JP3762016B2 - ガスセンサ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば自動車等の排気ガス中の酸素濃度を測定する酸素センサ等の様なガス透過気孔を有するガスセンサに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、例えば自動車の排気ガス中のCO、NOx、HCを軽減するために、排気系に酸素センサを配置し、この酸素センサの出力に基づいて、エンジンに供給する燃料混合気の空燃比を制御している。
【0003】
この様な空燃比の制御に使用される酸素センサとしては、例えば酸素濃淡電池素子と酸素ポンプ素子との間に測定ガス室及び拡散律速層を設けた全領域空燃比センサが知られている。この拡散律速層は、多数のガス透過気孔を備えた多孔質層であり、例えば外部から測定ガス室内に導入される検出ガス(排気ガス)の拡散律速を行なうものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、自動車用エンジン等の内燃機関に使用される燃料やエンジンオイルの中には、リン(P)を含むものが存在し、このPを含む燃料やエンジンオイルを使用すると、排気ガス中にはガス状のPの微小粒子が一緒に排出される。ところが、これらのPの微小粒子(飛散成分)は、拡散律速層の表面に付着すると、そのガス透過気孔に目詰まりが発生するという問題がある。
【0005】
つまり、酸素センサが適用される排気ガスの温度は、通常かなり高いので、酸素センサの使用中に拡散律速層にPが付着すると、Pと拡散律速層の材料が反応して液相が生ずることがあり、それによって、Pが反応したガラス状の物質が拡散律速層の表面等に堆積して、ガス透過気孔に目詰まりが発生する。この目詰まりが発生すると、ガスの拡散抵抗が変化するので、空燃比の検出を精度良く行なうことができない。
【0006】
この目詰まりの問題に対しては、多孔質の気孔率や気孔径を調整する対策が採られているが、必ずしも十分ではない。
特に近年では、排気ガス規制の高まりに伴い、ますます高精度の空燃比制御が必要とされており、更に信頼性も長期間の保証が要求される様になっており、一層の改善が望まれている。
【0007】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、リン等の被毒に対して耐久性の高いガスセンサを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明では、センサの検出部に検出ガスを導入可能なガス透過気孔を有し、全領域の空燃比を検出するガスセンサにおいて、ガス透過気孔を複数の多孔質の拡散律速層で形成するとともに、拡散律速層の外側層をジルコニアで構成し、しかも、外側層より内側の内側層の拡散抵抗を、外側層の拡散抵抗より大きく設定している。
【0009】
本発明は、いわゆる全領域空燃比センサに関わるものであり、このガスセンサにおいて、ジルコニアは、検出ガス中の飛散成分であるリン(P)との反応性が乏しく、よって、拡散律速層にPが付着しても、単に付着したままであり、従来の様に反応してガラス状に変化しない。そのため、例えば排気ガス中の酸素濃度を検出する酸素センサ等に本発明を適用すると、ガス透過気孔に目詰まりが生じ難いので、耐久性が向上する。
また、拡散律速層が目詰まりを生じると、拡散律速の程度が変化してしまうので、ガスセンサの出力に好ましくない影響を与えるが、本発明では、拡散律速層のガス透過気孔に目詰まりを生じ難いので、長期間にわたり例えば排気ガス中の酸素濃度等を正確に検出することができる。
更に、被毒物質であるPは、当然ながら拡散律速層の検出ガスが導入される側(外側層)に多く付着するので、どうしても外側層に目詰まりが生じ易いが、本発明では、ジルコニアからなる層を外側に形成することにより、飛散するPに対して有効に作用して、効果的に目詰まりを防止できる。つまり、多くのPが付着する外側層にて目詰まりが生じ難い。また、内側層を主として拡散律速を行う層とし、外側層を主として目詰まり防止用の層とする様に、役割分担できるので、各機能を最も発揮できる構成とすることができる。
