とするポリ塩素化アルカンの製造方法である。
【0011】
本発明におけるオレフィンは、公知のものが何等制限なく用いることができるが、一般式
【0012】
【数1】
Figure 0003762474
【0013】
(但し、(Z1)(Z2)(Z3)(Z4)は各々同一であってもよい水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルキルオキシカルボニル基より選ばれる基である。)
で示される、炭素数2〜10のオレフィンが好ましい。具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブチレン、ブタジエン、1−ペンテン、2−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、1,2−ジクロロエテン、1,1,2−トリクロロエテン、アリルクロライド、1−クロロ−1,2,2−トリフルオロエテン、1,1−ジクロロ−2,2−ジフルオロエテン、1,2−ジクロロ−1,2−ジフルオロエテン、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等を例示することができる。入手しやすさの点で特に、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、塩化ビニリデンが好適であり、さらには、塩化ビニル、塩化ビニリデンが好ましい。
【0014】
本発明において反応に使用するトリクロロメチル基を有する化合物としては、公知のものが何等制限なく用いることができるが、一般式CYCl3(但し、YはH、ハロゲン基、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルキルオキシカルボニル基、ニトリル基のいずれかである。)で示される化合物が好適である。ここで、上記アルキル基、ハロゲン化アルキル基及びアルキルオキシカルボニル基において、アルキル基の炭素数は、炭素数1〜5のものが好ましい。具体的に例示すると、クロロホルム、四塩化炭素、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロ−2,2,2−トリフルオロエタン、トリクロロ酢酸メチル、トリクロロ酢酸エチル、シアン化トリクロロメチル等を挙げることがでる。入手しやすさの点で特にクロロホルム、四塩化炭素が好適であり、さらには、四塩化炭素が好ましい。
【0015】
本発明において、トリクロロメチル基を有する化合物に対するオレフィンの使用量は、特に制限されるものではないが、重合度の低いものを選択的に得るためには、オレフィンの使用量は少ない方が好ましく、通常は、トリクロロメチル基を有する化合物1モルに対して0.01〜1モルの範囲から選ばれる。
【0016】
本発明において、上記したオレフィンとトリクロロメチル基を有する化合物とをアミンの存在下に反応させる。
【0017】
本発明において反応に用いるアミンとしては、公知のものを何等制限なく使用することができるが、脂肪族の1級、2級、3級アミンが好適である。具体的にはメチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、t−ブチルアミン、n−ヘキシルアミン、2−エチルヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、N,N−ジクロロ−n−ブチルアミン、エタノールアミン等の脂肪族1級アミン;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジエタノールアミン、ピペリジン、モルホリン、ピロリジン等の脂肪族2級アミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N−メチルモルホリン等の脂肪族3級アミン等を例示することができる。特に、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、t−ブチルアミン、n−ヘキシルアミン、2−エチルヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、N,N−ジクロロ−n−ブチルアミン、エタノールアミン等の脂肪族1級アミン等が目的とするポリ塩素化アルカンの反応収率が高くなるために好ましく、さらには、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、ヘキサメチレンジアミンが好ましい。
