JP3758302B2 - 車両用空調装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、前方座席側蒸発器と、後方座席側蒸発器とを並列に備え、後方座席の冷房時には、後方座席側蒸発器から後方座席にかけて送風し、後方座席の冷房停止時には、後方座席側蒸発器から後方座席にかけての送風を停止する車両用空調装置に関するものであり、特に、後方座席側蒸発器への冷媒の供給を電磁弁にて断続可能な車両用空調装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、上述のような車両用空調装置として、前方座席側膨張弁および後方座席側膨張弁を、圧縮機に直列に、かつ、互いに並列に配し、さらに、前方座席側膨張弁に対応する前方座席側エバポレータ、および、後方座席側膨張弁に対応する後方座席側エバポレータを、互いに並列に配した冷凍サイクルを有するものが用いられている。
【0003】
また、前方座席側エバポレータから前方座席へ送風する前方座席側送風ファン、および、後方座席側エバポレータから後方座席へ送風する後方座席側送風ファンを備えており、後方座席の冷房を行なうときは、後方座席側送風ファンを作動させ、後方座席の冷房を行なわないときは、後方座席側送風ファンを停止している。
【0004】
なお、後方座席側エバポレータへの冷媒の供給を断続する電磁弁と、前方座席側エバポレータの空気流れ下流側の空気温度(前方座席側エバ後温度TE1)を検出する前方座席側サーミスタと、後方座席側エバポレータの空気流れ下流側の空気温度(後方座席側エバ後温度TE2)を検出する後方座席側サーミスタとを備えている。そして、前方座席側サーミスタにて検出される前方座席側エバ後温度TE1に基づいて圧縮機の作動停止を制御することにより、前方座席側エバポレータのフロスト防止を図っている。
【0005】
また、後方座席側サーミスタにて検出される後方座席側エバ後温度TE2に基づいて電磁弁を開閉することにより、後方座席へ吹き出す空気の温度を目標吹出空気温度TAORrに近づけている。具体的に、上記目標吹出空気温度TAORrは、後方座席側温度設定スイッチの設定温度に基づいて設定され、この目標吹出空気温度TAORrに対応して、設定温度TA(例えば、3℃〜15℃)、設定温度TA+Δt(Δtは例えば1℃)を設定し、この設定温度TAより後方座席側エバ後温度TE2が小さいときは電磁弁を閉じ、後方座席側エバ後温度TE2が上記設定温度TA+Δtよりも大きいときは、電磁弁を開いている。
【0006】
これによれば、後方座席の冷房を行なうか否かに基づいて電磁弁を開閉しないので、後方座席の冷房の切替時に、電磁弁の開閉によるウォータハンマ音や、冷媒流動音が発生することを防止できる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前方座席の冷房運転開始直後(つまり、圧縮機の始動直後)では、上記冷凍サイクルを循環する冷媒の温度が、比較的高い温度(例えば35℃)から徐々に低温(例えば3℃)へと変化するため、後方座席側送風ファンが停止していても、後方座席側エバ後温度TE2は、上記設定温度TA、TA+Δtよりも比較的高い温度(例えば35℃)から徐々に低温(例えば3℃)へと変化する。この過程において、後方座席側エバ後温度TE2が上記設定温度TAとなるとき、上述のような電磁弁の開閉制御が行なわれる。
【0008】
一方、後方座席用送風ファンが停止しているときは、後方座席用送風ファンに起因する騒音が発生しないため、前方座席の冷房運転開始直後に後方座席用送風ファンが停止しているとき、電磁弁の開閉に起因する騒音(つまり、上記したウォータハンマ音や、冷媒流動音や、電磁弁の作動音)が目立って乗員に聞こえる。このように、後方座席の冷房停止時であるにも関わらず、電磁弁の開閉に起因する騒音が聞こえるとき、車両用空調装置が故障したと乗員にて誤認されてしまう、といった問題があった。
【0009】
本発明は上記点に鑑みてなされたもので、前方座席側蒸発器と、後方座席側蒸発器とを並列に備え、後方座席の冷房時には、後方座席側送風手段を作動させ、後方座席の冷房停止時には、後方座席側送風手段を停止する車両用空調装置において、後方座席の冷房停止時に、車両用空調装置が故障したと乗員にて誤認されることを防止することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、前方座席側蒸発器(6)のフロスト防止のために圧縮機(1)を作動停止しているため、後方座席側蒸発器(10)のフロストも防止されており、この結果、後方座席の冷房停止時には電磁弁(8)を閉じる必要がないことに着目して、後方座席の冷房停止時には電磁弁(8)を常に開いた状態とすることにより、上記目的を達成することを見出した。
【0011】
すなわち、請求項1ないし3に記載の発明では、前方座席の冷房時において、前方座席側蒸発器(6)の空気流れ下流側における空気温度を検出する前方座席側温度検出手段(12)の第1検出温度(TE1)と、第1設定温度(TB、TB+Δt)とを比較して圧縮機(1)の作動停止を制御することにより、前方座席側蒸発器(6)のフロストを防止しており、
前方座席の冷房時において、第2送風手段(11)を作動させることにより、後方座席の冷房を行い、かつ、第2送風手段(11)を停止することにより、後方座席の冷房を停止しており、
後方座席の冷房時には、前方座席側蒸発器(6)の空気流れ下流側における空気温度を検出する第2温度検出手段(13)の第2検出温度(TE2)と、第2設定温度(TA、TA+Δt)とを比較して電磁弁(8)の開閉を制御することにより、後方座席へ送風する空気の温度を調節しており、後方座席の冷房停止時には、電磁弁(8)を常に開くことを特徴としている。
【0012】
このような手段によれば、後方座席の冷房停止時において、電磁弁(8)が開閉することはなく、この電磁弁(8)の開閉に起因する騒音が発生しないため、後方座席の冷房停止時に、車両用空調装置が故障したと乗員にて誤認されることを防止できる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。
(第1の実施形態)
