JP3758799B2 - エンジンの構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンの騒音を低減すると共に軽量化を図るようにしたエンジンの構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
エンジンのクランクケースとして、軽量化を図ったラダーフレーム構造のものがある。このようなラダーフレームとしては、例えば、実用新案登録第2501665号に開示されている。このラダーフレームは、図6及び図7に示すようにクランクシャフトの軸受部を有した複数のクロスビーム30及びこれらのクロスビーム30を軸方向に連結するサイドビーム31、31を形成し、クランクシャフトのセンタジャーナルを軸受する中央のクロスビーム30に、その軸受部32と両側のサイドビーム31、31との間に掛け渡されるリブ部材33、33を設けた構造とし、センタジャーナルの軸受部32の剛性を他の軸受部よりも高めることで、クランクシャフトの曲げ応力の低減に加えて軸方向の均一化を図り、クランクシャフトの軽量化を図るというものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、エンジンは、出力増大等によりクランクシャフトを支持するメインキャップに作用する荷重が増大傾向にあり、上記従来構造のラダーフレームは、隣り合うクロスビーム30の間の底面34が開いており、しかもサイドビーム31が単なる縦壁形状であるために下部に加わる拡がり方向の力に対する強度が不十分となる。この結果、ラダーフレーム全体の剛性が不十分となり、サイドビーム31が振動しやすく、騒音が発生しやすい。ラダーフレームに十分な剛性をもたせるためにはクロスビーム30及びサイドビーム31の強度を増すことが必要であるが重量が増加する。
【0004】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたもので、クランクケースの剛性を高めてエンジンの騒音を低減すると共に軽量化を図るようにしたエンジンの構造を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明の請求項1によれば、各シリンダボア間を仕切る複数の隔壁の各下面にクランクシャフトの上側を支持する上軸受部が設けられたアッパクランクケースと、前記アッパクランクケースの各隔壁と対向する各隔壁の上面に前記上軸受部と対をなす下軸受部が設けられたロアクランクケースとを備え、前記アッパクランクケース及び前記ロアクランクケースの夫々の各隔壁間において、前記アッパクランクケースの外壁のスカート部とロアクランクケースの外壁及び底面とが、前記シリンダボアを同心とする球面の一部をなす連続した曲面で形成されていることを特徴としている。
【0006】
クランクケースは、アッパクランクケース及びロアクランクケースの夫々の各隔壁間において、アッパクランクケースの外壁のスカート部とロアクランクケースの外壁と底面とが、シリンダボアを同心とする球面の一部をなす連続した曲面とされていることで、クランクケースの隔壁間における外壁の全体剛性が増大するとともに、同心とすることによりクランクケースの作用力を均一に分散させることができ、エンジン騒音低減効果の増大化が図られる。
【0007】
請求項2によれば、アッパクランクケースの隔壁と外壁との連接部分、及びロアクランクケースの隔壁と外壁との連設部分を曲面として滑らかに連設することを特徴としている。
【0008】
アッパクランクケース及びロアクランクケースの各隔壁の境界に設けられているクランクシャフトの軸受部とアッパクランクケース及びロアクランクケースの各外壁との間の力の流れが円滑となり、変形が無くなり、クランクケースの耐久性が向上する。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態を図面により説明する。
図1は、クランクケースのシリンダボア中心における断面図を示し、図2は、図1のクランクケースの左側半分の隔壁近傍を斜め下方から見た斜視図である。
図1及び図2に示すようにエンジンの本体をなすクランクケース1は、アッパクランクケース2と、ロアクランクケース3とにより構成されている。アッパクランクケース2は、上部に長手方向に沿ってシリンダボア4が複数直列に配列して形成されており、各シリンダボア4間を仕切る隔壁5の下面中央にシリンダボア4の配列方向に沿ってクランクシャフトの上側を支持する半円形状の上軸受部6が設けられている。また、両側の外壁2a、2aのスカート部2b、2bにはバランサシャフトを挿通するバランサシャフト孔7、8が設けられている。
