JP3760216B2 - 粉体塗料用樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規にして有用なる粉体塗料用樹脂組成物に関する。より詳細には、本発明は、脂環式構造単位という特定の構造単位を有する、しかも、イソフタル酸をも用いて得られる、水酸基末端ポリエステル樹脂と、此の水酸基と反応し得る官能基を有する硬化剤とを、必須の皮膜形成成分として含有することから成る、とりわけ、層間密着性(以下、上塗り付着性ともいう。)外観ならびに耐候性などに優れた塗膜を与えるという、極めて実用性の高い粉体塗料用樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
有機溶剤を含有しない塗料の一形態として粉体塗料があるが、近年、大気汚染などの環境問題の観点より、その低公害性が注目され、使用量も、年々、増加している。かかる粉体塗料の用途としては、家電・建材用などのような金属製品の塗装用をはじめ、その用途は多岐に亘るが、塗装時に揮発する溶剤が、実質的に無いという粉体塗料の特徴から、自動車用塗装剤としても適用の検討が進んでいる。
【0003】
現在、実用に供されている粉体塗料用樹脂組成物としては種々のものがある。たとえば、グリシジル基含有アクリル共重合体と、脂肪族二塩基酸とから構成される、いわゆるアクリル系粉体塗料(以下、アクリル系粉体塗料という。)は、それから得られる塗膜の耐候性ならびに耐汚染性などが良好であるという処からも、主として、屋外用を中心に利用されている。
【0004】
また、水酸基を、主として有するポリエステル樹脂と、ブロック・ポリイソシアネート化合物とを組み合わせて得られる組成物は、良好なる外観と機械的物性などとを有していて、塗膜の美粧性や、可撓性などの要求されるような用途、たとえば、家電製品用や、建材用などの用途に、広く利用されている。
【0005】
ところが、上掲したような、ブロック・ポリイソシアネート化合物を、硬化剤として含有するという形の粉体塗料用樹脂組成物(以下、ポリエステル系粉体塗料という。)は、得られる塗膜の、とりわけ、耐候性が、上掲したようなアクリル系粉体塗料から得られる塗膜のそれと比較した場合に、劣るものであるという処からも、かかる耐候性が、高度に要求されるような用途、たとえば、自動車上塗り塗料用や、自動車中塗り塗料用などの用途には、到底、利用し適用することが出来ないというものであった。
【0006】
ここにおいて、自動車中塗り塗料に関しての補足説明をすることにすると、通常は、当該中塗り塗料には、自動車上塗り塗料に要求されるほどの、高度の耐候性は要求されない場合が多い。しかしながら、いわゆるメタリック塗装が施されるような場合などには、こうした塗装に使用される中塗り塗料から得られる塗膜の耐候性が充分でないと、その上層に形成される、それぞれ、アルミ粉などを含有するメタリック・ベース塗膜層ならびに最上層に形成される透明トップコート塗膜層を、太陽光が透過することにより、此の中塗り塗膜層の劣化が起こり、ひいては、塗膜の層間剥離などといった、重大なる問題が発生することも認められている。
【0007】
また、外観、機械的物性ならびにコストなどの観点からは、上掲したポリエステル系粉体塗料を、中塗り塗料として利用することが望ましいけれども、そうした場合においても、上述したような層間剥離の問題があるという処から、使用されるには到っていないというのが実状である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来型の技術に従う限りは、どうしても、外観ならびに耐候性などにも優れた塗膜を与え得るし、しかも、とりわけ、上塗り付着性という層間密着性などにも優れた塗膜を与え得るという、極めて実用性の高い粉体塗料を、そのための粉体塗料用樹脂組成物を提供するということは、頗る、困難であった。
【0009】
