JP3759386B2 - 積層セラミックコンデンサおよびそれに用いる内部電極ペースト - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
この発明は積層セラミックコンデンサおよびそれに用いる内部電極ペーストに関し、特にたとえば、誘電体セラミック層と内部電極とが複数積層された積層セラミックコンデンサと、それを製造するときに用いられる内部電極ペーストに関する。
【0002】
【従来の技術】
積層セラミックコンデンサを製造する場合、誘電体セラミック材料を用いてセラミックグリーンシートを作製し、セラミックグリーンシート上に内部電極ペーストを印刷して積層し、得られた積層体が焼成される。しかしながら、誘電体セラミック層部分と内部電極部分とでは、焼成時における収縮開始温度が異なると、デラミネーションなどの内部欠陥や、内部電極のカバレッジ低下、およびそれに起因する静電容量値の低下、直列等価抵抗値の増大などの問題が発生しやすい。
【0003】
そこで、誘電体セラミック層に用いるセラミック粉末を内部電極ペースト中に添加することで、内部電極部分と誘電体セラミック層部分との収縮開始温度の差を小さくし、上述のような問題の低減を図っていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、内部電極ペーストに前記セラミック粉末を単に添加しても、誘電体セラミック層部分と内部電極部分との収縮開始温度差が±50℃以内という値を得ることができず、問題点の完全な解決には至っていなかった。
【0005】
それゆえに、この発明の主たる目的は、積層セラミックコンデンサの製造時に内部欠陥が生じにくい内部電極ペーストを提供することである。
また、この発明の目的は、このような内部電極ペーストを用いることにより、内部欠陥の少ない積層セラミックコンデンサを提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明は、誘電体材料としてCaZrO 3 ,SiO 2 ,MnCO 3 ,SrTiO 3 からなる誘電体セラミック層と内部電極とが積層された積層セラミックコンデンサの内部電極を形成するために用いられる内部電極ペーストであって、Ni金属粉末と、バインダと、溶剤と、前記誘電体セラミック層に誘電体材料として含まれる成分のみから構成されるセラミック粉末とを含み、セラミック粉末の添加量がNi金属粉末に対して5〜20重量%であり、セラミック粉末の収縮開始温度が誘電体セラミック層の材料の収縮開始温度に比べて+50℃〜+100℃の範囲にあり、かつ内部電極ペーストと誘電体セラミック層の材料との収縮開始温度差を27℃〜50℃の範囲となるように、CaZrO 3 に対してSiO 2 の添加量を調整した、内部電極ペーストである。
このような内部電極ペーストにおいて、セラミック粉末が前記Ni金属粉末の表面にコーティングされた構造とすることができる。
さらに、この発明は、上述のいずれかに記載の内部電極ペーストを用いた積層セラミックコンデンサであって、内部電極中に前記セラミック粉末が含まれた積層セラミックコンデンサである。
【0007】
誘電体セラミック層に含まれるセラミック粉末を内部電極ペーストに添加し、そのセラミック粉末の収縮開始温度が、誘電体セラミック層の材料の収縮開始温度に比べて+50℃〜+100℃の範囲にある場合に、誘電体セラミック層部分と内部電極部分の収縮開始温度の差が±50℃以内となることを見出した。それにより、積層体の焼成によって発生する内部欠陥を防止することができる。
セラミック粉末と誘電体セラミック層の材料との収縮開始温度の差を上述のような範囲とすることにより、内部電極ペーストと誘電体セラミック層の材料との収縮開始温度の差が27℃〜50℃の範囲となり、このような範囲において、積層体の焼成によって発生する内部欠陥を防止することができる。
セラミック粉末の添加方法として、たとえば内部電極ペーストに含まれる導電性粉末の表面にコーティングするように添加することができる。
また、セラミック粉末の添加量は、導電性粉末に対して5〜20重量%の範囲とすることにより、誘電体セラミック層部分と内部電極部分との収縮開始温度の差が小さくなり、内部欠陥の少ない積層セラミックコンデンサを得ることができる。
このような内部電極ペーストを用いて製造した積層セラミックコンデンサは、内部欠陥の少ないものであり、得られた内部電極にはセラミック粉末の存在が認められるものである。