【0018】
アミンの使用量は特に制限されるものではないが、あまりに多いと経済的ではないため、通常、反応に使用するオレフィン類1モルに対して0.001〜1モルの範囲から選ばれる。
【0019】
上記したアミンは、単独で用いてもよく、金属、金属酸化物または金属塩の共存下で用いてもよく、さらには、ベンゾイルパーオキシドやアゾビスイソブチロニトリル等のラジカル開始剤の共存下で用いてもよいが、金属、金属酸化物または金属塩の共存下で用いた方が反応活性が高く、より重合度が低いポリ塩素化アルカンの生成割合が高くなるために好ましい。
【0020】
共存させる金属、金属酸化物または金属塩としては、周期律表第3、第4、第5周期の遷移金属およびAl、Sn、Pbの金属、金属酸化物、金属塩を挙げることができ、金属塩としては、これら金属のハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩、シアン化物、酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、ステアリン酸塩、オレイン酸塩、オクテン酸塩、ナフテン酸塩、アセチルアセトネート等を挙げることができるが、本発明においては、より重合度が低いポリ塩素化アルカンの生成割合がさらに高くなるために、特に、塩化第一銅、塩化第二銅、塩化第一鉄、塩化第二鉄の共存下に実施することが好ましい。
【0021】
金属、金属酸化物または金属塩を使用する場合の使用量は、特に制限されるものではないが、あまりに多いと経済的でないため、通常、反応に使用するアミン1モルあたり0.001〜1モルの範囲から選ばれる。
【0022】
反応温度は特に限定されないが、通常、40〜200℃、好ましくは50〜150℃の範囲である。また、反応圧力は常圧、加圧、減圧のいずれでも実施可能であり、反応中、攪拌することが好ましい。
【0023】
さらに反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれでも実施可能である。
【0024】
このようにして、オレフィンとトリクロロメチル基を有する化合物とをアミンの存在下に反応させて、一般式
X−(A)n−Cl
(但し、Aはオレフィンに基づく単量体単位であり、Xはトリクロロメチル基を有する化合物からトリクロロメチル基を除いた残基であり、nは1〜10の整数である)
で示されるポリ塩素化アルカンを含む反応液を製造することができる。製造されるポリ塩素化アルカンを具体的に例示すると、オレフィンとして塩化ビニルを用い、トリクロロメチル基を有する化合物として四塩化炭素を用いた場合には、
一般式
CCl3−(CH2−CHCl)n−Cl
(但し、nは1〜10、好ましくは1〜5の整数である)
で示される化合物を、オレフィンとして塩化ビニリデンを用い、トリクロロメチル基を有する化合物として四塩化炭素を用いた場合には、
一般式
CCl3−(CH2−CHCl2n−Cl
(但し、nは1〜10、好ましくは1〜5の整数である)
で示される化合物を挙げることができる。
【0025】
本発明において、この反応液は、目的物であるポリ塩素化アルカンの単離の他、使用したアミンの回収にも供する。
【0026】
その際、本発明では、まず、この反応液を酸洗浄することなく上記ポリ塩素化アルカンを分離する。即ち、かかる反応液中において、前記反応に使用したアミンは、特に反応液を酸洗浄しなくても、反応中に既にそのほとんどがアミン塩酸塩となって系外に析出している。従って、該反応液は、そのままポリ塩素化アルカンの抽出等の汎用的な分離操作に供しても、実質上問題なく該ポリ塩素化アルカンを分離することができる。そして、上記使用したアミンを回収する観点からすれば、このように酸洗浄をしないことにより、後述するアミンの回収操作においてアミン塩酸塩からアミンを遊離させる際に、過剰の酸を中和しなくてもすみアルカリの使用量を大幅に減らすことができる。また、アミンを遊離させる際の操作性も向上し時間的なロスが軽減される。
【0027】
本発明において、反応液からポリ塩素化アルカンを分離する方法は、上記の如く該反応液を酸洗浄しない限り如何なる方法で実施しても良い。具体的には、ポリ塩素化アルカンおよびアミン塩酸塩を含む反応液に水を加えたあと水相と有機相とに分液し、アミン塩酸塩を含む水相とポリ塩素化アルカンを含む有機相とに分離する抽出による方法、ポリ塩素化アルカンおよびアミン塩酸塩を含む反応液中の不溶成分と溶解成分とに分離し、アミン塩酸塩を含む固体成分とポリ塩素化アルカンを含む溶液成分とに分離する固液分離による方法、或いはポリ塩素化アルカンおよびアミン塩酸塩を含む反応液を蒸留してポリ塩素化アルカンを留去する蒸留による方法等を例示することができる。アミンの回収率の良好さを勘案すれば、前記抽出による方法及び固液分離による方法が好ましく、特に、抽出による方法が好ましい。