そのために、本発明者は、こうした従来型の技術における諸々のの欠点を解消するべく、鋭意、研究を開始した。したがって、本発明が解決しようとする課題は、一にかかって、外観ならびに耐候性などにも優れた塗膜を与えるということは、もとよりのこと、特に、上塗り付着性という層間密着性などにも優れた塗膜を与えるという、極めて実用性の高い粉体塗料用樹脂組成物を提供するということにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者は、上述したような従来型技術における種々の欠点・問題点を解消するべく、加えて、上述したような発明が解決しようとする課題に照準を合わせて、鋭意、検討を重ねた結果、次のような脂環式構造単位(1)
【0011】
【化5】
【0012】
(ただし、上記した構造単位中における置換基の位置は、オルソ位、メタ位またはパラ位の、いずれかの位置を表わすものとする。)
【0013】
を有するし、しかも、酸成分としては、イソフタル酸を必須の原料成分として用いて得られる、特定範囲の水酸基価ならびに特定範囲の環球法による軟化点を有するというポリエステル樹脂と、該ポリエステル樹脂の水酸基と反応し得る官能基を有する硬化剤とを、必須の皮膜形成成分として含有することから成る粉体塗料用樹脂組成物を見出すと共に、中塗りとして、あるいは下塗り塗料として利用して、いわゆる複層塗膜を形成させた場合には、非常に良好なる塗膜外観が得られることは、勿論のこと、上塗り付着性も亦、従来型の粉体塗料用樹脂組成物を中塗り塗料に利用した場合に比して、格段に向上化することを見出すに及んで、ここに、本発明を完成させるに到った。
【0014】
すなわち、本発明は、基本的には、上掲したような特定の脂環式構造単位を有するグリコール類(a−1)または上掲したような特定の脂環式構造単位を有する多塩基酸類(a−2)のうちの少なくとも一方を、必須の原料成分とし、しかも、酸成分として、イソフタル酸をも、必須の原料成分とし、且つ前記イソフタル酸を全酸成分に対して50モル%以上を用いて得られる、水酸基価が10〜350(mgKOH/g)で、かつ、環球法による軟化点が80〜150℃なるポリエステル樹脂[A](但し、前記ポリエステル樹脂[A]を構成するグリコール類及び多塩基酸類の合計に対する1,4−シクロヘキサンジメタノールの割合が13モル%以上のものを除く。)と、該ポリエステル樹脂[A]の水酸基と反応し得る官能基を有する硬化剤[B]とを、必須の皮膜形成成分として含有することから成る、粉体塗料用樹脂組成物を提供しようとするものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
上述したような従来型技術における種々の欠点ないしは課題を解決するための手段を述べることにすると、本発明は、脂環式構造単位(1)を有するグリコール類(a−1)または脂環式構造単位(1)を有する多塩基酸類(a−2)のうち少なくとも一方を必須成分とし、かつ、酸成分としてイソフタル酸をも必須成分とし、且つ前記イソフタル酸を全酸成分に対して50モル%以上用いて得られる、水酸基価が10〜350(mgKOH/g)で、かつ、環球法による軟化点が80〜150℃であるポリエステル樹脂[A](但し、前記ポリエステル樹脂[A]を構成するグリコール類及び多塩基酸類の合計に対する1,4−シクロヘキサンジメタノールの割合が13モル%以上のものを除く。)と、該ポリエステル樹脂[A]の水酸基と反応し得る官能基を有する硬化剤[B]とを、必須の皮膜形成成分として含有することから成る、粉体塗料用樹脂組成物を開示するというものであるし、
【0016】
さらには、此のポリエステル樹脂[A]の水酸基と反応し得る官能基を有する硬化剤[B]が、それぞれ、ブロック・ポリイソシアネート化合物、あるいは次のような構造式(2)
【0017】
【化6】
【0018】
で示されるウレトジオン構造を、分子内に有するという、いわゆるセルフ・ブロック・ポリイソシアネート化合物を、単独で用いるか、これらを併用するという形の粉体塗料用樹脂組成物をも開示するというものである。
【0019】
さらに、本発明に係る粉体塗料用樹脂組成物の構成について、以下に、詳細に述べることとする。
【0020】
