JP3758455B2 - 酸化物超電導線材の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液体ヘリウム、液体窒素もしくは冷凍機等の冷媒を用いて運転する酸化物超電導コイルもしくは酸化物超電導送電ケーブル等に適用可能な酸化物超電導線材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、超電導材料としてはNbTi,Nb3Sn等の金属系のものが知られている。しかし、これらの金属系超電導材料は臨界温度(Tc)が最も高い
Nb3Geでも23K(ケルビン)であり、その冷却に高価な液体ヘリウムを用いる必要があった。
【0003】
ところが、1986年になって酸化物系超電導体が発見され、続いて、Tcが液体窒素の沸点(77K)を超えるイットリウム(Y)系、ビスマス(Bi)系、タリウム(Tl)系というような各酸化物系超電導体が相次いで発見された。これらの酸化物超電導体は、Tcが高いため安価で入手が容易な液体窒素を冷媒に用いることができるため、超電導線材を使用する各種の技術分野に大きな影響を与えることになった。
【0004】
また、これらの酸化物超電導体は、Tcが高いだけでなく、上部臨界磁場(Hc2)が高いという性質を兼ね備えている。特に、Bi系超電導体は、液体ヘリウム温度(4.2K)以下の極低温におけるHc2が50T(テスラー)乃至100Tを超えるものである。この性質を利用することにより、従来の金属系超電導材料では達成が困難であった、22Tを超えるような強い磁場を発生する超電導マグネットの実現が可能となってきた。
【0005】
現在、「第61回1999年秋季低温工学・超電導学会講演概要集」7頁に紹介されているような、酸化物超電導原料粉末を銀(Ag)等の金属パイプ内に充填した後、それを伸線加工及び圧延加工した後、再度金属パイプ内に組込んで作製した高性能の超電導線材において、温度4.2K、印加磁場28Tという条件で、約1,000A/mm2の実用的な臨界電流密度(Jc)が得られている。
【0006】
しかし、このような工程で作製した酸化物超電導線材は加工工程が多く、コストの面では従来金属系超電導線材と比較して高価なものになると予想される。また、上記線材内部のマトリックス中における酸化物占積率が20乃至30%と比較的低く、線材を導体としてみた場合、臨界電流を線材の全断面積で割った導体電流密度(Je)は線材の超電導コア部断面積で割った臨界電流密度(Jc)と比べて約1/5程度まで減少する。
【0007】
【発明が解決しょうとする課題】
上記従来技術における問題点を解決し、好適な酸化物超電導線材を得るためには、工程の短縮による低コスト化が可能で、かつ高いJeを有することが望まれる。
【0008】
しかし、これらを同時に実現することは極めて困難である。すなわち、工程の短縮化については、1パス当たりの加工度を大きくすることや、圧延工程をなくすといったことが試されている。しかし、加工度を上げると、線材表面に割れや亀裂が発生し、最悪のケースでは断線するという問題がある。また、圧延工程を経ない場合には、Jcの向上に不可欠な酸化物の高密度化及び結晶配向化が達成しづらいという問題がある。このため、高い線材性能を保ちながら量産化を達成することは極めて困難であると考えられている。
【0009】
一方、Jeを向上させる方法としては、超電導体内に含有するカーボン量を低減させたり、熱処理の温度や雰囲気を最適化する等の方法で、線材自身のJcを向上させる検討がなされてきた。また、線材内部のマトリックス中における酸化物の占積率を増大させる検討も進められている。現状、超電導相の厚さ数μm以下のもの、あるいは数cm長さの短尺線レベルのものでは実用領域のJcを得ることができているが、実用的な線材サイズや長さを確保しながら、その性能を達成することは難しいという問題がある。
【0010】