しかも、本発明では、外側層の拡散抵抗が内側層より小さく(例えば外側層の目が粗く)設定されているので、仮に外側層に多少Pが付着して部分的に拡散抵抗が増大しても、拡散律速層全体の拡散抵抗に与える影響は少なくなり、良好なガスセンサの出力が得られる。
【0010】
前記センサの検出部としては、例えばセラミックス製の感ガス材料からなる基板に一対の電極(例えば基準電極と測定電極)が設けられたガス検出素子が挙げられ、感ガス材料としては、例えば検出ガス中の酸素濃度に応じて起電力が変化する(ジルコニア等の)固体電解質や、検出ガス中の酸素濃度に応じて内部抵抗が変化する(チタニア等の)抵抗変化型の材料が挙げられる。
【0015】
請求項2の発明では、ガスセンサの使用時における前記ガス透過気孔の温度範囲が、500℃以上である。
つまり、この温度範囲の場合に、例えばPが例えば酸素センサの拡散律速層に付着すると目詰まりが生じ易いが、この様な使用温度範囲のときに、本発明の構成のガスセンサを適用すると、長期間にわたり精密な測定を行うことができる。尚、700℃以上の場合には、一層目詰まりが生じ易いが、その様な過酷な条件でも、本発明の構成のガスセンサを適用することができる。
【0016】
請求項3の発明では、拡散律速層の表面に、Mg及び/又はCaの成分をコートしている。尚、この拡散律速層の表面とは、ガス透過気孔を構成する壁面の表面(例えば孔の内周面)を意味している。
前記MgやCaは、Pの捕捉能力が高く、また、Pと反応しても液相ではなく固相となるので、従来の様なガラス状の目詰まりの発生を防止することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明のガスセンサの例について説明する。
尚、以下の説明では、実施例1、2にガスセンサの基本的な構成等を記載しており、実施例3、4に、本発明のガスセンサの具体例について記載している。
(実施例1)
本実施例のガスセンサは、例えば自動車の排気系に取り付けられて、検出ガス(排気ガス)中の酸素濃度(空燃比)を測定する酸素センサであり、特に空燃比を全領域にわたって検出できるいわゆる全領域空燃比センサである。
【0018】
a)本実施例の酸素センサは、金属製の筒状の容器(図示せず)内に、主としてセラミックスからなる板状のセンサ素子部を配置したものである。
図1及び図2に示す様に、このセンサ素子部1は、固体電解質基板3aの両側に多孔質電極3b,3cを形成した酸素濃淡電池素子3と、同じく固体電解質基板5aの両側に多孔質電極5b,5cを形成した酸素ポンプ素子5と、これらの両素子3,5の間に積層されて測定ガス室7を形成するスペーサ9とからなる検出部材6を備え、更に、この検出部材6の酸素ポンプ素子5側の外側に、スペーサ11により所定間隔を空けて、両素子3,5を加熱するヒータ13を備えている。
【0019】
ここで、両素子3,5は、イットリア−ジルコニア固溶体からなる固体電解質基板3a,5aの各々の両側に、矩形状の多孔質電極3b,3c,5b,5cを形成したものであり、この多孔質電極3b,3c,5b,5cは、共素地としてイットリア−ジルコニア固溶体と残部白金とから形成されている。尚、前記固体電解質基板3a,5aの材料としては、イットリア−ジルコニア固溶体の他に、カルシア−ジルコニア固溶体、二酸化セリウム、二酸化トリウム、二酸化ハフニウム等の各固溶体、ペロブスカイト型固溶体、3価金属酸化物固溶体等を使用できる。
【0020】
また、前記酸素ポンプ素子3の外側は、多孔質電極3cに対応する中空部15aを有したアルミナからなる絶縁層15に覆われている。そして、その中空部15aには、多孔質電極3cを覆って外部から保護する主にアルミナからなる多孔質の電極保護層17が形成されている。
