JP3760289B2 - 空気巻き込み防止シールド板を有する粉体ノズル - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、粉体コーティング加工において、二つの開放端を有する中空管状物品の内部表面に粉体コーティング剤をコ−ティングするための、粉体ノズルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
飲料や食料品などを缶詰にする場合、容器である缶が、内容物によって腐食されたり、逆に缶材成分が内容物中に溶出して、うま味などを損なうのを防止する等の目的で、従来より缶の内面にコーティングが施されてきた。これらコーティング加工には、従来液状コーティング剤が多用されてきた。しかし最近、大気汚染、悪臭防止や有機溶剤等による環境汚染を防止する等の観点や、うま味などに対しても効果のある無溶媒型のコーティング剤の利点などから、無公害型の粉体コーティング剤を用いた、コーティング技術の開発要請が高まり、粉体コーティング剤を用いた缶の内面のコーティング加工が徐々に普及しつつある。
【0003】
このような缶の内面に粉体コーティング剤を塗布する方法の一つとして、特開平2ー233160号(出願人:ノードソンコーポレーション)に示される方法が提案されている。本発明は、缶の内面すなわち中空管状物品の内面を粉体コーティング剤でコーティングするノズルにおいて上記した特開平2ー233160号に示されているようなノズル構造の改良に関するものである。特に二つの開放端を有する中空管状物品、いわゆるスリーピース缶と呼ばれている缶胴の内部表面をコーティングするのに適したものである。
【0004】
すなわち従来行われていた粉体コーティングするためのノズルを図8を用いて説明する。図において符号50は粉体コーティング剤52を噴出するノズルである。51は被塗物すなわち二つの開放端を有する中空管状物品であり、図示されないコンベアー等によって運ばれ、ノズル50の前面所定位置に位置決めされると、あらかじめ上流において図示されない静電帯電装置で静電帯電された粉体コーティング剤52は、搬送用の空気流と共にノズル50から被塗物である中空管状物品51の内部表面へ向けて噴出し、静電気の引力によって中空管状物品51の内部表面にコーティングされる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来の粉体コーティング剤52を噴出するノズル50には、次のような問題があった。すなわち、ノズル50の構造では中空管状物品51の管直径寸法は、通常100mm以上であるものの内部表面をコーティングすることしかできなかった。つまり中空管状物品51の管径寸法が100mm以下になると、中空管状物品51の内部表面を全面コ−ティングしようとしたとき、噴出された粉体コ−ティング剤52の噴出パタ−ンが、中空管状物品51の100mm以下になった管直径寸法よりも広くなってしまい、中空管状物品51の内部表面にだけではなく、外部表面までにも、粉体コーティング剤52が付着してしまい外部表面を汚してしまう。
【0006】
また、従来の方法では軸方向53にノズル50が、二つの開放端を有する中空管状物品51の、どちらか一方の開放端側へ固定設置し粉体コ−ティングする方法、又は管直径寸法が100mm以上である場合の中空管状物品51の内部において、ノズル50が軸方向53に往復動しながら粉体コ−ティングさせる方法がある。往復動させる方法では中空管状物品51の一個あたりの粉体コーティングに時間がかかりすぎてしまうため、ノズル50は固定設置での粉体コ−ティングの方が生産性があがるので、固定設置の方が選択されてきた。しかし、ノズル50を中空管状物品51との最適間隔寸法より離してしまっての固定設置では、中空管状物品51の管直径寸法が100mm以上であっても、外部表面を汚してしまう。そこで外部表面が汚れないようにノズル50を中空管状物品51との最適間隔寸法に近づけて固定設置しても、中空管状物品51の二つの開放端から数センチの範囲gにわたって、粉体コ−ティング剤52が満足にコ−ティングされない部分ができる。コーティングが満足に施されない部分の長さは、中空管状物品51の形状、粉体の種類、搬送用空気流量などの種々の条件によって異なる。その上、コーティングされた部分においても、中空管状物品51の内部表面の粉体コ−ティング剤52の、塗着膜厚の状態は非常に不均一である。これらは、生産ラインの下流位置に、中空管状物品51の他の開放端すなわち反対側位置にまったく同様のノズルを設け、反対側からも粉体コ−ティング剤52をコ−ティングする、いわゆる2ステップコ−ティングによる両端側からの粉体コ−ティングによっても、粉体コ−ティング剤52の塗着量が局部的に増すだけで、膜厚の全面均一化の改善は図れなかった。