本発明に係る、此の粉体塗料用樹脂組成物の一必須構成成分たる、前記したポリエステル樹脂[A]は、公知慣用の種々の方法で調製することが出来る。一般的には、グリコール類と、多塩基酸類とを、脱水縮合せしめるという方法が、最も簡便であるので、特に推奨されよう。
【0021】
本発明における一必須構成成分たる当該ポリエステル樹脂[A]は、前掲したような特定の脂環式構造単位(1)を有するグリコール類(a−1)または前掲したような特定の脂環式構造単位(1)を有する多塩基酸類(a−2)のうち少なくとも一方を、必須の原料成分として用い、しかも、酸成分としては、イソフタル酸をも必須の原料成分として用いて得られるという形の樹脂を指称するものである。
【0022】
必須原料成分として使用できる脂環式構造単位を有するグリコール類(a−1)として特に代表的なるもののみを例示するにとどめれば、1,4−シクロヘキサンジメタノールまたは水添ビスフェノールA、あるいは水添ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物または水添ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などのような、種々の脂環式グリコール類などである。
【0023】
また、同様に、必須原料成分として使用できる脂環式構造単位を有する多塩基酸類(a−2)として特に代表的なるもののみを例示するにとどめれば、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸または1,3−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式カルボン酸類などであるし、あるいはヘキサヒドロ無水フタル酸のような脂環族の酸無水物などである。これらの脂環式構造単位を有するグリコール類(a−1)または多塩基酸類(a−2)は、それぞれ、単独使用であってもよいし、あるいは2種以上の併用であってもよいことは、勿論である。
【0024】
また、当該ポリエステル樹脂[A]は、イソフタル酸をも必須原料成分の一つとして用いて得られるものであるが、さらには、これらの必須原料諸成分に加えて、当該ポリエステル樹脂を調製する際に使用される、各種のグリコール類や多塩基酸類をも使用することが出来る。
【0025】
それらのうちでも特に代表的なもののみを例示するにとどめれ、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート、ペンタエリスリトールまたはジペンタエリスリトールなどである。
【0026】
また、多塩基酸類として特に代表的なもののみを挙げるにとどめれば、無水フタル酸、テレフタル酸、無水琥珀酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、テトラブロム無水フタル酸、テトラクロル無水フタル酸、無水ヘット酸、無水ハイミック酸〔「ハイミック酸」は、日立化成工業(株)の登録商標である。〕、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸無水物または無水ピロメリット酸などである。
【0027】
さらに、これらの多価アルコールまたは多塩基酸以外にも、メタノール、プロパノールもしくはブタノールまたはベンジルアルコールなどのような種々の1価アルコールや、安息香酸またはp−tert−ブチル安息香酸などのような種々の一塩基酸であるとか、ひまし油脂肪酸、ヤシ油脂肪酸または大豆油脂肪酸などのような種々の脂肪酸類や、ジメチロールプロピオン酸またはヒドロキシピバリルピバレートなどのような、一分子中に水酸基とカルボキシル基との両方を有する種々の化合物や、さらには、エポキシ樹脂または「カーデュラE10」(オランダ国、シェル社製の、分岐脂肪酸のグリシジルエステルの商品名)などのような種々のエポキシ基を有する化合物をも使用することが出来る。
【0028】
当該ポリエステル樹脂[A]を調製する際に使用するという、前掲したような特定の、脂環式構造単位を有するグリコール類(a−1)または多塩基酸類(a−2)の使用量としては、使用する全原料中、3重量%以上であることが望ましい。これらの特定の、脂環式構造単位を有するグリコール類(a−1)または多塩基酸類(a−2)の使用量が3重量%よりも少ないと、どうしても、得られる塗膜の、とりわけ、耐候性などが劣るようになるために、塗膜の層間剥離が起こり易くなり、したがって、上塗り付着性が低下するようになり易くなるので、好ましくない。