【0010】
ロアクランクケース3は、アッパクランクケース2の各隔壁5と対向して隔壁11が形成されており、各隔壁11の上面中央には上軸受部6と対向してクランクシャフトの下側を支持する半円形状の下軸受部12が設けられている。そして、隔壁5の上軸受部6と隔壁11の下軸受部12とによりクランクシャフト(図示せず)の軸受部が形成される。また、底面3bは、各隔壁11の間が開いておりラダーフレーム構造とされている。これによりロアクランクケース3の軽量化が図られる。
【0011】
図2に示すようにクランクケース1のクランク室を形成するアッパクランクケース2の外壁2aのスカート部2bとロアクランクケース3の外壁3a及び底面3bとは、上下方向の曲率を大きくして外方に凸の連続する同一の曲率半径の曲面をなしている。そして、ロアクランクケース3の外壁3aと底面3bとが連続する曲面で形成されている。更に、アッパクランクケース2の外壁2aのスカート部2b、ロアクランクケース3の外壁3aは、夫々各隔壁5間、各隔壁11間において球面の一部をなす曲面をなしている。図3は、図1の矢線III−IIIに沿う断面を示し、アッパクランクケース2のスカート部2bと隔壁5の一部を示す。図4は、図1の矢線IV−IVに沿う断面を示し、ロアクランクケース3の外壁3aと隔壁11の一部を示す。
【0012】
図3に示すようにアッパクランクケース2のスカート部2bは、各隔壁5間において左右方向に半径R1の曲面をなしており、この半径R1の中心は、シリンダボア4の中心と一致している。そして、スカート部2bと隔壁5の側部との連接部分2cは、半径R2(<R1)の曲面をなしてこれらのスカート部2bと隔壁5とを滑らかに連設している。また、隔壁5の両側のスカート部2bと2bの間の谷部2dの下端に前後方向に横リブ2eが形成されており、更に横リブ2eとスカート部2bの下面との間に上下方向に2本の縦リブ2f、2fが形成されている。これらの横リブ2e、縦リブ2f、2fは、スカート部2bに一体に連設して形成されている。これによりスカート部2bの谷部2dの剛性が向上する。
【0013】
図4に示すようにロアクランクケース3の外壁3aは、各隔壁7間において左右方向に半径R1の曲面をなしており、この半径R1の中心は、シリンダボア4の中心と一致している。そして、外壁3aと隔壁7の側部との連接部分3cは、半径R2(<R1)、R3(<R2)の曲面をなしてこれらの外壁3aと隔壁7とを滑らかに連設している。また、外壁3aの隔壁7の部位における谷部3dの下端に前後方向に横リブ3eが形成され、この横リブ3eに上下方向に前記アッパクランクケース2の縦リブ2f、2fと連続する2本の縦リブ3f、3fが形成されている。これらの横リブ3e、縦リブ3f、3fは、外壁3aに一体に連設して形成されている。これにより外壁3aの谷部3dの剛性が向上する。
【0014】
図2及び図4に示すようにロアクランクケース3の隔壁11には下軸受部12の近傍にメインキャップボルト穴14が、外壁3aの縦リブ3f、3fの付け根部分にサブキャップボルト穴15、15が穿設されている。アッパクランクケース2の隔壁5の下面にはロアクランクケース3のメインキャップボルト穴14、サブキャップボルト穴15と対向してメインキャップボルト穴、サブキャップボルト穴(共に図示せず)が穿設されている。ロアクランクケース3は、アッパクランクケース2に装着されてメインキャップボルト及びサブキャップボルトにより固定される。また、ロアクランクケース3の下部にオイルパン(何れも図示せず)が装着される。
【0015】
以下に作用を説明する。
クランクケース1のクランク室を形成するアッパクランクケース2の外壁2aのスカート部2bとロアクランクケース3の外壁3aは、外側方に凸をなし上下方向に連続する大ききな曲率を有する曲面とされることで、曲げ及び捻り剛性が増大され、アッパクランクケース2の各隔壁5、ロアクランクケース3の各隔壁11の前後モード、スカート部2b、外壁3a、3aの左右モードの固有振動数が高くなり、クランクケース1の振動レベルを大幅に下げることができる。
【0016】