【0021】
前記測定ガス室7は、酸素濃淡電池素子3と酸素ポンプ素子5との間に、多孔質電極3c,5bに対応する中空部9aを有する主にアルミナからなるスペーサ9を挟んで接合することにより形成され、その中空部9aからなる測定ガス室7の内側には、前記両多孔質電極3c,5bが露出している。
【0022】
前記スペーサ9には、測定ガス室7と外部とを連通するために、左右に一対の連通孔19a,19bが設けられており、各連通孔19a,19bには、多孔質の材料が充填された拡散律速層21a,21b(21と総称する)が形成され、この拡散律速層21によって検出ガスの測定ガス室7への流入等の律速が行われる。特に本実施例では、拡散律速層21全体は、多数のガス透過気孔を有するジルコニアから構成されている。
【0023】
また、酸素濃淡電池素子3の外側には、多孔質電極3bを覆うように、固体電解質からなる遮蔽体23が貼り付けられており、後述の検出回路25にて酸素濃淡電池素子3の多孔質電極3b側から多孔質電極3c側へと微小電流iCPを流したときに、多孔質電極3b側に汲み込まれた酸素がそのまま排出されないようにされている。また、酸素濃淡電池素子3には、このように多孔質電極3b側に汲み込まれた酸素の一部を測定ガス室7に漏出させるための漏出抵抗部3d(図3参照)が形成されている。
【0024】
尚、前記ヒータ13の一方の側、即ち酸素ポンプ素子5側には、発熱パターン27が設けられ、他方の側には周知のマイグレーション防止パターン29が形成されている。
b)次に、図3に基づいて、酸素センサの電気的構成及びその制御について説明する。
【0025】
図3に示す様に、酸素濃淡電池素子3及び酸素ポンプ素子5の測定ガス室7に接した多孔質電極3c,5bは、抵抗器R2を介して接地されており、他方の多孔質電極3b,5cは、各々検出回路25に接続されている。そして、検出回路25内では、酸素濃淡電池素子3の遮蔽体23側の多孔質電極3bが、他端に定電圧VCPが印加された抵抗器R1に接続されている。抵抗器R1は、酸素濃淡電池素子3に略一定の微小電流iCPを供給するためのものであり、その抵抗値は、抵抗器R2及び酸素濃淡電池素子3の内部抵抗に比べて十分大きな値となっている。
【0026】
また、この抵抗器R1に接続された多孔質電極3bは、差動増幅器AMPの−側入力端子に接続されている。差動増幅器AMPの+側入力端子には、基準電圧VCOが入力されているため、差動増幅器AMPからは、基準電圧VCOと酸素濃淡電池素子3の多孔質電極3b側電圧との差に応じた電圧が出力される。また、この差動増幅器AMPの出力は、抵抗器R3を介して、酸素ポンプ素子5のヒータ13側の多孔質電極5cに接続されている。この結果、酸素ポンプ素子5には、差動増幅器AMPの出力に応じて、ポンプ電流ipが双方向に流れることになる。 つまり、この検出回路25は、酸素濃淡電池素子3に微小電流iCPを流して多孔質電極3bに酸素を汲み込むことにより、多孔質電極3bを内部酸素基準源として機能させて、酸素濃淡電池素子3の両端に測定ガス室7内の酸素濃度に応じた電圧を発生させ、更に、その電圧(詳しくは抵抗器R2の両端電圧を含む)が基準電圧VCOとなるように、差動増幅器AMPから酸素ポンプ素子5にポンプ電流ipを供給することにより、測定ガス室7内の酸素濃度を一定に保つ制御を行うように構成されているのである。
【0027】
そして、この制御によって生じるポンプ電流ipは、周囲の測定ガス雰囲気中の酸素濃度に対応するため、そのポンプ電流ipを抵抗器R3により電圧信号に変換して、それを排気中の酸素濃度、ひいては空燃比を表わす検出信号として、内燃機関制御を行うマイクロコンピュータ等からなる電子制御回路(以下、ECUという)31に出力する。
【0028】