【0029】
当該ポリエステル樹脂[A]を構成する酸成分のうちの、イソフタル酸の使用量としては、使用する全酸成分中、20モル%以上が、好ましくは、50モル%以上が適切である。
【0030】
イソフタル酸の使用量が20モル%よりも少ないというような場合には、どうしても、得られる塗膜の、とりわけ、耐候性ならびに耐ブロッキング性などが劣るようになるなるので、好ましくない。
【0031】
当該ポリエステル樹脂[A]の水酸基価としては、10〜350(mgKOH/g)なる範囲内が、好ましくは、250〜350(mgKOH/g)なる範囲内が適切である。
【0032】
水酸基価が10(mgKOH/g)よりも小さいと、どうしても、中塗り塗膜の、とりわけ、耐溶剤性などが不足するために、得られる塗膜の外観が劣るし、同時に、塗膜の層間剥離が起こるようになり易いし、一方、350よりも大きいと、どうしても、得られる塗膜の、とりわけ、平滑性などが劣り易くなるので、いずれの場合も好ましくない。
【0033】
さらに、当該ポリエステル樹脂[A]の、環球法による軟化点としては、80〜150℃の範囲内が適切である。此の 軟化点が80℃よりも低いと、どうしても、得られる粉体塗料の、とりわけ、耐ブロッキング性などが劣るようになるし、一方、軟化点が150℃よりも高い場合には、得られる塗膜の、とりわけ、平滑性が不十分となり易くなるので、いずれの場合も好ましくない。
【0034】
一方、当該ポリエステル樹脂[A]中の水酸基と反応し得る官能基を有する硬化剤[B]とは、分子中に、此の水酸基と反応する官能基を有する化合物を指称するものであるが、そうした形の化合物として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、アミノプラスト、ポリイソシアネート化合物類またはブロック・ポリイソシアネート化合物類などである。
【0035】
まず、上記したアミノプラストとして特に代表的なもののみを挙げるにとどめれば、メラミン、尿素、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、ステログアナミンまたはスピログアナミンの如き、種々のアミノ基含有化合物と、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒドまたはグリオキザールの如き、種々のアルデヒド系化合物成分とを、公知慣用の種々の方法により反応せしめることによって得られる形の縮合物、あるいは此等の各縮合物を、アルコール類でエーテル化せしめることによって得られる形の化合物ものなどであるが、通常、塗料用として使用されているようなものであれば、いずれの化合物も使用できることは、勿論である。
【0036】
それらのうちでも、C1〜C4 なるアルコール類で、部分的に、あるいは完全にエーテル化せしめた形の化合物の使用が望ましく、かかるアミノプラストとして特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、ヘキサメチルエーテル化メチロールメラミン、ヘキサブチルエーテル化メチロールメラミン、メチルブチル混合エーテル化メチロールメラミン、メチルエーテル化メチロールメラミン、ブチルエーテル化メチロールメラミンまたはイソブチルエーテル化メチロールメラミンあるいは其れらの縮合物などである。
【0037】
次いで、上記したポリイソシアネート化合物類として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、ヘキサメチレンジイソシアネートもしくはトリメチルヘキサメチレンジイソシアネートの如き、種々の脂肪族ジイソシアネート類;キシリレンジイソシアネートもしくはイソホロンジイソシアネートの如き、種々の環状脂肪族ジイソシアネート類;
【0038】