【0007】
このような問題点は以下の必要条件の妨げになる。それは噴出された粉体コ−ティング剤を、被塗物である中空管状物品の内部表面の両側開放端まで全面均一にコ−ティングでき、更に中空管状物品の外部表面に粉体コ−ティング剤が付着しないことである。これらの条件が達成できない原因をまとめると次のとおりである。つまり、中空管状物品の内部表面の両側開放端まで全面均一コ−ティングができないのは、ノズル外形寸法に対して中空管状物品の管直径寸法が大きく、その隙間から、ノズルからでる噴出流により発生する吸入作用による、外部からの必要以上の巻き込み空気の流入によって、中空管状物品の内部において、粉体コ−ティング剤が吹き飛ばされたり、制御されない悪い状態の乱流が発生する等のためである。また、中空管状物品の外部表面に粉体コ−ティング剤が付着して汚してしまうのは、中空管状物品の内部表面を全面コ−ティングしようとすると、ノズルを中空管状物品から離して固定設置しなければならないためである。
【0008】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、二つの開放端を有する中空管状物品の内部表面を粉体コーティング剤でコーティング加工する際に、全面均一に塗着し、しかも高塗着率が得られ、更に中空管状物品の外部表面に粉体コ−ティング剤が付着して汚さない構造の、粉体コーティング剤を噴出するための粉体ノズルを提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の課題を解決するために次のような構成とした。すなわち、粉体コーティング剤を噴出するノズル(1)の先端と被塗物である中空管状物品(3)の開放端が対向して配され、該ノズルから該粉体コーティング剤を噴出させて該中空管状物品の内部表面をコーティングする粉体ノズルであって、該ノズルの先端部に該ノズルの噴出流のおこす吸入作用により該中空管状物品の開放端外部より流入する巻き込み空気を調整するためのシールド板(2)が設けられており、そのシールド板の直径寸法は、該中空管状物品(3)の管直径寸法よりも大きいことを特徴とする、空気巻き込み防止シールド板を有する粉体ノズルとした。
【0010】
また、シ−ルド板(10)がノズル(11)の軸方向(12)に前後調節可能であり中空管状物品(13)との間隔寸法(b)を調整できることを特徴とする、空気巻き込み防止シ−ルド板を有する粉体ノズルとした。
【0011】
また、空気量調整のための穴(21)をあけたシ−ルド板(20)又は、外周に切り欠き(22)を設けたシ−ルド板(20)がノズルに設けられていることを特徴とする、空気巻き込み防止シ−ルドを有する粉体ノズルとした。
【0012】
【作用】
次に本発明の作用について説明する。本発明では、前記したような構成の空気巻き込み防止シ−ルド板を有する粉体ノズルとしたので、ノズル(1)から噴出された粉体コーティング剤(4)の噴出流は、ノズル(1)噴出側に取り付けられている、中空管状物品(3)の管直径寸法より、大きい直径寸法を有するシ−ルド板(2)によって、中空管状物品(3)開放端の外部から噴出流のおこす吸入作用により流入しようとする、巻き込み空気を最適条件に調整することにより、噴出流の速度が制御されるうえ、良好な状態の乱流をおこし、被塗物である中空管状物品(3)の内部表面にノズル(1)側の開放端から反対の開放端まで全面に、粉体コーティング剤(4)を均一にコーティングすることができる。更に上記の作用によって、噴出された粉体コーティング剤(4)が中空管状物品(3)の内部表面との接触機会が増加される。これにより粉体コーティング剤(4)に帯電された静電気による引力が効果を発揮し高い塗着効率も得られる。また、シ−ルド板(2)が取り付けられているノズル(1)を、中空管状物品(3)との間隔寸法(a)において必要以上にあけることなく、最適条件に調整し固定設置できる。そのことにより中空管状物品(3)の外部表面への粉体コ−ティング剤(4)の付着による汚れもなくなった。