本実施形態の車両用空調装置(デュアルエアコン)は、図1に示すような冷凍サイクルRを備えており、この冷凍サイクルRは、圧縮機1、凝縮器2、レシーバ3、前方座席側膨張弁5、前方座席側蒸発器6、電磁弁8、後方座席側膨張弁9、および、後方座席側蒸発器10を、冷媒流路である冷媒配管4、4a、4bにて接続してなる。
【0014】
圧縮機1は冷媒を圧縮するものであり、電磁クラッチ10を介して車両の走行用エンジン(図示しない)から動力を伝達されることにより駆動する。圧縮機1の冷媒流れ下流側には、圧縮機1によって圧縮された高温、高圧の冷媒を凝縮液化する凝縮器2が配されている。冷媒凝縮器2の冷媒流れ下流側にはレシーバ3が配されており、冷媒凝縮器2より導かれた冷媒は気液分離され、液冷媒のみがさらに冷媒流れ下流側へと送られる。
【0015】
冷媒圧縮機1、冷媒凝縮器2、および、レシーバ3は、冷媒配管4によってそれぞれ接続されている。冷媒配管4は、レシーバ3の冷媒流れ下流側の分岐部Aにおいて、前方座席側冷媒配管4aと、この前方座席側冷媒配管4aと並列に設けられる後方座席側冷媒配管4bとに分岐している。
前方座席側冷媒配管4aには、前方座席側膨張弁5(前方座席側減圧手段)と、前方座席側エバポレータ(前方座席側蒸発器)6とが設けられている。レシーバ3から送られた冷媒は膨張弁5によって減圧膨張され、膨張弁5の冷媒流れ下流側に配されたエバポレータ6へと送られる。エバポレータ6において冷媒は蒸発し、エバポレータ6を通過する空気を冷却する。
【0016】
前方座席側冷媒配管4aの、エバポレータ6の冷媒流れ下流側には感温筒(図示しない)が設けられており、エバポレータ6の冷媒流れ下流側(出口)における冷媒の温度を検知する。この感温筒によって検知される冷媒の温度と、エバポレータ6の冷媒流れ下流側(出口)の冷媒圧力とに応じて、膨張弁5の開度は調節される。
【0017】
エバポレータ6が収められるフロントエアコンケース(図示しない)の内部には、前方座席側ファン(前方座席側送風手段)7が配されており、ファン7が作動することにより、エバポレータ6から車室内の前方座席(図示しない)にかけての空気流が発生する。これにより、エバポレータ6にて冷却される空気が前方座席へ送風され、前方座席の冷房が行なわれる。
【0018】
後方座席側冷媒配管4bには、電磁弁8と、後方座席側膨張弁(後方座席側減圧手段)9と、後方座席側エバポレータ(後方座席側蒸発器)10とが設けられている。電磁弁8は、通電されることにより開弁し、通電停止することにより閉弁する常閉式電磁弁を用いている。レシーバ3から送られた冷媒は膨張弁9によって減圧膨張され、膨張弁9の冷媒流れ下流側に配されたエバポレータ10へと送られる。エバポレータ10において冷媒は蒸発し、エバポレータ10を通過する空気を冷却する。
【0019】
前方座席側冷媒配管4bの、エバポレータ10の冷媒流れ下流側(出口)には感温筒(図示しない)が設けられており、エバポレータ10の冷媒流れ下流側における冷媒の温度を検知する。この感温筒によって検知される冷媒の温度と、エバポレータ10の冷媒流れ下流側(出口)の冷媒圧力とに応じて、膨張弁9の開度は調節される。
【0020】
エバポレータ10が収められるリアクーラケース(図示しない)の内部には、後方座席側ファン(後方座席側送風手段)11が配されており、このファン11が作動することにより、エバポレータ10から車室内の前方座席(図示しない)にかけての空気流が発生する。これにより、エバポレータ10にて冷却される空気が後方座席へ送風され、後方座席の冷房が行なわれる。
【0021】
そして、エバポレータ6、10の空気流れ下流側には、この部位における空気の温度(以下、前方座席側、後方座席側エバ後温度という)を検出するサーミスタ(前方座席側、後方座席側温度検出手段)12、13がそれぞれ設けられている。このサーミスタ12、13の検出値に基づいて、後述のように、圧縮機1の作動停止および電磁弁8の開閉を制御する。
【0022】
そして、前方座席側冷媒配管4aと後方座席側冷媒配管4bは、エバポレータ6、10の冷媒流れ下流側の合流部Bにおいて合流し、この合流部Bの冷媒は、圧縮機1へ吸い込まれる。
ここで、車室内前方の前方座席側操作パネル40には、前方座席の空調(フロントエアコン)のオン、オフを指示するフロントエアコンスイッチ41と、前方座席の目標温度を設定する温度設定スイッチ42とが設けられている。これらスイッチ41からの信号は、制御手段14に入力される。
【0023】
また、車室内後方の後方座席側操作パネル20には、図5にも示すように、後方座席の冷房(リアクーラ)のオン、オフを指示するとともに、後方座席側ファン11の送風量をLOからHIにリニアに切り替えるリアクーラ兼ブロワスイッチ21と、後方座席の目標温度を設定する温度設定スイッチ22とが設けられている。リアクーラ兼ブロワスイッチ21は、リアクーラオフを指示する位置(図5に示す位置)から、ファン11の送風量をLOからHIの間のいずれかに設定する位置に切り替えることにより、リアクーラがオンとされる。これらスイッチ21、22からの信号も、制御手段14に入力される。
【0024】
また、制御手段14には、室温を検出する室温センサ32の検出値Tr 、外気温を検出する外気温センサ33の検出値Tam、日射量を検出する日射量センサ34の検出値Ts 、エンジン冷却水の水温を検出する水温センサ31の検出値TW が、入力信号として入力される。さらに、制御手段14には、上記したサーミスタ12、13の検出値も入力され、この入力信号に基づいて、前方座席側、後方座席側エバ後温度に対応する検出温度TE1、TE2が検出される。
【0025】
なお、上記したフロントエアコンケースの空気流れ最上流部には、内気吸込口および外気吸込口が形成されており、空気流れ最下流部には、周知のフット吹出用開口部、フェイス吹出用開口部、および、デフロスタ吹出用開口部が形成されている。また、フロントエアコンケースの内部には、内気吸込口および外気吸込口を選択的に開閉する内外気切替ドアと、上記したエバポレータ6と、前方座席側ファン7と、サーミスタ12と、エンジン冷却水を熱源とするヒータコア(加熱用熱交換器)と、ヒータコアの加熱能力を調節するエアミックスドア(加熱能力調整手段)と、上記各吹出用開口部を開閉して周知の吹出モードを切り替える吹出モード切替ドアとが配されている。