またはトリレンジイソシアネートもしくは 4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートの如き、種々の芳香族ジイソシアネート類などで代表されるような有機ジイソシアネート化合物などをはじめ、さらには、此等の有機ジイソシアネート化合物と、多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂(ポリエステルポリオール)または水などとの付加物などであるし、あるいは上掲したような有機ジイソシアネート同志の重合体(イソシアヌレート型ポリイソシアネート化合物をも含む。)や、イソシアネート・ビウレット体などである。
【0039】
さらに、上記したブロック・ポリイソシアネート化合物として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、上掲したような種々のポリイソシアネート化合物を、ε−カプロラクタム、MEKオキシムまたは一価アルコールなどのような公知慣用の種々のブロック化剤で、ブロック化せしめて得られるもような形の化合物などであり、こうした形の化合物として特に代表的なる市販品のみを例示するにとどめることにするならば、
【0040】
「VESTANAT B1358/100」、「VESTAGON B1065もしくはB1530」(いずれも、ドイツ国ヒュルス社製の、ブロック・ポリイソシアネート化合物の商品名)や、「クレラン UIもしくはTPLS2151」[住友バイエルウレタン(株)製の、ブロック・ポリイソシアネート化合物の商品名]などである。
【0041】
また、ポリイソシアネート化合物として、分子内に、前掲したような構造式(2)で示されるウレトジオン結合を有するという、いわゆるセルフ・ブロック・タイプの化合物をも使用することが出来る。
【0042】
こうした形のセルフ・ブロック・タイプのポリイソシアネート化合物類として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、「VESTAGON BF1540もしくはEP−BF1300」(いずれも、前出社製の、ウレトジオン結合を有するセルフ・ブロック・タイプのブロック・ポリイソシアネート化合物の商品名)、「クレラン TPLS2147」(前出社製の、ウレトジオン結合を有するセルフ・ブロック・タイプのブロック・ポリイソシアネート化合物の商品名)などである。
【0043】
上述して来た、それぞれ、ポリエステル樹脂[A]および硬化剤[B]から構成される、本発明に係る粉体塗料用樹脂組成物を用いて、目的とする粉体塗料を調製するには、公知慣用の種々の方法が、そのまま、利用し適用できる。
【0044】
すなわち、一般的には、ポリエステル樹脂[A]および硬化剤[B]を、さらに必要に応じて、顔料、硬化促進剤または表面調整剤などのような、種々の添加剤成分を混合し、溶融混練せしめたのちに、さらに、微粉砕せしめるという、いわゆる機械粉砕方式によるのが、特に簡便であるので、推奨されよう。
【0045】
かくして得られる本発明に係る粉体塗料用樹脂組成物、そして該粉体塗料用樹脂組成物から得られる粉体塗料は、公知慣用の種々の方法によって、被塗物基材上に、静電粉体塗装され、しかるのち、焼き付けされるということにより、目的とする硬化塗膜が、此の被塗物基材上に形成されるということになる。
【0046】
ここにおいて、上記した被塗物基材として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、アルミニウム、ステンレス・スチール、クロム・メッキ、トタン板またはブリキ板の如き、各種の金属素材または金属製品類;あるいは瓦類;ガラス類;または各種の無機質建材類などであり、
【0047】
具体的には、自動車車体または自動車(用)部品類、二輪車または二輪車(用)部品類などをはじめ、さらには、門扉またはフェンス類の如き、各種の建材類;アルミサッシ類の如き、各種の建築内外装用資材類;あるいアルミホイルなどのような種々の鉄ないしは非鉄金属類の諸素材ないしは諸製品類などである。
【0048】
【実施例】