また、ヒータ13の発熱パターン27には、電圧切換回路33を介して、ヒータ電圧VH が印加される。この電圧切換回路33は、ヒータ13に印加するヒータ電圧VHとして、例えばバッテリ電圧VB及びその変更値を各々出力可能に構成されており、ECU31から出力される電圧切換指令に応じて、いずれかをヒータ電圧VH として、発熱パターン27に印加する。
【0029】
b)次に、上述した構成の酸素センサのセンサ素子部1の製造方法を簡単に説明する。
まず、イットリア−ジルコニア系の粉末にPVB系のバインダと有機溶剤とを用い、周知のドクターブレード法により(酸素濃淡電池素子3及び酸素ポンプ素子5の固体電解質基板3a,5a)となるグリーンシートを製造する。
【0030】
次に、白金とイットリア−ジルコニア系の共素地とからなる材料にPVB系のバインダと有機溶剤とを用いてペースト化し、スクリーンによって前記グリーンシート上に印刷して、(固体電解質基板3a,5aの多孔質電極3b,3c,5b,5c)となる電極パターンを形成する。
【0031】
次に、この様にして形成したグリーンシートと、同様にして形成したアルミナからなる絶縁層15、遮蔽板23、スペーサ9等のグリーンシートを積層圧着する。
ここで、特に、前記スペーサ9となるグリーンシートには、中空部9a及び連通孔19a,19bとなる空間が空けられているが、本実施例では、このスペーサ9用のグリーンシートを他のグリーンシートに圧着した後に、連通孔19a,19bとなる空間に、拡散律速層21となるペーストを印刷する。
【0032】
このペーストは、下記の様にして製造する。
ジルコニア粉末(平均粒径20〜40μm)に対して、エトセルを固形分比12重量%、ブチルカルビトールを固形分比50重量%、及び気孔形成用の昇華性フィラーを固形分比10重量%添加したものを、乳鉢にて混練してペーストとする。
【0033】
つまり、このペーストは、ジルコニア系の材料にPVB系のバインダと有機溶剤とを用いてペースト化したものであり、焼成すると多数のガス透過気孔を有するジルコニアからなる多孔質の層となる。
そして、前記グリーンシート等を積層圧着した後に、例えば1500℃の温度にて1時間の焼成を行なうことにより、板状の検出部材6を得る。
【0034】
一方、ヒータ13は、同様にアルミナのグリーンシートに発熱パターン27等となるペーストを印刷し、これに他のグリーンシートを積層し、同様に焼成して形成する。
尚、焼成した検出部材6とヒータ13とは、耐熱性の無機接着剤にて接着してセンサ素子部1を形成するが、これとは別に、検出部材6となるグリーンシート等とヒータ13となるグリーンシート等を積層し、同時に焼成してセンサ素子部1を形成してもよい。
【0035】
この様にして製造された本実施例の酸素センサは、拡散律速層21全体がPとの反応性の低いジルコニアから構成されているので、後述する実験例からも明かな様に、排気ガス中のPが拡散律速層21に付着した場合でも、従来の様に拡散律速層の成分(アルミナ)がPと反応して液相とならず、単に付着したままである。
【0036】
つまり、本実施例では、従来の様にP化合物がガラス状となってガス透過気孔に目詰まりを生ずることがないので、長期間使用しても拡散抵抗が変化し難く、耐久性に富むという利点がある。
(実施例2)
次に、実施例2について説明するが、本実施例と前記実施例1とは拡散律速層のみが異なり他の部分は同一であるので、異なる点のみを説明する。
【0037】
本実施例における拡散律速層は、ジルコニアからなる基材の表面にCaがコートされたものである。
次に、前記拡散律速層を有するセンサ素子部の製造方法を簡単に説明する。
まず、前記実施例1と同様に、イットリア−ジルコニア系の粉末にPVB系のバインダと有機溶剤とを用い、周知のドクターブレード法により(固体電解質基板)となるグリーンシートを製造する。
【0038】
次に、白金とイットリア−ジルコニア系の共素地とからなる材料にPVB系のバインダと有機溶剤とを用いてペースト化し、スクリーンによってグリーンシート上に印刷して、(多孔質電極)となる電極パターンを形成する。