【0026】
次に、本実施形態の作動を、図2に示すフローチャートに基づいて説明する。このフローチャートは、車両のイグニッションスイッチをオンすることによりスタートする。
まず、ステップS100において、フロントエアコンのオン信号の有無を判定する。そして、フロントエアコンスイッチ41がオフであるとき、フロントエアコンのオン信号無し(つまり、ステップS100の判定結果がNO)と判定して、ステップS101において、フロントエアコン停止制御を行ない、ステップS102において、後方座席側ファン制御を行なう。
【0027】
上記フロントエアコン停止制御とは、圧縮機1を停止状態とする(実際は、電磁クラッチ10への通電をオフ状態とする)制御と、前方座席側ファン7を停止状態とする(実際は、前方座席側ファン7のファンモータ7aへの通電をオフ状態とする)制御と、電磁弁8を閉じる(実際は、電磁弁8への通電をオフ状態とする)制御とを包含する。
【0028】
また、上記後方座席側ファン制御とは、リアクーラ兼ブロワスイッチ21による設定送風量を読み込み、この読み込んだ情報により、後方座席側ファン11の送風量(実際は、送風ファン11のファンモータ11aへの通電量)を制御するものである。なお、このときは、エバポレータ6、10に冷媒が流れないため、送風ファン11が作動しても、後部座席へは、エバポレータ10にて冷却されない空気が送風される。
【0029】
また、フロントエアコンスイッチ41がオンであるとき、上記ステップS100においてフロントエアコンのオン信号有り(つまり、ステップS100の判定結果がYES)と判定して、フロントエアコン作動制御を行なうステップS103に進む。このフロントエアコン作動制御とは、上記各センサ31、32、33、34およびサーミスタ12の検出値や、温度設定スイッチ42による前方座席側設定温度(FTset )の各種信号を読み込むステップS104と、ステップS104において読み込んだ情報から、前方座席への目標吹出空気温度TAOを後述する数式1により算出し、この目標吹出空気温度TAOに基づいて、上記内外気切替ドアの位置、上記前方座席側ファン7の送風量、上記エアミックスドアの位置、上記吹出モード切替ドアの位置、圧縮機1の作動停止(フロスト防止用、ステップS106)を制御するステップS105とを包含する。
【0030】
【数式1】
TAO=Kset ・FTset −Kr ・Tr −Kam・Tam−Ks ・Ts +C
なお、Kset :温度設定ゲイン、Kr :内気温度ゲイン、Kam:外気温度ゲイン、Ks :日射ゲイン、C:補正定数である。
なお、ステップS106に示すように、サーミスタ12の検出温度TE1が、圧縮機制御用設定温度TB(例えば3℃)より小さいときに、圧縮機1はオフされ、検出温度TE1が上記設定温度TB(例えば3℃)より所定温度Δt(例えば1℃)高い温度となったとき、圧縮機1をオンとする。ここで、圧縮機制御用設定温度TBとは、エバポレータ6のフロストを防止可能な温度のうち必要最低な温度のことである。
【0031】
そして、圧縮機1がオンされることにより、圧縮機1において冷媒が圧縮され、この圧縮された冷媒は、凝縮器2において凝縮液化され、この凝縮液化された冷媒は、レシーバ3によって気液分離される。この気液分離された冷媒は、前方座席側冷媒配管4aおよび後方座席側冷媒配管4bへとそれぞれ流入する。
前方座席側冷媒配管4aに流入した冷媒は膨張弁5で減圧膨張され、エバポレータ6において蒸発し、エバポレータ6を通過する空気を冷却する。この冷却された空気は、前方座席側ファン7によって前方座席へと吹き出され、前方座席の冷房を行なう。エバポレータ6にて蒸発した冷媒は、圧縮機1に戻って再び圧縮される。
【0032】
そして、ステップS107において、リアクーラのオン信号の有無を判定する。ここで、リアクーラ兼ブロワスイッチ21が、送風ファン11の送風量をLOからHIの間のいずれかに設定する位置にあるとき、リアクーラのオン信号有り(つまり、ステップS107の判定結果がYES)と判定してステップS108に進み、上記スイッチ21の設定値により後方座席側ファン11の送風量を制御する。
【0033】
さらにステップS109に進み、後方座席への目標吹出空気温度TAORrを後述する数式2により算出する。
【0034】
【数式2】
TAORr=TAO+TD
なお、TD:バランサVR値である。このバランサVR値とは、後方座席側操作パネル20の温度設定スイッチ22の設定温度RTset に基づく値である。
ここで、後方座席側の温度設定スイッチ22の設定温度RTset を、前方座席側の温度設定スイッチ22の設定温度FTset と同じとしたいときは、乗員にて温度設定スイッチ22を図5中実線で示す位置とし、後方座席側の温度設定スイッチ22の設定温度RTset を、前方座席側の温度設定スイッチ22の設定温度FTset より低くしたいときは、乗員にて温度設定スイッチ22を図5中実線位置より左側とし、後方座席側の温度設定スイッチ22の設定温度RTset を、前方座席側の温度設定スイッチ22の設定温度FTset より高くしたいときは、乗員にて温度設定スイッチ22を図5中実線位置より右側とする。
【0035】
そして、ステップS110において、予めROMに記憶された図3に示すマップに基づいて、TAORrから電磁弁制御用設定温度TAを決定する。なお、TAORrが0℃以下であるときは、最大冷房を必要とするため、このときのTAは、TAの最小設定値(つまり、実際のエバ後温度の範囲のうち最も低い温度、例えば3℃)とする。また、TAORrが22℃以上であるときは、冷房をほとんど必要としない温度であるとみなされるので、このときのTAは、TAの最大設定値(つまり、冷房時における吹出最大温度として決定した値、例えば15℃)とする。
【0036】
さらに、ステップS110において、予めROMに記憶された図4に示すマップに基づいて、電磁弁8の制御を行なう。具体的には、サーミスタ13の検出温度TE2が設定温度TAより小さいときは、電磁弁8を閉じ、サーミスタ13の検出値TE2が設定温度TAよりもΔt(例えば1℃)高くなったときは、電磁弁8を開く。