【0013】
【実施例】
以下本発明の空気巻き込み防止シ−ルド板を有する粉体ノズルを、その実施例を示す図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明の空気巻き込み防止シ−ルド板を有する粉体ノズルを示す。図において符号1は粉体コーティング剤4を噴出するノズルである。2は空気の巻き込を最適条件に調節するシ−ルド板である。3は二つの開放端を有する中空管状物品で管直径寸法は10mm以上から100mm以下が望ましく、管長寸法は5mm以上から500mm以下が望ましい。特に対象になる中空管状物品3の管直径寸法は30mmから70mm、管長寸法は80mmから200mmである。シ−ルド板2は円盤状でその直径寸法は被塗物である中空管状物品3の管直径寸法よりも大きい方が良い。シ−ルド板2の直径寸法は、中空管状物品3の管直径寸法より、5mm以上から60mmまでの大きい直径寸法にしたときが、一番良い効果を得られることができる。実験による最も望ましいシ−ルド板2の直径寸法は中空管状物品3の管直径寸法より20mmから30mm大きい数値である。シ−ルド板2と中空管状物品3の開放端の間隔寸法aは限りなく0mmに近い数値から30mmの間で効果を示すが、実験結果による望ましい間隔寸法は1mmから8mmである。
【0014】
また、ノズル1の噴出経路5および噴出穴6の形状、長さ、噴出穴の数量などは被塗物すなわち中空管状物品3の形状に合わせて、最適の形状が選択されるので、限定されるものではない。噴出穴の数量は図8に示したノズル50の噴出穴54のように複数にわたってもよい。
【0015】
また、実験によるノズル1およびシ−ルド板2の材質はフッ素系樹脂で良好な結果を得たが、ポリプロピレンなどの成型、加工などが可能なあらゆる樹脂でも良い。また、一例をあげると、ノズル1およびシ−ルド板2の材質は、セラミック、ガラス、金属および金属の表面にコーティング等の加工したものなどを用いることもできる。したがってノズル1およびシ−ルド板2材質は、被塗物すなわち中空管状物品の種類や材質など、粉体コ−ティング剤の種類や材質など各種の条件によって最適の材質が選択されるので、限定されるものではない。
【0016】
このように構成された空気巻き込み防止シ−ルド板を有する粉体ノズルの実施例の作用を説明する。まず、被塗物すなわち中空管状物品3は図示されないコンベア等によって運ばれ、ノズル1の前面所定位置に位置決めされると、あらかじめ上流において図示されない静電帯電装置で静電帯電された粉体コーティング剤4は、搬送用の空気流と共にノズル1から被塗物である中空管状物品3の内部表面に向けて噴出し、静電気の引力によって中空管状物品3の内部表面にコーティングされる。
【0017】
そして粉体コ−ティング剤4は噴出流となって、中空管状物品3の軸方向7に向かって直進しようとするが、ノズル1側の中空管状物品3の開放端から、噴出流によって発生する吸入作用により、中空管状物品3の開放端外部から巻き込み空気が流入しようとするのを、シ−ルド板2の制御効果によって巻き込み空気が最適条件になる。すなわち粉体コーティング剤4の搬送用空気以外に、中空管状物品3の内部に不必要な空気を混入させず、必要量の空気流入をシ−ルド板2によって調節することにより、噴出流は中空管状物品3内部において流速が制御され、同時に良好な状態の乱流をおこすことにより、粉体コーティング剤4は中空管状物品3の二つの開放端まで内部表面の全面に均一にコーティングされる。
【0018】
シ−ルド板2は粉体コーティング剤4噴出側からみて、図3のシ−ルド板20のように、一個以上複数個の穴21をあけ流入する空気を調整し所望する乱流をおこしたりし、塗着を均一化したりすることもできる。穴21の数量、形状などは被塗物すなわち中空管状物品の形状に合わせ、最適の形状が選択されるので、限定されるものではない。また、図4のシ−ルド板20のように外周に切り欠き22を、一個以上複数個設けることも上記シ−ルド板20と同様な効果を発生させることができる。切り欠き22の数量、形状などは被塗物すなわち中空管状物品の形状に合わせ、最適の形状が選択されるので、限定されるものではない。
【0019】