また、コイル等に用いる導体として実用化するには、高いJeを確保する必要がある。特に、コイル等の導体はコンパクト化により、コスト低減が図れるが、これを実現するには、JcよりもJeを向上させる必要がある。例えば、Jcが極めて高い線材を用いてコイルを製作する場合においても、実質的なJeが仮に1/2に減少したなら、コイルのターン数は2倍にしなければならない。これでは、コイルサイズが増大し、実用には不向きとなることが考えられる。
【0011】
本発明の目的は、高い導体電流密度(Je)を有し、かつ製造工程を短縮出来る酸化物超電導線材の製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、複数の酸化物超電導層が金属層を介して交互に配置されている複数の集合構造体を有する酸化物超電導線材の製造方法であって、その長手方向に対して垂直に切断した横断面において個々の前記集合構造体が互いに3回以上の回転対称性を持って配置していること、又は前記各集合構造体の酸化物超電導層はいずれもその幅方向が一方向に配列しており、前記各々の集合構造体が最密構造になるように配列していること、又は前記酸化物超電導層はその長手方向に対して垂直に切断した横断面において面積率で30〜70%好ましくは35〜65%とすること、又これらの組み合わせを有するように配置するものである。
【0013】
本発明は、熱処理後に超電導性を示す酸化物粉末、酸化物超電導粉末、或いはその仮焼結体粉末を用い、酸化物超電導体の理論密度に対して40%以上の密度で平板状の圧粉成型体を製造する工程と、前記平板状の圧粉成型体と平板状の金属とを交互に複数枚積層して積層体を形成する工程と、前記積層体を金属シース内に充填する工程と、前記金属シースを好ましくは円形、楕円形、六角形又は平角形の横断面形状に減少させる塑性加工する工程とを備えることである。又、本発明は、前述の酸化物超電導粉末或いはその仮焼結体粉末を、当該酸化物超電導体の理論密度に対して40%以上の密度となるように複数の平板状金属の間に配置した積層体を形成する工程と、前記積層体を金属シース内に充填する工程と、前記積層体を有する前記金属シースを好ましくは円形、楕円形、六角形又は平角形の横断面形状に減少させる塑性加工する工程とを有することである。酸化物粉末は仮焼結したものであることが好ましい。
【0014】
また、本発明は、平板状の圧粉成型体と平板状の金属とを積層して形成された各積層体の外形状を概ね菱形形状に好ましくは金属フオイルで巻回する工程と、複数の前記積層体を3回の回転対称性を持たせて金属シース内に充填する工程を備えることである。3回の回転対称性を持たせるということは、具体的には、平板状の圧粉成型体と平板状の金属とを積層して形成された積層体を3組作製し、これらの外形状を概ね菱形形状にした後、各々の積層体を隣接する積層体と、圧粉成型体の積層方向が概ね120度の幾何学的回転対称性を有し、かつ該菱形断面形状における少なくとも1辺が隣接する積層体を接するようにして充填することである。そして、それを塑性加工して得られた酸化物超電導線材も同様の3回の回転対称性を有するものが得られる。
【0015】
これは、言い換えるならば、円形断面の線材の長手方向に対して、垂直の断面をみたとき、酸化物のコアが、断面内で幾何学的な配置において回転対称であるといえる。円形断面で回転対称性を発現するには、3回以外にも、4回、6回等の回転対称性が考えられるが、正三角形を2つ合わせて作った菱形形状で3回の回転対称性を持たせるのが最も効率よい充填率となる。
【0016】
本発明では、圧粉成型体と金属板の加工精度等の制約から、理想的な形状は容易には得られないと考え、概ね菱形形状や120度という表現を用いている。但し、理想とする形状に近いほど高性能の線材を得ることができる。理想状態からのずれは、酸化物の形状の乱れを誘発し、性能を低下させる。角度の許容範囲は、5度程度である。これを越えると、性能は少なくとも1/2〜1/3低下する。
【0017】