【0037】
そして、リアクーラ兼ブロワスイッチ21が、リアクーラオフを指示する位置(図5に示す位置)にあるとき、リアクーラのオン信号無し(つまり、ステップS107の判定結果がNO)と判定してステップS112に進み、電磁弁制御用設定温度TAを所定温度TC(例えば−100(℃))とし、ステップS111において、電磁弁8の制御を行なう。ここで、所定温度TCは、上記した圧縮機制御用設定温度TBよりも低くしている。
【0038】
なお、電磁弁8が開であるとき、後方座席側冷媒配管4bに流入した冷媒は電磁弁8を通過し、膨張弁9で減圧膨張され、エバポレータ10において蒸発し、エバポレータ10周囲の空気を冷却する。この際、リアクーラ兼ブロワスイッチ21がリアクーラオフを指示する位置にあるときは、後方座席側ファン11が停止状態であるため、エバポレータ10において冷却された空気は後方座席へと吹き出されず、前方座席のみ冷房が行われる。
【0039】
一方、リアクーラ兼ブロワスイッチ21が、送風ファン11の送風量をLOからHIの間のいずれかに設定する位置にあるとき、後方座席側ファン11が作動状態であるため、エバポレータ10において冷却された空気は後方座席へと吹き出され、前方座席および後方座席の冷房が行われる。エバポレータ10にて蒸発した冷媒は、圧縮機1へ戻って再び圧縮される。
【0040】
そして、本実施形態によれば、後方座席の冷房停止時において、電磁弁8が開閉することはなく、この電磁弁8の開閉に起因する騒音が発生しないため、後方座席の冷房停止時に、車両用空調装置が故障したと乗員にて誤認されることを防止できる。
(第2の実施形態)
本実施形態の作動を図6のフローチャートに示す。本実施形態では、図2中ステップS112を廃止する替わりに、図7中ステップS113を追加している。すなわち、ステップS107においてNOと判定されたとき(リアクーラ兼ブロワスイッチ21がリアクーラオフを指示する位置にあるとき)、ステップS113に進んで、電磁弁8を開くように制御する(つまり、電磁弁8に通電する)。この結果、上記第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0041】
(他の実施形態)
上記両実施形態では、エバポレータ6、10の空気流れ下流側に配したサーミスタ12、13の検出値(つまり、エバポレータ6、10の空気流れ下流側の空気温度、エバ後温度)に基づいて、圧縮機1および電磁弁8をオンオフしていたが、エバポレータ6、10を構成するフィンやチューブの間に形成される間隙に、サーミスタ12、13のような温度検出手段を配し、この検出値に基づいて、圧縮機1および電磁弁8をオンオフしてもよい。つまり、上記間隙は、請求項でいう蒸発器の空気流れ下流側に含まれる。
【0042】
また、上記両実施形態では、電磁弁8を膨張弁5よりも冷媒の流れ上流側に設けた実施の形態について述べたが、電磁弁8は後方座席側冷媒配管4bに設けられていればよく、その位置は特に限定されない。
また、上記両実施形態では、温度検出手段としてサーミスタ12、13を用いた実施の形態について示したが、例えばサーモスタットを用いてもよく、用いられる温度検出手段としては特にサーミスタに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の空調装置の概略構成を示すとともに、空調装置の制御系を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の作動を説明するフローチャートである。
【図3】第1の実施形態において、後方座席への目標吹出空気温度TAORrと、電磁弁制御用設定温度TAとの関係を示すグラフである。
【図4】第1の実施形態において、電磁弁の制御パターンを示すグラフである。
【図5】後方座席側操作パネルの正面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態の作動を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
1…圧縮機、2…凝縮器、A…分岐部、B…合流部、
5…前方座席側膨張弁(前方座席側減圧手段)、
6…前方座席側エバポレータ(前方座席側蒸発器)、
7…前方座席側ファン(前方座席側送風手段)、
8…電磁弁、9…後方座席側膨張弁(後方座席側減圧手段)、
10…後方座席側エバポレータ(後方座席側蒸発器)、
11…後方座席側ファン(後方座席側送風手段)、
12、13…サーミスタ(前方座席側、後方座席側温度検出手段)。
【発明の属する技術分野】
本発明は、前方座席側蒸発器と、後方座席側蒸発器とを並列に備え、後方座席の冷房時には、後方座席側蒸発器から後方座席にかけて送風し、後方座席の冷房停止時には、後方座席側蒸発器から後方座席にかけての送風を停止する車両用空調装置に関するものであり、特に、後方座席側蒸発器への冷媒の供給を電磁弁にて断続可能な車両用空調装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、上述のような車両用空調装置として、前方座席側膨張弁および後方座席側膨張弁を、圧縮機に直列に、かつ、互いに並列に配し、さらに、前方座席側膨張弁に対応する前方座席側エバポレータ、および、後方座席側膨張弁に対応する後方座席側エバポレータを、互いに並列に配した冷凍サイクルを有するものが用いられている。
【0003】
また、前方座席側エバポレータから前方座席へ送風する前方座席側送風ファン、および、後方座席側エバポレータから後方座席へ送風する後方座席側送風ファンを備えており、後方座席の冷房を行なうときは、後方座席側送風ファンを作動させ、後方座席の冷房を行なわないときは、後方座席側送風ファンを停止している。
【0004】
なお、後方座席側エバポレータへの冷媒の供給を断続する電磁弁と、前方座席側エバポレータの空気流れ下流側の空気温度(前方座席側エバ後温度TE1)を検出する前方座席側サーミスタと、後方座席側エバポレータの空気流れ下流側の空気温度(後方座席側エバ後温度TE2)を検出する後方座席側サーミスタとを備えている。そして、前方座席側サーミスタにて検出される前方座席側エバ後温度TE1に基づいて圧縮機の作動停止を制御することにより、前方座席側エバポレータのフロスト防止を図っている。
