JP3758642B2 - チルト式ステアリング装置用昇降ブラケット付ステアリングコラムの製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明の対象となるチルト式ステアリング装置は、自動車を操舵する為のステアリングホイールの高さ位置を調節するものである。
【0002】
【従来の技術】
運転者の体格や運転姿勢等に応じてステアリングホイールの高さを変える為、チルト式ステアリング装置と呼ばれるステアリングホイールの高さ位置調節装置が従来から知られている。
【0003】
このチルト式ステアリング装置は、従来から各種構造のものが使用されている。そして、例えば、図4〜6に示す様な構造により、ステアリングホイール1の高さ位置調節を自在としている。後端部(上端部)に固定されたステアリングホイール1の操作により回転するステアリングシャフト2を、ステアリングコラム3に挿通すると共に、このステアリングコラム3の前端部(下端部)を車体に、横軸4を中心とする揺動自在に支持している。一方、ステアリングコラム3の中間部は車体に固定した固定ブラケット6により、上下位置の調節を自在に支持している。
【0004】
この様な、ステアリングホイール1の上下位置を調節する所謂チルト機構は、図5〜6に詳示する様に構成されている。即ち、車体の一部(ダッシュボードの下側)に固定された固定ブラケット6には、互いに平行な1対の鉛直板部7、7を設け、これら各鉛直板部7、7の互いに整合する位置に、上記横軸4を中心とする円弧状で上下方向に長い長孔8、8を形成している。又、ステアリングコラム3の中間部下面には剛性を有する金属板を折り曲げ形成して成る昇降ブラケット9を、溶接等により固定している。この昇降ブラケット9は、上記1対の鉛直板部7、7の間に挟まれる状態で固定されている。又、この昇降ブラケット9には、横方向(図4〜5の表裏方向、図6の左右方向)に亙る互いに同心の通孔5、5を形成している。そして、この通孔5、5と上記長孔8、8とに、杆状部材であるチルトボルト13を挿通している。このチルトボルト13の一端部(図6の左端部)には押圧部である頭部13aを設けている。そして、上記チルトボルト13の先端部で、固定ブラケット6の外側面から突出した部分に、押圧部材であるチルトナット14を螺合させ、更に、このチルトナット14にチルトレバー12の基端部を結合固定している。
【0005】
上述の様に構成される従来のチルト式ステアリング装置により、運転者の体格等に応じて、ステアリングホイール1の高さ位置を調節する場合には、上記チルトレバー12を操作する事により上記チルトナット14を弛め、このチルトナット14と上記頭部13aとの間隔を広げる。この状態で、上記1対の鉛直板部7、7の内側面と上記昇降ブラケット9の外側面との間に生じる摩擦力が小さくなる。そこで、この状態のまま、固定ブラケット6の長孔8、8に沿ってチルトボルト13を移動させ、前記ステアリングコラム3の後端部を昇降させる事により、ステアリングホイール1を所望の高さ位置に移動させる。
【0006】
この様にしてステアリングホイール1の高さを所望位置に移動させた状態で、チルトレバー12より上記チルトナット14を締め付ける。この締め付けに基づき、上記頭部13aとチルトナット14との間隔が狭まり、上記1対の鉛直板部7、7の内側面が上記昇降ブラケット9の外側面に強く押し付けられて、これら両面間に生じる摩擦力が大きくなる。この結果、上記ステアリングコラム3の上部を調節後の位置に固定する事ができる。
【0007】
一方、実公昭63−30605号公報には、キャブオーバ型トラックの操舵装置を構成するステアリングコラムの下端部を枢支する為の構造として、図7〜8に示す様な構造が記載されている。この構造では、ステアリングコラム17の下端部を圧入したボス部18に形成した長孔8a、8aにカラー部材15を挿通している。そして、このカラー部材15の両端部にブッシュ19、19を嵌め込み、これら各部材15、19に挿通したボルト16により、上記ステアリングコラム17の下端部を固定ブラケット6aに、昇降及び揺動自在に支持している。
【0008】
ステアリングホイール1(図4)の前後位置を調節する為のチルト操作時には、ボルト16を中心にカラー部材15及びステアリングコラム17を揺動させる。又、ステアリングホイールの上下位置を調節する際には、上記カラー部材15を長孔8a、8aに沿って移動(昇降)させる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上述の様に構成され作用する、従来のチルト式ステアリング装置のうち、図4〜6に記載した第1例の構造の場合、チルト機構を構成する昇降ブラケット9の存在により部品点数が多く、部品製作、部品管理、組立作業が何れも面倒になり、製作費が嵩む。更に、昇降ブラケット9をステアリングコラム3に溶接固定する場合に、この溶接による熱の影響で以下の様な問題を生じる。