また、本発明は、線材内部マトリックス中における酸化物の占積率、即ち塑性加工後、前述の面積率で30〜70%となるように製造する工程を備えること、アスペクト比が全て同じである圧粉成型体を金属シース内に充填する工程を備えること、平板状の圧粉成型体のアスペクト比が全て同じである圧粉成型体を金属シース内に充填する工程を備えることがこのましい。平板状の圧粉成型体のアスペクト比が同じということは、製造工程の簡略化につながり、低コスト化が可能となる利点がある。
【0018】
また、本発明は、金属シースが銀或いは銀基合金であること、金属シースの内形状が六角形であること、積層体は直立するように積層した後に、菱形形状に切断する工程を備えることが好ましい。である。
【0019】
さらにまた、本発明の他の特徴点は、酸化物超電導粉末或いはその仮焼粉末を用い、複数の平板状金属の間に所望の成型体が酸化物超電導体の理論密度に対して40%以上の密度となるように秤量した粉末を密着させて積層体を形成する工程と、前記積層体を金属シース内に充填する工程と、前記金属シースを円形、楕円形、六角形又は平角形の横断面形状に減面加工する工程を備えることである。
【0020】
上記のような製造プロセスを経た場合、円形、楕円形、六角形又は平角形の横断面形状を有する金属シース酸化物超電導線材において、高性能かつ量産化が可能なものになる。また、テープ形状のものでも高性能かつ量産化が可能である。
【0021】
発明者らはこれまで、酸化物超電導体の電力機器への応用を目指して、主として酸化物超電導テープ線材、及びそのテープ線材を3回の回転対称を持つように金属パイプに組込んだ回転対称テープインチューブ線材(ROSATwire,ROtation Symmetric Arranged Tape-in-tube wire)の通電性能の向上に注力してきた。その結果、両者共に、20Tを超えるような強磁場下においても1,000A/mm2以上の実用的なJcを有する線材が得られることを見出しなされたものである。
【0022】
しかし、このような線材では、金属系超電導線材に比べて高価であり、また酸化物超電導体の占積率も高々20〜30%と低いものであった。
【0023】
そこで発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、従来プロセスに比べて加工工程を大幅に短縮化すると同時に、線材内部における酸化物超電導体の占積率を2倍以上増大させることが容易な酸化物超電導線材の製造方法を見い出したのでここにまとめた。しかも本発明における製造方法で得られた酸化物超電導線材により、km級の長尺材においても、高い性能を有することを可能にした。
【0024】
まず、加工工程の短縮に関しては、例えば、ROSATwireでkm級の線材を製造することを想定した場合、押出し加工を少なくとも3回行う必要があった。1回目はテープ状に加工する素線を製造する工程、2回目は素線を3回の回転対称性を持たせて組込んだ3セグメント型線材を製造する工程、3回目は3セグメント型線材を複数本組込んで多芯化したマルチセグメント型線材を製造する工程である。これに対して、本発明の製造方法を用いることにより、押出し加工は1回行うだけでよいことになった。このように加工工程を短縮することで、大幅なコスト低減が可能となった。
【0025】
また、線材を金属パイプに複数回組込む工程がなくなることにより、酸化物超電導体の占積率は大幅に増大させることが可能となった。但し、必要に応じて複数回の組込みを行うことは差し支えない。しかしこのような場合には、若干の性能低下を見込む必要がある。また、交流応用の場合は、交流損失の低減を目的に、撚り線加工を施すことが望ましい。
【0026】
従来と同じ線径において、Jeを2倍にすることが可能となれば、例えばコイルを製作する場合に、ターン数が半分に減少するというメリットがある。このため、実用導体としてのコンパクト化も実現できる。
【0027】
一般に、Bi系酸化物超電導線材は、熱処理を行うことによって、超電導体のc軸に対して垂直に結晶粒が成長する性質を持っている。このことから、磁場の印加方向がフィラメントのc軸に対して平行な場合、磁場をかけない場合の線材の臨界電流に比べて大きく低下するという物性を有する。このため、圧粉成型体と金属の積層体を組み込む際に例えば3回の回転対称性を持たせると磁場の印加方向によらず、Jeの低下を抑制することが可能になる。