【0005】
また、後方座席側サーミスタにて検出される後方座席側エバ後温度TE2に基づいて電磁弁を開閉することにより、後方座席へ吹き出す空気の温度を目標吹出空気温度TAORrに近づけている。具体的に、上記目標吹出空気温度TAORrは、後方座席側温度設定スイッチの設定温度に基づいて設定され、この目標吹出空気温度TAORrに対応して、設定温度TA(例えば、3℃〜15℃)、設定温度TA+Δt(Δtは例えば1℃)を設定し、この設定温度TAより後方座席側エバ後温度TE2が小さいときは電磁弁を閉じ、後方座席側エバ後温度TE2が上記設定温度TA+Δtよりも大きいときは、電磁弁を開いている。
【0006】
これによれば、後方座席の冷房を行なうか否かに基づいて電磁弁を開閉しないので、後方座席の冷房の切替時に、電磁弁の開閉によるウォータハンマ音や、冷媒流動音が発生することを防止できる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前方座席の冷房運転開始直後(つまり、圧縮機の始動直後)では、上記冷凍サイクルを循環する冷媒の温度が、比較的高い温度(例えば35℃)から徐々に低温(例えば3℃)へと変化するため、後方座席側送風ファンが停止していても、後方座席側エバ後温度TE2は、上記設定温度TA、TA+Δtよりも比較的高い温度(例えば35℃)から徐々に低温(例えば3℃)へと変化する。この過程において、後方座席側エバ後温度TE2が上記設定温度TAとなるとき、上述のような電磁弁の開閉制御が行なわれる。
【0008】
一方、後方座席用送風ファンが停止しているときは、後方座席用送風ファンに起因する騒音が発生しないため、前方座席の冷房運転開始直後に後方座席用送風ファンが停止しているとき、電磁弁の開閉に起因する騒音(つまり、上記したウォータハンマ音や、冷媒流動音や、電磁弁の作動音)が目立って乗員に聞こえる。このように、後方座席の冷房停止時であるにも関わらず、電磁弁の開閉に起因する騒音が聞こえるとき、車両用空調装置が故障したと乗員にて誤認されてしまう、といった問題があった。
【0009】
本発明は上記点に鑑みてなされたもので、前方座席側蒸発器と、後方座席側蒸発器とを並列に備え、後方座席の冷房時には、後方座席側送風手段を作動させ、後方座席の冷房停止時には、後方座席側送風手段を停止する車両用空調装置において、後方座席の冷房停止時に、車両用空調装置が故障したと乗員にて誤認されることを防止することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、前方座席側蒸発器(6)のフロスト防止のために圧縮機(1)を作動停止しているため、後方座席側蒸発器(10)のフロストも防止されており、この結果、後方座席の冷房停止時には電磁弁(8)を閉じる必要がないことに着目して、後方座席の冷房停止時には電磁弁(8)を常に開いた状態とすることにより、上記目的を達成することを見出した。
【0011】
すなわち、請求項1ないし3に記載の発明では、前方座席の冷房時において、前方座席側蒸発器(6)の空気流れ下流側における空気温度を検出する前方座席側温度検出手段(12)の第1検出温度(TE1)と、第1設定温度(TB、TB+Δt)とを比較して圧縮機(1)の作動停止を制御することにより、前方座席側蒸発器(6)のフロストを防止しており、
前方座席の冷房時において、第2送風手段(11)を作動させることにより、後方座席の冷房を行い、かつ、第2送風手段(11)を停止することにより、後方座席の冷房を停止しており、
後方座席の冷房時には、前方座席側蒸発器(6)の空気流れ下流側における空気温度を検出する第2温度検出手段(13)の第2検出温度(TE2)と、第2設定温度(TA、TA+Δt)とを比較して電磁弁(8)の開閉を制御することにより、後方座席へ送風する空気の温度を調節しており、後方座席の冷房停止時には、電磁弁(8)を常に開くことを特徴としている。
【0012】
このような手段によれば、後方座席の冷房停止時において、電磁弁(8)が開閉することはなく、この電磁弁(8)の開閉に起因する騒音が発生しないため、後方座席の冷房停止時に、車両用空調装置が故障したと乗員にて誤認されることを防止できる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。
(第1の実施形態)
本実施形態の車両用空調装置(デュアルエアコン)は、図1に示すような冷凍サイクルRを備えており、この冷凍サイクルRは、圧縮機1、凝縮器2、レシーバ3、前方座席側膨張弁5、前方座席側蒸発器6、電磁弁8、後方座席側膨張弁9、および、後方座席側蒸発器10を、冷媒流路である冷媒配管4、4a、4bにて接続してなる。
【0014】
圧縮機1は冷媒を圧縮するものであり、電磁クラッチ10を介して車両の走行用エンジン(図示しない)から動力を伝達されることにより駆動する。圧縮機1の冷媒流れ下流側には、圧縮機1によって圧縮された高温、高圧の冷媒を凝縮液化する凝縮器2が配されている。冷媒凝縮器2の冷媒流れ下流側にはレシーバ3が配されており、冷媒凝縮器2より導かれた冷媒は気液分離され、液冷媒のみがさらに冷媒流れ下流側へと送られる。
【0015】
冷媒圧縮機1、冷媒凝縮器2、および、レシーバ3は、冷媒配管4によってそれぞれ接続されている。冷媒配管4は、レシーバ3の冷媒流れ下流側の分岐部Aにおいて、前方座席側冷媒配管4aと、この前方座席側冷媒配管4aと並列に設けられる後方座席側冷媒配管4bとに分岐している。
前方座席側冷媒配管4aには、前方座席側膨張弁5(前方座席側減圧手段)と、前方座席側エバポレータ(前方座席側蒸発器)6とが設けられている。レシーバ3から送られた冷媒は膨張弁5によって減圧膨張され、膨張弁5の冷媒流れ下流側に配されたエバポレータ6へと送られる。エバポレータ6において冷媒は蒸発し、エバポレータ6を通過する空気を冷却する。
【0016】
前方座席側冷媒配管4aの、エバポレータ6の冷媒流れ下流側には感温筒(図示しない)が設けられており、エバポレータ6の冷媒流れ下流側(出口)における冷媒の温度を検知する。この感温筒によって検知される冷媒の温度と、エバポレータ6の冷媒流れ下流側(出口)の冷媒圧力とに応じて、膨張弁5の開度は調節される。