次に、この様にして形成したグリーンシートと、同様にして形成したアルミナからなる絶縁層、遮蔽板、スペーサ等のグリーンシートを積層圧着するが、その際には、測定ガス室及び連通孔を形成するためのスペーサとなるグリーンシートを他のグリーンシートに圧着した後に、連通孔となる空間に、拡散律速層となるジルコニアを主成分とするペーストを印刷する。尚、このペーストは、前記実施例1と同様なものである。
【0039】
そして、前記グリーンシート等を積層圧着した後に、例えば1500℃の温度にて1時間の焼成を行なうことにより、板状の検出部材を得る。
特に、本実施例では、検出部材の焼成後に、拡散律速層の表面にCaのコートを行なうが、その場合には、例えば濃度24重量%の酢酸カルシウム水溶液を拡散律速層の外側から例えば0.1μl程度滴下し、1250℃にて60分の焼成を行なう。
【0040】
これによって、拡散律速層を構成するジルコニアの表面(即ちガス透過気孔の表面)にCaがコートされることになる。つまり、酢酸カルシウム水溶液がガス透過気孔の内周面を濡らしながら拡散律速層の内部まで染み込むので、このCaのコート層は、拡散律速層全体にわたり形成される。
【0041】
この様にして製造された本実施例の酸素センサの拡散律速層には、ジルコニアからなる基材の表面全体にわたってCaのコート層が形成されているので、後述する実験例からも明かな様に、排気ガス中のPが拡散律速層に付着した場合には、まず、CaとPとが反応して固相のリン酸カルシウムが生成され、従来の様に拡散律速層の成分(アルミナ)がPと反応して液相となることがない。つまり、このCaにより、目詰まりが防止される。
【0042】
更に、本実施例では、拡散律速層の基材としてジルコニアが用いられているので、仮にコート層であるCaが剥離してジルコニアが露出している箇所にPが付着しても液相が発生しない。従って、この点からも目詰まりが生じ難いという顕著な効果を奏する。
【0043】
尚、Caに代えて(又はCaに重ねて)、Mgのコートを行なう場合には、酢酸マグネシウム水溶液を同様に用いるが、このMgのコートを施したものは、拡散律速層の表面にPが付着すると、同様に液相とならず、固体のリン酸マグネシウムとなり、ガス透過気孔に目詰まりが生じないので好適である。
(実施例3)
次に、実施例3について説明するが、本実施例と前記実施例1とは主として拡散律速層が異なり他の部分は同一であるので、異なる点のみを説明する。
【0044】
図4に示す様に、本実施例の拡散律速層31は、連通孔33内に並んで設けられた外側層35及び内側層37からなる2層構造である。
このうち、内側層35は、従来と同様なアルミナからなり主として拡散制限を行なう(拡散抵抗が大きな)層である。一方、外側層37は、主としてP等のデポジットを取るための(拡散抵抗が小さな)層であり、前記実施例1と同様なジルコニアからなる。
【0045】
前記の様な2層構造の拡散律速層31を形成する場合には、連通孔33となる空間を有するスペーサ39のグリーンシートの積層後に、内側層35となるアルミナを主成分とするペースト及び外側層37となるジルコニアを主成分とするペーストを、該当する位置に印刷により塗布し、その後、他のグリーンシート等を積層して焼成する。
【0046】
この様に、本実施例では、拡散律速層31が、実質的に拡散制限を行なう内側層35とP等のデポジットを除去するためのジルコニアからなる外側層37とからなる2層構造であるので、各機能を十分に活かした構成とすることができる。つまり、内側層35としては、例えば加工性や強度等に優れたアルミナ等を用いて、拡散制限を行なうために必要なガス透過気孔を確実に形成でき、一方、外側層37としては、拡散制限のために気孔率に規制されることなく、Pを付着させるのに好ましい気孔率のジルコニアを用いることができるので、各々の優れた機能を発揮することができる。
(実施例4)