図1においてシ−ルド板2はノズル1と一体になっているが、図5に示すようにシ−ルド板30とノズル31は分割でき、二つ以上の部品構成にしても良い。更に図2のようにシ−ルド板10はノズル11の軸方向12へ移動が可能であり、中空管状物品13の開放端より任意の位置に取り付けても良い。つまりノズル11と中空管状物品13の間隔寸法cはそのままで、シ−ルド板10のみ中空管状物品13の開放端との間隔寸法b、又は間隔寸法dといった任意の位置に取り付けが可能になる。
【0020】
本発明は図1に示された被塗物である中空管状物品3のような二つの開放端管径が同直径寸法のものばかりでなく、図6に示されるような二つの開放端管径のように、管直径寸法e及び管直径寸法fが異なった異径の管直径寸法の中空管状物品40などにも使用可能である。図6に示された被塗物である中空管状物品40の管直径寸法eが10mm以上であり、管直径寸法fが100mm以下であれば、ストレートな形状の中空管状物品でなくともコーティングできる。また、図7に示されるように、中空管状物品41の形状がストレ−トでなく変型していても、管直径寸法が10mm以上から100mm以下であればコ−ティングでき、被塗物の形状については、二つの開放端を有する中空管状物品であれば特に限定されるものではない。
【0021】
本発明者らの実験によれば、シ−ルド板と中空管状物品の開放端との間隔寸法を4mm離した状態で、管直径寸法が50mm、管長寸法が150mmの中空管状物品である飲料用缶の内部表面を、粉体コーティング剤でコーティングをおこない、同一条件のもとで、被塗物つまり飲料用缶の内部表面に塗着した粉体コーティング剤の塗着量を計測したところ、従来技術によるコーティング方法に比べ、重量比でおよそ2倍もの塗着効率の改善が達成されただけでなく、塗着の膜厚分布も均一になることに成功した。
【0022】
【発明の効果】
本発明の空気巻き込み防止シ−ルド板を有する粉体ノズルは、上記のような構成としたので、被塗物である二つの開放端を有する中空管状物品の内部表面を、粉体コーティング剤でコーティング加工する際に、ノズルから噴出した粉体コーティング剤を中空管状物品の内部表面全面に均一に塗着し、しかも高塗着率が得られ、更に中空管状物品の外部表面に粉体コ−ティング剤が付着して汚さない構造の、空気巻き込み防止シ−ルド板を有する粉体ノズルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の空気巻き込み防止シ−ルド板を有する粉体ノズルの実施例を示す断面図。
【図2】本発明のシ−ルド板と分割されたノズルとの取り付け方法応用例を示す断面図。
【図3】本発明の空気巻き込み防止シ−ルド板を有する粉体ノズルのシ−ルド板の変形応用例を示す正面図。
【図4】本発明の空気巻き込み防止シ−ルド板を有する粉体ノズルのシ−ルド板の変形応用例を示す正面図。
【図5】本発明のシ−ルド板と粉体ノズルの分割構成例を示す断面図。
【図6】中空管状物品の変形応用例を示す断面図。
【図7】中空管状物品の変形応用例を示す断面図。
【図8】従来行われていた中空管状物品に粉体コ−ティング剤を噴出するための方法を示す断面図。
【符号の説明】
1・・・ノズル、2・・・シ−ルド板、3・・・中空管状物品、10・・・シ−ルド板、11・・・ノズル、12・・・軸方向、20・・・シ−ルド板、21・・・穴、22・・・切り欠き
Claims (3)
- 粉体コーティング剤を噴出するノズル(1)の先端と被塗物である中空管状物品(3)の開放端が対向して配され、該ノズルから該粉体コーティング剤を噴出させて該中空管状物品の内部表面をコーティングする粉体ノズルであって、該ノズルの先端部に該ノズルの噴出流のおこす吸入作用により該中空管状物品の開放端外部より流入する巻き込み空気を調整するためのシールド板(2)が設けられており、そのシールド板の直径寸法は、該中空管状物品(3)の管直径寸法よりも大きいことを特徴とする、空気巻き込み防止シールド板を有する粉体ノズル。
- シールド板(10)がノズル(11)の軸方向(12)に前後調節可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載された、空気巻き込み防止シールド板を有する粉体ノズル。
- 空気量調整のための穴(21)又は、外周に切り欠き(22)を設けたシールド板(20)がノズルに設けられる構成を特徴とする請求項1、又は請求項2に記載された、空気巻き込み防止シールド板を有する粉体ノズル。
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