【0028】
さらに、円形、楕円形、六角形又は平角形の横断面形状を有する金属シース酸化物超電導多芯線材を用いてソレノイド巻きしたコイルを製作することにより、積層パンケーキコイルでは困難であった高い磁場均一度の実現を可能にすることができるようになる。これは、上記形状の線材はテープ形状の線材に比して、容易に加工精度を向上させることができるためである。このため、コイル巻線した場合に軸方向及び周方向でコイル形状のずれを小さくすることが可能となる。これらのことから、円形、楕円形、六角形又は平角形の横断面形状を有する金属シース酸化物超電導線材を用いてソレノイド巻きしたコイルは、高分解能NMRマグネット用のコイルとして使用できるものになる。
【0029】
また、本発明における金属シース材に関しては、熱処理に際して腐食等を生じない銀や銀合金にすることが好ましい。合金化を行う際の金属は、例えば、金(Au)、アンチモン(Sb)、白金(Pt),マグネシウム(Mg),チタン(Ti),マンガン(Mn),ニッケル(Ni),銅(Cu),アルミニウム(Al)等が好ましい。
【0030】
また、本発明の酸化物超電導粉末或いはその仮焼粉末は、特に材料を限定するものではなく、例えばY系、Bi系、Tl系、Hg系等の超電導体にも広く適用可能である。
【0031】
本発明の製造方法により製造された酸化物超電導線材は広く超電導機器に適用することが可能であって、例えば、超電導送電ケーブル、ブスバー、長尺導体、永久電流スイッチ素子、大型マグネット、核磁気共鳴分析装置、医療用磁気共鳴診断装置、超電導電力貯蔵装置、磁気分離装置、磁場中単結晶引き上げ装置、冷凍機冷却超電導マグネット装置、超電導エネルギー貯蔵、超電導発電機、核融合炉用マグネット、加速器、電流リード、限流器等の機器に利用することにより、高効率化を達成できる効果がある。
【0032】
また、本発明の超電導体の冷却には、液体ヘリウム以外にも液体窒素や冷凍機を用いることが可能となるため、装置の運転コストの低減、クエンチ(超電導状態から常電導状態への転移が急激に起こり破壊する現象)を防止するための措置の簡略化等が達成でき、コストを大幅に低減することが可能となる。また、同時に、超電導特性の信頼性を高めることができる。
【0033】
【発明の実施の形態】
純度が99%以上の酸化ストロンチウム(SrO),酸化カルシウム
(CaO)及び酸化銅(CuO)の各酸化物を出発原料とし、ストロンチウム(Sr),カルシウム(Ca),銅(Cu)の原子モル比がそれぞれ2.0:1.0:2.0の組成となるように秤量し、それらの混合体を作製した。次に、この混合体を遠心ボールミルに入れ、20分間にわたって混合した後、大気中において、900℃で、20時間にわたる熱処理を行う。次いで、熱処理した混合体を室温まで冷却した後、再度、遠心ボールミルに入れ、20分間にわたって粉砕,混合し、粉末状態にする。
【0034】
得られた粉末にBi,Sr,Ca,Cuの原子モル比が、それぞれ2.0:2.0:1.0:2.0の組成となるように酸化ビスマス(Bi2O3)を秤量して加え、混合体を遠心ボールミルに入れ、20分間にわたって混合する。そして、得られた粉末を、大気中において、800乃至850℃の温度で、10時間にわたって熱処理を行い、超電導粉末を作製する。この超電導粉末は、粉末X線回折の結果及び走査型電子顕微鏡(SEM)の観察結果によれば、超電導相以外にSrO,CuOのほか、同定できない未反応の非超電導相も若干認められるものである。次に、この超電導粉末を遠心ボールミルに入れ、平均粒径が3μm程度になるように粉砕及び混合し、超電導微粉末を作製する。
【0035】