【0008】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の発明の実施の形態の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【0009】
【発明の実施の形態】
積層セラミックコンデンサを作製するために、誘電体セラミック層を得るための誘電体材料が準備される。誘電体材料としては、たとえばCaZrO3 系誘電体材料やBaTiO3 系誘電体材料などが用いられる。このような誘電体材料および溶剤、バインダなどを調合して、ドクターブレード法などにより、セラミックグリーンシートが作製される。
【0010】
一方、内部電極材料として、たとえばNi金属粉末などの導電性粉末が準備される。このような導電性粉末にバインダ、溶剤などが添加され、上述の誘電体材料を含むセラミック粉末が添加されて内部電極ペーストが作製される。誘電体材料の添加量は、導電性粉末に対して5〜20重量%の範囲である。内部電極ペーストに添加されるセラミック粉末の収縮開始温度は、誘電体セラミック層部分の収縮開始温度に比べて+50℃〜+100℃の範囲にあるものである。
【0011】
得られた内部電極ペーストをセラミックグリーンシートに印刷し、打ち抜き、積み重ね、カットを行って、グリーンチップが得られる。このグリーンチップが還元雰囲気中で焼成され、外部電極ペーストの塗布、焼き付け、めっきが行われて、積層セラミックコンデンサが得られる。
【0012】
このようにして得られた積層セラミックコンデンサ10は、図1に示すように、複数の誘電体セラミック層12と内部電極14とが積層された基体16を含む。内部電極14の隣接するものが、基体16の対向する端面に引き出され、その端面に外部電極18が形成されている。この積層セラミックコンデンサ10では、内部電極ペーストにセラミック粉末が添加されているため、完成した積層セラミックコンデンサ10の内部電極14を分析すると、添加されたセラミック粉末と同じ組成のものが認められる。
【0013】
このように、誘電体セラミック層の材料の収縮開始温度に比べて+50℃〜+100℃の範囲にあるセラミック粉末を内部電極ペーストに添加することにより、内部電極部分の収縮開始温度と誘電体セラミック層部分の収縮開始温度との差を±50℃以内にすることができ、グリーンチップを焼成したとき内部欠陥が発生しにくい。そのため、このような内部欠陥に起因する静電容量値の低下や、直列等価抵抗値の増大などの問題を回避することができる。
【0014】
また、内部電極ペーストへのセラミック粉末の添加量としては、内部電極ペーストに含まれる導電性粉末に対して5〜20重量%の範囲にあることが好ましい。この範囲内でセラミック粉末を添加することにより、誘電体セラミック層部分と内部電極部分との収縮開始温度の差を±50℃以内とすることができ、良好な特性を有する積層セラミックコンデンサを得ることができる。なお、内部電極ペーストにセラミック粉末を添加する際に、単に添加するだけでなく、導電性粉末をセラミック粉末でコーティングするようにしてもよい。
【0015】
【実施例】
(実施例1)
誘電体セラミック層の材料として、CaZrO3 ,SiO2 ,MnCO3 ,SrTiO3 を準備した。これらの材料を溶剤およびバインダなどで調合し、ドクターブレード法で、約5μmの厚みのセラミックグリーンシートを作製した。また、内部電極用の材料として、Ni金属粉末、バインダ、溶剤、セラミック粉末を準備した。セラミック粉末としては、CaZrO3 およびSiO2 を準備し、Ni金属粉末に対して15重量%となるように秤量した。これらの材料を調合して、内部電極ペーストを作製した。このとき、SiO2 の添加量の比を調整することにより、セラミック粉末の焼結開始温度の調整を行い、複数の焼結開始温度を有する内部電極ペーストを作製した。
【0016】
これらの内部電極ペーストをセラミックグリーンシートに印刷し、打ち抜き、積み重ね、カットを行い、グリーンチップを得た。なお、内部電極ペーストを印刷したセラミックグリーンシートの積層枚数は100枚である。得られたグリーンチップを還元雰囲気中で焼成し、外部電極ペースト塗布、焼き付け、めっきを行って、積層セラミックコンデンサを得た。得られた積層セラミックコンデンサについて、静電容量値およびPDA研磨による焼成後の内部欠陥発生率を調べた。そして、その結果を表1に示した。
【0017】
【表1】
【0018】