【0017】
エバポレータ6が収められるフロントエアコンケース(図示しない)の内部には、前方座席側ファン(前方座席側送風手段)7が配されており、ファン7が作動することにより、エバポレータ6から車室内の前方座席(図示しない)にかけての空気流が発生する。これにより、エバポレータ6にて冷却される空気が前方座席へ送風され、前方座席の冷房が行なわれる。
【0018】
後方座席側冷媒配管4bには、電磁弁8と、後方座席側膨張弁(後方座席側減圧手段)9と、後方座席側エバポレータ(後方座席側蒸発器)10とが設けられている。電磁弁8は、通電されることにより開弁し、通電停止することにより閉弁する常閉式電磁弁を用いている。レシーバ3から送られた冷媒は膨張弁9によって減圧膨張され、膨張弁9の冷媒流れ下流側に配されたエバポレータ10へと送られる。エバポレータ10において冷媒は蒸発し、エバポレータ10を通過する空気を冷却する。
【0019】
前方座席側冷媒配管4bの、エバポレータ10の冷媒流れ下流側(出口)には感温筒(図示しない)が設けられており、エバポレータ10の冷媒流れ下流側における冷媒の温度を検知する。この感温筒によって検知される冷媒の温度と、エバポレータ10の冷媒流れ下流側(出口)の冷媒圧力とに応じて、膨張弁9の開度は調節される。
【0020】
エバポレータ10が収められるリアクーラケース(図示しない)の内部には、後方座席側ファン(後方座席側送風手段)11が配されており、このファン11が作動することにより、エバポレータ10から車室内の前方座席(図示しない)にかけての空気流が発生する。これにより、エバポレータ10にて冷却される空気が後方座席へ送風され、後方座席の冷房が行なわれる。
【0021】
そして、エバポレータ6、10の空気流れ下流側には、この部位における空気の温度(以下、前方座席側、後方座席側エバ後温度という)を検出するサーミスタ(前方座席側、後方座席側温度検出手段)12、13がそれぞれ設けられている。このサーミスタ12、13の検出値に基づいて、後述のように、圧縮機1の作動停止および電磁弁8の開閉を制御する。
【0022】
そして、前方座席側冷媒配管4aと後方座席側冷媒配管4bは、エバポレータ6、10の冷媒流れ下流側の合流部Bにおいて合流し、この合流部Bの冷媒は、圧縮機1へ吸い込まれる。
ここで、車室内前方の前方座席側操作パネル40には、前方座席の空調(フロントエアコン)のオン、オフを指示するフロントエアコンスイッチ41と、前方座席の目標温度を設定する温度設定スイッチ42とが設けられている。これらスイッチ41からの信号は、制御手段14に入力される。
【0023】
また、車室内後方の後方座席側操作パネル20には、図5にも示すように、後方座席の冷房(リアクーラ)のオン、オフを指示するとともに、後方座席側ファン11の送風量をLOからHIにリニアに切り替えるリアクーラ兼ブロワスイッチ21と、後方座席の目標温度を設定する温度設定スイッチ22とが設けられている。リアクーラ兼ブロワスイッチ21は、リアクーラオフを指示する位置(図5に示す位置)から、ファン11の送風量をLOからHIの間のいずれかに設定する位置に切り替えることにより、リアクーラがオンとされる。これらスイッチ21、22からの信号も、制御手段14に入力される。
【0024】
また、制御手段14には、室温を検出する室温センサ32の検出値Tr 、外気温を検出する外気温センサ33の検出値Tam、日射量を検出する日射量センサ34の検出値Ts 、エンジン冷却水の水温を検出する水温センサ31の検出値TW が、入力信号として入力される。さらに、制御手段14には、上記したサーミスタ12、13の検出値も入力され、この入力信号に基づいて、前方座席側、後方座席側エバ後温度に対応する検出温度TE1、TE2が検出される。
【0025】
なお、上記したフロントエアコンケースの空気流れ最上流部には、内気吸込口および外気吸込口が形成されており、空気流れ最下流部には、周知のフット吹出用開口部、フェイス吹出用開口部、および、デフロスタ吹出用開口部が形成されている。また、フロントエアコンケースの内部には、内気吸込口および外気吸込口を選択的に開閉する内外気切替ドアと、上記したエバポレータ6と、前方座席側ファン7と、サーミスタ12と、エンジン冷却水を熱源とするヒータコア(加熱用熱交換器)と、ヒータコアの加熱能力を調節するエアミックスドア(加熱能力調整手段)と、上記各吹出用開口部を開閉して周知の吹出モードを切り替える吹出モード切替ドアとが配されている。
【0026】
次に、本実施形態の作動を、図2に示すフローチャートに基づいて説明する。このフローチャートは、車両のイグニッションスイッチをオンすることによりスタートする。
まず、ステップS100において、フロントエアコンのオン信号の有無を判定する。そして、フロントエアコンスイッチ41がオフであるとき、フロントエアコンのオン信号無し(つまり、ステップS100の判定結果がNO)と判定して、ステップS101において、フロントエアコン停止制御を行ない、ステップS102において、後方座席側ファン制御を行なう。
【0027】
上記フロントエアコン停止制御とは、圧縮機1を停止状態とする(実際は、電磁クラッチ10への通電をオフ状態とする)制御と、前方座席側ファン7を停止状態とする(実際は、前方座席側ファン7のファンモータ7aへの通電をオフ状態とする)制御と、電磁弁8を閉じる(実際は、電磁弁8への通電をオフ状態とする)制御とを包含する。
【0028】
また、上記後方座席側ファン制御とは、リアクーラ兼ブロワスイッチ21による設定送風量を読み込み、この読み込んだ情報により、後方座席側ファン11の送風量(実際は、送風ファン11のファンモータ11aへの通電量)を制御するものである。なお、このときは、エバポレータ6、10に冷媒が流れないため、送風ファン11が作動しても、後部座席へは、エバポレータ10にて冷却されない空気が送風される。
【0029】