次いで、得られた超電導微粉末をBi−2212の理論密度である6.65g/cm3に対して65%となる密度(4.32g/cm3)で平板状の圧粉成型体を作製した。このときの成型体のサイズは、幅12mm、厚さ1.5mm、長さ100mmである。この圧粉成型体5枚と幅12mm、厚さ0.7mm、長さ100mmの純銀板6枚とを交互に菱形形状となるように重ね合わせ、これを厚さ50μmの純銀ホイルで包むことにより、積層体を形成する。図1にその断面構成を示す。図1において、1はBi−2212超電導体を用いて製造した平板状の圧粉成型体、2は純銀を使用した平板状の金属板、3は純銀を使用した金属ホイルである。
【0036】
ここでは、各積層体内では、平板状の圧粉成型体1と平板状の金属板2が階段状に段差をつけながら積層されている。このような積層体を3つ作製し、これらを束ね、全体を構成している。全体では概ね正六角形の断面形状からなる。また、この断面を構成する3つの積層体は各々、120度の幾何学的な回転対称性を有している。
【0037】
また、積層体を製造する別の方法としては、平板状の圧粉成型体1と平板状の金属板2とを交互に重ね合わせ、直立するように並べる。これを菱形形状に切断するという手法を用いてもよい。この方法を用いることで、平板状圧粉成型体1及び平板状金属板2から成る積層体が精度良く菱形形状に加工できる。また、それら積層体と金属ホイル3に生じる隙間がなくなり、充填密度が向上するメリットがある。
【0038】
さらにまた、予め圧粉成型体1を製造せず、酸化物超電導粉末或いは仮焼粉末を用い、圧力を加えて成型した際に酸化物超電導体の理論密度に対して40%以上の密度となるように秤量した粉末を複数枚の平板状金属板2の間に配置し、それらをプレス等により密着させて積層体を形成する工程を含んでもよい。この方法を用いることにより、1枚ずつ圧粉成型体を製造する必要がなくなり、製造工程の短縮化が可能となり、コスト低減につながるメリットがある。
【0039】
図1に示す圧粉成型体1は、上記に示すサイズとなるような金属の金型を用いて、プレス機等によって製造したものである。金属板2及び金属ホイル3は、ロール圧延やカセットローラーダイス等で加工したものである。
【0040】
以上のような積層体を3組用意し、図2に示すような配置となるように外径30mm、内径25mm、長さ110mmの円形の断面形状を有する純銀パイプに充填する。図2において、4は金属シース材である。金属シース材4の内径側の形状は、丸に限らず多角形としてもよい。特に、六角形にすることにより、組み込む際の充填密度が向上するというメリットもある。
【0041】
本実施例では、圧粉成型体5枚を1組とした積層体が、3回の回転対称性を持って組み込まれている。よって、芯数は5×3=15である。この芯数については、使用する材料の加工性や超電導体の占積率等によって、適宜最適な数にすることが望ましい。
【0042】
充填した線材は、室温で押し出し加工により断面減少率10〜15%の伸線加工を施し、外径2.0mm程度になるまで縮径する。加工方法は、他に線引き加工、スエージング加工等で行う事が出来る。必要に応じて、線材の横断面形状を楕円形、六角形、平角形又は板状の横断面形状に減少させる塑性加工する。加工後の線材は複数の酸化物超電導層が金属層を介して交互に配置された3個の集合構造体を有する酸化物超電導線材からなり、前記各集合構造体は最密構造になるように配列しているものであった。
【0043】
円形、楕円形及び六角形の線材の外径は、対辺の長さが最も短い部分で1〜2mm程度が実用上望ましいが、用途や通電電流に応じて適切な外径とすればよく、特に限定されるものではない。
【0044】
次に、減面加工した線材に超電導特性を付与するために以下の熱処理を施す。具体的には、線材を純酸素(酸素分圧が1atm)中において、Bi2Sr2Ca1Cu2Oxからなる組成の酸化物超電導体の分解温度より僅かに高い温度である875〜900℃の範囲内の温度で、5〜60分の範囲内にわたる熱処理を行い、前記酸化物超電導体を部分溶融させ、その後、室温まで冷却することにより、超電導体とする。また、必要に応じて、1〜20%(酸素分圧が0.01〜0.2atm)の酸素濃度雰囲気中において、前記酸化物超電導体の分解温度より僅かに低い温度である800〜840℃の範囲内の温度で、5乃至50時間の範囲内におけるアニール処理を行うこともある。