【0028】
前記抽出による方法を採用する場合、反応液に加える水の量は、引き続き実施するアミン塩酸塩からアミンを遊離させる操作で副生する塩化アルカリを飽和溶解させるに足り得る量以上であれば特に制限されない。通常、塩化アルカリを飽和溶解させる量〜塩化アルカリを飽和溶解させる量の5倍量の範囲から選ばれる。また、アミン塩酸塩を含む水相とポリ塩素化アルカンを含む有機相の分離性が悪い場合、ポリ塩素化アルカンを溶解する水と相溶しにくい有機溶媒を加えて分離しても何等差し支えない。
【0029】
固液分離による方法を採用する場合、その手法は公知の方法を何等制限なく採用可能である。具体的には、ろ過による方法、遠心分離による方法、重力沈降による方法等を挙げることができる。
【0030】
蒸留による方法を採用する場合、蒸留は、常圧、加圧、減圧のいずれでも実施可能であるが、アミン塩酸塩の熱分解が起こる可能性があるため、蒸留温度は低い方が好ましく、特に、減圧下に蒸留することが好ましい。具体的には、留去しようとするポリ塩素化アルカンの物性にもよるが、通常、加熱温度は50〜200℃の範囲、真空度は300〜0.1mmHgの範囲から選ばれる。この場合、未反応のオレフィンやトリクロロメチル基を有する化合物の回収および目的とするポリ塩素化アルカンの精製を兼ねて留去しても何等さしつかえない。
【0031】
このようにして、ポリ塩素化アルカンおよびアミン塩酸塩を含む反応液を、酸洗浄することなくアミン塩酸塩を含む残物とポリ塩素化アルカンを含む分離物とに分離することができる。ポリ塩素化アルカンを含む分離物からは、公知の方法、例えば、蒸留等の方法でポリ塩素化アルカンをさらに単離・精製することができる。
【0032】
次いで、本発明においては、アミン塩酸塩を含む残物にアルカリを加えてアミンを遊離させる。
【0033】
アミンの遊離に用いるアルカリとしては、反応に用いたアミンより強い塩基であれば特に制限されない。具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ金属水酸化物;酸化カルシウム等のアルカリ金属酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウム−t−ブトキシド、カリウム−t−ブトキシド等のアルカリ金属アルコキシド;アンモニア;強塩基性陰イオン交換樹脂;等を例示することができるが、入手の容易さから、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、アンモニアが好ましく、特に、水酸化ナトリウム、酸化カルシウム、炭酸ナトリウムが好ましい。
【0034】
アミンの遊離操作に使用するアルカリの量は、ポリ塩素化アルカンを分離したあとの残物に含まれるアミン塩酸塩からアミンを遊離させるのに必要な量用いれば十分である。通常、反応に使用したアミン1モルに対して0.8モル〜1.5モルの範囲、好ましくは1モル〜1.2モルの範囲であるのが一般的である。
【0035】
遊離操作に使用するアルカリは、固体、水溶液、懸濁液のいずれの状態でも用いることができる。
【0036】
また、アミンの遊離操作は、副生する塩化アルカリが溶解する程度の水の存在下に実施することが好ましい。従って、ポリ塩素化アルカンの分離を前記固液分離による方法で実施した場合においては、分離されたアミン塩酸塩を含む固体成分に水を加えて該固体成分を溶解させて用いるのが好ましい。また、同様にポリ塩素化アルカンの分離を前記蒸留による方法で実施した場合においては、得られたアミン塩酸塩を含む釜残溶液には水を加え分液し、アミン塩酸塩を含む水相として用いるのが好ましい。
【0037】
アミンの遊離操作時の温度はあまりに高いと遊離したアミンが揮散する恐れがあるため、通常、−10〜70℃、好ましくは0〜50℃の範囲から選ばれる。
【0038】
このようにしてアミン塩酸塩を含む残物からアミンを遊離させたあと、この遊離したアミンを公知の方法で分離して回収する。分離の方法を具体的に例示すると、蒸留により分離する方法、溶媒抽出により分離する方法等を挙げることができる。
【0039】