また、フロントエアコンスイッチ41がオンであるとき、上記ステップS100においてフロントエアコンのオン信号有り(つまり、ステップS100の判定結果がYES)と判定して、フロントエアコン作動制御を行なうステップS103に進む。このフロントエアコン作動制御とは、上記各センサ31、32、33、34およびサーミスタ12の検出値や、温度設定スイッチ42による前方座席側設定温度(FTset )の各種信号を読み込むステップS104と、ステップS104において読み込んだ情報から、前方座席への目標吹出空気温度TAOを後述する数式1により算出し、この目標吹出空気温度TAOに基づいて、上記内外気切替ドアの位置、上記前方座席側ファン7の送風量、上記エアミックスドアの位置、上記吹出モード切替ドアの位置、圧縮機1の作動停止(フロスト防止用、ステップS106)を制御するステップS105とを包含する。
【0030】
【数式1】
TAO=Kset ・FTset −Kr ・Tr −Kam・Tam−Ks ・Ts +C
なお、Kset :温度設定ゲイン、Kr :内気温度ゲイン、Kam:外気温度ゲイン、Ks :日射ゲイン、C:補正定数である。
なお、ステップS106に示すように、サーミスタ12の検出温度TE1が、圧縮機制御用設定温度TB(例えば3℃)より小さいときに、圧縮機1はオフされ、検出温度TE1が上記設定温度TB(例えば3℃)より所定温度Δt(例えば1℃)高い温度となったとき、圧縮機1をオンとする。ここで、圧縮機制御用設定温度TBとは、エバポレータ6のフロストを防止可能な温度のうち必要最低な温度のことである。
【0031】
そして、圧縮機1がオンされることにより、圧縮機1において冷媒が圧縮され、この圧縮された冷媒は、凝縮器2において凝縮液化され、この凝縮液化された冷媒は、レシーバ3によって気液分離される。この気液分離された冷媒は、前方座席側冷媒配管4aおよび後方座席側冷媒配管4bへとそれぞれ流入する。
前方座席側冷媒配管4aに流入した冷媒は膨張弁5で減圧膨張され、エバポレータ6において蒸発し、エバポレータ6を通過する空気を冷却する。この冷却された空気は、前方座席側ファン7によって前方座席へと吹き出され、前方座席の冷房を行なう。エバポレータ6にて蒸発した冷媒は、圧縮機1に戻って再び圧縮される。
【0032】
そして、ステップS107において、リアクーラのオン信号の有無を判定する。ここで、リアクーラ兼ブロワスイッチ21が、送風ファン11の送風量をLOからHIの間のいずれかに設定する位置にあるとき、リアクーラのオン信号有り(つまり、ステップS107の判定結果がYES)と判定してステップS108に進み、上記スイッチ21の設定値により後方座席側ファン11の送風量を制御する。
【0033】
さらにステップS109に進み、後方座席への目標吹出空気温度TAORrを後述する数式2により算出する。
【0034】
【数式2】
TAORr=TAO+TD
なお、TD:バランサVR値である。このバランサVR値とは、後方座席側操作パネル20の温度設定スイッチ22の設定温度RTset に基づく値である。
ここで、後方座席側の温度設定スイッチ22の設定温度RTset を、前方座席側の温度設定スイッチ22の設定温度FTset と同じとしたいときは、乗員にて温度設定スイッチ22を図5中実線で示す位置とし、後方座席側の温度設定スイッチ22の設定温度RTset を、前方座席側の温度設定スイッチ22の設定温度FTset より低くしたいときは、乗員にて温度設定スイッチ22を図5中実線位置より左側とし、後方座席側の温度設定スイッチ22の設定温度RTset を、前方座席側の温度設定スイッチ22の設定温度FTset より高くしたいときは、乗員にて温度設定スイッチ22を図5中実線位置より右側とする。
【0035】
そして、ステップS110において、予めROMに記憶された図3に示すマップに基づいて、TAORrから電磁弁制御用設定温度TAを決定する。なお、TAORrが0℃以下であるときは、最大冷房を必要とするため、このときのTAは、TAの最小設定値(つまり、実際のエバ後温度の範囲のうち最も低い温度、例えば3℃)とする。また、TAORrが22℃以上であるときは、冷房をほとんど必要としない温度であるとみなされるので、このときのTAは、TAの最大設定値(つまり、冷房時における吹出最大温度として決定した値、例えば15℃)とする。
【0036】
さらに、ステップS110において、予めROMに記憶された図4に示すマップに基づいて、電磁弁8の制御を行なう。具体的には、サーミスタ13の検出温度TE2が設定温度TAより小さいときは、電磁弁8を閉じ、サーミスタ13の検出値TE2が設定温度TAよりもΔt(例えば1℃)高くなったときは、電磁弁8を開く。
【0037】
そして、リアクーラ兼ブロワスイッチ21が、リアクーラオフを指示する位置(図5に示す位置)にあるとき、リアクーラのオン信号無し(つまり、ステップS107の判定結果がNO)と判定してステップS112に進み、電磁弁制御用設定温度TAを所定温度TC(例えば−100(℃))とし、ステップS111において、電磁弁8の制御を行なう。ここで、所定温度TCは、上記した圧縮機制御用設定温度TBよりも低くしている。
【0038】
なお、電磁弁8が開であるとき、後方座席側冷媒配管4bに流入した冷媒は電磁弁8を通過し、膨張弁9で減圧膨張され、エバポレータ10において蒸発し、エバポレータ10周囲の空気を冷却する。この際、リアクーラ兼ブロワスイッチ21がリアクーラオフを指示する位置にあるときは、後方座席側ファン11が停止状態であるため、エバポレータ10において冷却された空気は後方座席へと吹き出されず、前方座席のみ冷房が行われる。
【0039】
一方、リアクーラ兼ブロワスイッチ21が、送風ファン11の送風量をLOからHIの間のいずれかに設定する位置にあるとき、後方座席側ファン11が作動状態であるため、エバポレータ10において冷却された空気は後方座席へと吹き出され、前方座席および後方座席の冷房が行われる。エバポレータ10にて蒸発した冷媒は、圧縮機1へ戻って再び圧縮される。
【0040】
そして、本実施形態によれば、後方座席の冷房停止時において、電磁弁8が開閉することはなく、この電磁弁8の開閉に起因する騒音が発生しないため、後方座席の冷房停止時に、車両用空調装置が故障したと乗員にて誤認されることを防止できる。
(第2の実施形態)