次に、実施例4について説明するが、本実施例と前記実施例1とは主として拡散律速層が異なり他の部分は同一であるので、異なる点のみを説明する。
【0047】
図5に示す様に、本実施例の拡散律速層41は、連通孔43内に設けられた内側層45と連通孔43の(検出部材の側面側の)外側開口部43aを覆う外側層47からなる2層構造である。
このうち、内側層45は、前記実施例3と同様に、アルミナからなり拡散制限を行なう層である。一方、外側層47は、P等のデポジットを取るための層であり、前記実施例1と同様なジルコニアからなる。
【0048】
前記の様な2層構造の拡散律速層41を形成する場合には、連通孔43となる空間を有するスペーサ49のグリーンシートの積層後に、内側層45となるアルミナを主成分とするペーストを印刷により塗布し、その後、他のグリーンシート等を積層する。更に、内側層45の外側(外側開口部43a側)を覆う様に、外側層47となるジルコニアを主成分とするペーストを印刷した後に焼成する。
【0049】
この様に、本実施例では、前記実施例3とほぼ同様に、拡散律速層41が、実質的に拡散制限を行なう内側層45とP等のデポジットを除去するためのジルコニアからなる外側層47とからなる2層構造であるので、各機能を十分に活かした構成とすることができる。
【0050】
特に、本実施例では、検出部材の側面に外側層47を形成する構成であるので、デポジット除去のために有効な表面積を大きくできるという利点がある。
尚、前記本実施例では、内側層45と外側層47とを同時に焼成したが、例えば内側層45をグリーンシートとともに一旦焼成し、その後、焼成した内側層45に対して、その拡散律速を調製する作業を行ない、その後、外側層47となるペーストを検出部材の側面に塗布してから焼成してもよい。
【0051】
(実験例)
次に、前記各実施例の酸素センサを用いた実験例について説明する。
この実験は、P被毒耐久性試験であり、Pの付着による目詰まりの発生によって生ずる拡散抵抗の変化を調べたものである。
【0052】
具体的には、前記各実施例の酸素センサと比較例の従来の酸素センサを、エンジンの排気管に取り付けて、そのip電流の変化率(Δip)の経時変化から、拡散律速層の劣化の状態(即ち目詰まりの状態)を調べた。その結果を下記表1、表2及び図6に示す。
【0053】
(実験条件)
・エンジン ;直列4気筒2000cc、ガソリンエンジン、NA
・設定空燃比;理論空燃比λ=1
・運転状態 ;無負荷、3000rpm定常運転
・燃料 ;レギュラーガソリン+Zn−DBP(添加量50cc/20L)
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
この表1、表2及び図6から明かな様に、前記各実施例の酸素センサは、ip電流の変化は長い時間を経過しても少なく、目詰まりが生じにくいので耐久性に優れており適である。それに対して、比較例のものは、ip電流が短期間で大きく変化するので、目詰まりが生じ易く耐久性に劣り好ましくない。
【0057】
尚、本発明は前記実施例になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
(1)例えば、前記各実施例では、酸素センサとして、全領域空燃比センサを例に挙げたが、λセンサに本発明を適用してもよい。例えばλセンサの検出ガス側を覆う保護層を、上述した液相の生成を抑制する素材で構成してもよい。
【0058】
(2)前記各実施例では、拡散律速層を目詰まりを防止する構成としたが、検出ガスが到達する側の電極(測定電極)の表面に保護層を設ける場合には、その保護層を前記拡散律速層と同様に目詰まりを防止する構成としてもよい。
(3)また、ジルコニアからなる(又はジルコニアを含む)基材に、Pが付着した場合に液相の生成を抑制する材料を単体として担持させて拡散律速層を形成する場合には、担持させる元素の塩(低温で分解する塩)を溶解した溶液(例えば水溶液)に基材を浸漬させたり、又は基材に該溶液を筆塗りして塩を付着させた後に、加熱処理することで、単体としての元素を担持させることができる。