蒸留により分離する方法は、常圧、加圧、減圧のいずれも採用することができるが、蒸留は窒素等の不活性ガス雰囲気下で行うことがアミンの分解を抑えてアミンの回収率が高くなるために好ましい。また、蒸留時の釜温は、蒸留しようとするアミンの物性にもよるが、あまりに高いと遊離したアミン類が分解する恐れがあるため、通常、30〜200℃、好ましくは40〜150℃の範囲である。
【0040】
また、溶媒抽出により分離する方法において、抽出溶媒としては水と相溶しにくい溶媒であれば制限されるものではないが、特に、反応の原料であるトリクロロメチル基を有する化合物を抽出溶媒として使用することが好適である。抽出溶媒の使用量および抽出回数は、使用する抽出溶媒と水へのアミンの分配比を測定して、所望のアミンの回収率を達成するのに必要な量および抽出回数を計算により求めて決定すればよい。
【0041】
抽出後の抽出液からは、公知の方法、例えば、前記した蒸留により分離する方法によりアミンを単離することができるが、反応の原料であるトリクロロメチル基を有する化合物を抽出溶媒として用いた場合、所望であればアミンを単離せずに反応原料として使用することも可能である。
【0042】
このようにして、オレフィンとトリクロロメチル基を有する化合物とをアミンの存在下に反応させて得られる反応液から、酸洗浄せずに、高い回収率でアミンを回収することができる。回収したアミンは、反応に循環して再利用することができる。
【0043】
【発明の効果】
本発明によれば、75%以上の高い回収率で反応に使用したアミンを回収することができ、回収したアミンは、反応に循環再利用することができる。また、酸洗浄が不要なため、酸洗浄に使用する酸が不要であり、さらに、アミン類を遊離させるのに必要なアルカリを大幅に少なくすることができ、このアルカリを添加する時の操作性も向上する。従って、本発明は工業的に極めて有用である。
【0044】
【実施例】
以下、本発明を更に具体的に説明するため実施例を掲げるが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0045】
実施例1
攪拌機及び温度計を備えた3Lオートクレーブに四塩化炭素1999.7g(13.00モル)および塩化第一銅6.21g(0.063モル)を入れ−20℃に冷却し、塩化ビニル93.75g(1.50モル)を加え反応器を閉じた。反応器内を窒素に置換した後、攪拌しながら80℃まで昇温し、n−ブチルアミンを9.14g(0.125モル)加えた。次いで、同温度でn−ブチルアミンを0.16g/分の速度で8時間連続供給して反応を継続した(n−ブチルアミンの総使用量;85.94g(1.175モル))。反応終了後、反応液の溶液部分を分析したところ、n−ブチルアミンは全く存在していなかった。
【0046】
その後、反応液を室温まで冷却したあと300mLの水を加えて洗浄し、有機相と水相とに分液し、水相に40℃以下の温度で水酸化ナトリウム47g(1.175モル)を加えてn−ブチルアミンを遊離させた。次いで、この液を、窒素雰囲気下で釜温が97℃となるまで蒸留してn−ブチルアミン含量が96.5%の留出液を79.35g得た(n−ブチルアミン回収率;89.1%、水分含量;3.4重量%)。
【0047】
一方、有機相を定量したところ、塩化ビニルの98.6%が転化しており、重合度が1の1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン、重合度が2の1,1,1,3,5,5−ヘキサクロロペンタンおよび重合度が3の1,1,1,3,5,7,7−ヘプタクロロヘプタンが転化した塩化ビニルに対して、それぞれ90.5%、8.1%、0.2%の選択率で生成していた(転化した塩化ビニルに対する重合度が1〜3のポリ塩素化アルカンの収率;98.2%)。
【0048】
実施例2
実施例1と同じ装置に四塩化炭素1999.7g(13.00モル)および塩化第一銅1.66g(0.017モル)を入れ反応器を閉じた。反応器内を窒素に置換した後、攪拌しながら80℃まで昇温し、同温度で塩化ビニルを0.729g/分、n−ブチルアミンを0.040g/分の速度で9時間連続供給して反応を継続した(塩化ビニル総使用量;393.66g(6.30モル)、n−ブチルアミンの総使用量;21.60g(0.295モル))。9時間後塩化ビニルおよびn−ブチルアミンの供給を停止し、反応液の溶液部分を分析したところ、n−ブチルアミンは全く存在していなかった。
【0049】
その後、反応液を室温まで冷却したあと70mLの水を加えて洗浄し、有機相と水相とに分液し、水相に40℃以下の温度で水酸化ナトリウム12g(0.30モル)を加えてn−ブチルアミンを遊離させた。次いで、この液を、窒素雰囲気下で釜温が97℃となるまで蒸留してn−ブチルアミン含量が96.6%の留出液を19.61g得た(n−ブチルアミン回収率;87.8%、水分含量;3.4重量%)。
