JP3760603B2 - 光制御板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光制御板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
特定の角度範囲の入射光のみを選択的に散乱する光制御板は、例えばプライバシー保護のための視覚制御用フィルムとして有用である。
かかる光制御板の製造方法としては、例えばシート上に屈折率が互いに異なる少なくとも2種の化合物を含有する光重合性組成物からなる膜状体を形成し、これに特定の方向から光を照射して該膜状体を重合硬化させる方法などが知られている(特開平01−77001号公報など)。
【0003】
しかしながら、用いる光重合性組成物の種類によっては、得られる光制御板にべとつき感が生じて商品価値を大きく減ずる場合があるという問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明者らは、比較的簡便な設備でべとつき感のない光制御板を安定的に製造し得る方法を開発するべく鋭意検討した結果、シート上に形成した光重合性組成物からなる膜状体に、特定の方向から光を照射して該膜状体を硬化させて硬化膜を得たのちに、該硬化膜の上に透明基材を密着するようにラミネートして、さらに光を照射することにより得られる光制御板は、べとつき感がほとんどなく、特定方向からの光のみを十分に散乱し得ることを見出し、本発明に至った。
【0005】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、シート上に形成した光重合性組成物からなる膜状体に、特定の方向から光を照射して該膜状体を硬化させて硬化膜を得たのち、該硬化膜の上に透明基材を密着するようにラミネートして光を照射することを特徴とする光制御板の製造方法を提供するものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明において用いられるシートの厚みは特に限定されるものではなく、通常の厚み20μm〜2cm程度の範囲のものが用いられ、いわゆるシートの他、フィルム状、板状のものも含まれる。シートの材質は特に限定されるものではなく、例えばポリエチレンテレフタレート、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、塩化ビニル系樹脂などの合成樹脂や、ガラスなどが挙げられる。かかるシートは帯状のシートとして供給されてもよいし、枚葉で供給されてもよい。ガラスの場合には枚葉で供給される。
【0007】
光重合性化合物としては、例えば、特開昭63−309902号公報、特開平03−107901号、特開平03−107902号公報に記載の光重合性組成物などが使用できる。それらの例としては、例えば
光重合性組成物(I):互いに屈折率が異なる二種以上の(A)重合性二重結合を有するモノマー〔以下、化合物(A)とする。〕および/または(B)重合性二重結合を有するオリゴマー〔以下、化合物(B)とする。〕の組成物、
光重合性組成物(II):(C)重合性二重結合を複数有するモノマーもしくは重合性二重結合を複数有するオリゴマーであって硬化前後の屈折率が異なるもの〔以下、化合物(C)とする。〕、
光重合性組成物(III):化合物(A)、化合物(B)または化合物(C)と、(D)屈折率がこれらと異なる光重合性を有しない化合物〔以下、化合物(D)とする。〕との組成物
などが挙げられる。
【0008】
光重合性組成物(I)および光重合性組成物(III)においては、互いに屈折率が異なる二種以上の化合物(A)および/または化合物(B)の屈折率差が0.01以上のものの組合せが好ましい。
光重合性組成物(II)においては、化合物(C)の硬化前後の屈折率差が0.01以上であることが好ましい。
【0009】
化合物(A)の具体例としては、テトラヒドロフルフリルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、フェニルカルビトールアクリレート、ノニルフェノキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、ω−ヒドロキシヘキサノイルオキシエチルアクリレート、アクリロイルオキシエチルサクシネート、アクリロイルオキシエチルフタレート、トリブロムフェノキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルアクリレートならびにこれらのアクリレートに対応するメタクリレートおよびN−ビニルピロリドン、N−アクリロイルモルフォリンなどが挙げられる。これらのモノマーは2種以上を混合して使用することができる。
【0010】
化合物(B)の具体例としては、ポリオールポリアクリレート、変性ポリオールポリアクリレート、イソシアヌル酸骨格のポリアクリレート、メラミンアクリレート、ヒダントイン骨格のポリアクリレート、ポリブタジエンアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレートなどが挙げられる。これらのオリゴマーは2種以上を混合して使用することができる。
【0011】