▲1▼ ステアリングコラム3の一部外周面には、コラプシブルステアリングコラムを構成すべく、予め面押し等の塑成加工を施す場合があるが、この塑性加工部分が溶接の熱により焼き戻りを起こし易い。そして焼き戻りが発生した場合には、上記ステアリングコラム3の形状が不安定になり、コラプシブルステアリングコラムを収縮させる為の荷重が不安定になる可能性がある。
▲2▼ 衝突事故に伴う一次衝突や二次衝突により、ステアリングコラム3の全長が縮まると、前方に変位したインナーコラムの先端縁と、アウターコラムの一部で上記溶接の熱により変形した部分とが干渉して、上記ステアリングコラムの収縮が円滑に行なわれない可能性がある。
▲3▼ 昇降ブラケット9が溶接による熱で変形し、この昇降ブラケット9の両側面と各鉛直板部7、7の内側面との接触状態が不良になると、チルト式ステアリング装置の作動不良を起し易くなる。具体的には、昇降ブラケット9を昇降させるチルト操作力が不安定になったり、この昇降ブラケット9を保持する為のチルト停止荷重を十分に発生させにくくなる可能性がある。
【0010】
又、前記図7〜8に記載した第2例の構造の場合も、形状的にボス部18をステアリングコラム17と別体に造り、後から嵌合させる必要があり、やはり製作費が嵩んでしまう。本発明のチルト式ステアリング装置用昇降ブラケット付ステアリングコラムの製造方法は、この様な事情に鑑みて発明したものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の製造方法により造られる昇降ブラケット付ステアリングコラムを組み込むチルト式ステアリング装置は、前述した従来のチルト式ステアリング装置と同様に、後端部にステアリングホイールを固定するステアリングシャフトを挿通し、その前端部を横軸により枢支されるステアリングコラムと、このステアリングコラムの中間部下面に固設された昇降ブラケットと、この昇降ブラケットに横方向に形成された通孔と、1対の鉛直板部を備え、この鉛直板部により上記昇降ブラケットを左右から挟む状態で車体に固定される固定ブラケットと、上記各鉛直板部の一部で上記通孔に整合する部分に形成された、上下方向に長い長孔と、この長孔と上記通孔とを挿通された杆状部材と、この杆状部材の一端に設けられた押圧部と上記杆状部材の他端部に係合した押圧部材と、この押圧部材にその基端部を固定し、揺動に伴って上記押圧部材と押圧部との間隔を拡縮自在なチルトレバーとを備えている。
【0012】
特に、本発明のチルト式ステアリング装置用昇降ブラケット付ステアリングコラムの製造方法は、チルト式ステアリング装置を構成する上記ステアリングコラム及び上記昇降ブラケットを得る為、金属板により全体を円筒状に造られたこのステアリングの中間部に塑性加工を施してこの中間部を下方に膨出させる事で、このステアリングコラムと一体に形成された凸状部を形成する。そして、この凸状部により上記昇降ブラケットを構成する。
【0013】
【作用】
上述の様に構成される本発明の製造方法により造られる昇降ブラケット付ステアリングコラムを組み込んだチルト式ステアリング装置が、ステアリングシャフトを回転自在に支持する作用、並びにステアリングホイールの上下位置を調節する際の作用は、前述した従来のチルト式ステアリング装置の場合と同様である。特に本発明のチルト式ステアリング装置用昇降ブラケット付ステアリングコラムの製造方法の場合には、ステアリングコラムの外周面に昇降ブラケットを後から溶接固定する手間が不要になる。この結果、この溶接に起因する前述した様な不具合を防止すると共に、部品製作、部品管理、組立作業を何れも簡略化して、製作費の低減を図れる。
【0014】
【実施例】
図1〜3は本発明の実施例を示している。尚、本発明の特徴は、ステアリングコラム3に前記昇降ブラケット9(図5〜6)に相当する凸状部11を、このステアリングコラム3と一体に形成する点にある。その他の部分の構成及び作用は前述した従来構造とほぼ同様である為、同等部分には同一符号を付して重複する説明を省略若しくは簡略にし、以下、本発明の特徴部分を中心に説明する。
【0015】