【0045】
前記製造方法の実施例において、Bi2Sr2Ca1Cu2Oxからなる組成の酸化物超電導体の原料粉末には、Bi化合物、Sr化合物、Ca化合物及び
Cu化合物が用いられる。また、必要に応じて、鉛(Pb)化合物やバリウム(Ba)化合物が用いられる。各原料粉末は、酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、ほう酸塩、酢酸塩等の形ものが用いられる。
【0046】
また、前記製造方法の実施例において、酸化物超電導粉末を合成したり、中間焼成を行ったりする際の熱処理温度は、700〜950℃の範囲内の温度が利用される。また、必要に応じて、Bi2Sr2Ca1Cu2Oxからなる組成に第3元素を添加、あるいは置換し、得られた酸化物超電導体を部分溶融温度以上に加熱した後、これを冷却する過程において、超電導相の結晶粒内に非超電導相を分散させ、ピンニング力を高める方法を用いてもよい。
【0048】
また、前記製造方法の実施例における横断面減面塑性加工は、線材の断面形状を所望のものにすると同時に、金属シース酸化物超電導多芯線材のコア部に充填されたBi2Sr2Ca1Cu2Oxからなる組成の酸化物超電導体を高密度化する働きも兼ね備える。
【0049】
表1は、本実施例によって製造された平板状の圧粉成型体1の密度がBi−2212超電導体の理論密度(6.65g/cm3)に対して30%乃至95%の範囲内として製造した場合のJeを測定した結果である。測定は、温度4.2K,印加磁場2T中で行った。Jeは、線材の臨界電流(Ic)をシース材を含む線材全断面積で除することにより求めた。
【0050】
圧粉成型体1の密度がBi−2212超電導体の理論密度に対して30%及び35%の場合は、Jeが180乃至190A/mm2であったが、40%を超えると300乃至330A/mm2までJeが向上した。それぞれの線材について酸化物部分の密度を調査したところ、減面加工後の超電導体の密度が40%以下の場合と40%以上の場合とではJeha大きく異なることが分かった。なお、比較材として作製した直径2.0mmのROSATwireのJeは、190A/mm2であった。
【0051】
このことから、本発明における平板状の圧粉成型体1の密度は、Bi−2212超電導体の理論密度(6.65g/cm3)に対して40%以上に選ぶことが効果的であって、Jeの高い酸化物超電導線材が得られるようになる。
【0052】
【表1】
【0053】
表2は、本実施例によって製造された線材のマトリックス中における圧粉成型体の占積率が20%〜75%の範囲内として製造した場合のJeを測定した結果である。測定は、温度4.2K,印加磁場2T中で行った。なお、ここで製造した平板状の圧粉成型体の密度は、Bi−2212の理論密度に対して60%としている。Jeは、線材のIcをシース材を含む線材全断面積で除することにより求めた。
【0054】
占積率、即ち、線材の長手方向に対して垂直に切断した横断面において面積率で20%及び25%の場合は、Jeが150乃至170A/mm2であったが、30〜70%では270〜330A/mm2までJeが向上した。しかし、75%を超えると減面加工途中に線材表面に割れが発生し、熱処理時に割れ部から超電導体の融液が外部に流れ出すことによる減少が認められた。これにより、Jeは大きく低下した。なお、比較材として作製した直径2.0mmのROSATwireのJeは、190A/mm2であった。
【0055】
このことから、本発明における圧粉成型体1が線材内部マトリックス中における占積率を30%以上70%以下となるようにすることが効果的であって、Jeの高い酸化物超電導線材が得られるようになる。
【0056】
【表2】
【0057】