化合物(C)の具体例としては、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、水添ジシクロペンタジエニルジアクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリスアクリロキシイソシアヌレート、多官能のエポキシアクリレート、多官能のウレタンアクリレートなどのアクリレート化合物や、これらのアクリレートに対応するメタクリレートおよびジビニルベンゼン、トリアリルイソシアヌレート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いてもよいし、他の化合物と併用してもよい。
なお、屈折率差の条件を満たせば、これらの化合物を化合物(A)または化合物(B)として用いることもできる。
【0012】
化合物(D)の具体例としては、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ナイロン等のポリマー類や、トルエン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、メチルアルコール、エチルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトニトリル等の有機薬品等や有機ハロゲン化合物、有機ケイ素化合物、可塑剤、安定剤等のプラスチック添加剤などが挙げられる。
かかる光重合性組成物は、硬化性を向上させるために光重合開始剤を含有していてもよい。かかる光重合開始剤としては、例えばベンゾフェノン、ベンジル、ミヒラーズケトン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンゾインエチルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどが例示される。
【0013】
かかる光重合性組成物からなる膜状体をシート上に形成するには、例えば光重合性組成物をシート上に塗布すればよい。塗布は通常の方法で行われる。
本発明の方法においては、かくしてシート上に形成した膜状体に、特定の方向から光を照射する。かかる特定の方向は、得られる光制御板において目的とする選択的に散乱する入射光の方向、用いる光重合性組成物などに応じて適宜選択される。
かかる光の波長は、用いる光重合性組成物に応じて適宜選択されるが、通常の作業環境(照明)の下での取扱いが容易な点で、紫外線であることが好ましく、従って光重合性組成物としても紫外線により硬化するものが好ましい。
【0014】
特定の方向から光を照射するには、例えば光源の形状を線光源、点光源とする方法、一定方向の光のみが照射されるように光源と膜状体との間にスリット、遮光板、干渉フィルターなどを設ける方法などが挙げられる。光源の形状、光源とスリットまたは遮光板と膜状体の位置関係を適宜調整することにより、得られる光制御板において散乱される特定方向の光の角度範囲を調整することができる。光の照射時間および照射エネルギーは用いる光重合性組成物の組成、膜厚などに応じて適宜選択すればよい。
光が照射されることによって、膜状体は硬化して硬化膜を形成する。
【0015】
次いで、かかる硬化膜の上にさらに透明基材をラミネートする。透明基材は硬化膜と密着するようにラミネートされる。
透明基材としては、次いで照射される光をある程度透過し得るものが用いられる。次いで照射する光として紫外線を用いる場合の透明基材としては、例えばポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアセチルセルロースなどが挙げられる。
このように透明基材をラミネートすることによって、硬化膜と空気中の酸素との接触が断たれ、これによって得られる光制御板の性能が向上するものと考えられる。
【0016】
ラミネート後、光を照射する。
かかる光は、用いる光重合性組成物に応じて適宜選択されるが、通常の照明光の下での取扱いが容易である点で、紫外線であることが好ましい。
かかる光は通常、拡散光である。拡散光を照射するには、例えばラミネートする透明基材により照射光を散乱してもよいが、スリガラスなどの光拡散板を透過ささて照射することが照射光を十分に拡散し得る点で好ましい。
光の照射時間および照射エネルギーは用いる光重合性組成物の組成、膜厚などに応じて適宜選択すればよい。
照射後、ラミネートした透明基材を剥離することにより、目的とする光制御板を得ることができる。
【0017】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、べとつき感のない十分な商品価値を有する光制御板を安定的に製造することができる。
【0018】
【実施例】
以下に本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0019】
比較例1
ポリプロピレングリコール(平均分子量3000)2モルあたり、2.7モルのヘキサメチレンジイソシアネート、0.3モルのトリレンジイソシアネートおよび2モルの2−ヒドロキシエチルアクリレートを反応させて得られたポリエーテルウレタンアクリレート(平均分子量6000、屈折率1.460)40重量部に、2,4,6−トリブロムフェニルアクリレート30重量部、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート(屈折率1.526)30重量部および光重合開始剤〔2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン〕1.5重量部を混合して光重合性組成物を得た。この光重合性組成物をシート〔ポリエチレンテレフタレートフィルム、厚み188μm〕(1)上に塗布して、光重合性組成物の膜状体(2)(厚み165μm)を形成させた。