また、アッパクランクケース2のスカート部2bの谷部2dの横リブ2e、及び縦リブ2f、2f、ロアクランクケース3の谷部3dの横リブ3e及び縦リブ3f、3fによりクランクケース1の前後方向の剛性が増大する。更に、アッパクランクケース2のスカート部2b、ロアクランクケース3の外壁3aを球面の一部とし、且つ隔壁5とスカート部2bとを連設する連設部2c、隔壁11と外壁3aとを連設する連設部3cを滑らかに連設することで、軸受部とスカート部2b、外壁3a間の力の流れがスムーズとなり、応力集中や変形が無くなりクランクケース1の剛性が増大する。この結果、本発明構造のクランクケース1は、従来構造のラダーフレームタイプのクランクケースに比べて振動レベルを大幅に(約10db程度)低減することができる。また、クランクケース1の振動レベルが低減することで、クランクシャフトの変形も低減する。
【0017】
図5は、本発明に係るクランクケースの他の実施例を示し、アッパクランクケース2のスカート部2bに形成するバランサシャフト孔7を図2に示す実施例1に比べて外側方にずらし、湾曲するスカート部2bの外側を通す構造としたものである。このような構造にすると、スカート部2bの強度が更に増大する。また、ロアクランクケース3の底面3bを完全に閉じた構造としている。このようにロアクランクケース3の底面3bを塞ぐことで剛性が大幅に増大する。また、オイルパンが不要となり、エンジン全高を低くすることが可能となる。尚、このようにロアクランクケース3の底面3bを完全に塞ぐ場合には各隔壁11の下部にオイル連通穴を設け、オイルポンプにより別置きのオイルタンクに循環させるようにする。
【0018】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1の発明によれば、アッパクランクケース及びロアクランクケースの夫々の各隔壁間において、クランクケースのクランク室の外壁と底面とを球面の一部をなす連続した曲面で形成することで、全方向からのクランクケースへの作用力を分散させることができるため、クランクケースの隔壁間における外壁の全体剛性を増大することができ、エンジン騒音低減効果の増大化が図られるとともにクランクケースの軽量化にも寄与する。そして、シリンダボアを同心とする球面とすることにより、クランクケースへの作用力を均一に分散させることができ、クランクケースの全体剛性が更に向上する。また、クランクケースの全体剛性を増大することができるためにロアクランクケースをラダーフレーム構造とすることが可能であり、エンジンの軽量化を図ることが可能となる。更に、クランクケースの全体剛性が増大することで、クランクシャフトの変形も低減する。
【0019】
請求項2の発明によれば、アッパクランクケースの隔壁と外壁との連接部分、及びロアクランクケースの隔壁と外壁との連設部分を曲面として滑らかに連設することで、クランクシャフトの軸受部と外壁との間の力の流れが円滑となり、剛性が増大してエンジン騒音の低減を図ることができ、クランクケースの耐久性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るエンジンの構造のクランクケースのシリンダボア中心における断面図である。
【図2】図1に示すクランクケースの左側半分の隔壁近傍を斜め下方から見た斜視図である。
【図3】図1の矢線III−IIIに沿う断面図である。
【図4】図1の矢線IV−IVに沿う断面図である。
【図5】図2に示すアッパクランクケースの実施例2の斜視図である。
【図6】従来のラダーフレームの平面図である。
【図7】図6の矢線VII−VIIに沿う断面図である。
【符号の説明】
1 エンジン本体(クランクケース)
2 アッパクランクケース
3 ロアクランクケース
2a、3a 外壁
2b スカート部
2d、3d 谷部
2e、3e 横リブ
2f、3f 縦リブ
4 シリンダボア
5、11 隔壁
6 上軸受部
12 下軸受部
Claims (2)
- 各シリンダボア間を仕切る複数の隔壁の各下面にクランクシャフトの上側を支持する上軸受部が設けられたアッパクランクケースと、
前記アッパクランクケースの各隔壁と対向する各隔壁の上面に前記上軸受部と対をなす下軸受部が設けられたロアクランクケースとを備え、
前記アッパクランクケース及び前記ロアクランクケースの夫々の各隔壁間において、前記アッパクランクケースの外壁のスカート部とロアクランクケースの外壁及び底面とが、前記シリンダボアを同心とする球面の一部をなす連続した曲面で形成されていることを特徴とするエンジンの構造。 - 前記アッパクランクケースの隔壁と外壁との連接部分、及び前記ロアクランクケースの隔壁と外壁との連設部分を曲面として滑らかに連設することを特徴とする請求項1記載のエンジンの構造。
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1997
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