【0050】
一方、有機相を定量したところ、塩化ビニルの91.0%が転化しており、重合度が1の1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン、重合度が2の1,1,1,3,5,5−ヘキサクロロペンタンおよび重合度が3の1,1,1,3,5,7,7−ヘプタクロロヘプタンが転化した塩化ビニルに対して、95.5%、3.0%、0.1%の選択率で生成していた(転化した塩化ビニルに対する重合度が1〜3のポリ塩素化アルカンの収率;98.6%)。
【0051】
実施例3
実施例2と同様にして得た反応液中の不溶成分をろ取、真空乾燥して淡緑色の結晶性粉末を得(26.26g)、この結晶に70mLの水を加えたあとに水酸化ナトリウムを加えてn−ブチルアミンを遊離させたこと以外は実施例2と同様に操作した。その結果を表1に示した。
【0052】
実施例4
実施例2と同様にして得た反応液から窒素雰囲気下で未反応四塩化炭素を留去したあと、回分式減圧蒸留により、真空度55mmHgで100℃〜100.5℃の留分を集めて純度99.0%の1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン1079.0g(転化した塩化ビニルに対する単離後の収率;87.0%)および蒸留残物193.5gを得、この蒸留残物に70mLの水を加え、有機相を分離したあとの水相に水酸化ナトリウムを加えてn−ブチルアミンを遊離させたこと以外は実施例2と同様に操作した。その結果を表1に示した。
【0053】
なお、留去した未反応四塩化炭素および1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン中にn−ブチルアミンは全く含まれていなかった。
【0054】
実施例5
n−ブチルアミンを遊離させたあとの液から、四塩化炭素100mLで3回抽出してn−ブチルアミンを回収したこと以外は実施例2と同様に操作した。その結果を表1に示した。
【0055】
実施例6
アミンとしてイソプロピルアミンを用い、アミンの総使用量が同一のモル数となるような供給速度としたこと以外は実施例1と同様に操作した。その結果を表2に示した。
【0056】
実施例7
オレフィンとして塩化ビニリデンを用い、塩化ビニリデンの総使用量が同一のモル数となるような供給速度としたこと以外は実施例1と同様に操作した。その結果を表2に示した。
【0057】
実施例8
オレフィンとしてエチレンを用い、反応温度を130℃としたこと以外は実施例1と同様に操作した。その結果を表2に示した。
【0058】
実施例9
トリクロロメチル基を有する化合物として1,1,1−トリクロロエタンを用いたこと以外は実施例1と同様に操作した。その結果を表2に示した。
【0059】
実施例10
トリクロロメチル基を有する化合物として1,1,1−トリフルオロ−2,2,2−トリクロロエタンを用いたこと以外は実施例1と同様に操作した。その結果を表2に示した。
【0060】
比較例1
実施例1の方法で得た反応液を10%塩酸2500gで洗浄して有機相と塩酸相に分液し、塩酸相に水酸化ナトリウム322g(8.05モル)を加えたこと以外は実施例1と同様に操作した。その結果を表1に示した。
【0061】
比較例2
実施例1の方法で得た反応液を10%塩酸2500gで洗浄して有機相と塩酸相に分液し、塩酸相に水酸化ナトリウム270g(6.75モル)を加えたこと以外は実施例1と同様に操作した。その結果を表1に示した。
【0062】
【表1】
Figure 0003762474
【0063】
【表2】
Figure 0003762474

Claims (1)

  1. オレフィンとトリクロロメチル基を有する化合物とをアミンの存在下に反応させて、一般式
    X−(A)n−Cl
    (但し、Aはオレフィンに基づく単量体単位であり、Xはトリクロロメチル基を有する化合物のトリクロロメチル基から塩素原子を一個除いた残基であり、nは1〜10の整数である)
    で示されるポリ塩素化アルカンを含む反応液を得、次いで、この反応液を酸洗浄することなく該反応液から上記ポリ塩素化アルカンを分離した後、アミン塩酸塩を含む残物にアルカリを加えてアミンを遊離させ、該遊離したアミンを回収することを特徴とするポリ塩素化アルカンの製造方法。
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