次に、本発明を、参考例、実施例および比較例により、一層、具体的に説明することにするが、本発明は、決して、これらの例示例のみに限定されるものではない。なお、以下において、部および%は、特に断りの無い限り、すべて、重量基準であるものとする。
【0049】
参考例1[本発明において用いられるるポリエステル樹脂[A]の調製例〕
攪拌機、温度計、精留塔および窒素ガス導入口を備えた反応容器に、エチレングリコールの130部、1,4−シクロヘキサンジメタノールの302部およびトリメチロールプロパンの23部を仕込んで、窒素雰囲気中で、攪拌を続けながら、150℃にまで昇温した。
【0050】
ここへ、テレフタル酸の348部、イソフタル酸の348部およびジブチル錫オキサイドの0.5部を加えて、240℃にまで昇温した。同温度で、脱水縮合反応を続行せしめるということによって、水酸基価が30mgKOH/gで、かつ、環球法による軟化点が106℃なるポリエステル樹脂を得た。以下、これをポリエステル樹脂[A−1]と略記する。
【0051】
参考例2(同上)
攪拌機、温度計、精留塔および窒素ガス導入口を備えた反応容器に、ネオペンチルグリコールの289部と、トリメチロールプロパンの120部を仕込んで、窒素雰囲気下に、攪拌を続けながら、150℃にまで昇温した。
【0052】
ここへ、テレフタル酸の214部、イソフタル酸の429部、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の111部およびジブチル錫オキサイドの0.5部を加えて、240℃にまで昇温した。同温度で、脱水縮合反応を続行せしめるということによって、水酸基価が100mgKOH/gで、かつ、環球法による軟化点が110℃なるポリエステル樹脂を得た。以下、これをポリエステル樹脂[A−2]と略記する。
【0053】
参考例3(同上)
攪拌機、温度計、精留塔および窒素ガス導入口を備えた反応容器に、ネオペンチルグリコールの125部、水添ビスフェノールAの142部およびトリメチロールプロパンの340部を仕込んで、窒素雰囲気下に、攪拌を続けながら、150℃にまで昇温した。
【0054】
ここへ、イソフタル酸の335部、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の173部およびジブチル錫オキサイドの0.5部を加えて、240℃にまで昇温した。同温度で、脱水縮合反応を続行せしめるということによって、水酸基価が290mgKOH/gで、かつ、環球法による軟化点が110℃なるポリエステル樹脂を得た。以下、これをポリエステル樹脂[A−3]と略記する。
【0055】
参考例4〔対照用のポリエステル樹脂[A’]の調製例〕
攪拌機、温度計、精留塔および窒素ガス導入口を備えた反応容器に、エチレングリコールの141部、ネオペンチルグリコールの236部およびトリメチロールプロパンの30部を仕込んで、窒素雰囲気中で、攪拌を続けながら、150℃にまで昇温した。
【0056】
ここへ、テレフタル酸の757部およびジブチル錫オキサイドの0.5部を加えて、240℃にまで昇温した。同温度で、脱水縮合反応を続行せしめるということによって、水酸基価が35(mgKOH/g)で、かつ、環球法による軟化点が118℃なる、対照用のポリエステル樹脂を得た。以下、これをポリエステル樹脂[A’−1]と略記する。
【0057】
参考例5(同上)
攪拌機、温度計、精留塔および窒素ガス導入口を備えた反応容器に、エチレングリコールの130部、1,4−シクロヘキサンジメタノールの301部およびトリメチロールプロパンの25部を仕込んで、窒素雰囲気下に、攪拌を続けながら、150℃にまで昇温し、テレフタル酸の696部およびジブチル錫オキサイドの0.5部を加えて、240℃にまで昇温した。同温度で、脱水縮合反応を続行せしめるということによって、水酸基価が30(mgKOH/g)で、かつ、環球法による軟化点が115℃なる、対照用のポリエステル樹脂を得た。以下、これをポリエステル樹脂[A’−2]と略記する。
【0058】
参考例6(同上)