表3は、本実施例によって製造された金属シースを純銀、銀−マグネシウム合金、銀−金合金、純金、ニッケル、パラジウムの種々の金属を用いて、線材を製造した場合のJeを測定した結果である。測定は、温度4.2K,印加磁場2T中で行った。Jeは、線材のIcをシース材を含む線材全断面積で除することにより求めた。
【0058】
ここでは、平板状の圧粉成型体の密度はBi−2212の理論密度に対して55%で、その占積率は50%としている。
【0059】
純銀及び銀合金シースの場合は、Jeが280乃至300A/mm2であったが、それ以外のシース材ではJeが大きく低下した。
【0060】
このことから、本発明における金属シース材は、銀或いは銀合金シースとすることが効果的であって、Jeの高い酸化物超電導線材が得られるようになる。
【0061】
【表3】
【0062】
本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0063】
【発明の効果】
本発明の酸化物超電導線材の製造方法によれば、高い導体電流密度(Je)を有し、更に製造工程が短縮化され、よりコンパクトな酸化物超電導線材を得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる圧粉成型体と、金属板との積層体を金属ホイルで巻回した積層体の断面構成を示す図である。
【図2】本発明に係わる酸化物超電導線材の積層体を金属パイプに充填した断面構成を示す図である。
【符号の説明】
1・・・圧粉成型体、2・・・金属板、3・・・金属ホイル、4・・・金属シース材。
Claims (8)
- 酸化物超電導性粉末或いはその仮焼結体粉末を、当該酸化物超電導体の理論密度に対して40%以上の密度で平板状の圧粉成型体を製造する工程と、前記平板状の圧粉成型体と平板状の金属とを交互に複数枚積層して積層体を形成する工程と、前記積層体の複数個を金属シース内に充填する工程と、前記積層体を有する前記金属シースの横断面形状を減少させる塑性加工する工程とを有することを特徴とする酸化物超電導線材の製造方法。
- 酸化物超性電導粉末或いはその仮焼結体粉末を、平板状金属の間に配置し前記酸化物超電導粉末の理論密度に対して40%以上の密度となるように加圧成形して得られた前記酸化物超電導粉末の圧粉成型体と前記平板金属との積層体を形成する工程と、前記積層体の複数個を金属シース内に充填する工程と、前記積層体を有する前記金属シースの横断面形状を減少させる塑性加工する工程とを有することを特徴とする酸化物超電導線材の製造方法。
- 請求項1又は2において、前記積層体をその長手方向に対して垂直に切断した横断面において個々の前記積層体が互いに3回以上の回転対称性を持って配置して、前記金属シース内に充填する工程を有することを特徴とする酸化物超電導線材の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれかにおいて、前記圧粉成型体は塑性加工後のその長手方向に対して垂直に切断した横断面において面積率で30〜70%となるように前記金属シース内に充填する工程を有することを特徴とする酸化物超電導線材の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれかにおいて、幅と厚さとの比で表されるアスペクト比が全て同じである前記圧粉成型体を前記金属シース内に充填する工程を有することを特徴とする酸化物超電導線材の製造方法。
- 請求項1〜5のいずれかにおいて、前記金属シースは、銀或いは銀基合金であることを特徴とする酸化物超電導線材の製造方法。
- 請求項1〜6のいずれかにおいて、前記金属シースの長手方向に対して垂直に切断した横断面において前記積層体の複数個を配置したその横断面形状が六角形であることを特徴とする酸化物超電導線材の製造方法。
- 請求項1〜7のいずれかにおいて、前記積層体を長手方向に対して垂直に切断した横断面において横断面形状を菱形形状に切断する工程を含むことを特徴とする酸化物超電導線材の製造方法。
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