【0059】
(4)更に、ジルコニアからなる(又はジルコニアを含む)基材に、Pが付着した場合に液相の生成を抑制する材料を化合物として担持させて拡散律速層を形成する場合には、化合物を溶解した溶液(例えば水溶液)に基材を浸漬させたり、又は、基材に該溶液を筆塗りしてた後に、加熱処理することで、化合物を担持させることができる。尚、化合物としては、リン酸カルシウムやリン酸マウネシウムが、Pを補足する能力に優れて、且つ補足した後も液相となり難いので好適である。
【0060】
【発明の効果】
以上詳述した様に、請求項1の発明では、全領域空燃比センサにおいて、その拡散律速層に含まれるジルコニアは、検出ガス中の飛散成分であるPとの反応性が乏しく、よって、拡散律速層にPが付着しても、単に付着したままであり、従来の様に反応してガラス状に変化しない。そのため、拡散律速層のガス透過気孔に目詰まりが生じ難いので、ガスセンサの耐久性が向上する。
また、本発明では、拡散律速層のガス透過気孔に目詰まりを生じ難いので、長期間にわたり例えば排気ガス中の酸素濃度を正確に検出することができる。
更に、本発明では、外側層の拡散抵抗が小さく設定されているので、外側層に多少Pが付着して部分的に拡散抵抗が増大しても、拡散律速層全体の拡散抵抗に与える影響は少なくなり、良好なガスセンサの出力が得られる。
【0061】
また、本発明では、ジルコニアからなる層を外側に形成することにより、飛散するPに対して有効に作用して、効果的に目詰まりを防止できる。更に、内側層を主として拡散律速を行う層とし外側層を主として目詰まり防止用の層とする様に、役割分担できるので、各層の機能を最も発揮できる構成とすることができる。
【0063】
請求項2の発明では、Pが外側層に付着した場合に液相を生じ易い温度となっても、単にPが表面に付着したままであるので、目詰まりが生じ難く、長期間にわたり精密な測定を行うことができる。
請求項3の発明では、拡散律速層の表面にMg及び/又はCaの成分をコートしているので、Pと反応しても液相ではなく固相となり、従来の様なガラス状の目詰まりを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1の酸素センサのセンサ素子部を一部を破断して示す斜視図である。
【図2】 実施例1の酸素センサのセンサ素子部の拡散律速層を示す説明図である。
【図3】 実施例1の酸素センサの電気的構成を示す説明図である。
【図4】 実施例3の酸素センサのセンサ素子部を破断して示す説明図である。
【図5】 実施例4の酸素センサのセンサ素子部を破断して示す説明図である。
【図6】 実験結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1…センサ素子部
3…酸素濃淡電池素子
3a,5a…固体電解質基板
3b.3c,5b,5c…多孔質電極
5…酸素ポンプ素子
6…検出部材
7…測定ガス室
9,11…スペーサ
13…ヒータ
21,21a,21b,31,41…拡散律速層
Claims (3)
- センサの検出部に検出ガスを導入可能なガス透過気孔を有し、全領域の空燃比を検出するガスセンサにおいて、
前記ガス透過気孔を複数の多孔質の拡散律速層で形成するとともに、該拡散律速層の外側層をジルコニアで構成し、
前記外側層より内側の内側層の拡散抵抗を、前記外側層の拡散抵抗より大きく設定したことを特徴とするガスセンサ。 - 前記ガスセンサの使用時における前記ガス透過気孔の温度範囲が、500℃以上であることを特徴とする前記請求項1記載のガスセンサ。
- 前記拡散律速層の表面に、Mg及び/又はCaの成分をコートしたことを特徴とする前記請求項1又は2記載のガスセンサ。
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