攪拌機、温度計、精留塔および窒素ガス導入口を備えた反応容器に、ネオペンチルグリコールの431部およびトリメチロールプロパンの35部を仕込んで、窒素雰囲気下に、攪拌を続けながら、150℃にまで昇温し、テレフタル酸の341部、イソフタル酸の341部およびジブチル錫オキサイドの0.5部を加えて、240℃にまで昇温した。
【0059】
同温度で、脱水縮合反応を続行せしめるということによって、水酸基価が40(mgKOH/g)で、かつ、環球法による軟化点が112℃なる、対照用のポリエステル樹脂を得た。以下、ポリエステル樹脂[A’−3]と略記する。
【0060】
参考例7〜13〔粉体塗料の調製例〕
それぞれ、第1表および第2表に示すような割合で、各別に、粉体塗料用樹脂組成物を配合せしめ、かくして得られる、それぞれの配合物を、「コ・ニーダーPR−46型」(スイス国ブス社製の、一軸混練機の商品名)を使用して、溶融混練せしめたのちに、微粉砕し、さらに、150メッシュの金網で分級せしめることによって、平均粒径が30〜40マイクロ・、メーター(μm)なる、各種の粉体塗料を調製した。これらの各粉体塗料を、第1表および第2表に示す通りの、[P−1]〜[P−7]と略記する。
【0061】
【表1】
【0062】
《第1表の脚註》
1) 「VESTAGON B1530」の略記で、ドイツ国ヒュルス社製の、イソホロンジイソシアネートのヌレート体を、ε−カプロラクタムでブロック化せしめた形のブロック・ポリイソシアネート化合物の商品名を表わす。
【0063】
2) 「VESTAGON BF1540」の略記で、同上社製の、イソホロンジイソシアネートを、ウレトジオン結合で以てセルフ・ブロック化せしめた形のブロック・ポリイソシアネート化合物の商品名を表わす。
【0064】
3) 大日本インキ化学工業(株)製の、ビスフェノールAのポリグリシジルエーテル・タイプのエポキシ樹脂の商品名
4) ドイツ国BASF社製の、表面調整剤の商品名
5) 「タイペーク CR−90」の略記で、石原産業(株)製の、ルチル型酸化チタンの商品名を表わす。
【0065】
6) 三菱化学(株)製の、カーボンブラックの商品名
【0066】
【表2】
【0067】
参考例14〔有機溶剤を媒体とする透明塗料の調製例〕
攪拌機、温度計、コンデンサーおよび窒素ガス導入口を備えた反応容器に、キシレンの500部を仕込み、攪拌下に、温度を120℃にまで上げた。次いで、スチレンの100部、メチルメタクリレートの200部、n−ブチルアクリレートの75部、2−ヒドロキシエチルメタクリレートの115部、アクリル酸の10部およびtert−ブチルパーオクトエートの10部からなる混合物を、4時間に亘って滴下した。
【0068】
滴下終了後も、同温度に、8時間のあいだ保持するということによって、不揮発分が50.2%で、溶液基準の水酸基価が48(mgKOH/g)で、かつ、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)によるポリスチレン換算の数平均分子量が5,300なる、水酸基含有アクリル系共重合体の有機溶剤溶液を得た。
【0069】
次いで、この樹脂溶液の100部に、「スーパーベッカミン L−117−60」[大日本インキ化学工業(株)製の、ブチルエーテル化メラミン・ホルムアルデヒド樹脂の商品名]の35.7部を加え、さらに、「ソルベッソ100」[エクソン化学(株)製の、芳香族炭化水素系溶剤の商品名]と、イソブタノールとの重量比率が70/30なる混合溶剤で、20℃における、フォード・カップNo.4による粘度が24秒となるまで希釈せしめることによって、目的とする透明塗料を得た。以下、これを透明塗料[X]と略記する。
【0070】
実施例2〜3ならびに比較例1〜3次に示すような塗膜形成方法に従って、第3表および第4表に示すような各種の塗膜を作製し、次いで、かくして得られる、それぞれの塗膜についての、性能評価判定試験(塗膜性能試験)を行なった。
【0071】
すなわち、参考例7〜13で調製した粉体塗料[P−1]〜[P−7]ならびに参考例14で調製した透明塗料[X]を使用して、次に示すような塗膜形成方法に従って、各種の塗膜を作製した。
【0072】