次いで、この膜状体が形成されたシートをコンベアー(3)に載せ、一定の速度(1.0m/分)で移動させながら、紫外線を照射した(図1)。紫外線の光源(4)は棒状水銀ランプ〔80W/cm〕とした。なお、図1において棒状の水銀ランプの長手方向は、紙面の法線方向である。棒状水銀ランプ(4)とシートとの距離は1100mmとした。また、棒状水銀ランプとシートとの間には遮光板(5)を配置した。この遮光板により、紫外線は、シートが棒状水銀ランプの真下にきたときから照射が開始される。またシートはコンベアーのうえに載せられて該コンベアーと共に進行するが、その進行と共にシート上の一点に対する紫外線の照射方向は変化する。シート(1)上の一点に対する紫外線の照射時間は9秒となるようにした。かかる照射により、膜状体が硬化されて硬化膜(6)が形成された。この硬化膜のゲル分率および状態を表1に示す。
【0020】
実施例1
比較例1と同様に操作してシート上に硬化膜(6)を形成し、この硬化膜(6)の上に透明基材〔ポリエチレンテレフタレートフィルム、厚み38μm〕(7)をラミネーターにて密着するようにラミネートし、コンベアー(8)の上に載せて一定速度(1.0m/分)で移動させながら、紫外線を照射した(図2)。この紫外線の光源(9)としては、球状の水銀ランプを用いた。このとき水銀ランプと該膜状体の間にはスリガラス(10)を配置して、照射する紫外線を拡散光とした。光源(9)とシート(1)との距離は400mm、光源(9)とスリガラス(10)との距離は300mmとした。シート(1)上の一点に対する紫外線の照射時間は13秒とした。
その後、透明基材(7)を剥離して、光制御板(11)を得た。この光制御板の硬化膜(6)のゲル分率および硬化膜の状態を表1に示す。
【0021】
比較例2
ポリプロピレングリコール(平均分子量3000)2モルあたり、2.7モルのヘキサメチレンジイソシアネート、0.3モルのトリレンジイソシアネートおよび2モルの2−ヒドロキシエチルアクリレートを反応させて得られたポリエーテルウレタンアクリレート〔平均分子量6000、屈折率1.460〕30重量部に、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート(屈折率1.526)70重量部および光重合開始剤〔2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン〕1.5重量部を添加して混合し、光重合性組成物を得た。
比較例1で得た光重合性組成物に代えて上記で得た光重合性組成物を用いた以外は比較例1と同様に操作して、シート上に硬化膜を形成した。この硬化膜のゲル分率および状態を表1に示す。
【0022】
実施例2
比較例2と同様に操作してシート上に硬化膜を形成し、この硬化膜の上に透明基材〔ポリエチレンテレフタレートフィルム、厚み38μm〕をラミネーターにて密着するようにラミネートする以外は、実施例1と同様に操作して光制御板を得た。この光制御板の硬化膜のゲル分率および硬化膜の状態を表1に示す。
【0023】
比較例3
硬化膜の上に透明基材〔ポリエチレンテレフタレートフィルム、厚み38μm〕をラミネートすることなく紫外線を照射した以外は実施例1と同様に操作して、光制御板を得た。この光制御板の硬化膜のゲル分率および硬化膜の状態を表1に示す。
【0024】
比較例4
硬化膜の上に透明基材〔ポリエチレンテレフタレートフィルム、厚み38μm〕をラミネートすることなく紫外線を照射した以外は実施例2と同様に操作して、光制御板を得た。この光制御板の硬化膜のゲル分率および硬化膜の状態を表1に示す。
【0025】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【図1】シート上に形成した光重合性組成物からなる膜状体に特定の方向から光を照射して該膜状体を硬化する工程を示す断面模式図である。
【図2】硬化膜の上に透明基材を密着するようにラミネートした後に光を照射する工程を示す断面模式図である。
【符号の説明】
1:シート
2:光重合性組成物の膜状体
3:コンベアー
4:光源
5:遮光板
6:硬化膜
7:透明基材
8:コンベアー
9:光源
10:スリガラス
11:光制御板
Claims (5)
- シート上に形成した光重合性組成物からなる膜状体に、特定の方向から光を照射して該膜状体を硬化させて硬化膜を得たのち、該硬化膜の上に透明基材を密着するようにラミネートした後に光を照射することを特徴とする光制御板の製造方法。
- 特定の方向から照射される光が紫外線であり、ラミネートした後照射される光が紫外線である請求項1に記載の製造方法。
- ラミネートした後に照射される光が拡散光である請求項1に記載の製造方法。
- 光重合性組成物が、互いに屈折率が異なる二種以上の重合性二重結合を有するモノマーおよび/または重合性二重結合を有するオリゴマーの組成物、重合性二重結合を複数有するモノマーもしくは重合性二重結合を複数有するオリゴマーであって硬化前後の屈折率が異なるもの、または互いに屈折率が異なる二種以上の重合性二重結合を有するモノマー、重合性二重結合を有するオリゴマーもしくは重合性二重結合を複数有するモノマーもしくは重合性二重結合を複数有するオリゴマーであって硬化前後の屈折率が異なるものと、屈折率がこれらと異なる光重合性を有しない化合物との組成物である請求項1に記載の製造方法。
- 互いに屈折率が異なる二種以上の重合性二重結合を有するモノマーおよび/または重合性二重結合を有するオリゴマーの屈折率差が0.01以上である請求項4に記載の製造方法。
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