表1から、内部電極ペーストに添加されるセラミック粉末の収縮開始温度と誘電体セラミック層の材料の収縮開始温度との差が50℃未満であると、内部欠陥が発生しており、コンデンサとして使用することができない。一方、内部電極ペーストに添加されるセラミック粉末の収縮開始温度と誘電体セラミック層の材料の収縮開始温度との差が100℃を超えると、内部欠陥は発生していないが、静電容量値の低下が確認される。これは、セラミック粉末が内部電極の焼結性に影響を及ぼしているためであると考えられる。それに対して、この発明の範囲内の収縮開始温度を有するセラミック粉末を用いた内部電極ペーストを使用した場合、誘電体セラミック層部分と内部電極部分との収縮開始温度の差が±50℃以内となり、内部欠陥の発生は認められず、静電容量値も大きいものであった。さらに、積層セラミックコンデンサのDPA断面の内部電極部分をエネルギー分散形X線分析法にて分析を行ったところ、添加したセラミック粉末と同じ組成のものが確認された。
【0019】
(実施例2)
誘電体セラミック層の材料との収縮開始温度差が+75℃のセラミック粉末を添加した内部電極ペーストを用いて、グリーンチップを作製し、これを用いて積層セラミックコンデンサを作製した。セラミック粉末の添加量は、表2に示す通りである。そして、静電容量値と内部欠陥発生率を調べ、その結果を表2に示した。
【0020】
【表2】
【0021】
表2から、内部電極ペーストにセラミック粉末を添加しない場合、内部欠陥が多く発生していることがわかる。また、セラミック粉末の添加量が内部電極ペーストに含まれる金属粉末に対して25重量%になると、静電容量値の低下が観測される。これは、セラミック粉末が内部電極の焼結性に影響を及ぼしているためであると考えられる。それに対して、セラミック粉末の添加量が内部電極ペーストに含まれる金属粉末に対して5〜20重量%の範囲内にある場合、内部欠陥の発生は認められず、静電容量値も大きいものであった。
【0022】
このように、内部電極ペーストにセラミック粉末を添加することにより、内部欠陥がなく、良好な特性を有する積層セラミックコンデンサを得ることができる。このような効果は、CaZrO3 系セラミック誘電体を用いた積層セラミックコンデンサに限らず、BaTiO3 系セラミック誘電体を用いた積層セラミックコンデンサにおいても得ることができる。
【0023】
【発明の効果】
この発明によれば、セラミック粉末を含む内部電極ペーストを用いることにより、内部欠陥の少ない積層セラミックコンデンサを得ることができる。また、内部欠陥が少ないため、内部欠陥に起因する静電容量値の低下や直列等価抵抗値の増大などを抑えることができる。このような内部電極ペーストを用いた積層セラミックコンデンサにおいては、内部電極ペーストに添加されたセラミック粉末と同じ組成のものが、完成品の内部電極にも認められる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の内部電極ペーストが用いられる積層セラミックコンデンサの一例を示す図解図である。
【符号の説明】
10 積層セラミックコンデンサ
12 誘電体セラミック層
14 内部電極
16 基体
18 外部電極
Claims (3)
- 誘電体材料としてCaZrO 3 ,SiO 2 ,MnCO 3 ,SrTiO 3 からなる誘電体セラミック層と内部電極とが積層された積層セラミックコンデンサの前記内部電極を形成するために用いられる内部電極ペーストであって、
Ni金属粉末と、バインダと、溶剤と、前記誘電体セラミック層に前記誘電体材料として含まれる成分のみから構成されるセラミック粉末とを含み、
前記セラミック粉末の添加量が前記Ni金属粉末に対して5〜20重量%であり、
前記セラミック粉末の収縮開始温度が前記誘電体セラミック層の材料の収縮開始温度に比べて+50℃〜+100℃の範囲にあり、かつ前記内部電極ペーストと前記誘電体セラミック層の材料との収縮開始温度差が27℃〜50℃の範囲となるように、CaZrO 3 に対してSiO 2 の添加量を調整した、内部電極ペースト。 - 前記セラミック粉末が前記Ni金属粉末の表面にコーティングされた、請求項1に記載の内部電極ペースト。
- 請求項1または請求項2に記載の内部電極ペーストを用いた積層セラミックコンデンサであって、
内部電極中に前記セラミック粉末が含まれる、積層セラミックコンデンサ。
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