すなわち、まず、被塗物として使用する基材は、次のような前処理を施した形のものを用いた。つまり、「ボンデライト#3030」[日本パーカライジング(株)製の、燐酸亜鉛系処理剤で以て処理された軟鋼板の商品名]に、エポキシ樹脂系カチオン電着塗料を電着塗装せしめた形のものを用いた。
【0073】
次に、粉体塗料[P−1]などを、上記の被塗物基材に、焼き付け後の膜厚が約50μmとなるようにして静電粉体塗装せしめたのち、180℃/20分間なる条件下に焼き付けを行なった。しかるのち、かくして静電粉体塗装された、被塗物を室温にまで冷却してから、透明トップコート塗料[X]を塗装せしめた。
【0074】
この場合における塗装は、通常のエアースプレー塗装法により行なったものであり、また、焼き付けの条件としては、140℃/20分間とした。
【0075】
かくして得られた、それぞれの硬化塗膜について、諸性能の評価判定を行なった。それらの結果は、まとめて、第3表および第4表に示す。
【0076】
【表3】
【0077】
【表4】
【0078】
なお、評価判定の要領は、次の通りである。
【0079】
平滑性………………………………目視により評価判定した。評価判定の基準は次の通りである。
【0080】
◎…非常にスムーズなる平滑な塗面の場合
○…大きなラウンドが認められる場合
×…細かいチリ肌が認められる場合
【0081】
60度光沢…………………………60度鏡面反射率(%)による数値的評価判定試験。
【0082】
デュポン衝撃………………………デュポン衝撃試験器による評価判定試験(1/2インチ)。500gの荷重を落下させたときに、塗膜に割れなどの欠陥を生じない段階での高さ(cm)で表示した。この値が大きいほど、耐衝撃性が良好であることを意味している。
【0083】
エリクセン値………………………エリクセン試験機による評価判定試験。この値が大きいほど、塗膜の可撓性が良好であることを意味している。
【0084】
層間密着性…………………………塗板を、40℃の温水中に、10日間のあいだ浸漬せしめ、引き上げてから30分後に、塗膜に、カッターでクロス・カットを入れ、粘着テープによる剥離試験を行なった。評価判定の基準は、次の通りである。
【0085】
○…塗膜層同志の界面あるいは被塗物と塗膜層の間に、剥離が全く認められない場合
△…塗膜層同志の界面あるいは被塗物と塗膜層の間に、部分的ながら、剥離が認められる場合
×…全面的に、塗膜層の界面で以て、剥離が認められる場合
【0086】
耐候性………………………………QUV試験機(アメリカ国Q−PANEL社製品)による、1,000時間に及ぶ促進耐候性試験後の光沢保持率(%)で表示した。
【0087】
この値が高いほど、耐候性が良好であることを意味している。
【0088】
耐候性試験後の層間密着性………QUV試験機による促進耐試験候性で以て、600時間経過後に、試験板を取り出して、その塗膜に、カッターでクロス・カットを入れ、粘着テープによる剥離試験を行なった。
【0089】
評価判定の基準は、次の通りである。
【0090】
○…塗膜層同志の界面あるいは被塗物と塗膜層の間に、剥離が全く認められない場合
△…塗膜層同志の界面あるいは被塗物と塗膜層の間に、部分的ながら、剥離が認められる場合
×…全面的に、塗膜層の界面で以て、剥離が認められる場合
【0091】
【発明の効果】
以上までに記述して来た処からも、すでに、明らかとなったように、本発明に係る粉体塗料用樹脂組成物から得られる塗膜は、とりわけ、塗膜外観、機械的物性ならびに層間密着性などの諸物性に優れた硬化塗膜を与えるものであることが無理なく、理解され得よう。
【0092】
したがって、本発明に係る粉体塗料用樹脂組成物は、極めて実用性の高いものであることも、無理なく、知り得よう。
Claims (4)
- 次の脂環式構造単位
- 前記した、ポリエステル樹脂[A]の水酸基と反応し得る官能基を有する硬化剤[B]が、ブロック・ポリイソシアネート化合物である、請求項1に記載の自動車中塗り粉体塗料用樹脂組成物。
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