ステアリングコラム3は、軟鋼板、アルミニウム合金板等の金属板により、全体を円筒状に造る。そして、このステアリングコラム3の中間部に、本発明の特徴である凸状部11を、このステアリングコラム3と一体に形成する。即ち、この凸状部11は、上記ステアリングコラム3の一部に塑性加工を施す事により、ステアリングコラム3の下方(図1〜3の下側)から膨出させる。又、この凸状部11を構成する左右両側壁部には、上記ステアリングコラム3の幅方向(図1、3の表裏方向、図2の左右方向)に亙る通孔10、10を、互いに同心に形成する。そして、これら両通孔10、10と、固定ブラケット6を構成する1対の鉛直板部7、7に形成した長孔8、8とにチルトボルト13を挿通し、このチルトボルト13の先端部にチルトナット14を螺合させている。このチルトナット14には、チルトレバー12の基端部を結合固定し、ステアリングホイール1(図4)の高さ位置を調節する為のチルト機構を構成している。
【0016】
上述の様に構成される本発明の製造方法により造られる昇降ブラケット付ステアリングコラムを組み込んだチルト式ステアリング装置により、運転者の体格等に応じて、ステアリングホイール1(図4)の高さ位置を調整する場合には、従来と同様に上記チルトレバー12を操作する事により、上記チルトナット14を弛め、このチルトナット14とチルトボルト13の頭部13aとの間隔を広げる。この状態で、上記1対の鉛直板部7、7の内側面とステアリングコラム3に形成した凸状部11の外側面との間に生じる摩擦力が小さくなる。そこで、上記各鉛直板部7、7に形成した長孔8に沿ってチルトボルト13を移動させてから、上記チルトレバー12によりチルトナット14を締め付ける。この作業により、ステアリングホイール1の高さを所望の位置に調節した状態で、ステアリングコラム3の上部を車体に固定した固定ブラケット6に対して支持できる。
【0017】
以上に述べた様に、本発明の製造方法により造られる昇降ブラケット付ステアリングコラムを組み込んだチルト式ステアリング装置の場合には、ステアリングコラム3に予め前記昇降ブラケット9(図5〜6)に相当する凸状部11を形成するので、上記ステアリングコラム3に上記昇降ブラケット9を後から固定する手間が不要になる。又、昇降ブラケット9を固定する為の溶接が不要になる為、前述した様な溶接に起因するステアリングコラム3や昇降ブラケット9の変形を防止できる。この結果、一次衝突時並びに二次衝突時の安全性を確実に確保すると共に、良好なチルト操作性を確保し、しかも、部品製作、部品管理、組立作業を何れも簡略化して、チルト式ステアリング装置の製作費の低減を図れる。
【0018】
【発明の効果】
本発明のチルト式ステアリング装置用昇降ブラケット付ステアリングコラムの製造方法は、以上に述べた通り構成され作用するので、溶接の不要な、軽量で安価なチルト式ステアリング装置を提供する事ができる。又、溶接に伴う不具合の発生も防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例を示す、図5と同様の図。
【図2】図1のA−A断面図。
【図3】ステアリングコラムの斜視図。
【図4】本発明の対象となるチルト式ステアリング装置の全体構成を示す側面図。
【図5】従来構造の第1例を示す、図4のB部拡大図。
【図6】同じく図4の拡大C−C断面図。
【図7】従来構造の第2例を示す要部斜視図。
【図8】図7のD−D断面図。
【符号の説明】
1 ステアリングホイール
2 ステアリングシャフト
3 ステアリングコラム
4 横軸
5 通孔
6、6a 固定ブラケット
7 鉛直板部
8、8a 長孔
9 昇降ブラケット
10 通孔
11 凸状部
12 チルトレバー
13 チルトボルト
13a 頭部
14 チルトナット
15 カラー部材
16 ボルト
17 ステアリングコラム
18 ボス部
19 ブッシュ
Claims (1)
- 後端部にステアリングホイールを固定するステアリングシャフトを挿通し、その前端部を横軸により枢支されるステアリングコラムと、このステアリングコラムの中間部下面に固設された昇降ブラケットと、この昇降ブラケットに横方向に形成された通孔と、1対の鉛直板部を備え、この鉛直板部により上記昇降ブラケットを左右から挟む状態で車体に固定される固定ブラケットと、上記各鉛直板部の一部で上記通孔に整合する部分に形成された、上下方向に長い長孔と、この長孔と上記通孔とを挿通された杆状部材と、この杆状部材の一端に設けられた押圧部と、上記杆状部材の他端に係合した押圧部材と、この押圧部材にその基端部を固定し、揺動に伴って上記押圧部材と押圧部との間隔を拡縮させるチルトレバーとを備えたチルト式ステアリング装置を構成する上記ステアリングコラム及び上記昇降ブラケットを得る為、金属板により全体を円筒状に造られたこのステアリングの中間部に塑性加工を施してこの中間部を下方に膨出させる事で、このステアリングコラムと一体に形成された凸状部を形成し、この凸状部により上記昇降ブラケットを構成する、チルト式ステアリング装置用昇降ブラケット付ステアリングコラムの製造方法。
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