本実施形態の作動を図6のフローチャートに示す。本実施形態では、図2中ステップS112を廃止する替わりに、図7中ステップS113を追加している。すなわち、ステップS107においてNOと判定されたとき(リアクーラ兼ブロワスイッチ21がリアクーラオフを指示する位置にあるとき)、ステップS113に進んで、電磁弁8を開くように制御する(つまり、電磁弁8に通電する)。この結果、上記第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0041】
(他の実施形態)
上記両実施形態では、エバポレータ6、10の空気流れ下流側に配したサーミスタ12、13の検出値(つまり、エバポレータ6、10の空気流れ下流側の空気温度、エバ後温度)に基づいて、圧縮機1および電磁弁8をオンオフしていたが、エバポレータ6、10を構成するフィンやチューブの間に形成される間隙に、サーミスタ12、13のような温度検出手段を配し、この検出値に基づいて、圧縮機1および電磁弁8をオンオフしてもよい。つまり、上記間隙は、請求項でいう蒸発器の空気流れ下流側に含まれる。
【0042】
また、上記両実施形態では、電磁弁8を膨張弁5よりも冷媒の流れ上流側に設けた実施の形態について述べたが、電磁弁8は後方座席側冷媒配管4bに設けられていればよく、その位置は特に限定されない。
また、上記両実施形態では、温度検出手段としてサーミスタ12、13を用いた実施の形態について示したが、例えばサーモスタットを用いてもよく、用いられる温度検出手段としては特にサーミスタに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の空調装置の概略構成を示すとともに、空調装置の制御系を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の作動を説明するフローチャートである。
【図3】第1の実施形態において、後方座席への目標吹出空気温度TAORrと、電磁弁制御用設定温度TAとの関係を示すグラフである。
【図4】第1の実施形態において、電磁弁の制御パターンを示すグラフである。
【図5】後方座席側操作パネルの正面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態の作動を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
1…圧縮機、2…凝縮器、A…分岐部、B…合流部、
5…前方座席側膨張弁(前方座席側減圧手段)、
6…前方座席側エバポレータ(前方座席側蒸発器)、
7…前方座席側ファン(前方座席側送風手段)、
8…電磁弁、9…後方座席側膨張弁(後方座席側減圧手段)、
10…後方座席側エバポレータ(後方座席側蒸発器)、
11…後方座席側ファン(後方座席側送風手段)、
12、13…サーミスタ(前方座席側、後方座席側温度検出手段)。
Claims (3)
- 冷媒を圧縮する圧縮機(1)と、
この圧縮機(1)にて圧縮された冷媒を凝縮液化する凝縮器(2)と、
この凝縮器(2)にて凝縮液化された冷媒を減圧膨張する前方座席側減圧手段(5)と、
この前方座席側減圧手段(5)にて減圧膨張された冷媒を蒸発させる前方座席側蒸発器(6)と、
前記前方座席側減圧手段(5)と並列に配され、前記凝縮器(2)にて凝縮液化された冷媒を減圧膨張する後方座席側減圧手段(9)と、
前記前方座席側蒸発器(6)と並列に配され、前記後方座席側減圧手段(9)にて減圧膨張された冷媒を蒸発させる後方座席側蒸発器(10)と、
前記凝縮器(2)にて凝縮液化された冷媒を、前記減圧手段(5)および前記後方座席側減圧手段(9)にむけて分岐させる分岐部(A)と、
前記前方座席側蒸発器(6)および前記後方座席側蒸発器(10)にて蒸発させた冷媒を合流させる合流部(B)とを備え、
この合流部(B)からの冷媒を前記圧縮機(1)に吸い込ませる冷凍サイクルを有する車両用空調装置であって、
前記後方座席側蒸発器(10)を含む、前記分岐部(A)と前記合流部(B)との間の冷媒流路を開閉する電磁弁(8)と、
前記前方座席側蒸発器(6)から前方座席にかけて空気流れを発生させる前方座席側送風手段(7)と、
前記後方座席側蒸発器(10)から後方座席にかけて空気流れを発生させる後方座席側送風手段(11)と、
前記前方座席側蒸発器(6)の空気流れ下流側における空気温度を検出する前方座席側温度検出手段(12)と、
前記後方座席側蒸発器(10)の空気流れ下流側における空気温度を検出する後方座席側温度検出手段(13)とを備え、
前記前方座席の冷房時において、前記前方座席側温度検出手段(12)の第1検出温度(TE1)と、第1設定温度(TB、TB+Δt)とを比較して前記圧縮機(1)の作動停止を制御することにより、前記前方座席側蒸発器(6)のフロストを防止しており、
前記前方座席の冷房時において、前記後方座席側送風手段(11)を作動させることにより、前記後方座席の冷房を行い、かつ、前記後方座席側送風手段(11)を停止することにより、前記後方座席の冷房を停止しており、
前記後方座席の冷房時には、前記後方座席側温度検出手段(13)の第2検出温度(TE2)と、第2設定温度(TA、TA+Δt)とを比較して前記電磁弁(8)の開閉を制御することにより、前記後方座席へ送風する空気の温度を調節しており、
前記後方座席の冷房停止時には、前記電磁弁(8)を常に開くことを特徴とする車両用空調装置。 - 前記後方座席の冷房停止時には、前記第2設定温度(TA、TA+Δt)を、前記第1設定温度(TB、TB+Δt)よりも低く設定することにより、前記電磁弁(8)を常に開くことを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
- 前記後方座席の冷房の作動停止を指示する指示手段(21)と、
前記指示手段(21)にて前記後方座席の冷房の停止が指示されたとき、前記電磁弁(8)を開くよう制御する制御手段(S113)とを備えることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
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